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特開2024-95609光硬化性樹脂組成物、立体造形物、及び立体造形物の製造方法
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  • 特開-光硬化性樹脂組成物、立体造形物、及び立体造形物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095609
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、立体造形物、及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240703BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240703BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240703BHJP
   B29D 29/10 20060101ALI20240703BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240703BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240703BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/124
B33Y70/00
B29D29/10
B33Y80/00
B29C64/314
C08G59/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219937
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022211336
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】金子 祐三
(72)【発明者】
【氏名】五郎丸 志保
(72)【発明者】
【氏名】水野 康子
(72)【発明者】
【氏名】細川 明美
【テーマコード(参考)】
4F213
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA39
4F213AA42
4F213AA43
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4J036AJ09
4J036FA10
4J036FA12
4J036FB03
4J036FB10
4J036GA03
4J036HA02
4J036JA15
4J036KA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA01
4J127BA051
4J127BA052
4J127BB022
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB092
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC131
4J127BC132
4J127BD062
4J127BD451
4J127BE112
4J127BE11Y
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BG041
4J127BG172
4J127BG271
4J127BG281
4J127CB161
4J127CC291
4J127DA22
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化性に優れ、得られる光学的立体造形物の耐熱性、耐衝撃性に優れる光硬化性樹脂組成物及びこれを用いて得られる耐熱性、耐衝撃性に優れる立体造形物を提供する。
【解決手段】一般式(1)

(式中、R~Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、互いに同一でも異なってもよい。また、R10は2価の炭化水素基であり、R10はあってもなくてもよく、R10が存在する場合には、R又はRのいずれか及びR又はRのいずれかが存在しない。Zは分岐鎖や置換基を有していてもよい多価の有機基(エステル結合含有基を除く)、nは2~10の整数である。)で表される脂環式エポキシ化合物(A)とウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】
(式(1)中、R~Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、互いに同一でも異なってもよい。また、R10は2価の炭化水素基であり、R10はあってもなくてもよく、R10が存在する場合には、R又はRのいずれか及びR又はRのいずれかが存在しない。Zは分岐鎖や置換基を有していてもよい多価の有機基(エステル結合含有基を除く)、nは2~10の整数である。)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)、及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が分子量260以上2000以下であり、分子内に少なくとも2個の重合可能な脂環式エポキシ基を有する、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の総重量に対し、1~50重量%である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が、その重合体のガラス転移温度が80℃以上のものである、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の総重量に対し、50~99重量%である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤(C)として、カチオン開始剤ならびにラジカル開始剤の両方を含む、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記光硬化性樹脂組成物の粘度が室温(25℃)で2000cP以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物に対して、光照射により形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層からなる立体造形物であって、硬化後の樹脂層の少なくとも一部が、硬化樹脂よりなる海部中に、海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる島部が分散したミクロ海島構造を有することを特徴とする立体造形物。
【請求項10】
前記硬化樹脂層の全てが、硬化樹脂よりなる海部中に、海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる微細な島部が分散したミクロ海島構造を有する、請求項9に記載の立体造形物。
【請求項11】
前記島部が粒径1~20nm未満の微細な構造からなる、請求項9に記載の立体造形物。
【請求項12】
前記ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層において、硬化樹脂層の重量に対する島部の合計量が1~50重量%である、請求項9に記載の立体造形物。
【請求項13】
前記島部を形成する重合体が、前記脂環式エポキシ化合物(A)から形成される、請求項9に記載の立体造形物。
【請求項14】
前記海部を形成する重合体が、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)から形成される、請求項9に記載の立体造形物。
【請求項15】
請求項9に記載の立体造形物の製造方法であって、前記島部となる重合体成分の含有割合が、ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層の形成に用いる光硬化性樹脂組成物の重量に対して1~50重量%である、立体造形物の製造方法。
【請求項16】
前記光硬化性樹脂組成物が、脂環式エポキシと共にオキセタン化合物を含有する請求項15に記載の立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いた立体造形物、及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物を用いた立体造形方法としては、加熱されたノズルから材料を溶かして、それを吐出しながら材料を一層ずつ積み上げる方式(熱溶解積層方式)、液状の樹脂に対して紫外線を当てて硬化層を形成し、その作業を何層も繰り返すことにより立体的に作り上げる方式(光造形方式)、インクジェットヘッドから噴射した樹脂を紫外線で固めながら積層する方式(インクジェット方式)、粉末状の材料(樹脂、金属)にレーザー光線を照射して焼結させる方式(粉末燃結方式)、石膏などの粉末材料を敷き詰めた上に、ヘッドから吐出された接着剤で固めていく方式(粉末固着方式)等が知られている。これらのうち、工業製品を製造するに際しては、熱溶解積層方式、光造形方式、粉末燃結方式が利用され始めている。
しかしながら、熱溶解積層方式は3次元(XYZ軸)成型時のZ方向の強度が弱いという欠点があり、また、粉末燃結方式は高温での焼結が必要というデメリットがある。
【0003】
これに対し、近年、三次元CADデータに基づいて、液状の光硬化性樹脂組成物に対して、選択域に光を照射することによって立体造形物を作製する、光学的立体造形方法(上記光造形方式)が採用され始めている。
より具体的には、光学的造形用樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の立体造形物を製造する光学的立体造形法(3次元光造形法)である(特許文献1、2等)。かかる光学的立体造形法によれば、製造する立体造形物の形状が複雑であっても、簡易にかつ比較的短時間で、所望の立体造形物を製造することができる。
【0004】
光学的立体造形法に用いられる光硬化性組成物としては、例えば23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤、及び1種類以上の重合開始剤を含む硬化性組成物が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-21432号公報
【特許文献2】特開平3-41126号公報
【特許文献3】特表2010-520949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物には、光エネルギー照射により迅速に硬化する速硬化性を有すると共に、得られる造形物の機械的特性が要求される。特に、光学的立体造形法により得られる立体造形物は、各種製品や部材等のモデルとしてではなく、それ自体が金型や部材等として使用されるため、優れた耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えることが要求される。
この要求に対して、特許文献3に開示される光硬化性樹脂組成物は、硬化性、耐熱性、耐衝撃性の全てを満足するという点では不十分であった。
以上の点から、本発明は、硬化性に優れ、得られる光学的立体造形物の耐熱性、耐衝撃性に優れる光硬化性樹脂組成物及びこの光硬化性樹脂組成物を用いて得られる耐熱性、耐衝撃性に優れる立体造形物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1]下記の一般式(1)
【化1】
(式(1)中、R~Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、互いに同一でも異なってもよい。また、R10は2価の炭化水素基であり、R10はあってもなくてもよく、R10が存在する場合には、R又はRのいずれか及びR又はRのいずれかが存在しない。Zは分岐鎖や置換基を有していてもよい多価の有機基(エステル結合含有基を除く)、nは2~10の整数である。)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)、及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
[2]前記脂環式エポキシ化合物(A)が分子量260以上2000以下であり、分子内に少なくとも2個の重合可能な脂環式エポキシ基を有する、上記[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3]前記脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の総重量に対し、1~50重量%である、上記[1]又は[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4]前記脂環式エポキシ化合物(A)が、その重合体のガラス転移温度が80℃以上のものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5]前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[6]前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の総重量に対し、50~99重量%である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[7]前記光重合開始剤(C)として、カチオン開始剤ならびにラジカル開始剤の両方を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[8]前記光硬化性樹脂組成物の粘度が室温(25℃)で2000cP以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に対して、光照射により形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層からなる立体造形物であって、硬化後の樹脂層の少なくとも一部が、硬化樹脂よりなる海部中に、海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる島部が分散したミクロ海島構造を有することを特徴とする立体造形物。
[10]前記硬化樹脂層の全てが、硬化樹脂よりなる海部中に、海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる微細な島部が分散したミクロ海島構造を有する、上記[9]に記載の立体造形物。
[11]前記島部が粒径1~20nm未満の微細な構造からなる、上記[9]又は[10]に記載の立体造形物。
[12]前記ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層において、硬化樹脂層の重量に対する島部の合計量が1~50重量%である、上記[9]~[11]のいずれかに記載の立体造形物。
[13]前記島部を形成する重合体が、前記脂環式エポキシ化合物(A)から形成される、上記[9]~[12]のいずれかに記載の立体造形物。
[14]前記海部を形成する重合体が、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)から形成される、上記[9]~[13]のいずれかに記載の立体造形物。
[15]上記[9]~[14]のいずれかに記載の立体造形物の製造方法であって、前記島部となる重合体成分の含有割合が、ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層の形成に用いる光硬化性樹脂組成物の重量に対して1~50重量%である、立体造形物の製造方法。
[16]前記光硬化性樹脂組成物が、脂環式エポキシと共にオキセタン化合物を含有する、上記[15]に記載の立体造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
硬化性に優れ、得られる光学的立体造形物の耐熱性、耐衝撃性に優れる光硬化性樹脂組成物及びこの光硬化性樹脂組成物を用いて得られる耐熱性、耐衝撃性に優れる立体造形物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】実施例2で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例3で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
図4】実施例4で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例1で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例2で製造した立体造形物の層の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の態様に限定されるものではない。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後の数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0011】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)、及び光重合開始剤(C)を含有する。
【0012】
<脂環式エポキシ化合物(A)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物(A)を含有する。
【0013】
【化2】
【0014】
式(1)中、R~Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、互いに同一でも異なってもよい。また、R10は2価の炭化水素基であり、R10はあってもなくてもよく、R10が存在する場合には、R又はRのいずれか及びR又はRのいずれかが存在しない。Zは分岐鎖や置換基を有していてもよい多価の有機基(エステル結合含有基を除く)、nは2~10の整数である。
【0015】
上記式(1)中、R~Rは上述の通りであり、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。ハロゲン原子を含む炭化水素基としては、炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。酸素原子を含む炭化水素基としては、炭化水素基の一部又は全部の-CH-基が酸素原子で置換されたものが挙げられる。また、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、炭素数1~6の炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基等が挙げられる。
【0016】
10はあってもなくてもよく、R10がない場合の式(1)は以下となる。
【0017】
【化3】
【0018】
これらのうち、R~Rは水素原子であることが好ましい。また、R10としては、炭素数1~3の2価の炭化水素基であることが好ましく、具体的にはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。このうち、開環重合時の立体障害性が小さく反応性の高いメチレン基が特に好ましい。
【0019】
式(1)におけるZとしては、分岐鎖や置換基を有していてもよい多価の有機基であればよく、n価の有機基である。例えば、nが2の場合には、2価の基が挙げられる。また、極性の観点からエーテル結合やシロキサン結合を有することが好ましいが、エステル結合は極性が高くアクリル材料との相互作用が強くなり海島構造の形成に好ましくない。具体的には、以下の式で表される基が好ましい。
【0020】
【化4】
【0021】
nは2~10の整数であり、中でもnは2又は3であることが好ましい。nが4未満であると流動性が低下して粘度上昇することがなく、また、架橋密度の上昇により樹脂の靭性が低下することがない。
【0022】
脂環式エポキシ化合物(A)の分子量は260以上、2000以下であることが好ましい。分子量が260以上であると重合時に相分離構造を形成する点で有利であり、一方2000以下であると低粘度化の点で有利である。
以上の観点から、脂環式エポキシ化合物(A)の分子量は280~1800であることがより好ましく、300~1600であることがさらに好ましい。
また、脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内に少なくとも2個の重合可能な脂環式エポキシ基を有することが好ましく、脂環式エポキシ基の数は2個又は3個が好ましく、2個が最も好ましい。
【0023】
脂環式エポキシ化合物(A)は、単独で重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましい。該重合体のTgが80℃以上であると、立体造形物の耐熱性が高くなる。以上の観点から、脂環式エポキシ化合物(A)の重合体のTgは90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
一方、該重合体のTgの上限については、特に限定されないが、通常250℃以下である。
【0024】
脂環式エポキシ化合物(A)の含有量としては、光硬化性樹脂組成物の総重量に対して、1~50重量%であることが好ましい。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が1重量%以上であると耐熱性及び耐衝撃性が向上する。一方、50重量%以下であると樹脂組成物の溶液粘度が高くなり過ぎず、立体造形物を得やすい。以上の観点から、脂環式エポキシ化合物(A)の含有量は、5~40重量%であることがより好ましく、10~30重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
<ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)(以下、「アクリル材料(B)」と記載することがある。)を含む。アクリル材料(B)としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含んでいればよく、その他のアクリル材料について、特に制限はない。なお、ここでアクリル材料とは、アクリル酸エステル構造又はメタクリル酸エステル構造を有するものをいう。本発明においては、アクリル材料(B)に含まれるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有することで、ラジカル重合性を有するものとなる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内に1個以上のアミド基と2個以上のヒドロキシ基とを有するアミドヒドロキシ化合物(b1)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれるジオール(b2)と、有機ジイソシアネート化合物(b3)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b4)とを付加反応させることで得られる。
なお、b1成分及びb4成分中のヒドロキシ基は、b3成分のNCO基に対して反応性を有する。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0026】
アミドヒドロキシ化合物(b1)は、本発明の立体造形物の伸度を維持したまま、強度(靭性)を向上させる成分である。該成分としては特に制限はないが、環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア、若しくは第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物が好ましい。
【0027】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが特に好ましい。
第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、6-アミノ-1-ヘキサノール、1,4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びN-メチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0028】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア、若しくは第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応は、当モル量の両者を混合し、約80~100℃で8~24時間加熱することで実施できる。このようにして得られる(b1)成分の中でも、4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミドが特に好ましい。
【0029】
ジオール(b2)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の硬化物の柔軟性と伸度を向上させる成分である。なお、3官能以上のポリオールであると、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造時に架橋・ゲル化しやすいため、かかる恐れのないジオールを用いることが好ましい。
【0030】
(b2)成分としては、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールから選ばれるジオールを1種又は2種以上用いることができる。これらは市販品を使用でき、その具体例としては、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、1-メチルブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオール、ポリカーボネートジオール(炭素数4~6の脂肪族骨格)、フタル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、マレイン酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、フマル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール等が挙げられる。中でも、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオールが特に好ましい。また、重量平均分子量が300~2000程度のものが好ましい。
【0031】
有機ジイソシアネート化合物(b3)は、他の成分のヒドロキシ基と反応してウレタン基を生成する成分である。(b3)成分としては特に制限はないが、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3-クロロ-4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、1,2-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上用いることができる。中でも、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネートが好ましい。特に、硬化物の耐候性に優れることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族骨格のものが好ましい。
【0032】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b4)は、反応で得られるポリウレタン前駆体の末端に付加して、ウレタン(メタ)アクリレート化合物にラジカル反応性を付与する成分である。(b4)成分としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基と、1個のNCO反応性ヒドロキシ基を有するものが好ましく、その具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれらのカプロラクトンの付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、(b1)成分と、総ヒドロキシ基含有当量で0.9モル当量の(b2)成分とを合成釜内に仕込み、加熱・攪拌下で、2.0モル当量の(b3)成分を滴下することで、前駆体のイソシアネート末端ポリウレタンを得、これに更に1.1~1.3モル当量の(b4)成分を滴下し、加熱付加することで、得られる。上記反応における(b1)~(b4)の使用比率は、モル当量比で、(b3):[(b1)+(b2)]:(b4)=2.0:0.5~4.0:0.5~4.0、(b1):(b2)=0.2~1.0:1.0~0.2とすることが好ましい。
【0034】
本明細書において、「モル当量」は、使用化合物のモル数と官能基数を乗じた数を意味する。すなわち、「モル当量」は、アミドヒドロキシ化合物(b1)、ジオール(b2)、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b4)では、分子内のヒドロキシ基数と使用モル数を乗じた数であり、有機ジイソシアネート化合物(b3)では、分子内のNCO基数と使用モル数を乗じた数である。
【0035】
以上で例示したウレタン(メタ)アクリレート化合物を添加することで立体造形物の強伸度や弾性率、耐熱性等を改良することができる。
アクリル材料中のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、10~80重量%の範囲であることが好ましく、20~70重量%の範囲であることがより好ましく、30~60重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0036】
(マクロモノマー)
本発明の光硬化性樹脂組成物には、ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外のアクリル材料として、マクロモノマーを含有させることができる。
マクロモノマーとは、重合性官能基を有する高分子である。本発明において、ラジカル重合性基を有するマクロモノマーを用いることで従来にない曲げ強度と引張強度を有し、優れた伸度を有する造形物が得られる。
特にラジカル重合性基として(メタ)アクリレートを有するとカルボニルの極性によりラジカル反応性が高く速硬化性を有することができる。さらに、メタクリレートはアクリレートに比べメチル基の立体障害により反応性が穏やかであり、光硬化性樹脂組成物の特性に応じてメタクリレートとアクリレートを使い分けることが可能である。
【0037】
マクロモノマーの構造としては下記式(3)で表されるものが好ましい。すなわち、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの一方の末端にラジカル重合性基を有するものである。
なお、本明細書においてポリ(メタ)アクリレートセグメントの一方の末端とは、(メタ)アクリレートの不飽和二重結合部分が開いてつながった炭素-炭素結合鎖の末端基であり、Yとは反対側に位置する基のことを意味する。
【0038】
【化5】
【0039】
前記式(3)において、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または複素環基は、置換基を有することができる。
【0040】
Rのアルキル基としては例えば、炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基及びt-ブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0041】
Rのシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3~20のシクロアルキル基が挙げられる。炭素数3~20のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基が挙げられる。入手のし易さから、シクロプロピル基、シクロブチル基及びアダマンチル基が好ましい。
【0042】
Rのアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0043】
Rの複素環基としては、例えば、炭素数5~18の複素環基が挙げられる。複数のRの複素環基の具体例としては、γ-ラクトン基及びε-カプロラクトン基が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0044】
Rの基の置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(-COOR’)、カルバモイル基(-CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基(-NR’R’’)、ハロゲン、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(-OR’)又は親水性若しくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。なお、R’又はR’’は、それぞれ独立して、複素環基を除いてRと同様の基が挙げられる。
Rの基の置換基のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
Rの基の置換基のカルバモイル基としては、例えば、N-メチルカルバモイル基及びN,N-ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
Rの基の置換基のハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
Rの基の置換基のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0045】
Rの基の置換基の親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシル基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0046】
Rは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、入手のし易さの観点からメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基及びt-ブチル基がより好ましく、メチル基、が特に好ましい。
【0047】
Xは水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種であり、メチル基が好ましい。
Xはマクロモノマーの合成し易さの観点から、複数のXの半数以上がメチル基であることが好ましく、より好ましくはすべてがメチル基であることが好ましい。複数のXの半数以上をメチル基とするには、マクロモノマーを製造するための原料組成物において、メタクリレートの割合を80重量%以上とすればよい。
【0048】
Yは、マクロモノマーの末端基である。マクロモノマーの末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0049】
nはマクロモノマー1分子中に含まれるモノマー単位のモル数(ただし二重結合を有するモノマー単位を除いた数)を表す。nは、2~10,000の整数である。nは10~400が好ましく、20~100がより好ましい。nが小さすぎると、引張強度、及び引張伸度を改良することができず、大きすぎると樹脂組成物の粘度が高すぎて実用に向かない。
【0050】
本発明の光硬化性樹脂組成物におけるマクロモノマーの含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して、1~10重量%であることが好ましい。マクロモノマーの含有量が1重量%以上であると、硬化樹脂に関して曲げ強度、引張強度、高伸張造形物が得られる点で有利である。一方、マクロモノマーの含有量が10重量%以下であると組成物の低粘度化の点で有利である。以上の観点から、マクロモノマーの含有量は2~8重量%の範囲であることがより好ましく、3~5重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0051】
マクロモノマーの重量平均分子量は、取扱い性の観点から2000~40000であることが好ましく、5000~20000であることがより好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量である。
【0052】
(ラジカル重合性基を有する化合物)
本発明の光硬化性樹脂組成物には、ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外のアクリル材料として、ラジカル重合性基を有する化合物を含有させることができる。
より具体的には、ラジカル重合性基を有する化合物であって、ラジカル重合性基を1つ有する化合物を添加することが好ましい。
ラジカル重合性基を1つ有する化合物としては、各種アルキルモノ又はポリアルコールから誘導されるエステル型(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリルアミド類、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、アリル化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
ラジカル重合性基を1つ有する化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、アクリルモルホリン、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルホリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0054】
以上例示した中でも、それ自身が低粘度で希釈作用を有し、さらには伸度が増すことから、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、等が好適であり、さらに単官能(メタ)アクリレートである(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸イソボニルを用いると環骨格を有するため立体造形物の弾性率が増し靭性を向上するので好ましい。特に(メタ)アクリロイルモルホリンを用いると水素結合が強くさらに弾性率が増し靭性が向上するのでより好ましい。
【0055】
ラジカル重合性基を1つ有する化合物の含有量は特に制限はないが、光重合性樹脂組成物全量に対して、10~60重量%の範囲であることが好ましい。この範囲で含有することで、立体造形物の弾性率が向上する。以上の観点から、ラジカル重合性基を1つ有する化合物の含有量は20~50重量%の範囲であることがより好ましく、30~45重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するアクリル材料(B)の含有量としては、光硬化性樹脂組成物の総重量に対して、50~99重量%であることが好ましい。アクリル材料(B)の含有量が99重量%以下であると、(A)成分の含有量が十分となり、耐熱性及び耐衝撃性が向上する。一方、50重量%以上であると樹脂組成物の溶液粘度が高くなり過ぎず、造形物を得やすい。以上の観点から、アクリル材料(B)の含有量は、60~90重量%であることがより好ましく、70~85重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0057】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により本発明の光硬化性樹脂組成物を重合硬化する成分である。
本発明においては、光重合開始剤(C)としてカチオン開始剤ならびにラジカル開始剤の両方を併用することが好ましい。カチオン開始剤により、エポキシ基の重合が進み、ラジカル開始剤により、メタ(アクリル)基の重合が進むため、効率的に重合させることができる。
【0058】
光重合開始剤(C)の具体例としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(市販品;Omnirad184)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類などが挙げられる。
成分(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(C)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の含有量の合計100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましく、1~10重量部が更に好ましい。成分(C)の含有量が、上記下限値以上であれば立体造形物の硬化性を良好にすることができ、かつ立体造形物の耐熱性、耐衝撃性を向上させることができる。
【0059】
成分(C)のうち、カチオン開始剤の含有量は、成分(A)及び成分(B)の含有量の合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.2~10重量部がより好ましく、0.3~5重量部が更に好ましい。カチオン開始剤の含有量が、上記下限値以上であれば立体造形物の硬化性を良好にすることができる。
【0060】
成分(C)のうち、ラジカル開始剤の含有量は、成分(A)及び成分(B)の含有量の合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.2~10重量部がより好ましく、0.3~5重量部が更に好ましい。ラジカル開始剤の含有量が、上記下限値以上であれば立体造形物の硬化性を良好にすることができる。
【0061】
<その他成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物には、上記(A)~(C)成分に加えて、必要に応じて、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸アミル、4-ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することができる。
【0062】
その他、本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、エラストマー粒子、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、連鎖移動剤等の各種添加剤を、用途等に応じて適宜添加することができる。後述するオキセタン化合物を含有させることもできる。
【0063】
さらに、その他成分として、紫外線吸収剤は樹脂組成物の硬化深度を制御するのに有効な成分である。紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、樹脂組成物100重量部に対して、0.005~1重量部、特に0.01~0.8重量部が好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、得られる立体造形物の性能を損なわない範囲で、必要に応じて有機溶剤や水を添加することもできる。
【0064】
(粘度)
本発明の光硬化性樹脂組成物の粘度は、室温(25℃)で2000cP以下であることが好ましい。粘度が2000cP以下であると、光学的造形に供した場合、薄膜を良好に形成することができる。また、光エネルギー照射により迅速に硬化すると共に、硬化時の体積収縮率が小さいという性質も有する。したがって、所望の形状や寸法を有する立体造形物を精度良く、安定して、かつ効率良く製造することができる。
以上の観点から、光硬化性樹脂組成物の粘度は、室温で1800cP以下であることがさらに好ましく、1500cP以下であることがさらに好ましい。
室温における粘度の下限値については特に制限はないが、立体造形物の機械的強度の点から500cP以上が好ましく、800cP以上であることがさらに好ましい。
【0065】
<立体造形物>
本発明の立体造形物は、前述の光硬化性樹脂組成物に対して、光照射により形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層からなる立体造形物であって、硬化後の樹脂層の少なくとも一部が、硬化樹脂よりなる海部中に、海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる島部が分散したミクロ海島構造を有する。
例えば、後述する実施例1を例にとると、図1に示すように、TEM観察結果からミクロ海島構造を示すことがわかる。すなわち、海部中に約10nm程度の島構造が観察される。当該ミクロ海島構造は、硬化後の樹脂層の少なくとも一部がこのような構造をとっていればよいが、硬化樹脂層の全てが、硬化樹脂よりなる海部中に海部を構成する硬化樹脂とは異なる重合体よりなる島部が分散したミクロ構造であることが好ましい。
【0066】
本発明の立体造形物のミクロ海島構造における島部は、前述の光硬化性樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)により形成されることが好ましい。また、海部は前述のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むアクリル材料(B)により形成されることが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)とウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むアクリル材料(B)が均一に混合された樹脂組成物であるのに対し、これを重合する過程で海島構造に変化するものと考えられ、いわゆる、重合誘起相分離構造をとるものと考えられる。このような構造をとることで、海部で亀裂等が生じた際に、島部で該亀裂等が抑制され、耐衝撃性が向上したものと推定している。
【0067】
本発明の立体造形物は、上述のようなミクロ海島構造を有していればよく、ミクロ島部の大きさについては、特に制限はないが、その粒径が1~20nm未満であることが好ましい。島部の粒径が1nm以上であると、立体造形物の耐熱性、耐衝撃性を向上させることができ、20nm未満であるとミクロ海島構造を維持しやすい。以上の観点から、島部の粒径は2~18nmの範囲であることがより好ましく、5~15nmの範囲であることがさらに好ましい。
また、島部を構成する重合体成分の含有割合は、ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層の形成に用いる光硬化性樹脂組成物の全重量に対して、1~50重量%であることが好ましい。島部を構成する重合体成分の含有割合が1重量%以上であると、立体造形部が耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えることができる。一方、50質量%以下であると、海島構造が安定に存在することができる。以上の観点から、島部を構成する重合体成分の含有割合は、5~40重量%であることがより好ましく、10~30重量%であることがさらに好ましい。
【0068】
<立体造形物の製造方法>
立体造形物の製造方法としては、立体造形物を形成するための光硬化性樹脂組成物の組成が重要である。すなわち、上述の通り、島部となる重合体成分の含有割合が、ミクロ海島構造を有する硬化樹脂層の形成に用いる光硬化性樹脂組成物全量に対して、1~50重量%の範囲であることが好ましく、島部を構成する重合体成分の含有割合は、5~40重量%であることがより好ましく、10~30重量%であることがさらに好ましい。
また、光硬化性樹脂組成物が、成分(A)である脂環式エポキシ化合物と共にオキセタン化合物を含有することが好ましい。オキセタン化合物を含有することで、高反応性を維持することができる。オキセタン化合物の含有量としては、特に制限はないが、光硬化性樹脂組成物全量に対して、1~20重量%の範囲であることが好ましい。オキセタン化合物の含有量が1重量%以上であると、オキセタン化合物を添加する効果が十分に発揮され、20重量%以下であると、他の成分量を確保することができる。以上の観点から、オキセタン化合物の含有量は2~10重量%の範囲であることがより好ましく、2.5~5.5重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0069】
<用途>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、3Dプリンター用材料として有用である。本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることで、取り扱い性が容易で、かつ造形しやすく、生産性を向上させることができる。
また、本発明の立体造形物は、耐熱性、耐衝撃性に優れるため、工業製品として使用することができる。例えば、モビリティ用途などに広く応用することが期待される。
【実施例0070】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下における各種物性等の測定方法は次の通りである。
【0071】
[組成物の粘度]
以下の実施例で作製した光硬化性樹脂組成物について、ブルックフィールド製デジタルE型粘度計「LV DV3T」(恒温槽付き)を用い、当該光硬化性樹脂組成物の温度を恒温槽で25℃に調整して、一定温度でその粘度を測定した。コーンスピンドルとしてCPA-52Zを使用し、回転数0.5~100rpmの条件下でデータが安定した時の数値から粘度を算出した。
【0072】
[ガラス転移温度]
以下の実施例で作製した光硬化性樹脂組成物について、エポキシ成分、アクリル成分のそれぞれ単体のみの組成物を準備し、後述の方法で硬化・成型した光立体造形物の試験片について、チャックに挟んで固定後、日立ハイテクサイエンス製動的粘弾性測定装置「DMA 7100」により、測定モード:引張、測定周波数:1、2、4、10、20Hz、昇温速度(測定温度):5℃/min(-10℃~240℃)の条件下で動的粘弾性の温度依存性を測定した。
昇温時の貯蔵ならびに損失弾性率を測定し、その比である損失正接(tanδ)を算出し、tanδ(10Hz)がピークとなる温度をガラス転移温度と定義した。なお、ガラス転移温度を迎える前に固定したチャック近傍で試験片が破断してしまう場合があり、この時はガラス転移温度については破断直前の温度以上となったとした。
【0073】
[耐熱性]
以下の実施例で作製した光立体造形物(ASTM D648に準拠したバー形状の試験片)について、東洋精機株式会社製「HDTテスター6M-2」を使用して、当該試験片に0.45MPaの荷重を加え、ASTM D648(B法)に準拠して試験片の熱変形温度を測定した。
【0074】
[IZOD耐衝撃性]
以下の実施例で作製した光立体造形物(ASTM D256に準拠したノッチ付きバー形状の試験片)について、東洋精機株式会社製「デジタル・インパクト・テスター DG-18」を使用して、ASTM D256に準じノッチ付きで当該試験片のアイゾット衝撃強度を測定した。
【0075】
[透過型電子顕微鏡(TEM)による観察]
以下の実施例で作製した光立体造形物の試験片を0.5%四酸化ルテニウム(RuO)、ならびに0.5%四酸化オスミウム(OsO)水溶液により二重染色した。試験片をトリミング後に樹脂で包埋し、ミクロトームで薄切りにして切片を作製した。透過型電子顕微鏡を使用して加速電圧200kVの条件下、STEMモードで観察・撮影した。なお、図1図5は一辺の長さが280nmである。アクリルマトリックスは強染色で黒く観察され、エポキシドメインは弱染色で輝点として観察された。
【0076】
<成分(A):式(1)で表される脂環式エポキシ化合物>
・BCHH:C2034;7-Oxabicyclo[4.1.0]heptane,3,3’-[1,6-hexanediylbis(oxymethylene)]bis- 分子量338.4
・BHOO:C2238;7-Oxabicyclo[4.1.0]heptane,3,3’-[1,8-octanediylbis(oxymethylene)]bis- 分子量366.5
・BHBO:C1830;7-Oxabicyclo[4.1.0]heptane,3,3’-[1,4-butanediylbis(oxymethylene)]bis- 分子量310.4
・BCHS:C2038Si;1,1,3,3-Tetramethyl-1,3-bis[2-(7-oxabicyclo[4.1.0]hept-3-yl)ethyl]disiloxane 分子量382.7
・BHS3:C2244Si;1,1,3,3,5,5-Hexamethyl-1,5-bis[2-(7-oxabicyclo[4.1.0]hept-3-yl)ethyl]trisiloxane 分子量456.8
・BNS2:C2238Si;Disiloxane,1,1,3,3-tetramethyl-1,3-bis[2-(3-oxatricyclo[3.2.1.02,4]oct-6-yl)ethyl]- 分子量406.7
・THS4:C3160Si;3-[[Dimethyl[2-(7-oxabicyclo[4.1.0]hept-3-yl)ethyl]silyl]oxy]-1,1,3,5,5-pentamethyl-1,5-bis[2-(7-oxabicyclo[4.1.0]hept-3-yl)ethyl]trisiloxane 分子量641.1
【0077】
なお比較例として用いた成分は以下である。
・C2021P:C1420;3,4-Epoxycyclohexylmethyl 3,4-epoxycyclohexanecarboxylate 商品名「セロキサイド」、ダイセル社製 分子量252.3
【0078】
<成分(B)>
(ウレタンアクリレート(B-1))
ウレタンアクリレートとして、以下の方法で合成したものを使用した。なお、反応の終点は、残存イソシアネート当量が1重量%未満となった時点とした。
(1)攪拌機、温度調節器、温度計、及び凝縮器を備えた内容積5Lの三つ口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート1850g(7.0モル当量)、及びジブチル錫ジラウレート0.7gを仕込み、ウォーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2)別途、4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミド193g(1.1モル当量)と、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:12、平均分子量:865)1200g(1.4モル当量)とを均一に混合溶解させた液を、側管付きの滴下ロートに仕込み、これを上記(1)のフラスコ中の内容物に対して滴下した。この際、上記(1)のフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を65~75℃に保持し、4時間かけて等速滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して反応させた。
(3)別途、2-ヒドロキシエチルアクリレート1335g(11.5モル当量)とハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gとを均一に混合溶解させた液を、別の滴下ロートに仕込んだ。この内容物を、(2)のフラスコ内容物を75℃ で降温させた後、フラスコ内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速滴下し、さらにフラスコ内容物の温度を75~85℃に保持し、4時間反応させることで、無色透明のウレタンアクリレートを得た。
【0079】
(マクロモノマー(B-2))
ウレタンアクリレート以外のアクリル成分であるマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートであるELVACITE1010(重量平均分子量(Mw)=5000)
【0080】
(ACMO(B-3))
ACMO:アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製)
【0081】
<成分(C):光重合開始剤>
・Ominirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(BASF社製);光応答性ラジカル重合開始剤
・CPI-200K:Sulfonium,diphenyl[4-(phenylthio)phenyl]-,trifluorotris(1,1,2,2,2-pentafluoroethyl)phosphate(1-)(1:1)50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ社製)光応答性カチオン重合開始剤
【0082】
<任意成分>
・OXT-221:3,3’-(オキシビスメチレン)ビス(3-エチルオキセタン)、(東亞合成社製)
高反応性を維持するために添加した。
【0083】
実施例1~7、比較例1及び2
(1)光硬化性樹脂組成物の調製
表1に示す含有量となるように各成分を配合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
エポキシとなる(A)成分に、開始剤である(C)CPI-200K、ならびに任意成分のOXT-221を所定量添加し、ミックスローターで20~50℃の温度で30分以上攪拌して混合し、エポキシ組成物を得た。同様にアクリルとなる(B)成分について各成分を混合後、開始剤である(C)Omnirad184を所定量添加し、ミックスローターで20~50℃の温度で2時間以上攪拌して混合し、アクリル組成物を得た。次に、作製したエポキシ組成物とアクリル組成物を所定量比で混合し、ミックスローターで20~50℃の温度で30分以上攪拌して混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。なお、エポキシ単体、アクリル単体のガラス転移温度を測定する場合、それぞれエポキシ組成物、アクリル組成物のみで光硬化性樹脂組成物とした。調液はすべて、紫外光を除去した環境下で実施した。
【0084】
(2)立体造形物の製造
1mm厚みの紫外光を透過するガラス板の表面をアセトンでよくふき取ったのち、易剥離処理のため界面活性剤となる0.1%オプツール溶液を塗布し、1時間程度乾燥させた。ASTM規格に準拠した127mm×12.5mm×3mmのバー形状の型をシリコンシートで作製し、ガラス板上に設置した。紫外光を除去したイエロールーム内で、光硬化性樹脂組成物を型内に気泡が入らないように注意深くゆっくりと流し込んだ。易剥離処理したガラスで上面側をカバーした後、紫外線照射硬化システムであるへレウス製「FUSION LightHammer 6」により、1000mJ/cmの条件下(Hバルブ使用、365nm)で2回紫外線照射することにより、所定のサイズの光学的立体造形物を得た。
また、ガラス転移温度を測定するための試験片を作製する場合は、シリコンシートの型サイズを15mm×6mm×1mmに変更し、光硬化性樹脂組成物を同様に流し込んで硬化させ、立体造形物を得て試験片として用いた。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示す結果から、本発明を適用した実施例1~7は、耐熱性、耐衝撃性のいずれにも優れた立体造形物を製造できた。図1に示したように、実施例1の試験片には島部のサイズが20nm以下のミクロ海島構造が観察され、重合誘起相分離構造が形成されていた。また図2、3、4に示したように、実施例2、3、4の試験片にも、同様にそれぞれ島部のサイズが20nm以下のミクロ海島構造が観察された。
一方、成分(A)の分子量が小さい比較例1は、耐熱性に劣っていた。試験片には相分離構造が観察されず、アクリルと相溶した構造であった(図5)。
(A)成分を含まない比較例2は、耐衝撃性に劣っていた。相分離構造は観察されず、アクリル樹脂で多く観察される靭性破壊が生じるものと考えられた(図6)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、硬化性に優れ、得られる光学的立体造形物の耐熱性、耐衝撃性に優れる光硬化性樹脂組成物及びこの光硬化性樹脂組成物を用いて得られる耐熱性、耐衝撃性に優れる立体造形物を提供することができる。
本発明で対象とする技術は液相光重合法であり、生産性の高い有用な技術である。これに本発明を組み合わせることで、耐熱性及び耐衝撃性に優れる立体造形物を高い生産性で製造することができ、その利用価値は高い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6