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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096066
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ケイ化モリブデンを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240704BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20240704BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/04
C23C16/455
H01L21/28 301S
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023221503
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】63/477,954
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチョル・ビュン
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ・ライサネン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ホ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】スカンヤ・ダッタ
(72)【発明者】
【氏名】チユ・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ウィレム・マエス
(72)【発明者】
【氏名】サイマ・アリ
(72)【発明者】
【氏名】エリーナ・ファルム
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA09
4K030AA11
4K030AA13
4K030BA12
4K030BA38
4K030BA48
4K030BB12
4K030BB14
4K030DA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA06
4M104BB16
4M104BB26
4M104DD22
4M104DD43
4M104DD45
4M104DD47
4M104DD79
4M104DD84
4M104EE14
4M104EE15
4M104EE17
4M104EE20
4M104FF13
4M104GG04
4M104GG05
4M104GG08
4M104GG16
4M104HH15
(57)【要約】
【課題】ケイ化モリブデンを形成する方法を提供する。
【解決手段】ケイ化モリブデンを形成する方法が開示される。例示的な方法は、第二の表面に対して、第一の表面上に、ケイ化モリブデンを選択的に形成することを含んでもよい。追加的に又は代替的に、例示的な方法は、ケイ化モリブデンを形成する前に、洗浄工程を含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上にケイ化モリブデンを選択的に形成する方法であって、前記方法が、
反応チャンバ内に基材を提供する工程であって、前記基材が第一の表面及び第二の表面を備え、前記第一の表面が第一の材料を備え、前記第二の表面が前記第一の材料とは異なる第二の材料を備える、提供する工程と、
周期的堆積プロセスを使用して、前記第二の表面に対して前記第一の表面上にケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程であって、前記周期的堆積プロセスが、1つ以上の堆積サイクルを含み、各堆積サイクルが、
無酸素モリブデン前駆体を提供して、前記第一の表面上に吸収されたモリブデン種を形成する工程と、
ケイ素前駆体を提供して、前記モリブデン種と反応させて、前記第一の表面上に前記ケイ化モリブデン層を形成する工程とを含む、周期的堆積プロセスを使用して、堆積させる工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記第一の材料が、ケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二の材料が、SiO、又はSiN、又はSiCN、又はSiCOを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記無酸素モリブデン前駆体が、ハロゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無酸素モリブデン前駆体が、モリブデン及び1つ以上のハロゲンからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記無酸素モリブデン前駆体が、有機配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ素前駆体が、一般式、RSiX、又はRSi-SiRを有し、式中、各Xは、独立して、H、ハロゲン、又は他の配位子から選択されもよく、各Rは、C1~C12有機基であってもよく、aは、0、1、2、又は3であり、bは、4-aであり、cは、0、1、又は2であり、dは、3-cである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応チャンバ内の温度が、約500℃~約600℃の間、又は200℃~500℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素前駆体を供給する前記工程中、水素含有ガスを提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応チャンバ内で、前記ケイ化モリブデン層の上に重なるモリブデン層を、選択的に堆積させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ化モリブデン層の上に重なるキャッピング層を形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程の前に、前記反応チャンバ内の前記基材の表面を洗浄する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
基材の表面上にケイ化モリブデンを形成する方法であって、前記方法が、
表面を備える基材を反応チャンバ内に提供する工程と、
フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガス又はNH含有ガスを使用して形成される活性種を使用して、前記表面を洗浄して、洗浄された表面を形成する工程と、
無酸素モリブデン前駆体を使用して、前記洗浄された表面上にモリブデンの層を堆積させる工程と、
前記基材を約500℃~約750℃の温度に加熱して、前記ケイ化モリブデンを形成する工程とを含む、方法。
【請求項14】
前記フッ素含有ガスが、NF、XeF、又はFの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水素含有ガスが、NH、及びHの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
フッ素含有ガスを使用して形成される前記活性種、及び水素含有ガスを使用して形成される前記活性種が、遠隔プラズマ装置を使用して形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記モリブデンの層を堆積させる前記工程が、周期的堆積プロセスを含み、前記周期的堆積プロセスが、
前記無酸素モリブデン前駆体を前記反応チャンバに提供する工程と、
反応物質を前記反応チャンバに提供する工程とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記無酸素モリブデン前駆体が、ハロゲンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱する工程が、急速熱処理を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
基材の表面上にケイ化モリブデンを形成する方法であって、前記方法が、
表面を備える基材を反応チャンバ内に提供する工程と、
フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガスを使用して形成される活性種を使用して、前記表面を洗浄して、洗浄された表面を形成する工程と、
前記洗浄された表面上にケイ化モリブデンを形成する工程と、
周期的堆積プロセスを使用して、モリブデンを含む層を堆積させる工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子デバイスを製造するための方法及び装置に関する。より具体的には、本開示は、基材の表面上にケイ化モリブデンを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電層は、多くの場合、電子デバイスの製造中に形成される。例えば、電子デバイスの製造中に形成されるデバイス構造は、例えば、誘電材料内に形成されるビア又はトレンチ内に導電性プラグ又はラインを形成することができる、タングステン又は銅の導電層を含むことが多い。タングステン及び銅は、ほとんどの誘電材料を通して拡散することができる。製造技術は、タングステン、銅などの拡散を軽減するために、窒化チタンなどのバリア層の使用を含んでもよく、それによって、デバイスの信頼性及びデバイス収率を改善する。しかしながら、バリア層は一般に高い電気抵抗率を示し、そのため、半導体デバイス構造の、全体的な電気抵抗率の増加をもたらす。更に、バリア層の形成は、導電層を含む構造を形成する複雑さを追加し、概して、追加的な装置を必要とする。例えば、バリア層は、多くの場合、1つの反応チャンバ内で形成され、導電層(例えば、銅又はタングステン)は、別の反応チャンバ内で形成される。なお更に、特に、ビアのアスペクト比が増加するにつれて、及び/又はビア開口部の断面寸法が低下するにつれて、ビア内に欠陥のない導電性材料を形成することは困難となり得る。
【0003】
近年、モリブデンは、電子デバイスの製造中に導電層を形成するための金属として、関心を集めている。モリブデンは、いくつかの用途でうまく機能する場合がある。しかしながら、いくつかの場合では、堆積モリブデンを有するデバイス構造は、望ましくないほど高い接触抵抗を呈し得る。したがって、電子デバイスの製造での使用に適切な、導電層を形成するための改善された方法が望まれる。
【0004】
このセクションに記載される、問題及び解決策の考察を含む、任意の考察は、本開示の文脈を提供する目的のためにのみ、この開示に含まれるものである。こうした考察は、本発明がなされた時点で、又は別の方法で先行技術を構成する時点で、情報のいずれか又は全てが既知であったことを認めるものと、解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
この発明の概要は、選択された概念を単純化した形態で導入してもよく、これは以下で更に詳細に記載されてもよい。この発明の概要は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを必ずしも意図してはおらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0006】
本開示の様々な実施形態は、基材の表面上にケイ化モリブデンを形成する方法に関する。以下により詳細に説明するように、本明細書に記載の方法は、電子デバイスの製造中に使用してもよい。こうした方法は、デバイス製造の複雑さ及び/若しくはコストを低減し、低減された接触抵抗を有する導電層を提供し、選択的層堆積技術を提供し、並びに/又は比較的欠陥のない様式で、基材表面上のビア若しくは他の陥没部を充填することを可能にしてもよい。例として、本明細書に記載の方法は、メモリ、論理デバイス、他のゲート電極デバイス、有機発光ダイオード、液晶ディスプレイ、薄膜太陽電池、他の光起電デバイスの形成に、使用してもよい。
【0007】
本開示の実施例によると、基材の表面上にケイ化モリブデンを選択的に形成する方法が提供される。例示的な方法は、反応チャンバ内に基材を提供する工程であって、基材が第一の表面及び第二の表面を備え、第一の表面が第一の材料を備え、第二の表面が第一の材料とは異なる第二の材料を備える、提供する工程と、周期的堆積プロセスを使用して、第二の表面に対して第一の表面上にケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程とを含む。選択的ケイ化モリブデン堆積の使用は、ケイ化モリブデンを含む構造の製造の複雑さの低減を可能にしてもよく、並びに/又はケイ化モリブデン及びモリブデンの重層を含む材料の、比較的低い接触抵抗を容易にしてもよい。本開示の実施例によると、周期的堆積プロセスは、1つ以上の堆積サイクルを含み、各堆積サイクルは、無酸素モリブデン前駆体を提供して、第一の表面上に吸収されたモリブデン種を形成する工程と、ケイ素前駆体を提供してモリブデン種と反応させて、第一の表面上にケイ化モリブデンを形成する工程とを含む。本開示の実施例によると、方法は、ケイ化モリブデン層の上に重なるモリブデン層を堆積させる工程を更に含んでもよい。こうした場合、方法は、ケイ化モリブデン層の上に重なるキャッピング層を形成する工程を追加的に含んでもよい。追加的に又は代替的に、方法は、ケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程の前に、基材の表面を洗浄する工程を含んでもよい。
【0008】
本開示の追加の実施例によると、基材の表面上にケイ化モリブデンを形成する、別の方法が提供される。方法は、ケイ化モリブデンを形成する前に、基材の表面を洗浄する工程を含む。洗浄は、フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガス又はNH含有ガスを使用して形成される活性種を使用して、洗浄された表面を形成する工程を含んでもよい。ケイ化モリブデンは、上述の通りに形成されてもよい。あるいは、ケイ化モリブデンは、洗浄された表面上にモリブデンの層を堆積させるために、無酸素モリブデン前駆体を使用して形成され、基材を、約550℃~約800℃、又は約500℃~約750℃の温度に加熱して、ケイ化モリブデンを形成してもよい。フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び/又は水素含有ガス又はNH含有ガスを使用して形成される活性種は、遠隔プラズマ装置を使用して形成されてもよい。モリブデンの層を堆積させる工程は、無酸素モリブデン前駆体を反応チャンバに提供する工程と、反応物質を反応チャンバに供給する工程とを含む、周期的堆積プロセスとしてもよい。加熱する工程は、急速熱処理を含んでもよい。
【0009】
当業者には、これらの及び他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から、容易に明らかとなるであろう。本発明は、開示されたいずれかの特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の実施形態のより完全な理解は、以下の例示的な図面に関連して考慮される場合、詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって得られてもよい。
【0011】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態による方法を図示する。
図2図2は、本開示の実施例による構造を図示する。
図3図3は、本開示の実施例による構造を図示する。
図4図4は、本開示の実施例による構造を図示する。
図5図5は、本開示の実施例による構造を図示する。
図6図6は、本開示の例示的な実施形態による別の方法を図示する。
図7図7は、本開示の実施例による追加的な構造を図示する。
図8図8は、本開示の実施例による追加的な構造を図示する。
図9図9は、本開示の実施例による追加的な構造を図示する。
図10図10は、本開示の実施例による追加的な構造を図示する。
【0012】
当然のことながら、図内の要素は単純化及び明瞭化のために例示されていて、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、図内の要素のうちの一部の寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素に対して相対的に誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に提供される方法及び構造の、例示的な実施形態の記載は、単に例示的であり、図示の目的のみを意図している。以下の記載は、開示の範囲又は特許請求の範囲を限定することを、意図するものではない。更に、示された特徴又は工程を有する、多数の実施形態の列挙は、追加的な特徴を若しくは工程を有する他の実施形態、又は述べられた特徴若しくは工程の異なる組合せを組み込む他の実施形態を、除外することを意図しない。
【0014】
以下により詳細に説明するように、本開示の様々な実施形態は、表面上にケイ化モリブデンを形成するための方法を提供する。例示的な方法を使用して、別の表面に対して、基材の一方の表面上に、ケイ化モリブデンを選択的に形成してもよい。追加的に又は代替的に、例示的な方法を使用して、比較的清浄な(例えば、(例えば、自然に生じた)酸化物が除去された)表面上に、ケイ化モリブデンを形成してもよい。本明細書に記載される方法を使用して、モリブデンを含む層の接触抵抗を低減するために、ケイ化モリブデンを形成してもよい。追加的に又は代替的に、方法は、比較的単純なプロセスを使用して、及び/又は低減された機器要件で、ケイ化モリブデンを形成するために採用されてもよい。更に、少なくともいくつかの場合では、ケイ化モリブデンは、比較的低温で形成されてもよい。
【0015】
本明細書に記載の方法によって形成されるケイ化モリブデンは、半導体デバイスなどの電子デバイスの、配線のバックエンド及び配線のミドルエンドの処理に、特に適切であってもよい。特定の例として、本明細書に記載の方法は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)デバイスなどの、論理デバイス及びメモリデバイスの形成中に、使用されてもよい。
【0016】
本開示では、ガスは、常温常圧(NTP)にて気体である材料、気化した固体、及び/又は気化した液体を含んでもよく、また、状況に応じて、単一の気体又は気体の混合物によって構成されてもよい。
【0017】
「前駆体」及び「反応物質」という用語は、別の化合物を生成する化学反応に関与する、分子(化合物、又は単一の元素を含む分子)を指してもよい。「前駆体」は、典型的には、問題になっている化学反応から生じる化合物又は元素に、少なくとも部分的に組み込まれる部分を含む。結果として生じるこのような化合物又は元素は、基材上に堆積されてもよい。「反応物質」は、得られる化合物又は元素内には、有意な程度には取り込まれない元素又は化合物であってもよい。いくつかの場合では、「反応物質」という用語は、「前駆体」という用語と、交換可能に使用されてもよい。
【0018】
本明細書で使用する場合、モリブデン前駆体には、気体、又は気体になることができ、かつモリブデンを含む化学式で表すことができる材料が含まれる。無酸素モリブデン前駆体には、その化学式に酸素を含まないモリブデン化合物が含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、ケイ素前駆体には、気体、又は気体になることができ、かつケイ素を含む化学式で表すことができる材料が含まれる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「基材」という用語は、デバイス、回路、若しくは膜を形成するのに使用されてもよい任意の下地材料、又はデバイス、回路、若しくは膜がその上に形成されてもよい任意の下地材料を指してもよい。基材は、シリコン(例えば、単結晶シリコン)などのバルク材料、ゲルマニウムなどの他の第IV族材料、又は第II-VI族、若しくは第III-V族半導体材料などの他の半導体材料を含んでもよく、かつバルク材料の上に重なる、又は下に重なる1つ以上の層を含んでもよい。更に、基材は、基材の層の少なくとも一部分中又は上に形成される様々な特徴(陥没部、突出部、及びこれに類するものなど)を含んでもよい。例として、基材は、半導体材料を含んでもよい。半導体材料は、デバイスの供給源、ドレイン、又はチャネル領域のうちの1つ以上を含むか、又はそれらを形成するために使用されてもよい。基材は、半導体材料の上に重なる層間誘電体(例えば、酸化ケイ素)及び/又は高誘電率材料層を、更に含んでもよい。この文脈では、高誘電率材料又は高誘電材料は、二酸化ケイ素の誘電率よりも大きい誘電率を有する材料である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「構造」は、本明細書に記載される基材としてもよく、又はそれを含んでもよい。「構造」は、本開示による方法によって形成された1つ以上の層などの、基材の上に重なる1つ以上の層を含んでもよい。「構造」は、例えば、BEOL処理におけるビア若しくはライン、又はMEOL処理における接点若しくはローカル相互接続の形成を含んでもよく、又はその形成に使用されてもよい。「構造」はまた、ゲート電極に層を形成するために、論理用途では埋め込み電源レール、並びに高度なメモリ用途ではワード線又はビット線を形成するために、使用されてもよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、「膜」及び/又は「層」という用語は、本明細書に開示される方法によって堆積される材料などの、任意の連続的又は非連続的な構造及び材料を指してもよい。例えば、「膜」及び/又は「層」には、二次元材料、三次元材料、ナノ粒子、部分的若しくは完全な分子層、又は部分的若しくは完全な原子層、又は原子及び/若しくは分子のクラスタが、含まれてもよい。「膜」又は「層」は、基材の表面上に分散した複数の原子から、部分的に又は完全に構成されてもよく、及び/又は基材内に埋め込まれてもよく、及び/又はその基材上に製造されたデバイス内に埋め込まれてもよい。「膜」又は「層」は、ピンホール及び/又は分離された島を有する、材料又は層を備えてもよい。「膜」又は「層」は、少なくとも部分的に連続的であってもよい。「膜」又は「層」は、パターン形成され(例えば、細分され)てもよく、複数の半導体デバイス中に含まれてもよい。
【0023】
「周期的堆積プロセス(cyclic deposition process)」又は「周期的堆積プロセス(cyclical deposition process)」という用語は、前駆体(及び/又は反応物質)を反応チャンバ内へ連続的に導入して、基材上に層を堆積させることを指してもよく、かつ原子層堆積(ALD)成分と周期的化学気相堆積(CVD)成分とを含む、ALD、周期的化学気相堆積(周期的CVD)、及びハイブリッド周期的堆積プロセスなどの、処理技術を含む。いくつかの場合では、「周期的堆積プロセス」は、1つ以上の前駆体、反応物質、又は不活性ガスを連続的に流すことと、及び前駆体又は反応物質の他のものをパルシングすることとを、含んでもよい。
【0024】
本明細書で使用する場合、「パージ」という用語は、互いに反応する可能性があるガスの2つのパルスの間に、不活性ガス又は実質的に不活性なガスが反応チャンバに提供される手順を指してもよい。例えば、例えば、希ガスなどの不活性なガスを使用するパージは、前駆体パルスと反応物質パルスとの間に提供されてもよく、前駆体と反応物質との間で起こり得る気相の相互作用を低減する。当然のことながら、パージは、時間的に若しくは空間的に、又は両方で、達成されてもよい。例えば、時間的パージの場合では、パージ工程は、例えば、前駆体を反応チャンバに提供し、パージガスを反応チャンバに提供し、そして反応物質を反応チャンバに提供し、層がその上に堆積される基材は移動しないという、時系列で使用してもよい。例えば、空間的パージの場合では、パージ工程は、以下の形態:基材を、前駆体が(例えば、連続的に)供給される第一の位置から、パージガスカーテンを通して、反応物質が(例えば、連続的に)供給される第二の位置へと移動させる、という形態を取ってもよい。
【0025】
更に、本開示では、変数の任意の2つの数字は、その変数の実行可能な範囲を構成してもよく、また示される任意の範囲は、端点を含んでもよく又は除外してもよい。加えて、示された変数の任意の値は(それらが、「約」という用語を有して示されているか否かに関わらず)、正確な値又は概算の値を指し、かつ等価物を含み、及び平均値、中央値、代表値、大多数、又はこれに類するものを指してもよい。更に、この開示では、「含む」、「によって構成される」、及び「有する」という用語は、いくつかの実施形態では、独立して、「典型的に含む」若しくは「広く含む」、「含む」、「から本質的になる」、又は「からなる」を指してもよい。
【0026】
この開示では、任意の定義された意味は、いくつかの実施形態では、通常の意味及び通例の意味を必ずしも除外しない。
【0027】
ここで図を参照すると、図1は、方法100を図示する。方法100は、反応チャンバ内に基材を提供する工程(工程102)と、ケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程(工程104)と、任意選択的にキャッピング層を形成する工程(工程114)と、任意選択的にモリブデンを選択的に堆積させる工程(工程116)とを含む。更に、方法100は、任意選択的に、基材表面を洗浄する工程(工程118)を含んでもよい。
【0028】
工程102中、基材を反応チャンバ内に提供する。工程102の間に使用される反応チャンバは、周期的堆積プロセスを実施するように構成された化学蒸着反応器システムの反応チャンバであるか、又はそれを含み得る。反応チャンバは、スタンドアロンの反応チャンバ、又はクラスタツールの一部であってもよい。反応チャンバは、基材を本明細書に記載の温度に加熱するための、基材加熱器を含んでもよい。追加的に又は代替的に、反応チャンバは、基材を加熱するために、ランプなどの、急速熱処理装置を含んでもよい。
【0029】
工程102中に提供される基材は、第一の表面及び第二の表面を含んでもよい。第一の表面は、第一の材料を含んでもよく、第二の表面は、第一の材料とは異なる第二の材料を含んでもよい。例えば、第一の材料は、シリコン、シリコンゲルマニウム、ドープシリコン、ドープシリコンゲルマニウム、又は(例えば、自然に生じた)それらの酸化物であってもよく、又はそれらを含んでもよい。第二の材料は、例えば、酸化物、窒化物などの、誘電材料を含んでもよい。一例として、第二の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、オキシ炭化ケイ素などの、層間誘電体であってもよく、又は層間誘電体を含んでもよい。
【0030】
図2は、工程102中に提供される基材としての使用に適切な、基材又は構造200を図示する。基材200は、第一の材料上202の第一の表面206と、第二の材料上204の第二の表面208とを含んでもよい。第一の材料202及び第二の材料204は、上述の通りとしてもよい。第一の表面206は、第一の材料であってもよく、若しくは第一の材料を含んでもよく、又はその上に(例えば、自然に生じた)酸化物を含んでもよい。図2に図示されるように、ライナー層又はバリア層は、ケイ化モリブデン及びその後形成されるモリブデン層が、第二の材料204及び第一の材料202と直接接触できるように、存在しなくてもよい。これにより、金属と、例えば、層間誘電体層との間に、バリア層を必要とする典型的な処理と比較して、低接触抵抗及び/又は比較的に複雑さの少ない製造を得てもよい。
【0031】
工程102は、基材を、反応チャンバ内で望ましい堆積温度に加熱することを、含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態では、工程102は、基材を650℃未満の温度に加熱することを含む。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、基材を堆積温度に加熱することは、(例えば、基材ヒーターを使用して)約200℃~約500℃の間、約250℃~約400℃、約20℃~約1000℃、約500℃~約650℃、又は約500℃~約600℃の温度に、基材を加熱することを含んでもよい。
【0032】
基材の温度を制御することに加えて、反応チャンバ内の圧力もまた調整されてもよい。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、工程102中の反応チャンバ内の圧力は、760Torr未満、又は0.2Torr~760Torrの間、約1Torr~100Torr、又は約1Torr~10Torrであってもよい。
【0033】
工程104中、ケイ化モリブデン層は、第二の表面(例えば、第二の表面208)に対して、第一の表面(例えば、第一の表面206)上に選択的に堆積される。第一の表面上にケイ化モリブデンを堆積させることによって、第一の材料202を消費することなく、ケイ化物を形成することができる。
【0034】
本開示の実施例によると、及び図1を参照すると、ケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程104は、無酸素モリブデン前駆体を提供して、第一の表面上に吸収されたモリブデン種を形成する工程(工程108)と、ケイ素前駆体を提供してモリブデン種と反応させて、第一の表面上にケイ化モリブデンを形成する工程(工程110)とを含む、周期的堆積プロセス106を含む。ループ112によって図示されるように、工程108及び110が繰り返されてもよい。更に、工程108及び110は、任意の順序で開始及び/又は終了してもよい。なお更に、周期的堆積プロセス106は、工程108又は110の他方に進む前に、1つ以上の(例えば、1~10又は1~5の)工程108及び/又は110を含んでもよい。
【0035】
工程108中、無酸素モリブデン前駆体は、反応チャンバへと提供される。反応チャンバ内の温度及び圧力は、工程102に関連して、上述の通りであってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、単一の化合物として、又は2つ以上の化合物の混合物として提供される。混合物では、無酸素モリブデン化合物に加えて、他の化合物は、1つ以上の不活性化合物又は元素、すなわち、不活性ガスであってもよい。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、組成物中で提供される。組成物としての使用に適切な組成物は、モリブデン化合物、並びにアルゴン、窒素、及び/又は水素などの、1つ以上の安定化剤及び/又は不活性ガス若しくはキャリアガスの、有効量を含んでもよい。組成物は、NTPで、溶液又はガスであってもよい。
【0037】
本開示の実施例によると、無酸素モリブデン化合物は、モリブデン原子及び有機(例えば、炭化水素)配位子を含む。いくつかの実施形態では、モリブデン前駆体は、モリブデンを含む金属有機化合物を含む。このような場合、モリブデン前駆体は、金属有機モリブデン前駆体と呼ばれてもよい。無酸素金属有機モリブデン前駆体は、本明細書では、モリブデン原子及び炭化水素配位子を含む、モリブデン化合物を含むことを意味しており、モリブデン原子は、炭素原子に直接結合しない。いくつかの実施形態では、無酸素金属有機モリブデン前駆体は、炭素原子と直接結合しない、1つのモリブデン原子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素金属有機モリブデン前駆体は、そのいずれも炭素原子に直接結合しない、2つ以上のモリブデン原子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素金属有機モリブデン前駆体は、2つ以上の金属原子を含み、少なくとも1つの金属原子は、炭素原子に直接結合しない。
【0038】
いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、モリブデンを含む、無酸素有機金属モリブデン化合物を含む。無酸素有機金属モリブデン前駆体は、本明細書では、モリブデン原子及び有機(例えば、炭化水素)配位子を含む、モリブデン化合物を指すことを意味しており、モリブデン原子は、炭素原子に直接結合する。無酸素モリブデン有機金属前駆体が2つ以上の金属原子を含む実施形態では、金属原子の1つ以上(例えば、全て)が、炭素原子と直接結合してもよい。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、モリブデン、炭素、及び水素のみを含む。換言すれば、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、酸素、窒素、又は他の追加の元素を含有しない。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、少なくとも2つの炭化水素配位子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、少なくとも3つの炭化水素配位子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、4つの炭化水素配位子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、炭化水素配位子及び水素化物配位子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、炭化水素配位子及び2つ以上の水素化物配位子を含む。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン有機金属前駆体は、2つの炭化水素配位子及び2つの水素化物配位子を含む。本明細書に記載の炭化水素配位子は、例えば、C1~C10炭化水素であってもよく、又はC1~C10炭化水素を含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、1つ以上の環状部分を含む。例えば、無酸素モリブデン前駆体は、1つ以上のベンゼン環を含んでもよい。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、2つのベンゼン環を含む。一方又は両方のベンゼン環は、(例えば、C1~C6)炭化水素置換基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体の各ベンゼン環は、アルキル置換基を含む。アルキル置換基は、メチル基、エチル基、又は3個、4個、5個、若しくは6個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であってもよい。例えば、ベンゼン環のアルキル置換基は、n-プロピル基、又はイソ-プロピル基であってもよい。更に、アルキル置換基は、ブチル、ペンチル、又はヘキシル部分の、n-、イソ-、tert-、又はsec-の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、モリブデン前駆体は、ビス(エチルベンゼン)モリブデンを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0040】
いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、シクロペンタジエニル(Cp)配位子を含む。例えば、無酸素モリブデン前駆体は、MoCpCl、又はMoCp、Mo(iPrCp)Cl、Mo(iPrCp)、Mo(EtCp)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれらからなってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、モリブデン及び1つ以上のハロゲン原子を含むか、又はそれらからなる、ハロゲン化モリブデン化合物を含む。無酸素モリブデン前駆体は、上述の1つ以上の配位子及び1つ以上のハロゲン原子を含んでもよい。あるいは、無酸素モリブデン前駆体化合物は、モリブデン及び1つ以上のハロゲン原子からなってもよい。いくつかの実施形態では、無酸素モリブデン前駆体は、塩化モリブデン化合物、ヨウ化モリブデン化合物、又は臭化モリブデン化合物を含む。非限定的な例として、ハロゲン化モリブデン前駆体は、五塩化モリブデン(MoCl)、六塩化モリブデン(MoCl)、六フッ化モリブデン(MoF)、三ヨウ化モリブデン(MoI)、又は二臭化モリブデン(MoBr)の少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ハロゲン化モリブデン前駆体は、モリブデンカルコゲナイドを含んでもよく、特定の実施形態では、ハロゲン化モリブデン前駆体は、酸素を含まないモリブデンカルコゲナイドハライドを含んでもよい。例示的なカルコゲナイドには、硫黄、セレン、及びテルルが含まれる。
【0042】
各サイクル112中の工程108の持続時間は、例えば、約0.1秒~約60秒の間、約0.1秒~約10秒の間、又は約0.5秒~約5.0秒の間であってもよい。反応チャンバへの、モリブデン前駆体の流量は、1000sccm未満、若しくは500sccm未満、若しくは100sccm未満、若しくは10sccm未満、若しくは1sccm未満でさえあってもよく、又は約1~2000sccm、約5~1000sccm、若しくは約10~約500sccmの範囲であってもよい。
【0043】
工程110中、ケイ素前駆体が、反応チャンバへと提供される。いくつかの場合では、ケイ素前駆体は、一般式、RSiX、又はRSi-SiRを有する化合物を含み、式中、各Xは、独立して、H、ハロゲン、又は他の配位子から選択されてもよく、各Rは、C1~C12有機基であってもよく、aは、0、1、2、又は3であり、bは、4-aであり、cは、0、1、又は2であり、dは、3-cである。Rは、炭化水素であってもよい。aが2若しくは3であるか、又はcが2である場合、各Rは、独立して選択されてもよい。いくつかの実施形態では、各Rは、アルキル及びアリールから選択される。明確にするために、Xは、異なる(例えば、独立して選択される)リガンドを表してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、補助反応物質は、例えば、SiHBr、SiH、又はSiHClであってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、Xは、水素、置換若しくは非置換アルキル若しくはアリール、又はハロゲンである。いくつかの実施形態では、Xは、Hである。いくつかの実施形態では、Xは、アルキル又はアリールである。いくつかの実施形態では、Xは、C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、Xは、置換アルキル又はアリールである。いくつかの実施形態では、Xは、置換アルキル又はアリールであり、置換基はケイ素を含む。いくつかの実施形態では、Xは、H、Me、Et、nPr、iPr、nBu、tBu、M’Me、M’Et、M’Pr、M’Bu、Cl、Br、又はIからなる群から選択され、式中、M’は、Siである。
【0045】
いくつかの実施形態では、ケイ素前駆体は、式、RSi、RSiX、RiX、又はSiXを有してもよく、式中、a、b、R、及びXは、上記の通りである。いくつかの実施形態では、ケイ素原子は、4つの同一の置換基を含まない。いくつかの実施形態では、ケイ素前駆体は、SiHではない。いくつかの実施形態では、ケイ素前駆体は、SiHMeではない。いくつかの実施形態では、ケイ素前駆体は、SiHEtではない。いくつかの実施形態では、ケイ素前駆体は、Siではない。
【0046】
いくつかの場合では、工程110での使用に適切な例示的なケイ素前駆体は、ケイ素及び水素からなってもよい。例えば、ケイ素前駆体には、シラン、例えば、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、テトラシラン(Si10)、又は一般的な実験式Si(2x+2)の高次シランなどが含まれる。
【0047】
いくつかの場合では、ケイ素前駆体には、シランジアミンN,N,N’,N-テトラエチル(C22Si)、BTBAS(ビス(第三級ブチルアミノ)シラン)、BDEAS(ビス(ジエチルアミノ)シラン)、又はTDMAS(トリス(ジメチルアミノ)シラン)、ヘキサキス(エチルアミノ)ジシラン(Si(NHCの1つ以上などの、アミノシランが含まれていてもよい。
【0048】
本開示の更なる実施例によると、ケイ素前駆体は、酸素を含む化合物を含まない。いくつかの場合では、ケイ素前駆体を提供する工程110は、水素含有ガス(例えば、H、NHなど)などの、別のガスを提供することを含む。
【0049】
各サイクル112中の工程110の持続時間は、例えば、約0.1秒~約60秒の間、約0.1秒~約10秒の間、又は約0.5秒~約5.0秒の間であってもよい。反応チャンバへの、ケイ素前駆体の流量は、1000sccm未満、若しくは500sccm未満、若しくは100sccm未満、若しくは10sccm未満、若しくは1sccm未満でさえであってもよく、又は約1~2000sccm、約5~1000sccm、若しくは約10~約500sccmの範囲であってもよい。
【0050】
無酸素モリブデン及び/又はケイ素前駆体は、例えば、各パルスの後、並びに/又は工程108、110及び/若しくは各サイクル112の完了時に、反応チャンバからパージしてもよい。上述の通り、パージは、時間的に若しくは空間的に、又はその両方で、達成されてもよい。パージ時間は、例えば、約0.01秒~約20秒、約0.05秒~約20秒、又は約1秒~約20秒、又は約0.5秒~約10秒、又は約1秒~約7秒であってもよい。反応チャンバへの、パージガスの流量は、1000sccm未満、若しくは500sccm未満、若しくは100sccm未満、若しくは10sccm未満、若しくは1sccm未満でさえであってもよく、又は約1~2000sccm、約5~1000sccm、若しくは約10~約500sccmの範囲であってもよい。
【0051】
図3は、工程104後の構造300を図示する。図示されるように、ケイ化モリブデン層302は、第二の表面208に対して、第一の表面206上に重なって選択的に形成される。この文脈では、「選択的に形成される」とは、第二の表面208に対して、より多くの量のケイ化モリブデンが第一の表面206上に堆積されることを意味する。本開示のいくつかの実施形態では、プロセスの選択性は、第一の及び第二の表面を組み合わせた上に形成される、材料の量(例えば、層の厚さ)に対する、第一の表面上に堆積される材料(例えば、層の厚さ)の比として表されてもよい。例えば、10nmのケイ化モリブデンが第一の表面206上に堆積され、1nmのケイ化モリブデンが第二の表面208上に堆積される場合、選択的堆積プロセスは、91%の選択性を有するとみなされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法の選択性は、50%より大きくても、75%より大きくても、80%より大きくても、90%より大きくても、95%より大きくても、97.5%より大きくても、98%より大きくても、99%より大きくても、又は約100%でさえあってもよい。
【0052】
ケイ化モリブデン層は、ケイ化モリブデンを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなってもよい。ケイ化モリブデンからなる層は、ケイ化モリブデン層を堆積させるために使用される、1つ以上の前駆体から生じ得る、炭素、塩素若しくはその他のハロゲン、及び/又は水素などの、許容可能な量の不純物を含んでもよい。
【0053】
ケイ化モリブデン層302の厚さは、例えば、約1~約40nm、又は約2~約10nmであってもよい。ケイ化モリブデン層は、モリブデン及びケイ素を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなってもよい。ケイ化モリブデンからなる層は、ケイ化モリブデン層を堆積させるために使用される、1つ以上の前駆体から生じ得る、炭素、塩素若しくはその他のハロゲン、及び/又は水素などの、許容可能な量の不純物を含んでもよい。
【0054】
いくつかの場合では、方法100はまた、キャッピング層402を形成する工程114を含んでもよい。工程114中、図4に図示されたキャッピング層402は、ケイ化モリブデン層302上に重なって、(例えば、直接)形成されてもよい。キャッピング層402は、例えば、窒化モリブデン層であってもよく、又はそれを含んでもよい。
【0055】
キャッピング層402は、モリブデン前駆体及び窒素反応物質を反応チャンバに提供することによって、(例えば、選択的及び/又は周期的)堆積プロセスを使用して形成されてもよい。モリブデン前駆体は、本明細書に記載のモリブデン前駆体のいずれかであってもよく、又はそれらを含んでもよい。モリブデン前駆体流量及びパルス時間は、工程108に関連して、上述の通りであってもよい。
【0056】
窒素反応物質は、例えば、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、トリアザン(N)、アルキル置換ヒドラジン若しくはトリアジン、例えば、第三級ブチルヒドラジン(C4H)、メチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CH)、又は窒素プラズマの、少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでもよく、窒素プラズマは、原子窒素、窒素ラジカル、及び/又は励起窒素種を含んでもよい。
【0057】
反応チャンバへ窒素反応物質を提供する工程の持続時間は、約0.1秒~約60秒の間、又は約0.1秒~約10秒の間、又は約0.5秒~約5.0秒の間であってもよい。反応チャンバへの、窒素反応物質の流量は、1000sccm未満、若しくは500sccm未満、若しくは100sccm未満、若しくは10sccm未満、若しくは1sccm未満でさえあってもよく、又は約1~約2000sccm、約5~約1000sccm、若しくは約10~約500sccmの範囲であってもよい。
【0058】
キャッピング層402の厚さは、約1~約20nmの間、又は約2~約10nmの間であってもよい。キャッピング層402は、約10~約90%、若しくは約20~約70at%のモリブデン、及び/又は約30~約60at%の窒素を含んでもよい。
【0059】
工程116中、モリブデンが、キャッピング層402又はケイ化モリブデン層302上に、選択的に(例えば、直接)堆積されてもよい。
【0060】
工程116は、モリブデン前駆体及び反応物質を反応チャンバへ提供することを含む、(例えば、周期的)堆積プロセスを含んでもよい。本開示による方法では、反応物質は、化学吸着モリブデン前駆体を含む基材と接触してもよい。モリブデン前駆体のモリブデンへの変換は、基材表面で行われてもよい。いくつかの実施形態では、変換は、少なくとも部分的に気相で行われてもよい。
【0061】
工程116中、モリブデン前駆体、モリブデン前駆体流量、及びモリブデン前駆体持続時間は、工程104に関連して、上述の通りであってもよい。同様に、反応チャンバ内の温度及び圧力は、工程104に関連して、上述の通りであってもよい。
【0062】
工程116での使用に適切な例示的な反応物質としては、還元剤が含まれる。例示的な還元剤には、フォーミングガス(H+N)、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、アルキル-ヒドラジン(例えば、第三級ブチルヒドラジン(C12))、分子水素(H)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、(例えば、C1~C4)アルコール、(例えば、C1~C4)アルデヒド、(例えば、C1~C4)カルボン酸、(例えば、B1~B12)ボラン、又はアミンの1つ以上が含まれる。特定の例として、第一の反応物質は、水素(H)、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、ゲルマン(GeH)、ジゲルマン(Ge)、ボラン(BH)、又はジボラン(B)の少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0063】
反応チャンバへの反応物質の流量は、ゼロより大きく、30slm未満、又は15slm未満、又は10slm未満、又は5slm未満、又は1slm未満、又は0.1slm未満でさえあってもよい。例えば、流量は、約0.1~30slmの間、約5~15slm、又は10slm以上であってもよい。周期的堆積の場合では、反応物質は、例えば、約0.01秒~約180秒の間、又は約0.05秒~約60秒の間、又は約0.1秒~約30秒の間パルスされてもよい。いくつかの実施形態では、モリブデン前駆体は、反応物質が反応チャンバにパルスされる前に、2回以上、例えば、2回、3回、又は4回パルスされてもよい。同様に、モリブデン前駆体が反応チャンバにパルスされる(すなわち、提供される)前に、反応物質の、2回、3回、又は4回のパルスなどの、2回以上のパルスがあってもよい。
【0064】
いくつかの場合では、パージを使用して、例えば、反応物質パルス後及び/又は堆積工程の完了時に、反応チャンバから、任意の過剰な反応物質、及び/又は反応副産物を除去してもよい。パージは、上述の通りであってもよい。
【0065】
図1及び5に図示されるように、モリブデンを選択的に堆積させる工程116中、モリブデン502の層は、ケイ化モリブデン層302及び/又はキャッピング層402上に重なって、選択的に形成され、構造500を形成する。工程116は、工程104及び/又は114と同一の反応チャンバ内で実施してもよい。
【0066】
モリブデン(例えば、モリブデン層502)は、少なくとも部分的に元素形態であってもよい。したがって、モリブデンの酸化状態は、ゼロであってもよい。したがって、モリブデン層502は、モリブデンを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、モリブデン層(例えば、モリブデン層502)は、例えば、約60~約99原子百分率(at.%)のモリブデン、又は約75~約99at.%のモリブデン、又は約75~約95at.%のモリブデン、又は約80~約95at.%のモリブデンを含む。本開示による方法によって堆積されるモリブデン層は、例えば、約80at.%、約83at.%、約85at.%、約87at.%、約90at.%、約95at.%、約97at.%、又は約99at.%のモリブデンを含んでもよい。モリブデンから成る層は、モリブデン層を堆積させるために使用される、1つ以上の前駆体から生じ得る、炭素、塩素若しくはその他のハロゲン、及び/又は水素などの、許容可能な量の不純物を含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、モリブデン層は、約20at.%未満、約15at.%未満、約10at.%未満、約8at.%未満、約6at.%未満、約5at.%未満、約4.5at.%未満、又は約3at.%未満の炭素を含んでもよい。
【0069】
モリブデン502の層の厚さは、約1~約40nm、又は約2~約10nmの範囲であってもよい。
【0070】
上述の通り、方法100はまた、ケイ化モリブデン層を選択的に堆積させる工程の前に、基材の表面を洗浄する工程118を含んでもよい。工程118は、反応チャンバ内又は別の反応チャンバ内で、例えば、同一のシステムモジュール内で、実施してもよい。洗浄工程118を使用して、表面から、例えば、表面206から、(例えば、自然に生じた)酸化物を除去してもよい。工程118に適切な例示的な洗浄工程は、図6に関連して、以下により詳細に記載される。
【0071】
ここで図6を参照すると、基材の表面上にケイ化モリブデンを形成する、別の方法600が図示される。方法600は、反応チャンバ内に表面を含む基材を提供する工程(工程602)と、表面を洗浄する工程(工程604)と、洗浄された表面上にモリブデンの層を堆積させる工程(工程606)と、基材を加熱してケイ化モリブデンを形成する工程とを含む。
【0072】
反応チャンバ内に表面を含む基材を提供する工程602は、上述の工程102と同一又は類似であってもよい。材料702、及び(例えば、自然に生じた)酸化物704を含む、例示的な基材700が、図7に図示される。材料702は、上述の通り、第一の材料202であってもよく、又はそれを含んでもよい。別個に図示されていないが、基材700は、上述の通り、第二の材料及び第二の表面を含んでもよい。
【0073】
図8に図示されるように、工程604中、フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガス又はNH含有ガスを使用して形成される活性種は、反応チャンバ内で形成され、また反応チャンバ内へ提供され、洗浄された表面802を形成する。本明細書に記載の実施例に従って洗浄された表面は、例えば、エッチング剤としてHFを使用して形成される、ケイ化モリブデンと比較して、より高品質の(例えば、界面で酸素がより少ない)、ケイ化モリブデンを生成する。
【0074】
本開示の実施例によると、洗浄された表面を形成するために、フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガス又はNH含有ガスを使用して形成される活性種は、間接プラズマ装置又は遠隔プラズマ装置を使用して形成される。プラズマを形成するために使用される電力は、直径300mmの基材に対して、約10~約1000W、又は約20~約200Wであってもよい。プラズマのオンタイム時間は、約1~約60秒、又は約2~約10秒であってもよい。
【0075】
フッ素含有ガスは、例えば、NF、XeF、Fなどの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよい。遠隔プラズマ装置又は間接プラズマ装置へのフッ素含有ガスの流量は、約1~約1000、又は約2~約100sccmであってもよい。
【0076】
水素含有ガスは、NH、N/H(例えば、10~90体積%H2)、ヒドラジン、本明細書に記載の置換ヒドラジン及び/又はトリアジンなどであってもよく、又はそれらを含んでもよい。遠隔プラズマ装置又は間接プラズマ装置への水素含有ガスの流量は、約1~約1000、又は約10~約200sccmであってもよい。
【0077】
フッ素含有ガス、及び水素含有ガス又はNH含有ガスは、プラズマ装置に逐次的に、及び/又はプラズマ装置を分離するために、又はプラズマ装置の異なる領域に、供給されてもよい。プラズマ装置は、各々の活性種を形成するために専用としてもよい、1つ以上の専用領域又はユニットを含んでもよい。あるいは、フッ素含有ガスを使用して形成される活性種、及び水素含有ガスを使用して形成される活性種は、同一のプラズマユニット又は領域を使用して形成されてもよい。
【0078】
図9に図示されるように、工程606中、モリブデン902の層は、洗浄された表面802上に堆積される。工程606は、工程606が、選択的である必要はないが選択的であってもよく、周期的である必要もないが周期的であってもよいことを除いて、方法100の工程116と同一であってもよく又は類似してもよい。特に、工程606は、工程114及び/又は116に関連して、上述した、無酸素モリブデン前駆体及び反応物質のいずれかを、使用することを含んでもよい。工程606は、連続的(例えば、CVDプロセス)であってもよく、又は方法100の工程116に関連して上述した、周期的プロセスであってもよい。モリブデンの堆積前の工程604の使用は、工程608中に高品質のケイ化モリブデンが形成されたかどうかに影響を与えることが見出された。
【0079】
モリブデン902の層の厚さは、約1~約100、又は約2~約20nmの範囲であってもよい。
【0080】
図10に図示されるように、工程608中、基材を、約550℃~約700℃、又は約400~約900℃の温度に加熱して、ケイ化モリブデン1002を形成してもよい。工程608中、材料702の一部分を消費して、材料702’を形成してもよく、モリブデン902の層の一部分を消費して、モリブデン902’の層を形成してもよい。
【0081】
ケイ化モリブデン1002の厚さは、約1~約40nm、又は約2~約10nmであってもよい。ケイ化モリブデン1002の組成は、約20~約80の間、又は約33~約75at.%のモリブデン、及び/又は約0.1~約10の間、又は約20at.%未満の酸素を含んでもよい。
【0082】
基材を加熱する工程608は、急速熱処理を使用して基材を加熱することを含んでもよい。急速熱処理は、1つ以上のランプを使用して実施してもよく、反応チャンバ内又は別の反応チャンバ内で、例えば反応チャンバと同一のプロセスモジュール内で実施してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、熱堆積プロセスを含む。熱堆積では、化学反応は、周囲温度に関連する温度上昇によって促進される。一般的に、温度上昇は、他の外部エネルギー源、例えば、プラズマ、ラジカル、又は放射の他の形態がない場合に、ケイ化モリブデン、キャッピング層、及び/又はモリブデンの形成のためのエネルギーを提供する。例えば、1つ以上(例えば、工程104、114、116、及び606の全て)は、熱プロセスであってもよい。いくつかの実施形態では、洗浄工程(例えば、工程118、又は工程604)は、上述の通り、プラズマを形成して活性種を形成することを含む。
【0084】
上述の本開示の例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的均等物によって定義される、本発明の実施形態の単なる実施例であるので、本発明の範囲を限定しない。いかなる均等の実施形態も、本発明の範囲内にあることが意図される。本開示の様々な修正は、記述された要素の代替的な有用な組合せなど、本明細書に示され、かつ記述されるものに加えて、記述から当業者に明らかになる場合がある。こうした修正及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
図1
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図10
【外国語明細書】