(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095610
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】組成物及び変色抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240703BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/365
A61K8/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220198
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022211253
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 良
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB282
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD641
4C083AD642
4C083EE01
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】植物抽出物の変色が抑制された組成物、及び安全性が高く、かつ変色抑制効果が高い変色抑制剤を提供する。
【解決手段】(A)植物抽出物と、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上とを含有する組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)植物抽出物と、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上とを含有する組成物。
【請求項2】
さらに、(C)グルクロン酸及びグルコノラクトンから選択される1種以上を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上を含有する、(A)植物抽出物の変色抑制剤。
【請求項4】
(A)成分が、フトモモ科、モクセイ科、シソ科、キク科及びユキノシタ科から選ばれる1種以上の植物の抽出物である、請求項1又は2記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物の変色が抑制された組成物、及び変色抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物抽出物は、その有効性から、医薬品分野、化粧品分野、食品分野等、様々な分野で多用されている。しかしながら、植物抽出物は、天然由来があるため、経時による変色が問題となる場合がある。
【0003】
経時による変色する点からは、植物抽出物の配合量を減らす、着色料等でマスキングする、酸化防止剤(還元剤)を配合する、等の手段が挙げられる。これらの方法によらず、経時による変色抑制方法が望まれている。酸化防止剤(還元剤)等としては、亜硫酸塩類(ピロ亜硫酸Na等)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)が挙げられるが、これらの成分は、消費者から望まれるものではなく、特に、亜硫酸塩類は硫酸系の臭いや安全性の観点から望まれない場合が多い。このような点から、安全性が高く、かつ変色抑制効果が高い技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-145213号公報
【特許文献2】特開2006-348013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、植物抽出物の変色が抑制された組成物、及び安全性が高く、かつ変色抑制効果が高い変色抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上が、植物抽出物の変色を抑制する効果が高いことを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記組成物及び変色抑制剤を提供する。
1.(A)植物抽出物と、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上とを含有する組成物。
2.さらに、(C)グルクロン酸及びグルコノラクトンから選択される1種以上を含有する1記載の組成物。
3.(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上を含有する、(A)植物抽出物の変色抑制剤。
4.(A)成分が、フトモモ科、モクセイ科、シソ科、キク科及びユキノシタ科から選ばれる1種以上の植物の抽出物である、1又は2記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物抽出物の変色が抑制された組成物、及び安全性が高く、かつ変色抑制効果が高い変色抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、(A)植物抽出物と、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上とを含有する組成物である。
[(A)植物抽出物]
植物抽出物としては特に限定されず、フトモモ科、モクセイ科、シソ科、キク科、ユキノシタ科等の植物が挙げられる。
【0010】
抽出原料の構成部位は、特に限定されるものではなく、例えば、葉部、茎部、花部、果穂部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられる。
【0011】
上記植物の抽出物は、例えば、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性抽出溶媒によって脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。本発明の「抽出物」には、植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0012】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0013】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0014】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0015】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1~1:9(容量比)であることが好ましく、7:3~2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1~2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場
合には、水と多価アルコールとの混合比が8:2~1:9(容量比)であることが好ましい。
【0016】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~50倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0017】
植物抽出物としては、変色抑制効果がより得られる点から、例えば、テンニンカ抽出物、オリーブ抽出物、レモンバーム抽出物、ワイルドタイム抽出物、エゴマ抽出物、ヨモギ抽出物、ユキノシタ抽出物等が好ましい。
【0018】
テンニンカ(Rhodomyrtus tomentosa (Ait.)Hassk.)は、フトモモ科に属する常緑低木である。日本では沖縄等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るテンニンカの構成部位としては、例えば、葉、枝、樹皮、幹、茎、果実、花等の地上部、根又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実である。テンニンカ抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0019】
オリーブ(学名:Olea europaea)は、モクセイ科(Oleaceae)オリーブ属(Olea)に属する常緑高木植物である。果実から採取されたオリーブ油は、食用、薬用、化粧料用として利用されている。オリーブは、地中海沿岸や、日本を含めアジア諸国で栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。オリーブ抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0020】
前記オリーブの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、枝葉部、樹皮部、幹部、花部、蕾部、果実部、果皮部、種子部、種皮部等の地上部;根部、根茎部等の地下部等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、前記オリーブの抽出部位としては、葉部が好ましい。
【0021】
前記オリーブの抽出部位の状態としては、抽出が可能な状態であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、採取したそのまま(生)の状態、乾燥した状態、粉砕した状態、搾汁の状態等が挙げられる。これらの中でも、前記オリーブの抽出部位の状態としては、採取したそのままの状態、粉砕した状態、搾汁の状態が好ましく、採取したそのままの状態、粉砕した状態がより好ましい。
【0022】
前記オリーブの抽出部位を乾燥した状態にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天日で乾燥する方法、通常使用される乾燥機を用いて乾燥する方法等が挙げられる。
【0023】
前記オリーブの抽出部位を前記搾汁の状態にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧搾等が挙げられる。
【0024】
前記オリーブ抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法により容易に得ることができる。前記オリーブ抽出物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記オリーブ抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物等が挙げられる。
【0025】
前記オリーブの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前記オリーブの抽出部位を投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出物を得る方法等が挙げられる。また、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による前記オリーブの抽出処理を効率よく行うことができる。
前記抽出処理により前記オリーブから可溶性成分を溶出させた後、濾過して抽出残渣を除くことによって、前記オリーブ抽出物を得ることができる。
【0026】
レモンバーム(Melissa officinalis L.)は、別名メリッサ、コウスイハッカとも呼ばれるシソ科の多年生草本であって、日本を含め各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るレモンバームの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられる、中でも、葉部及び/又は茎部が好ましい。レモンバーム抽出物は、抽出原料から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
前記レモンバームからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0028】
ワイルドタイム(Thymus serphyllum)は、別名ヨウシュイブキジャコウソウとも呼ばれるシソ科イブキジャコウソウ属に属する植物である。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉、茎、花、地上部又はこれらの混合物等が挙げられる、中でも地上部が好ましい。ワイルドタイム抽出物は、抽出原料から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0029】
前記ワイルドタイムからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまままたは粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0030】
エゴマ(Perilla frutescens)は、シソ科シソ属に属する一年草であって、日本の本州、四国及び九州等に広く分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉部、茎部、枝部、幹部、果実部、種子部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部等の地上部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられ、中でも、葉部が好ましい。エゴマ抽出物は、抽出原料から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0031】
前記エゴマからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0032】
ヨモギ(別名ガイヨウ(生薬名))は、日本全土に分布しているキク科ヨモギ属に属する多年生草本であるヨモギ(Artemisia princeps Pampanini)の、好ましくは葉部であり、これらの地域から容易に入手され得る。ガイヨウは従来、婦人科領域の止血、流産防止、寒証の腹痛の予防等に使用されている。ヨモギ抽出物は、抽出原料から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0033】
前記ヨモギからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまままたは粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0034】
ユキノシタ(Saxifraga stolonifera)は、日本の本州、四国、九州および国外では中国に分布するユキノシタ科ユキノシタ属に属する常緑の多年草であり、これらの地域から容易に入手可能である。ユキノシタ抽出物は、抽出原料から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0035】
抽出原料として使用し得る部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、葉、茎、花、蕾、種子、根、地上部又はこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも全草が好ましい。前記抽出原料の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記ユキノシタからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0037】
(A)成分の含有量は、組成物中0.01~10質量%が好ましく、0.3~3.5質量%がより好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。このような範囲とすることで、より効果が発揮される。なお、(A)成分の量及び後述する(A)成分を含む比率の場合、抽出物の固形分としては、例えば、テンニンカ抽出物(固形分0.5質量%)、オリーブ抽出物(固形分1.5質量%)、レモンバーム抽出物(固形分1.0質量%)、ワイルドタイム抽出物(固形分0.5質量%)、エゴマ抽出物(固形分1.0質量%)、ヨモギ抽出物(固形分1.0質量%)、ユキノシタ抽出物(固形分1.0質量%)を用いた抽出物の量である。
【0038】
[(B)成分]
フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上を配合することで、植物抽出物、及びこれを含有する組成物の変色を抑制する。
フェルラ酸(3-メトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸)は、各種植物体中に見いだされる成分であって、本発明の変色防止剤には任意の植物体から分離されたものをいずれも使用することができる。市販品としては、米ぬか油精製工程で発生する残油から抽出、精製されたものが挙げられる。
【0039】
グリセリルアスコルビン酸は、アスコルビン酸とグリセリンとの縮合物である。
【0040】
(B)成分の含有量は、組成物中0.025~0.1質量%が好ましく、0.05~0.1質量%がより好ましい。このような範囲とすることで、より効果が発揮される。
【0041】
(A)/(B)で示される質量比は、1~400が好ましく、20~150が好ましい。
【0042】
[(C)成分]
本発明の組成物には、着色抑制効果をさらに高めるために、グルクロン酸及びグルコノラクトンから選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0043】
(C)成分の含有量は、組成物中0.025~0.2質量%が好ましく、0.1~0.2質量%がより好ましい。このような範囲とすることで、より効果が発揮される。
【0044】
なお、キレート剤、例えば、EDTA-2Na、EDTA-4Na、グルクロン酸、グルコノラクトン、グルコン酸Na、シクロデキストリン、フィチン酸、ヘキサメタリン酸Na等を配合してもよい。
【0045】
(A)/[(B)+(C)]で表される含有質量比は、0.5~100が好ましく、0.6~60がより好ましく、0.6~50がさらに好ましく、0.6~30が特に好ましい。
【0046】
[(C)/(B)]で表される含有質量比は、0.1~20が好ましく、0.2~10がより好ましく、0.2~5がさらに好ましい。
【0047】
本発明の組成物には、(A)成分の可溶化の点から、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤としては特に限定されず、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性界面活性剤が挙げられる。中でも、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。界面活性剤を配合する場合の量は、組成物中0.01~1質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
【0048】
[任意成分]
任意成分としては、化粧料、育毛剤、医薬品、医薬部外品、飲食品、食品等に配合し得る様々な成分を本発明の効果を損なわない範囲で適量配合することができる。このような成分としては、例えば、美白剤、抗老化剤、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、酵素、(A)成分以外の植物抽出物等の機能性成分の他、香料、色素、pH調整剤等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、組成物や変色抑制剤のpHは特に限定されないが、3~10が好ましく、4~8がより好ましい。
【0049】
[組成物]
本発明の組成物は、化粧料、医薬品、医薬部外品、飲食品、食品等とすることができる。化粧料としては特に限定されないが、皮膚化粧料、毛髪化粧料が挙げられる。皮膚化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液、サンスクリーン、パック等のスキンケア用化粧料が挙げられる。その他、洗顔料、クレンジング料、制汗剤等も挙げられる。毛髪化粧料としては、育毛料、養毛料、シャンプー、リンス、トリートメント等が挙げられる。
【0050】
[変色抑制剤]
本発明は、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸から選択される1種以上を含有する、(A)植物抽出物の変色抑制剤を提供する。特に褐色の抑制に有効である。同様に、(A)植物抽出物を含有する組成物の変色抑制剤を提供する。好適な成分、量等は上記と同じである。
【実施例0051】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。以下、化合物名を、表示名称、INCI名で示す場合がある。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0052】
実施例に使用した原料を示す。
[植物抽出物]
[製造例1]テンニンカ抽出物の製造
テンニンカ果実100gに80容量%エタノール1,500mLを加えて、80~90℃で2時間加熱抽出を行い、ろ過を行い、テンニンカ抽出物(固形分0.5質量%)を調製した。
[製造例2]オリーブ抽出物の製造
オリーブの葉100gに50容量%エタノール1,500mLを加えて、80~90℃で2時間還流抽出を行い、ろ過を行い、オリーブ抽出物(固形分1.5質量%)を調製した。
[製造例3]レモンバーム抽出物の製造
コウスイハッカの葉100gに50容量%1,3-ブチレングリコール1,500mLを加えて、80~90℃で2時間加熱抽出を行い、ろ過を行い、レモンバーム抽出物(固形分1.0質量%)を調製した。
[製造例4]ワイルドタイム抽出物の製造
ヨウシュイブキジャコウソウの地上部100gに50容量%1,3-ブチレングリコール1,500mLを加えて、80~90℃で2時間加熱抽出を行い、ろ過を行い、ワイルドタイム抽出物(固形分0.5質量%)と調製した。
[製造例5]エゴマ抽出物の製造
エゴマの葉部100gに30容量%エタノール1,500mLを加えて80~90℃で2時間還流抽出を行い、ろ過を行い、エゴマ抽出物(固形分1.0質量%)を調製した。
[製造例6]ヨモギ抽出物の製造
ヨモギの葉100gに80容量%エタノール1,500mLを加えて80~90℃で2時間還流抽出を行い、ろ過を行い、ヨモギ抽出物(固形分1.0質量%)を調製した。
[製造例7]ユキノシタ抽出物の製造
ユキノシタの全草100gに80%容量エタノール1,500mLを加えて80~90℃で2時間還流抽出を行い、ろ過を行い、ユキノシタ抽出物(固形分1.0質量%)を調製した。
【0053】
[(B)成分]
表示名称(INCI名)
フェルラ酸(Ferulic Acid)
グリセリルアスコルビン酸(Glyceryl Ascorbate)
【0054】
[(C)又はキレート剤(C’)成分]
表示名称(INCI名)
グルクロン酸(Glucuronic Acid)
グルコノラクトン(Gluconolactone)
EDTA-2Na(Disodium EDTA)
ヘキサメタリン酸Na(Sodium Hexametaphosphate)
【0055】
[試験方法]
下記組成に基づいて、(B)、(C)、(C’)成分、及び界面活性剤(PEG-60水添硬化ヒマシ油)を、精製水に加温溶解した。この溶解液を室温に冷ました後に、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノールを混合溶解して、(A)植物抽出物を添加混合して、試験溶液(組成物)を得た。なお、表2~10には、(A)、(B)、(C)、(C’)成分の量のみを記載している。
【0056】
【0057】
<保管条件>
組成物50mLをPETスクリューバイアルに充填し、1ヶ月保存した。
<測定条件>
保存前(初期・試験溶液調製直後)と、50℃・1ヶ月保存後の組成物について、分光光度計 ASV11D(アズワン(株)製)を用いて、測定波長:450nmにおける、組成物の吸光度を測定した。(B)成分、及び(C)成分又は(C’)成分を含まない組成物を調製し、同様に保管した試験溶液をブランク(比較例)とした。
<変色抑制率>
得られた吸光度に基づき、下記式に基づき、褐色抑制率を算出した。
抑制率(%)=100-[(試験溶液保存後の吸光度-試験溶液初期の吸光度)/(ブランク保存後の吸光度-ブランク初期の吸光度)×100]
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
上記結果から明らかであるように、(B)フェルラ酸及びグリセリルアスコルビン酸は、植物抽出物の変色抑制効果が高かった。(B)成分によって得られる効果は、キレート剤として知られる、EDTA-2Na及びヘキサメタリン酸ナトリウムでは得ることができなかった。また、植物の種類、抽出原料の構成部位、抽出溶媒及び抽出処理条件の異なる(A)植物抽出物に対して幅広く上記効果を発揮することができた。さらに、(B)フェルラ酸又はグリセリルアスコルビン酸の「植物抽出物の変色抑制効果」は、(C)グルクロン酸又はグルコノラクトンを併用することでより効果が向上した。