(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095594
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240703BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240703BHJP
C08J 7/048 20200101ALI20240703BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/30 102
C08J7/048 CES
C08J7/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217392
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022212656
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】東 創一郎
(72)【発明者】
【氏名】江夏 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 広子
(72)【発明者】
【氏名】川谷 泰弘
【テーマコード(参考)】
4F006
4F073
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA16
4F006AA17
4F006AB13
4F006AB20
4F006BA01
4F006BA05
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4F073BA14
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4F100AK02A
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4F100AK16A
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4F100CA02C
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4F100JL01
4F100JL01B
4F100JL11B
4F100YY00
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】基材とバリア層との密着性に優れた積層フィルムの提供。
【解決手段】オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有し、バリア層がポリビニルアルコールを含み、接着層が酸変性オレフィン樹脂を含む、積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有し、
前記バリア層がポリビニルアルコールを含み、
前記接着層が酸変性オレフィン樹脂を含む、
積層フィルム。
【請求項2】
前記オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂が、
ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン樹脂及びシクロオレフィン共重合体樹脂から選択される少なくとも1種のポリオレフィンを含むか、又は、
ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化ポリオレフィンを含む、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記接着層を赤外分光測定した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値に対する1500cm-1~1600cm-1に存在する最大吸収ピーク値の比が、0.25以上である、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
23℃、10%RHの条件下で測定した酸素透過度が、5.0[mL/m2・day・atm]以下である、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールが、けん化度95モル%以上のポリビニルアルコールである、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記オレフィン樹脂基材と前記接着層と前記バリア層とが、各々接している、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記バリア層の厚みが、0.5μm~10μmである、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示には、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製基材とバリア層(例えば、ガスバリア層)とを積層した積層フィルムが、各種の包装材料(例えば、食品、医薬品等の包装材料)などを含む多様な分野に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物であって、樹脂組成物をフィルムにした際の、23℃、80%RH環境下での酸素透過度が、80cc・3μm/m2・day・atm以下である樹脂組成物、この樹脂組成物を含有するフィルムからなる層を少なくとも一層有する多層構造体が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルム層、酸素遮断層、及び基材フィルム層と酸素遮断層との間に形成された接着層を含み、酸素遮断層は、ポリビニルアルコール及びシランを含み、シランは1つ以上のエポキシ基を含む、酸素遮断多重コーティングフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-181948号公報
【特許文献2】特開2021-107549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、基材とバリア層との密着性に優れた積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有し、バリア層がポリビニルアルコールを含み、接着層が酸変性オレフィン樹脂を含む、積層フィルム。
<2> オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン樹脂及びシクロオレフィン共重合体樹脂から選択される1種のポリオレフィンを含むか、又は、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群から選択されるハロゲン化ポリオレフィンを含む、<1>に記載の積層フィルム。
<3> 接着層を赤外分光測定した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値に対する1500cm-1~1600cm-1に存在する最大吸収ピーク値の比が、0.25以上である、<1>又は<2>に記載の積層フィルム。
<4> 23℃、10%RHの条件下で測定した酸素透過度が、5.0[mL/m2・day・atm]以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<5> ポリビニルアルコールが、けん化度95モル%以上のポリビニルアルコールである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<6> オレフィン樹脂基材と接着層とバリア層とが、各々接している、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<7> バリア層の厚みが、0.5μm~10μmである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、基材とバリア層との密着性に優れた積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る積層フィルムについて詳細に説明する。以下に記載する説明は、本開示に係る積層フィルムの代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示に係る積層フィルムは、そのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0010】
本開示において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えられてもよい。本開示において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えられてもよい。
【0012】
本開示において、特段の断りがない限り、分子量分布を有する化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0013】
本開示において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件に基づいてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置によって標準物質のポリスチレンを用いて換算された値である。
カラム:TSKgel(登録商標) GMHxL、TSKgel(登録商標) G4000HxL、又は、TSKgel(登録商標) G2000HxL(東ソー(株))
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:示差屈折計
【0014】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0015】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
本開示において、積層フィルム、積層フィルムが有する基材又は各層の厚みは、積層フィルムの主面に対して垂直な断面を有する切片を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)又は透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて測定される、上記切片の5か所の厚みの算術平均値とする。
【0017】
[積層フィルム]
本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有し、バリア層がポリビニルアルコールを含み、接着層が酸変性オレフィン樹脂を含む。本開示に係る積層フィルムは、基材とバリア層との密着性に優れる。
【0018】
樹脂製基材とバリア層とを積層した積層フィルムが所期の効果を発揮するには、樹脂製基材とバリア層との良好な密着性が求められる。例えば、特許文献1及び2が参照されるように、ガスバリア性に着目したフィルムである場合であれば、ガスバリア層にはポリビニルアルコールが適用されることが一般的である。しかし、ポリビニルアルコールを含む層は、樹脂製基材(例えば、オレフィン樹脂基材)との密着性に劣る傾向にある。
【0019】
これに対し、本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有し、バリア層がポリビニルアルコールを含み、接着層が酸変性オレフィン樹脂を含むことにより、接着層が含む酸変性オレフィン樹脂が接着層と隣接する層と相互作用して、基材とバリア層との密着性に寄与するものと推測される。ある態様において、接着層が含む酸変性オレフィン樹脂は、オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂及びバリア層が含むポリビニルアルコールの両方と相互作用すると推測される。なお、上記の推測は、本開示に係る積層フィルムを限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0020】
特許文献1に記載の多層構造体及び特許文献2に記載の酸素遮断多重コーティングフィルムは、基材とバリア層との密着性に着目するものでない。また、特許文献2に記載の技術では、オレフィン樹脂基材とポリビニルアルコールを含むバリア層との密着性に劣る。
【0021】
<オレフィン樹脂基材>
本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材を有する。
【0022】
本開示において、「オレフィン樹脂基材」とは、主たる重合体成分としてオレフィン樹脂を含む基材を意味する。「主たる重合体成分」とは、オレフィン樹脂基材が含む全ての重合体のうち最も含有量(質量)が多い重合体を意味する。
【0023】
本開示において、「オレフィン樹脂」は、主鎖にオレフィン由来の構造単位を有する重合体を意味する。重合体の「主鎖」とは、重合体の分子中で相対的に最も長い結合鎖を指す。本開示において、「オレフィン」とは、分子中に炭素-炭素二重結合を少なくとも1個以上有する、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素化合物を意味し、アルケンとも称される化合物である。
【0024】
本開示において、オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂は、主鎖にオレフィンに由来する構成単位を含む重合体であればよい。本開示において、「オレフィン樹脂」は、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンの双方を包含する。
【0025】
オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂としては、α-オレフィンの単独重合体、α-オレフィンと他のモノマーとの共重合体、シクロオレフィンの単独重合体、及び、シクロオレフィンと他のモノマーとの共重合体を包含するものが好ましい。
【0026】
オレフィン樹脂基材は、1種単独のオレフィン樹脂を含んでいてもよく、2種以上のオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0027】
オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィン樹脂(COP)及びシクロオレフィン共重合体樹脂(COC)から選択される1種のポリオレフィンを含むか、又は、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)からなる群から選択されるハロゲン化ポリオレフィンを含むことが好ましい。オレフィン樹脂基材が含むオレフィン樹脂は、上記ポリオレフィン及び上記ハロゲン化ポリオレフィンの両方を含む態様であってもよい。
【0028】
本開示において、オレフィン樹脂基材の具体的態様は、主たる重合体成分を冠した用語により表記される。例えば、オレフィン樹脂基材が主たる重合体成分としてポリエチレンを含む場合には、ポリエチレン(PE)基材と表記する。
【0029】
オレフィン樹脂基材としては、ポリエチレン(PE)基材、ポリプロピレン(PP)基材、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、シクロオレフィン樹脂(COP)基材、及びシクロ
オレフィン共重合体樹脂(COC)基材から選択されるいずれかの基材であることがより好ましい。
【0030】
ある態様において、オレフィン樹脂基材は、ポリプロピレン(PP)を含む基材であることが好ましく、ポリプロピレン(PP)基材であることがより好ましい。
【0031】
本開示において、「ポリエチレン(PE)基材」なる用語は、重合体成分がポリエチレン(PE)である基材を意味する用語として用いる。「ポリプロピレン(PP)基材」等の用語も同様である。
【0032】
オレフィン樹脂基材は、本開示に係る効果が得られる範囲において、重合体成分であるオレフィン樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0033】
オレフィン樹脂基材が含んでもよい他の成分としては、例えば、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、及び易滑剤が挙げられる。
【0034】
オレフィン樹脂基材の厚みは、特に制限はないが、5μm~500μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましく、30μm~250μmであることが特に好ましい。
【0035】
オレフィン樹脂基材は、他の層を積層するに際して、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、火焔処理、及びグロー放電処理が挙げられる。
【0036】
<接着層>
本開示に係る積層フィルムは、接着層を有する。接着層は、酸変性オレフィン樹脂を含む。
【0037】
接着層は、1種単独の酸変性オレフィン樹脂を含んでいてもよく、2種以上の酸変性オレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0038】
酸変性オレフィン樹脂におけるオレフィン樹脂は、主鎖にオレフィンに由来する構成単位を含む樹脂であればよい。
【0039】
酸変性オレフィン樹脂を形成するためのオレフィンとしては、特に制限されないが、炭素数2~6のアルケンが好ましく、エチレン、プロピレン、ブテン(1-ブテン、イソブテンなど)、又はヘキセンがより好ましく、これらを併用することもできる。
【0040】
酸変性オレフィン樹脂が有するオレフィンに由来する構成単位は、オレフィン樹脂を構成する全ての構成単位に対して、50モル%~99モル%が好ましく、60モル%~98モル%がより好ましい。
【0041】
酸変性オレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、5,000~150,000が好ましく、20,000~120,000がより好ましく、30,000~100,000が更に好ましい。
【0042】
酸変性オレフィン樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物等の酸変性成分を用いて酸変性したオレフィン樹脂が挙げられる。
【0043】
酸変性オレフィン樹脂として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、
無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物から選択された化合物を共重合成分として用いて得たオレフィン樹脂が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸としては、オレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0044】
酸変性オレフィン樹脂の好適な態様としては、特許第6362722号公報に「酸変性ポリオレフィン樹脂」として記載される樹脂を挙げることができる。特開2012-198408号公報に記載の「酸変性ポリオレフィン樹脂」に関する事項は、本明細書に組み込まれる。
【0045】
酸変性オレフィン樹脂を含む市販品としては、例えば、ザイクセンAC、A、L、NC及びN等のザイクセン(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)、ケミパールS100、S120、S200、S300、S650及びSA100等のケミパール(登録商標)シリーズ(三井化学(株)製)、ハイテックS3121及びS3148K等のハイテック(登録商標)シリーズ(東邦化学(株)製)、アローベースSE-1013N、SE-1030N、SE-1010、SB-1200、SD-1200、SD-1200、DA-1010及びDB-4010等のアローベース(登録商標)シリーズ(ユニチカ(株)製)、ハードレンAP-2、NZ-1004及びNZ-1005(東洋紡(株)製)、並びに、セポルジョンG315、VA407(住友精化(株)製)が挙げられる。
【0046】
酸変性オレフィン樹脂としては、特開2014-076632号公報の[0022]~[0034]に記載の酸変性オレフィン樹脂も好ましく用いることができる。
【0047】
接着層における酸変性オレフィン樹脂の含有量は、基材とバリア層の密着性の観点から、接着層の全質量に対し、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、80質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0048】
接着層は、酸変性オレフィン樹脂以外の他の樹脂を含むことが好ましい。
【0049】
接着層が他の樹脂を含む場合、1種単独の他の樹脂を含んでいてもよく、2種以上の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0050】
他の樹脂は、接着層形成組成物を調製するに際して水に分散させる観点から、酸基を有することが好ましい。
【0051】
他の樹脂が有する酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基であることが好ましい。
【0052】
他の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びスチレンブタジエン共重合体脂が挙げられ、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、接着性及び成形性の観点から、ウレタン樹脂であることが更に好ましい。
【0053】
ウレタン樹脂としては、主鎖にウレタン結合を有する重合体であれば制限されず、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応生成物等の公知のウレタン樹脂を利用
できる。ウレタン樹脂としては、酸基を有するウレタン樹脂(以下「酸基含有ウレタン樹脂」とも称する。)であることが好ましい。
【0054】
酸基含有ウレタン樹脂を含む市販品としては、例えば、ハイドラン(登録商標)AP-20、AP-40N及びAP-201(以上、DIC社製)、タケラック(登録商標)W-605、W-5030、W-5920、W-5661、W-6020、W-6061(以上、三井化学(株)製)、スーパーフレックス(登録商標)300、210、150及び130、並びに、エラストロン(登録商標)H-3-DF、E-37及びH-15(以上、第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0055】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む樹脂であり、スチレンなどのビニル単量体を共重合していてもよい。アクリル樹脂としては、特に制限されないが、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことがより好ましい。
【0056】
アクリル樹脂は、酸変性成分を有していてもよい。アクリル樹脂は、酸変性成分として、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸は、酸無水物を形成していてもよいし、アルカリ金属、有機アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1つで中和されていてもよい。
【0057】
アクリル樹脂の酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。酸価の下限は、特に制限されず、例えば、0mgKOH/gであるが、水分散体として塗布する点からは、2mgKOH/g以上が好ましい。
【0058】
接着層における他の樹脂の含有量は、接着層の全質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0059】
接着層は、上記した成分以外に、添加剤を含んでいてもよい。
接着層に含まれる添加剤としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、易滑剤、が挙げられる。
【0060】
界面活性剤としては、特に制限されず、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及び、炭化水素系界面活性剤が挙げられる。中でも、界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。炭化水素系界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられ、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0061】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
接着層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、接着層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.5質量%~2質量%がさらに好ましい。
【0063】
接着層の厚みは、5.0μm以下が好ましく、4.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下であることが更に好ましい。下限は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。接着層の厚みは、既述の方法により測定する。
【0064】
接着層は、接着層を赤外分光測定(以下「IR測定」とも称する。)した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値(以下「Abs1」とも表示する。)に対する1500cm-1~1600cm-1に存在する最大吸収ピーク値(以下「Abs2」とも表示する)の比(Abs2/Abs1)が、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.25以上であることが更に好ましい。特に、比(Abs2/Abs1)が0.25以上であることで、基材とバリア層の密着性及び積層フィルムの成型性により優れる。比(Abs2/Abs1)の上限は、特に制限されないが、例えば、0.5以下である。
【0065】
接着層をIR測定した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在するピークは、オレフィン構造に由来するピークと考えられる。一方、1500cm-1~1600cm-1に存在するピークは、ウレタン構造に由来するピークと考えられる。このことからは、接着層において、オレフィン構造に対して、ウレタン構造の割合が多いほど、密着性と成型性との両方に寄与できるものと推測される。
【0066】
接着層は、接着層をIR測定した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値(Abs1)に対する1000cm-1~1200cm-1に存在する最大吸収ピーク値(以下「Abs3」とも表示する)の比(Abs3/Abs1)が、0.3以上が好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.9以上が更に好ましい。比(Abs3/Abs1)の上限は、特に制限されないが、例えば、2.0以下である。
【0067】
接着層をIR測定した際に検出される吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在するピークは、オレフィン構造に由来するピークと考えられる。一方、1000cm-1~1200cm-1に存在するピークは、エーテル構造に由来するピークと考えられる。このことからは、接着層において、オレフィン構造に対して、エーテル構造の割合が多いほど、密着性と成型性との両方に寄与できるものと推測される。
【0068】
IR測定は、以下の測定方法により行うものとする。
【0069】
=測定装置及び測定条件=
測定装置:BRUKER_TENSORII(Bruker社)
測定条件:Y06_ATR.xpm
測定部 :ATR_シルバーゲート_Geプリズム
【0070】
=測定=
測定装置の測定台に、接着層表面が照射光の照射面となるように測定用サンプルを固定し、接着層表面に対して測定を行う。
接着層上に他の層(バリア層等)が存在しており、接着層の表面が露出していない場合には、他の層を剥離して接着層の表面を露出させる。他の層の剥離は、溶媒を用いた脱膜処理等により行うことができる。なお、後述する実施例では、オレフィン樹脂基材上に接着層を形成後、バリア層を形成せずにIR測定を行った。
【0071】
<バリア層>
本開示に係る積層フィルムは、バリア層を有する。バリア層は、ポリビニルアルコールを含む。
【0072】
本開示において、「バリア層」とは、物質の透過を遮断する機能を有する層を意味する。バリア層が遮断する物質としては、例えば、紫外線、光、ガス(酸素など)、水蒸気が
挙げられる。
【0073】
バリア層としては、ガスバリア層であることが好ましく、酸素遮断層であることがより好ましい。
【0074】
バリア層が含むポリビニルアルコールとしては、未変性ポリビニルアルコール、及び、変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0075】
ポリビニルアルコールの中でも、バリア性(例えば、ガスバリア性)の観点から、けん化度90モル%以上であるポリビニルアルコールがより好ましい。けん化度は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが特に好ましい。けん化度の上限は制限されない。けん化度は、100モル%以下であればよい。けん化度は、「JIS K 6726:1994」に記載の方法に従い測定する。
【0076】
ポリビニルアルコールの重合度は、600以上であることが好ましく、1700以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度の上限値は、例えば、2400である。
【0077】
ポリビニルアルコールを含む市販品としては、例えば、エクセバール AQ-4104(けん化度:98モル%~99モル%)、RS-2117(けん化度:97.5モル%~99モル%)、RS-1717(けん化度:92モル%~94モル%)
クラレポバール(登録商標)PVA-105(けん化度:98モル%~99モル%)((株)クラレ製) が挙げられる。
【0078】
ポリビニルアルコールは、バリア性の観点から、結晶化度が高い方が好ましい。
【0079】
バリア層におけるポリビニルアルコールの含有量は、バリア性の観点から、バリア層の全質量に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。ポリビニルアルコールの含有量の上限は、100質量%であってもよい。
【0080】
バリア層の厚みの上限としては、成形性に優れる点で、50μm以下であることが好ましく、20μm未満であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。バリア層の厚みの下限としては、0.1μm以上が好ましく、延伸後のガスバリア性能に優れる点で、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、1.5μm以上が更に好ましい。
バリア層の厚みは、いくつかの実施形態において、0.5μm~10μmであることが更に好ましい。バリア層の厚みは、いくつかの実施形態において、10μm以下であることが好ましく、0.1μm~7.5μmであることがより好ましく、1μm~7.5μmであることが更に好ましい。
バリア層の厚みは、既述の方法により測定する。
【0081】
バリア層は、上記した成分以外に、添加剤を含んでいてもよい。バリア層は、バリア性の観点からは、ポリビニルアルコールのみを含む層であることが好ましい。
【0082】
バリア層に含まれる添加剤としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、易滑剤、核剤(結晶化剤)、防腐剤が挙げられる。
界面活性剤としては、接着層の説明において既述した界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0083】
<層構成>
本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層と、をこの順に有する。本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材、接着層及びバリア層の他に、他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、ヒートシール層、及びブロッキング防止層が挙げられる。
【0084】
本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材の片面に接着層及びバリア層を有してもよいし、オレフィン樹脂基材の両面に接着層及びバリア層を有してもよい。
【0085】
オレフィン樹脂基材の片面に接着層及びバリア層を有する層構成としては、例えば、オレフィン樹脂基材/接着層/バリア層が挙げられる。
【0086】
オレフィン樹脂基材の両面に接着層及びバリア層を有する層構成としては、例えば、バリア層/接着層/オレフィン樹脂基材/接着層/バリア層が挙げられる。
【0087】
基材とバリア層との密着性により優れる観点からは、本開示に係る積層フィルムは、オレフィン樹脂基材と、接着層と、バリア層とが、各々接していることが好ましい。
【0088】
<積層フィルムの性状>
本開示に係る積層フィルムの厚みは、10μm~500μmであることが好ましく、10μm~400μmであることがより好ましく、10μm~300μmであることが更に好ましい。
積層フィルムの厚みは、既述の方法により測定する。
【0089】
本開示に係る積層フィルムは、23℃、10%RHの条件下で測定した酸素透過度が、5.0[mL/m2・day・atm]以下であることが好ましく、1.0[mL/m2・day・atm]以下であることがより好ましい。酸素透過度が5.0[mL/m2・day・atm]以下であると、例えば、本開示に係る積層フィルムをガスバリアフィルムとして好適に用いることができる。
【0090】
酸素透過度の測定は、以下の測定方法により行うものとする。
【0091】
=測定装置及び測定条件=
測定装置:OX-TRAN 2/21(MOCON社製)
温度:23℃、湿度:10%RH、酸素分圧:1atm
測定面積:50cm2
測定回数:各試料3回
【0092】
=測定=
測定対象とする積層フィルムを92mm×92mmに切り出し、積層フィルムのバリア層塗布面を検出器側として測定台に固定する。
オレフィン樹脂基材側にグリスを塗り、測定装置本体とアウターセルとで積層フィルムを挟み込むことで酸素透過度を測定する。
測定は、1時間測定をn=1とし、2日以上経過後、酸素透過度が安定したn=10データの平均値を1つのデータとして、トータルで3回測定を行う。
得られた3回の測定結果を算術平均し、小数点以下第2位を四捨五入した値を、酸素透過度の測定値とする。
【0093】
<積層フィルムの用途>
本開示に係る積層フィルムは、種々の用途に用いることができる。中でも、本開示に係る積層フィルムは、ガスバリアフィルムとして好適に用いることができる。ガスバリアフィルムは、例えば、各種の包装材料(例えば、食品、医薬品等の包装材料)等に適用することができ、その応用範囲は広い。
【0094】
[積層フィルムの製造方法]
本開示に係る積層フィルムの製造方法は、上述した本開示に係る積層フィルムが得られ
れば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
【0095】
積層フィルムの製造方法としては、塗布法を用いることが好ましい。積層フィルムを塗布法により製造する場合、例えば、接着層及びバリア層の各層の成分を、それぞれ溶媒に溶解又は分散させて、接着層形成組成物及びバリア層形成組成物を調製し、オレフィン樹脂基材上に、接着層形成組成物及びバリア層形成組成物を、この順に塗布し、乾燥して、接着層及びバリア層を形成すればよい。
【0096】
溶媒としては、水及び水と混和する有機溶媒が挙げられる。
【0097】
オレフィン樹脂基材としては、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【実施例0098】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の範囲は、以下に示す具体例に限定されるものではない。また、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
【0099】
<実施例1>
厚み250μmのポリプロピレン(PP)基材((製品名:ウェルネクス、日本ポリプロ製)、オレフィン樹脂基材)に、コロナ放電処理を施した。次いで、コロナ放電処理後のポリプロピレン(PP)基材上に、下記方法により、接着層形成組成物1及びバリア層形成組成物を、順次塗布して、乾燥して、接着層とバリア層を形成し、積層フィルムを作製した。
接着層の厚みは2.5μmであり、バリア層の厚みは5μmであった。
【0100】
オレフィン樹脂基材の片面に、下記の接着層形成組成物1をバーコーターで塗布し、形成された塗布膜を100℃の熱風にて乾燥させて、接着層を形成した。このとき、成膜された接着層の厚さが2.5μmとなるように、接着層形成組成物1の塗布量を調整した。
【0101】
次いで、接着層の上に、40℃に加温した下記のバリア層形成組成物1を、バーコーターで塗布し、形成された塗布膜を100℃の熱風にて乾燥させて、バリア層を形成した。このとき、成膜されたバリア層の厚さが5.0μmとなるように、バリア層形成組成物1の塗布量を調整した。
【0102】
(接着層形成組成物1)
樹脂組成物A(ユニチカ(株)製、製品名:アローベースSE-1030N(酸変性オレフィン樹脂を含む)、固形分濃度:22%)を希釈せずに用いた。
【0103】
(バリア層形成組成物1)
PVA1((株)クラレ製、製品名:エクセバール AQ-4104、けん化度98~99%)を加水して希釈し、固形分濃度を12%に調整した。
【0104】
なお、接着層形成組成物1及びバリア層形成組成物1に対しては、塗布に用いる前に、孔径:6μmのフィルター(製品名:F20、(株)マーレフィルターシステムズ製)を用いて、ろ過処理、及び、膜脱気(2x6ラジアルフロースーパーフォビック、ポリポア(株)製を使用)を実施した。
【0105】
<実施例2>
実施例1において、接着層形成組成物1を下記の接着層形成組成物2に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0106】
(接着層形成組成物2)
樹脂組成物B(ユニチカ(株)製、製品名:アローベース(登録商標)SE-1013N(酸変性オレフィン樹脂を含む)、固形分濃度20%)を希釈せずに接着層形成組成物2として用いた。
【0107】
<実施例3>
実施例1において、接着層形成組成物1を下記の接着層形成組成物3に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0108】
(接着層形成組成物3)
樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを希釈せずに、75質量%(樹脂組成物A)/25質量%(樹脂組成物B)の割合で混合して、接着層形成組成物3を調製した。
【0109】
<実施例4>
実施例1において、接着層形成組成物1を下記の接着層形成組成物4に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0110】
(接着層形成組成物4)
樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを希釈せずに、50質量%(樹脂組成物A)/50質量%(樹脂組成物B)の割合で混合して、接着層形成組成物4を調製した。
【0111】
<実施例5>
実施例1において、接着層形成組成物1を下記の接着層形成組成物5に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0112】
(接着層形成組成物4)
樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを希釈せずに、25質量%(樹脂組成物A)/75質量%(樹脂組成物B)の割合で混合して、接着層形成組成物5を調製した。
【0113】
<実施例6~13>
表1に示すようにオレフィン樹脂基材を変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0114】
<実施例14~20>
表1に示すようにバリア層の厚みを変更した以外は、実施例13と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0115】
<比較例1>
実施例1において、接着層形成組成物1及びバリア層形成組成物1を、下記の接着層形成組成物C1及び下記バリア層形成組成物2に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0116】
(接着層形成組成物C1)
固形分濃度を接着層形成組成物1と同じく12%になるように調整した以外は、特開2019-181948号公報の製造例4に記載の接着層コーティング液B-1の製造に準じて調製した樹脂組成物C1を用いた。樹脂組成物C1は、酸変性オレフィン樹脂を含有していない。
【0117】
(バリア層形成組成物2)
PVA2((株)クラレ製、製品名:クラレポバール(登録商標) PVA-105、けん化度98~99%)を加水して希釈し、固形分濃度を12%に調整した。
【0118】
<測定及び評価>
実施例及び比較例で作製した積層フィルムについて、密着性、成型性、ガスバリア性、及びIR測定を行った。結果を表1に示す。
【0119】
〔密着性〕
=100マス クロスカット方法(基盤目テープ試験)=
(1)試験面にカッターナイフを用いて、積層フィルムに、オレフィン樹脂基材に達する縦横各11本の切り傷をつけ100個の碁盤目(マス目)を作った。カッターガイドを使用し、切り傷の間隔は1mmとした。
(2) マス目部分にセロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、膜剥がれを目視にて観察した。
【0120】
=評価基準=
A:剥がれたマス目数が、全マス目数の1割未満であった。
B:剥がれたマス目数が、全マス目数の1割以上3割未満であった。
C:剥がれたマス目数が、全マス目数の3割以上であった。
【0121】
〔成型性〕
円筒形マンドレル法(JIS K5600-5-1:1999)に準拠して、直径2mmの円筒形マンドレルに、バリア層側が外側になるように巻き付け、その巻き付け部分のバリア層にクラックが生じるか否か、及び、基材からバリア層が剥離するか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
=評価基準=
A:クラックがなく、基材からバリア層も剥離していなかった。
B:クラックが確認されるが、基材からのバリア層は剥離していなかった。
C:クラックが確認され、かつ、基材からのバリア層の剥離も確認された。
【0122】
〔ガスバリア性(1):未延伸〕
実施例及び比較例で作製した積層フィルムについて、下記の方法により、酸素透過度を測定して、ガスバリア性を評価した。
【0123】
=測定装置及び測定条件=
測定装置:OX-TRAN 2/21(MOCON社製)
温度:23℃、湿度:10%RH、酸素分圧:1atm
測定面積:50cm2
測定回数:各試料3回
【0124】
=測定=
測定対象とする積層フィルムを92mm×92mmに切り出し、積層フィルムのバリア層塗布面を検出器側として測定台に固定した。
オレフィン樹脂基材側にグリスを塗り、測定装置本体とアウターセルとで積層フィルムを挟み込むことで酸素透過度を測定した。
測定は、1時間測定をn=1とし、2日以上経過後、酸素透過度が安定したn=10データの平均値を1つのデータとして、トータルで3回測定を行った。
得られた3回の測定結果を算術平均し、小数点以下第2位を四捨五入した値を、酸素透過度の測定値とした。
【0125】
=評価基準=
(判定)
A:酸素透過度が、0.5[mL/m2・day・atm]以下
B:酸素透過度が、0.5[mL/m2・day・atm]超
【0126】
〔ガスバリア性(2):延伸後〕
実施例及び比較例で作製した積層フィルムを延伸して、実施例及び比較例の各々についてサンプルa及びbを用意した。サンプルa及びbの作製方法は、下記のとおりである。
【0127】
=サンプルaの作製=
実施例又は比較例で作製した積層フィルムを一方向に1.5倍に延伸して、サンプルaを得た。
=サンプルbの作製=
実施例又は比較例で作製した積層フィルムを一方向に3倍に延伸して、サンプルbを得た。
【0128】
サンプルa及びbを用いて、ガスバリア性(1)と同様にしてガスバリア性を測定し、下記の評価基準により評価した。
=評価基準=
A:サンプルa及びサンプルbの両方とも、酸素透過度が、0.2[mL/m2・day・atm]以下であった。
B:サンプルa及びサンプルbのいずれか一方のみ、酸素透過度が、0.2[mL/m2・day・atm]以下であった。
C:サンプルa及びサンプルbの両方とも、酸素透過度が、0.2[mL/m2・day・atm]超であった。
【0129】
〔IR測定〕
実施例及び比較例において、接着層を形成し、バリア層を形成する前に、既述の測定方法によりIR測定を行った。得られた吸収スペクトルにおいて、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値(Abs1)に対する1500cm-1~1600cm-1に存在する最大吸収ピーク値(Abs2)の比(Abs2/Abs1)、及び、600cm-1~800cm-1に存在する最大吸収ピーク値(Abs1)に対する1000cm-1~1200cm-1に存在する最大吸収ピーク値(Abs3)の比(Abs3/Abs1)を算出した。
【0130】
【0131】
表1中、オレフィン樹脂基材の欄に記載の略称の詳細は以下のとおりである。
・PP:ポリプロピレン(PP)基材(製品名:ウェルネクス、日本ポリプロ(株)製)・PVC:ポリ塩化ビニル(PVC)基材(製品名:塩化ビニル、リケンテクノスリケンテクノス(株)製)
・PE:ポリエチレン(PE)基材(製品名:KP106、日本ポリエチレン(株)製)・COC:シクロオレフィンコポリマー(COC)(製品名:TOPAS、ポリプラスチックス(株)製)
・COP:ポリシクロオレフィン(COP)基材(製品名:1020R、日本ゼオン(株)製)
【0132】
表1に示すとおり、実施例の積層フィルムは、いずれも、基材とバリア層との密着性に優れていた。一方、比較例1の積層フィルムは、基材とバリア層との密着性に劣るものであった。また、実施例の積層フィルムは、成型性及びガスバリア性にも優れていた。
【0133】
<実施例21、22>
実施例1及び実施例13で作製した積層フィルムと同様にして積層フィルムを作製し、実施例21及び実施例22の積層フィルムを得た。
実施例21及び実施例22の積層フィルムを用いて、測定条件を40℃、75%RHに変更した以外は、上記のガスバリア性(1)と同じ条件でガスバリア性を評価した。
その結果、実施例21及び実施例22の積層フィルムは、いずれもガスバリア性が、1.0[mL/m2・day・atm]以下であり、高温高湿であっても、良好なバリア性を示した。