(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095857
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】自動分析装置およびプローブ位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
G01N35/10 F
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212810
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西墻 憲一
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 孝伸
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED03
2G058ED35
2G058FB06
2G058FB07
2G058FB12
2G058FB13
2G058FB21
2G058GB10
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】プローブの表面状態に依存することなく、あるいは電磁ノイズや洗浄水の導電性などの物性に依存することなく、プローブと洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出することができる自動分析装置及びプローブ位置検出方法を提供する。
【解決手段】プローブにより液体の吸引及び吐出を行う分注機構と、前記分注機構に前記液体の吸引及び吐出を行わせるシリンジと、前記分注機構と前記シリンジとを接続する流路と、前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、洗浄水を吐出し、前記洗浄水により前記プローブの外壁を洗浄する洗浄機構と、前記プローブが前記洗浄水を通過する際に前記洗浄水を吸引するように、吸引中の前記プローブを移動させるプローブ駆動部と、吸引中の前記プローブが前記洗浄水を一方向に通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブにより液体の吸引及び吐出を行う分注機構と、
前記分注機構に前記液体の吸引及び吐出を行わせるシリンジと、
前記分注機構と前記シリンジとを接続する流路と、
前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、
洗浄水を吐出し、前記洗浄水により前記プローブの外壁を洗浄する洗浄機構と、
前記プローブが前記洗浄水を通過する際に前記洗浄水を吸引するように、吸引中の前記プローブを移動させるプローブ駆動部と、
吸引中の前記プローブが前記洗浄水を一方向に通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する制御部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記流路内の圧力のトレンドの減少開始時刻と、前記流路内の圧力のトレンドの増加開始時刻とに基づいて前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記プローブ駆動部は、前記洗浄水を通過した前記プローブの移動開始位置から移動終了位置までの経路を往路としたときに、前記往路を逆方向に進む経路である復路に沿って吸引中の前記プローブを移動させ、
前記制御部は、吸引中の前記プローブが前記往路及び前記復路のそれぞれにおいて前記洗浄水を通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記相対的な位置関係の異常として、前記プローブと前記洗浄水との水平方向の位置関係の異常、及び前記プローブと前記洗浄水との鉛直方向の位置関係の異常を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、基準時刻から前記流路内の圧力のトレンドの減少開始時刻までの時間を前記プローブが前記洗浄水に進入した通過開始時間とし、前記基準時刻から前記流路内の圧力のトレンドの増加開始時刻までの時間を前記プローブが前記洗浄水を通過した通過完了時間としたときに、前記通過開始時間と前記通過完了時間との平均値に基づいて前記水平方向の位置関係の異常を検出し、前記通過開始時間と前記通過完了時間との差分に基づいて前記鉛直方向の位置関係の異常を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記洗浄機構は、前記プローブが前記洗浄水に進入した直後に前記洗浄水の吐出を停止し、前記プローブが前記洗浄水の流路を通過し終える直前に前記洗浄水の吐出を再開する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記プローブは、先端に取り外し可能なチップが取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常がある場合に、前記相対的な位置関係に異常がある旨のアラームを表示する表示部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記プローブ駆動部は、前記制御部が前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出したときに、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係が正常となるように前記プローブの位置を修正する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記プローブによる吸引の開始から100ミリ秒以上後に、前記プローブが前記洗浄水に進入する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項11】
プローブが洗浄水を通過する際に前記洗浄水を吸引するように、吸引中の前記プローブを移動させる移動工程と、
前記プローブによって吸引された前記洗浄水が流れる流路内の圧力を測定する測定工程と、
吸引中の前記プローブが前記洗浄水を一方向に通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する検出工程と、
を備えることを特徴とするプローブ位置検出方法。
【請求項12】
前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出した場合に、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係を修正する修正工程
をさらに備えることを特徴とする請求項11にプローブ位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置及びプローブ位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分析装置や免疫分析装置などの自動分析装置では、分注に際して、同一のプローブで異なる検体あるいは試薬を検査するため、プローブの内部および外部を洗浄して、検体や試薬の成分を次の分析に持ち越さないようにする必要がある。プローブの内部を洗浄する場合は、洗浄用の洗剤を吸引吐出する、あるいは洗浄水を吐出する、などの方式が用いられる。一方で、プローブの外部を洗浄する場合は、洗浄用の洗剤にプローブを浸漬する、プローブの外部を洗浄水で洗い流す、などの方式が用いられる。
【0003】
プローブの外部を洗浄水で適切かつ効率良く洗浄するためには、プローブの外部の洗浄の状態を監視することが重要となる。
【0004】
プローブの外部の洗浄の状態を監視する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、段落0022に「分注が終了すると、試料分注プローブ15の外壁部分は、洗浄位置において洗浄部20により洗浄される。この洗浄動作は、試料分注プローブ15を上下方向に移動させつつ洗浄水Wを噴き付けることにより実行される」ことが記載されている。
【0005】
そして、段落0042に「信号出力部71は、試料分注プローブ15(洗浄対象域WS)に対する洗浄水Wの噴き付け状態に応じた信号を出力する。・・・信号出力部71は、センサ18及び信号処理部74を含む」こと、段落0049に「センサ18は、試料分注プローブ15に対する洗浄水Wの噴きつけ状態に応じて電気的特性が変化する信号を生成する。・・・センサ18は、例えば、導電検知式のセンサによって構成される」こと、同段落に「センサ18は、試料分注プローブ15に対する洗浄水Wの噴きつけの有無により信号がオン/オフするパルス信号を生成することができる」こと、段落0050に「センサ18は、例えば静電容量検知式のセンサによって構成されてもよい」こと、段落0054に「信号処理部74は、センサ18から出力された信号に基づいて処理することで、試料分注プローブ15に対する洗浄水Wの噴き付け状態に応じた信号を生成する」こと、段落0090に「信号処理部74は、洗浄対象域WSにおける洗浄水Wの噴きつけ面積(接触面積)に応じてパルス幅が異なるパルス信号を生成する」こと、段落0093に「状態判定部73は、信号出力部71から受けたパルス信号のパルス幅に基づき洗浄状態の適否を判定する」ことが記載されている。
【0006】
また、
図5及び段落0066に「異なる位置に停止した試料分注プローブ15として試料分注プローブ15C、15L、及び15Rが示されている」こと、
図6及び
図8並びに段落0077に「試料分注プローブ15Lの外壁部分に洗浄水Wが実効的に噴きつけられる面WRは洗浄対象域WSのうちの右側の一部分となる。そのため、試料分注プローブ15Lには、洗浄対象域WSの右側の一部分にしか洗浄水Wを噴きつけることができない。このことは、試料分注プローブ15Rにおいても同様であって、試料分注プローブ15Rの外壁部分に洗浄水Wが実効的に噴きつけられる面は洗浄対象域WSのうちの左側の一部分となる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、洗浄水Wの噴きつけ面積(接触面積)は、プローブと洗浄水Wとの位置関係によって変化するものであることから、特許文献1では、実質的には、プローブと洗浄水との位置関係に応じてパルス幅が異なるパルス信号を導電検知式や静電容量検知式のセンサにより生成し、生成したパルス信号のパルス幅でプローブの外壁の洗浄状態を判定している。要するに、特許文献1では、導電検知式や静電容量検知式のセンサを使用してプローブと洗浄水との位置関係の異常を検出している。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、導電検知式や静電容量検知式のセンサを使用しているため、プローブ表面が結露などにより意図せず濡れている場合などに、プローブと洗浄水との位置関係の異常を検出できない可能性がある。あるいは、電磁ノイズが多い場合や洗浄水の導電性が低いなどの場合には、プローブと洗浄水との位置関係の異常を検出できない可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、プローブの表面状態に依存することなく、あるいは電磁ノイズや洗浄水の導電性などの物性に依存することなく、プローブと洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出することができる自動分析装置及びプローブ位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る自動分析装置は、例えば、プローブにより液体の吸引及び吐出を行う分注機構と、前記分注機構に前記液体の吸引及び吐出を行わせるシリンジと、前記分注機構と前記シリンジとを接続する流路と、前記流路内の圧力を測定する圧力センサと、洗浄水を吐出し、前記洗浄水により前記プローブの外壁を洗浄する洗浄機構と、前記プローブが前記洗浄水を通過する際に前記洗浄水を吸引するように、吸引中の前記プローブを移動させるプローブ駆動部と、吸引中の前記プローブが前記洗浄水を一方向に通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する制御部と、を備える。
【0012】
また、本発明に係るプローブ位置検出方法は、例えば、プローブが洗浄水を通過する際に前記洗浄水を吸引するように、吸引中の前記プローブを移動させる移動工程と、前記プローブによって吸引された前記洗浄水が流れる流路内の圧力を測定する測定工程と、吸引中の前記プローブが前記洗浄水を一方向に通過した際の前記流路内の圧力の変化に基づき、前記プローブと前記洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する検出工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プローブの表面状態に依存することなく、あるいは電磁ノイズや洗浄水の導電性などの物性に依存することなく、プローブと洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出することができる自動分析装置及びプローブ位置検出方法を提供することが可能になる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1に係る自動分析装置を鉛直方向上側からみた概略構成図である。
【
図2】実施形態1に係る分注機構と洗浄機構との構成を説明する図である。
【
図3】実施形態1に係るプローブ及び洗浄ノズルの動作を説明する図である。
【
図4】実施形態1に係る圧力センサにより測定した圧力の時系列の一例を圧力波形として表した図である。
【
図5】実施形態1に係るプローブと洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する手順を説明するフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る圧力波形を取得する手順の別の例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2に係る往路及び復路におけるプローブの通過開始距離及び通過完了距離を示す図である。
【
図8】変形例1に係るチップが先端に取り付けられたプローブ及び洗浄ノズルの動作を説明する図である。
【
図9】変形例2に係る洗浄ノズルの動作の別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る自動分析装置を鉛直方向上側からみた概略構成図である。分析に使用する試薬の含まれる試薬ボトル101は試薬ディスク102に保持される。また、検体の含まれる検体容器103は検体ディスク104に保持される。検体と試薬とを反応させる反応容器105は一定温度に温調されたインキュベータ106に保持される。
【0016】
反応容器105は反応容器トレイ107に乗せられた状態で自動分析装置1に搭載され、グリッパ108によりインキュベータ106上に搬送される。反応容器105内で反応が進んだ溶液は、検出ユニット109によって成分が検出される。検出が終了し、使用済となった反応容器105は、グリッパ108により反応容器廃棄口110に廃棄される。
【0017】
自動分析装置1は、検体と試薬とを定量するための分注機構111を有する。分注機構111は、鉛直下方向に備えるプローブ111a(
図2参照)を用いて、必要な検体と試薬とを吸引する。分注機構111は、一端を中心として、プローブが固定された他端が水平方向へ弧を描くように動く。
図1のPRは、分注機構111のプローブの移動経路を示す。
【0018】
また、自動分析装置1は、洗浄機構112を有する。洗浄機構112は、分注機構のプローブの外壁を洗浄するものであり、洗浄水を吐出する洗浄ノズル112aと、洗浄水が流出しないようにカバーする洗浄槽112bとを有する。洗浄ノズル112aは、分注機構111のプローブが正面前方を通過する際に、洗浄水を分注機構111のプローブへ吐出することで、分注機構111を洗浄することができる。このようにして、分注機構111を洗浄することにより、異なる液体を分注する際の成分の持越しを防ぐことができる。
【0019】
また、試薬ディスク102、検体ディスク104、インキュベータ106はそれぞれ回転駆動する移動機構102a、104a、106a(それぞれディスクと一体化されている)を有する。試薬ディスク102、検体ディスク104、インキュベータ106は、自身の有する移動機構により、分注機構111が液体を吸引・吐出可能な位置に移動する。ここで、分注機構111が液体を吸引・吐出可能な位置とは、分注機構111のプローブの移動経路PR上である。
【0020】
図2は、実施形態1に係る分注機構と洗浄機構との構成を説明する図である。具体的には、
図2は、
図1において、分注機構111が洗浄機構112に重なったときにおける分注機構111及び洗浄機構112のA-A断面図である。
【0021】
分注機構111は、液体を吸引・吐出するプローブ111aと、プローブ111aを支持するアーム111bとを有する。なお、アーム111bは、プローブ111aが吸引した液体と、プローブ111aが吐出する液体とを送液する流路を内部に有する。アーム111bは、プローブ111aが固定されている一端が前述した水平方向へ弧を描く動作(以下「水平移動」と略記する。)と、アーム111b自体が鉛直方向へ移動する動作とを行う。アーム111bの動作は、モータ等で構成されるプローブ駆動部201によって実現される。
【0022】
チューブ111cは、アーム111bの内部の流路とシリンジ203とを接続する流路である。また、チューブ111cには、チューブ内の圧力を測定する圧力センサ202が設けられている。
【0023】
シリンジ203は、シリンダ203aに対してプランジャ203bが移動することにより、プローブ111aに液体の吸引及び吐出をさせる。すなわち、シリンダ203aに対してプランジャ203bが押し込まれると、ポンプ207及び電磁弁208からの洗浄水205がプローブ111aの先端から吐出され、シリンダ203aに対してプランジャ203bが引き抜かれると、プローブ111aが吸引を行う。このようなプランジャ203bの移動は、モータ等で構成されるシリンジ駆動部204によって実現される。
【0024】
洗浄水タンク206には、洗浄水205が入れられている。本実施形態の洗浄水205は、導電度が1μS/cm以下の純水を使用するが、これに限定されない。洗浄水205は、ポンプ207を通じて流路内に送られる。電磁弁208を開放・遮断することで、シリンジ203内に洗浄水205を送液・停止することができる。そして、洗浄水205が送液されたシリンジ203は、前述の動作によってプローブ111a、アーム111bの内部の流路、チューブ111c及び圧力センサ202に洗浄水205を送液することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、初期状態として、プローブ111a、アーム111bの内部の流路、チューブ111c、圧力センサ202、シリンジ203は洗浄水205で満たされているものとする。プローブ111aは、先端から洗浄水205を吐出することで、プローブ111aの内部の流路を洗浄することができる。
【0026】
洗浄機構112は、洗浄水205を吐出する洗浄ノズル112aと、洗浄水205が流出しないようにカバーする洗浄槽112bで構成される。洗浄槽112bは、上部のみ開口しており、プローブ111aが上から入る構成である。ただし、これに限定されず、例えば、プローブ111aが水平移動によって進入できるように、
図1に示す移動経路PR上にある洗浄槽112bの壁にも開口が設けられてもよい。
【0027】
プローブ111aが洗浄槽112b内に入り、洗浄ノズル112aの前方にプローブ111aが位置するときに、洗浄ノズル112aからプローブ111aへ洗浄水205を吐出することによって、プローブ111aの外壁を洗浄することができる。なお、洗浄槽112b内で吐出された洗浄水205は、洗浄槽112bの下側に設けられたパイプを通って廃液タンク211に流れる。
【0028】
洗浄ノズル112aへの洗浄水205の送液・停止は、電磁弁209を開放・遮断することで制御される。つまり、電磁弁209を開放することで、洗浄ノズル112aから洗浄水205が送液され、電磁弁209を遮断することで洗浄ノズル112aからの洗浄水205が停止される。洗浄ノズル112aの吐出口形状としては、例えば半径1~3mm程度の円形形状や、長方形、楕円形形状などが挙げられる。また、洗浄水205を吐出する角度としては、水平方向、斜め上方、斜め下方などが挙げられる。
図3以降では、洗浄ノズル112aは、円形の吐出口形状であり、水平方向に洗浄水205を吐出する場合を一例として図示する。プローブ111aと洗浄ノズル112aとの間隔は1~5mm程度が好適である。本実施形態での洗浄水205の吐出流量は1~10mL/s程度で、洗浄水205は洗浄ノズル112aから直線的に吐出される。
【0029】
プローブ駆動部201、シリンジ駆動部204、電磁弁208、及び電磁弁209の動作は制御部210によって制御される。
【0030】
プローブ111aの外壁を効率的に洗浄するためには、洗浄ノズル112aから吐出された洗浄水205とプローブ111aとの相対的な位置関係を正確に把握することが望ましい。例えば、洗浄ノズル112aから吐出された洗浄水205とプローブ111aとの鉛直方向の位置関係を正確に把握することで、プローブ111aの外壁における洗浄が必要な部分をもれなく洗浄することが可能になる。また、洗浄ノズル112aから吐出された洗浄水205とプローブ111aの水平方向の位置関係を正確に把握することで、洗浄ノズル112aから洗浄水205を吐出するタイミングをプローブ111aの水平移動に合わせて適切に制御することができる。そのためには、洗浄水205とプローブ111aとの相対的な位置関係を把握する必要がある。
【0031】
本実施形態に係る自動分析装置1は、圧力センサ202を使用して、プローブ111aと洗浄ノズル112aとの相対的な位置関係を推定する。
図3は、実施形態1に係るプローブ及び洗浄ノズルの動作を説明する図である。なお、
図3は、洗浄ノズル112aの吐出口を正面から見た図である。また、
図3の動作は、洗浄槽112bの内部で行われる。
【0032】
まず、プローブ111aは、
図3(1)に示すように、洗浄ノズル112aの正面左側に位置し、プローブ111aの内部から洗浄水205を吐き出して、プローブ111aの内部を洗浄する。このときのプローブ111aの位置を移動開始位置とする。プローブ111aの内部からの洗浄水205の吐き出しは、
図2に示す電磁弁208の開閉ないしシリンジ203の吐出の動作、あるいはこれらの組み合わせによって行われる。つづいて、
図3(2)に示すように、プローブ111aが吸引を開始する。ここでは、プローブ111aは、空気を吸引する。次に、
図3(3)に示すように、
図2に示す電磁弁209を開放して洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出を開始する。洗浄ノズル112aから洗浄水205が吐出している状態で、
図3(4)に示すように、プローブ駆動部201によりプローブ111aを水平移動させ、
図3(5)に示すように、洗浄水205を通過させる。プローブ111aは、洗浄水205を通過しているときは洗浄水205を吸引する。通過完了後は、
図3(6)に示すように、プローブ111aの水平移動を終了する。このときのプローブ111aの位置を移動終了位置とする。そして、
図3(7)に示すように、
図2に示す電磁弁209を遮断して洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出を終了し、プローブ111aの吸引を終了する。
図3において、プローブ111aの水平移動の速さをv301とし、一定の速さであるとする。なお、
図3においては、左側から右側へ水平移動する例を示したが、左右反対であってもよい。
【0033】
図3(2)~(6)に示すプローブ111aの吸引動作中においては、プローブ111aの先端が洗浄水205を通過している間のみ、プローブ111aの先端から洗浄水205が吸引され、その他の場合は空気が吸引される。空気と洗浄水205とでは流体の粘度が異なるため、
図3(2)~(6)に示すプローブ111aの吸引動作中に圧力センサ202によりチューブ111c内の圧力を測定することにより、プローブ111aが洗浄水205に進入した通過開始時刻と、プローブ111aが洗浄水205を通過した通過完了時刻とを推定できる。
【0034】
図4は、実施形態1に係る圧力センサにより測定した圧力の時系列の一例を圧力波形として表した図である。
図4では、縦軸が圧力であり、横軸が時刻である。
【0035】
時刻T1は、プローブ111aの吸引開始時刻である。圧力波形は、吸引開始時刻T1付近では、プローブ111aによる空気の吸引開始に伴う非定常脈動が発生し、徐々に脈動の幅が小さくなる。
【0036】
時刻T2は、プローブ111aが水平移動を開始する水平移動開始時刻である。
【0037】
時刻T3は、プローブ111aが洗浄水205に進入した通過開始時刻である。プローブ111aは、通過開始時刻T3より前では空気を吸引し、通過開始時刻T3以後は洗浄水205を吸引する。洗浄水205は空気よりも粘度が高いために吸引時の圧力損失が大きく、圧力センサ202の測定する圧力は、空気の吸引時よりも洗浄水205の吸引時の方が低くなることから、通過開始時刻T3以降は圧力のトレンドが減少することになる。したがって、圧力波形において、圧力のトレンドが減少し始めた減少開始時刻を通過開始時刻T3と推定することができる。なお、トレンドとは、プローブの水平移動中の圧力時系列データの趨勢を指す。圧力のトレンドを監視することで、脈動を含む圧力波形においても、問題なく通過開始時刻T3を推定することができる。以降は、水平移動開始時刻T2を基準時刻とし、基準時刻から通過開始時刻T3までの時間を通過開始時間t401として説明する。
【0038】
時刻T4は、プローブ111aが洗浄水205を通過し終えた通過完了時刻である。プローブ111aは、通過完了時刻T4より前では洗浄水205を吸引し、通過完了時刻T4以後は空気を吸引する。前述したように、圧力センサ202の測定する圧力は、空気の吸引時よりも洗浄水205の吸引時の方が低くなることから、通過完了時刻T4以降は圧力のトレンドが増加することになる。したがって、圧力波形において、圧力のトレンドが増加し始めた増加開始時刻を通過完了時刻T4と推定することができる。以降は、基準時刻である水平移動開始時刻T2から通過完了時刻T4までの時間を通過完了時間t402として説明する。
【0039】
時刻T5は、プローブ111aが水平移動を終了する水平移動終了時刻である。
【0040】
時刻T6は、プローブ111aの吸引終了時刻である。
【0041】
図3(1)~(3)に示すプローブ111aの移動開始位置を基準位置としたときに、
図4の圧力波形に示す通過開始時間t401と通過完了時間t402とを用いると、基準位置からプローブ111aが洗浄水205に進入した位置までの距離はv301×t401と推定でき、基準位置からプローブ111aが洗浄水205を通過した位置までの距離はv301×t402と推定できる。さらに、これらを用いて、基準位置から洗浄水205の中心位置までの中心到達距離はv301×(t401+t402)/2と推定でき、プローブ111aが通過した洗浄水205の通過幅はv301×(t402-t401)と推定できる。
【0042】
プローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置がずれると、基準位置から洗浄水205の中心位置v301×(t401+t402)/2が変化する。また、洗浄水205の断面は
図3(3)~(6)に示すように円形のため、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置がずれると、洗浄水205の通過幅v301×(t402-t401)が変化する。例えば、プローブ111aの先端が洗浄水205の鉛直方向中心を通過する場合は、洗浄水205の通過幅v301×(t402-t401)が洗浄水205の断面の円の直径に近い値をとり、プローブ111aの先端が洗浄水205の鉛直方向上側又は鉛直方向下側にずれるにつれて洗浄水205の通過幅v301×(t402-t401)が小さい値となる。
【0043】
したがって、
図4の圧力波形から、基準位置から洗浄水205の中心位置v301×(t401+t402)/2及び洗浄水205の通過幅v301×(t402-t401)を算出することで、プローブ111aと洗浄水205との水平方向及び鉛直方向の位置関係を推定することができる。
【0044】
また、v301が一定の値の場合は、プローブ111aが基準位置から洗浄水205の中心位置まで水平移動するのに要する中心到達時間(t401+t402)/2と、通過開始時刻T3から通過完了時刻T4までの通過時間(t402-t401)を算出することで、同様にプローブ111aと洗浄水205との水平方向及び鉛直方向の位置関係を推定することができる。以下では、水平移動速度v301が一定であるとして、中心到達時間(t401+t402)/2と、通過時間(t402-t401)とを用いて直接プローブ111aと洗浄水205との水平方向及び鉛直方向の位置関係を推定する例について説明する。
【0045】
図5は、実施形態1に係るプローブと洗浄水との相対的な位置関係の異常を検出する手順を説明するフローチャートである。S501からS509は、
図3(1)~(7)に示す動作に圧力センサ202のデータ取得の開始(S502)及び終了(S509)を追加したものである。
【0046】
具体的には、まず、ステップS501として、プローブ111a内を洗浄する(
図3(1)に対応)。シリンジ203の吸引開始(S503)以降の圧力波形を取得するために、シリンジ203の吸引開始(S503)に先立ち、ステップS502として、圧力センサ202のデータ取得を開始する。そして、ステップS503として、シリンジ203の吸引を開始することでプローブ111aの吸引を開始する(
図3(2)に対応)。つづいて、ステップS504として、電磁弁209を開放して洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出を開始する(
図3(3)に対応)。その後、ステップS505として、プローブ駆動部201によりプローブ111aの水平移動を開始する(
図3(4)に対応)。プローブ111aが洗浄水205を通過(
図3(5)に対応)したあとに、ステップS506として、プローブ111aの水平移動を終了する(
図3(6)に対応)。そして、ステップS507として電磁弁209を遮断して洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出を終了し(
図3(7)に対応)、ステップS508としてシリンジ203の吸引を停止することでプローブ111aの吸引を終了する(
図3(7)に対応)。ステップS508まで必要な圧力波形の取得は完了したので、ステップS509として圧力センサ202のデータ取得を終了する。
【0047】
制御部210は、ステップS510として、圧力センサ202から取得した圧力波形に基づき、水平移動開始時刻T2と、通過開始時刻T3と、通過完了時刻T4とを推定し、前述した通過開始時間t401及び通過完了時間t402を算出したのちに、通過時間(t402-t401)が所定範囲内であるかを判断する。例えば、制御部210は、予め所定範囲が定められており、通過時間(t402-t401)が所定範囲内である場合に正常と判断する。なお、所定範囲は、製造や組立等に起因した装置ごとの誤差を考慮して装置ごとに個別に設定してもよいし、装置によらず絶対的な範囲として設定してもよい。また、制御部210は、通過時間(t402-t401)の算出のたびに、通過時間(t402-t401)の前回値と今回値とを比較し、前回値と今回値との差が一定以下である場合に正常と判断することもできる。前回値と今回値とを比較する方法は、装置ごとに所定範囲の値を定める場合と同様に、製造や組立等に起因した装置ごとの誤差の影響を抑えることができる。
【0048】
ステップS510において通過時間(t402-t401)が正常であると判断された場合は、ステップS511として、中心到達時間(t401+t402)/2が正常であるかを判断する。中心到達時間(t401+t402)/2が正常であると判断する方法は、ステップS510において通過時間(t402-t401)が正常であると判断する方法と同様である。
【0049】
ステップS511において中心到達時間(t401+t402)/2が正常であると判断された場合には、プローブ111aと洗浄水205との水平方向及び鉛直方向の両方の位置関係が正常であり、位置ずれがないと判断できる。したがって、ステップ512として、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係は正常であると判断する。その後、通常通り洗浄を実施することができる。
【0050】
ステップS510において、通過時間(t402-t401)が正常でないと判断した場合は、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置関係にずれが生じていると推定される。そこで、制御部210は、ステップS513として、通過時間(t402-t401)が正常となるようにプローブ駆動部201にプローブ111aの鉛直方向の位置を修正させる。例えば、制御部210は、通過時間(t402-t401)が前述した所定範囲内になるように、あるいは、通過時間(t402-t401)の今回値が前回値となるようにプローブ111aの鉛直方向の位置の修正量をプローブ駆動部201に指示し、プローブ駆動部201にプローブ111aの鉛直方向の位置を修正させる。これにより、自動的にプローブ111aの鉛直方向の位置を修正することができる。なお、プローブ111aの鉛直方向の位置の修正において、通過時間(t402-t401)の代わりに、通過幅v301×(t402-t401)を用いてもよい。
【0051】
また、制御部210は、表示部と接続し、ステップS513として、通過時間(t402-t401)が正常でない旨のアラームを表示部に表示させてもよい。これにより、表示部を見たユーザが手動でプローブ111aの鉛直方向の位置を修正することができる。また、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置がずれる原因としては、洗浄水205を押し出すポンプ207の圧力が変化している場合も考えられる。すなわち、洗浄ノズル112aから水平方向に吐出されるはずの洗浄水205が、ポンプ207の圧力の低下により水平方向より下側に向かって吐出されていることにより、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置関係にずれが生じているような場合である。このような場合も、制御部210が表示部にアラームを表示させることにより、ユーザやサービスエンジニアがポンプ207の圧力の調整等を行い、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置関係のずれを修正することができる。
【0052】
ステップS511において、中心到達時間(t401+t402)/2が正常でないと判断された場合は、プローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係にずれが生じていると推定される。そこで、制御部210は、ステップS514として、中心到達時間(t401+t402)/2が正常となるようにプローブ駆動部201にプローブ111aの水平方向の位置を修正させる。修正方法は、ステップS513と同様である。また、制御部210は、ステップS514として、ステップS513と同様に、中心到達時間(t401+t402)/2が正常でない旨のアラームを表示部に表示させてもよい。なお、水平方向の位置関係の異常に関しては、ポンプ207の圧力の低下の影響は少ないと考えられる。
【0053】
また、ステップS510又はS511において異常と判断された場合、制御部210は、自身が保存しているプローブ111aの位置情報及び洗浄水205の位置情報の一方又は両方を修正してもよい。
【0054】
なお、プローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係は、プローブ111aの水平移動の速さv301が小さいほど、精度よく推定することができる。このため、例えば、ステップS511においてプローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係に異常があると判断した場合、ステップS514の修正の精度を高めるために、水平移動の速さv301小さくして再度ステップS502~S510を行い、再度算出した中心到達時間(t401+t402)/2を用いてステップS514の修正を行ってもよい。
【0055】
図4に示す圧力波形において、通過開始時刻T3と通過完了時刻T4とを精度よく推定するために、水平移動開始時刻T2以降はなるべくノイズが小さいことが望ましい。例えば、
図5に示す手順において、プローブ111aの吸引を開始(S503)した後に、一定の時間間隔をあけてプローブ111aの水平移動を開始(S505)することで、ノイズの一因となるプローブ111aの吸引開始に伴う非定常な圧力脈動の影響を抑えながら水平移動開始時刻T2以降の圧力波形を取得することができる。典型的な自動分析装置1においては、S503とS505との間に100ミリ秒以上の時間間隔を設けることが望ましい。あるいは、プローブ111aの吸引を開始(S503)した100ミリ秒以上後に、プローブ111aが洗浄水205に進入するように、移動開始位置を調整してもよい。
【0056】
プローブ111aが水平移動している間は、洗浄水205が均等に吐出されていることが望ましい。しかしながら、電磁弁の開放(S504)直後は、洗浄水205が洗浄ノズル112aから均等に吐出されにくい。そのため、電磁弁の開放(S504)した後に一定の時間間隔をあけてプローブ111aの水平移動を開始(S505)することが望ましい。典型的な自動分析装置1においては、S504とS505の間に20ミリ秒以上の時間間隔を設けることが望ましい。あるいは、電磁弁を開放(S504)してから20ミリ秒以上経過後に、プローブ111aが洗浄水205に進入するように、プローブ111aの移動開始位置を調整してもよい。
【0057】
一方で、プローブ111aの水平移動を終了(S506)した後の圧力波形は、S510とS511の判断に使用されない。このため、プローブ111aの水平移動を終了(S506)した後、なるべく早く電磁弁209の遮断(S507)を行い、洗浄水205の使用量を最小限にすることが望ましい。
【0058】
図5の手順において圧力波形を取得すべき期間は、プローブ111aが水平移動しているS505からS506の間である。このため、S505からS506の間で圧力センサ202がデータ取得をしていれば、すなわち、S505よりも前にS502があり、S506よりも後ろにS509があれば、S502及びS509は他の手順と入れ替えてもかまわない。
【0059】
図5の手順によって、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係が正常であるか判断し、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係が異常である場合にはプローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係を修正することができる。これにより、プローブ111aの外壁が適切に洗浄されていることを担保し、自動分析装置の検査結果の信頼性を向上させることができる。
【0060】
本実施形態では、洗浄水205を吸引した時の圧力の変化によってプローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係の異常を検知しているので、プローブ111a表面の結露や洗い残しなどによる濡れがあっても正確な検知が可能である。また、本実施形態で説明した圧力センサを使用する構成は、導電検知式や静電容量検知式のセンサを使用する構成に比べて、電磁ノイズや洗浄水の導電性などの物性の影響を受けづらい。そのため、洗浄水の導電度が低い場合、特に導電度1μS/cm以下の純水を洗浄水205として使用する場合には、導電検知式や静電容量検知式のセンサを使用する構成よりも、本実施形態に示す圧力センサを使用する構成の方が、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係の異常を精度よく検知することができる。
【0061】
<実施形態2>
本実施形態では、
図3に示すプローブ111aの水平移動の経路、すなわち、移動開始位置である左側から移動終了位置である右側へ進む経路を往路とし、往路を逆方向に進む経路、すなわち、
図3において往路の移動終了位置である右側から往路の移動開始位置である左側へ進む経路を復路とする。
【0062】
本実施形態では、
図5のステップS509の後に、復路に沿ってプローブ111aを水平移動させ、往路及び復路のそれぞれにおいて取得した圧力波形に基づき、ステップS510以降でプローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係の異常を検出する。
【0063】
図6は、実施形態2に係る圧力波形を取得する手順の別の例を示すフローチャートである。
図6のステップS601~S609は、プローブ111aの水平移動の経路が前述の復路である点以外は
図5のステップS501~509と同様である。
図6のステップS601~S609は、
図5のステップS509とS510との間で行われる手順である。
【0064】
以下では、
図5のステップS510において、
図5のステップS501~S509で取得した圧力波形と、
図6のステップS601~S609で取得した圧力波形とを用いて、中心到達時間及び通過時間を算出する方法について説明する。
【0065】
図7は、実施形態2に係る往路及び復路におけるプローブの通過開始距離及び通過完了距離を示す図である。
図7(a)は、往路に関する図であり、BLは往路における移動開始位置である。
図7(b)は、復路に関する図であり、BRは復路における移動開始位置である。また、往路における移動開始位置BLと復路における移動開始位置BRとの距離をLabとする。
【0066】
図7(a)におけるL701は、プローブ111aが移動開始位置BLから洗浄水205に進入するまでの通過開始距離である。また、L702は、プローブ111aが移動開始位置BLから洗浄水205を通過するまでの通過完了距離である。なお、移動開始位置BLは、
図5のステップS505としてプローブ111aが水平移動を開始する位置である。そのため、プローブ111aが移動開始位置BLで水平移動を開始してから洗浄水205に進入するまでの通過開始時間をt401Lとし、プローブ111aの水平移動速度をv301とすると、L701=v301×t401Lと表せる。同様に、プローブ111aが移動開始位置BLで水平移動を開始してから洗浄水205を通過するまでの通過完了時間をt402Lとすると、L702=v301×t402Lと表せる。なお、通過開始時間t401Lは、往路における
図4のt401に相当し、通過完了時間t402Lは、往路における
図4のt402に相当する。
【0067】
図7(b)におけるL703は、プローブ111aが移動開始位置BRから洗浄水205に進入するまでの通過開始距離である。また、L704は、プローブ111aが移動開始位置BRから洗浄水205を通過するまでの通過完了距離である。なお、移動開始位置BRは、
図6のステップS605としてプローブ111aが水平移動を開始する位置である。そのため、プローブ111aが移動開始位置BRで水平移動を開始してから洗浄水205に進入するまでの通過開始時間をt401Rとし、プローブ111aの水平移動速度をv301とすると、L703=v301×t401Rと表せる。同様に、プローブ111aが移動開始位置BRで水平移動を開始してから洗浄水205を通過するまでの通過完了時間をt402Rとすると、L704=v301×t402Rと表せる。なお、通過開始時間t401Rは、復路における
図4のt401に相当し、通過完了時間t402Rは、復路における
図4のt402に相当する。また、往路及び復路のプローブ111aの水平移動速度は、速さがv301であって、往路と復路とで向きのみが逆であるとしている。
【0068】
以下では、
図7(a)に示す移動開始位置BLから洗浄水205の中心までの中心到達距離をLmとし、洗浄水205の通過幅をLwとする。そして、プローブ111aが移動開始位置BLで水平移動を開始してから洗浄水205の中央に到達するまでの時間(中心到達時間)をTmとし、プローブ111aが洗浄水205の通過幅Lwを通過するのにかかる時間(通過時間)をTwとする。
【0069】
ステップS510では、
図5のステップS501~S509で取得した圧力波形に基づいて時間t401L及びt402Lを算出するとともに、
図6のステップS601~S609で取得した圧力波形に基づいて時間t401R及びt402Rを算出する。これらの時間の算出方法は実施形態1と同様である。
【0070】
続いて、時間t401L、t402L、t401R及びt402Rに基づいて、中心到達時間及び通過時間を算出する。
【0071】
例えば、
図7(a)に示す往路における通過開始距離L701と、
図7(b)に示す復路における通過開始距離L703とを用いると、中心到達距離LmはLab/2+(L701-L703)/2と表せる。この中心到達距離Lmを速さv301で除算して中心到達時間Tmに直すと、Tm=Lab/(2×v301)+(t401L-t401R)/2となる。したがって、この場合は、
図5のステップS501~S509で取得した圧力波形からt401Lを推定し、
図6のステップS601~S609で取得した圧力波形からt401Rを推定することで、中心到達時間Tmを算出することができる。
【0072】
同様に、
図7(a)に示す往路における通過完了距離L702と、
図7(b)に示す復路における通過完了距離L704と、を用いても中心到達距離Lmを算出できる。この場合、最終的に求まる中心到達時間Tm=Lab/(2×v301)+(t402L-t402R)/2となる。したがって、この場合は、
図5のステップS501~S509で取得した圧力波形からt402Lを推定し、
図6のステップS601~S609で取得した圧力波形からt402Rを推定することで、中心到達時間Tmを算出することができる。
【0073】
また、中心到達時間Tmは、前述した通過開始時間t401L及びt401Rに基づく中心到達時間Tmと、通過時間t402L及びt402Rに基づく中心到達時間Tmとの平均値として求めてもよい。
【0074】
なお、通過開始時間(t401L、t401R)や、通過完了時間(t402L、t402R)には、洗浄水205や空気における圧力波の伝播時間、圧力波形から時刻を計算する処理などに起因する系統誤差が含まれる。前述の中心到達時間Tmには、(t401L-t401R)/2や(t402L-t402R)/2が含まれているため、これらにより系統誤差を打ち消すことができる。したがって、これらを用いることで、系統誤差の少ないより正確な中心到達時間Tmを推定することができる。
【0075】
また、通過時間Twについては、例えば、
図7(a)から求まる通過時間Tw=(t402L-t401L)と、
図7(b)から求まる通過時間Tw=(t402R-t401R)との平均値とする。
【0076】
本実施形態においては、主にプローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係の異常を精度良く検出するために、
図5のステップS501~S509で取得した圧力波形と、
図6のステップS601~S609で取得した圧力波形との両方を使用した。しかしながら、プローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係の異常の検出精度よりも、検出時間や消費水量の低減を優先する場合、
図6の動作を行わず、実施形態1の手順のみを実施する。
【0077】
また、本実施形態により求めた中心到達時間Tm及び通過時間Tw、あるいは、中心到達距離Lm及び洗浄水205の通過幅Lwを用いてステップS513における修正及びステップS514における修正を行うことにより、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係のずれを精度よく修正することができる。
【0078】
なお、プローブ111aと洗浄水205との水平方向の位置関係は、プローブ111aの水平移動の速さv301が小さいほど、精度よく推定することができる。このため、プローブ111aと洗浄水205の水平位置ずれを修正する(S514)場合には、
図5の手順の水平移動速度を小さくして再実行し、その後に
図6の手順を実行する、という手順とすることで、水平距離Lの推定精度をより高めることができる。この時の
図5の手順再実行時のプローブ111aの水平移動と、
図6の手順でのプローブ111aの水平移動は同じ速さであることが望ましい。
【0079】
図6の手順も
図5の手順と同様に、圧力波形のノイズを抑えるために、ステップS603とステップS605との間に一定の時間間隔、例えば100ミリ秒以上の時間間隔を設けることが望ましい。
【0080】
また、プローブ111aが水平移動している間は、洗浄水205が均等に吐出されようにするために、ステップS604とステップS605の間に一定の時間間隔、例えば20ミリ秒以上の時間間隔を設けることが望ましい。
【0081】
さらに、プローブ111aの水平移動を終了(S606)した後、なるべく早く電磁弁209の遮断(S607)を行い、洗浄水205の使用量を最小限にすることが望ましい。
【0082】
なお、
図6の手順において圧力波形を取得すべき期間は、プローブ111aが水平移動しているS605からS606の間である。このため、S605からS606の間で圧力センサ202がデータ取得をしていれば、すなわち、S605よりも前にS602があり、S606よりも後ろにS609があれば、S602及びS609は他の手順と入れ替えてもかまわない。
【0083】
<実施形態1及び2の変形例1>
本変形例では、プローブ111aの先端に使い捨てのチップ801を使用する場合について説明する。本変形例は、実施形態1にも2にも適用可能である。なお、本変形例では、チップ801の形状は、円錐とするが、これに限定されない。
【0084】
図8は、変形例1に係るチップが先端に取り付けられたプローブ及び洗浄ノズルの動作を説明する図である。
【0085】
以下では、実施形態1、2と同様に、分注機構111に付随するプローブ111aの先端に取り付けたチップ801の外壁を、洗浄槽112bに付随する洗浄ノズル112aから吐出された洗浄水205を用いて洗浄する場合を考える。
【0086】
図8(1)は、
図3(1)と同様の図である。本変形例では、
図8(2)に示すように、
図8(1)の動作後、プローブ111aの先端にチップ801を取り付ける。そのため、本変形例を実施形態1に適用すると、
図5のS501の後にチップ801を、プローブ111aの先端に取り付ける手順が加わる。なお、取り付けられたチップ801は、プローブ111aの一部分を構成する。また、チップ801が取り付けられたプローブ111aは、先端のチップ801により空気又は洗浄水205の吸引を行う。
図8(3)~(8)に示す構成は、プローブ111aの先端にチップが取り付けられている点が
図3(2)~(7)と異なるが、
図8(3)~(8)に示すプローブ111a及び洗浄ノズル112aの動作は、
図3(2)~(7)と同様である。
【0087】
また、本変形例を実施形態2に適用する場合、往路と復路とで同一のチップ801を使用してもよいし、往路と復路とで別々のチップ801を使用してもよい。後者の場合は、
図6のS601の前にプローブ111aの先端に取り付けられたチップ801を取り外す手順が追加され、さらに、S601の後に別のチップ801をプローブ111aの先端に取り付ける手順が加わる。
【0088】
チップ801をプローブ111aの先端に取り付け、チップ801の外壁を洗浄水205で洗浄することで、異なる分析間の成分持越しを防げるため、分析結果の精度を向上させることができる。
<実施形態1及び2の変形例2>
実施形態1及び2では、
図3の(3)から(6)に示すように、プローブ111aの水平移動中は常に、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出とを継続している。本変形例では、制御部210は、圧力センサ202から取得した圧力に基づいてリアルタイムに圧力のトレンドを算出し、プローブ111aの水平移動中で圧力のトレンドの減少を検知したときに、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出とを中断する。リアルタイムに圧力のトレンドを算出する方法としては、例えば、制御部210は圧力の脈動を抑えるためのフィルタを備え、フィルタ後の圧力の時間微分に基づき圧力のトレンドを算出する方法がある。
【0089】
図9は、変形例2に係る洗浄ノズルの動作の別の例を説明する図である。本変形例を実施形態1に適用した場合、
図3の(4)~(7)の動作が
図9(1)~(4)の動作で代替される。
【0090】
図9(1)は、
図3(4)と同様である。そして、
図9(2)に示すように、プローブ111aが洗浄水205に進入し、圧力のトレンドの減少が検出されたときに、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出とを中断する。
【0091】
なお、プローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係を推定するためには、制御部210は、圧力のトレンドの増加を検知することが必要である。そのため、プローブ111aが洗浄ノズル112aから吐出される洗浄水205の流路を通過し終える直前には、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出とを再開する必要がある。
【0092】
そこで、例えば、プローブ111aが洗浄ノズル112aの吐出口直径の50%に相当する距離を水平移動するのにかかる時間を中断時間とし、圧力のトレンドの減少が検出されたときから中断時間経過後に、
図9(3)に示すように、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出とを再開する。
【0093】
図9(4)に示すように、プローブ111aが洗浄水205を通過し、圧力のトレンドの増加が検出されたときに、プローブ111aの吸引と、洗浄ノズル112aからの洗浄水205の吐出と、プローブ111aの水平移動とを終了する。
【0094】
本変形例においては、
図9(3)以降に圧力のトレンドの増加が検出されない場合は、プローブ111aと洗浄水205との鉛直方向の位置関係に異常があるということになる。この場合は、
図5のS510からS513への分岐に対応する。
【0095】
本変形例では、洗浄水205の吐出を中断することによって、実施形態1及び2よりも洗浄水205の消費量を低減することができる。また、圧力のトレンドの増加の検出以降の動作を取りやめることで、短い時間でプローブ111aと洗浄水205との相対的な位置関係の異常を検出することができる。
【0096】
本発明は上記で説明した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記で説明した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…自動分析装置
101…試薬ボトル
102…試薬ディスク
102a…移動機構
103…検体容器
104…検体ディスク
104a…移動機構
105…反応容器
106…インキュベータ
106a…移動機構
107…反応容器トレイ
108…グリッパ
109…検出ユニット
110…反応容器廃棄口
111…分注機構
111a…プローブ
111b…アーム
111c…チューブ
112…洗浄機構
112a…洗浄ノズル
112b…洗浄槽
201…プローブ駆動部
202…圧力センサ
203…シリンジ
203a…シリンダ
203b…プランジャ
204…シリンジ駆動部
205…洗浄水
206…洗浄水タンク
207…ポンプ
208…電磁弁
209…電磁弁
210…制御部
211…廃液タンク
801…チップ