(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096264
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20240705BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240705BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240705BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240705BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J4/02
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J11/06
C09J175/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073043
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2021536619の分割
【原出願日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019138812
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】池谷 達宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 健一
(57)【要約】
【課題】十分な粘着力を有し、かつ粘着シートを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる粘着シートを提供する。
【解決手段】シート状の基材と、基材の片面に形成された粘着剤層とを有し、粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化物からなり、ゲル分率が50~65質量%であり、粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物からなる(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、2つ以上の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含む粘着シートとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~50質量%のポリウレタン(A)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物からなる(メタ)アクリルモノマー(B)と、0.5~5質量%の連鎖移動剤(C)と、0.01~5質量%の光重合開始剤(D)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、2つ以上の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
硬化後の厚さが150μmになるように照射量1000mJ/cm2で光硬化させた硬化物のゲル分率が50~65質量%であり、
前記(メタ)アクリルモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有し、
前記(メタ)アクリルモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有することを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記硬化物は、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であり、
かつ、周波数1Hzで測定した25℃における損失正接が0.25~0.55である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記連鎖移動剤(C)が、多官能チオールである、請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリルモノマー(B)を49~79質量%含む、請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
更に脂肪酸エステル(E)を含有する、請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリルモノマー(B)を45~79質量%含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリルモノマー(B)を53~73質量%含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタン(A)を25~45質量%含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリウレタン(A)を30~40質量%含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
粘着シートにおける粘着剤層の材料として用いられる、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよび粘着剤組成物に関する。
本願は、2019年7月29日に、日本に出願された特願2019-138812号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの薄型化の要求に伴って、半導体デバイスの製造工程において半導体ウエハのバックグラインド工程が行われている。半導体ウエハのバックグラインド工程では、半導体ウエハの表面を粘着シートで保護した上で、裏面を研削し、半導体ウエハを薄型化している。
【0003】
従来、半導体ウエハの表面を保護するために用いられる粘着シートとして、種々のものが提案されている。近年、粘着シートとして、はんだ等からなるバンプ(電極)が表面に形成された半導体ウエハなど、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハに対しても、十分な凹凸吸収性を有するものが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基材上に、凹凸吸収層を有するバックグラインドシートであって、前記凹凸吸収層が、(A)ウレタン(メタ)アクリレートおよび(B)(A)成分以外の重合性単量体を含む成膜用組成物から形成され、且つ特定範囲の損失正接、緩和率、貯蔵弾性率を満たす層である、バックグラインドシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面にバンプを有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う際に、表面を保護するために用いられる粘着シートにおいては、十分な粘着力を有することが求められる。しかし、粘着力の高い粘着シートを、表面にバンプを有する半導体ウエハに貼付してバックグラインド工程を行うと、バックグラインド工程後、粘着シートを剥離した半導体ウエハのバンプ周辺に、粘着シートの粘着剤層が転写される糊残りが発生してしまう。
【0007】
また、表面にバンプを有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う場合、表面を保護する粘着シートの半導体ウエハに対する凹凸吸収性が不十分であると、バンプ周辺に空隙が生じる。この空隙に、バックグラインド工程で使用する水が侵入すると、半導体ウエハが汚染される可能性がある。
【0008】
このように、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられる粘着シートには、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れることが要求されている。
しかしながら、従来の粘着シートは、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れるものではなかった。このため、従来の粘着シートを用いる場合、半導体ウエハに対する十分な粘着力および凹凸吸収性を得るために、粘着シートの粘着剤層とは別に凹凸吸収層を設けたり、粘着剤層を加熱して軟化させたりする必要があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な粘着力を有し、かつ粘着シートを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる粘着シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる硬化物が得られ、粘着シートの粘着剤層の材料として好適な粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は以下の粘着シートである。
[1] 少なくともシート状の基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化物からなり、ゲル分率が50~65質量%であり、
前記粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物からなる(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、2つ以上の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むことを特徴とする粘着シート。
【0011】
本発明の第一の態様の粘着シートは以下の[2]~[3]の特徴を好ましく含む。以下の特徴は、2つ以上を互いに組み合わせても良い。
[2] 前記粘着剤層は、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であり、
かつ、周波数1Hzで測定した25℃における損失正接が0.25~0.55である、[1]に記載の粘着シート。
[3] 前記粘着剤層の厚みが50~500μmである、[1]または[2]に記載の粘着シート。
【0012】
本発明の第二の態様は以下の粘着組成物である。
[4] ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物からなる(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、2つ以上の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
照射量1000mJ/cm2で光硬化させた硬化物のゲル分率が50~65質量%であることを特徴とする、粘着剤組成物。
【0013】
本発明の第二の態様の粘着組成物は以下の[5]~[10]の特徴を好ましく含む。以下の特徴は、2つ以上を互いに組み合わせても良い。
[5] 前記硬化物は、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であり、
かつ、周波数1Hzで測定した25℃における損失正接が0.25~0.55である、[4]に記載の粘着剤組成物。
【0014】
[6] 前記(メタ)アクリルモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有する、[4]または[5]に記載の粘着剤組成物。
[7] 前記(メタ)アクリルモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有する、[6]に記載の粘着剤組成物。
【0015】
[8] 前記連鎖移動剤(C)が、多官能チオールである、[4]~[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[9] 前記ポリウレタン(A)を20~50質量%、
前記(メタ)アクリルモノマー(B)を49~79質量%、
前記連鎖移動剤(C)を0.5~5質量%、
前記光重合開始剤(D)を0.01~5質量%含む、[4]~[8]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[10] 更に脂肪酸エステル(E)を含有する、[4]~[9]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着シートは、シート状の基材の片面に、特定の粘着剤組成物の硬化物からなり、ゲル分率が50~65質量%である粘着剤層を有する。このため、本発明の粘着シートは、十分な粘着力を有し、かつ粘着シートを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる。したがって、本発明の粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いる場合、従来の粘着シートを用いる場合のように、粘着剤層とは別に凹凸吸収層を設けたり、粘着剤層を加熱して軟化させたりする必要はない。よって、本発明の粘着シートは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に好適である。
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、特定の組成およびゲル分率を有する。このため、本発明の粘着剤組成物を硬化させることにより、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる硬化物が得られる。したがって、本発明の粘着剤組成物は、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される粘着シートにおける粘着剤層の材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の粘着シートおよび粘着剤組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。本発明の範囲内において、必要に応じて、種類、量、組成、比率、数、数値、位置、及びサイズなどについて、省略、変更、交換、及び/又は追加することも可能である。
<粘着シート>
本実施形態の粘着シートは、シート状の基材と、基材の片面に形成された粘着剤層とを有する。粘着剤層は、後述する粘着剤組成物の硬化物からなる。
【0019】
基材の材質は、適宜選択可能であり、例えば、樹脂材料などが挙げられる。樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルシート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリイミド(PI);ポリフェニレンサルファイド(PPS);エチレン酢酸ビニル(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、適度な可撓性を有するシートが得られるため、PE、PP、PETを用いることが好ましい。樹脂材料は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
基材として樹脂材料からなる樹脂シートを用いる場合、樹脂シートは、単層であってもよいし、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。多層構造を有する樹脂シートにおいて、各層を構成する樹脂材料は、1種のみを単独で含む樹脂材料であってもよいし、2種以上を含む樹脂材料であってもよい。
【0021】
基材としては、帯電防止処理が施されているものを用いても良い。基材に施される帯電防止処理としては、特に限定されないが、基材の少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法、基材に帯電防止剤を練り込む方法などを用いることができる。
さらに、基材の粘着剤層が形成される面には、必要に応じて、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理等の易接着処理が施されていてもよい。
【0022】
基材の厚さは、基材の材質などに応じて適宜選択できる。粘着シートが、半導体ウエハの加工工程において表面に凹凸部分を有する半導体ウエハを保護する用途に用いられるものであって、基材として樹脂シートを用いる場合、基材の厚さは、例えば10~1000μmであることが好ましく、好ましくは50~300μmである。基材の厚さが10μm以上であると、粘着シートの剛性(コシ)が高くなる。そのため、粘着シートを、被着体である半導体ウエハに貼り付けたり剥離したりする際に、粘着シートにしわおよび浮きが生じ難くなる傾向がある。また、基材の厚さが1000μm以下であると、半導体ウエハに貼り付けた粘着シートを、半導体ウエハから剥離しやすくなり、作業性(取扱い性、ハンドリング)が良好となる。
【0023】
粘着剤層の厚みは、50~500μmであることが好ましく、60~400μmであることがより好ましく、70~300μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが50μm以上であると、粘着シートの凹凸吸収性がより一層良好となる。また、粘着剤層の厚みが500μm以下であると、粘着剤層の膜厚制御が容易となる。
【0024】
本実施形態の粘着シートが、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付される粘着シートである場合、粘着剤層の厚みは、表面の凹凸部分の高さに大きく依存する。粘着剤層の厚みは、十分な凹凸吸収性が得られるように、表面の凹凸部分の高さ以上とすることが好ましい。したがって、例えば、表面の凹凸が半導体ウエハに形成されたバンプである場合、粘着剤層の厚みをバンプの高さ寸法の2倍以上とすることが好ましい。バンプの高さは通常30~200μmであり、例えば、バンプの高さが100μmである場合には、粘着剤層の厚みを200μm以上とすることが好ましく、バンプの高さが200μmである場合には、粘着剤層の厚みを400μm以上とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の粘着シートの有する粘着剤層は、ゲル分率が50~65質量%の範囲内である。このため、本実施形態の粘着シートは、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる。粘着剤層のゲル分率は、52質量%以上であることが好ましい。また、粘着剤層のゲル分率は、63質量%以下であることが好ましい。
これに対し、ゲル分率が50質量%未満であると、粘着シートを被着体に貼付した後に剥離することにより、糊残りが生じやすい。また、ゲル分率が65質量%を超えると、粘着シートの粘着剤層として用いた場合の流動性が不十分となる傾向がある。このため、粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に送付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しやすい。
【0026】
(粘着剤層のゲル分率の測定)
粘着剤層のゲル分率は、例えば、以下に示す方法により測定できる。
粘着シートから縦8cm、横8cmの正方形シートを切り出し、得られた正方形シートの粘着剤層から基材を剥離する。そして、正方形シートから剥離した粘着剤層を、測定用サンプルとする。得られた測定用サンプルは、後述する粘着剤組成物の硬化物からなる測定用サンプルのゲル分率の測定方法と同様の方法を用いて測定できる。
【0027】
本実施形態の粘着シートの有する粘着剤層は、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であり、かつ、周波数1Hzで測定した25℃における損失正接が0.25~0.55であることが好ましい。貯蔵弾性率および損失正接が上記範囲である粘着剤層は、柔軟性および流動性が良好である。このため、バンプ等の凹凸部分を有する半導体ウエハ等のワーク(被着体)に粘着シートを貼付した場合に、凹凸部分と粘着シートとの間に、空隙が発生することを防止できる。
【0028】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、2.0×104以上であることがより好ましく、3.0×104以上であることがさらに好ましい。また、上記貯蔵弾性率は、9.0×104以下であることがより好ましく、8.0×104以下であることがさらに好ましい。
上記貯蔵弾性率が1.0×104以上である粘着剤層は、柔らかすぎることがない。このため、貯蔵弾性率が1.0×104以上である粘着剤層を有する粘着シートは、被着体に貼付した後に剥離しても、より一層糊残りが生じにくく、好ましい。また、上記貯蔵弾性率が1.0×105以下である粘着剤層は、良好な柔軟性を有する。このため、貯蔵弾性率が1.0×105以下の粘着剤層を有する粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合には、より一層、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。
【0029】
粘着剤層の上記損失正接は、0.30以上であることがより好ましい。また、上記損失正接は、0.50以下であることがより好ましい。
上記損失正接が0.25以上である粘着剤層は、良好な流動性を有する。このため、損失正接が0.25以上の粘着剤層を有する粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合には、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。また、上記損失正接が0.55以下である粘着剤層は、流動性が大きすぎることがない。このため、損失正接が0.55以下である粘着剤層を有する粘着シートは、被着体に貼付した後に剥離しても、糊残りが生じにくく、好ましい。
【0030】
(粘着剤層の貯蔵弾性率および損失正接の測定)
粘着剤層の貯蔵弾性率および損失正接は、例えば、以下に示す方法により測定できる。まず、粘着シートから基材を剥離する。そして、基材を剥離した粘着剤層を積層して、厚みが1~2mmの範囲内である積層シートとする。得られた積層シートから縦8mm、横8mmの正方形シートを切り出し、測定用サンプルとする。得られた測定用サンプルは、後述する粘着剤組成物の硬化物からなる測定用サンプルの貯蔵弾性率および損失正接の測定方法と同様の方法を用いて測定できる。
【0031】
粘着シートには、粘着剤層を保護する目的で、粘着剤層の基材と反対側の表面に、透明なセパレーターが設けられていてもよい。セパレーターは、粘着剤層の表面にラミネートされていることが好ましい。セパレーターの材料としては、例えば、紙、プラスチックフィルムなどを用いることができ、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムを用いることが好ましい。セパレーターとして用いられるプラスチックフィルムとしては、上記した粘着剤層を保護し得るものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテンなどが挙げられる。
【0032】
<粘着剤組成物>
本実施形態の粘着シートの有する粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化物からなる。以下、本実施形態の粘着シートの有する粘着剤層の材料として使用した粘着剤組成物について、詳細に説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含む。
【0033】
(ポリウレタン(A))
ポリウレタン(A)は、ポリウレタン(a1)を含む。ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)だけでなく、粘着剤組成物の硬化物における凝集力を調節する目的で、後述するポリウレタン(a2)が含まれていてもよい。ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)以外の成分は含まれないことが好ましい。
【0034】
[ポリウレタン(a1)]
ポリウレタン(a1)は、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。また、ポリウレタン(a1)は、2つ以上の、すなわち複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有する。ポリウレタン(a1)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0035】
本発明において、ポリウレタンの「複数の末端」とは、ポリウレタンが直鎖ポリマーである場合、2つの末端であり、ポリウレタンが分岐ポリマーである場合、各分岐鎖の本数と同じ数の末端のうち2つ以上の末端である。
また、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、化学式CH2=CH-CO-で表される官能基、および化学式CH2=C(CH3)-CO-で表される官能基から選択される一種以上を意味する。
【0036】
[ポリウレタン(a2)]
ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と同様に、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と異なり、1つの末端のみに(メタ)アクリロイル基を有する。ポリウレタン(a2)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。ポリウレタン(a2)の有する(メタ)アクリロイル基を有さない末端は、イソシアナト基、アルキルアルコール由来の構造、アルキルイソシアネート由来の構造から選ばれるいずれかを有することが好ましく、アルキルアルコール由来の構造を有することがより好ましい。
【0037】
「ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールとしては、炭素数2~4のアルキレン鎖を有するものであることが好ましい。具体例としては、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオールなどが挙げられる。
【0038】
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、1種類のアルキレン鎖を含むものであってもよいし、2種類以上のアルキレン鎖を含むものであってもよい。
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、末端に2つまたは3つの水酸基を有するもの(ジオール型またはトリオール型のポリオキシアルキレンポリオール)であることが好ましく、ポリオキシアルキレングリコール(ジオール型)であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン鎖を有するポリプロピレングリコールであることが特に好ましい。
【0039】
例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが、ポリプロピレングリコールである場合、水酸基価は20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリプロピレングリコールの具体例としては、例えば、水酸基価が56mgKOH/gの水酸基(ヒドロキシ基)を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000、ジオール型)などが挙げられる。
【0040】
ここで、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価とは、JISK0070にしたがって測定されたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価である。すなわち、ポリオキシアルキレンポリオール1gをアセチル化させたときの遊離酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、無水酢酸を用いて試料(ポリオキシアルキレンポリオール)中の水酸基をアセチル化し、その際に生じる遊離酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
【0041】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、500~5,000であることが好ましく、800~4,000であることがより好ましく、1,000~3,000であることがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500以上であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有する粘着シートが、剥離強度の高いものとなる。また、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が5,000以下であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)が十分な量のウレタン結合を含むものとなる。このため、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化させた硬化物は、凝集力が良好なものとなる。
【0042】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)は、2種以上の異なるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が、ポリイソシアネート由来の構造を挟んで結合された構造を有していてもよい。
ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
「ポリイソシアネート由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートとしては、イソシアナト基を複数有する化合物が用いられ、ジイソシアネートを用いることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加物、1,5-ナフチレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
これらのポリイソシアネートの中でも、これを用いて合成したポリウレタン(A)の耐光性、およびポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の制御の点から、イソホロンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることが好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の点で、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることがより好ましい。
【0045】
ポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)などが挙げられる。
【0046】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
また、ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造およびポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が同じである場合、ポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)とを同時に合成することができ、ポリウレタン(A)を効率よく製造でき、好ましい。
【0048】
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の80~100%であることが好ましく、90~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a2)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の0~20%であることが好ましく、0~10%がより好ましく、0%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合が80%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物が、十分に凝集力の大きいものとなり、好ましい。
【0049】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数(ポリウレタン(a1)の末端数と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)の末端数との合計数)のうち、分子数基準で90~100%に(メタ)アクリロイル基が導入されていることが好ましく、95~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、(メタ)アクリロイル基の導入量が分子数基準で90%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力が十分に高いものとなる。
【0050】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、赤外線吸収スペクトル(IR)法、核磁気共鳴スペクトル(NMR)法などを用いてポリウレタン(A)を分析した結果を用いて算出できる。
【0051】
ポリウレタン(A)に含まれているポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)の含有量の割合、すなわち、ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、後述するポリウレタン(A)の製造方法により調整できる。
【0052】
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、30,000~200,000であることが好ましく、50,000~150,000であることがより好ましく、60,000~100,000であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の質量平均分子量が30,000以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物が、良好な柔軟性を有するものとなる。また、ポリウレタン(A)の質量平均分子量が200,000以下であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物は、取り扱いが容易で、作業性が良好なものとなる。
【0053】
(ポリウレタン(A)の質量平均分子量の測定方法)
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC-101;昭和電工株式会社製Shodex(登録商標))(以下、GPCという。)により測定したポリスチレン換算の値である。GPCの測定条件は、以下のとおりである。
カラム:LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:ポリウレタン(A)の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0054】
本実施形態の粘着剤組成物中におけるポリウレタン(A)の含有量は、20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の含有量が20質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物が、十分な凝集力を有するものとなり、優れた粘着力が得られる。また、この硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートは、粘着剤層の柔らかさが適正範囲となり、粘着剤層と被着体との間への気泡の挟み込みが生じにくい。また、ポリウレタン(A)の含有量が50質量%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物は、十分な柔軟性を有するものとなる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートは、被着体に対する濡れ性が良好である。
【0055】
((メタ)アクリルモノマー(B))
(メタ)アクリルモノマー(B)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であればよく、特に限定されない。(メタ)アクリルモノマー(B)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリルモノマー(B)としては、単官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの両方を用いてもよい。
【0056】
本発明において、単官能(メタ)アクリレートにおける「単官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、1つのみである(メタ)アクリレートを意味する。
また、本発明において、多官能(メタ)アクリレートにおける「多官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、2つ以上である(メタ)アクリレートを意味する。
【0057】
(メタ)アクリルモノマー(B)としては、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力および粘着剤組成物の硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートと3官能以上の(メタ)アクリレートとを含有することがより好ましく、特に、単官能(メタ)アクリレートと、3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する3官能(メタ)アクリレートとを含有することが最も好ましい。
【0058】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0059】
これらの単官能(メタ)アクリレートの中でも、粘着剤組成物を硬化させて得られる硬化物の粘着力(剥離力)、後述する貯蔵弾性率、損失正接、およびゲル分率が、硬化物を粘着シートの粘着剤層として用いた場合に、より適正な範囲となりやすいため、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。具体的には、アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも特に、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび/またはn-ブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートは、ポリウレタン(A)以外であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有している化合物である。多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物のポリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス(ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω-ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートとして、粘着剤組成物の硬化性の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0061】
(メタ)アクリルモノマー(B)として、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートの両方を含有する場合、(メタ)アクリルモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有することが好ましい。この場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量は、90~99モル%であることがより好ましく、95~98モル%であることがさらに好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、1~10モル%であることがより好ましく、2~5モル%であることがさらに好ましい。
【0062】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量が85モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物を粘着シートの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートは、十分な凹凸吸収性が得られ、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が99モル%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0063】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量が1モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が大きくなりすぎず好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量が15モル%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物を粘着シートの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。
【0064】
本実施形態の粘着剤組成物中における(メタ)アクリルモノマー(B)の含有量は、49~79質量%であることが好ましく、53~73質量%であることがより好ましく、56~66質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリルモノマー(B)の含有量が49質量%以上であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎることがなく、塗工性に優れるため好ましい。また、(メタ)アクリルモノマー(B)の含有量が79質量%以下であると、粘着剤組成物の粘度が低くなりすぎることがなく、粘着剤組成物からなる塗膜の厚みを制御し易く、好ましい。
【0065】
(連鎖移動剤(C))
連鎖移動剤(C)は、粘着剤組成物を硬化させた硬化物の貯蔵弾性率、損失正接、ゲル分率を制御する目的で、粘着剤組成物中に含有させる。
連鎖移動剤(C)としては、例えば、多官能チオールを好ましく用いることができる。多官能チオールは、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物である。
【0066】
多官能チオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,2-エタンジチオール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ジペンタエチスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。連鎖移動剤(C)としては、上記の中でも、粘着剤組成物の反応性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を用いることが好ましい。
【0067】
本実施形態の粘着剤組成物中における連鎖移動剤(C)の含有量は、0.5~5質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、3~4.5質量%であることがさらに好ましい。連鎖移動剤(C)の含有量が0.5質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物を粘着シートの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。含有量が5質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0068】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)は、特に限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光重合開始剤(D)としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。これらの光重合開始剤(D)中でも、粘着剤組成物を光硬化させて得られる硬化物の透明性の観点から、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましく、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを用いることが好ましい。
【0069】
本実施形態の粘着剤組成物中における光重合開始剤(D)の含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が0.01質量%以上であると、粘着剤組成物の光硬化が十分に進行する。また、光重合開始剤(D)の含有量が5質量%以下であると、粘着剤組成物の光硬化時に低分子量成分が多くなりすぎることがない。このため、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0070】
(脂肪酸エステル(E))
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、さらに必要に応じて、脂肪酸エステル(E)を含有してもよい。
脂肪酸エステル(E)は、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートにおける粘着力を制御するとともに、粘着剤層のラミネート性(濡れ性)および泡抜け性(被着体に粘着シートを貼り合わせた時に挟み込んだ気泡の抜けやすさ)を向上させる目的で含有させる。
【0071】
脂肪酸エステル(E)としては、脂肪酸とアルキルアルコールとのエステルを用いることができ、他の成分との相溶性の観点から、炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステル、および炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルから選ばれる脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0072】
炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルおよび/またはステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが特に好ましい。
【0073】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルとしては、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸などの不飽和脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタンなどのアルコールとのエステルが挙げられる。
【0074】
本実施形態の粘着剤組成物中における脂肪酸エステル(E)の含有量は、3~18質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。脂肪酸エステル(E)の含有量が3質量%以上であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートにおける粘着力が粘着シートとして好ましい範囲になるとともに、粘着剤層のラミネート性および泡抜け性が良好となる。脂肪酸エステル(E)の含有量が18質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートを、被着体から剥離した際に脂肪酸エステル(E)を含む糊残りが生じにくく、好ましい。
【0075】
(溶剤)
本実施形態の粘着剤組成物は、溶剤を含んでもよいが、溶剤を実質的に含まない無溶剤のものであることがより好ましい。
本実施形態の粘着剤組成物が溶剤を含む場合、例えば、レベリング剤および/または軟化剤として溶剤を用いることができる。
【0076】
本実施形態の粘着剤組成物が無溶剤である場合、これを用いて粘着シートの粘着剤層を形成する際に、溶媒を加熱乾燥する工程を省略できるため、優れた生産性が得られる。特に、本実施形態の粘着剤組成物を用いて、厚みが50μmを超える粘着剤層を有する粘着シートを製造する場合には、溶媒を加熱乾燥する工程を省略することによる生産性向上効果が顕著となるため、無溶剤であることが好ましい。
【0077】
本発明において、粘着剤組成物が「溶剤を実質的に含まない」の意味は、粘着剤組成物中における溶剤の含有量が0~1質量%であることを意味し、好ましくは0~0.5質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0078】
(その他)
本実施形態の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤のような帯電防止剤、染料などが挙げられる。
【0079】
(ゲル分率)
本実施形態の粘着剤組成物は、光硬化性であり、硬化後の厚さが150μmになるように、照射量1000mJ/cm2で硬化させた硬化物のゲル分率が、50~65質量%の範囲内である。照射量1000mJ/cm2で硬化させた硬化物のゲル分率は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含む本実施形態の粘着剤組成物において、連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を制御することにより調整できる。より具体的には、連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を増やすとゲル分率が低くなり、連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を減らすとゲル分率が高くなる。
【0080】
本実施形態の粘着剤組成物を照射量1000mJ/cm2で硬化させて得たゲル分率50~65質量%の硬化物は、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる。このため、本実施形態の粘着剤組成物は、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられる粘着シートにおける粘着剤層の材料として好適である。本実施形態の粘着剤組成物を照射量1000mJ/cm2で硬化させて得た硬化物のゲル分率は、52質量%以上であることが好ましい。また、上記硬化物のゲル分率は、63質量%以下であることが好ましい。
【0081】
これに対し、ゲル分率が50質量%未満である硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートは、被着体に貼付した後に剥離することにより、糊残りが生じやすい。また、ゲル分率が65質量%を超える硬化物は、粘着シートの粘着剤層として用いた場合の流動性が不十分である。このため、ゲル分率が65質量%を超える硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しやすい。
【0082】
(ゲル分率の測定)
本発明において、照射量1000mJ/cm2で粘着剤組成物を硬化させた硬化物のゲル分率は、以下のようにして測定する。
まず、厚さ75μmの剥離PETフィルム(東山フィルム株式会社製、商品名:クリーンセパ(商標)HY-S10-2)上に、アプリケーターを用いて硬化後の厚さが150μmとなるように、粘着剤組成物を塗布する。次いで、粘着剤組成物の塗布面を厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)で覆う。
【0083】
続いて、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cm2の条件で、超軽剥離PETフィルムを介して紫外線を照射し、粘着剤組成物を硬化させて硬化物(粘着剤層)とする。
【0084】
次に、前記硬化物(粘着剤層)を有するシートから縦8cm、横8cmの正方形シートを切り出し、得られた正方形シートの粘着剤層から剥離PETフィルムおよび超軽剥離PETフィルムを剥離する。そして、正方形シートから剥離した粘着剤層を測定用サンプルとし、その質量を測定する。続いて、測定用サンプルを50mlのトルエンに浸漬し、室温で72時間静置する。その後、測定用サンプルをトルエン中から取り出し、80℃で5時間乾燥し、再び質量を測定する。そして、下記式に基づいて、ゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:トルエンに浸漬した後の測定用サンプルの質量(トルエンの質量は含まない)
B:トルエンに浸漬する前の測定用サンプルの質量
【0085】
(貯蔵弾性率および損失正接)
本実施形態の粘着剤組成物を、硬化後の厚さが150μmになるように、照射量1000mJ/cm2で硬化させた硬化物は、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であり、損失正接が0.25~0.55であることが好ましい。
照射量1000mJ/cm2で硬化させた硬化物を、周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率および損失正接は、粘着剤組成物中に含まれる連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を制御することにより調整できる。より具体的には、連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を増やすと、貯蔵弾性率が低くなるとともに損失正接が大きくなる。また、連鎖移動剤(C)および/または光重合開始剤(D)の含有量を減らすと、貯蔵弾性率が高くなるとともに損失正接が小さくなる。
【0086】
本実施形態の粘着剤組成物を照射量1000mJ/cm2で硬化させて得た、上記貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×105であって、かつ上記損失正接が0.25~0.55である硬化物は、柔軟性および流動性が良好である。このため、この硬化物を粘着剤層として用いた粘着シートを、バンプ等の凹凸部分を有する半導体ウエハ等のワーク(被着体)に貼付した場合、凹凸部分と粘着シートとの間に、空隙が発生することを防止できる。
【0087】
本実施形態の粘着剤組成物を照射量1000mJ/cm2で硬化させて得た硬化物の周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率は、2.0×104以上であることがより好ましく、3.0×104以上であることがさらに好ましい。また、上記貯蔵弾性率は、9.0×104以下であることがより好ましく、8.0×104以下であることがさらに好ましい。
【0088】
上記貯蔵弾性率が1.0×104以上である硬化物は、粘着シートの粘着剤層として用いた場合に柔らかすぎることがない。このため、貯蔵弾性率が1.0×104以上である硬化物を、粘着剤層として用いた粘着シートは、被着体に貼付した後に剥離しても、糊残りが生じにくく、好ましい。また、上記貯蔵弾性率が1.0×105以下である硬化物は、粘着シートの粘着剤層として用いた場合に、良好な柔軟性を有する。このため、貯蔵弾性率が1.0×105以下の硬化物を、粘着剤層として用いた粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合には、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。
【0089】
本実施形態の粘着剤組成物を照射量1000mJ/cm2で硬化させて得た硬化物の周波数1Hzで測定した25℃における損失正接は、0.30以上であることがより好ましい。また、上記損失正接は、0.50以下であることがより好ましい。
【0090】
上記損失正接が0.25以上である硬化物は、粘着シートの粘着剤層として用いた場合に、良好な流動性を有する。このため、損失正接が0.25以上の硬化物を、粘着剤層として用いた粘着シートを、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合には、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。また、上記損失正接が0.55以下である硬化物は、粘着シートの粘着剤層として用いる場合に流動性が大きすぎることがない。このため、損失正接が0.55以下である硬化物を、粘着剤層として用いた粘着シートは、被着体に貼付した後に剥離しても、糊残りが生じにくく、好ましい。
【0091】
(貯蔵弾性率および損失正接の測定)
本発明において、照射量1000mJ/cm2で粘着剤組成物を硬化させた硬化物の周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率および損失正接は、以下の方法により測定する。
まず、上述したゲル分率の測定方法と同様にして、粘着剤組成物を硬化させて厚さ150μmの硬化物(粘着剤層)を有するシートを作製する。前記硬化物(粘着剤層)を有するシートの粘着剤層から剥離PETフィルムおよび超軽剥離PETフィルムを剥離する。そして、剥離した厚さ150μmの粘着剤層を10枚積層して、厚さ1.5mmの積層シートとする。得られた積層シートから縦8mm、横8mmの正方形シートを切り出し、測定用サンプルとする。
【0092】
その後、得られた測定用サンプルについて、回転式粘弾性測定装置(レオメーター)(TAインスツルメント社製、製品名「AR2000」を用いて、周波数1Hz(6.28rad/sec)における-20~120℃の貯蔵弾性率および損失弾性率を剪断モードで測定し、25℃における貯蔵弾性率、損失正接を算出する。
【0093】
<粘着剤組成物の製造方法>
次に、本実施形態の粘着剤組成物の製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。
以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、ポリウレタン(A)については、好ましい合成方法について例を挙げて説明する。本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、(メタ)アクリルモノマー(B)、連鎖移動剤(C)、光重合開始剤(D)、脂肪酸エステル(E)など、ポリウレタン(A)を除く各成分については、市販品を容易に購入でき、また各成分として用いる化合物の種類によってそれぞれ合成方法が異なるため、合成方法の説明を省略する。
【0094】
<ポリウレタン(A)の合成方法>
以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれるポリウレタン(A)の好ましい合成方法の一例について説明する。なお、ポリウレタン(A)の合成方法は、以下に示す合成方法に限定されるものではなく、合成に用いる原料および設備などの条件によって、適宜変更可能である。
【0095】
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法において、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行う。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0096】
ポリウレタン(A)を合成するには、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、イソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)がヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンを合成する。原料として用いられるポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートの具体的な例は、ポリウレタン(A)の項で例示したとおりである。
【0097】
このとき、原料中に含まれるヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比を調整することにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が少ないほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が多いほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0098】
次に、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0099】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられる。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンのイソシアナト基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0100】
また、ポリウレタン(A)は、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールを併用して、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルアルコールとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルアルコールなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルアルコールは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールと、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0102】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルアルコール由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0103】
<ポリウレタン(A)の合成方法の他の例>
次に、ポリウレタン(A)の好ましい合成方法の他の例について説明する。
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法においても上記の合成方法の例と同様に、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行う。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0104】
この合成方法を用いてポリウレタン(A)を合成する場合、上記の合成方法の例と異なり、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
具体的には、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、ヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)がイソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
【0105】
このとき、原料中に含まれるイソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比を調整することにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が少ないほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が多いほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量の分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量の分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0106】
次に、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0107】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製のカレンズMOI(登録商標)、カレンズAOI(登録商標)などが例示できる。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンのヒドロキシ基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることが好ましい。
【0108】
また、ポリウレタン(A)は、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートを併用して、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルイソシアネートとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルイソシアネートなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルイソシアネートは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートと、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0110】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルイソシアネート由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0111】
<粘着剤組成物に含まれる各成分の混合方法>
本実施形態の粘着剤組成物は、上記の合成方法により得られたポリウレタン(A)と、(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、必要に応じて添加される脂肪酸エステル(E)およびその他の添加剤とを混合する方法により製造できる。
本実施形態の粘着剤組成物に含まれる各成分を混合する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ホモディスパー、パドル翼などの攪拌翼を取り付けた攪拌装置を用いて行うことができる。
【0112】
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリルモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、照射量1000mJ/cm2で光硬化させた硬化物のゲル分率が50~65質量%である。このため、本実施形態の粘着剤組成物を硬化させることにより、十分な粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる硬化物が得られる。したがって、本実施形態の粘着剤組成物は、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられる粘着シートにおける粘着剤層の材料として好適である。
【0113】
<粘着シートの製造方法>
次に、本実施形態の粘着シートの製造方法について説明する。
本実施形態の粘着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造できる。
例えば、シート状の基材上に、粘着剤組成物を塗布し、セパレーターをラミネートして積層体とする。その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させる。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層が形成された粘着シートが得られる。
【0114】
基材に粘着剤組成物を塗布する方法は、特に限定されず、適宜選択可能である。例えば、基材に粘着剤組成物を塗布する方法として、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等の各種コーターを用いる方法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0115】
粘着剤組成物を光硬化させる際の光源としては、ブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
光の照射強度は、粘着剤組成物を充分に硬化させることができ、かつ硬化物のゲル分率が50~65質量%の範囲内となる条件であればよく、例えば、50~3000mW/cm2であることが好ましい。光の照射強度が弱いと硬化に時間がかかり、生産性が低下する。また、光の照射強度は、周波数1Hzで測定した25℃における硬化物の貯蔵弾性率および損失正接の値が所望の範囲となるように調整することがより好ましい。
【0116】
本実施形態では、透明なセパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射したが、基材およびセパレーターが透明である場合、セパレーター側と基材側のどちら側から紫外線を照射してもよい。
【0117】
<粘着シートの用途および求められる性能>
本実施形態の粘着シートは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いることができる。具体的には、半導体ウエハのバンプが形成された面に貼付して、半導体ウエハの表面を保護し、所定の加工工程の後に剥離される粘着シートとして好適に使用できる。
【0118】
本実施形態の粘着シートを、半導体ウエハのバンプ形成面を保護する用途で用いる場合、粘着シートの剥離強度(粘着力)は、半導体デバイスの加工工程における例えばバックグラインド工程において、半導体ウエハが粘着シートにしっかりと固定される強度である必要がある。一方、所定の加工工程の後、粘着シートを半導体ウエハから剥離する際に、半導体デバイスの部品を破損させない程度の強度である必要がある。
これらの観点から、上記の用途に用いられる粘着シートの剥離強度は、剥離速度が0.3m/min.であって、粘着剤層の厚みが50~200μmである場合、10~300gf/25mmであることが好ましく、15~200gf/25mmであることがより好ましく、20~150gf/25mmであることがさらに好ましい。粘着シートの剥離強度の具体的な測定方法は、実施例において後述する。
【0119】
本実施形態の粘着シートは、シート状の基材の片面に、本実施形態の粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有する。このため、本実施形態の粘着シートは、十分な粘着力を有し、かつ粘着シートを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる。したがって、本実施形態の粘着シートは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に好適である。
【0120】
本実施形態の粘着シートは、例えば、表面にバンプからなる凹凸部分を有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う際に貼付され、バックグラインド工程後に剥離される粘着シートとして、好適に用いることができる。この場合、本実施形態の粘着シートによって半導体ウエハが十分な粘着力で固定され、しかも半導体ウエハに貼付された粘着シートとバンプ周辺との間に空隙が発生しにくい。よって、バックグラインド工程で使用する水が、粘着シートとバンプ周辺との間の空隙に侵入して、半導体ウエハが汚染されることを防止できる。また、バックグラインド工程後、粘着シートを剥離した半導体ウエハのバンプ周辺に、糊残りが発生しにくく、好ましい。
【実施例0121】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0122】
<ポリウレタン(A-1)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた反応器に、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)を0.55kg(2.1mol)と、水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000)を4.01kg(2.0mol)と、ウレタン化触媒であるジオクチルスズ(ネオスタンU-810、日東化成社製)を0.8gとを仕込んだ。
【0123】
その後、反応器を60℃まで昇温して4時間反応させ、ポリウレタン(A)の前駆体として、イソシアナト基を両末端に有するポリウレタンを得た。続いて、反応器に2-ヒドロキシエチルアクリレート23.22g(0.2mol)を加え、70℃まで昇温して2時間反応させ、質量平均分子量67,000のポリウレタン(A-1)を4.58kg得た。
【0124】
得られたポリウレタン(A-1)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-1)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0125】
<ポリウレタン(A-2)の合成>
ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物に代えて、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)2.1molを用いたこと以外は、ポリウレタン(A-1)の合成法と同様にして、質量平均分子量66,000のポリウレタン(A-2)を得た。
【0126】
得られたポリウレタン(A-2)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-2)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0127】
<粘着剤組成物の調製>
このようにして得られたポリウレタン(A-1)または(A-2)と、表1または2に示す(メタ)アクリルモノマー(B)と連鎖移動剤(C)と光重合開始剤(D)と脂肪酸エステル(E)とを、表1または2に記載の割合で配合し、25℃でディスパーを用いて混合し、実施例1~実施例5および比較例1~比較例5の粘着剤組成物を得た。
【0128】
【0129】
【0130】
表1または2中に記載の下記記号は、以下に示す化合物である。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(東亜合成株式会社製)
BUA:n-ブチルアクリレート(東亜合成株式会社製)
ACMO:アクリロイルモルホリン(新中村化学工業株式会社製)
IBOA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成株式会社製)
【0131】
PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製)
NR1:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製)
TPO(Omnirad TPO H):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製)
エキセパールIPM:ミリスチン酸イソプロピル(花王株式会社製)
エキセパールEH-S:ステアリン酸2-エチルヘキシル(花王株式会社製)
【0132】
<ゲル分率の測定>
上述の方法により、実施例1~実施例5および比較例1~比較例5の粘着剤組成物を用いて測定用サンプルを作製し、照射量1000mJ/cm2で光硬化させた硬化物のゲル分率を測定した。その結果を表1または2に示す。
【0133】
<貯蔵弾性率および損失正接の測定>
上述の方法により、実施例1~実施例5および比較例1~比較例5の粘着剤組成物を用いて測定用サンプルを作製し、照射量1000mJ/cm2で光硬化させた硬化物の周波数1Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率および損失正接を測定した。その結果を表1または2に示す。
【0134】
<粘着シートの作製>
シート状の基材として、厚さ50μmPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:エステル(商標)フィルムE5100)を用意した。そして、基材のコロナ処理面上に、アプリケーターを用いて実施例1の粘着剤組成物を、硬化後の厚さが150μmとなるように塗布した。
【0135】
次いで、粘着剤組成物の塗布面に、セパレーターとして、厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)を、ゴムローラーを使用して貼り合わせた。
その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させた。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、セパレーターとが積層された実施例1の粘着シートを得た。
【0136】
次に、実施例1の粘着剤組成物に代えて、実施例2~実施例5および比較例1~比較例5の粘着剤組成物をそれぞれ用いて、実施例1の粘着シートと同様にして、粘着シートを作成した。その結果、実施例2~実施例5および比較例2~比較例4の粘着シートが得られた。
しかし、比較例1および比較例5の粘着剤組成物については、硬化不良により、粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を形成できなかった。
【0137】
次に、実施例1~実施例5および比較例2~比較例4の粘着シートについて、以下に示す項目の評価を行った。
<剥離力(剥離強度)>
粘着シートを縦25mm、横150mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の全面を、ガラス板にラミネートして、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を1往復させることにより、測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下に30分間放置した。その後、JIS K 6854-2に準じて、剥離速度0.3m/min.で180°方向の引張試験を行って、ガラス板に対する剥離強度(gf/25mm)を測定した。その結果を表1または2に示す。
【0138】
<凹凸吸収性>
粘着シートを縦25mm、横50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプとを対向させて設置した。そして、粘着シートの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、粘着シートとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0139】
粘着シートと貼り合わせたバンプ付きウエハを、粘着シートの基材側からデジタル光学顕微鏡(株式会社配合ハイロックス社製、RH-2000)により観察し、以下の基準により、バンプへの凹凸吸収性を評価した。その結果を表1または2に示す。
「基準」
○(可):粘着シートの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がない。
×(不可):粘着シートの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がある。
【0140】
<糊残り>
粘着シートを縦25mm、横50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプと対向させて設置した。そして、粘着シートの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、粘着シートとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0141】
粘着シートと貼り合わされたバンプ付きウエハを、23℃で24時間放置した後、粘着シートをおおよそ2m/min.程度の速度で、手で剥離した。そして、バンプ付きウエハの表面をデジタル光学顕微鏡(株式会社ハイロックス社製、RH-2000)により観察し、糊残りの有無を、以下の基準で評価した。その結果を表1または2に示す。
「基準」
○(可):バンプ周辺に糊残りがない。
×(不可):バンプ周辺に糊残りがある。
【0142】
表1または2に示すように、ゲル分率が50~65質量%である実施例1~実施例5の粘着シートは、いずれも剥離力が10gf/25mm以上であり、十分な粘着力を有するものであった。また、実施例1~実施例5の粘着シートは、いずれも凹凸吸収性および糊残りの評価が「○(可)」であった。
【0143】
これに対し、ゲル分率が50質量%未満である比較例2および比較例4の粘着シートは、いずれも凹凸吸収性の評価は「○(可)」であったが、糊残りの評価が「×(不可)」であった。
また、ゲル分率が65質量%を超える比較例3の粘着シートは、糊残りの評価は「○(良)」であったが、凹凸吸収性の評価が「×(不可)」であった。
本発明は、十分な粘着力を有し、かつ粘着シートを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性に優れる粘着シートを提供することができる。