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特開2024-95874粘着テープ、粘着テープの剥離方法および粘着テープを用いた加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095874
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】粘着テープ、粘着テープの剥離方法および粘着テープを用いた加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240704BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240704BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20240704BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240704BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J7/25
C09J7/24
C09J153/00
H01L21/78 M
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212838
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
(72)【発明者】
【氏名】下岡 澄生
(72)【発明者】
【氏名】タン シアアー
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004FA08
4J040EK032
4J040JB09
4J040KA03
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA20
4J040PA42
5F063AA18
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE50
5F131BA32
5F131CA32
5F131EC32
5F131EC53
5F131EC54
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】被着体を十分に固定または仮固定可能な初期接着力を有し、且つ、低伸度で引き伸ばすことで被着体(特に小型軽量の被着体)から剥離可能となる伸長剥離が可能な粘着テープおよびその剥離方法、並びに該粘着テープを用いた加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と前記基材の少なくとも一方の面に100%伸長時強度が0.1N/mm以上、400%伸長時強度が5.5N/mm以下である粘着層を有し、単位幅当たりの100%伸長時強度が0.11N/mm以上である粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の少なくとも一方の面に100%伸長時強度が0.1N/mm以上、400%伸長時強度が5.5N/mm以下である粘着層を有し、
単位幅当たりの100%伸長時強度が0.11N/mm以上である粘着テープ。
【請求項2】
単位幅当たりの400%伸長時強度が0.2N/mm以上1N/mm以下である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
単位幅あたりの破断強度が2.1N/mm以上である請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
単位幅あたりの伸長剥離強度が2.5N/mm以下である請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項5】
180°ピール接着強度が0.05N/mm以上である請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着層がアクリル系粘着剤樹脂を含む請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記基材がスチレン系樹脂またはウレタン系樹脂を含む請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着層がフィラーを含む請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着テープが、延伸により剥離可能である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項10】
請求項1または2に記載の粘着テープの前記粘着層に接着した被着体を、前記粘着テープを少なくとも一方向に延伸して前記粘着層から脱離する粘着テープの剥離方法。
【請求項11】
前記被着体が小型電子部品である、請求項10に記載の粘着テープの剥離方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の粘着テープの前記粘着層に被着体を接着し、前記被着体を加工する工程と、
前記粘着テープを少なくとも一方向に引き伸ばして、加工後の被着体を前記粘着層から剥離する工程、
を有する、加工物の製造方法。
【請求項13】
前記加工物が小型電子部品である、請求項12に記載の加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。より詳細には、本発明は加工工程が終了した電子部品から簡便かつ効率的に剥離することが可能な粘着テープに関する。さらに本発明は前記粘着テープの剥離方法および前記粘着テープを用いた加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、接着信頼性の高い接合手段であり、一般に電子機器を構成する部品の固定などに広く使用されている。例えば、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器を構成する板金同士の固定や外装部品と筐体との固定に粘着テープは用いられる。携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器への外装部品や電池等の剛体部品の固定など部品固定用途、部品の仮固定用途にも粘着テープは用いられている。また製品情報を表示するラベル用途等でも粘着テープは使用されている。
【0003】
さらに半導体ウェハや積層セラミックコンデンサ、インダクタなどの超小型電子部品を製造するための様々な加工工程にも粘着テープは活用されている。例えば、原料となる基板の研削、基板の切断または分割を行う際の仮固定のために粘着テープが用いられている。
このような加工工程で用いられる粘着テープは、加工中に剥がれないための十分な接着性が求められるが、加工が終了した後には電子部品を汚染することなく剥離される必要がある。
【0004】
従来、前記加工後の剥離手段としては、粘着層内に炭酸ガスを内包するバルーンを配合した粘着テープを用いる手段がある。このような加熱発泡タイプの粘着テープを用い、加工後に加熱により粘着層内の炭酸ガスを発泡させて粘着層内のバルーンを膨張させ、粘着テープを加工後の製品から剥離する技術が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかし前記加熱発泡タイプの粘着テープを用いた場合、粘着テープを加熱する際に、仮固定している製品にも熱履歴がかかるため、微細化された製品内部でクラックが生じてしまうなどの影響を受ける可能性がある。また複数の加工工程を連続的に行うため、各工程間で仮固定テープから別の仮固定テープへ製品を移し替える場合がある。この場合、一つの製品に複数の仮固定テープが仮固定され、剥離する仮固定テープと剥離しない仮固定テープが工程により共存するため、発泡温度が異なる2種類の粘着テープを用いる必要がある。さらに剥離する仮固定テープでは発砲し、剥離しない仮固定テープでは発砲しないよう緻密な温度制御を行う必要がある。このような温度制御は困難であり、期待通りの剥離効率が得られるとは限らない。
【0006】
別の剥離手段としては、UVなどの電子線を照射することで硬化する粘着層を有する粘着テープを用いる手段がある。このようなUV硬化タイプの粘着テープを用い、加工後に粘着テープにUVを照射することで粘着層を硬化させ、粘着テープの接着力を低下させて、粘着テープを加工後の製品から容易に剥離する技術が活用されている(特許文献2)。
【0007】
しかしUV硬化タイプの粘着テープの場合、UV照射するための設備コストが高く、被着体がUVを透過しない等の理由からUVを照射する方向が特定されるため、製造上の制限を受けやすい。また、粘着テープの粘着層の硬化反応を十分に進行させて粘着力を低下させるために、粘着層に十分な量のUVを到達させる必要があり、UV照射量が十分でない場合は、硬化反応が不足してしまい、剥離の際に被着体に糊残り等の不具合が生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-229399号公報
【特許文献2】特開2002-121511号公報
【特許文献3】国際公開第2021/149569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、加工工程において加熱発泡タイプの粘着テープやUVタイプの粘着テープを用いない剥離方法を検討した。例えば特許文献3では、2以上の被着体がテープを介して接合された物品の解体において、粘着テープを少なくとも一方向へ延伸して剥離する方法(延伸剥離方法)が開示されている。前記剥離方法により剥離可能な粘着テープは、物品の接合および解体用途だけでなく、加工や搬送工程における部品の仮固定用途として有用であると推量される。
【0010】
前記延伸剥離方法は、延伸により粘着層と被着体との接着面積が徐々に減少する結果、被着体が粘着テープに追随できなくなることで接着状態が解除され、被着体が脱離する。したがって、被着体が粘着層から脱離する程度に、テープを延伸させて粘着層と被着体との接着面積を小さくする必要がある。しかし、特に小型で軽量の被着体の場合、テープの延伸による前記被着体の脱離が起こりにくく、接着状態が解除するまでの延伸距離が非常に大きくなり、剥離工程に時間および場所を必要とする傾向にある。
【0011】
本発明は前記実情に鑑みてなされたものであり、被着体を十分に固定または仮固定可能な初期接着力を有し、低伸度で引き伸ばすことで小型軽量の被着体から剥離可能な粘着テープおよびその剥離方法、並びに該粘着テープを用いた加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、被着体を十分に固定できる初期接着力を有し、且つ、低伸度で引き伸ばしたときに被着体が粘着層から脱離する程度に接着力が十分に低下し、粘着テープが被着体から剥離可能となる粘着テープを完成するに至った。
【0013】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基材と前記基材の少なくとも一方の面に100%伸長時強度が0.1N/mm以上、400%伸長時強度が5.5N/mm以下である粘着層を有し、単位幅当たりの100%伸長時強度が0.11N/mm以上である粘着テープ。
[2] 単位幅当たりの400%伸長時強度が0.2N/mm以上1N/mm以下である前記[1]に記載の粘着テープ。
[3] 単位幅あたりの破断強度が2.1N/mm以上である前記[1]または[2]に記載の粘着テープ。
[4] 単位幅あたりの伸長剥離強度が2.5N/mm以下である前記[1]から[3]のいずれかに記載の粘着テープ。
[5] 180°ピール接着強度が0.05N/mm以上である前記[1]から[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
[6] 前記粘着層がアクリル系粘着剤樹脂を含む前記[1]から[5]のいずれかに記載の粘着テープ。
[7] 前記基材がスチレン系樹脂またはウレタン系樹脂を含む前記[1]から[6]のいずれかに記載の粘着テープ。
[8] 前記粘着層がフィラーを含む前記[1]から[7]のいずれかに記載の粘着テープ。
[9] 前記粘着テープが、延伸により剥離可能である前記[1]から[8]のいずれかに記載の粘着テープ。
【0014】
また本発明は、下記の態様を有する。
[10] 前記[1]から[9]のいずれかに記載の粘着テープの前記粘着層に接着した被着体を、前記粘着テープを少なくとも一方向に延伸して前記粘着層から脱離する粘着テープの剥離方法。
[11] 前記被着体が小型電子部品である、前記[10]に記載の粘着テープの剥離方法。
【0015】
さらに本発明は、下記の態様を有する。
[12] 前記[1]から[9]のいずれかに記載の粘着テープの前記粘着層に被着体を接着し、前記被着体を加工する工程と、 前記粘着テープを少なくとも一方向に引き伸ばして、加工後の被着体を前記粘着層から剥離する工程、を有する、加工物の製造方法。
[13] 前記加工物が小型電子部品である、前記[12]に記載の加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被着体を十分に固定または仮固定可能な初期接着力を有し、且つ、低伸度で引き伸ばすことで被着体(特に小型軽量の被着体)から剥離可能となる伸長剥離が可能な粘着テープ及びその剥離方法を提供することができる。
【0017】
また本発明の加工物の製造方法によれば、本発明の粘着テープを用いるため、加工工程において被加工物である被着体を十分に仮固定でき、加工工程後の小型軽量の加工物を粘着テープから剥離除去する際に、加熱発泡やUV照射の必要がなく、粘着テープを少なくとも一方向に低伸度で引き伸ばすという簡便な伸長剥離方法で効率的に剥離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粘着テープ(以下、「本粘着テープ」とも記す。)は基材(以下、「本基材」とも記す。)と前記基材の少なくとも一方の面に100%伸長時強度が0.1N/mm以上、400%伸長時強度が5.5N/mm以下である粘着層(以下、「本粘着層」とも記す。)を有し、単位幅当たりの100%伸長時強度が0.11N/mm以上である。
【0019】
引き伸ばすことで剥離可能となる粘着テープは、水平方向や垂直方向等の所望の方向に引っ張ったときに、引張応力により引き伸ばされて伸長変形することで被着体との接着面積(接着領域)が減少して被着体から剥離する。具体的には粘着テープの伸長に伴い、粘着テープと被着体との接着面は外側から内側に向かって徐々に小さくなり、前記接着面の面積が被着体の固定に必要な接着力を発現可能な面積よりも小さくなることで被着体からの剥離が生じる。一方、被着体が手で支えられるなどの何らかの方法で支持されている状態の場合には粘着テープを伸ばした時の接着面積の減少による剥離挙動が有効に作用するが、被着体が微小なサイズであるなどの理由で支持できない状態の場合にはテープが伸長延伸される挙動に対して被着体が追従して移動してしまうため接着面積の減少が生じにくく、テープを大過剰に伸長延伸してようやく剥離挙動が作用し始めるという難点があり、長い伸長距離(伸度)が必要となる。
【0020】
また、低伸度で剥離される粘着テープは、通常、初期の粘着強度も劣るため、被着体を十分に固定できない場合がある。
【0021】
これに対し本粘着テープは、初期の粘着強度にも優れ、固定または仮固定に必要な初期接着力を有すると同時に、低伸度でも被着体が粘着層から脱離し、効率的に粘着テープを被着体から剥離することが可能となる。
【0022】
[基材]
本基材は、通常、樹脂を主成分とする基材用組成物により構成され、本粘着層が形成でき、被着体を支持するに十分な強度を有していればよい。また少なくとも一方向に延伸した時に、被着体から剥離するような適度な破断応力と破断強度を有しているのが好ましい。
本基材としては、樹脂フィルムや樹脂シート等の樹脂層を用いることができる。また、前記基材は、樹脂のみで構成されていても良く、樹脂の他に任意の成分を含んでいてもよい。
【0023】
本基材を構成する樹脂は、例えばスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
また前記樹脂は、ハードセグメントXおよびソフトセグメントYを有し、前記ソフトセグメントYが、直鎖状の構造単位と側鎖を有する構造単位とのランダムコポリマーで構成されるブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体を構成するソフトセグメントY内に、結晶性に寄与する直鎖状の構造単位と伸長性に寄与する側鎖を有する構造単位とがランダムに存在することで、伸長性と破断強度の向上とをより両立させやすくなるからである。すなわち、ソフトセグメントY中の側鎖を有する構造単位の立体障害により伸長性が損なわれるのを抑制でき、ソフトセグメントYによる伸張性が維持される。一方でソフトセグメントY中の直鎖状の構造単位の存在により、伸長させたときにソフトセグメントYが分子間で結晶組織を形成することで凝集力を高めて破断強度を高めることができる。前記ブロック共重合体は、ハードセグメントXによる効果とソフトセグメントYによる効果とが発揮されやすくなることから、トリブック以上の共重合体であることが好ましく、トリブロック共重合体が好ましい。このような樹脂としては、例えばハードセグメントXおよびソフトセグメントYとを有するスチレン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物であるスチレン系樹脂、ハードセグメントXおよびソフトセグメントYとを有するウレタン系ブロック共重合体および/またはその水素添加物であるウレタン系樹脂、ハードセグメントXおよびソフトセグメントYとを有するアクリル系ブロック共重合体および/またはその水素添加物であるアクリル系樹脂等が挙げられる。中でも前記ブロック共重合体は、トリブロック共重体であることが、優れた凝集力と伸長性を両立することができるためより好ましい。
【0025】
上述した樹脂の中でもスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂は、好適な破断応力や破断伸度に容易に調整し得る観点から好ましい。本基材は、成形性に優れ破断伸度や破断応力に優れた基材が得られやすいことから、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群から選択される樹脂が主成分であることが好ましい。基材を構成する全樹脂成分100質量%中に含まれる前記群から選択される樹脂の含有量が50質量%~100質量%の範囲内であることが好ましく、中でも70質量%~100質量%の範囲内が好ましく、80質量%~100質量%の範囲内がより好ましく、90質量%~100質量%の範囲内が更に好ましく、実質100質量%であること、すなわち本基材が前記群から選択される樹脂で構成されることが特に好ましい。
【0026】
(スチレン系樹脂)
本基材がスチレン系樹脂を主成分として含む場合、基材の全樹脂成分を100質量%として、スチレン系樹脂が占める割合は50質量%~100質量%の範囲内とすることができ、中でも60質量%~100質量%の範囲内が好ましく、65質量%~100質量%の範囲内がより好ましく、70質量%~100質量%の範囲内がさらに好ましく、90質量%~100質量%の範囲内が特に好ましい。また、基材の全樹脂成分中、スチレン系樹脂が100質量%であってもよい。スチレン系樹脂の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断応力が優れた基材を得ることができる。
【0027】
前記スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐構造、または多分岐構造の単一構造でも、異なる構造でもよい。線状構造が豊富なスチレン系樹脂は、基材に優れた破断伸度を与えることができる。一方、分岐構造や多分岐構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは、擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができる。このため、スチレン系樹脂は、必要な機械特性にあわせて二種以上の構造を有するスチレン系樹脂を混合して使用することが好ましい。
【0028】
前記スチレン系樹脂は、下記一般式(1)で示されるスチレン由来の構造単位を含む樹脂であればよく、中でも前記スチレン系樹脂は、スチレン系ブロック共重合体であることが好ましい。低伸長域での弾性率が低く、高強度かつ破断伸びに優れる基材とすることができるからである。
【0029】
【化1】
【0030】
前記スチレン系樹脂は、前記一般式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を5質量%~75質量%の範囲内で有することが好ましく、5質量%~50質量%の範囲内で有することがより好ましく、10質量%~45質量%の範囲内で有することが更に好ましく、10質量%~40質量%の範囲内で有することが特に好ましい。基材の破断伸度や破断応力が好適な範囲で得られ易くなるからである。
【0031】
前記スチレン系樹脂は、発明の目的および効果を損なわない限り、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を、1種または2種以上を有していてもよく、また官能基を有さないものであってもよい。例えば前記構造単位のベンゼン環上の水素が、メチルやエチル等のアルキル基で置換されていてもよく、置換するアルキル基の数は1から5のいずれでもよい。
【0032】
前記スチレン系樹脂は、中でもスチレン系ブロック共重合体が好ましい。低伸長域での弾性率が低く、高強度かつ破断伸びに優れる基材とすることができるからである。前記スチレン系樹脂は1種のスチレン系ブロック共重合体から構成されてもよく、2種以上のスチレン系ブロック共重合体の混合物であってもよい。
【0033】
スチレン系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体であり、芳香族ビニル化合物単位を主体とするブロック(以下、重合体ブロック(A)とも称す)と共役ジエン化合物単位を主体とするブロック(重合体ブロック(B)とも称す)を含む共重合体および/またはその水素添加物である。なお、「主体とする」とは、各重合体ブロックの合計質量を100質量%として、各重合体ブロック中に含まれる構造単位が50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。
【0034】
前記スチレン系ブロック共重合体中の前記一般式(1)等で表されるスチレン由来の構造単位の割合の好ましい範囲は、上述したスチレン系樹脂中の前記一般式(1)等で表されるスチレン由来の構造単位の好ましい範囲と同様とすることができる。基材の破断伸度や破断応力が好適な範囲で得られ易くなるからである。
【0035】
スチレン系ブロック共重合体の重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を構成する具体的な化合物については、例えば特開2022-094735号公報で開示される芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物が挙げられる。
【0036】
前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレン系ジブロック共重合体であってもよく、スチレン系トリブロック共重合体であってもよく、ジブロック共重合体およびトリブロック共重合体の混合物であってもよい。
スチレン系ブロック共重合体として具体的には、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレンーイソプレンーブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンープロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、1種を使用または2種以上併用してもよい。前記混合物としては、例えばスチレン-イソプレンブロック共重合体とスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体との混合物が挙げられる。
【0037】
また、前記スチレン系樹脂としては、スチレン系ブロック共重合体の主鎖の二重結合が水添された共重合体(以下、「水添スチレン系ブロック共重合体」とも記す。)であってもよい。中でもスチレン化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、直鎖状のブタジエン構造が水添された単位およびイソプレン構造が水添された単位のランダムコポリマーで構成されるブロックである重合体ブロックBと、で構成されるスチレン系ブロック共重合体の水添物が好ましい。前記重合体ブロックBは、結晶性に寄与する直鎖状の構造単位と伸長性に寄与する側鎖を有する構造単位とがランダムに存在ので、粘着テープの伸長性と破断強度の向上とをより両立させやすくなる。
前記重合体ブロックAは、ベンゼン環上の水素がメチル、エチル等のアルキル基で置換されていてもよい。置換するアルキル基の数は1から5のいずれでもよい。
【0038】
前記水添スチレン系ブロック共重合体としては、例えば上述したスチレン系ブロック共重合体の具体例として挙げたブロック共重合体の水添物が挙げられ、具体的には、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。なおスチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンで形成されるブロック共重合体の水添物である。また、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体は、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水添物である。中でもスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水添物が特に好ましい。
【0039】
本基材は、中でもスチレン系トリブロック共重合体および/または水添スチレン系トリブロック共重合体を主成分に含むことが好ましく、本基材中に100質量%~50質量%の範囲内で含まれることが好ましく、100質量%~60質量%の範囲内がより好ましく、100質量%~70質量%の範囲内がさらに好ましく、100質量%~80質量%の範囲内が特に好ましい。また、本基材を構成するスチレン系樹脂が、2以上のスチレン系ブロック共重合体を含む混合物である場合、前記混合物中のスチレン系トリブロック共重合体および/または水添スチレン系トリブロック共重合体の割合が100質量%~50質量%の範囲内が好ましく、100質量%~60質量%の範囲内がより好ましく、100質量%~70質量%の範囲内がさらに好ましく、100質量%~80質量%の範囲内が特に好ましい。本基材がスチレン系トリブロック共重合体および/またはその水添物を主成分に含むことで、低伸長域での弾性率が低く、高強度かつ破断伸びに優れるからである。
【0040】
スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で、1万~80万の範囲内が好ましく、3万~50万の範囲内がより好ましく、5万~30万の範囲内が更に好ましい。スチレン系ブロック共重合体のMwが前記好ましい範囲内であることで、加熱流動性や溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程における作業性が良好でありながら、熱耐久性を備えた基材を得ることができるため好ましい。
【0041】
本願明細書において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定される標準ポリスチレン換算値であり、GPC法の測定条件は下記のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万から2,000万(東ソー株式会社製)
【0042】
スチレン系ブロック共重合体の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、アニオンリビング重合法によりブロックを逐次重合する方法、リビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
また、2種類以上のスチレン系ブロック共重合体の混合物の製造方法としては、ひとつの重合工程で同時に混合物として製造することも可能である。例えばスチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物であれば、国際公開第2019/003933号に開示される方法により製造できる。
【0043】
(ウレタン系樹脂)
本基材がウレタン系樹脂を主成分として含む場合、本基材の全樹脂成分を100質量%として、ウレタン系樹脂が占める割合は50質量%~100質量%の範囲内が好ましく、60質量%~100質量%の範囲内がより好ましく、65質量%~100質量%の範囲内が更に好ましく、70質量%~100質量%の範囲内が特に好ましい。ウレタン系樹脂の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断応力が優れた基材を得ることができる。
【0044】
前記ウレタン系樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物を好適に使用することができる。前記反応物として具体的には、エステル系ポリウレタン、エ-テル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。前記ウレタン系樹脂は1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリオールは目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ポリオールは1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが、基材の機械特性を得ることができる観点から好ましい。基材において、耐熱性が必要となる場合はポリエステルポリオールを使用することが好ましく、耐水性や耐生分解性が必要な場合はポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0046】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステル、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0047】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、概ねMwが60から280程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0048】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;およびそれらの無水物またはエステル化物などが挙げられる。
【0049】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0050】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルおよび/またはホスゲンと、後述する低分子量のポリオールとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0051】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0052】
前記ポリカーボネートポリオールの製造に使用可能な、炭酸エステルおよび/またはホスゲンと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノールなどが挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネートは目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートは1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0055】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてウレタン系樹脂を製造する方法としては、例えば、反応容器に仕込んだポリオールを、常圧または減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、ポリイソシアネートを一括または分割して供給し反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基(NCO)と、ポリオールが有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH当量比)が、1~20の範囲内で行うことが好ましい。前記当量比は1.1~13の範囲内がより好ましく、1.2~5の範囲内が更に好ましく、1.5~3の範囲内が特に好ましい。
【0057】
ポリオールとポリイソシアネートとの反応条件としては、特に制限はなく、安全、品質、コスト等の諸条件を考慮して適宜選択することができるが、反応温度としては70~120℃が好ましく、反応時間としては30分間~5時間が好ましい。
【0058】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒、有機金属系触媒などを使用することができる。
【0059】
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行ってもよく、有機溶剤の存在下で行ってもよい。有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0060】
有機溶剤は、ウレタン系樹脂の製造途中またはポリウレタンを製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
【0061】
本基材は前記樹脂を含む単層構成でも多層構成でもよい。また各層は同じ樹脂を主成分として含んでいても異なる樹脂を主成分として含んでいてもよい。
本基材は、得られる粘着テープが所定の物性を発現可能となれば特に制限はないが、以下の物性を有するのが好ましい。
【0062】
本基材の単位幅あたりの破断強度は2N/mm以上が好ましく、2.5N/mm以上がより好ましく、3N/mm以上がよりいっそう好ましく、3.5N/mm以上がさらに好ましく、4N/mm以上が特に好ましい。また、本基材の単位幅あたりの破断強度は20N/mm以下が好ましく、15N/mm以下がより好ましく、10N/mm以下がよりいっそう好ましく、8N/mm以下が特に好ましい。本基材の破断強度を上記範囲内とすることで、本粘着テ-プを被着体から剥離する際に比較的早い速度で引っ張っても千切れることなく被着体から本粘着テ-プを剥離することができ、また、粘着テ-プを引っ張る際の応力が大きくなりすぎるのを抑制できる。
【0063】
本基材の単位幅あたりの破断強度は、本基材を標線長さ20mm、幅5mm(初期幅とする)のダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エ-・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断した時の応力値を初期幅で除した値を指す。
【0064】
本基材の単位幅あたりの破断強度は材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0065】
本基材の破断伸度は200%以上が好ましく、300%以上がより好ましく、400%以上がよりいっそう好ましく、500%以上が特に好ましい。また、本基材の破断伸度は2000%以下が好ましく、1800%以下がより好ましく、1700%以下がよりいっそう好ましく、1500%以下がさらに好ましく、800%以下が特に好ましい。前記基材の破断伸度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば200%~2000%の範囲内、例えば300%~1800%の範囲内、例えば400%~1700%以下の範囲内、例えば500%~1500%の範囲内、例えば500%~800%の範囲内とすることができる。基材の破断伸度を上記範囲内とすることで、本粘着テ-プが強固に被着体に接着している場合でも本粘着テ-プを剥がす際の応力が大きくなり過ぎず、また、本粘着テ-プを剥離する際に、本粘着テープの引き伸ばし距離が長くなり過ぎず小スペ-スでの作業が可能となる。
【0066】
本基材の破断伸度は、基材を標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エ-・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断した時に測定した引張伸び率を指す。
【0067】
前記破断伸度は材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0068】
本基材の単位幅あたりの25%伸長時強度は0.07N/mm以上が好ましく、0.10N/mm以上がより好ましく、0.15N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.20N/mm以上がさらに好ましい。また、本基材の単位幅あたりの25%伸長時強度は5.0N/mm以下が好ましく、3.0N/mm以下がより好ましく、2.0N/mm以下がよりいっそう好ましく、1.0N/mm以下が特に好ましい。前記基材の単位幅あたりの25%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば0.07N/mm~5.0N/mmの範囲内、例えば0.1N/mm~3.0N/mmの範囲内、例えば0.15N/mm~2.0N/mmの範囲内、例えば0.2N/mm~1.0N/mmの範囲内とすることができる。基材の単位幅あたりの25%伸長時強度を上記の範囲内とすることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度の状態で剥離し易くなり、また、被着体から本粘着テ-プを剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを伸ばすことができる。
【0069】
本粘着テ-プ中の基材の単位幅あたりの25%伸長時強度は、基材を標線間長さ20mm(初期標線間長さとする)、幅5mm(初期幅とする)のダンベル状に打ち抜き試験片を作成し、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エ-・アンド・デイ製)を用いて、前記試験片を引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、伸度が25%の際の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。
「25%伸長時」および「伸度が25%の際」とはそれぞれ、下記数式(1)で表される試験片の伸度が25%の時をいう。なお下記数式(1)において「試験片が伸長した距離」とは、伸長後の試験片の標線間長さから前記試験片の初期標線間長さを引いた値である。
試験片が伸長した距離/試験片の初期の標線間長さ×100=伸度% ・・・(1)
【0070】
前記基材の単位幅あたりの25%伸長時強度は、材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0071】
本基材の単位幅あたりの100%伸長時強度は0.10N/mm以上が好ましく、0.15N/mm以上がより好ましく、0.20N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.30N/mm以上がさらに好ましく、0.40N/mm以上がさらに好ましく、0.70N/mm以上が特に好ましい。また、本基材の単位幅あたりの100%伸長時強度は5.0N/mm以下が好ましく、3.0N/mm以下がより好ましく、2.0N/mm以下がよりいっそう好ましく、1.0N/mm以下が特に好ましい。前記基材の単位幅あたりの100%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば0.10N/mm~5.0N/mmの範囲内、例えば0.15N/mm~3.0N/mmの範囲内、例えば0.30N/mm~2.0N/mmの範囲内、例えば0.40N/mm~1.0N/mmの範囲内、0.70N/mm~1.0N/mmの範囲内とすることができる。
基材の単位幅あたりの100%伸長時強度を上記範囲内とすることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度の状態で剥離し易くなり、また、被着体から本粘着テ-プを剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを伸ばすことができる。
【0072】
本粘着テ-プ中の基材の単位幅あたりの100%伸長時強度は、上述した基材の単位幅あたりの25%伸長時強度の測定と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、伸度が100%の際の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。なお、「100%伸長時」および「伸度が100%の際」とはそれぞれ、上述した数式(1)で表される、試験片の伸度が100%の時をいう。
【0073】
前記基材の単位幅あたりの100%伸長時強度は、材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0074】
本基材の単位幅あたりの400%伸長時強度は0.2N/mm以上が好ましく、0.5N/mm以上がより好ましく、0.7N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.9N/mm以上がさらに好ましく、1.0N/mm以上がさらに好ましく、1.1N/mm以上が特に好ましい。また、本基材の単位幅あたりの400%伸長時強度は10.0N/mm以下が好ましく、7.0N/mm以下がより好ましく、6.0N/mm以下がよりいっそう好ましく、5.0N/mm以下が特に好ましい。前記基材の単位幅あたりの400%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば0.2N/mm~10N/mmの範囲内、例えば0.5N/mm~10N/mmの範囲内、例えば0.7N/mm~7N/mmの範囲内、例えば0.9N/mm~6N/mmの範囲内、1.0N/mm~5N/mmの範囲内、1.1N/mm~5N/mmの範囲内とすることができる。
基材の単位幅あたりの400%伸長時強度を上記範囲内とすることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度の状態で剥離し易くなり、また、被着体から本粘着テ-プを剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを伸ばすことができる。
【0075】
本粘着テ-プ中の基材の単位幅あたりの400%伸長時強度は、上述した基材の単位幅あたりの25%伸長時強度の測定と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、伸度が400%の際の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。なお、「400%伸長時」および「伸度が400%の際」とはそれぞれ、上述した数式(1)で表される、試験片の伸度が400%の時をいう。
【0076】
前記基材の単位幅あたりの400%伸長時強度は、材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0077】
本基材の平均厚さは10μm以上が好ましく、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上がよりいっそう好ましい。厚さが10μm以上であることにより、粘着テープを取り扱う際のシワなどによる作業不良を抑制することができる。また、本基材の平均厚さは500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましい。本基材の平均厚さを500μm以下とすることで、厚さが大きすぎることによる本粘着テープが延伸しにくくなることを避けることができる。本基材の平均厚さの好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば20μm~500μmの範囲内、例えば30μm~450μmの範囲内、例えば40μm~450μmの範囲内とすることができる。
【0078】
なお、本基材の平均厚さは、後述する実施例において説明する方法により測定される値である。
【0079】
本基材は、前記樹脂の他に、必要に応じてその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与樹脂、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニアおよび五酸化アンチモン等が挙げられる。これらは、1種を用いても2種以上を併用してもよい。本基材におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0080】
[粘着層]
本粘着テープは、前記本基材の少なくとも一方の面に本粘着層を有する。本粘着層は前記本基材の片面のみに有ってもよく、両面に有ってもよい。
【0081】
本粘着層の100%伸長時応力が0.1N/mm以上であることで、従来の300%から500%の伸度で伸長剥離されていた粘着テープと比較して、低伸度で被着体から剥離することができる。本粘着層の100%伸長時強度は、中でも0.2N/mm以上が好ましく、0.3N/mm以上がより好ましく、0.5N/mm以上が更に好ましく、0.8N/mm以上が特に好ましい。本粘着層の100%伸長時強度が前記範囲内であることで、従来300%から500%の伸度で伸長剥離されていた粘着テープと比較して低伸度で被着体から剥離することができる。本粘着剤層の100%伸長時応力が小さすぎると、本粘着テープを剥がす際に過剰に引き伸ばす必要が生じることや、被着体に糊残りが生じてしまうことがある。また本粘着層の100%伸長時応力は、粘着テープに好適な接着力を付与する観点から2N/mm以下が好ましく、1.5N/mm以下が中でも好ましく、1.2N/mm以下がより好ましく、1N/mm以下が更に好ましく、1N/mm未満が特に好ましい。
【0082】
本粘着層の100%伸長時応力の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば0.1N/mm以上2N/mm以下、中でも好ましくは0.2N/mm以上1.5N/mm以下、より好ましくは0.3N/mm以上1.2N/mm以下、更に好ましくは0.5N/mm以上1N/mm以下、特に好ましくは0.8N/mm以上1N/mm以下である。粘着層の100%伸長時応力を前記範囲内とすることで、本粘着テープとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際に低伸度で容易に被着体が脱離することが可能となる。
【0083】
また、本粘着層の400%伸長時強度が5.5N/mm以下であることで、初期の粘着強度にも優れ、固定または仮固定に必要な初期接着力を有することができる。本粘着層の400%伸長時強度は、中でも5.0N/mm以下が好ましく、4.5N/mm以下がより好ましく、4.0N/mm以下が更に好ましい。低伸度による剥離性を低下させずに、優れた初期粘着力を発現することができる。なお、粘着層の400%伸長時応力が大きすぎると、好適な接着力を得られにくくなる。また本粘着層の400%伸長時応力は、0.1N/mm以上が好ましく、0.3N/mm以上が中でも好ましく、0.5N/mm以上がより好ましく、2N/mm以上がよりいっそう好ましく、2.5N/mm以上が更に好ましく、3N/mm以上が特に好ましい。粘着層の400%伸長時応力が小さすぎると、粘着テープを剥がす際に過剰に粘着テープを伸ばす必要が生じることや糊残りが生じてしまうことがある。
【0084】
本粘着層の400%伸長時応力の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば0.1N/mm以上5.5N/mm以下、中でも好ましくは0.3N/mm以上5.0N/mm以下、より好ましくは2.0N/mm以上4.5N/mm以下、更に好ましくは2.5N/mm以上4.0N/mm以下、特に好ましくは3.0N/mm以上4.0N/mm以下である。粘着層の400%伸長時応力が前記範囲内であると、本粘着テープとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。
【0085】
本粘着層の100%伸長時強度および400%伸長時強度は、本粘着層を厚み(初期厚みとする)100μmとなる様に積層し、標線間長さが20mm(初期標線間長さとする)、幅が5mm(初期幅とする)のダンベル状に打ち抜き試験片を作成し、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、前記試験片を引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、100%および400%伸長時の応力値(単位:N)を、前記試験片の初期厚み(単位:mm)と初期幅(単位:mm)で除して算出することができる。100%伸長時および400%伸長時とは下記数式(2)で表される試験片の伸度がそれぞれ100%および400%の時である。下記数式(2)において試験片が伸長した距離とは、伸長後の試験片の標線間長さから前記試験片の初期標線間長さを引いた値である。
試験片が伸長した距離/初期標線間長さ×100=伸度% ・・・(2)
【0086】
本粘着層の25%伸長時応力は、特に限定されないが、0.01N/mm以上が、0.02N/mm以上がより好ましく、0.03N/mm以上がよりいっそう好ましい。また本粘着層の25%伸長時応力は、0.8N/mm以下が好ましく、0.6N/mm以下がより好ましく、0.55N/mm以下が更に好ましく、0.5N/mm以下が特に好ましい。本粘着層の25%伸長時応力の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定することができ、例えば0.01N/mm以上0.8N/mm以下、中でも好ましくは0.02N/mm以上0.6N/mm以下、より好ましくは0.03N/mm以上0.55N/mm以下、更に好ましくは0.03N/mm以上0.5N/mm以下である。本粘着層の25%伸長時応力が前記好ましい範囲内であると、本粘着テープとしてさらに好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際にさらに比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、粘着層の25%伸長時応力が小さすぎると、粘着テープを剥がす際に糊残りが生じてしまう場合があり、大きすぎると粘着テープを引き剥がす際、粘着テープを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
【0087】
本粘着層の25%伸長時応力は、前記100%伸長時応力および400%伸長時応力の測定と同じ試験片、同じ測定条件で長さ方向に引っ張り、25%伸長した時(前記式数(2)で表される伸度が25%の時)の伸長時強度をいう。
【0088】
本粘着層の平均厚さは1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がよりいっそう好ましい。また、本粘着層の平均厚さは、200μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましく、30μm以下が特に好ましい。基材の平均厚さの好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば1μmから200μm、例えば3μmから80μm、例えば5μmから60μmの範囲とすることができる。「本粘着層の平均厚さ」とは、本粘着テープにおける基材の一方の面に有する粘着層の平均厚さを意味する。本粘着テープが両面に粘着層を有する場合、一方の面の粘着層の平均厚さと、他方の面の粘着層の平均厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じ厚さが好ましい。
【0089】
本粘着層の平均厚さは、後述する実施例において説明する方法により測定される値である。
【0090】
本粘着層は、粘着剤樹脂を含有し、必要に応じて、粘着付与樹脂またはフィラーを含んでもよく、両者を含んでもよい。中でも本粘着層は、粘着剤樹脂およびフィラーを含むことが好ましく、粘着剤樹脂、フィラーおよび粘着付与樹脂を含むことが更に好ましい。本粘着層は、粘着剤樹脂を少なくとも含む粘着剤組成物により形成され、前記粘着剤樹脂を主成分として含む。主成分とは、粘着層(粘着剤組成物)全体の中で最大の質量%を占める成分をいう。粘着剤樹脂の含有量は、粘着層(粘着剤組成物)中に30質量%以上とすることができ、好ましくは40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、80質量%以上である。
【0091】
<粘着剤樹脂>
本粘着層が含有する粘着剤樹脂としてはアクリル系粘着剤樹脂、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤およびゴム系粘着剤が挙げられる。中でも、アクリル系粘着剤樹脂またはゴム系粘着剤樹脂が好ましく、アクリル系粘着剤樹脂がより好ましい。
【0092】
<<アクリル系粘着剤樹脂>>
前記粘着剤樹脂がアクリル系粘着剤樹脂を含有する場合、前記粘着剤樹脂はアクリル系粘着剤樹脂のみを含んでいてもよく、アクリル系粘着剤樹脂を主成分に含み、更にそれ以外の粘着剤樹脂を含んでいても良い。得られる本粘着テープの剥離性と粘着力を両立しやすいことから、本粘着層が含有する粘着剤樹脂の合計量を100質量%として、アクリル系粘着剤樹脂の含有量は50質量%以上が好ましい。
【0093】
アクリル系粘着剤樹脂は1種または2種以上のアクリル重合体により構成される。アクリル重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体およびランダム共重合体の混合物であってもよい。また、アクリル系粘着剤樹脂において、アクリル重合体は架橋構造を有していてもよい。即ち、前記アクリル系粘着剤樹脂が、アクリル共重合体と架橋剤との反応物であってもよい。
【0094】
(アクリル系ブロック共重合体)
前記アクリル系ブロック共重合体は、ジブロック共重合体であってもよく、トリブロック共重合体であってもよく、テトラブロック以上のブロック共重合体であっても良い。また、アクリル系粘着剤樹脂は、ブロック構造の異なるアクリル系ブロック共重合体を2種以上併用しても良い。中でも前記アクリル系ブロック共重合体は、アクリル系ジブロック共重合体およびアクリル系トリブロック共重合体の少なくとも1種を用いることが好ましく、凝集力が得られやすく保持力等に優れることからアクリル系トリブロック共重合体を用いることがより好ましい。
前記アクリル系ブロック共重合体としては、下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位を有するトリブロック共重合体を用いることができる。
【0095】
【化2】
【0096】
(前記一般式(2)中、A、BおよびCはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、AおよびCはそれぞれ独立して、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。Bはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。p、qおよびrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。AとCとは同一の化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位でも異なる化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位であってもよい。前記一般式中(2)中、*は他の原子との結合を表わす結合手であり、以下も同じである。)
【0097】
前記一般式(2)中のAおよびCはそれぞれ独立して、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。なお、「メタクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、メタクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合またはグラフト重合した場合の、メタクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。本発明における、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(3)で表わされるメタクリル酸アルキルエステル単量体単位が好ましい。
【0098】
【化3】
【0099】
(前記一般式(3)中、Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1または2以上水素原子は、置換基Rに置換されてもよい。置換基Rは、例えばハロゲン原子、アミノ基、シアノ基である。)
【0100】
前記一般式(3)中、Rは、優れた粘着強度と剥離性を両立する観点から、炭素原子数が1から12のアルキル基が好ましく、基材の凝集性を高め破断強度を高める観点から炭素原子数が1から4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数が1または2のアルキル基がさらに好ましい。また、前記一般式(3)中、炭素原子数が1から12のアルキル基は、直鎖状、分岐状、または環状であってもよいが、凝集性を高め、破断強度の高い基材が得られる観点で、直鎖状または分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0101】
前記一般式(3)中、炭素原子数が1から12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、およびアダマンチル基の環状のアルキル基が挙げられる。これらのうち、破断強度の高い基材を形成させる観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、またはシクロブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。前記アルキル基中の1または2以上の水素原子は、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基で置換されてもよい。
【0102】
前記メタクリル酸アルキルエステル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2-ヘキシルデシル等が挙げられる。これらのうち、得られる粘着テープの優れた粘着強度と剥離性を両立する観点から、メタルクリル酸メチルが好ましい。
【0103】
前記一般式(2)中の前記Bは、アクリル酸アルキルエステル単量体単位を表わす。本明細書における「アクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、アクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合またはグラフト重合した場合の、アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちアクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(4)で表わされるアクリル酸アルキルエステル単量体単位が好ましい。
【0104】
【化4】
【0105】
(前記一般式(4)中、Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、前記アルキル基中の1または2以上の水素原子は、置換基Rに置換されてもよい。置換基Rは、例えばハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基である。)
【0106】
前記一般式(4)中、Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数が4から8のアルキル基がさらに好ましい。前記一般式(4)中、炭素原子数が1から12のアルキル基は、直鎖状、分岐状、または環状であってもよいが、直鎖状または分岐状が好ましい。また、炭素原子数が1から12のアルキル基としては、前記一般式(3)中で例示したアルキル基と同様である。
【0107】
前記一般式(4)中の好ましいRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、またはドデシル基等の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、或いは、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、またはアダマンチル基等の環状のアルキル基である。前記アルキル基中の1または2以上の水素原子は、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基で置換されてもよい。
【0108】
前記アクリル酸アルキルエステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらのうち得られる粘着テープの接着力と再剥離性の両立の観点から、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよび、これらの共重合体が好ましい。
【0109】
前記一般式(2)中のp、qおよびrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。前記p、qおよびrはそれぞれの値が分子量等に関係する。p/(p+q+r)は、0.02~0.40が好ましく、0.05~0.37がより好ましい。q/(p+q+r)は、0.20~0.95が好ましく、0.25~0.90がより好ましい。r/(p+q+r)は、0.02~0.40が好ましく、0.05~0.37がより好ましい。
【0110】
前記アクリル系ブロック共重合体は、以下の一般式(5)で表わされる繰り返し単位を有するアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
【0111】
【化5】
【0112】
(前記一般式(5)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、前記アルキル基中の1または2以上水素原子は、置換基Rで置換されてもよい。置換基Rは、例えばハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基である。Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、前記アルキル基中の1または2以上水素原子は、置換基Rで置換されてもよい。前記置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基である。)
【0113】
前記一般式(5)中、Rは、前記一般式(3)におけるRと同様である。前記一般式(5)中、Rは、前記一般式(4)におけるRと同様である。前記一般式(5)中、Rは、前記一般式(3)におけるRと同様である。また、前記一般式(5)中、p、qおよびrは、前記一般式(2)におけるp、qおよびrと同様である。さらに、前記一般式(5)中、RおよびRは同一であっても、異なっていてもよい。
【0114】
前記トリブロック共重合体が前記一般式(5)で表わされる場合、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましく、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、またはウンデシル基からなる群から選択されることが好ましい。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0115】
トリブロック共重合体は、前記一般式(2)中のAおよびCは同一であっても良く異なっても良いが同一が好ましい。AとCとが同一であるA-B-A型トリブロック共重合体の場合、得られる粘着層により高い凝集力が付与することができ、剥離性、および優れた接着力をより確保しやすくなる。
【0116】
前記アクリル系トリブロック共重合体の好ましい形態としては、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチルブロック、ポリメタクリル酸エチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸エチルブロック、ポリメタクリル酸プロピルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸プロピルブロック、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸t-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチルブロック、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸プロピルブロック-ポリメタクリル酸メチルブロックが挙げられる。
【0117】
また、前記アクリル系ブロック共重合体として、一般式(6)で表わされる繰り返し単位を有するジブロック共重合体を使用することができる。
【0118】
【化6】
【0119】
(前記一般式(6)中、DおよびEはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、Dは、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、Eはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。sおよびtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。)
【0120】
前記ジブロック重合体は、以下の一般式(7)で表わされる繰り返し単位を有するジブロック重合体が好ましい。
【0121】
【化7】
【0122】
前記一般式(7)中、Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、前記アルキル基中の1または2以上の水素原子は、置換基Rで置換されてもよい。置換基Rは、例えばハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基である。Rは、炭素原子数が1から12のアルキル基を表し、前記アルキル基中の1または2以上の水素原子は、置換基R10で置換されてもよい。前記置換基R10は、例えばハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基である。sおよびtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。
【0123】
前記一般式(7)中、Rが表す具体的な官能基としては、前記一般式(3)におけるRとして例示した基と同様である。前記一般式(7)中、Rが表す具体的な官能基としては、前記一般式(4)におけるRとして例示した基と同様である。
【0124】
前記一般式(6)および(7)中、sおよびtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。sおよびtのそれぞれの値は分子量等に関係する。s/(s+t)は、0.01~0.99が好ましく、0.1~0.9がより好ましい。t/(s+t)は、0.01~0.99が好ましく、0.1~0.9がより好ましい。
【0125】
前記アクリル系ブロック共重合体は、前記トリブロック共重合体のみを1種または2種以上含んでいても良く、前記ジブロック共重合体のみを1種または2種以上含んでいても良い。また、前記アクリル系ブロック共重合体としては、前記トリブロック共重合体と前記ジブロック共重合体との混合物を使用することができ、前記混合物における前記ジブロック共重合体の含有量は目的に応じて適宜選択することができる。
【0126】
前記アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は5万~30万の範囲内が好ましく、10万~25万の範囲内がより好ましく、13万~23万の範囲内が更に好ましい。また、前記アクリル系ブロック共重合体の数平均分子量(以下、「Mn」とも記す。)は5万~30万の範囲内が好ましく、10万~25万の範囲内がより好ましく、13万~23万の範囲内がさらに好ましい。中でも前記ブロック共重合体のMwは10万~25万の範囲内であり、且つMnは10万~25万の範囲内がより好ましく、前記ブロック共重合体のMwは13万~23万の範囲内であり、且つMnは13万~23万の範囲内がさらに好ましい。一般式(2)、(5)で表わされるアクリル系トリブロック共重合体のMwおよびMnの好適範囲、並びに一般式(6)、(7)で表わされるアクリル系ジブロック共重合体のMwおよびMnの好適範囲も前記範囲と同じである。
【0127】
前記アクリル系ブロック共重合体のMwおよび/またはMnは剥離性の観点からそれぞれ前記範囲が好ましく、中でもMwおよびMnが同時に前記の範囲を満たすことで、より優れた再剥離性が得られる点で好ましい。
【0128】
前記アクリル系ブロック共重合体のMwおよびMnはGPC法により、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される。MwおよびMnは標準ポリスチレン換算値であり、GPC法による測定条件は前記と同じである。
【0129】
前記アクリル系ブロック共重合体は、必要に応じて、分子側鎖中または分子主鎖末端において、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基などの官能基などで変性されてもよい。
【0130】
前記ブロック共重合体の製造方法は、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法によりブロック共重合体を逐次重合する方法などが挙げられる。また、前記ブロック共重合体が、例えば、シンジオタクチシティーのような立体規則性を有する場合、有機金属錯体を用いた公知の方法を利用してもよい。
【0131】
(アクリル系ランダム共重合体)
前記アクリル系ランダム共重合体は、例えば、(メタ)アクリレート単量体を重合させることによって製造することができる。なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタアクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、炭素原子数が1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
【0132】
炭素原子数が1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
炭素原子数が1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数が4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、n-ブチルアクリレートを使用することが、被着体に対する優れた密着性を確保する上で特に好ましい。
【0134】
炭素原子数が1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系ランダム共重合体の製造に使用する単量体(アクリル系ランダム共重合体の構成単位)の全量に対して80質量%~98.5質量%の範囲内で使用することが好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲内で使用することがより好ましい。
【0135】
アクリル系ランダム共重合体の製造に使用可能な単量体としては、上述のものの他に、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することができる。
高極性ビニル単量体としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル単量体等の(メタ)アクリル単量体、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
水酸基を有するビニル単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0137】
中でもアクリル系ランダム共重合体を構成する単量体が、水酸基を有するビニル単量体を含むことで、架橋剤との反応により架橋構造を形成可能となるため好ましい。水酸基を有するビニル単量体は、アクリル系ランダム共重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、0.01質量%~1.0質量%の範囲内で使用することが好ましく、0.03質量%~0.3質量%の範囲内で使用することがより好ましい。
【0138】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0139】
アミド基を有するビニル単量体の具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0140】
前記高極性ビニル単量体としては、上述したビニル単量体の他に、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体等を使用することができる。
【0141】
高極性ビニル単量体は前記アクリル系ランダム共重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、1.5質量%から20質量%の範囲で使用することが好ましく、1.5質量%から10質量%の範囲で使用することがより好ましく、2質量%から8質量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性の点でバランスのとれた粘着層を形成できるため更に好ましい。
【0142】
アクリル系ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は、30万~300万が好ましく、50万~250万がより好ましい。前記アクリル系ランダム共重合体のMwはGPC法により、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される標準ポリスチレン換算値であり、GPC法による測定条件は前記と同じである。
【0143】
前記アクリル系ランダム重合体の製造方法としては、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法で重合させる方法などが挙げられる。これらの中でも、アクリル系ランダム重合体は、溶液重合法、塊状重合法で製造することが好ましい。
【0144】
重合の際には、必要に応じて、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系熱重合開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾの熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤などを使用することができる。
【0145】
<<ゴム系粘着剤樹脂>>
前記粘着剤樹脂がゴム系粘着剤樹脂を含有する場合、前記粘着剤樹脂はゴム系粘着剤樹脂のみを含んでいてもよく、ゴム系粘着剤樹脂を主成分とし更にそれ以外の粘着剤樹脂を含んでいても良い。得られる本粘着テープの剥離性と粘着力を両立しやすいことから、本粘着層が含有する粘着剤樹脂の合計量を100質量%として、ゴム系粘着剤樹脂の含有量は50質量%以上が好ましい。
【0146】
ゴム系粘着剤樹脂としては、合成ゴム系粘着剤樹脂や天然ゴム系粘着剤樹脂等の一般的に粘着剤樹脂として使用できるゴム材料が挙げられる。ゴム系粘着剤樹脂としては、例えば非ジエン系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、例えばシリコーンゴムが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物の単独重合体、および、共役ジエン化合物と他の化合物との共重合体が挙げられる。前記単独重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、およびクロロプレンゴムが挙げられる。前記共重合体としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、およびスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0147】
中でもゴム系粘着剤樹脂としては、スチレン系樹脂が好ましい。前記スチレン系樹脂としては、前記スチレン系ブロック共重合体が好ましく、中でも樹脂芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体が好ましく、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体が好ましい。前記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に1つ結合した化合物を指す。前記芳香環の代表例として、ベンゼン環が挙げられる。ベンゼン環はビニル基を有しない、例えばアルキル基のような官能基で置換されたベンゼン環でもよい。
前記モノビニル置換芳香族化合物は、ブロック共重合体においてハードセグメント(Aセグメント)を構成するものであり、具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。中でもスチレンが好ましい。
前記共役ジエン化合物は、ブロック共重合体においてソフトセグメント(Bセグメント)を構成するものであり、具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0148】
前記ブロック共重合体における前記モノビニル置換芳香族化合物の共重合割合は、ブロック共重合体の全質量を100質量%として、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。ただしモノビニル置換芳香族化合物は2種以上を併用してもよい。
【0149】
前記ブロック共重合体における前記共役ジエン化合物の共重合割合は、ブロック共重合体の全質量を100質量%として、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。ただし共役ジエンは2種以上を併用してもよい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着テープが実現され得る。
【0150】
前記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体は、ポリマー鎖の末端に、例えばスチレンブロックのようなAセグメントを有しているのが好ましい。ポリマー鎖の末端にあるAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上すると考えられる。また、前記ブロック共重合体は、水素添加した水添ブロック共重合体であってもよい。
【0151】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(水素ブロック共重合体を含む)として、具体的には、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0152】
ゴム系粘着剤樹脂は、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン系樹脂を2種以上併用することが、粘着テープに優れた接着物性と保持力を与えることができるためより好ましく、スチレン-イソプレン共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物が特に好ましい。
【0153】
<<ウレタン系粘着剤樹脂>>
ウレタン系粘着剤樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物であるウレタン系ポリマーを用いることができる。ウレタン系ポリマーとしては、粘着剤として機能し得るものであれば特に限定されず、例えばエーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。ウレタン系ポリマーを構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0154】
<架橋剤>
本粘着層を構成する粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいても良い。粘着剤樹脂の種類に応じて架橋剤を用いることで、粘着剤樹脂と架橋剤とが反応して、粘着層の凝集力をより一層向上させたり、粘着特性を調整することができるからである。
【0155】
前記架橋剤は目的に応じて適宜選択され、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。これらは、1種を使用しても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋剤は、アクリル重合体の製造後に混合し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、アクリル重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0156】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種を使用して2種以上を併用してもよい。これらの中でも、3官能のポリイソシアネート系化合物である、トリレンジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン付加体、トリフェニルメタンイソシアネートが特に好ましい。
【0157】
前記架橋剤を用いた場合、架橋度合いの指標として粘着層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。粘着層のゲル分率としては目的に応じて適宜設定することができるが、凝集性と接着性がともに良好な粘着層が得られる観点から、粘着層のゲル分率は10質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上65質量%以下がより好ましく、35質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0158】
なお、ゲル分率は、下記方法で測定された値を指す。
(測定方法)
剥離シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤樹脂、または必要に応じて添加剤を含有する粘着剤組成物を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日間エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め試料のトルエン浸漬前の質量を測定する。トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の前記試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定する。ゲル分率は下記数式(3)に従って求められる。
ゲル分率(質量%)=G2/G1×100 ・・・(3)
なお、前記数式(3)中、G1は試料のトルエン浸漬前の質量、G2は110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量である。
【0159】
<粘着付与樹脂>
本粘着層は、必要に応じて粘着付与樹脂を含有してもよい。前記粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これら粘着付与樹脂の中では、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好ましい。
【0160】
前記ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジンまたは生ロジン;これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等の変性ロジン;その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。前記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化物、変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化物等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類、特に、ロジンエステル類の金属塩;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0161】
前記テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂をフェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等変性した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。前記変性テルペン樹脂の例としては、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
【0162】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、スチレン-オレフィン系共重合体等の脂肪族および芳香族系石油樹脂、脂肪族および脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0163】
前記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が95℃以上である粘着付与樹脂が好ましい。95℃以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着層の場合、より接着力に優れた粘着テープが実現される。前記で例示した粘着付与樹脂のうち、前記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂、例えばテルペン変性フェノール樹脂、およびロジン系粘着付与樹脂、例えば、重合ロジンのエステル化物等が好ましい。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃である。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0164】
粘着剤樹脂中の前記粘着付与樹脂の含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、被着体との密着性の確保の観点から、粘着剤樹脂100質量部に対して5質量部から65質量部の範囲が好ましく、8質量部から55質量部の範囲がより好ましい。
【0165】
<フィラー>
本粘着層はフィラーを含有してもよい。フィラーの種類は1種でも2種以でもよい。本粘着テープが伸長した際にフィラーが粘着層から露出し、これにより粘着層と被着体との接着面積が小さくなり、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥離することができる。
【0166】
前記フィラーの種類は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、無機フィラーであってもよく、有機フィラーであってもよく、有機-無機複合フィラーであってもよい。これらは、1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0167】
前記有機フィラーとしては、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素-ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含有する有機フィラーが挙げられる。また、有機フィラーとして熱硬化樹脂系中空フィラーなどが挙げられる。
【0168】
前記無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ホウ素化チタン、カーボン、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズ、酸化スズの水和物、硼砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム-カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、赤リン、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト、シリカ(石英、ヒュームドシ リカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)、シリコーン、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、セリウム、錫、インジウム、炭素、イオウ、テリウム、コバルト、モリブデン、ストロンチウム、クロム、 バリウム、鉛、酸化錫、酸化インジウム、ダイヤモンド、マグネシウム、白金、亜鉛、マンガン、ステンレス等の無機材料を含有する無機フィラーが挙げられる。
【0169】
前記シリカは石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等が挙げられる。
前記無機フィラーの中でも、水酸化アルミニウム、ニッケルなどの無機フィラーが好ましい。
【0170】
また、前記無機フィラーは、本粘着層への分散性向上のため、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などの表面処理を施した無機フィラーが好ましい。
【0171】
有機-無機複合材料のフィラーとしては、シリコーンを含有するフィラー(シリコーンフィラー)が挙げられる。シリコーンは、無機成分であるシロキサン結合が主鎖で、側鎖がアルキル鎖等の有機基でつながった無機-有機ハイブリッド構造を有するポリマーである。シリコーンフィラーは、剥離性の効果を高く発揮できるとともに、テープの粘着強度をより高めることができため好ましい。
【0172】
前記フィラーとして、表面がシリコーンレジンであるフィラーを用いるのが好ましい。表面がシリコーンレジンであるフィラーを粘着層が含有する場合、フィラーを添加しても接着性を損なわずに優れた剥離性を得ることができる。
【0173】
表面がシリコーンレジンであるフィラーとしては、フィラー表面にシリコーンレジンで形成された領域を有するフィラーであればよく、例えば、フィラー自体がシリコーンレジンで形成されるフィラーや、表面の一部または全部にシリコーンレジンを有するフィラーでもよい。
表面の全部にシリコーンレジンを有するフィラーとしては、例えば表面がシリコーンレジンで形成された殻(シェル)を有し、前記殻の内部が中空であるフィラーが挙げられる。
【0174】
また表面の一部または全部にシリコーンレジンを有するフィラーとしては、内部がシリコーンレジン以外の化合物であるフィラーが挙げられ、フィラーの核(コア)がシリコーンレジン以外の化合物であるフィラーが挙げられる。例えば、シリコーンレジン以外の化合物からなるフィラーであって、その表面をシリコーンレジンが被覆したものが好ましく、内部の材料がシリコーンゴムのようにゴム弾性を有する材料であるフィラーがさらに好ましい。
【0175】
表面がシリコーンレジンであるフィラーとしては、核がゴム材料で形成され、前記核を被覆する殻がシリコーンレジンで形成されたコアシェル構造を有するフィラーが好ましい。
フィラーの内部の材料が弾性を有する材料の場合、より効果的に本粘着層の接着性能を確保することができる。これらのフィラーは1種を使用しても2種以上を併用してもよい。前記フィラーは、公知の製造方法によって作製することができ、市販品として入手可能である。
【0176】
内部がシリコーンゴムであり表面にシリコーンレジンが存在するフィラーとしては、例えば、直鎖状のオルガノポリシロキサンを三次元架橋させてなるシリコーンゴムフィラー(例えば特開昭63-77942号公報、特開平3-93834号公報、特開平04-198324号公報を参照)、または、シリコーンゴムを粉末化した粒子(例えば米国特許第3843601号明細書、特開昭62-270660号公報、特開昭59-96、122号公報を参照)などの表面を(R’SiO3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を持つポリオルガノシルセスキオキサン硬化物であるシリコーンレジンで被覆した構造のフィラー(特開平7-196815号公報参照)が挙げられる。なおR’は置換または非置換の一価の炭化水素基を表す。
前記内部がシリコーンゴムであり表面にシリコーンレジンが存在するフィラーとしては、トレフィルE-500、トレフィルE-600、トレフィルE-601、トレフィルE-850等がそれぞれ前記の商品名で東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)から、また、KMP-600、KMP-601、KMP-602、KMP-605等が信越化学工業(株)から市販されており、それらが使用できる。
【0177】
フィラー自体がシリコーンレジンで形成されるフィラーとしては、ポリオルガノシルセスキオキサン微粉末を含むフィラーが挙げられる。
【0178】
表面がシリコーンレジンであるフィラーの形状は、目的に応じて適宜選択することができ、規則的な形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。フィラーの形状の具体例としては、多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの形状は、楕円状、球状、多角形状が好ましく、球状がより好ましい。フィラーの形状が、楕円状、球状、多角形状などの形状であると、本粘着テープが伸長した際に、本粘着層の被着体に対する滑りが良好となり、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥離することができる。これらの形状のフィラーは、1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0179】
前記フィラーの粒度分布は目的に応じて適宜選択することができるが、2.5から20が好ましく、2.5から15がより好ましく、2.5から5が更に好ましい。フィラーの粒度分布が前記好ましい範囲内であると、本粘着テープに好適な接着特性が得られる。また、本粘着テープを引き伸ばして被着体を剥離させるときの粘着テープの伸度が低い状態で剥離することができる点で好ましい。
なお前記フィラーの粒度分布は以下のようにして求められる。
(粒度分布の求め方)
マイクロトラック等のレーザー回折散乱法を用いた測定機を使用し、フィラーの粒子径を測定し、フィラーの全体積を100%として粒径に対する体積の累積カーブを求める。得られた累積カーブ上で累積体積が10%となる点の粒子径をD10、累積体積が90%となる点の粒子径をD90とし、D90をD10で除した値、D90/D10、が粒度分布の値である。
【0180】
前記フィラーの平均粒径は通常0.1μm以上とすることができ、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上である。また、前記フィラーの平均粒径は40μm以下が好ましく、中でも35μm以下が好ましく、33μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましく、10μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒径が前記好ましい範囲内にあると、本粘着テープに好適な接着特性が得られる。また、本粘着テープを引き伸ばして被着体を剥離させるときの粘着テープの伸度が低い状態で剥離することができる点で好ましい。なお、粒子の平均粒径は体積平均粒径を指し、前記D90およびD10の測定と同様にして得られた累積カーブが50%となる点の粒子径である。
【0181】
フィラーの平均粒径と本粘着層の平均厚さとの比率は目的に応じて適宜設定することができるが、粒子の平均粒径を粘着層の平均厚さで除した値で表した、粘着層の平均厚さに対する粒子の平均粒径との比率は5/100以上が好ましく、10/100以上がより好ましく、20/100以上がよりいっそう好ましく、50/100以上が特に好ましい。また、粘着層の平均厚さに対する粒子の平均粒径との比率は100/100以下が好ましく、98/100以下がより好ましく、95/100以下がよりいっそう好ましい。前記比率が5/100以上であると、本粘着テープに好適な粘着特性が得られやすい。また、比率が95/100以下であると、本粘着テープを引き伸ばして被着体を剥離させるときの粘着テープの伸度が低い状態で剥離することができる点で好ましい。
【0182】
本粘着層がフィラーを含有する場合、本粘着層中のフィラーの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、12質量部以上がよりいっそう好ましく、15質量部以上が特に好ましい。また、本粘着層中のフィラーの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して、75質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がよりいっそう好ましく、55質量部以下が特に好ましい。粘着剤樹脂100質量部に対してフィラーの含有量が上記範囲内にあることで、粘着層内でフィラーが分散して存在するため本粘着テープの接着特性が好適に得られやすくなり、また、被着体から粘着テープを再剥離させる際に粘着剤組成物が残留するのを抑制できる。
【0183】
<その他の成分>
本粘着層における前記フィラー以外のその他の成分としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着剤樹脂以外のポリマー成分、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらは、1種を使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本実施形態の粘着層におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜設定することができる。
【0184】
本粘着層は、粘着剤樹脂の重合体の組成、分子量、分岐構造、および粘着付与剤やフィラーの添加量やその種類等を調整することで、100%伸長時応力、400%伸長時応力、25%伸長時応力を調整することができる。
【0185】
[粘着テープ]
本粘着テープは、単位幅あたりの100%伸長時強度が0.11N/mm以上であることで、低伸度でも効率的に粘着テープを被着体から剥離することが可能となる。本粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時強度は、中でも0.15N/mm以上が好ましく、0.2N/mm以上がより好ましく、0.3N/mm以上がさらに好ましく、0.4N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.7N/mm以上が特に好ましい。また、本粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時強度は5N/mm以下が好ましく、3N/mm以下がより好ましく、2N/mm以下がよりいっそう好ましく、1N/mm以下が特に好ましい。本粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば0.11N/mm~5N/mmの範囲内、例えば0.15N/mm~5N/mmの範囲内、例えば0.2N/mm~3N/mmの範囲内、例えば0.3N/mm~2N/mmの範囲内、例えば0.4N/mm~1N/mmの範囲内とすることができる。粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時強度が上記範囲内にあることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度で剥離し易くなり、また、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを引き伸ばすことができる。
【0186】
本粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時強度は、本基材の材料を適宜選択するとともに、本基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0187】
本粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度は以下の方法により測定できる。粘着テープを、標線長さが20mm(初期標線長さとする)、幅が5mm(初期幅とする)のダンベル状に打ち抜いて試験片を作成し、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エ-・アンド・デイ製)を用い、前記試験片を引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、100%伸長時の応力値(単位:N)を試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。100%伸長時は前記のとおり前記数式(1)で表される伸度が100%の時である。
【0188】
本粘着層と本基材との厚さの比率は、目的に応じて適宜選択することができる。なお本粘着層と本基材との厚さの比率とは前記本粘着層の厚さを前記本基材の厚さで除した値である。基材の厚さに対する粘着層の厚さの比率(粘着層の厚さ/基材の厚さ)は1/500以上が好ましく、1/400以上がより好ましく、1/200以上がよりいっそう好ましく、1/100以上がさらに好ましく、1/50以上が特に好ましい。また、前記比率は3/1以下が好ましく、2/1以下がより好ましく、1/1以下がよりいっそう好ましく、1/2以下がさらに好ましく、1/5以下が特に好ましい。本粘着テープは、本基材の厚さに対する本粘着層の厚さの比率を前記範囲内とすることで、より良好な接着性および剥離性を発揮できる。なお、前記比率が大きすぎると、本粘着テープの剥離工程で粘着層の成分が被着体に残存してしまう可能性がある。また、前記比率が小さすぎると、被着体の表面が凹凸形状などの場合に粘着層が追従できずに接着強度が低下してしまう懸念がある。なお、基材の両面に粘着層が設けられている場合、粘着層と基材との厚さの比率を算出する際の「粘着層の厚さ」とは、基材の片面に設けられた粘着層の厚さである。
【0189】
本粘着テープの単位幅あたりの400%伸長時強度は、0.2N/mm以上が好ましく、0.5N/mm以上がより好ましく、0.7N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.9N/mm以上がさらに好ましく、1N/mm以上がさらに好ましく、1.1N/mm以上が特に好ましい。また、本粘着テープの単位幅あたりの400%伸長時強度は10N/mm以下が好ましく、7N/mm以下がより好ましく、6N/mm以下がよりいっそう好ましく、5N/mm以下が特に好ましい。本粘着テープの単位幅あたりの400%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば0.2N/mm~10N/mmの範囲内、例えば0.5N/mm~10N/mmの範囲内、例えば0.7N/mm~7N/mmの範囲内、例えば0.9N/mm~6N/mmの範囲内、例えば1N/mm以上~5N/mmの範囲内、例えば1.1N/mm~5N/mmの範囲内とすることができる。単位幅あたりの400%伸長時強度が上記範囲内にあることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度の状態で剥離し易くなり、また、被着体より本粘着テ-プを剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを伸ばすことができる。
【0190】
本粘着テ-プの単位幅あたりの400%伸長時強度は、上述した粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、伸度が400%の際の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。なお、「400%伸長時」および「伸度が400%の際」とはそれぞれ、上述した数式(1)で表される伸度が400%の時をいう。
【0191】
本粘着テープの単位幅あたりの400%伸長時強度は、本基材の材料を適宜選択するとともに、本基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0192】
本粘着テープの単位幅あたりの破断強度は2.1N/mm以上が好ましく、2.5N/mm以上がより好ましく、3N/mm以上がよりいっそう好ましく、4N/mm以上がさらに好ましく、5N/mm以上が特に好ましい。また、本粘着テープの単位幅あたりの破断強度は20N/mm以下が好ましく、15N/mm以下がより好ましく、10N/mm以下がよりいっそう好ましく、9N/mm以下が特に好ましい。本粘着テープの単位幅あたりの破断強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば2.1N/mm~20N/mmの範囲内、例えば2.5N/mm~15N/mmの範囲内、例えば3N/mm~10N/mmの範囲内、例えば4N/mm~9N/mmの範囲内、例えば5N/mm~9N/mmの範囲内とすることができる。粘着テープの破断強度が上記範囲内にあることで、本粘着テ-プを被着体から剥離する際に比較的早い速度で引っ張っても千切れることなく被着体から本粘着テ-プを剥離することができ、また、粘着テ-プを引っ張る際の応力が大きくなりすぎるのを抑制できる。
【0193】
本粘着テープの単位幅あたりの破断強度は、上述した粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、破断した時の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。
【0194】
前記単位幅あたりの破断強度は本基材の材料を適宜選択するとともに、本基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0195】
本粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度は、特に限定されないが、2.5N/mm以下が好ましく、2.1N/mm以下がより好ましく、2N/mm以下がよりいっそう好ましい。また、0.3N/mm以上が好ましく、0.4N/mm以上がより好ましく、0.5N/mm以上がよりいっそう好ましい。本粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば0.3/mm~2.5N/mmの範囲内、例えば2.4N/mm~2.1N/mmの範囲内、例えば0.5N/mm~2N/mmの範囲内とすることができる。本粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度が前記範囲内にあることで、粘着テープを引き伸ばして被着体を剥がす際に生じる被着体への剥離応力が抑制し易く、被着体のダメージ抑制の観点で好ましい。また、本粘着テープを引き伸ばして被着体から剥離させるときの粘着テープを引き伸ばす量が抑制でき、作業スペースが狭い場合であっても良好に作業が行いやすい。なお、本粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度は、固定された被着体から本粘着テープを引き伸ばして剥がす際の応力を測定したものであり、後述する実施例において説明する方法により測定される。
【0196】
本粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度は、本基材の材料を適宜選択するとともに、本基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0197】
本粘着テープの180°ピール接着力は、0.05N/mm以上が好ましく、0.06N/mm以上がより好ましく、0.07N/mm以上がよりいっそう好ましい。また、本粘着テープの180°ピール接着力は、1N/mm以下が好ましく、0.8N/mm以下がより好ましく、0.5N/mm以下がよりいっそう好ましく、0.3N/mm以下がさらに好ましく、0.2N/mm以下が特に好ましい。180°ピール接着力が0.05N/mm以上であると、被着体との接着力が好適に得られるため仮固定中の作業における不安定さが抑制される。また、180°ピール接着力が1N/mm以下であると、粘着テープが被着体と接着力が高すぎることで再剥離作業における糊残りなどの不具合を抑制し易いため好ましい。粘着テープの180°ピール接着力は、後述する実施例において説明する方法により測定される。なお、粘着テープが基材の両面に粘着層が設けられた両面粘着テープである場合、粘着テープの180°ピール接着力は、粘着テープの一方の面を、厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちして測定する。
【0198】
前記180°ピール接着力は、前記本基材、本粘着剤およびフィラーの材料を適宜選択するとともに、本粘着テープ中の粘着層の厚みを変更することで調整することができる。
【0199】
本粘着テープはさらに、前記単位幅あたりの伸長剥離強度が前記180°ピール接着力より大きいのが好ましい。粘着テープの180°ピール接着力に対する粘着テープの単位幅あたりの伸長剥離強度の比Aは、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2以上がよりいっそう好ましく、2.5以上がさらに好ましく、3以上が特に好ましい。また、前記比Aは23以下が好ましく、22以下がより好ましく、21以下がよりいっそう好ましく、20以下がさらに好ましく、19以下が特に好ましい。前記比Aが1.5以上であることで、粘着テープを引き伸ばして剥がす際の粘着テープの引き伸ばし量が大きくなり過ぎない点で好ましい。また、前記比Aが23以下であることで、粘着テープを引き伸ばして被着体を剥がす際に生じる被着体への剥離応力が抑制し易く、被着体のダメージ抑制の観点で好ましい。なお、前記比Aは以下の数式(4)で算出される値である。
比A=単位幅あたりの伸長剥離強度(N/mm)/180°ピール接着力(N/mm) ・・・(4)
【0200】
前記単位幅あたりの伸長剥離強度が前記180°ピール接着力より大きくするには、前述までの基材の調整方法および粘着力の調整方法を利用することで調整することができる。
【0201】
また、粘着テープの180°ピール接着力に対する、粘着テープの単位幅あたりの100%伸長時応力の比Bは、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がよりいっそう好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。また、前記比Bは、23.0以下が好ましく、20.0以下がより好ましく、18.0以下がよりいっそう好ましく、15.0以下がさらに好ましく、13.0以下が特に好ましい。前記比Bの値が小さすぎると伸長距離が長くなる傾向があり、前記比Bの値が大きすぎるとテープが伸ばしにくく剥がしにくい傾向がある。前記比Bは以下の数式(5)で算出される値である。
比B=単位幅あたりの100%伸長時応力(N/mm)/180°ピール接着力(N/mm) ・・・(5)
【0202】
本粘着テープの破断伸度は200%以上が好ましく、300%以上がより好ましく、400%以上がよりいっそう好ましく、500%以上が特に好ましい。また、本粘着テープの破断伸度は2000%以下が好ましく、1800%以下がより好ましく、1700%以下がよりいっそう好ましく、1500%以下がさらに好ましく、800%以下が特に好ましい。本粘着テープの破断伸度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば200%~2000%の範囲内、例えば300%~1800%の範囲内、例えば400%~1700%の範囲内、例えば500%~1500%の範囲内とすることができる。粘着テープの破断伸度が上記範囲内にあることで、本粘着テ-プが強固に被着体と接着している場合でも、本粘着テ-プを剥がす際の応力が大きくなり過ぎるのを防ぎ、また、本粘着テ-プを剥離する際に本粘着テープの引き伸ばし距離が長くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0203】
本粘着テ-プの破断伸度は、上述した粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
前記破断伸度は材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0204】
本粘着テープの単位幅あたりの25%伸長時強度は、0.07N/mm以上が好ましく、0.1N/mm以上がより好ましく、0.15N/mm以上がよりいっそう好ましく、0.2N/mm以上がさらに好ましい。また、本粘着テープの単位幅あたりの25%伸長時強度は5N/mm以下が好ましく、3N/mm以下がより好ましく、2N/mm以下がよりいっそう好ましく、1N/mm以下が特に好ましい。本粘着テープの単位幅あたりの25%伸長時強度の好ましい範囲は、上述の上限および下限から選択される範囲内で設定でき、例えば0.07N/mm~5N/mmの範囲内、例えば0.1N/mm~3N/mmの範囲内、例えば0.15N/mm~2N/mmの範囲内、例えば0.2N/mm~1N/mmの範囲内とすることができる。粘着テープの単位幅あたりの25%伸長時強度が上記範囲内にあることで、本粘着テ-プを引き伸ばして剥離する際に比較的低伸度の状態で剥離し易くなり、また、被着体から本粘着テ-プを剥離する初期段階において、比較的軽い力で本粘着テープを伸ばすことができる。
【0205】
本粘着テ-プの単位幅あたりの25%伸長時強度は、上述した粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度と同じ手順および条件で試験片の作成および引張試験機による引張測定を行い、伸度が25%の際の応力値(単位:N)を前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を指す。なお、「25%伸長時」および「伸度が25%の際」とはそれぞれ、上述した数式(1)で表される試験片の伸度が25%の時をいう。
【0206】
前記粘着テープの単位幅あたりの25%伸長時強度は、材料を適宜選択するとともに、基材の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0207】
本粘着テープは前記フィラーを含有する前記本粘着層と前記本基材とを有していることが好ましい。本基材として、例えば前記好ましい樹脂として例示したエステル系ポリウレタン樹脂のようなウレタン樹脂、またはスチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体のようなスチレン系樹脂またはこれらの混合物を用いることで、得られる本粘着テープの前記単位幅当たりの100%伸長時強度を前記範囲とすることができる。
また、本粘着テープの前記単位幅あたりの400%伸長時強度、単位幅あたりの破断強度、単位幅あたりの伸長剥離強度、180°ピール接着力、破断伸度および単位幅あたりの25%伸長時強度も前記樹脂を適宜組み合わせることで、前記のような好ましい範囲とすることができる。
【0208】
本粘着テープは後述するように、少なくとも一方向に延伸し、本粘着層に接着している被着体から本粘着テープを剥離する。この時に生じる延伸応力が被着体と粘着層との間の接着力より大きくなると、被着体から粘着テープが剥離されると考えられる。しかしながら延伸応力が接着力を上回る伸長率が大きすぎると、被着体から十分に粘着テープが剥離されるために粘着テープの延伸倍率を大きくする必要があり、剥離に長時間を有し、後述する部品の生産時間が長時間となる可能性がある。
本粘着テープは、粘着層の100%伸長時強度が前記範囲内であることで、低伸度で被着体から剥離することができ、粘着層の400%伸長時強度が前記範囲内であり本粘着テープの単位幅当たりの100%伸長時強度が前記範囲内であることで、初期の粘着強度にも優れ、固定または仮固定に必要な初期接着力を有する
【0209】
[粘着テープの製造方法]
本粘着テープは前記本基材の上に本粘着層を形成させることで製造することができる。本粘着層の形成は、例えば前記粘着剤樹脂と、必要に応じて、前記粘着付与樹脂または前記フィラーを溶媒等に溶解させた粘着剤溶液を、ロールコーターやダイコーター等で前記基材に塗工する方法、剥離ライナー上に前記と同様にして粘着層を形成後、前記基材に転写する方法等が挙げられる。剥離ライナーは、例えば、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等にシリコーン化合物やメラミン化合物等の剥離層を形成したものが好適に使用できる。
【0210】
本粘着テープの製造は、ロール状の基材を巻き出しながら本基材上に前記方法で本粘着層を形成し、再び巻いてロール状とするか、剥離ライナー上に前記と同様にして粘着層を形成後、前記本基材に転写した後、再び巻いてロール状とする、Roll to Rollが生産性の観点から好ましい。本粘着テープを巻き取る前に剥離フィルムまたは保護フィルムを本粘着層の基材とは反対側の表面に設けるのが好ましいが、本粘着層を積層しない基材の表面に剥離層を形成し、剥離ライナーまたは保護フィルムの積層を行わず、ロール状に巻き取ってもよい。
【0211】
[粘着テープの剥離方法]
前記本粘着テープの本粘着層に接着した被着体を、本粘着テープを少なくとも一方向に延伸して前記粘着層から脱離し、本粘着テープを剥離することができる。被着体の接着方法は本粘着層に被着体が接着する方法であれば特に制限はない。
【0212】
本粘着テープを延伸伸長する(引き伸ばす)方向は、本粘着テープと被着体との接着面に対して水平方向であってもよく、垂直方向であってもよく、斜めの方向であってもよく、これらの方向を組み合わせた方向であってもよい。また本粘着テープは、2以上の異なる方向へ同時に延伸してもよいし逐次に延伸してもよい。さらに本粘着テープは、本粘着テープと被着体との接触面(接着面)において少なくとも一方向に延伸伸長することで剥離可能となるが、中でも2以上の方向であることが好ましく、全方向に延伸されることが、均一に延伸できて本粘着テープに接合又は仮固定された複数の被着体を同時に剥離できるため更に好ましい。
【0213】
本粘着テープを延伸伸長する(引き伸ばす)方向として具体的には、本粘着テープの端部を引っ張る方向を軸として、上記被着体および本粘着テープの接触面(接着面)と上記軸とが成す角度θが-90°~90°の範囲内であることが好ましい。なお角度θが0°のときは、上記軸が接着面と水平方向であり、角度θが90°のときは上記軸が本粘着テープ及び被着体の接着面側において垂直方向に位置し、角度θが-90°のときは上記軸が上記接着面と反対側において垂直方向に位置する。
【0214】
本粘着テープを延伸する方法は特に限定されず、例えば手でテープの端部を把持して引き伸ばす方法、治具等でテープを挟持して一定の方向へ引っ張る方法、二つのロールの周速度差を利用して本粘着テープを引っ張る方法、本粘着テープの被着体との接着面側に上記被着体を囲うような空間を有する治具を装着し、本粘着テープを、上記貼付面側とは反対側から上記貼付面側に向けて本粘着テープを凸状の治具で押出して本粘着テープを引っ張る方法等が挙げられる。
【0215】
本粘着テープは少なくとも一方向に延伸することで本粘着層に接着した被着体が脱離し、より簡便に本粘着テープを剥離することができる。本粘着テープから被粘着体が脱離後、吸着、挟持または掃出等いずれかの脱離方法にて被着体は粘着テープより分離される。脱離を吸着で行う場合、吸着手段として吸盤、吸引機、吸着コレット等が挙げられる。脱離を挟持で行う場合、ピンセット、クランプ等が挙げられる。掃出で行う場合、スイング平板、風圧、刷毛等が挙げられる。また被着体の自重により接着面より分離してもよい。
【0216】
粘着テープを被着体より分離する際の、本粘着テープの粘着層と被着体との接着面の方向は被着体が上方となる鉛直上向き方向、被着体が下方となる鉛直下向き方向、または接着面が鉛直方向と平行となる方向いずれでもよく、本粘着テープが用いられる部品の製造装置や部品の製造方法に合わせて、本粘着テープの向きは適宜選定される。
また被着体を自重により分離する場合は、接着面が鉛直方向と平行または鉛直下向きとなるように本粘着テープを設置するのが好ましい。
【0217】
[加工物の製造方法]
本粘着テープを製造装置に用いることで、効率的に加工物を製造することができる。
加工物は例えば、半導体ウェハや積層セラミックコンデンサ、インダクタなどの電子部品、光学ガラスや偏光板等の光学部品等が例示される。これら中でも積層セラミックコンデンサ等の超小型電子部品の製造に好適である。
【0218】
加工物の大きさは特に限定されないが、加工物が小さいほど、加工物1個あたりのテープとの接触面積(接着面積)が小さくなるため、本粘着テープを用いることによる効果、特に剥離工程による効果が顕著に表れるため好ましい。加工物の大きさとしては、加工物1個あたりの延伸前の本粘着テープとの接触面積(接着面積)が500mm以下である大きさが好ましい。中でも上記加工物が小型電子部品である場合、上記接触面積は100mm以下である大きさが好ましく、50mm以下である大きさが更に好ましく、30mm以下である大きさがより好ましく、1mm以下である大きさが特に好ましい。また、加工物の大きさの下限は特に限定されないが、例えば0.001mm以上、好ましくは0.01mm以上とすることができる。
【0219】
本粘着テープの粘着層上に、被着体として1または2以上の未加工の部品を接着し、前記未加工の部品を加工後、前記粘着テープから前記加工された部品から本粘着テープを少なくとも一方向に延伸し剥離することで部品から粘着テープを剥離し、部品を効率的に製造することができる。加工としては切削、研磨、切断、エッチング等が挙げられ、未加工の部品が加工されることで所望の加工物が得られる。未加工の部品は既に前加工の工程を経た部品でもよい。
【0220】
加工により得られた加工物は本粘着テープを少なくとも一方向に延伸することで本粘着テープから剥離される。剥離方法は前記と同じである。本粘着テープから加工物が均一に剥離され、加工物に粘着剤等が残存することを抑制する観点から、本粘着テープは、面内の異なる二方向以上に延伸する(引き伸ばす)のが好ましく、粘着層と被着体との接着面内の全方向に延伸する(引き伸ばす)のが好ましく、均一に延伸されることがより好ましい。
【0221】
剥離された部品は本粘着テープから前記方法により分離することで所望の加工物が製造される。製造された加工物はさらに他の加工や加工物同志の組立、他の加工物との接合等の他の工程へ送られてもよい。
本粘着テープを用いることで、簡便にかつ効率的に加工工程が終了した加工物から粘着テープを剥離することができる。前記加工工程と前記剥離の間に、洗浄工程、養生工程等の他の工程を含んでもよい。
【0222】
以上、本粘着テープ、本粘着テープの剥離方法および本粘着テープを用いた加工物の製造方法に関して説明したが、本発明は前記の実施形態の構成に限定されない。
本粘着テープは前記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
また本粘着テープの剥離方法および本粘着テープを用いた加工物の製造方法は前記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の工程と置換されていてもよい。
【実施例0223】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0224】
[評価]
実施例および比較例の粘着テープの評価方法は以下の通りである。
【0225】
(1)粘着テープおよび基材の単位幅あたりの25%伸長時強度、単位幅あたりの100%伸長時強度、単位幅あたりの400%伸長時強度、単位幅あたりの破断強度、破断伸度
各粘着テープおよび各基材を、初期標線間長さ20mm、初期幅5mmのダンベル状に打ち抜き試験片とし、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、前記試験片を引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張ることで測定した。
単位幅あたりの伸長時強度および単位幅あたりの破断強度は、前記試験片が所定の割合(%)で伸長した時および破断時に得られた応力値(単位:N)を、前記試験片の初期幅(単位:mm)で除した値を報告値とした。破断伸度は、前記試験片の破断時の伸度(%)とした。なお各測定方法の詳細は既に説明した通りである。
【0226】
(2)粘着層の25%伸長時強度、100%伸長時強度、400%伸長時強度
各粘着層を厚み(初期厚み)100μmとなる様に積層して作成し、初期標線間長さ20mm、初期幅5mmのダンベル状に打ち抜き試験片とし、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、前記試験片を引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張ることで測定した。伸長時強度は、前記試験片を所定の割合(%)で伸長した時に得られた応力値(単位:N)を、測定に用いた前記試験片の初期厚み(単位:mm)と初期幅(単位:mm)で除した値を報告値とした。なお各測定方法の詳細は既に説明した通りである。
【0227】
(3)粘着テープ、基材および粘着層の厚さ
粘着テープ、基材および粘着層をそれぞれ、長さ方向に100mm間隔で5箇所、幅方向に切断し、各切断面において幅方向に100mm間隔で5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した。当該合計10点の厚さを平均して得られた値を粘着テープ、基材および粘着層の厚さとした。
【0228】
(4)粒子の平均粒径
レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用して粒子径を測定し、粒子(フィラー)の全体積を100%として粒径に対する体積の累積カーブを求め、累積カーブが50%となる点の体積平均粒径を、粒子の平均粒径とした。
【0229】
(5)180°ピール接着力
180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定した。具体的には、実施例および比較例で作成した各粘着テープを、長さ150mm、幅25mmに切断した。次に、前記粘着テープの他方の面を、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、長さ100mm、幅30mm、厚さ3mmのステンレス板に貼付し、前記粘着テープと前記ステンレス(SUS)板との積層構造物に対して2kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で1時間静置したものを試験片とした。
前記試験片における粘着テープを、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、180°方向(水平方向)にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度300mm/分間の速度で引き伸ばし、前記粘着テープの180°ピール接着力(N/mm)を測定した。
【0230】
(6)単位幅あたりの伸長剥離強度
幅10mm、長さ100mmの粘着テープを準備した。雰囲気23℃、50%RHの条件下で長さ100mm、幅30mm、厚さ3mmのステンレス板に対して粘着テープの貼り付け面積が幅10mm、長さ50mmとなる様に2kg荷重のローラーで1往復加圧して圧着させ、残りの粘着テープの幅10mm、長さ50mm分はステンレス板から飛び出させた状態とした。続けて、ステンレス板から飛び出させた粘着テープの粘着層に厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて引き伸ばすためのタブを作成した。その後、23℃環境下で1時間養生したものを試験片とした。
雰囲気23℃、50%RHの条件下、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エ-・アンド・デイ製)を用いて、試験片のステンレス板を固定し、粘着テープのタブ部分をチャックして、引張速度300mm/分間の速度で水平方向に引き伸ばし、前記粘着テ-プが引き伸ばされながら剥がれるときの伸長剥離強度を測定した。得られた応力値(単位:N)に粘着テープの幅(10mm)で除した値を報告値とした。
【0231】
(7)伸長剥離性(自重落下時の剥離伸度)
粘着テープを長さ200mm×幅20mmに切断し、粘着層の両末端部分となる長さ50mm×幅20mmを厚さ50μmのPETフィルムでラミネートし、粘着テープを長手方向に引き伸ばすため掴みタブとした。さらに、長さ50mm、幅10mm、厚さ0.8mmのアルミ板(小型加工物を想定)を粘着テープの粘着層の中央に貼り合わせて、300gのローラーで2往復加圧したものを試験片とした。試験片のアルミ板が下向きになる様に、片末端のタブを固定治具に設置し、続けて、粘着テープの反対側のタブを掴み、300mm/分の速度で引き伸ばした。粘着テープとアルミ板との接着面積が減少していくことを目視で観察しながら粘着テープを伸長させ、アルミ板が落下したときの粘着テープの伸度を報告値とした。また、粘着テープとアルミ板の接着面積が目視確認できない場合には、ステンレスワイヤー(φ0.27mm)で粘着テープのアルミ板と干渉しない端の部分を軽くつつき、アルミ板が落下する場合は、そのときの粘着テープの伸度を報告値とした。
【0232】
前記伸度の計算は以下の数式により算出した。なお、「初期の標線間長さ+粘着テープが伸長した距離」とは、すなわちアルミ板が落下したときの伸長後の粘着テープの標線間長さである。また、標線間長さとは、粘着テープの長さから両側のタブ領域を除外した長さ(テープ長さ200mm-タブ領域長さ50mm×2=100mm)をいう。
(初期の標線間長さ+粘着テープが伸長した距離)/初期の標線間長さ×100=伸度%
【0233】
[材料]
実施例および比較例で用いた各材料等は下記のとおりである。
・基材(1)
基材(1)として、エステル系ポリウレタン樹脂フィルム(日本マタイ株式会社製、エスマーURS#10)を用いた。基材(1)の組成を基材用材料(1)とする。
【0234】
・基材(2)
基材(2)として、エステル系ポリウレタン樹脂フィルム(日清紡テキスタイル株式会社製、モビロンフィルムMF50T)を用いた。基材(2)の組成を基材用材料(2)とする。
【0235】
・基材(3)
基材(3)として、エステル系ポリウレタン樹脂フィルム(日清紡テキスタイル株式会社製、モビロンフィルムMF100T)を用いた。基材(3)の組成を基材用材料(3)とする。
【0236】
<基材用材料(4)>
基材用材料(4)として、スチレン-イソプレン共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物(以下、「SIS」と記すことがある)を用いた。当該混合物は、下記化学式(1)で表されるスチレン由来の構造単位25重量%であり、混合物の全量中のスチレン-イソプレン共重合体の割合が17重量%であった。
【0237】
【化8】
【0238】
・基材(4)
前記基材用材料(4)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが100μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製)上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させたものを4枚作成して積層した後、0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、厚さ400μmの基材(4)を作製した。
【0239】
・基材(5)
前記基材用材料(4)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが100μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製)上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって、厚さ100μmの基材(5)を作製した
【0240】
<<粘着剤組成物1>>
(合成例1:アクリル重合体(1))
アルゴンで内部を置換した内容積1000mlのフラスコ内に、乾燥トルエン500mlと、重合開始剤としてのビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウム・テトラヒドロフラナート錯体〔(C5Me5)2SmMe(THF)〕0.75gの乾燥トルエン溶液80mlを加えて混合溶液を調製した。当該混合溶液に対して、0℃でメタクリル酸メチル(以下、「MMA」と記すことがある。)を12.0ml加え、0℃で30分間攪拌した。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングし、サンプル1とした。前記のMMAの重合後、重合反応系を-78℃まで冷却し、アクリル酸n-ブチル(以下、「nBA」と記すことがある。)88.0mlを第2番目のモノマーとして加え、-78℃で3時間攪拌を行った。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングし、サンプル2とした。前記のnBAの重合後、この重合系にMMA12.0mlを第3番目のモノマーとして-78℃で添加して溶液を攪拌した。溶液が均一になった後、0℃に昇温して、さらに1時間攪拌した。得られた反応混合液に、メタノールを50ml加えて室温で2時間反応させることによって重合を停止した。この重合停止後の反応溶液を大量のヘキサン中に注ぎ、析出した白色沈殿物を得た。そして、白色沈殿物の一部をサンプリングし、サンプル3とした。
【0241】
前記サンプル1から3中の各重合体について、NMR測定、DSC測定、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)測定を行った。そして、当該測定結果に基づいて、数平均分子量(Mn)、PMMA/PnBA(ポリメタクリル酸メチルブロック/ポリアクリル酸n-ブチルブロック)比等を求めたところ、前記の白色沈殿物はポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロック-ポリアクリル酸n-ブチル(PnBA)ブロック-ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロックのアクリル系トリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA)が確認された。PMMA-b-PnBA-b-PMMAの共重合体全体の数平均分子量Mnは95936であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。また、各重合体ブロックの割合はPMMA(11質量%)-PnBA(78質量%)-PMMA(11質量%)であった。
【0242】
・粘着剤組成物(1)
上述した合成例1で得られたアクリル系トリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA)100質量部(固形分量)と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(タマノル803L、荒川化学工業株式会社、軟化点150℃)50質量部(固形分量)と、シリコーン粒子(1)(信越化学工業社製、KMP-600、体積平均粒径:5μm、粒度分布(D90/D10):3.2、表面がシリコーンレジンであり、内部がシリコーンゴムである粒子)を50質量部と、酢酸エチルを加えて均一になるよう攪拌混合することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(1)を得た。
【0243】
<<粘着剤組成物2>>
(合成例2:アクリル重合体(2))
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート15質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、および酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら65℃まで昇温させて混合物(1)を得た。次に、前記混合物(1)に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビスイソブチロニトリル溶液4質量部(固形分2.5質量%)を添加し、攪拌下、65℃で10時間ホールドして混合物(2)を得た。次に、前記混合物(2)を酢酸エチルで固形分30質量%となるまで希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量160万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体(2)の溶液を得た。
【0244】
・粘着剤組成物(2)
上述した合成例2で得られたアクリル共重合体(2)溶液100質量部に対して、前記シリコーン粒子(1)12質量部と酢酸エチルとを添加することによって固形分30質量%に調整しながら均一になるよう攪拌混合した。続いて、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製テトラッドXと酢酸エチルとを混合して得た固形分5質量%の溶液)を、前記アクリル共重合体(2)溶液100質量部を基準に2.0質量部添加し、均一になるよう攪拌混合して粘着剤組成物(2)を得た。
【0245】
<<粘着剤組成物3>>
上述した合成例2で得られたアクリル共重合体(2)溶液100質量部に対して、前記シリコーン粒子(1)18質量部と、ロジン系粘着付与樹脂(ハリタックPCJ、ハリマ化成株式会社、軟化点135℃)15質量部と、酢酸エチルとを添加することによって固形分30質量%に調整しながら均一になるよう攪拌混合した。続いて、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製テトラッドXと酢酸エチルとを混合して得た固形分5質量%の溶液)を、前記アクリル共重合体(2)溶液100質量部を基準に2.0質量部添加し、均一になるよう攪拌混合して粘着剤組成物(3)を得た。
【0246】
<<粘着剤組成物4>>
上述した合成例1で得られたアクリル系トリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA)100質量部(固形分量)と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(タマノル803L、荒川化学工業株式会社、軟化点150℃)50質量部と、水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BW153、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を20質量部と、酢酸エチルと、を加えて均一になるよう攪拌混合することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(4)を得た。
【0247】
<<粘着剤組成物5>>
(合成例3:アクリル重合体(3))
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器にブチルアクリレート93.4質量部、酢酸ビニルを3質量部、アクリル酸を2.5質量部、N-ビニルピロリドリンを1質量部、β-ヒドロキシエチルアクリレートを0.1質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.2質量部を、酢酸エチル100質量部に溶解し、80℃で8時間重合して、重量平均分子量が70万のアクリル系ランダム共重合体(3)溶液を得た。
【0248】
・粘着剤組成物(5)
上述した合成例3で得られたアクリル系ランダム共重合体(3)100質量部(固形分量)に対し、ロジンエステル系樹脂A-100(荒川化学社製)を15質量部(固形分量)と、重合ロジンエステル系樹脂D-135(荒川化学社製)を15質量部(固形分量)と、前記シリコーン粒子(1)を12.0質量部と、酢酸エチルとを添加することによって固形分30質量%に調整しながら均一になるよう攪拌混合した。続いて、イソシアネート系架橋剤(DIC株式会社製バーノックD-40、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)を、前記アクリル共重合体(3)100質量部(固形分量)を基準に2.0質量部添加し、均一になるよう攪拌混合して粘着剤組成物(5)を得た。
【0249】
<<粘着剤組成物6>>
上述した合成例1で得られたアクリル系トリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA)100質量部(固形分量)と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(タマノル803L、荒川化学工業株式会社、軟化点150℃)50質量部と、水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BW153、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を25質量部と、酢酸エチルと、を加えて均一になるよう攪拌混合することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(6)を得た。
【0250】
〔実施例1〕
前記粘着剤組成物(1)の溶液をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。
次に、前記基材(1)の両面に濡れ張力が52mN/mとなるようコロナ処理した後、前記粘着剤層を両面に貼り合わせ、0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、粘着テープ(1)を製造した。
【0251】
〔実施例2〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤層の厚みを50μmから10μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の粘着テープを製造した。
【0252】
〔実施例3〕
実施例1の粘着テープの製造において、基材(1)を基材(2)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の粘着テープを製造した。
【0253】
〔実施例4〕
実施例1の粘着テープの製造において、基材(1)を基材(3)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の粘着テープを製造した。
【0254】
〔実施例5〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤組成物(1)を粘着剤組成物(2)に変更し、粘着剤層の厚みを50μmから6μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5の粘着テープを製造した。
【0255】
〔実施例6〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤組成物(1)を粘着剤組成物(3)に変更し、粘着剤層の厚みを50μmから6μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5の粘着テープを製造した。
【0256】
〔実施例7〕
前記粘着剤組成物(1)の溶液をアプリケーターにより乾燥後の厚みが10μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。
次に、前記基材(4)の離型ライナーを剥離後、該基材(4)の両面に濡れ張力が52mN/mとなるようコロナ処理した後、前記粘着層を両面に貼り合わせ、0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、実施例7の粘着テープを製造した。
【0257】
〔実施例8〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤組成物(1)を粘着剤組成物(4)に変更し、粘着剤層の厚みを50μmから15μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例8の粘着テープを製造した。
【0258】
〔比較例1〕
前記粘着剤組成物(1)の溶液をアプリケーターにより乾燥後の厚みが10μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。
次に、前記基材(5)の離型ライナーを剥離後、該基材(5)の両面に濡れ張力が52mN/mとなるようコロナ処理した後、前記粘着層を両面に貼り合わせ、0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、比較例1の粘着テープを製造した。
【0259】
〔比較例2〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤組成物(1)を粘着剤組成物(5)に変更し、粘着剤層の厚みを50μmから6μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例8の粘着テープを製造した。
【0260】
〔比較例3〕
実施例1の粘着テープの製造において、粘着剤組成物(1)を粘着剤組成物(6)に変更し、粘着剤層の厚みを50μmから15μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例8の粘着テープを製造した。
【0261】
前記の実施例および比較例の結果を表1および表2に示した。
【0262】
【表1】
【0263】
【表2】
【0264】
前記結果から明らかなように、本粘着テープは、被着体を十分に固定または仮固定可能な初期接着力を有するとともに、低伸度で効率的に被着体から剥離することができる。したがって本粘着テープを用いることで効率的に部品(加工物)を製造することができる。