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  • 特開-GPR120作動用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009616
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】GPR120作動用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20240116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240116BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20240116BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P43/00 105
A23L33/135
A23K10/16
C12N1/20 E
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111280
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河野 通生
(72)【発明者】
【氏名】冠木 敏秀
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB03
2B150AC05
2B150AC06
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD85
4B018MD86
4B018ME14
4B065AA01X
4B065AA30X
4B065BB15
4B065BB23
4B065BC03
4B065BD09
4B065BD12
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087BC56
4C087CA09
4C087CA10
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZC01
4C087ZC61
(57)【要約】
【課題】天然由来の新規なGPR120作動用組成物を提供する。
【解決手段】GPR120作動用組成物は、ラクチカゼイバチルス属、ラクチプランチバチルス属、ラクトバチルス属、ラチラクトバチルス属、レンチラクトバチルス属、レビラクトバチルス属、リジラクトバチルス属、リモシラクトバチルス属、ロイゴラクトバチルス属、及びシュレイフェリラクトバチルス属のうちいずれか一つの属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチカゼイバチルス属、ラクチプランチバチルス属、ラクトバチルス属、ラチラクトバチルス属、レンチラクトバチルス属、レビラクトバチルス属、リジラクトバチルス属、リモシラクトバチルス属、ロイゴラクトバチルス属、及びシュレイフェリラクトバチルス属のうちいずれか一つの属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とするGPR120作動用組成物。
【請求項2】
前記リモシラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする請求項1に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項3】
前記リモシラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リモシラクトバチルス ファーメンタム、又はリモシラクトバチルス ロイテリである請求項2に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項4】
前記ラチラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする請求項1に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項5】
前記ラチラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、ラチラクトバチルス サケイである請求項4に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項6】
前記リジラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする請求項1に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項7】
前記リジラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リジラクトバチルス サリバリウスである請求項6に記載のGPR120作動用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のGPR120作動用組成物を含むことを特徴とするGPR120作動用飼料組成物、GPR120作動用医薬組成物、又はGPR120作動用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌、又はその培養物を有効成分とするGPR120作動用組成物に関する。また、そのGPR120作動用組成物を含むGPR120作動用飼料組成物、GPR120作動用医薬組成物、又はGPR120作動用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役受容体の一つであるGPR120は、腸、マクロファージ、脂肪組織、味蕾、脳、膵臓、肺、胸腺等、様々な組織や細胞に発現していることが知られている。GPR120は、インクレチンホルモンの分泌、抗炎症、嗜好性、グルコース代謝恒常性、インスリン感受性、脂質生成に影響して、生体におけるエネルギー代謝を制御する重要な因子である(非特許文献1)。GPR120の受動体作動薬(以下、アゴニストともいう。)としては、GW9508のような合成アゴニストが報告されている(非特許文献2)。乳酸菌、及びビフィズス菌は、古来より発酵食品の製造に使用される細菌であるが、近年の研究で様々な健康機能の増進に寄与することが明らかとなりつつある。また、天然由来の成分であるため、安全性が高いことも知られている。乳酸菌やビフィズス菌によるGタンパク質共役受容体活性化作用についても報告されている。例えば非特許文献1には、乳酸菌を含む微生物を摂取させることにより、腸内における酪酸産生を亢進させ酪酸受容体であるGタンパク質共役受容体を活性化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ichimura A.Regulation of Energy Homeostasis via GPR120.Front Endocrinol.2014 July;111(5):1-5.
【非特許文献2】So-Eun S.Development of Free Fatty Acid Receptor 4 (FFA4/GPR120) Agonists in Health Science.Biomol Ther.2021 January;29(1):22-30.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1において検討されているGタンパク質受容体はGPR41であり、GPR120のアゴニスト活性については検討されていない。GPR120アゴニストとして、天然由来の新規なGPR120作動用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのGPR120作動用組成物は、ラクチカゼイバチルス属、ラクチプランチバチルス属、ラクトバチルス属、ラチラクトバチルス属、レンチラクトバチルス属、レビラクトバチルス属、リジラクトバチルス属、リモシラクトバチルス属、ロイゴラクトバチルス属、及びシュレイフェリラクトバチルス属のうちいずれか一つの属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。
【0006】
上記GPR120作動用組成物において、前記リモシラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。
上記GPR120作動用組成物において、前記リモシラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リモシラクトバチルス ファーメンタム、又はリモシラクトバチルス ロイテリであることが好ましい。
【0007】
上記GPR120作動用組成物において、前記ラチラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。
上記GPR120作動用組成物において、前記ラチラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、ラチラクトバチルス サケイであることが好ましい。
【0008】
上記GPR120作動用組成物において、前記リジラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。
上記GPR120作動用組成物において、前記リジラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リジラクトバチルス サリバリウスであることが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するためのGPR120作動用飼料組成物、GPR120作動用医薬組成物、又はGPR120作動用食品組成物は、上記GPR120作動用組成物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然由来の新規なGPR120作動用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は各実施例、及び比較例のRLU値を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るGPR120作動用組成物を具体化した実施形態について説明する。GPR120作動用組成物は、以下の属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。
【0013】
<菌体の属>
GPR120作動用組成物は、ラクチカゼイバチルス属(Lacticaseibacillus)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラチラクトバチルス(Latilactobacillus)属、レンチラクトバチルス(Lentilactobacillus)属、レビラクトバチルス(Levilactobacillus)属、リジラクトバチルス(Ligilactobacillus)属、リモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)属、ロイゴラクトバチルス(Loigolactobacillus)属、及びシュレイフェリラクトバチルス(Schleiferilactobacillus)属のうちいずれか一つの属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。
【0014】
なお、上記属は全て、2020年に提唱された再分類以前はラクトバチルス属に分類されていたものである。以下では、上記属の英語表記は省略する。
GPR120作動用組成物は、上記属のうちいずれか一つの属の菌体、又はその菌体の培養物を単独で有効成分とするものであってもよい。また、上記属のうち二つ以上の属の菌体、又はそれらの菌体の培養物を有効成分とするものであってもよい。
【0015】
なお、本実施形態において、「組成物」には、製剤、飲食品ならびに飼料等の動物(ヒトを含む)が摂取し得る物が含まれるものとする。
上記属に含まれる菌種としては、以下のものが挙げられる。
【0016】
<菌種>
ラクチカゼイバチルス属の菌種としては、例えばラクチカゼイバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ トレランス(Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans)、ラクチカゼイバチルス ラムノーサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)等が挙げられる。
【0017】
ラクチプランチバチルス属の菌種としては、例えばラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)が挙げられる。
ラクトバチルス属の菌種としては、例えばラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ジャコブセニー(Lactobacillus delbrueckii subsp. jakobsenii)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス パラガセリ(Lactobacillus paragasseri)等が挙げられる。
【0018】
ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)の菌株としては、例えばSBT11380(NITE-BP-02644)、SBT2171(FERM-BP-5445)等が挙げられる。
【0019】
ラチラクトバチルス属の菌種としては、例えばラチラクトバチルス クルバタス(Latilactobacillus curvatus)、ラチラクトバチルス サケイ(Latilactobacillus sakei)等が挙げられる。
【0020】
ラチラクトバチルス サケイ(Latilactobacillus sakei)の菌株としては、例えばSBT2896(NITE-AP-03674)が挙げられる。
レンチラクトバチルス属の菌種としては、例えばレンチラクトバチルス ケフィリ(Lentilactobacillus kefiri)、レンチラクトバチルス パラブチネリ(Lentilactobacillus parabuchneri)等が挙げられる。
【0021】
レビラクトバチルス属の菌種としては、例えばレビラクトバチルス ブレビス(Levilactobacillus brevis)が挙げられる。
リジラクトバチルス属の菌種としては、例えばリジラクトバチルス アシディピスシス(Ligilactobacillus acidipiscis)、リジラクトバチルス サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)等が挙げられる。
【0022】
リジラクトバチルス サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)の菌株としては、例えばSBT2651(NITE-P-03330)が挙げられる。
【0023】
リモシラクトバチルス属の菌種としては、例えばリモシラクトバチルス ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)、リモシラクトバチルス ムコサエ(Limosilactobacillus mucosae)、リモシラクトバチルス オリス(Limosilactobacillus oris)、リモシラクトバチルス ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)等が挙げられる。
【0024】
リモシラクトバチルス ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)の菌株としては、例えばSBT1846(NITE-P-03279)が挙げられる。
【0025】
リモシラクトバチルス ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)の菌株としては、例えばSBT10010(NITE-BP-02997)、SBT2970(NITE-BP-03282)等が挙げられる。
【0026】
ロイゴラクトバチルス属の菌種としては、例えばロイゴラクトバチルス コリニフォルミス(Loigolactobacillus coryniformis)が挙げられる。
【0027】
シュレイフェリラクトバチルス属の菌種としては、例えばシュレイフェリラクトバチルス ハルビネンシス(Schleiferilactobacillus harbinensis)が挙げられる。なお、以下では、上記菌種の英語表記は省略する。
【0028】
GPR120作動用組成物は、上記菌種のうちいずれか一つの菌種の菌体、又はその菌体の培養物を単独で有効成分とするものであってもよい。また、上記菌種のうち二つ以上の菌種の菌体、又はそれらの菌体の培養物を有効成分とするものであってもよい。
【0029】
GPR120作動用組成物は、リモシラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。また、リモシラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リモシラクトバチルス ファーメンタム、又はリモシラクトバチルス ロイテリであることがより好ましい。また、リモシラクトバチルス ファーメンタムの菌株が、SBT1846株(NITE P-03279)であることがさらに好ましい。
【0030】
また、GPR120作動用組成物は、ラチラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。また、ラチラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、ラチラクトバチルス サケイであることがより好ましい。
【0031】
また、GPR120作動用組成物は、リジラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることが好ましい。また、リジラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リジラクトバチルス サリバリウスであることがより好ましい。
【0032】
上記菌体の培養物は、公知の製剤、飲食品、又は飼料を培地として菌を培養したものを意味するものとする。培養物は、培養した菌体に対して、さらに濃縮、乾燥、凍結乾燥処理等の処理を行ったものであってもよい。培養物は、培養した菌体と培地とを含んだ懸濁物であってもよいし、培養物の上清であってもよい。
【0033】
菌体の培養に用いる培地としては、特に制限されず、例えば合成培地であるMRS培地、GAMブイヨン、M17培地、還元脱脂乳培地等、一般的に乳酸菌の培養に用いられる培地を用いることができる。チーズ、発酵乳、乳製品、乳酸菌飲料等を用いることもできる。
【0034】
<その他成分>
GPR120作動用組成物は、GPR120アゴニスト活性を妨げない範囲で、その他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば賦型剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、着色剤、溶媒、薬剤等が挙げられる。
【0035】
なお、GPR120作動用組成物のGPR120アゴニスト活性の評価方法は特に制限されず、公知の方法で評価することができる。アゴニスト活性の評価方法については後述する。
【0036】
以下、GPR120作動用組成物の適用形態について説明する。
<適用形態>
GPR120作動用組成物の適用形態としては特に制限されず、例えばGPR120作動用飼料組成物(以下、飼料組成物ともいう。)、GPR120作動用医薬組成物(以下、医薬組成物ともいう。)、又はGPR120作動用食品組成物(以下、食品組成物ともいう。)として適用される。医薬組成物は、医薬部外品組成物を含むものとする。
【0037】
GPR120作動用組成物は、上記菌体、又はその菌体の培養物を、そのまま飼料組成物、医薬組成物、又は食品組成物として用いてもよい。または、上記菌体、又はその菌体の培養物を、飼料、製剤、又は飲食品に添加することによって、飼料組成物、医薬組成物、又は食品組成物として用いてもよい。
【0038】
以下、GPR120作動用組成物の剤形について説明する。
<剤形>
GPR120作動用組成物の剤形としては、特に制限されず、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、液剤、懸濁・乳化剤等が挙げられる。
【0039】
以下、GPR120作動用組成物の用途について説明する。
<用途>
GPR120作動用組成物の用途は特に制限されず、飼料に配合して用いてもよいし、飲食品に配合して用いてもよい。飼料や飲食品の製造工程中に原料に添加してもよい。
【0040】
飲食品の具体例としては、特に制限されず、例えばチーズ、発酵乳、乳製品乳酸菌飲料、乳酸菌飲料、バター、マーガリン等の乳製品が挙げられる。また、乳飲料、果汁飲料、清涼飲料等の飲料、ゼリー、キャンディー、プリン、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子・パン類が挙げられる。さらに、各種粉乳の他、乳幼児食品、栄養組成物等を挙げることもできる。
【0041】
上記飲食品の分類は、特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保健機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。
【0042】
GPR120作動用組成物の用途を付す場合、各種法律、施行規則、ガイドライン等によって定められた表示が挙げられる。用途の表示には、例えば包装、容器等のパッケージへの表示の他、パンフレット等の広告媒体への表示も含まれる。
【0043】
GPR120作動用組成物の投与対象は特に制限されず、ヒトに対して投与することができる。投与対象はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ又はウサギ等)でもよい。投与対象がヒトである場合は、例えば20歳未満の未成年、成人、又は65歳以上の高齢者等に投与することができる。
【0044】
<作用及び効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)GPR120作動用組成物は、ラクチカゼイバチルス属、ラクチプランチバチルス属、ラクトバチルス属、ラチラクトバチルス属、レンチラクトバチルス属、レビラクトバチルス属、リジラクトバチルス属、リモシラクトバチルス属、ロイゴラクトバチルス属、及びシュレイフェリラクトバチルス属のうちいずれか一つの属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。
【0045】
上記属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とすることによって、GPR120アゴニスト活性が高い組成物を得ることができる。したがって、天然由来の新規なGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0046】
(2)リモシラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。したがって、GPR120アゴニスト活性がより高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0047】
(3)リモシラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リモシラクトバチルス ファーメンタム、又はリモシラクトバチルス ロイテリである。したがって、GPR120アゴニスト活性がさらに高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0048】
(4)ラチラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。したがって、GPR120アゴニスト活性がより高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0049】
(5)ラチラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、ラチラクトバチルス サケイである。したがって、GPR120アゴニスト活性がさらに高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0050】
(6)リジラクトバチルス属に属する菌体、又はその菌体の培養物を有効成分とする。したがって、GPR120アゴニスト活性がより高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【0051】
(7)リジラクトバチルス属に属する菌体の菌種が、リジラクトバチルス サリバリウスである。したがって、GPR120アゴニスト活性がさらに高いGPR120作動用組成物を提供することができる。
【実施例0052】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。なお、特に説明のない限り、%の表示は容量%を示す。
【0053】
表1、2に示す実施例1~32、及び比較例1の組成物を、常法に従って製造した。実施例1~32では、旧来ラクトバチルス属に分類されていた菌体を用いた。比較例1では、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)を用いた。
【0054】
まず、表1、2に示す各供試菌を、表1、2の通りMRS培地、または1%グルコース含有GAMブイヨン(以下、「GAM+G」ともいう。)のいずれかの培地にそれぞれ植菌した。その後、30℃以上37℃以下の温度条件下、16時間以上24時間以下静置して培養を行った。得られた培養物を、公知の遠心分離機を用いて遠心分離した。遠心分離後の上清を回収し、孔径が0.22μmのフィルターを用いてフィルター減菌した。その後、-80℃の温度にて保存した。
【0055】
なお、表1、2では、旧来ラクトバチルス属に分類されていた菌体の新しい菌属名、菌種名、及び旧分類の菌種名を、それぞれ、「菌属名(新)」欄、「菌種名(新)」欄、「菌種名(旧)」欄に記載する。また、寄託している菌体の菌株、及び受託番号を、「菌株(受託番号)」欄に記載する。また、使用した培地を「培地」欄に記載する。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1、2に記載した各菌株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(日本、千葉県、木更津市)から入手することができる。
【0059】
なお、実施例16、17のラチラクトバチルス サケイは、互いに菌株が異なり、実施例18のラチラクトバチルス サケイとも菌株が異なるものを使用した。同様に、実施例23のリジラクトバチルス サリバリウスは、実施例24のリジラクトバチルス サリバリウスと菌株が異なるものを使用した。実施例29のリモシラクトバチルス ロイテリは、実施例28、30のリモシラクトバチルス ロイテリと菌株が異なるものを使用した。
【0060】
<GPR120アゴニスト活性の評価>
GPR120アゴニスト活性の評価は、GPR120アゴニスト検出細胞株を用いて行った。GPR120アゴニスト検出細胞株としては、株式会社ケー・エー・シー製のヒト胎児腎由来細胞株HEK293に、Promega社製のpGL4.33[luc2P/SRE/Hygro]ベクターと、Invitrogen社製のpcDNA3.1+のマルチクローニングサイトにヒトGPR120配列(NM_001195755)を組み込んだベクターとを導入したものを使用した。
【0061】
GPR120アゴニスト検出細胞株がGPR120アゴニストを受容すると、SREルシフェラーゼレポーターが応答して、発光酵素であるルシフェラーゼの発現が誘導される。GPR120アゴニスト検出細胞株のルシフェラーゼ活性を評価することにより、試料中のGPR120アゴニストの存在を検知することができる。具体的な方法を以下に示す。
【0062】
GPR120アゴニスト検出細胞株を、SPL社製の96ウェルブラックプレートに5×10cells/wellの条件で播種した。Gibco社製の10%ウシ胎児血清(以下、FBSともいう。)、及びナカライテスク株式会社製のペニシリン/ストレプトマイシン含有DMEM培地を用いて、COインキュベーター内で一晩培養した。
【0063】
翌日、FBSを含まないDMEM培地に培地交換し、さらに一晩COインキュベーター内で培養した。得られた培養液に、各実施例、及び比較例の組成物を含有量が1%となるように添加した。また、参考例1、2として、別途上記の培養液の代わりにFBSを含まないDMEM培地を添加した水準(以下、ブランクという。)、及び上記の培養液にGPR120合成アゴニストであるGW9508を含有量が1%となるように添加した水準を実施した。6時間後、Promega社製のONE-Glo EX Luciferase試薬を添加した。公知のプレートシェイカーにて、300rpmの条件で2分間撹拌した。その後、Thermo Fisher Scientific社製のマルチプレートリーダー(VARIOSKAN FLASH)を用いて、各ウェルの化学発光強度を測定した。具体的には、相対発光量を意味するRLU値を測定し、以下の基準でGPR120アゴニスト活性を評価した。結果を表1、2、図1に示す。
【0064】
・GPR120アゴニスト活性の評価基準
◎◎(特に優れる):RLU値が14000以上である場合
◎(優れる):RLU値が12000以上14000未満である場合
○○(良好):RLU値が10000以上12000未満である場合
○(可):RLU値が9000以上10000未満である場合
×(不可):RLU値が9000未満である場合
表1、2、図1の結果から、比較例1のビフィドバクテリウム ブレーベを用いた組成物は、RLU値が6839.52と低いことが確認された。これに対し、実施例1~32は、いずれもRLU値が9000以上であった。GPR120アゴニスト活性は○(可)以上であり、GPR120アゴニスト活性が高いことが確認された。
【0065】
リモシラクトバチルス属に属する菌体を用いて作製した実施例25~30は、いずれもGPR120アゴニスト活性が◎(優れる)以上であり、GPR120アゴニスト活性がより高いことが確認された。
【0066】
さらに、リモシラクトバチルス ファーメンタムを用いて作製した実施例25は、RLU値が19001.7であり、GPR120アゴニスト活性は◎◎(特に優れる)であった。なお、GW9508のRLU値は19961であった。実施例25のRLU値は、GW9508のRLU値に近くなっており、GPR120アゴニスト活性がさらに高いことが確認された。
【0067】
また、リモシラクトバチルス ロイテリを用いて作製した実施例28~30は、いずれもGPR120アゴニスト活性が◎(優れる)以上であった。リモシラクトバチルス ロイテリにおいてもGPR120アゴニスト活性がより高いことが確認された。
【0068】
また、ラチラクトバチルス属に属する菌体を用いて作製した実施例15~18は、いずれもGPR120アゴニスト活性が○○(良好)以上であり、GPR120アゴニスト活性がより高いことが確認された。さらに、ラチラクトバチルス サケイを用いて作製した実施例16~18は、いずれもGPR120アゴニスト活性が◎(優れる)以上であり、GPR120アゴニスト活性がさらに高いことが確認された。
【0069】
また、リジラクトバチルス属に属する菌体を用いて作製した実施例22~24は、いずれもGPR120アゴニスト活性が○(可)以上であり、GPR120アゴニスト活性が高いことが確認された。さらに、リジラクトバチルス サリバリウスを用いて作製した実施例23、24は、いずれもGPR120アゴニスト活性が◎(優れる)以上であり、GPR120アゴニスト活性がさらに高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、天然由来の新規なGPR120作動用組成物を提供することができる。GPR120作動用組成物を、飼料組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物、又は食品組成物として用いることが可能である。
【受託番号】
【0071】
<寄託生物材料への言及>
(1)SBT2651
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818))
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2020年12月1日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE-P-03330
(2)SBT1846
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2020年9月15日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE-P-03279
(3)SBT2970
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2021年9月10日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE-BP-03282
(4)SBT10010
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2020年7月13日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE-BP-02997
(5)SBT11380
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2019年5月27日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE-BP-02644
(6)SBT2171
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
1996年3月6日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM-BP-5445
(7)SBT2896
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
上記(1)と同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2022年6月23日(受領日)
ハ イの寄託機関が寄託について発行した受領書の受領番号
NITE-AP-03674
図1