(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095727
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光源装置、計測装置、露光装置、および計測方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240703BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240703BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 501
G03F7/20 503
G03F7/20 504
H01L21/68 F
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059315
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2022514887の分割
【原出願日】2020-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 道雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 聡
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197AA06
2H197AA09
2H197BA07
2H197BA30
2H197CA03
2H197CA09
2H197CA10
2H197DC02
2H197DC06
2H197DC13
2H197EA14
2H197EA15
2H197EA17
2H197EA19
2H197EB23
2H197HA03
2H197HA04
5F131AA02
5F131BA11
5F131BA13
5F131CA18
5F131EA02
5F131EA27
5F131KA17
5F131KB07
5F131KB53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高精度な計測を行う。
【解決手段】光源装置は、第1波長の第1光Laを生成する第1発光部51aと、第2波長の第2光Lbを生成する第2発光部51bと、前記第1光及び前記第2光が入射する第1偏光ビームスプリッタと、前記第1偏光ビームスプリッタで反射された光の光路に配置される位相変調素子と、前記位相変調素子を介した光と、前記第1偏光ビームスプリッタを透過した光とが入射する第2偏光ビームスプリッタとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の第1光を生成する第1発光部と、
第2波長の第2光を生成する第2発光部と、
前記第1光及び前記第2光が入射する第1偏光ビームスプリッタと、
前記第1偏光ビームスプリッタで反射された光の光路に配置される位相変調素子と、
前記位相変調素子を介した光と、前記第1偏光ビームスプリッタを透過した光とが入射する第2偏光ビームスプリッタと
を備える光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記位相変調素子を第1位相変調素子とするとき、前記第2偏光ビームスプリッタを透過した光の光路に配置される第2位相変調素子をさらに備える
光源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光源装置において、
前記位相変調素子から射出される光の偏光状態を制御するための制御部をさらに備える
光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置において、
前記位相変調素子を第1位相変調素子とするとき、前記第2偏光ビームスプリッタを透過した光の光路に配置される第2位相変調素子をさらに備える
光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置において、
前記制御部は、前記第2位相変調素子から射出される光の偏光状態を制御する
光源装置。
【請求項6】
請求項3または5に記載の光源装置において、
前記第2偏光ビームスプリッタから前記第1光を射出するように、前記制御部によって前記偏光状態を制御する
光源装置。
【請求項7】
請求項3または5に記載の光源装置において、
前記第2偏光ビームスプリッタから前記第2光を射出するように、前記制御部によって前記偏光状態を制御する
光源装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第1発光部はLEDを備え、
前記第2発光部はレーザを備える
光源装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の光源装置からの光を物体面に位置する被計測物に対して照射する照明系と、
前記物体面と光学的に共役な共役面を形成する結像系と、
前記被計測物からの複数の回折光のうちの少なくとも一部を制限し、且つ前記複数の回折光のうち第1回折光と前記第1回折光とは異なる第2回折光とを通過させる回折光制限部と、
前記共役面に配置され、前記第1回折光と前記第2回折光とによって形成される周期的な明暗パターンを撮像する撮像部と、
を備える、計測装置。
【請求項10】
請求項9に記載の計測装置において、
前記第1発光部はLEDを備え、
前記第2発光部はレーザを備える
計測装置。
【請求項11】
請求項9に記載の計測装置において、
前記第1発光部からの前記第1光を前記被計測物に照射するとき、前記回折光制限部によって前記被計測物からの前記複数の回折光のうちの少なくとも一部を制限しない
計測装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11までのいずれか一項に記載の計測装置と、
前記被計測物を含む物体に露光光を照射する露光光学系と、
を備える露光装置。
【請求項13】
請求項9から請求項11までのいずれか一項に記載の計測装置を用いて、
周期構造を有するマークの位置を計測する
計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、計測装置、露光装置、および計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性基板上に明暗パターンを露光する露光技術においては、明暗パターンの露光に先立って感光性基板上に予め形成されている既存パターンの位置を計測し、既存パターンに位置整合させて、感光性基板上に明暗パターンを露光する。既存パターンの位置の計測には、既存パターンの中のアライメントマークの像を位置計測光学系により撮像することにより、既存パターンの位置を計測する方法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、光源装置は、第1波長の第1光を生成する第1発光部と、第2波長の第2光を生成する第2発光部と、前記第1光及び前記第2光が入射する第1偏光ビームスプリッタと、前記第1偏光ビームスプリッタで反射された光の光路に配置される位相変調素子と、前記位相変調素子を介した光と、前記第1偏光ビームスプリッタを透過した光とが入射する第2偏光ビームスプリッタとを備える。
第2の態様によると、計測装置は、第1の態様の光源装置からの光を物体面に位置する被計測物に対して照射する照明系と、前記物体面と光学的に共役な共役面を形成する結像系と、前記被計測物からの複数の回折光のうちの少なくとも一部を制限し、且つ前記複数の回折光のうち第1回折光と前記第1回折光とは異なる第2回折光とを通過させる回折光制限部と、前記共役面に配置され、前記第1回折光と前記第2回折光とによって形成される周期的な明暗パターンを撮像する撮像部と、を備える。
第3の態様によると、露光装置は、第2の態様の計測装置と、計測物を含む物体に露光光を照射する露光光学系と、を備える。
第4の態様によると、計測方法は、第2の態様の計測装置を用いて、周期構造を有するマークの位置を計測する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態の計測装置の構成を概略的に示す図。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、第1実施形態の計測装置に適した位置計測マークの一例を示す図。
図2(c)は、
図2(a)のマークの、計測装置の撮像部の撮像面に形成される像を示す図。
【
図3】第1実施形態の計測装置に適した位置計測マークの他の例を示す図。
【
図4】
図4(a)は、照明系内の照明開口変更部の一例を示す図。
図4(b)は、回折光制限部の一例を示す図。
【
図6】
図6(a)は、照明開口変更部に設けられた透過開口の大きさの一例を示す図。
図6(b)は、回折光制限部に設けられた選択開口の大きさの一例を示す図。
【
図7】
図7(a)は、計測装置の変形例1の照明開口絞りの例を示す図。
図7(b)は、計測装置の変形例1の回折光制限絞りの例を示す図。
【
図8】計測装置の変形例2の構成の一部を概略的に示す図。
【
図9】第2実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図。
【
図10】変形例にかかる位置計測マークの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において、「光学的に共役」とは、1つの面と他の1つの面とが光学系を介して結像関係になっていることをいう。
以下で参照する各図に矢印で示したX方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ直交する方向であるとともに、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれは各図において同一の方向を示している。
以下では、各矢印の示す方向を、それぞれ+X方向、+Y方向および+Z方向と呼ぶ。
また、X方向の位置をX位置、Y方向の位置をY位置、Z方向の位置をZ位置と呼ぶ。
【0007】
(第1実施形態の計測装置)
図1は、第1実施形態の計測装置1の構成を概略的に示す図である。試料台70は、計測対象であるシリコンウエハ等の被計測物Wの+Z側の面である表面WSが、結像系10の物体面OPと概ね一致するように被計測物Wを載置する。試料台70は、ガイド71によりX方向およびY方向に移動可能に支持されており、被計測物WもX方向およびY方向に移動可能である、被計測物WのX位置、Y位置は、試料台70に設けられているスケール板72の位置を介してエンコーダ61により計測され、位置信号S2として制御部60に伝達される。
【0008】
結像系10は、対物レンズ11、第1リレーレンズ12、第2リレーレンズ13、第3リレーレンズ14を有し、物体面OPに対して光学的に共役な共役面CPを形成する。共役面CPには、CMOSイメージセンサ等の撮像部19が、その撮像面19sが共役面CPと一致するように配置されている。
被計測物Wの表面WSには、位置計測の対象となる計測マークWMが形成されており、結像系10は、計測マークWMを含む被計測物Wの像を撮像部19の撮像面19sに結像する。
【0009】
結像系10は、第1リレーレンズ12と第2リレーレンズ13との間、すなわち被計測物Wが配置される物体面OPと共役面CPの間にも、被計測物Wの中間像が形成される中間結像面MPを有している。中間結像面MPには、透明基板から成る指標板15が設けられており、指標板15の一部には位置指標16が設けられている。
【0010】
位置指標16は、一例として長方形状の遮光膜が指標板15上に周期的に配置されたものである。結像系10の光路の中心に対してX方向の両側には遮光膜がX方向に周期的に配置された位置指標16が配置され、Y方向の両側には遮光膜がY方向に周期的に配置された位置指標16が配置されている。
【0011】
位置指標16は、結像系10内に設けられている不図示の指標照明系からの光で照明され、第2リレーレンズ13および第3リレーレンズ14により、位置指標16の像が共役面CPに形成される。撮像部19は、共役面CPに形成された計測マークWMの像とともに、位置指標16の像も撮像する。
【0012】
照明系20は、リレーレンズ21、22、24、照明開口変更部40、ミラー23、分岐ミラー25、および対物レンズ11を含み、光源部50から供給される照明光ILを、物体面OPに配置された、計測マークWMを含む被計測物Wの表面WSに照射する。このうち、対物レンズ11は、結像系10と照明系20との両方に含まれている。
【0013】
光源部50から供給される照明光ILは、照明系20を構成するリレーレンズ21を透過し、照明開口変更部40に含まれている照明開口絞り41aにより、その開口数が規定される。照明開口変更部40の詳細については後述する。
照明開口変更部40を通過した照明光ILは、リレーレンズ21、ミラー23およびリレーレンズ24を経た後、分岐ミラー25に至る。
【0014】
分岐ミラー25は、一例として、その面内の一部において光を反射し、他の部分において光を透過するミラーであり、例えば透明板の一部に反射膜が形成されているミラーである。
リレーレンズ24を透過した照明光は、分岐ミラー25により反射され、対物レンズ11を透過して計測マークWMを含む被計測物Wに照射される。
なお、
図1においては、対物レンズ11等の各レンズは1枚のみのレンズから成るように図示しているが、各レンズは複数のレンズから構成されてもよい。
【0015】
図2(a)は、被計測物Wの表面WSに形成されている、X方向の位置の計測に適した計測マークWMの一例を、+Z方向から見た図を示している。
図2(b)は、
図2(a)に示した計測マークWMを-Y方向から見た断面図を示している。
なお、Y方向の位置の計測に適した計測マークの一例は、この計測マークWMをXY面内で90°回転させたものである。
【0016】
計測マークWMは、一例として被計測物Wの表面WSに、段差を有する凹部MBと凸部MTとが、X方向に交互に周期的に形成されているマークである。1つの凹部MBは、各辺がX方向またはY方向に平行であってY方向に長い長方形であり、複数の凹部MBが、X方向に周期PXで周期的に形成されている。このため、計測マークWMは、X方向に周期構造を持った反射型の回折格子として機能する。なお、X方向に周期的に配置される凹部MBの個数は、2個以上の任意の個数で良い。
【0017】
図2(b)に示したように、計測マークWMを含む被計測物Wの表面WSは、フォトレジスト等を含む、透光性または半透光性の膜RSで覆われている。
凹部MBおよび凸部MTのX方向の幅は、一例として1~3μm程度であり、X方向の配列の周期PXは、一例として2~4μm程度である。
【0018】
計測マークWMは、設計上は被計測物W上の所定の位置に形成されている。しかしながら、半導体プロセス等により、シリコンウエハ等の被計測物Wは等方的あるいは非等方的な変形を受けるため、実際の計測マークWMの位置は、設計上の位置とは異なっている。
位置計測に際し、始めに制御部60は、エンコーダ61からの位置信号S2に基づいて制御信号S3を送信して試料台70を移動させ、計測マークWMの設計上の位置を、結像系10の計測基準位置に一致させる。
【0019】
これにより、照明光ILが被計測物Wに照射され、計測マークWMのX方向の周期構造により、
図1に示したように、計測マークWMから+1次回折光Dp1、-1次回折光Dm1、+2次回折光Dp2、-2次回折光Dm2等の複数の回折光が発生する。発生した回折光は、対物レンズ11に入射し、分岐ミラー25に導かれる。
【0020】
そして、複数の回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2)は、分岐ミラー25を透過して、結像系10内のいわゆる瞳面またはその近傍に設けられている回折光制限絞り31aに至る。従って、物体面OPに配置されている計測マークWMから異なる回折角度で発生した異なる次数の回折光は、回折光制限絞り31aにおいてそれぞれ異なる位置に集光する。なお、
図1に示した例では、計測マークWMから正反射光である0次回折光は、分岐ミラー25により遮光されるため、回折光制限絞り31aには到達しない。
【0021】
回折光制限絞り31aには、光を減衰させる減衰領域内の所定の次数の回折光が集光する位置に選択開口35aが設けられており、所定の次数の回折光を通過させ、他の次数の回折光を減衰する。ここで、他の次数の回折光は遮光されてもよい。また、選択開口35aの光通過率(光透過率)は100%でなくてもよい。選択開口35aの光通過率は減衰領域の光透過率より高ければよい。
図1に示した状態においては、選択開口35aは、X方向への+1次回折光Dp1、および-1次回折光Dm1を選択的に通過させ、他の次数の回折光(+1次回折光Dp2および-2次回折光Dm2等)を遮光する。回折光制限絞り31aを含む回折光制限部30の詳細については後述する。
【0022】
回折光制限絞り31aにより選択的に通過された+1次回折光Dp1、および-1次回折光Dm1は、第1リレーレンズ12により集光され、中間結像面MPに配置されている指標板15の近傍に、干渉縞としての計測マークWMの中間像を形成する。そして、+1次回折光Dp1、および-1次回折光Dm1は、第2リレーレンズ13および第3リレーレンズ14により集光され、撮像部19の撮像面に、干渉縞としての計測マークWMの像を形成する。
【0023】
図2(c)は、撮像面19sに形成された計測マークWMの像IMの強度分布の一例を示す図である。
図2(c)の示した強度分布のグラフの横軸は、撮像面19sにおけるX方向の位置を示し、縦軸は像IMの強度を示している。
また、計測マークWMの像IMの-X側および+X側には、指標板15上の位置指標16の像IIL、IIRの強度分布が示されている。
【0024】
図2(c)に示した計測マークWMの像IMは、
図2(a)および
図2(b)に示した計測マークWMに対して、結像系10の結像倍率(横倍率)だけX方向に拡大されたものである。ただし、以下では、理解を容易にするために、結像系10の横倍率が1倍であるものとして説明する。
なお、
図2(c)のX方向のスケールは、
図2(a)および
図2(b)のX方向のスケールとは一致していない点に留意されたい。
【0025】
計測マークWMの像IMは、計測マークWMからの+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1が干渉することにより形成される干渉縞である。従って、X方向に周期的な明暗パターンが1周期以上に渡って形成されるとともに、そのX方向の明暗の周期は計測マークWMのX方向の周期PXの1/2となる。尚、この明暗パターンを明暗像と称してもよい。
【0026】
撮像部19は、X方向に沿って計測マークWMの像IMの明暗の1周期以上の撮像範囲DAに渡って像IMを撮像し、撮像信号S1を制御部60に送信する。撮像範囲DAのX方向の範囲は、周期PXの1/2の整数倍、すなわち、n×PX/2(nは自然数)であっても良い。
【0027】
撮像部19または制御部60は、撮像範囲DA内において、像IMの撮像信号S1をY方向に積算しても良い。また、後述するように、計測マークWM等のY方向の位置を計測する場合には、撮像部19または制御部60は、撮像範囲DA内において、像IMの撮像信号S1をX方向に積算しても良い。
【0028】
撮像範囲DAのX方向の幅およびY方向の幅は、撮像部19または制御部60により可変に設定できるものであっても良い。撮像範囲DAのX方向の幅およびY方向の幅を変更することにより、種々の形状の計測マークWM、WMa、WMbの計測が可能になるとともに、計測マークWM、WMa、WMbの周囲に配置されている回路パターン等による悪影響を低減することができる。
【0029】
撮像部19は、同様に、位置指標16の像IIL、IIRについても撮像し、撮像信号S1を制御部60に送信する。
制御部60は、送信された撮像信号S1に基づいて、計測マークWMの実際の位置を計測する。
【0030】
上述したように、計測に際して計測マークWMは、その設計上の位置が結像系10の計測基準位置と一致するように配置されている。従って、計測マークWMの結像系10の計測基準位置からの位置ずれ量を計測し、計測マークWMの設計上の位置に、その位置ずれ量を加算することにより、計測マークWMの実際の位置を計測することができる。
【0031】
結像系10の計測基準位置とは、例えば、計測基準位置に配置された計測マークWM等の像が、撮像面19sにおいて、2つの位置指標16の像IIL、IIRの中間に形成される位置である。
制御部60は、2つの位置指標16の像IIL、IIRの例えば明暗変化のX方向の位相に基づいて、像IIL、IIRのX方向の位置をそれぞれ決定し、それらの中間位置である結像系10のX方向の計測基準位置を決定する。
【0032】
制御部60は、計測マークWMの像IMの例えば明暗変化のX方向の位相に基づいて、像IMのX方向の位置を決定し、上述の結像系10のX方向の計測基準位置からの位置ずれ量を算出する。そして、既知である計測マークWMの設計上のX位置に、その位置ずれ量を加算することにより、計測マークWMの実際のX位置を算出(計測)する。
【0033】
以上においては、計測マークWMのX位置の計測について説明したが、Y位置の計測についても同様に行うことができる。Y位置の計測に際しては、上述したように被計測物W上の、
図2(a)に示した計測マークWMがXY面内で90°回転された計測マークWMを計測する。この場合、撮像面19sにはY方向に沿って周期的に明暗変化する像が形成され、制御部60は、その像と位置指標16の像との位置関係、および計測マークWMの設計上のY位置に基づいて、計測マークWMの実際のY位置を算出(計測)する。
【0034】
なお、以上においては、計測マークWMの位置計測に際し、計測マークWMの設計上の位置を結像系10の計測基準位置に一致させて計測を行うとしたが、計測マークWMの設計上の位置を、結像系10の計測基準位置に完全には一致させなくても良い。この場合、
制御部60は、計測時における計測マークWMの設計上の位置の結像系10の計測基準位置からの位置ずれ量を、エンコーダ61からの位置信号S2により計測し、その位置ずれ量をさらに加算して計測マークWMの実際の位置を算出(計測)すれば良い。
【0035】
図3は、計測マークWMの他の例を示す図である。
図3(a)に示した計測マークWMaは、
図2(a)に示した計測マークWMに対し、X方向の中心近傍の数本の凹部MBをXY面内で90°回転したものに相当している。計測マークWMaのうちの-X側端部LXおよび+X側端部RXは、X方向の位置計測に適したX方向に延びる凹部MBaおよび凸部MTaを有している。一方、計測マークWMaのうちのX方向の中央部CYは、Y方向の位置計測に適したY方向に延びる凹部MBbおよび凸部MTbを有している。
【0036】
従って、計測装置1は、計測マークWMaのX方向の位置の計測、およびY方向の位置の計測を、共に行うことができる。
なお、中央部CYの凹部MBbおよび凸部MTbのY方向の配置の周期PYは、-X側端部LXおよび+X側端部RXの凹部MBaおよび凸部MTaのX方向の配置の周期PXと同一であっても良く、あるいは異なっていても良い。
中央部CYに含まれる凹部MBaの個数、-X側端部LXおよび+X側端部RXに含まれる凹部MBの個数は、それぞれ2個以上の任意の個数で良い。
【0037】
図3(b)に示した計測マークWMbは、2次元の格子状に形成された凹部MBcとそれに囲まれた凸部MTcとを含むマークである。凹部MBcが形成する2次元の格子はX方向の周期性とY方向の周期性とを共に含むため、計測装置1は、計測マークWMbのX方向の位置の計測、およびY方向の位置の計測を、共に行うことができる。
【0038】
なお、上述の各計測マークWM、WMa、WMbにおいて、1つの凹部MB、MBa、MBbが、例えば被計測方向に細分化されていても良い。
図3(c)は、細分化された1つの凹部MBの一例を示す図である。
図3(c)に示した1つの凹部MBは、その内部がX方向に細分化された複数の微小凹部MBSBと複数の微小凸部MBSTとで構成されている。
【0039】
Y方向の計測に適した凹部MBaを細分化する場合には、その内部はY方向に細分化されれば良い。
X方向、Y方向の両方に計測に適した凹部MBbを細分化する場合には、その内部はX方向に細分化されても良く、Y方向に細分化されても良く、あるいはX方向およびY方向に2次元的に細分化されても良い。
これらの場合、1つの微小凹部MBbのX方向(またはY方向)の幅は例えば、0.05~0.3μm程度であり、1つの凹部MBを構成する複数の微小凹部MBBのX方向(またはY方向)の配列の周期は0.1~0.5μm程度である。
【0040】
なお、1つの凹部MBではなく、1つの凸部MT、MTa、MTbが上述のように細分化されているマークであっても良い。
なお、計測マークWM、WMa、WMbは、上述の段差を有する形状に限られるわけではなく、凹部MB、MBa、MBbと凸部MT、MTa、MTbとの振幅反射率に違いがあるマークであれば良い。
【0041】
第1実施形態の計測装置1においては、以上で説明したような種々の計測マークWM、WMa、WMb(以下では総称して単に「計測マークWM」とも呼ぶ)の位置の計測に際し、それぞれの計測に適した回折光による像を撮像して位置計測を行う。
このために、第1実施形態の計測装置1は、計測マークWMから発生する複数の回折光のうちの少なくとも一部を減衰し、第1回折光(例えば+1次回折光Dp1)と第1回折光とは異なる第2回折光(例えば-1次回折光Dm1)とを通過させる、回折光制限部30を備えている。
【0042】
以下、
図1および
図4を参照して、回折光制限部30および照明系20に含まれる照明開口変更部40について説明する。
図4(b)は、回折光制限部30を+Z方向から見た図である。
図1および
図4(b)に示したように、回折光制限部30は、回折光制限絞り31a~31d、結像絞り保持部32、および選択切換部33を有している。結像絞り保持部32は、選択切換部33により回転中心CL2を中心として回動可能に保持されている。
【0043】
結像絞り保持部32は、一例として4個の回折光制限絞り31a~31dを保持し、それらの1つを結像系10の結像光路10P内に挿入する。
回折光制限絞り31a~31dには、それぞれ異なる形状を有する選択開口35a~35dが形成されている。回折光制限部30は、回折光制限絞り31a~31dのいずれかを結像光路10P内に挿入することにより、選択開口35a~35dを通過する回折光を選択することができる。
【0044】
図4(a)は、照明開口変更部40を+Z方向から見た図である。
図1および
図4(a)に示したように、照明開口変更部40は、照明開口絞り41a~41d、照明絞り保持部42、および照明切換部43を有している。照明絞り保持部42は、照明切換部43により回転中心CL1を中心として回動可能に保持されている。
【0045】
照明絞り保持部42は、一例として4個の照明開口絞り41a~41dを保持し、それらの1つを照明系20の照明光路20P内に挿入する。
照明開口絞り41a~41dには、それぞれ異なる形状を有する透過開口45a~45dが設けられている。照明開口変更部40は、照明開口絞り41a~41dのいずれかを照明光路20P内に挿入することにより、透過開口45a~45dを通過して被計測物Wに照射される照明光の開口数等の照明条件を選択することができる。
【0046】
なお、照明光の開口数とは、被計測物Wに照射される照明光の入射角度範囲の半角の正弦(sin)である。照明光の開口数を、対物レンズ11の開口数(NA)で割った値が、一般的にコヒーレンスファクタと呼ばれる値である。
【0047】
なお、照明開口絞り41a~41dは、物体面OPに対して、レンズ22、24、および対物レンズ11等による、いわゆる瞳面またはその近傍に配置されている。従って、照明開口絞り41a~41dの中のそれぞれの透過開口45a~45dを透過した照明光は、透過開口45a~45dの位置に応じた入射角度で物体面OPに配置されている計測マークWMに入射する。
【0048】
また、上述したとおり回折光制限絞り31a~31dは、結像系10内のいわゆる瞳面またはその近傍に設けられている。従って、照明光路20Pに挿入された照明開口絞り41a~41dと結像光路10Pに挿入された回折光制限絞り31a~31dとは、レンズ22、24、対物レンズ11、および物体面OPに配置された反射面としての被計測物Wを介して結像関係になっている。
【0049】
なお、回折光制限絞り31a~31dと照明開口絞り41a~41dとのX方向およびY方向の位置関係は、照明系20の中のレンズ22、24の結像作用により反転している。そこで、回折光制限絞り31a~31dと照明開口絞り41a~41dとの結像関係が理解し易いように、
図4(a)のX方向およびY方向を、図(b)に対して反転して(すなわち180°回転して)表示している。
【0050】
例えば、
図2(a)に示したX方向に周期性を有する計測マークWMを計測する場合、照明開口変更部40は、照明開口絞り41aを照明光路20Pに挿入し、回折光制限部30は回折光制限絞り31aを結像光路10P内に挿入する。この状態は
図4(a)および
図4(b)に示されている状態であり、照明開口絞り41aの中心41acが照明光路20Pの中心と一致するように配置され、回折光制限絞り31aの中心31acが結像光路10Pの中心と一致するように配置されている。
【0051】
照明開口絞り41aに設けられている透過開口45aは、X方向の幅が狭く、Y方向の幅がX方向の幅よりも広い。従って、計測マークWMに照射される照明光ILは、X方向には狭い入射角度度範囲で、Y方向には広い入射角度度範囲で入射される。
透過開口45aを透過した照明光ILの計測マークWMへのX方向の入射角度の範囲は、一例として、上述のコヒーレンスファクタとして0以上、かつ1/3以下である。
【0052】
照明光ILの照射により、計測マークWMからは、
図1に示したように、複数の回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2)が発生する。回折光制限部30の回折光制限絞り31aの選択開口35aは、そのうち+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1を通過させ、それ以外の回折光(Dm2、Dp2等)を遮光する。従って、撮像部19の撮像面19sには、計測マークWMのX方向の検出に適した+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1のみが到達し、計測マークWMの像IMを形成する。
【0053】
なお、2つの選択開口35aの回折光制限絞り31aの中心31acからのX方向の距離は、選択開口35aが計測マークWMからの+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1を通過させる位置となるように設定しておく。また、2つの選択開口35aのそれぞれのX方向の幅は、計測マークWMからの+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1が通過可能な幅に設定しておく。
【0054】
選択開口35aの回折光制限絞り31aの中心31acからの位置および幅についての上記の関係は、他の選択開口35b~35dの回折光制限絞り31b~31dの中心31bc~31dcからの距離および幅についても同様である。
【0055】
また、照明開口絞り41aの透過開口45aのX方向の幅に応じて、各次数の回折光は回折光制限絞り31aにおいてX方向に広がって分布する。従って、照明開口絞り41aの透過開口45aのX方向の幅は、回折光制限絞り31aにおいて+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1を他の次数の回折光から分離できる程度の幅に設定すると良い。
【0056】
なお、従来の計測装置では、+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1のみでなく、他の次数の回折光も含む像に基づいて計測マークの位置を計測している。そして各次数の回折光は結像系内の異なる位置を通るため、それぞれ異なる量の波面収差を結像系から受けることになる。この場合、例えば計測マークWMの形状が変動し、それにより各次数の回折光の強度の比が変動すると、結像系の波面収差の影響により計測マークWMの像IMが変形または変位し、位置計測結果に誤差が生じてしまう。
【0057】
第1実施形態の計測装置1では、回折光制限絞り31aにより複数の回折光のうち第1回折光(+1次回折光Dp1等)と第2回折光(-1次回折光Dm1等)とを選択的に通過させて計測マークWMの像IMを形成するため、結像系10の波面収差の影響を受けにくく、高精度な位置計測を行うことができる。
【0058】
また、計測マークWMの像IMが第1回折光と第2回折光とにより形成されるため、計測マークWMのZ方向の位置の変動(デフォーカス)が生じても像IMのコントラストが低下しにくく、深い焦点深度で計測マークWMを計測することができる。
【0059】
なお、
図2(a)に示した計測マークWMをXY面内で90°回転させた、Y方向の計測に適した計測マークWMを計測する場合には、照明開口絞り41cをその中心41ccが照明光路20Pの中心と一致するように照明光路20Pに挿入する。そして、回折光制限絞り31cをその中心31ccが結像光路10Pの中心と一致するように結像光路10Pに挿入する。
【0060】
照明開口絞り41cには、上述の照明開口絞り41aに設けられている透過開口45aをXY面内で90°回転した形状の透過開口45cが設けられている。また、回折光制限絞り31cには、上述の回折光制限絞り31aに設けられている選択開口35aをXY面内で90°回転した形状の選択開口35cが設けられている。
【0061】
よって、回折光制限絞り31cの選択開口35cは、Y方向の計測に適した計測マークWMからの+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1を通過させ、それ以外の回折光(Dm2、Dp2等)を遮光する。従って、撮像部19の撮像面19sには、計測マークWMのY方向の検出に適した+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1のみが到達し、計測マークWMの像IMを形成することになる。
【0062】
上記においては、X方向の計測に際してはY方向の幅が広い透過開口45aを有する照明開口絞り41aを使用し、Y方向の計測に際してはX方向の幅が広い透過開口45cを有する照明開口絞り41cを使用している。
ただし、X方向の計測およびY方向の計測のいずれにおいても、照明開口絞り41aおよび照明開口絞り41cに代えて、X方向の幅およびY方向の幅が共に狭い、後述する透過開口45bを有する照明開口絞り41bを使用しても良い。
【0063】
なお、上記のように照明開口絞り41aまたは照明開口絞り41cを使用することにより、照明光ILの光量を増大させることができ、像IMのS/Nが改善され、計測精度の向上が期待できる。
【0064】
図3(a)に示した計測マークWMaを計測する場合には、上述したX方向の計測とY方向の計測とを順次行っても良い。あるいは、照明開口絞り41bをその中心41bcが照明光路20Pの中心と一致するように照明光路20Pに挿入し、回折光制限絞り31bをその中心31bcが結像光路10Pの中心と一致するように結像光路10Pに挿入した状態で、X方向とY方向の計測とを同時に行っても良い。
【0065】
照明開口絞り41bの中心41bcの近傍には、X方向およびY方向の幅がいずれも狭い透過開口45bが設けられている。従って、計測マークWMaに照射される照明光ILは、X方向およびY方向に狭い入射角度度範囲で入射される。
透過開口45bを透過した照明光ILの計測マークWMへのX方向およびY方向の入射角度の範囲は、一例として、上述のコヒーレンスファクタとして0以上、かつ1/3以下である。
【0066】
回折光制限絞り31bには、その中心31bcから±X方向、および±Y方向に離れた位置に選択開口35bが設けられている。
この選択開口35bのうち、中心31bcから±X方向に離れた部分は、照明光ILの照射により計測マークWMaの-X側端部LXおよび+X側端部RXから発生する±X方向への+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1を通過させる。そして選択開口35bのうち、中心31bcから±Y方向に離れた部分は、照明光ILの照射により計測マークWMaの中央部CYから発生する±Y方向への+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1を通過させる。
【0067】
計測マークWMaから発生する回折光のうち、これらの回折光以外は、回折光制限絞り31bにより遮光される。
従って、照明開口絞り41bおよび回折光制限絞り31bを用いることにより、
図3(a)に示した計測マークWMaのX方向およびY方向の位置を高精度に計測することができる。
【0068】
なお、
図3(a)に示した計測マークWMaのX方向およびY方向を同時に計測する場合、照明開口絞り41dと回折光制限絞り31dとを用いて計測を行っても良い。すなわち、照明開口絞り41dをその中心41dcが照明光路20Pの中心と一致するように照明光路20Pに挿入し、回折光制限絞り31dをその中心31dcが結像光路10Pの中心と一致するように結像光路10Pに挿入した状態で、計測を行っても良い。
【0069】
この場合について、始めに、照明開口絞り41dに形成されている十字状の透過開口45dのうち、±Y方向の端部の近傍を透過した照明光ILについて説明する。この照明光ILが計測マークWMaの-X側端部LXおよび+X側端部RXに照射されることにより生じるX方向への+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1は、回折光制限絞り31dに設けられた4つの選択開口35dのいずれかを通過する。そして、X方向への他の次数の回折光、および計測マークWMaの中央部CYに照射された光により生じるY方向への回折光は、回折光制限絞り31dにより遮光される。
【0070】
次に、照明開口絞り41dに形成されている十字状の透過開口45dのうち、±X方向の端部の近傍を透過した照明光ILについて説明する。この照明光ILが計測マークWMaの中央部CYに照射されることにより生じるY方向への+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1は、回折光制限絞り31dに設けられた4つの選択開口35dのいずれかを通過する。そして、Y方向への他の次数の回折光、および計測マークWMaの-X側端部LXおよび+X側端部RXに照射された光により生じるY方向への回折光は、回折光制限絞り31dにより遮光される。
【0071】
従って、照明開口絞り41dと回折光制限絞り31dとを用いても、
図3(a)に示した計測マークWMaのX方向およびY方向の位置を高精度に計測することができる。
【0072】
図3(b)に示した計測マークWMbについても、上記と同様に、照明開口絞り41bおよび回折光制限絞り31bを用いて、または照明開口絞り41dと回折光制限絞り31dとを用いて、X方向およびY方向の位置を高精度に計測することができる。
なお、
図3(b)に示した計測マークWMbについても、上述したX方向の計測とY方向の計測とを順次行っても良い。
【0073】
なお、以上においては、回折光制限絞り31a~31dは、計測マークからの+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1とを選択的に通過させ、他の次数の回折光は遮光するものとしている。ただし、回折光制限絞り31a~31dが選択的に通過させる回折光は、例えば+2次回折光Dp2と-2次回折光Dm2や+3次回折光と-3次回折光(不図示)であっても良い。
【0074】
また、複数の回折光制限絞り31a~31dの中には、+1次回折光Dp1と-1次回折光Dm1とを選択的に通過させる絞りと、+2次回折光Dp2と-2次回折光Dm2とを選択的に通過させる絞りとが設けられており、これらを選択切換部33により切換えて結像光路10Pに挿入可能としても良い。
【0075】
また、回折光制限絞り31a~31dが通過させる2つの回折光は、自然数mに対して+m次回折光と-m次回折光のように次数の絶対値が等しい回折光のペアに限られるわけでなく、例えば+1次回折光Dp1と-2次回折光Dm2のように次数の絶対値が異なる回折光のペアであっても良い。また、そのうちの一方は0次回折光(正反射光)であっても良い。
【0076】
被計測物WがZ方向に上下しても計測マークWMの位置計測結果が変動しないという、いわゆるテレセン性の観点からは、回折光制限絞り31a~31dは計測方向と直交する面に対して対称に射出される2つの回折光を通過させてもよい。言い換えると、回折光制限絞り31a~31dは、それぞれの中心を通過し且つ計測方向と直交する軸に関して、それぞれの選択開口が線対称に設けられてもよい。
従って、照明光ILが被計測物Wに対して概ね垂直に入射される限りにおいては、いわゆるテレセン性の観点で、次数の絶対値が等しい回折光のペアを通過させ、撮像部19に結像させてもよい。
【0077】
一方、照明光ILが被計測物Wに対して垂直方向から所定の角度、例えば-1次回折光の回折角度の半分に相当する角度だけ傾けて入射される場合には、例えば、0次回折光(正反射光)と+1次回折光を選択的に通過させることが、テレセン性の観点では好ましい。
なお、上述の照明開口変更部40に含まれる照明切換部43は、照明絞り保持部42および照明開口絞り41a~41dの全体をX方向およびY方向に位置シフトすることにより、照明光ILの被計測物Wへの入射角度を変更することが可能であっても良い。
【0078】
図5は、計測装置1の光源部50の構成の一例を示す図である。一例の光源部50は、第1波長の第1光Laを発する第1発光部51aと、第2波長の第2光Lbを発する第2発光部51bとを有している。第1発光部51aおよび第2発光部51bは、レーザやLED等の自ら光を発する部材であっても良く、光ファイバーの射出端の外部から導入された光を射出する部材であっても良い。例えば、第1発光部51aをレーザとし、第2発光部51bをLEDとしても良い。
【0079】
第1光Laと第2光Lbとは、偏光ビームスプリッタ52により混合および分離される。第1光LaのうちのS偏光成分は偏光ビームスプリッタ52により反射され、また第2光LbのうちのP偏光成分は偏光ビームスプリッタ52を透過して、照明光L1となる。第1光LaのうちのP偏光成分は偏光ビームスプリッタ52を透過して、また第2光LbのうちのS偏光成分は偏光ビームスプリッタ52により反射され、照明光L2となる。
【0080】
照明光L1は、ミラー53により反射され、位相変調素子54aに入射する。照明光L2は、そのまま位相変調素子54bに入射する。
位相変調素子54a、54bは、例えば液晶素子であって、電圧制御部55a、55bから印加される電圧に応じて、いわゆる波長板として機能する素子である。すなわち、電圧制御部55a、55bから第1の電圧が印加されると0波長板(平板)として機能し、第2の電圧が印加されると1/2波長板として機能する。
【0081】
照明光L1およびL2は、それぞれ位相変調素子54a、54bにより、その偏光状態が制御され、照明光L3およびL4に変換される。
位相変調素子54aを通過した照明光L3は、偏光型のビームスプリッタ57に入射する。位相変調素子54bを通過した照明光L4は、ミラー56により反射されビームスプリッタ57に入射する。そして、照明光L3、L4は、ビームスプリッタ57により合成されて、照明光L5として光源部50から射出される。
【0082】
上述の一例の光源部50においては、複数の異なる波長の光を、同時に、あるいは別々に射出できるとともに、位相変調素子54a、54bの状態を変更することにより、射出される照明光L5の偏光状態を切り替えることができる。
第1発光部51aをレーザとする場合、上述した回折光制限絞りを用いるときには、第1照明光L1で計測マークWMを照射しても良い。回折光制限絞りによって結像光束のエタンデュが小さくなったとしても、結像光束の輝度が高いため、撮像面19sには十分な光量を確保することができる。一方、第2発光部51bをLEDとして第2照明光L2で計測マークWMを照射する場合、上述した回折光制限絞りを用いなくてもよい。この場合、照明NAが0.4程度で結像NAが0.5程度としても良い。
【0083】
なお、計測装置1の光源部50は、
図5に示した上述の光源に限られるものではなく、1つまたは複数の発光部と、必要に応じてそれらの発光部から射出される光を合成する合成部を有する光源であれば、どのような光源を使用しても良い。
光源部50は、3つ以上の異なる波長の光を発するものであっても良い。
【0084】
複数の波長の光を発する光源部50を用いる場合、計測マークWMからの各次数の回折光の回折角は、照明光ILの波長毎に異なった角度になる。従って、回折光制限絞り31a~31d上における各次数の回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2等)の位置も照明光ILの波長毎に異なる。このため、選択開口35a~35dにより複数の波長の光の所定の次数の回折光を選択的に通過させるためには、選択開口35a~35dの計測方向の幅を使用する複数の波長の波長幅に応じて拡大する必要がある。
【0085】
図6(a)は、複数の波長の光を発する光源部50を用いる場合の照明開口絞り41aに設けられた透過開口45aの大きさの一例を示す図であり、
図6(b)は、回折光制限絞り31aに設けられた選択開口35aの大きさの一例を示す図である。
ここで、光源部50は、波長がλ1である最小波長から波長がλ2である最大波長までの波長の光を発するものとし、また、
図2(a)に示したようにX方向の周期PXを有する計測マークWMを計測するものとする。
【0086】
なお、照明開口絞り41aは照明系20の瞳面またはその近傍に設けられ、回折光制限絞り31aは結像系10の瞳面またはその近傍に設けられている。そこで、
図6(a)、
図6(b)では、各図中のXY座標を、照明光ILの被計測物Wへの入射角の正弦、または回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2等)の被計測物Wからの射出角の正弦に相当するものとして説明する。
【0087】
図6(a)に示したとおり、透過開口45aのX方向の片幅をiNAとし、透過開口45aのX方向の全幅を2×iNAとしている。なお、透過開口45aのX方向の中心位置は、照明開口絞り41aの中心41acと一致している。
【0088】
図6(b)に示したとおり、回折光制限絞り31aには、回折光制限絞り31aのX方向の中心31acから+X方向および-X方向にそれぞれDXだけ離れた位置に選択開口35aが配置されている。ここで、DXの値は(λ1+λ2)/(2×PX)であり、周期PXを有する計測マークWMに、上述の最小波長(λ1)と最大波長(λ2)の概ね中間の波長を有する光が照射された際に生じる±1次回折光の回折角の正弦に相当する。
【0089】
そして、選択開口35aのそれぞれのX方向の幅をSXとし、SXは、式(1)を満たすものとしても良い。
SX < (3×λ1-λ2)/PX-2×iNA ・・・(1)
これにより、選択開口35aは、最小波長(λ1)から最大波長(λ2)までの照明光ILの+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1を通過させ、撮像部19に導くことができる。一方、回折光制限絞り31aは、他の次数の回折光(Dm2、Dp2等)を遮光する。
【0090】
なお、この場合においても、選択開口35aは、+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1を選択的に通過させる代わりに、+m次回折光および-m次回折光等の他の次数の2つの回折光を選択的に通過させても良い。この場合には、SXは、式(1)に代えて、式(2)の条件を満たせばよい。
SX < (m+2)×λ1―-m×λ2)/PX-2×iNA ・・・(2)
【0091】
なお、最小波長(λ1)と最大波長(λ2)が大きく異なる場合には、上述の方法では、選択開口35aが+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1のみを選択的に通過させることは難しくなる。
ただし、λ1<λ2≦2×λ1程度の範囲であれば、上述のX方向に拡張した選択開口35aにより+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1のみを選択的に通過させることができる。
【0092】
なお、例えば偶数次の回折光の強度が奇数次の回折光に比べて十分に小さくなるように計測マークWMの形状を設定している場合には、上述のX方向に拡張した選択開口35aにより、λ1<λ2≦3×λ1程度の範囲まで所望の2つの次数の回折光を選択的に通過させることができる。
【0093】
なお、Y方向の計測を行う場合には、
図6(a)および
図6(b)に示した照明開口絞り41aおよび回折光制限絞り31aを、それぞれXY面内で90°回転したものを使用すればよい。
【0094】
なお、以上の例においては、回折光制限部30は、それぞれ異なる形状の選択開口35a~35dを有する複数の回折光制限絞り31a~31dを備え、選択切換部33によりこれらを選択して結像光路10Pに挿入するものとしている。しかし、回折光制限部30の構成はこれに限られるものではなく、例えば、複数の可動ブレードを有し、選択切換部33がそれぞれの可動ブレードの位置を移動させることにより、選択開口の位置および形状を変更可能な構成であっても良い。
【0095】
照明開口変更部40についても同様に、例えば、複数の可動ブレードを有し、照明切換部43がそれぞれの可動ブレードの位置を移動させることにより、透過開口の位置および形状が変更可能な構成であっても良い。
また、照明開口絞り41a~41dを用いて照明光ILの一部を遮光する代わりに、透過開口45a~45dに相当する位置に照明光ILを集光させるような光学部材を用いても良い。
なお、照明開口変更部40を、回折光通過部ということもできる。
【0096】
なお、上記においては、結像系10は中間結像面MPを有し、中間結像面MPには指標板15が配置されているものとした。しかし、結像系10の機械的な剛性や温度安定性が良好である場合には、上述の結像系10の計測基準位置として、例えば撮像部19の所定の撮像画素を使用することができるので、指標板15は必ずしも配置されなくても良い。従って、指標板15を配置するための中間結像面MPも形成されなくても良い。
【0097】
なお、中間結像面MPに、位置指標16を設けた指標板15を配置することにより、結像系10に機械的または温度的な変形が生じた場合であっても、高精度に計測マークWMの位置を計測できるという効果がある。
【0098】
(第1実施形態の計測装置の効果)
(1)以上の第1実施形態の計測装置は、物体面OPに位置する被計測物Wに対して光(照明光IL)を照射する照明系20と、物体面OPと光学的に共役な共役面CPを形成する結像系10、10a、10bと、被計測物Wからの複数の回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2等)のうちの少なくとも一部を制限し、且つ複数の回折光のうち第1回折光+1次回折光Dp1等)と第1回折光とは異なる第2回折光(-1次回折光Dm1等)とを通過させる回折光制限部30と、共役面CPに配置され、第1回折光と前記第2回折光とによって形成される周期的な明暗パターン(像IM)を撮像する撮像部19と、を備える。
この構成により、結像系10、10a、10bの波面収差の影響を受けにくく、高精度な位置計測を行うことができる。
【0099】
(計測装置の変形例1)
計測装置の変形例1においては、複数の波長の光を発する光源部50を用いるとともに、
図4(b)に示した回折光制限絞り31a~31dの少なくとも一部に代えて、
図7(b)に示した回折光制限絞り31eを用いる。また、
図4(a)に示した照明開口絞り41a~41dの少なくとも一部に代えて、
図7(a)に示した照明開口絞り41eを用いる。
【0100】
計測装置の変形例1においても、回折光制限絞りeおよび照明開口絞り41e以外の構成については、上述の第1実施形態の計測装置1と同様であるので、同様な構成についての説明は省略する。
【0101】
図7(a)に示した照明開口絞り41eには、中心45ecの近傍に透過開口45f、中心45ecから-Y方向に離れた位置に透過開口45e、および中心45ecから+Y方向に離れた位置に透過開口45gが、それぞれ設けられている。
【0102】
透過開口45fは、照明光ILに含まれる光のうちの第1波長の光を透過させる。透過開口45eは、照明光ILに含まれる光のうちの第1波長より波長の短い第2波長の光を透過させる。そして、透過開口45gは、照明光ILに含まれる光のうちの第1波長より波長の長い第3波長の光を透過させる。
【0103】
透過開口45e、45f、45gのいずれかを透過した照明光ILは、レンズ22、24、ミラー23、および分岐ミラー25に導かれて、計測マークWMに照射される。透過開口45fを透過した第1波長の光は概ね垂直上方から計測マークWMに入射する。上述したレンズ22、24の結像作用により、透過開口45eを透過した第2波長の光は、垂直上方に対して-Y方向に傾いた方向から計測マークWMに入射する。また、透過開口45gを透過した第2波長の光は、垂直上方に対して+Y方向に傾いた方向から計測マークWMに入射する。
【0104】
異なる波長を有する複数の照明光ILの計測マークWMへのY方向の入射角度をそれぞれずらすことにより、計測マークWMから発生する回折光の射出角度も波長に応じてずれたものとなる。これにより、回折光制限絞り31eにおいて各次数の回折光が集光する位置を、波長毎にY方向にずらすことができる。
【0105】
そこで、
図7(b)に示した回折光制限絞り31eでは、Y方向のそれぞれ異なる位置に、それぞれX方向に対となって配置される選択開口35e、35f、35gが設けられている。2つの選択開口35eのX方向の間隔は2つの選択開口35fのX方向の間隔より短く、2つの選択開口35gのX方向の間隔は2つの選択開口35fのX方向の間隔より長い。
【0106】
図2(a)に示した計測マークWMを計測する場合、透過開口45fを透過した第1波長の照明光ILは計測マークWMに概ね垂直に入射し、その+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1は回折光制限絞り31eの選択開口35fを通過して撮像部19に至る。
【0107】
透過開口45eを透過した第2波長の照明光ILは-Y方向に傾いた方向から計測マークWMに入射し、その+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1は回折光制限絞り31eの選択開口35eを通過して撮像部19に至る。
透過開口45gを透過した第3波長の照明光ILは+Y方向に傾いた方向から計測マークWMに入射し、その+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1は回折光制限絞り31eの選択開口35gを通過して撮像部19に至る。
【0108】
従って、計測装置の変形例1においては、回折光制限絞り31eおよび照明開口絞り41eを用いることにより、複数の波長の光を発する光源部50を用いた場合にも、計測マークWMからの+1次回折光Dp1と--1次回折光Dm1を選択的に通過させることができる。これにより、撮像部19に計測マークWMの良好な像を形成させることができる。光源部50は、上述の複数の異なる波長の光(第1波長の光~第3波長の光)を同時に射出しても良い。
【0109】
あるいは、所定時間毎に射出する光の波長を異ならせても良い。すなわち、第1期間には第1波長の光を照射し、第1期間とは異なる第2期間に第2波長の光を照射しても良い。この場合には、撮像部19は、上述の第1期間と第2期間とにそれぞれ撮像を行うことにより、計測マークWMの像を異なる波長毎に別々に撮像することができる。従って、計測マークWMの位置を異なる波長毎に別々に計測し、それらの計測結果に平均化等の統計処理を施すことにより、より高精度な計測を行うことができる。
また、中間結像面MPの位置で、非計測方向に分光しても良い。
【0110】
なお、
図2(a)に示した計測マークWMをXY面内で90°回転させたY方向の計測に適したマークのY位置を計測する場合には、上述の回折光制限絞り31eおよび照明開口絞り41eをそれぞれ90°回転した形状の回折光制限絞りおよび照明開口絞りを使用すれば良い。
【0111】
(計測装置の変形例1の効果)
(2)以上の計測装置の変形例1は、物体面OPに位置する被計測物Wに対して複数の波長の光を照射する照明系20と、物体面OPと光学的に共役な共役面CPを形成する結像系10と、被計測物Wからの複数の回折光(Dm2、Dm1、Dp1、Dp2等)のうち、第1回折光(+1次回折光Dp1等)と第1回折光とは異なる第2回折光(-1次回折光Dm1等)とを通過させる回折光通過部(回折光制限部30)と、共役面CPに配置され、回折光通過部を通過した複数の波長の光によって形成される被計測物Wの明暗パターン(像IM)を撮像する撮像部19とを備えている。
この構成により、上述の第1実施形態の計測装置1と同様な効果を有するとともに、複数の波長の光を用いることにより、より高精度な計測ができるという効果を有している。例えば、計測マークの凹凸の段差に起因して、ある波長では計測マークの像コントラストが良好であるが別の波長では計測マークの像コントラストが弱くなるような場合に有効である。
【0112】
(計測装置の変形例2)
以下、計測装置1の変形例2について説明する。計測装置1の変形例2の構成は、上述の第1実施形態の計測装置1または変形例1の構成とほとんど共通するので、以下では第1実施形態の計測装置1または変形例1との相違点についてのみ説明し、共通部分については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0113】
図8は、変形例2の計測装置1のうち、上述の第1実施形態の計測装置1の指標板15以降の結像系10に対応する部分を概略的に示す図である。変形例2においては、第2リレーレンズ13と第3リレーレンズ14aとの間に、ビームスプリッタ17が配置されている。従って、+1次回折光Dp1および-1次回折光Dm1等の回折光は、ビームスプリッタ17によりそれぞれ2つに分割される。
【0114】
分割された回折光の一方(Dp1a、Dm1a)はビームスプリッタ17を直進して、第3リレーレンズ14aにより集光されて、第1撮像部19aの撮像面19as上に、計測マークWMの像IMを形成する。分割された回折光の他方(Dp1b、Dm1b)はビームスプリッタ17により反射され、第3リレーレンズ14bにより集光されて、第2撮像部19bの撮像面19bs上に、計測マークWMの像IMを形成する。
【0115】
対物レンズ11(
図1参照)から指標板15およびビームスプリッタ17等を経て第3リレーレンズ14aに至る光学系は1つの結像系10aを構成している。同様に、対物レンズ11から指標板15およびビームスプリッタ17を経て第3リレーレンズ14bに至る光学系は別の結像系10bを構成している。すなわち、変形例2の計測装置1は、複数の結像系10a、10bを有している。
【0116】
第1撮像部19aの撮像面19asは、結像系10aの物体面OPに対する共役面CPaの近傍に配置されている。第2撮像部19bの撮像面19bsは、結像系10bの物体面OPに対する共役面CPbの近傍に配置されている。
【0117】
ただし、撮像面19asの共役面CPaに対するZ方向の位置ずれ量は、撮像面19bsの共役面CPbに対するX方向の位置ずれ量とは、異なっている。
換言すれば、共役面CPaに対する第1撮像部19aの撮像面19asの共役面CPaと交差する方向の相対位置は、共役面CPbに対する第2撮像部19bの撮像面19bsの共役面CPbと交差する方向の相対位置とは異なっている。
【0118】
従って、変形例2の計測装置1においては、一例として、撮像面19asに形成される像は、物体面OPおよび物体面OPから-Z方向にずれた位置に配置される計測マークWMに対して良好なコントラストとなる。一方、撮像面19bsに形成される像は、物体面OPおよび物体面OPから+Z方向にずれた位置に配置される計測マークWMに対して良好なコントラストとなる。
【0119】
この結果、計測マークWMが物体面OPから±Z方向にずれて配置されていても、複数の結像系10a、10bのいずれかにより計測マークWMの良好な像を検出し、その結果、計測マークWMを精度良く計測することが可能となる。
【0120】
以上では、2つの結像系10a、10bを備える例を説明したが、複数のビームスプリッタ17を直列に配置するなどにより、3つの結像系を備えていても良い。
また、複数の結像系10a、10bの光路を分岐させるビームスプリッタ17が配置される位置は、上述の第2リレーレンズ13と第3リレーレンズ14との間に限られるわけではない。光路を分岐させるビームスプリッタ17は、例えば指標板15よりも対物レンズ11側に配置されていても良く、回折光制限部30よりも対物レンズ11側に配置されていても良い。これらの場合には、指標板15または回折光制限部30を、複数の結像系10a、10bのそれぞれに配置すれば良い。
【0121】
(第2実施形態の露光装置)
図9は、第2実施形態の露光装置2の概略を示す図である。第2実施形態の露光装置2は、半導体ウエハまたは表示デバイス用の基板(以下、合わせて「基板」と呼ぶ)WFの表面(+Z側面)上に形成されたフォトレジスト(不図示)に、明暗パターンを露光転写するための露光装置である。
【0122】
露光装置2は、上述の第1実施形態または変形例の計測装置1の一部を計測装置1aとして備えている。計測装置1aは、第1実施形態または変形例の計測装置1のうち、結像系10、照明系20、回折光制限部30、撮像部19および光源部50を含む部分である。なお、露光装置2のうち、制御部60、試料台70、ガイド71、スケール板72、エンコーダ61の構成および機能は、第1実施形態または変形例の計測装置1に含まれているそれらの構成および機能と同様であるので、説明を適宜省略する。
計測装置1は、基板WFを上述の被計測物Wとして扱い、基板WFの表面に形成されている計測マークWM(
図1参照。
図9には不図示)の位置を計測する。
【0123】
露光装置2に搬入された基板WFは、ガイド71上で可動な試料台70上に載置され、試料台70の移動により計測装置1aの下方に配置される。制御部60は、制御信号S3を送り試料台70をXY面内で移動させ、基板WFの表面の複数箇所に配置されている計測マークWMを、順次、計測装置1aの結像系10の直下に配置し、上述した手法により計測マークWMの位置を計測する。
【0124】
制御部60は、既知である計測マークWMと既存回路パターンとの位置関係、および計測装置1aにより計測された計測マークWMの位置に関する情報に基づいて、基板WF上の既存回路パターンのX位置およびY位置に関するマップデータを作成する。
【0125】
続いて、制御部60は、基板WFが露光光学系80の下に配置されるように、試料台70をXY面内で移動させ、基板WFの表面に形成されているフォトレジスト(不図示)への露光を行う。露光は、いわゆるステップ露光であっても良く、スキャン露光であっても良い。
【0126】
露光中の試料台70のX位置およびY位置は、試料台70に設けられているスケール板72の位置を介して、露光光学系80と一体的に保持されているエンコーダ61aにより計測され、位置信号S2aとして制御部60に伝達される。制御部60は、位置信号S2aおよび上述のマップデータに基づいて、試料台70のX位置およびY位置を制御する。
【0127】
上述の露光動作においては、マスク83上に描画されている原版(マスクパターン)に露光光源81からの照明光が、露光照明系82を介して照射される。その結果、露光光路AXP上に配置されている露光光学系80を介して、原版の像が基板WF上のフォトレジスト(不図示)に投影され、フォトレジストに明暗パターンが露光される。
【0128】
露光動作がスキャン露光の場合には、露光動作中に、マスク83と基板WFは同期して露光光学系80に対して相対走査する。この走査のために、マスク83はマスクステージ84上に載置され、マスクステージ84はマスク定盤85上をX方向に移動可能となっている。マスクステージ84の位置は、基準ミラー86の位置を介して、干渉計87により計測される。
露光動作がステップ露光の場合には、1ショットの露光中には試料台70は静止され、各ショットの間に試料台70はX方向またはY方向に所定距離だけ移動する。
【0129】
露光光学系80は、露光光学系80と基板WFの間に液体が配置される、いわゆる液浸用の光学系であっても良い。または、露光装置2は、光または紫外線により露光を行う装置に限らず、電子線またはX線により露光を行う装置であっても良い。
露光装置2は、計測装置1aを複数備え、基板WF上の複数の計測マークWMを同時に計測可能であっても良い。
【0130】
(第2実施形態の露光装置の効果)
(3)第2実施形態の露光装置2は、上述の第1実施形態、変形例1または変形例2の計測装置と、被計測物W(基板WF)を含む物体に露光光を照射する露光光学系80と、を備えている。
この構成により、基板WF上に形成されている計測マークWMの位置を高精度に計測することができ、従って、基板WF上に形成されている既存の回路パターンに対して、高精度に位置を整合させて、明暗パターンを露光することができる。
【0131】
(その他変型例)
上述した説明では、
図2(b)に示したように、被計測物Wの表面WSが膜RSで直接覆われている。しかしながら、
図10に示すように、被計測物Wの計測マークWMの凹部MBに第1の種類の媒質ML1が埋め込まれており、その上を第1の種類とは異なる第2の種類の媒質ML2が覆っており、その第2の種類の媒質ML2の上に膜RSが形成されている構成であっても良い。ここで、第2の種類の媒質ML2の膜厚がプロセスによって変化する可能性がある。撮像面19s上に形成される計測マークWMの像のコントラストは、この媒質ML2の膜厚の変化によって変わってくる。この場合、計測マークWMの像のコントラストが良好となる波長域の照明光を用いて、マーク計測を行えば良い。
【0132】
本発明は以上の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。本実施形態は、上記した態様の全て又は一部を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1,1a:計測装置、10,10a,10b:結像系、11:対物レンズ、15:指標板、16:位置指標、19:撮像部、OP:物体面、CP:共役面、MP:中間結像面、20:照明系、40:照明開口変更部、41a~41e:照明開口絞り、30:回折光制限部、31a~31e:回折光制限絞り、33:選択切換部、50:光源部、60:制御部、W:被計測物W、WM,WMa,WMb:計測マーク、2:露光装置、80:露光光学系、81:露光光源、82:露光照明系