(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095916
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】焼成食品
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240704BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240704BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20240704BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L13/00 A
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000006
(22)【出願日】2023-01-01
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 伶奈
【テーマコード(参考)】
4B018
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B018LB06
4B018MD01
4B018MD14
4B018MD32
4B018MD52
4B018MD71
4B018MD91
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF14
4B036LC07
4B036LE04
4B036LF19
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH22
4B036LH26
4B036LH29
4B036LH32
4B036LH38
4B036LH39
4B036LH44
4B036LH50
4B036LK01
4B036LK06
4B036LP02
4B036LP09
4B036LP12
4B036LP17
4B036LP24
4B042AC04
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK13
4B042AK15
4B042AK17
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】本発明は、食べ応えがありながらも、血糖値の急上昇抑えることで眠くなりにくい焼成食品を提供することを目的とする。
【解決手段】調味料と、食肉とを含む具材を内側とし、おからと米粉を1:20~1:0.7の質量比で含み、さらに油脂、羅漢果エキス及び/又はエリスリトールを含む生地を外側とし、塩分0.5質量%以上であって、かつ水分活性が0.69以下である焼成食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調味料と、食肉とを含む具材を内側とし、
おからと米粉を1:20~1:0.7の質量比で含み、さらに油脂、羅漢果エキス及び/又はエリスリトールを含む生地を外側とし、塩分0.5質量%以上であって、かつ水分活性が0.69以下である焼成食品。
【請求項2】
前記具材の破断強度が、前記生地の破断強度の-20~20%である、請求項1に記載の焼成食品。
【請求項3】
前記具材は凍結乾燥品である、請求項1又は2に記載の焼成食品。
【請求項4】
前記調味料は、コチュジャン、醤油、にんにく、生姜、味噌、ケチャップからなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の焼成食品。
【請求項5】
前記食肉は、豚肉、鶏肉、牛肉、大豆ミートからなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の焼成食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食べ応えがありながらも、血糖値の急上昇を抑えることで眠くなりにくい焼成食品に関する。
【背景技術】
【0002】
焼成食品は、近年、手軽に食べられる食事やおやつとして人気を博している。しかしながら、食べ応えのあるものである糖質が多く含まれる食品を摂取すると、血糖値が急上昇し、その後インスリンの大量分泌によって血糖値が急降下する。このような血糖値の乱高下、いわゆる血糖値スパイクは眠気をもたらすことが知られおり、作業効率が低下したり、事故を起こすリスクが高まるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、しっかりとした食べ応えがあり満足感が得られつつも、血糖値の急上昇が抑えることで眠くなりにくい焼成食品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る焼成食品は、調味料と食肉とを含む具材を内側とし、おからと米粉を1:20~1:0.7の質量比で含み、さらに油脂、羅漢果エキス及び/又はエリスリトールを含む生地を外側とし、塩分0.5質量%以上であって、かつ水分活性が0.69以下である。
【0005】
また、本発明の第二態様に係る焼成食品は、前記具材の破断強度が、前記生地の破断強度の-20~20%である。
【0006】
また、本発明の第三態様に係る焼成食品は、前記具材は凍結乾燥品である。
【0007】
また、本発明の第四態様に係る焼成食品は、前記調味料は、コチュジャン、醤油、にんにく、生姜、味噌、ケチャップからなる群から選ばれた1種又は2種以上である。
【0008】
また、本発明の第五態様に係る焼成食品は、前記食肉は、豚肉、鶏肉、牛肉、大豆ミートからなる群から選ばれた1種又は2種以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、しっかりとした食べ応えと満足感が得られつつも、血糖値の急上昇が抑えることで眠くなりにくい焼成食品を提供することができる。また、所定量の塩を含むので唾液の分泌が促され口の中がぼそぼそになりにくく食べやすい焼成食品を提供することができる。さらに、常温保存・流通が可能な焼成食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。
【0011】
本実施形態に係る焼成食品は、調味料と、食肉とを含む具材を内側とし、おからと米粉を1:20~1:0.7の質量比で含み、さらに油脂、羅漢果エキス及び/又はエリスリトールを含む生地を外側とし、塩分0.5質量%以上であって、かつ水分活性が0.69以下である。
【0012】
本実施形態に係る焼成食品の内側を構成する具材は、調味料と食肉とを含む。
【0013】
具材は、特に限定されないが、調味料と食肉とを単に組み合わせたものや、例えば、ヤンニョムチキン、サムギョプサル、ビビンバ、チゲ、プルコギ、カムジャンタン、チヂミ、酢豚、マーボー豆腐、餃子、チャーハン、小籠包、春巻き、ホウイコーロウ、生姜焼き、てんぷら、肉豆腐、肉じゃが、鶏唐揚げ、チキン南蛮、とんかつ、つくね、ハンバーグ、すきやき等のメニューを例示することができる。
【0014】
調味料としては、特に限定されないが、例えば、コチュジャン、醤油、にんにく、生姜、味噌、ケチャップ、マヨネーズ、酢、ソース、うまみ調味料、めんつゆ、わさび、ゆず、ごま、みりん、鰹節、柚子胡椒、豆板醤、甜面醤、芝麻醤、サムジャン、マスタード、砂糖、香辛料、カレー、粉チーズ、バター、生クリーム、野菜エキス、野菜ブイヨン、酵母エキス、及びアミノ酸等を例示することができる。好ましくは、調味料は、コチュジャン、醤油、にんにく、生姜、味噌、ケチャップからなる群から選ばれた1種又は2種以上である。
【0015】
食肉としては、食用であれば特に限定されないが、例えば、牛、豚、羊、山羊(やぎ)、馬、トナカイ、スイギュウ(水牛)、ウサギ、イノシシ、シカ、クマ等の畜肉、鶏、アヒル、七面鳥、ホロホロチョウ、ガチョウ、ウズラ、カワラバト、キジ等の鳥肉を例示することができる。また、食肉には代替肉が含まれるものとし、代替肉としては、食用であれば特に限定されないが、例えば、大豆やエンドウ豆等の豆類や小麦たんぱく等の植物性原料から作る植物由来肉、動物の細胞を培養して作る培養肉等を例示することができる。好ましくは、食肉は、豚肉、鶏肉、牛肉、大豆ミートからなる群から選ばれた1種又は2種以上である。焼成食品に食肉が含まれることにより、しっかりとした食べ応えと満足感を得ることができる。
【0016】
本実施形態に係る焼成食品の外側を構成する生地は、おから、米粉、油脂、漢果エキス及び/又はエリスリトールを含む。
【0017】
油脂としては、食用であれば特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ごま油、オリーブ油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、紅花油、パーム油、米油等の植物油脂、牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)、牛脂豚脂混合油脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の油脂を例示することができる。
【0018】
生地は、おからと米粉を1:20~1:0.7の質量比で、好ましくは1:15~1:0.9、より好ましくは1:12~1.1で含む。焼成食品におからと米粉が上記の割合で含まれることにより、しっかりとした食べ応えと満足感が得られる。また、おからと米粉は、小麦粉に比べて血糖値の急上昇が抑えられるので眠くなりにくい焼成食品を提供することができる。
【0019】
本実施形態に係る焼成食品は、塩分0.5質量%以上である。この塩分は、焼成食品全体での塩分のことをいう。所定量の塩分を含むので、唾液の分泌が促され口の中がぼそぼそになりにくく食べやすい。
【0020】
本実施形態に係る焼成食品は、水分活性が0.69以下である。この水分活性は、焼成食品を構成する具材の水分活性と生地の水分活性を平均した、焼成食品全体での水分活性のことをいう。水分活性が所定値以下なので、常温保存・流通が可能であり取り扱いがしやすい。
【0021】
なお、「水分活性」とは、食品成分と結合していない遊離状態にある自由水の割合を表す尺度であり、次の式により表される。
Aw=P/P0=RH/100
P:一定温度下での食品表面の水蒸気圧
P0:一定温度下での純水の水蒸気圧
RH:一定温度下での密閉用空間に食品を置いたときの空間中の相対湿度
本明細書においては、特に断らない限り、25℃での水分活性に言及している。水分活性は、例えば、重量平衡法や蒸気圧法(より具体的には電気抵抗式湿度測定法など)によって、具体的には、ノバシーナ社水分活性装置などで測定することができる。
【0022】
本実施態様に係る焼成食品は、具材の破断強度が、生地の破断強度の好ましくは-20~20%、より好ましくは-10~10%である。具材と生地の破断強度(歯ごたえ)が上記範囲となることで、内側と外側との一体感がうまれ、食べやすい食感の焼成食品となる。破断強度は、一例には次の方法により測定された値を指す。即ち、レオメーター(Sun Scientific社製)の測定装置を使用して、厚さ2mmの試料片(10~10mm角程度の面をもつ試料片)を検出部台座の上に平面的に載置し、検出部台座をピッチ2mm/secで上方に変位させ、ナイフエッジ型プランジャーに試料片が当接後、試料片が破断するまでの最大荷重量を検出した値とする。
【0023】
本実施形態に係る焼成食品の具材及び生地には、上記原料以外の他の原料を適宜用いることができる。他の原料としては、例えば、野菜、魚介類、穀類、豆腐、果物、澱粉、増粘剤、植物性蛋白質、デキストリン、オリゴ糖、乳化剤、消泡剤、甘味料、ゲル化剤、酸味料等が挙げられる。
【0024】
次に、これらの原料を使用して本実施形態に係る焼成食品を製造する製造方法について説明する。
具材の調製
調味料と食肉とを混合し、具材を調製する。このとき、野菜、魚介類、穀類、豆腐、果物等の一般に料理に用いられる他の原料を混合してもよい。具材は、好ましくはそのまま食べられる状態であるもの、例えば炒め調理、揚げ調理、焼き調理、蒸し調理等の調理済のものを用いることができる。また、具材は水分活性が一定以下となるように乾燥処理が施されたものであることが好ましく、例えば、凍結乾燥、減圧乾燥、凍結真空乾燥、加熱乾燥、風乾、天日乾燥等の乾燥処理が施されたものが挙げられる。
【0025】
生地の調製
おから、米粉、油脂、羅漢果エキス及び/又はエリスリトールを混合し、生地を調製する。このとき、食塩、牛乳、生クリーム、チーズ、バター、マーガリン、ショートニング、卵、小麦粉、膨張剤、乳化剤等の焼成食品の生地として一般に用いられる他の原料を混合してもよい。
【0026】
焼成食品の調製
生地で具材を包み、所定の型枠に入れ、又は成形した後プレート上に広げて、160℃~250℃、例えば170℃~190℃にて、1分間~60分間、例えば5分間~20分間、オーブンにて焼成することにより焼成食品を製造することができる。
【実施例0027】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[1.調製例1]
以下の工程により、ヤンニョムチキン様焼成食品を調製した。各材料と配合は表1,2に示した。
【0028】
具材の調製
1)鶏肉は小さく切り分け、塩で下味をつけた後、片栗粉にまぶした。
2)フライパンにて多めの油できつね色になるまで揚げ焼きした。
3)ボウルでタレの材料を混ぜた。
4)フライパンから鶏肉を取りだして油をふき取り、タレを弱火で加熱した。
5)鶏肉をフライパンに戻し、全体にタレを絡めた。
【0029】
【0030】
生地と焼成食品の調製
1)バターにラカント(羅漢果エキスとエリスリトールの混合物)を加え、良く練りこんだ。
2)残りの材料を加え、まとまりが出るまで混ぜた。
3)上記で調製した乾燥具材2.5gを、生地8.0gで包んだ。
4)180℃に予熱したオーブンで6分間焼き、前後の向きを変え、更に6分間焼いた。
5)オーブンから取り出し、粗熱を取った。
【0031】
【0032】
ヤンニョムチキン様焼成食品の水分活性は0.62(具材が0.64、生地が0.61)、塩分濃度は1.46質量%であった。なお、水分活性は、焼成食品を調製した翌日にノバシーナ社製のLabmaster-awで測定した。
【0033】
[2、調製例2]
以下の工程により、サムギョプサル様焼成食品を調製した。各材料と配合は表3に示した。
【0034】
具材の調製
1)フライパンで豚肉をよく焼いた。
2)焼いた豚肉をサイコロ状に切り分け、-40℃で120分間凍結乾燥した。
2)タレを混ぜ、バットに5mm程度の厚さになるように伸ばし、-40℃で120分間凍結乾燥の後、それぞれ1.0gになるように切り分けた。
【0035】
【0036】
生地と焼成食品の調製
1)バターにラカントを加え、良く練りこんだ。
2)残りの材料を加え、まとまりが出るまで混ぜた。
3)上記で調製した乾燥豚肉2.0g、タレ1.0gを、生地8.0gで包んだ。
4)180℃に予熱したオーブンで6分間焼き、前後の向きを変え、更に6分間焼いた。
5)オーブンから取り出し、粗熱を取った。
【0037】
なお、サムギョプサル様焼成食品の水分活性は0.55(具材が0.56、生地が0.55)、塩分濃度は0.99質量%であった。
【0038】
[3.おからと米粉の質量比の検討]
焼成食品の調製
おからと米粉の質量比を変えたヤンニョムチキン様焼成食品を調製し、食べ応えや食感を検討した。生地の配合を表4とした他は、[1、調製例1]と同様に調製した。
【0039】
【0040】
食した感想
おから:米粉の質量比がが1:11である焼成食品(実施例1)は、程よく硬く、具材と生地に一体感があるものであった。おから:米粉の質量比がが1:1である焼成食品(実施例2)は、表面が硬くて若干崩れやすいが食べやすいものであり、具体と生地に一体感があるものであった。おから:米粉の質量比がが1:0.67である焼成食品(比較例1)は、ほろほろ崩れ、粉っぽさが強いものであり、具材と生地に一体感があるとはいえないものであった。
【0041】
[4.塩分濃度の検討]
焼成食品の調製
塩分濃度を変えたヤンニョムチキン様焼成食品を調製し、食感を検討した。生地の配合を表5とした他は、[1、調製例1]と同様に調製した。なお、表5にある塩分濃度は、具材と生地を合わせた焼成食品全体の塩分濃度を示す。
【0042】
【0043】
食した感想
塩分濃度が0.75質量%である焼成食品(実施例3)は、うすい塩味で、まとまった食感であり口の中がぼそぼそになりにくく食べやすかった。塩分濃度が1.00質量%である焼成食品(実施例4)は、塩味でしっとり感があり、噛むと唾液が出て口の中がぼそぼそになりにくく食べやすかった。塩分濃度が1.40質量%である焼成食品(実施例5)は、塩味でしっとり感があり、噛むほどに唾液と焼成食品が口の中で混ざるのでぼそぼそになりにくく食べやすかった。塩分濃度が0.46質量%である焼成食品(比較例2)は、粉っぽさが強く口の中がぼそぼそになってしまい食べにくいものだった。