(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096078
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】凝縮前駆体及び汚染物質パージ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240704BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20240704BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240704BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/42
G01N1/28 G
H01J37/20 E
H01J37/20 G
H01J37/317 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222166
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】18/092,103
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チン
(72)【発明者】
【氏名】チャド,ルー
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン フィリップ ジャン マクル,ボットマン
【テーマコード(参考)】
2G052
5C101
【Fターム(参考)】
2G052AD52
2G052EB04
2G052EB08
2G052EB13
2G052EC18
2G052FD06
2G052GA33
5C101AA32
5C101BB01
5C101CC02
5C101CC05
5C101CC17
5C101FF19
5C101FF22
5C101FF25
5C101FF26
5C101FF36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極低温顕微鏡における試料の劣化の防止
【解決手段】方法は、荷電粒子ビーム顕微鏡の真空チャンバ内に基板を配置することであって、基板が、極低温に保持される、配置することと、るつぼ内に貯蔵される凝縮前駆体を極低温で基板上に堆積させることであって、堆積された凝縮前駆体が、基板上に堆積層を形成する、堆積させることと、を含む。装置は、基板を支持すように構成された真空チャンバと、真空チャンバに結合された凝縮前駆体システムと、を含み、真空ポンプは、貯蔵リザーバを真空引きして、貯蔵リザーバ内の1つ以上の揮発性汚染物質の蒸気圧の蓄積を低減し、それによって、基板上への凝縮前駆体の凝縮中の基板上への1つ以上の汚染物質の堆積を低減するように構成されている。凝縮前駆体は、ハフニウム又はオスミウムを含む遷移金属中心を含むことができる。関連する堆積層及びキャップ層が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
荷電粒子ビーム顕微鏡の真空チャンバ内に基板を配置することであって、前記基板が、極低温に保持される、配置することと、
るつぼ内に貯蔵された凝縮前駆体を前記極低温で前記基板上に堆積させることであって、前記堆積された凝縮前駆体が、前記基板上に堆積層を形成する、堆積させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記堆積させることが、遷移金属を含む化合物を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積させることが、オスミウム又はハフニウム金属中心を含む化合物を堆積させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積させることが、ビス-シクロペンタジエニルオスミウムを含む化合物を堆積させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積させることが、シクロペンタジエニルジメチルハフニウムを含む化合物を堆積させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記基板を配置することが、ウォータアイスを含むガラス化試料を含む基板を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凝縮前駆体を堆積させることが、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)よりも低い蒸気圧を有する凝縮前駆体を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記凝縮前駆体を堆積させることが、前記るつぼ内に貯蔵されたバルク材料から凝縮前駆体を堆積させることを含み、前記バルク材料が、前記凝縮前駆体の蒸気圧よりも高いそれぞれの蒸気圧を有する1つ以上の汚染揮発性化学物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凝縮前駆体を堆積させる前に、前記るつぼ内に貯蔵された前記バルク材料に真空を適用することを更に含み、真空源が、前記真空チャンバのものとは異なり、前記るつぼ内の気相に位置する揮発性汚染性化学物質のうちの1つ以上を除去して、前記堆積層内に存在する前記揮発性汚染性化学物質の量を低減させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凝縮前駆体を堆積させる前に、選択された持続時間又は開放持続時間にわたって、前記真空が適用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記凝縮前駆体を堆積させることが、前記凝縮前駆体が前記真空チャンバ内の前記基板の極低温に対して上昇した温度で貯蔵された状態で、前記凝縮前駆体が気相で前記るつぼから前記真空チャンバに流れ、前記極低温に応答して、前記基板上で凝縮することを可能にするように弁を開くことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記堆積させることが、50~70℃の範囲の温度に保持された凝縮前駆体のるつぼから-150~-180℃の範囲の前記極低温で前記基板上に凝縮前駆体を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記極低温で凝縮前駆体を堆積させてキャップ層を形成することが、導電性キャップ層を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記凝縮前駆体を堆積させることが、形成される前記堆積層の制御可能な厚さに関連する制御された持続時間にわたって、前記凝縮前駆体を前記真空チャンバ内に放出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
形成される前記堆積層の厚さに関連する持続時間にわたって前記凝縮前駆体を前記真空チャンバ内に放出することが、約2~20nm/秒の凝縮厚さ成長速度で前記凝縮前駆体を放出することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積層の形成中に荷電粒子ビームが前記凝縮前駆体を部分的に分解するように、前記凝縮前駆体を堆積させる間に電子ビーム又はイオンビームを前記基板に方向付けること、又は前記堆積層の形成後に前記荷電粒子ビームが前記凝縮前駆体を部分的に分解するように、前記凝縮前駆体を堆積させた後に電子ビーム又はイオンビームを前記基板に方向付けることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記形成された堆積層にイオンビームを方向付けて、前記堆積層及び基板の一部をミリングし、分析のために切断面を露出させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記堆積中に形成される前記堆積層の厚さを制御し、前記ミリングのエッチング速度を制御することによって、前記ミリングに関連するカーテニングアーチファクトを低減することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記荷電粒子ビーム顕微鏡が、電子ビームカラム及びイオンビームカラムを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
装置であって、
基板を支持するように構成された真空チャンバと、
前記真空チャンバに結合された凝縮前駆体システムと、を備え、前記凝縮前駆体システムが、
バルク前駆体凝縮材料を貯蔵リザーバ内に貯蔵するように構成された貯蔵るつぼであって、前記バルク前駆体凝縮材料が、凝縮前駆体及び1つ以上の揮発性汚染物質を含む、貯蔵るつぼと、
前記貯蔵リザーバに結合され、かつ前記凝縮前駆体の気相を前記真空チャンバ内に放出して、前記基板上に凝縮させるように構成された真空チャンバ出口弁と、
少なくとも1つの真空ポンプと、
前記真空ポンプに結合された真空弁と、
前記真空弁を介して前記貯蔵リザーバを前記真空ポンプに結合するフィードスルーと、を含み、
前記真空ポンプが、前記貯蔵リザーバを真空引きして、前記貯蔵リザーバ内の前記1つ以上の揮発性汚染物質の蒸気圧の蓄積を低減し、それによって、前記基板上への前記凝縮前駆体の前記凝縮中の前記基板上への前記1つ以上の汚染物質の堆積を低減するように構成されている、装置。
【請求項21】
導電性試料キャップ層であって、
凝縮前駆体を備え、前記凝縮前駆体の蒸気相が、遷移金属中心を含み、前記凝縮前駆体の前記蒸気相が、白金中心を有する対応する前駆体の蒸気相の蒸気圧よりも低い蒸気圧を有する、導電性試料キャップ層。
【請求項22】
凝縮前駆体であって、
ハフニウム又はオスミウムを含む遷移金属中心を含む、凝縮前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この分野は電子顕微鏡法であり、特に極低温電子顕微鏡法である。
【背景技術】
【0002】
極低温電子顕微鏡法(クライオEM)は、試料が冷却され極低温で分析される技術の拡大分野である。より冷却された温度は、撮像及び他の処理中に様々な構造の完全性が維持されることを可能にする。具体的には、クライオEMは、試料分解が起こり得る前に生物学的試料の詳細な撮像及び分析を可能にする。例えば、クライオ条件下で動作させることにより、FIB/SEMデュアルビームシステムなどの荷電粒子顕微鏡の真空環境において生物学的組織(多くの水を含む)の検査を可能にすることができる。概して、水和された試料は、水の脱離が起こりやすいため、真空に適合しない。このような試料を荷電粒子顕微鏡で処理して撮像するためには、水が蒸発するのを防止するために試料を凍結しなければならず、水が蒸発すると、機器の真空システムに有害であり、試料に歪み及び損傷を引き起こす。凍結の代替法は、試料を脱水し、それらをFIB/SEM機器に装填する前にプラスチック樹脂に埋め込むことである。しかしながら、そのような侵襲的プロセスは、微細な生物学的構造をかき乱す可能性があるという懸念がある。クライオ条件下での動作は、試料をより自然な状態に維持し、クライオ条件は、SEM撮像中に試料が劣化しにくくすることがある。残念ながら、このような劣化は、極低温であっても起こることが多く、その結果、撮像が成功しないか、又は品質がより低下する。
【0003】
したがって、極低温顕微鏡法に関する改善された技術が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
開示される技術の一態様によれば、方法は、荷電粒子ビーム顕微鏡の真空チャンバ内に基板を配置することであって、基板が、極低温に保持される、配置することと、るつぼ内に貯蔵される凝縮前駆体を極低温で基板上に堆積させることであって、堆積された凝縮前駆体が、基板上に堆積層を形成する、堆積させることと、を含む。いくつかの例では、堆積させることが、遷移金属を含む化合物を堆積させることを含む。いくつかの例では、堆積させることが、オスミウム又はハフニウム金属中心を含む化合物を堆積させることを含む。いくつかの例では、堆積させることが、ビス-シクロペンタジエニルオスミウムを含む化合物を堆積させることを含む。いくつかの例では、堆積させることが、シクロペンタジエニルジメチルハフニウムを含む化合物を堆積させることを含む。いくつかの例では、基板を配置することが、ガラス化試料を含む基板を配置することを含み、ガラス化試料が、ウォータアイスを含む。いくつかの例では、凝縮前駆体を堆積させることが、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)よりも低い蒸気圧を有する凝縮前駆体を堆積させることを含む。いくつかの例では、凝縮前駆体を堆積させることが、るつぼ内に貯蔵されたバルク材料から凝縮前駆体を堆積させることを含み、バルク材料が、凝縮前駆体の蒸気圧よりも高いそれぞれの蒸気圧を有する1つ以上の汚染揮発性化学物質を含む。いくつかの例は、凝縮前駆体を堆積させる前に、るつぼ内に貯蔵されたバルク材料に真空を適用することを更に含み、真空源が、真空チャンバのものとは異なり、るつぼ内の気相に位置する揮発性汚染性化学物質のうちの1つ以上を除去して、堆積層内に存在する揮発性汚染性化学物質の量を低減させる。いくつかの例では、凝縮前駆体を堆積させる前に、選択された持続時間又は開放持続時間にわたって真空が適用される。いくつかの例では、凝縮前駆体を堆積させることが、凝縮前駆体が真空チャンバ内の極低温に対して上昇した温度で貯蔵された状態で、凝縮前駆体が気相でるつぼからチャンバに流れ、極低温に応答して、基板上で凝縮することを可能にするように弁を開くことを含む。いくつかの例では、堆積させることが、50~70℃の範囲の温度に保持された凝縮前駆体のるつぼから-150~-180℃の範囲の極低温で基板上に凝縮前駆体を堆積させることを含む。いくつかの例では、極低温で凝縮前駆体を堆積させてキャップ層を形成することが、導電性キャップ層を形成することを含む。いくつかの例では、凝縮前駆体を堆積させることが、形成される堆積層の制御可能な厚さに関連する制御された持続時間にわたって凝縮前駆体を真空チャンバ内に放出することを含む。いくつかの例では、形成される堆積層の厚さに関連する持続時間にわたって凝縮前駆体を真空チャンバ内に放出することが、約2~20nm/秒の凝縮厚さ成長速度で凝縮前駆体を放出することを含む。いくつかの例は、堆積層の形成中に荷電粒子ビームが凝縮前駆体を部分的に分解するように、凝縮前駆体の堆積中に電子ビーム又はイオンビームを基板に方向付けることを更に含む。いくつかの例は、形成された堆積層にイオンビームを方向付けて、堆積層及び基板の一部をミリングし、分析のために切断面を露出させることを更に含む。いくつかの例は、堆積中に形成される堆積層の厚さを制御し、ミリングのエッチング速度を制御することによって、ミリングに関連するカーテニングアーチファクトを低減することを更に含む。いくつかの例では、荷電粒子ビーム顕微鏡は、電子ビームカラム及びイオンビームカラムを備える。
【0005】
開示される技術の別の態様によれば、装置であって、基板を支持するように構成された真空チャンバと、真空チャンバに結合された凝縮前駆体システムと、を備え、凝縮前駆体システムが、バルク前駆体凝縮材料を貯蔵リザーバ内に貯蔵するように構成された貯蔵るつぼであって、バルク前駆体凝縮材料は、凝縮前駆体及び1つ以上の揮発性汚染物質を含む、貯蔵るつぼと、貯蔵リザーバに結合され、かつ凝縮前駆体の気相を真空チャンバ内に放出して、基板上に凝縮させるように構成された真空チャンバ出口弁と、少なくとも1つの真空ポンプと、真空ポンプに結合された真空弁と、真空弁を介して貯蔵リザーバを真空ポンプに結合するフィードスルーと、を含み、真空ポンプが、貯蔵リザーバを真空引きして、貯蔵リザーバ内の1つ以上の揮発性汚染物質の蒸気圧の蓄積を低減し、それによって、基板上への凝縮前駆体の凝縮中の基板上への1つ以上の汚染物質の堆積を低減するように構成されている。装置はまた、上及び下で説明される方法を実行するように構成された任意の装置を含むことができる。
【0006】
開示される技術の別の態様によれば、導電性試料キャップ層が、凝縮前駆体を含み、凝縮前駆体が、遷移金属中心を含み、前駆体の気相が、白金中心を有する対応する前駆体の気相の蒸気圧よりも低い蒸気圧を有する。例示的なキャップ層は、本明細書で説明される装置及び/又は方法を用いて形成され得る。
【0007】
開示される技術の別の態様によれば、前駆体が、ハフニウム又はオスミウムを含む遷移金属中心を含む。
【0008】
開示される技術の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図3】るつぼ貯蔵容器をパージするため及び/又は保護キャップ層を形成するために使用され得る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
キャップ層は、集束イオンビームによるミリングの前に試料上に形成することもできる。それらの機能は、試料の最上面をイオンビーム損傷から保護し、FIBによるよりきれいな断面切断を可能にすることであり得る。室温用途では、保護キャップは、タングステンヘキサカルボニル又はトリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)などのガス化学物質のイオンビーム誘起分解によって堆積される。しかしながら、以下で更に考察されるように、極低温では、これらのガス前駆体は、イオンビーム誘起分解を必要とせずに、試料の表面上で無差別に凝縮することが分かっている。このような凝縮物膜は、ビーム堆積膜とは非常に異なる特性を有し、カーテニングアーチファクトなどの様々な問題の影響を受けやすく、クライオEM試料調製プロセスにおいて回避される傾向がある。
【0011】
そのような問題を低減又は排除するための1つの技法が、本明細書で開示される。開示された技術の例は、極低温条件で使用され得る前駆体凝縮物、汚染物質を除去しながら極低温下で保護キャップ層を形成するための装置及び方法、並びに化学物質容器を差動的に排気するための装置及び方法を含む。いくつかの例では、ビス-シクロペンタジエニルオスミウム(例えば、「osmacene」としても知られている、CAS番号1273-81-0)及びシクロペンタジエニルジメチルハフニウム(例えば、ジメチルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)、CAS番号:37260-88-1)を前駆体として使用して、凝縮物層保護キャップを提供する。そのような前駆体は、クライオEMシステムのガス注入システム(gas injection system、GIS)における前駆体として、標準的なPt前駆体トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金を置換することができ、既存の極低温試料調製ワークフロー、例えば生命科学用途において使用することができる。
【0012】
FIB/SEMガス注入システム(GIS)で使用される標準的なPt前駆体は、毒性が高いとして評価されている。例えば、排気システムを通過した後の分解副生成物に関する安全上の懸念があり、これには、インシチュでの蓄積、並びにチャンバ内及び極低温条件下の試料ホルダ上での凝縮された前駆体への曝露が含まれる。オスミウム又はハフニウムを含有するいくつかの前駆体は両方とも、白金よりも低い毒性、白金よりも低い蒸気圧(改善された層制御及びより長い寿命を提供することができる)、及びプラズマ集束イオンビーム(plasma focused ion beam、PFIB)との同時曝露による改善された極低温堆積特性の能力を含む有望な利点を呈する。実験では、得られた層は、滑らかで、かつ再現性がある。更に、切断面の品質は、ラメラ調製における更なる使用のための好適性と一致する特性を呈する。
【0013】
更に開示された例では、前駆体のストック材料中の高蒸気圧汚染物質源が問題となる可能性があり、これらの前駆体の長期安定性及び性能に影響を与えることが分かっている。そのような汚染物質は、非常に長い期間のガス放出を伴って放出され得るが、これは、前駆体の性質、化学物質の初期純度、及び排気システムの伝導経路に応じて、数分から数百時間のいずれかを要し得る。非常に時間がかかることに加えて、パージプロセスは、機器を有害なレベルの化学物質にさらす可能性がある。多くのFIB/SEM化学送達システムでは、前駆体物質を含有する器(「るつぼ」)は、試料上の対象領域に前駆体を輸送する小径管に接続される。オン/オフ弁は、機器への前駆体の導入を可能にすることができ、蒸気圧は、るつぼの温度を設定することによって制御され得る。多くの例では、前駆体(及び任意の不純物)のためのるつぼからの唯一の出口経路は、最終オン/オフ弁を通って真空チャンバに入る。したがって、そのような例では、るつぼ内の不純物を除去することを意図した任意のパージプロセスは、機器の真空チャンバ内に化学物質を流すことを必要とする。極低温では、このようなパージプロセスは、パージサイクル全体の間に機器の1つ以上の冷たい表面上に化学物質の連続的な凝縮をもたらす可能性がある。これは、敏感な構成要素の寿命に重大な問題を提示する可能性があり、冷たい構成要素が再び温められ、凝縮した材料が蒸発して真空チャンバ内に放出されるときに危害を提示する可能性がある。
【0014】
いくつかの開示された例では、差動排気されるるつぼは、使用されていない間に能動的に排気され得る。差動排気されるるつぼは、二次真空接続が存在するものとして定義される。上で説明されるように、また関連する例解図とともに以下で更に考察されるように、るつぼの真空への主な接続は、前駆体を試料に送達する目的のために、主オン/オフ弁を通してチャンバ内へのものである。第2の真空接続部は、通常、るつぼを真空ポンプに接続する管の一部である。この真空ポンプは、専用の機械的粗引きポンプとすることができるか、又は機器の真空チャンバのターボポンプを支援する粗引きポンプに対応することができる。後者の場合、差動排気ラインの出口が、ターボポンプの下流で排気マニホールドに接合することが重要であり得る。いくつかの例では、粗引きポンプを用いて(例えば、パージ弁を開き、ガス流オン/オフ弁を閉じることによって)るつぼに対して連続パージを実行し、高真空ポンプを用いてチャンバを高真空に排気した後に、パージ弁を閉じて、るつぼを粗引き圧力に排気することができ、次いで、ガス流オン/オフ弁を開いて、気相をチャンバに流入させることができる。るつぼからチャンバに流れる前駆体の量は、粗引きポンプとチャンバ真空との間の圧力差ではなく、るつぼの温度に基づくことができる。例えば、粗引きポンプへの弁が閉じられると、るつぼ内の圧力は、るつぼの温度によって判定される前駆体の固有蒸気圧まで上昇する。差動排気により、純粋で安定した前駆体の流れが、機器チャンバ内に直接パージする必要なく達成され得る。いくつかの例では、一貫した性能で、オンデマンドで使用する準備ができるように、るつぼを連続的にパージすることが望ましいことがある。
【0015】
図1は、試料102を極低温で処理するように構成された例示的な荷電粒子ビームシステム100である。試料102は、真空チャンバ108の内部容積106内の移動ステージ104などの支持構造上に配置することができる。真空ポンプ110を真空チャンバ108に結合して、容積106の内部圧力を低減させることができる。例示的な内部圧力は、約1×10
-3torr未満、例えば、1×10
-4torr、1×10
-5torr、1×10
-6torr未満であり得る。多くの例では、前駆体物質を流さないときに、チャンバ圧力は、通常、5×10
-7~5×10
-6mbarの範囲にある。前駆体物質を流すときに、チャンバ圧力は、5×10
-6mbar~2×10
-5mbarまで増加することができる。冷却ユニット112はまた、チャンバ108内の試料102の温度を極低温(例えば、0K~約120K)に低減及び維持するために、真空チャンバ108に結合させることもできる。代表的な例では、冷却ユニット112は、チャンバ108内への極低温フィードスルー111を介して、冷却サブステージ113に直接結合される(例えば、移動ステージ104の一部として、又は移動ステージ104に結合される)。ステージ104のみを冷却することは、試料102の制御された冷却を提供することができる。電子ビームカラム114は、電子ビームを試料102に方向付けて画像を生成するように配置することができる。集束イオンビームカラム116は、例えば、試料102をミリング又は切断するために、又はいくつかの例では、凝縮キャップ層(以下で更に考察される)を高密度化するために、試料102を処理するようにイオンビームを方向付けるように配置することができる。例解を簡素化し、かつ明確にするために、撮像検出器、レンズ、走査素子など、存在し得る他の構成要素は示されていない。
【0016】
システム100は、真空チャンバ108内に位置し、かつバルク凝縮前駆体の化学的供給物を貯蔵するように構成された凝縮物るつぼ118(断面で示される)を更に含む。いくつかの例では、るつぼ118は、真空チャンバ108の外側に位置付けることができる(例えば、真空チャンバ108の外部に取り付けられる)か、又は真空チャンバ108の壁構造に形成することができることが理解されよう。るつぼ118は、典型的には60℃~70℃の範囲の固定温度に保持することができ、貯蔵温度では、凝縮前駆体は、固体状態の部分120と蒸気状態の部分122と、を含む。多くの例では、るつぼ又は貯蔵された前駆体物質の温度は、ユーザによって設定することができ、変更することができる。システム100は、温度を監視し、温度を設定点に維持するために必要に応じて、例えば加熱要素に調整を提供するように構成され得る。いくつかの例では、温度制御は、前駆体物質の流路の長さに沿って異なる温度ゾーンを含むことができる。選択された時間に、凝縮物堆積コントローラ124(他の荷電粒子ビームシステム機能を制御するシステム100のより大きい制御システムの一部、又はそれとは別個とすることができる)は、るつぼ弁126を開かせ、凝縮前駆体蒸気122が凝縮前駆体蒸気128として容積106内に流入することを可能にするように、凝縮物弁制御125を用いて構成され得る。蒸気128の一部は、試料102の表面130上で凝縮して、薄いキャップ層132、例えば堆積層を形成する。
【0017】
いくつかの例では、キャップ層132は導電性であり、電荷を消散させ、それによって電荷誘導撮像アーチファクトを低減する。このようなアーチファクトは、極低温での撮像にとって特に問題となり得る。様々な前駆体が凝縮することができるが、前駆体分子が金属原子を含有しない場合、膜は導電性ではなくなり、局所的な電荷蓄積に起因して撮像アーチファクトが生成される可能性がある。実際、多くの有機金属前駆体でさえ、前駆体分子中に金属原子が存在するにもかかわらず、電気絶縁体である膜に凝縮する。これは、前駆体分子を分解し、所望の電気的特性を達成するのに十分に膜中の金属原子を濃縮するためにエネルギー(通常、イオン又は電子ビームから)を必要とするためである。それにもかかわらず、有機金属前駆体は、金属中心を有さない前駆体よりも有望であると考えられており、したがって、極低温で使用するための本明細書に開示される例示的な凝縮前駆体は、一般に有機金属化合物を含む。
【0018】
代表的な例では、試料102は、ウォータアイスを含むガラス化試料であり得る。多くの試料は、本質的に生物学的であり得る。キャップ層132は、高解像度撮像のために試料102を準備するための改善されたミリング及び/又はエッチングのために、表面130上に保護層を提供することができる。例えば、切断、例えばミリングの前のキャップ層132の存在は、表面130の下の試料102の内部内容物を示すよりきれいな断面切断面を提供することができ、いくつかのカーテニングアーチファクト、すなわち、画像を破壊又は劣化させる切断面上の垂直縞を除去することができる。
【0019】
キャップ層を形成するために使用される縮合物前駆体には、様々な化合物を使用することができる。本明細書のいくつかの例では、縮合物前駆体は、タングステンヘキサカルボニル化合物又は白金化合物を含み得るか、又はそれらであり得る。本明細書のいくつかの好ましい例では、特に極低温装置及び処理技術に適した、凝縮前駆体は、ハフニウム又はオスミウムである金属中心を有することができる化合物を含み得る。いくつかの例では、この化合物は、金属中心としてハフニウム又はオスミウムを有する以外は、通常の白金化合物と同一であり得る。更なる例では、タングステン、白金、ハフニウム、又はオスミウムとは異なる金属中心、例えばMo、Fe、Co、Cu、Mn、Ni、Cr、又はAlを有する化合物を凝縮前駆体として使用することができるが、周期表からの別の金属も同様に選択することができる。選択された例では、凝縮前駆体化合物は、ビス-シクロペンタジエニルオスミウムであり得るか、又はそれを含むことができる。更なる例では、凝縮前駆体化合物は、シクロペンタジエニルジメチルハフニウムであり得るか、又はそれを含むことができる。
【0020】
極低温の例では、ハフニウム又はオスミウムベースの凝縮前駆体が、様々な点で有利であることが分かっている。例えば、ビス-シクロペンタジエニルオスミウム及びシクロペンタジエニルジメチルハフニウムなどのハフニウム及びオスミウム前駆体化合物の蒸気圧は、同様の温度及び圧力条件にわたって白金ベースの前駆体化合物よりも低い。より低い蒸気圧は、前駆体が極低温環境中に放出される際の前駆体の凝縮に対するより良好な制御を可能にする。対照的に、それらのより高い蒸気圧により、白金ベースの前駆体は、急速に凝縮し、試料表面上で積極的に成長する傾向があり、表面130上に形成するキャップ層132の厚さを制御することを困難にする。更に、白金前駆体及び他の前駆体は、ハフニウム及びオスミウムベースの前駆体よりも高い関連する毒性を有することができる。
【0021】
より低い蒸気圧の前駆体に関連する更なる利点は、るつぼ118内の汚染物質の蓄積に関する。システム100のいくつかの例では、るつぼ118は、ポンプ110と同じ又は異なり得る真空ポンプ134に結合することができる。代表的な例では、ポンプ134は、チャンバ106の外部に位置し、フィードスルー136を介してチャンバ106内及びるつぼ118に真空結合され得る。いくつかの例では、パージ弁138は、フィードスルー136を介して印加される真空を選択的に制御するように位置し得る。コントローラ124又は別個のコントローラは、ポンプ134及び/又はパージ弁138を制御して、るつぼ118の内部容積に真空を選択的に適用して、真空チャンバ106及び外部の環境に対して内部容積を差動排気するパージ弁制御140を備えて構成され得る。凝縮前駆体蒸気128がチャンバ108の容積106内に放出される前に、例えばキャップ層132を形成するための堆積の前に、真空を適用することができる。真空を適用して、るつぼ118内に貯蔵された蒸気内容物のかなりの部分を除去することができる。いくつかの例では、堆積に先立って、一定に、又は延長された持続時間にわたって真空を適用することができる。更なる例では、堆積に先立って、より短い持続時間にわたって真空を適用することができる。更なる例では、周期的に真空を適用することができる。
【0022】
具体的には、真空の適用は、蒸気状態122の凝縮前駆体を除去することができ、同時に、蒸気状態122と混合され得る望ましくない汚染物質も除去することができる。望ましくない汚染物質は、凝縮前駆体の固体状態120と混合されることによって、又は副生成物として、少量で存在し得る。汚染物質は、典型的には、凝縮前駆体よりも高い蒸気圧を有し、固体状態(固体状態120と混合された)から、蒸気状態122によって充填されたるつぼ118のガス容積内にガス放出することができる。数時間から数日などの時間とともに、汚染物質の分圧がるつぼ118内で増加する。したがって、るつぼ弁126が容積106への流れを可能にするために開かれるときに、大量の汚染物質も放出され、それによって、キャップ層132の内容物のかなりの部分を望ましくなく形成する可能性がある。経時的な汚染物質濃度の増加は、例えば、不純物及び/又は化学的不安定性による、ガス放出及び/又は揮発性副生成物への分解に関し得る。汚染物質の放出は、極低温条件下では非極低温条件下よりも問題となり得る。例えば、汚染物質は、試料102が存在しないか又は邪魔にならない位置に移動された場合であっても、汚染物質が任意の低温チャンバ表面上に凝縮する可能性があるため、問題となる可能性がある。ポンプ134を用いて、るつぼ118に真空を適用することによって、弁126を開く前に汚染物質を除去することができる。ポンプ134を介して、るつぼ118に適用される圧力は、多くの例では、粗真空圧、例えば、約1×10-3torr以上、1×10-2torr以上、1×10-1torrなどとすることができる。
【0023】
多くの例では、差動排気は、汚染物質の存在の考慮を必要とすることなく、試料102の処理を日常的に可能にすることができ、なぜなら、汚染物質は、継続的に、又は蒸気状態122の放出の前に自動的に実行され得る連続処理ステップを用いて、除去されるためである。例えば、るつぼ118に連続的に真空引きを行っても、貯蔵された前駆体の寿命が使用不能又は非実用的な持続時間未満に低減されないようにるつぼ118に十分な化学的前駆体を貯蔵することができる。固体120の蒸気状態122のより低い蒸気圧は、蒸気状態122が、より遅い速度で固体状態120の昇華を通して形成され得、固体状態120の容積が、るつぼ118内に貯蔵される前駆体バルクの寿命を延ばすためによりゆっくりと減少することを可能にし、より高い蒸気圧の汚染物質が、差動排気を通して迅速に引き離されることを可能にするため、有利であり得る。より低い蒸気圧特性を有する凝縮前駆体を選択することによって、キャップ層132に対する制御を更に強化することができる。厚さ及び/又は成長速度を含むキャップ層132の形成に対する制御は、切断又はミリングなどの様々なプロセス下でのキャップ層132のエッチング速度を、氷などの試料102の下にある材料に適合させることができるように、更に有利であり得る。このような適合は、試料102の切断面に関連する問題、例えば、カーテニングを低減することができる。いくつかの例では、制御された成長速度は、0.1nm/秒、1nm/秒、2nm/秒、10nm/秒、20nm/秒、100nm/秒などを含むことができる。いくつかの例では、2~10nm/秒は、便宜的な成長速度である。
【0024】
いくつかの例では、コントローラ124は、高密度化ビーム設定142を用いて、高密度化ビームの送達を制御するように構成され得る。コントローラ124は、例えば、電子ビームカラム114及び/又はFIBカラム116を制御するためのコントローラ又は処理ユニットに対応することができる。FIB又は電子ビームは、前駆体が凝縮している間に関心領域を照射するように構成することができる高密度化ビームに対応することができる。FIB又は電子ビームのエネルギーは、膜を部分的に分解することができ、非高密度化膜と比較して、わずかに好ましい特性を有する「高密度化」凝縮物をもたらす。これらの特性には、膜内のボイド、包含物、又は気泡が少ないこと、後続のFIBミリングステップ中のイオンビームに対する耐性が良好であること(一部の膜は非常に繊細で短寿命であり、わずかなビーム露光で完全に消失する)、及び/又はFIBミリングに応答して凝縮物が「流れる」又は動き回る傾向が少ないことが含まれ得る。フィルムがこの「リフロー」傾向を呈する場合、可動キャップが所望の位置で十分に画定された縁部の形成を可能にしないため、所望の位置できれいな断面切断を得ることが困難であり得る。いくつかの例では、凝縮物を「高密度化」するためにFIBが使用されるか電子ビームが使用されるかは、堆積プロセス中にオペレータによって決定され得る。本明細書において、「高密度化(densification)」及び「高密度化する(densify)」という用語は、ビームがターゲット材料の密度の変化を生成することを必ずしも意味しないが、密度の変化は可能である。概して、そのような用語は、イオン又は電子ビームのエネルギーの存在によって少なくとも部分的に引き起こされるターゲット材料の変化を指す。例えば、高密度化ビームは、凝縮する前駆体を部分的に分解することができ、それによって、キャップ層132に改善された機械的特性及び/又は電気的特性を提供する。例えば、キャップ層132の一部がリフローして試料102の切断面を覆い隠すことが少なくなるように、キャップ層132のミリング後リフロー率を改善することができる。いくつかの例では、高密度化ビームは、FIBカラム116によって提供されるイオンビームとすることができる。例示的なイオン種は、ガリウム、キセノン、アルゴン、窒素、酸素などを含むことができる。更なる例では、高密度化ビームは、電子ビームカラム114によって提供することができる。いくつかの例では、高密度化ビームは、試料102の表面130にわたって走査することができる。更なる例では、高密度化ビームは、表面130の面積の全体又は実質的な部分にわたって延在する面積を有することができる。ここで、高密度化ビームプロセスは、室温で実行される別個の既知の技術であるイオンビーム誘起堆積と同じではない。既存の室温ビーム誘起堆積技法はまた、荷電粒子ビームからのエネルギーに応答したガス前駆体の分解を伴うが、そのような室温プロセスと、ビーム高密度化を伴う極低温での凝縮膜の堆積を伴う本明細書で開示される技術による例との間の1つの区別は、ビーム誘起堆積成分が温度誘起凝縮成分と同時に起こっていることである。
【0025】
図2は、汚染物質を真空チャンバ204に流入させる必要なく、化学物質貯蔵容器202から不要な汚染物質蒸気を除去するために使用され得る例示的な差動真空排気システム200である。例えば、固相207を含むことができる前駆体206は、容器202内に貯蔵することができ、差動排気は、汚染物質が低減された状態で前駆体206を真空チャンバ204内に流すことを可能にすることができる。システム200は、粗引き真空ポンプ208と、容器202に適用される差動排気を制御するために少なくともポンプ208に結合されたポンプコントローラ210と、を含むことができる。高真空ポンプ212は、真空チャンバ204に対してより高い真空を提供するために、粗引き真空ポンプ208及びポンプコントローラ210に結合され得る。パージ弁214を容器202と粗引きポンプ208との間に配置して、真空チャンバ204に対する容器202の圧力の差動排気を可能にすることができる。いくつかの例では、前駆体206は、例えば試料216上で凝縮されるように、要求に応じて真空チャンバ204内に流すことができる。いくつかの例では、パージは、バックグラウンドで(ポンプ208への接続を介して)自動的に行うことができ、例えば、システムが動作可能な間、又はコンテナ202が前駆体物質を収容している間、又はチャンバ204への凝縮物206の流れを開始するコマンドに応答して行うことができる。
【0026】
図3は、凝縮物層を形成する様々な方法300を示す。302において、真空チャンバ内に位置し、かつ凝縮前駆体を貯蔵するるつぼのガス容積は、真空チャンバの圧力条件に関連してるつぼを差動排気するように構成されたポンプを使用してパージされ得る。いくつかの例では、真空チャンバ内のステージは、極低温に維持されるように構成され得る。るつぼを差動排気して内部のガス容積をパージすることによって、蓄積した汚染物質をるつぼの貯蔵容積から除去して、その後にるつぼに貯蔵又はるつぼから放出される凝縮ガスの汚染物質レベルを減少させることができる。304において、凝縮ガス及び汚染物質をるつぼガス容積から除去するパージ弁を閉じることができる。常時オンパージ、周期的パージ、放出前パージなどを含む様々なタイミングが、差動排気のために使用され得る。306において、凝縮前駆体蒸気がチャンバ内に流入することを可能にするチャンバ放出弁が開かれ得、例えば、試料表面上に導電性保護堆積層を形成する。いくつかの例では、形成されたキャップ層を高密度化するために、高密度化ビームを308で、前駆体が凝縮している又は凝縮した試料表面に方向付けることができる。310において、試料の断面を露出させるために、イオンビームミリングなどの様々な更なる試料処理ステップを実行することができる。
【0027】
一般的な考慮事項
本出願及び特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数形を含む。追加的に、「含む(includes)」という用語は、「備える(comprises)」を意味する。更に、「結合された(coupled)」という用語は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を除外しない。
【0028】
本明細書で説明されるシステム、装置、及び方法は、決して限定するものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、様々な開示される実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴並びに態様を、単独で、並びに互いとの様々な組み合わせ及び部分的組み合わせで対象とする。開示されるシステム、方法、及び装置は、任意の特定の態様若しくは特徴又はそれらの組み合わせに限定されず、開示されるシステム、方法、及び装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すること、又は問題が解決されることを必要としない。動作の任意の理論は、説明を容易にするためのものであるが、開示されるシステム、方法、及び装置は、このような動作の理論に限定されない。
【0029】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便宜的な提示のために特定の連続的な順序で説明されるが、この説明の様式は、特定の順序付けが以下に記載される特定の文言によって必要とされない限り、並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、連続して説明される動作は、場合によっては、並べ替えられ得るか、又は同時に行われ得る。更に、簡略化のために、添付の図面は、開示されるシステム、方法、及び装置が、他のシステム、方法、及び装置とともに使用され得る様々な方法を示していない場合がある。更に、簡略化のために、添付の図面は、開示されるシステム、方法、及び装置が、他のシステム、方法、及び装置とともに使用され得る様々な方法を示していない場合がある。追加的に、説明は、開示される方法を説明するために「生成する、発生させる(produce)」及び「提供する(provide)」のような用語を使用することがある。これらの用語は、行われる実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装態様に応じて変化し、当業者によって容易に認識可能である。
【0030】
いくつかの例では、値、手順、又は装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと称される。かかる説明は、多くの使用される機能的代替物の中から選択を行うことができることを示すことを意図しており、かかる選択は、他の選択よりも良い、小さい、又はそうでなければ好ましい必要はないことが理解されるであろう。
【0031】
開示された技術及びプロセスの一部は、デジタルコンピュータなどの1つ以上のコントローラによって実行されるソフトウェア又はファームウェア命令として具現化され得る。例えば、開示された堆積又はビーム処理技術のいずれかに対する制御は、荷電粒子顕微鏡システムの一部であるコンピュータ又は他のコンピューティングハードウェア(例えば、ASIC又はFPGA)によって実行することができる。荷電粒子顕微鏡システムは、様々な真空構成要素及び/又はビーム送達構成要素に接続されるか、又は他の方法で通信し、汚染物質をパージし、及び/又は凝縮物膜及びキャップ層を堆積させるように、オペレータによってプログラムされるか、又は手動で構成され得る。コンピュータは、1つ以上のプロセッサ(処理デバイス)及び有形の非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、1つ以上の光媒体ディスク、揮発性メモリデバイス(DRAM若しくはSRAMなど)、又は不揮発性メモリ若しくは記憶デバイス(ハードドライブ、NVRAM、及びソリッドステートドライブ(例えば、フラッシュドライブ)など)を備えるコンピュータシステムであり得る。1つ以上のプロセッサは、有形の非一時的コンピュータ可読媒体のうちの1つ以上に記憶されたコンピュータ実行可能な命令を実行し得るが、それによって、開示される技術のいずれかを実行する。例えば、開示された実施形態のいずれかを実施するためのソフトウェアは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに開示された技術のいずれかを実行させるコンピュータ実行可能命令として、1つ以上の揮発性の非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶され得る。堆積、パージ、又は他の説明されるプロセスの結果、並びに任意の取得された顕微鏡画像は、1つ以上の有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得、及び/又は例えば、ディスプレイデバイス上に表示することによって、ユーザに出力され得る。
【0032】
開示される技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例解された実施形態は、代表的な実施例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを、認識されたい。これらのセクションで具体的に扱われる代替形態は、単に例示的なものであり、本明細書で説明される実施形態に対する全ての可能な代替形態を構成するものではない。例えば、本明細書で説明されるシステムの様々なコンポーネントは、機能及び使用において組み合わされ得る。したがって、我々は、添付の特許請求の範囲の範囲に入る全てを請求する。
【外国語明細書】