IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095640
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】有機無機ハイブリッド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20240703BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223462
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2022211361
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 由紀
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002DJ016
4J002FB096
4J002FD016
4J002GF00
4J002GQ00
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】全光線透過率が十分に高い他、ヘイズとYI値が十分に低く、高透明なポリイミド自己支持膜を与える有機無機ハイブリッド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)~(C)を含む組成物であって、該組成物の焼成によりヘイズが0.5以下、YIが3.0以下の透明な自己支持性のある樹脂薄膜が得られる有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
(A)硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルに由来する、シリカ粒子。
(B)ポリイミド樹脂
(C)有機溶媒
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含む組成物であって、該組成物の焼成によりヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の自己支持性のある樹脂薄膜が得られる有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
(A)硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルに由来する、シリカ粒子
(B)ポリイミド樹脂
(C)有機溶媒
【請求項2】
前記(A)成分のシリカ粒子は平均一次粒子径が30nm未満であり、シリカ粒子内のナトリウムイオン濃度が50ppm/SiO以上3500ppm/SiO以下である、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
【請求項3】
前記自己支持性のある樹脂薄膜において(A)成分と(B)成分との質量比が、(A)成分:(B)成分=10:1~1:10である、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分のシリカ粒子の表面が、トリメチルシリル基、又は3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシリル基で修飾されている、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の有機溶媒が、エーテル、エステル、環状エステル又は式(S)で表される溶媒である、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物。
【化1】
[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、R1~Rの炭素数の合計は4以上である。]
【請求項6】
請求項1乃至5記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物から得られる、ヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の透明ポリイミド樹脂薄膜。
【請求項7】
硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下であり、ナトリウムイオン濃度が50ppm/SiO以上3500ppm/SiO以下の有機溶媒分散シリカゾル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン含有量低減により高透明な自己支持性のある樹脂薄膜が得られる有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化が急速に進展し、益々軽量化、薄型化、透明化、フレキシブル化の傾向にある。これに伴い、電子機器に用いられる部品やそれらを実装する基板に対しても、高性能化への対応要求が高まっており、汎用フィルム同等の柔軟性とガラス同等の透明性や寸法安定性が要求されている。例えば、太陽電池分野として、特許文献1では、化合物系有機薄膜太陽電池の基板に、製造時の高耐熱性や軽量化およびフレキシブル性の観点からポリイミド基板が用いられている。また、特許文献2では、両面にポリイミド樹脂を用いたフレキシブル太陽電池が提案されている。
【0003】
一方、タブレットPCやスマートフォン等の表示画面がある製品は、フレキシブル化の為、その表示画面部位にガラス基板に代わる透明樹脂基板が提案されている。例えば特許文献3では、ポリイミドフィルムの一方または双方の面にウレタンアクリレート化合物の保護層を設けてなるポリイミドカバー基板のような、透明かつフレキシブル性を有するプラスチック基板を用いる事が要求されている。また、特許文献4は、フレキシブルディスプレイ用プラスチック基板として有用なポリイミド、及びその前駆体に係る発明に関し、シクロへキシルフェニルテトラカルボン酸等のような脂環式構造を含んだテトラカルボン酸類と各種ジアミンと反応させたポリイミドが透明性及び耐熱性に優れることを報告している。上記の様に、電子材料の高機能化において、ポリイミドは耐熱性や寸法安定性に優れる為、材料候補の一つである。
【0004】
ただし、一般的にポリイミドはガラス基板と比較して線膨張係数が高く、その他の樹脂と比較してリタデーションが高い。この為、ポリイミドに無機微粒子、特にシリカ粒子を用いてそれらの課題を解決することが知られている。例えば特許文献5では、ポリイミドにシリカゾルを添加することで、従来プラスチック基板の欠点であった線膨張係数及び低複屈折率の両立をしており、フレキシブルディスプレイ用プラスチック基板への応用が期待できる。また、特許文献6は、ポリイミド、シリカゾル、架橋剤を添加することで柔軟性を付与することが可能となり、シリカ粒子を用いる事は高機能を付与するために重要である。
【0005】
一般的に水ガラスを用いた酸性コロイダルシリカの製造では、特許文献7記載のように、陽イオン交換処理によりアルカリ性コロイダルシリカを脱アルカリしているが、この方法だけでは内部に抱きこまれているアルカリまでは十分に除去することが困難であり、経時でそのアルカリが溶出することによる安定性低下が懸念される。その解決策のひとつとして、アニオン成分を添加することによる中和が挙げられるが、電導度が上昇することで電気二重層の厚みが低下することにより、シリカ粒子同士が凝集しやすくなる傾向にある。そのため、有機無機ハイブリッドプラスチック材料作製の際に、アニオン成分を多く含有するシリカを用いることで、シリカの凝集によるヘイズの上昇といった透明性の低下を引き起こしやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6247206号
【特許文献2】特許第5352824号
【特許文献3】特表2016-521216号公報
【特許文献4】特開2008-231327号公報
【特許文献5】国際公開第2015/152178号
【特許文献6】国際公開第2017/057741号
【特許文献7】特公昭49-7800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の事情に基づいてなされたものであり、その目的はアニオン含有量低減により高透明な自己支持性のある樹脂薄膜が得られる有機無機ハイブリッド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、下記に関する。
1.下記成分(A)~(C)を含む組成物であって、該組成物の焼成によりヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の自己支持性のある樹脂薄膜が得られる有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関する。
(A)硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルに由来する、シリカ粒子
(B)ポリイミド樹脂
(C)有機溶媒
2.前記(A)成分のシリカ粒子は平均一次粒子径が30nm未満であり、シリカ粒子内のナトリウムイオン濃度が50ppm/SiO以上3500ppm/SiO以下である、1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関する。
3.前記自己支持性のある樹脂薄膜において(A)成分と(B)成分との質量比が、(A)成分:(B)成分=10:1~1:10である、1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関する。
4.前記(A)成分のシリカ粒子の表面が、トリメチルシリル基、又は3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシリル基で修飾されている、1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関する。
5.前記(C)成分の有機溶媒が、エーテル、エステル、環状エステル又は式(S)で表される溶媒である、1に記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物に関する。
【化1】
[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、R1~Rの炭素数の合計は4以上である。]
6.1~5のいずれかに記載の有機無機ハイブリッド樹脂組成物から得られる、ヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の透明ポリイミド樹脂薄膜に関する。
7.硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルに関する
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物は、全光線透過率が十分に高い他、ヘイズとYI値が十分に低く、高透明な自己支持性のあるポリイミド樹脂薄膜を与える。このため、太陽電池用の基板等に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<シリカ粒子>
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物に含有される(A)成分であるシリカ粒子は、硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルに由来するシリカ粒子である。硫酸イオン濃度がこのような範囲であることにより、シリカ粒子同士の凝集が抑制されるとともに、ポリイミドの結晶系を乱すことによるヘイズを抑制することができるため、焼成後にヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の透明な自己支持性のある樹脂薄膜が得られる。
【0012】
硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である有機溶媒分散シリカゾルは、水ガラスを原料として得られる水性シリカゾルを、必要に応じて限外ろ過によって溶媒置換することにより、製造することができる。溶媒置換は、必要に応じて限外ろ過を用いて、まず炭素数1~4のアルコールに置換した後、当該アルコール溶媒を、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エーテル類、エステル類、環状エステル類又はアミン類に置換するという方法で行うことが、有機ケイ素化合物の溶解性や表面修飾率向上の観点で好ましい。
【0013】
限外ろ過は、限外ろ過膜を用いて、溶媒またはろ過膜の孔径以下の分子を取り除く手法であり、限外ろ過を用いたシリカゾル製造は、メタノール等シリカ粒子を分散させたい置換溶媒を供給しつつ、水等の置換前のシリカゾル溶媒を限外ろ過しながら行う。この際、置換前溶媒と共に、硫酸イオンのような溶媒に溶解する不純物成分を除去できる一方、シリカ粒子のような溶媒に分散する成分は系内に残存し、溶媒置換が起きる。これにより、供給した溶媒に置換したシリカゾルが製造される。
【0014】
用いられる限外ろ過膜の材質はポリプロピレン、ナイロン、セラミック等があり、置換前後のシリカゾルの溶媒に溶解しなければどの材質でも良いが、生産性の観点からセラミックが望ましい。ろ過膜の形状は生産性の観点から、筒状が望ましい。ろ過の孔径ついては、シリカ粒子がろ過されず、なおかつろ過詰まりを起こさなければどのようなサイズでも良い。
【0015】
なお、水性シリカゾルには安定剤として硫酸イオンが添加されていることもあるため、硫酸イオンを除くために限外ろ過を行う必要がある。一方、水ガラスから得られる水性シリカゾルを、硫酸を添加する前に速やかに炭素数1~4のアルコール溶媒に置換することによっても、硫酸イオン濃度が10ppm/SiO以下である炭素数1~4のアルコール分散シリカゾルを得ることができる。この場合、シリカゾルの安定性の観点から、速やかに分散溶媒への置換を行う必要がある。
【0016】
本発明に用いるシリカ粒子は、例えば平均粒子径が100nm以下、例えば5nm~100nm、好ましくは5nm~55nmであり、より高透明の薄膜を再現性よく得る観点から、好ましくは5nm~50nm、より好ましくは5nm~45nm、より一層好ましくは5nm~35nm、さらに好ましくは5nm~30nmである。
本発明においてシリカ粒子の平均粒子径とは、シリカ粒子を用いて窒素吸着法により測定された比表面積値から算出される平均粒子径値である。
【0017】
また、本発明に用いるシリカ粒子は、シリカ粒子内のナトリウムイオン濃度が50ppm/SiO以上3500ppm/SiO以下であるシリカ粒子であることが安定性低下の抑制という点で好ましい。ナトリウムイオンをこのような含有量とするためには、水ガラスを原料としたアルカリ性コロイダルシリカを陽イオン交換処理により脱アルカリすればよい。
【0018】
なお、本願明細書におけるppm/SiOとは、原子吸光分光光度計で求めたナトリウムイオン量やイオンクロマトグラフィーで求めた硫酸イオン量を、溶剤分散シリカゾル中のシリカ濃度で除することで、シリカに対するナトリウムイオン量または硫酸イオン量を、ppm/SiOとして表したものである。
【0019】
<有機溶媒分散シリカゾル>
本発明に用いるシリカゾルは、前記シリカ粒子が有機溶媒に分散した分散液である。
【0020】
前記有機溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エーテル類、エステル類、環状エステル類又はアミン類が挙げられる。
【0021】
前記アルコール類としては、例えば炭素原子数2~5のアルコールが挙げられ、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
【0022】
前記ケトン類としては、例えば炭素原子数1~5のケトン類が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0023】
前記炭化水素類としては、例えばトルエン、キシレン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0024】
前記アミド類としては、例えば、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、下記式(s)で表される溶媒等が挙げられる。
【化2】
[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、R1~Rの炭素数の合計は4以上である。]
【0025】
前記エーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0026】
前記エステル類としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢
酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチルなどが挙げられる。
【0027】
前記環状エステル類としては、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0028】
前記アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、トリペンチルアミン、ピリジン、ピコリンなどが挙げられる。
【0029】
上記溶媒の中でも、樹脂の溶解性に優れ、且つ得られる樹脂薄膜の透明性にも優れるという点で、アミド溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒及び環状エステル溶媒が好ましく、上記式(s)で表されるアミド溶媒がさらに好ましい。
【0030】
炭素数1~4のアルコール分散シリカゾルを、上記有機溶媒で溶媒置換する方法としては、炭素数1~4のアルコール溶媒を減圧溜去しながら、置換したい溶媒を供給する方法が挙げられる。
【0031】
有機溶媒分散シリカゾル中のシリカ粒子の含有量は、(表面修飾)シリカ濃度として表わすことができる。シリカ濃度は、シリカ分散液を1000℃で焼成した後に得られる焼成残分を計量することで算出することができる。シリカ分散液におけるシリカ濃度は、例えば1質量%~60質量%、又は10質量%~60質量%、10質量%~40質量%とすることができる。
【0032】
また、前記シリカ分散液の水分含有量は5質量%以下であることが好ましい。このような水分含有量にすることで、分散液の安定性が良好となることや有機樹脂材料とのハイブリッド材料を得やすくなることがある。
【0033】
<有機ケイ素化合物>
さらに、シリカゾルに含まれるシリカ粒子の表面の少なくとも一部は、有機ケイ素化合物又はその加水分解物で修飾されていてもよい。有機ケイ素化合物によって表面改質処理されることでシリカ粒子表面が疎水化され、非水溶性の有機溶媒への分散性にも優れたものとすることができる。該粒子は、例えばシリカ粒子表面のヒドロキシ基に、有機ケイ素化合物が結合した構造を有する。
【0034】
使用される有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤として知られている公知の有機ケイ素化合物やシラン化合物を用いることができ、その種類は、用途や溶媒の種類等に応じて適宜選択される。また、複数の有機ケイ素化合物を併用してもよい。
【0035】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミ
ノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-[メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
また上記シランの具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0037】
前記有機ケイ素化合物による表面処理(修飾)量、すなわち、シリカ粒子表面を被覆又は表面に結合した有機ケイ素化合物は、シリカ粒子の表面積1nm当たり、例えば0.5個~6個程度の範囲とすることができる。
【0038】
表面修飾シリカ粒子の製造方法、すなわち、前記有機ケイ素化合物によるシリカ粒子表面の被覆(表面処理)方法は、特に制限はないが、例えば、シリカ粒子の有機溶媒分散液に、上記有機ケイ素化合物の少なくとも一種及び必要に応じてケトン類等の溶解性の高い溶媒を添加し混合することで、有機ケイ素化合物の加水分解と縮合が生じてシリカ粒子を表面修飾することができる。
【0039】
有機ケイ素化合物の添加量は、シリカ粒子の表面積1nm当たり、例えば有機ケイ素化合物が0.5個~6.0個程度の範囲で表面修飾されるように添加することができる。例えばシリカ粒子の表面積1nm当たり0.5個~10.0個、又は1.0個~8.0個、又は1.0~6.0個にて添加することができる。なお表面修飾に寄与しない余剰の有機ケイ素化合物が系内に存在していてもよいが、好ましい有機ケイ素化合物の添加量はシリカ粒子が表面積1nm当たり1.0~6.0個である。
【0040】
有機ケイ素化合物の加水分解は完全に加水分解を行うことでも、部分的に加水分解することでもよいが、水が必要であり、前記有機ケイ素化合物の加水分解性基又は[Si-O-Si]結合又は[Si-N-Si]結合の1モルに対して1モル程度以上の水を添加することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分を利用することもできる。
【0041】
加水分解し縮合させる際に、触媒を用いることもできる。加水分解触媒としてはキレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、又は無機塩基を単独で用い又は併用することができる。より具体的には、例えば、塩酸水溶液、酢酸、アンモニア水溶液等を用いることができる。
【0042】
上記シリカ粒子の表面修飾工程は、炭素数1~4のアルコールゾルの段階で行うことが、有機ケイ素化合物の溶解性や表面修飾率向上の観点から好ましい。
【0043】
<ポリイミド樹脂>
本発明に用いるポリイミドは、テトラカルボン酸及びその誘導体から選ばれる成分(以下、酸成分と言う)と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化
して得られるポリイミドである。
【0044】
本発明に用いる酸成分及びジアミン成分は特に限定されないが、得られるポリイミドの透明性の観点から、酸成分及びジアミン成分の少なくとも一方が、その少なくとも一部において、フッ素を有する有機基を持つ成分を含有することが好ましい。酸成分又はジアミン成分中のフッ素を有する有機基は、特に限定されないが、ベンゼン環に直接結合した、フルオロ基やフルオロアルキル基などが好ましい。中でも入手性や溶媒への溶解性の観点から、トリフルオロメチル基やヘキサフルオロイソプロピリデン基を有する酸成分又はジアミン成分が好ましい。また、これらの有機基には、フッ素原子が単数結合していても複数個結合していても構わない。
【0045】
本発明に用いる酸成分は、テトラカルボン酸及びその誘導体から選ばれる成分である。テトラカルボン酸及びその誘導体は、テトラカルボン酸、その酸二無水物及びそのジハライド等のテトラカルボン酸とそれから誘導される化合物であれば特に限定されない。これらの具体例を以下に挙げる。
【0046】
例えば、フッ素を有する有機基を持つ酸成分としては、トリフルオロメチル基やヘキサフルオロイソプロピリデン基を有する、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、それらの二無水物及びそのジハライド等の化合物が挙げられる。
【0047】
フッ素を有しない有機基を持つ酸成分としては、ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸のような芳香族テトラカルボン酸、それらの二無水物及びそのジハライド等や、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,5,6-トリカルボキシ-2-ノルボルナン酢酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’-6,6’-テトラカルボン酸のような脂環式テトラカルボン酸、それらの二無水物及びそのジハライド等や、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族テトラカルボン酸、その二無水物及びそのジハライド等の化合物を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0048】
また、本発明における酸成分としては、テトラカルボン酸及びその誘導体から1種又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
酸成分とジアミン成分を反応して得られるポリアミック酸について、有機溶媒への高い溶解性が得られるという観点から、トリフルオロメチル基或いはヘキサフルオロイソプロピリデン基を有するところの、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物及び4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物から選ばれる少なくとも1種を酸成分に含有することが好ましい。更に、これらから選ばれる少なくとも1種を酸成分の30モル%以上含有すると、得られるポリアミック酸の有機溶媒への溶解性がより良好になるため、好ましい。
【0049】
次に、本発明に用いるジアミン成分について述べる。ポリアミド酸を構成する単量体であるジアミン成分は、ジアミンであれば特に限定されず、その具体例を以下に挙げる 。
例えば、フッ素を有する有機基を持つジアミン成分としては、トリフルオロメチル基或いはヘキサフルオロイソプロピリデン基を有するところの、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,6,2’,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アニリノ)ヘキサフルオロプロパンまたは2,2-ビス(3-アミノ-4-トルイル)ヘキサフルオロプロパン等の化合物が挙げられる。
【0050】
フッ素を有する有機基と酸性基を持つジアミン成分としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどの化合物が挙げられる。
【0051】
フッ素を有する有機基を持たないジアミン成分としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4-メチレン-ビス(2-メチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4-メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンまたは2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0052】
また、フッ素を有する有機基を持たないが、酸性基を持つジアミン成分としては、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,5-ジアミノヒドロキノン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)スルホン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4
-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,6-ジアミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジアミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジカルボキシフェニル)スルホン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジカルボキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジカルボキシ-5,5'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジカルボキシ-5,5'-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。
加えて、ポリアミド酸を構成する単量体のジアミン成分としては、1,6-ヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4 '-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4 '-ジアミノ-3,3 '-ジメチルジシクロヘキシルメタンなどの脂肪族ジアミンを挙げることができる。
【0053】
本発明においては、フッ素を有する有機基を持つジアミンから選ばれる1種又は2種以上をジアミン成分に含有することが好ましい。更に、フッ素を有する有機基を持つジアミンから選ばれる少なくとも1種をジアミン成分の30モル%以上含有せしめると、得られるポリイミドの有機溶媒への溶解性並びにフィルムの透明性がより良好になるため、本発明においては、ジアミン成分のうち、少なくとも1種のフッ素を有する有機基を持つ成分を30モル%以上含有するのがより好ましい。
【0054】
<ポリアミック酸の合成>
本発明で使用する(B)成分であるポリイミド樹脂は、前述したように、酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化して得られる。
上記二成分からポリアミック酸への反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行させることができ、かつ副生成物が生成しない点で有利である。
【0055】
これら酸成分とジアミン成分との反応におけるジアミン成分の仕込み比(モル比)は、ポリアミック酸、さらにはその後イミド化させることにより得られるポリイミドの分子量等を勘案して適宜設定されるものではあるが、ジアミン成分1に対して、通常、テトラカルボン酸二無水物成分0.8~1.2程度とすることができ、例えば0.9~1.1程度、好ましくは0.95~1.02程度である。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0056】
上記酸成分とジアミン成分との反応の際に用いる有機溶媒は、反応に悪影響を及ぼさず、また生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。以下にその具体例を挙げる。
例えば、m-クレゾール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-sec-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピル
アミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等があげられるがこれらに限定されない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0057】
上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる方法としては、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた分散液又は溶液を撹拌させ、ここにテトラカルボン酸二無水物成分をそのまま添加するか、又はその成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させたものを添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた分散液又は溶液にジアミン成分を添加する方法、そしてテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法であってもよい。
また、テトラカルボン酸二無水物成分及び/又はジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。
【0058】
上記のポリアミック酸合成時の温度は、上述した使用する溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよく、例えば-20℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、-5℃~100℃、通常0~100℃程度、好ましくは0~70℃程度であるのがよい。
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を
得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応溶液中での合計濃度が、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することもできる。
【0059】
<ポリアミック酸のイミド化>
ポリアミック酸をイミド化させる方法としては、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリアミック酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃~400℃、好ましくは120℃~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0060】
ポリアミック酸の化学(触媒)イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃での温度条件にて系内を撹拌することにより行うことができる。
塩基性触媒の量はポリアミック酸のアミド酸基の0.5~30モル倍、好ましくは1.5~20モル倍であり、酸無水物の量はポリアミック酸のアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは2~30モル倍である。
【0061】
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、1-エチルピペリジンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0062】
本発明に用いるポリイミド樹脂において、アミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整して用いることができる。特に好ましくは50%以上である。
【0063】
また、本発明に用いるポリイミドは、樹脂薄膜の強度、樹脂薄膜を形成する際の作業性、樹脂薄膜の均一性等を考慮してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が5,000~200,000であることが好ましい。
【0064】
<ポリマー回収>
ポリアミック酸及びポリイミドの反応溶液から、ポリマー成分を回収し、用いる場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーはろ過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。
また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2から10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0065】
再沈殿回収工程において樹脂成分を溶解させる有機溶媒は特に限定されない。具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-
2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどが挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0066】
なお、本願発明に用いる透明ポリイミドとしては、市販されているものを用いることもできる。そのような市販の可溶性透明ポリイミドとしては、KPI―MX300F(河村産業株式会社製)や、SPIXAREA(登録商標) GRシリーズ(ソマール株式会社製)等が挙げられる。
【0067】
<有機溶媒>
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物は、前記ポリイミド樹脂及びシリカ粒子に加えて、有機溶媒を含む。該有機溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、有機溶媒分散シリカゾルの調製時に用いた反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられる。
【0068】
<有機無機ハイブリッド樹脂組成物>
本発明は、前記ポリイミド樹脂とシリカ粒子と有機溶媒とを含有する有機無機ハイブリッド樹脂組成物である。ここで本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物は、均一なものであって、相分離は認められないものである。
【0069】
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物において、前記ポリイミド樹脂と前記シリカ粒子の配合比は、質量比で、ポリイミド樹脂:シリカ粒子=10:1~1:10であることが好ましく、より好ましくは8:2~2:8、例えば7:3~3:7である。
【0070】
また本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物における固形分量の配合量は、通常0.5~30質量%程度、好ましくは5~25質量%程度である。固形分濃度が0.5質量%未満であると樹脂薄膜を作製する上において製膜効率が低くなり、また樹脂組成物の粘度が低くなるため、表面が均一な塗膜を得られにくい。また固形分濃度が30質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、やはり製膜効率の悪化や塗膜の表面均一性に欠ける虞がある。なおここでいう固形分量とは、有機溶媒以外の成分の総質量を意味し、液状のモノマー等であっても固形分として質量に含めるものとする。
【0071】
なお樹脂組成物の粘度は、作製する樹脂薄膜の厚み等を勘案し適宜設定するものではあるが、特に5~50μm程度の厚さの樹脂薄膜を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で500~100,000mPa・s程度、好ましくは1,000~30,000mPa・s程度である。
【0072】
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物には、加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、触媒、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、染料、可塑剤、微粒子、カップリング剤、増感剤等を用いることができる。例えば触媒は樹脂薄膜のリタデーションや線膨張係数を低下させる目的で添加され得る。なお、前記シリカ粒子、ポリイミド樹脂及び有機溶媒に加え、さらに触媒を含む有機無機ハイブリッド樹脂組成物も本発明の対象とすることができる。
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物は、上述の方法で得られたシリカ粒子並びにポリイミド樹脂を上述の有機溶媒に溶解して得ることができるし、有機溶媒分散シリカゾルの調製後の反応溶液に粉末のポリイミド樹脂を添加し、所望により前記有機溶媒を更に
加えたものとしてもよい。
【0073】
<樹脂薄膜>
以上説明した本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物を基材に塗布して乾燥・加熱することで有機溶媒を除去し、高い耐熱性と、高い透明性と、適度な柔軟性と、適度な線膨張係数とを有し、しかもリタデーションの小さい、自己支持性のある樹脂薄膜(以後、自己支持膜ともいう)を得ることができる。
そして上記樹脂薄膜、すなわち上記シリカ粒子と、ポリイミド樹脂とを含有する樹脂薄膜も本発明の対象である。さらに上記シリカ粒子及びポリイミド樹脂に加え、さらに触媒を含む樹脂薄膜も本発明の対象である。
【0074】
樹脂薄膜の製造に用いる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、ステンレス鋼(SUS)、木材、紙、ガラス、シリコンウェハ、スレート等が挙げられる。
特に、電子デバイスの基板材料として適用する場合においては、既存設備を利用することができるという観点から、適用する基材がガラス、シリコンウェハであることが好ましく、また得られる樹脂薄膜が良好な剥離性を示すことからガラスであることがさらに好ましい。なお、適用する基材の線膨張係数としては塗工後の基材の反りの観点から、30ppm/℃以下、さらに好ましくは、20ppm/℃以下あることがさらに好ましい。
【0075】
基材への有機無機ハイブリッド樹脂組成物の塗布法は、特に限定されるものではないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられ、目的に応じてこれらを適宜用いることができる。
【0076】
加熱温度は、300℃以下が好ましい。300℃を超えると、得られる樹脂薄膜が脆くなり、特にディスプレイ基板用途に適した樹脂薄膜を得ることができない場合がある。
また、得られる樹脂薄膜の耐熱性と線膨張係数特性を考慮すると、塗布した樹脂組成物を40℃~140℃で5分間~2時間加熱した後に、そのまま段階的に加熱温度を上昇させ、最終的に175℃超~280℃で30分~2時間加熱することが望ましい。このように、溶媒を乾燥させる段階と分子配向を促進する段階の2段階以上の温度で加熱することにより、低熱膨張特性を発現させることができる。
特に、塗布した樹脂組成物は、40℃~140℃で5分間~2時間加熱した後に、次いで、150℃超~280℃で5分~2時間加熱することが好ましい。
加熱に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても窒素等の不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよく、また加熱の各段階において異なる圧力を適用してもよい。
【0077】
樹脂薄膜の厚さは、特にフレキシブルディスプレイ用の基板として用いる場合、通常1~60μm程度、好ましくは5~50μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さの樹脂薄膜を形成する。
なおこのようにして形成された樹脂薄膜を基材から剥離する方法としては特に限定はなく、該樹脂薄膜を基材ごと冷却し、薄膜に切れ目を入れ剥離する方法やロールを介して張力を与えて剥離する方法等が挙げられる。
【0078】
このようにして得られる本発明の好ましい一の態様に係る自己支持性のある樹脂薄膜は、波長400nmでの光透過率が75%以上という高い透明性を実現することができる。
更に、該樹脂薄膜は、例えば50℃~200℃における線膨張係数が60ppm/℃以
下、特に10ppm/℃~35ppm/℃という低い値を有することができ、また例えば200℃~250℃における線膨張係数が80ppm/℃以下、特に15ppm/℃乃至55ppm/℃という低い値を有することができるものであり、加熱時の寸法安定性に優れたものである。
【0079】
特に該樹脂薄膜は、入射光の波長を590nmとした場合における複屈折(面内の直交する2つの屈折率の差)と膜厚との積で表される面内リタデーションR、並びに、厚さ方向の断面からみたときの2つの複屈折(面内の2つの屈折率と厚さ方向の屈折率との夫々の差)にそれぞれ膜厚を掛けて得られる2つの位相差の平均値として表される厚さ方向リタデーションRthが、いずれも非常に小さいことを特長とする。本発明の樹脂薄膜は、平均膜厚が15μm~40μmの場合に、厚さ方向のリタデーションRthが700nm未満、例えば660nm以下、例えば10nm~660nmであり、面内リタデーションRが4未満、例えば0.3~3.9であり、複屈折Δnが、0.02未満、例えば0.0003~0.019といった非常に低い値を有する。
このように、本発明の有機無機ハイブリッド樹脂組成物を用いて樹脂薄膜を形成することにより、当該樹脂薄膜のリタデーションを低減することができ、こうした樹脂薄膜のリタデーションを低減する方法も本発明の対象である。
【0080】
以上説明した本発明の自己支持性のある樹脂薄膜は、上記の特性を有することから、フレキシブルディスプレイ基板や太陽電池のベースフィルムとして必要な各条件を満たすものであり、これらの用途に特に好適に用いることができる。
【実施例0081】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0082】
[シリカ濃度の測定]
シリカゾルを坩堝に取り、130℃~160℃で乾燥後、1000℃で30分焼成し、焼成残分を計量して算出した。
【0083】
[平均一次粒子径(窒素吸着法粒子径)の測定]
シリカゾルの300℃乾燥粉末の比表面積を比表面積測定装置モノソーブ(登録商標)MS-16(ユアサアイオニクス株式会社製)を用いて測定した。
【0084】
[粘度の測定]
有機溶媒分散シリカゾルの粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0085】
[水分量]
有機溶媒分散シリカゾルに含まれる水分量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製、製品名:MKA-610)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定した。
【0086】
[ナトリウム含有量の分析方法]
メタノール分散シリカゾルを白金皿に採取し、超純水、塩酸、硫酸、フッ酸を加え、加熱することによってシリカ分を除去した。その後、超純水を加えて濃度調整し、測定原液とした。測定原液を所定の倍率に希釈し、原子吸光分光光度計(アジレント・テクノロジー製、製品名:55B AA、SpectrAA)にてシリカゾル中のナトリウム含有量を測定した。その後、シリカゾル中のシリカ濃度で除することで、シリカに対するナトリウム濃度(ppm/SiO)を算出した。
【0087】
[硫酸イオン含有量の分析方法]
メタノール分散シリカゾル10gと超純水20gを混合し、ロータリーエバポレーターにて減圧度100Torr、浴温度70℃で有機溶剤を蒸発留去した。その溶液を冷凍させ、分離した上澄みを分取し、イオンクロマトグラフィー(Thermo Scientific社製、製品名:DIONEX ICS-2100)を用いて標準試料のピーク面積とサンプルのピーク面積の比から硫酸イオン量を算出した。分析条件は下記の通りである。
・カラム:IONPac AG17-C(Thermo Scientific社製)
・サプレッサー:AERS500 4mm
・流量:1mL/min
・溶離液:KOHaq
・標準試料:陰イオン混合標準液IV(関東化学株式会社製)
その後、溶剤分散シリカゾル中のシリカ濃度で除することで、シリカに対するSO 2-量(ppm/SiO)を算出した。
【0088】
下記実施例及び比較例において使用した化合物は以下の通りである。
DMIB:N,N-ジメチルイソブチルアミド
MEK:メチルエチルケトン
HMDS:ヘキサメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF-96L-0.65cs)
MCMS:3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-802]
【0089】
合成例1
水分散シリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス(登録商標)O-40、平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%)20000gを限外ろ過法でメタノールによる水の置換を行った。ゾル中の水分量が0.5質量%に到達したところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾル1、20000gを得た。得られたメタノール分散シリカゾル1は、シリカ濃度40.6質量%、水分0.5質量%、粘度(20℃)5.4mPa・s、ナトリウムイオン(Na+) 2210ppm/SiO、硫酸イオン(SO 2-) 0.5ppm/SiOであった。
上記メタノール分散シリカゾル1の500gを1Lナスフラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換することにより、透明なDMIB分散シリカゾル1(シリカ濃度29.8質量%、粘度(20℃)11.5mPa・s、水分0.1質量%、Na+ 3010ppm/SiO、SO 2- 0.5ppm/SiO)を得た。
【0090】
合成例2
合成例1に記載のメタノール分散シリカゾル1の500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、MEK75g、HMDS17.1gを添加した後、液温を60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換することにより、透明なDMIB分散シリカゾル2(シリカ濃度28.9質量%、粘度(20℃)10.5mPa・s、水分0.2質量%、Na+ 3100ppm/SiO、SO 2- 0.5ppm/SiO)を得た。
【0091】
合成例3
合成例1に記載のメタノール分散シリカゾル1の500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、MCMS7.6gを添加した後、液温を
60℃で3時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換することにより、透明なDMIB分散シリカゾル3(シリカ濃度29.6質量%、粘度(20℃)13.6mPa・s、水分0.2質量%、Na+ 3030ppm/SiO、SO 2- 0.5ppm/SiO)を得た。
【0092】
合成例4
水分散シリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス(登録商標)O-40、平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%)20000gを100℃8時間加熱した。その後、陽イオン交換樹脂にてナトリウムを除去し、限外ろ過法でメタノールによる水の置換を行った。ゾル中の水分量が0.5質量%に到達したところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾル4、20000gを得た。その後、得られたメタノール分散シリカゾル4にメタノールを添加し、シリカ濃度40質量%、に調整した。なお、水分0.5質量%、粘度(20℃)2.8mPa・s、硫酸イオン(SO 2-) 3.0ppm/SiOであった。
上記メタノール分散シリカゾル4の100gを1Lナスフラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換した。その後、濃度を30質量%に調整した透明なDMIB分散シリカゾル4(Na+ 1400ppm/SiO、SO 2- 3.0ppm/SiO)を得た。
【0093】
合成比較例1
合成例1に記載の水分散シリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス(登録商標)O-40、平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%)1000gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、液面徐々に上昇させながらメタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾル5を1100g得た。得られたメタノール分散シリカゾル5は、シリカ濃度40.7質量%、水分2.1質量%、粘度2.2mPa・s、Na+ 2200ppm/SiO、SO 2- 413ppm/SiOであった。
上記メタノール分散シリカゾル5の500gを1Lナスフラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換することにより、透明なDMIB分散シリカゾル5(シリカ濃度29.8質量%、粘度(20℃)5.3mPa・s、水分0.4質量%、Na+ 3005ppm/SiO、SO 2- 477ppm/SiO)を得た。
【0094】
合成比較例2
合成比較例1に記載のメタノール分散シリカゾル5の500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、MEK75g、HMDS17.0gを添加した後、液温を60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度70℃で溶媒を蒸発留去させながらDMIBを供給し、ゾルの分散媒をDMIBに置換することにより、透明なDMIB分散シリカゾル6(シリカ濃度29.4質量%、粘度(20℃)4.6mPa・s、水分0.2質量%、Na+ 3045ppm/SiO、SO 2- 479ppm/SiO)を得た。
【0095】
ポリイミド(P1)の合成
窒素の注入口/排出口、メカニカルスターラー及び冷却器を取り付けた250mLの反応三口フラスコ内に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 25.6g(0
.08mol)を入れた。その後、GBL 173gを添加し、撹拌を開始した。ジアミンが溶媒中に完全に溶解した後、その後すぐに、撹拌したビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物 10.0g(4mmol)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物 7.84g(4mmol)及びGBL
43.4gを添加し、窒素下140℃に加熱した。その後、1-エチルピペリジン0.35gを溶液内に添加し、窒素下で7時間180℃に加熱した。最終的に加熱を停止し、反応溶液を10%まで希釈し、終夜撹拌を維持した。えられたポリイミド反応溶液をGBL:MeOH=50wt%:50wt%混合溶液2000g中に添加して30分間撹拌し、その後ポリイミド固体をろ過することによりポリイミドを精製した。そして該ポリイミド固体をMeOH2000g中で30分間撹拌し、ポリイミド固体をろ過した。このポリイミド固体の撹拌及びろ過の精製手順を3回繰り返した。ポリイミド中のMeOH残留物を150℃下の真空オーブンの8時間の乾燥により除去し、最終的に、乾燥した21.5gのポリイミド(P1)を得た。P1の収率は51%(Mw=310,000、Mn=144,300)であった。
【0096】
[実施例及び比較例の評価用ポリイミド自己支持膜の作製]
実施例1
DMIB分散シリカゾル1(2.5g)、可溶性ポリイミド樹脂(河村産業株式会社製、商品名:KPI-MX300F)1.7g、DMIB10.9gを混合し、ワニスを得た。得られたワニスを無アルカリガラスに塗布し120℃30分で焼成後、無アルカリガラスから自己支持膜を剥離し、200℃にて30分焼成して膜厚50μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
実施例2~3
DMIB分散シリカゾルを変更した事以外は、実施例1と同様の操作を行い、膜厚50μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
実施例4
DMIB分散シリカゾル4を用い、ポリイミドとしてポリイミド(P1)を用いた事以外は、実施例1と同様の操作を行い、膜厚20μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
比較例1
DMIB分散シリカゾル5を用いた事以外は、実施例1と同様の操作を行い、膜厚50μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
比較例2
DMIB分散シリカゾル6を用いた事以外は、実施例2と同様の操作を行い、膜厚50μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
比較例3
DMIB分散シリカゾル5を用いた事以外は、実施例4と同様の操作を行い、膜厚20μmの評価用ポリイミド自己支持膜を得た。
【0097】
[評価用ポリイミド自己支持膜の透明性評価]
作製したポリイミド自己支持膜の全光線透過率を濁度計(日本分光株式会社製、製品名:
NDH-5000、JIS K 7361-1:1997に準拠)を用いて測定した。サンプルが無い状態で校正を行った後、ポリイミド自己支持膜をサンプルホルダーにセットして測定を行い、得られた結果の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0098】
[評価用ポリイミド自己支持膜のヘイズ測定]
作製したポリイミド自己支持膜のヘイズを濁度計(日本分光株式会社製、製品名:NDH-5000、JIS K 7136:2000に準拠)を用いて測定した。サンプルが無い状態で校正を行った後、ポリイミド自己支持膜をサンプルホルダーにセットして測定を行い、得られた結果の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0099】
[評価用ポリイミド自己支持膜の黄色度測定]
作製したポリイミド自己支持膜の黄色度(Yellow Index:YI値)を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、製品名:UV-3600 Plus)を用いて測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、ポリイミド自己支持膜をサンプルホルダーにセットして、280~780nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。結果を表1に示す。
YI=100×(1.2985X-1.1335Z)/Y
ヘイズ及びYI値により、透明度が判断される。ヘイズが0.5以下、YI値が3.0以下の場合に、高透明であると判断される。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の結果から、実施例1乃至4の樹脂組成物から形成されたポリイミド自己支持膜は、全光線透過率が十分に高い他、ヘイズとYI値が十分に低く、高透明であった。一方、比較例1乃至3は、全光線透過率は高いものの、ヘイズとYI値が高く、透明性に劣る結果となった。