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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096327
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240705BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651M
H01L21/304 651B
H01L21/306 R
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074828
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2020120778の分割
【原出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】立花 康三
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】水永 耕市
(57)【要約】
【課題】基板を加熱しながら薬液処理を行うにあたり、薬液の消費量を削減しつつ面内均一性の高い処理を行う。
【解決手段】基板処理方法は、回転テーブルを第1の速度で回転させながら基板の中心部に薬液を供給し、これにより、基板の表面の全体が第1の厚さを有する薬液の液膜で覆われるようにする液膜形成工程と、液膜形成工程の後に、回転テーブルを前記第1の速度より低い第2の速度で回転させながら、基板の中心部に薬液を供給し、これにより、基板の表面の全体が第1の厚さより大きい第2の厚さを有する薬液の液膜で覆われるようにする液膜厚さ調整工程と、液膜厚さ調整工程の後に、回転テーブルを第2の速度より低い第3の速度で回転させるかあるいは回転テーブルの回転を停止した状態で、電気ヒーターにより回転テーブルを加熱し、これにより基板および基板を覆う薬液の液膜を加熱する液膜加熱工程と備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持するとともに鉛直軸線周りに回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルと一緒に回転するように前記回転テーブルに設けられ、前記回転テーブル上に載置された前記基板を加熱する電気ヒーターと、
前記回転テーブルに保持された前記基板の表面に処理液を供給する少なくとも1つの処理液ノズルと、
前記処理液ノズルに前記処理液を供給する処理液供給機構と、
を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、
前記基板を回転テーブルに保持させる基板保持工程と、
前記回転テーブルを第1の速度で回転させながら、前記基板の中心部に前記処理液としての薬液を供給し、これにより、前記基板の表面の全体が第1の厚さを有する前記薬液の液膜で覆われるようにする液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の後に、前記回転テーブルを前記第1の速度より低い第2の速度で回転させながら、前記基板の中心部に前記薬液を供給し、これにより、前記基板の表面の全体が前記第1の厚さより大きい第2の厚さを有する前記薬液の液膜で覆われるようにする液膜厚さ調整工程と、
前記液膜厚さ調整工程の後に、前記回転テーブルを前記第2の速度以下の第3の速度で回転させた状態、あるいは前記回転テーブルを揺動回転させた状態、あるいは前記回転テーブルの回転を停止させた状態で、前記電気ヒーターにより前記回転テーブルを加熱し、これにより前記基板および前記基板を覆う前記薬液の液膜を加熱して前記薬液と前記基板の表面との反応を促進させる、液膜加熱工程と、
を備えた基板処理方法。
【請求項2】
前記基板処理装置は、
前記電気ヒーターに電気的に接続されるとともに前記回転テーブルと一緒に回転する受電電極と、前記受電電極と接触して、前記受電電極を介して前記電気ヒーターに駆動電力を供給する給電電極と、前記給電電極と前記受電電極とを相対的に接離させる電極移動機構と、を有するスイッチ機構と、
前記給電電極に前記駆動電力を供給する給電部と、
をさらに備え、
前記スイッチ機構は、前記給電電極と前記受電電極とが接触しているときに、前記回転テーブルの限定された角度範囲内の回転が許容されるが、前記回転テーブルの連続回転ができないように構成され、かつ、前記給電電極と前記受電電極とが離間しているときに、前記回転テーブルの無限の回転が可能なように構成されており、
前記液膜形成工程および前記液膜厚さ調整工程は、前記給電電極と前記受電電極とを離間させた状態で実行され、
前記液膜厚さ調整工程の後に、前記回転テーブルの回転が停止されるとともに前記前記給電電極と前記受電電極とを接触させる工程が実行され、
前記液膜加熱工程は、前記給電電極と前記受電電極とを接触させた状態で行われ、かつ、前記限定された角度範囲内で前記基板を揺動回転させながら実行される、
請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の速度は500rpm以上であり、前記第2の速度は前記第1の速度の半分以下である、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板保持工程の後であってかつ前記液膜形成工程の前に、前記給電電極と前記受電電極とを接触させた状態で、前記回転テーブルおよびその上の前記基板を加熱する予備加熱工程をさらに備え、
前記予備加熱工程の後であってかつ前記液膜形成工程の前に、前記給電電極と前記受電電極とを離間させる工程が実行される、
請求項2、または請求項2に従属する請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記予備加熱工程において、前記基板の温度が、前記液膜加熱工程における基板の温度よりもΔT℃(但しTは10℃以下)だけ高い温度まで加熱され、その後、前記液膜形成工程が実行される、請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記液膜形成工程および前記液膜厚さ調整において前記基板に供給される薬液は、加熱温調されていない、請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記液膜加熱工程の後に、前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記薬液を除去するリンス工程と、
前記リンス工程の後に、前記基板に前記リンス液よりも表面張力が低くかつ揮発性が高い乾燥用溶剤を供給して、前記基板上のリンス液を前記乾燥用溶剤に置換する乾燥用溶剤置換工程と、
前記乾燥用溶剤置換工程の後に、前記乾燥用溶剤を前記基板から除去して前記基板を乾燥させる乾燥工程と、
をさらに備え、
前記乾燥工程は、前記基板に、中心部において温度が高く周縁部において温度が低い温度勾配が形成されるように前記回転テーブルを加熱する工程を含む、
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記乾燥工程は、前記回転テーブルを停止させた状態、あるいは前記回転テーブルを揺動回転させた状態で行われる、請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記乾燥工程は、前記給電電極と前記受電電極とを接触させた状態で行われる、請求項7が請求項2に従属する場合における請求項8に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、温調加熱された薬液を半導体ウエハ等の基板に供給することにより、基板に対して薬液洗浄処理またはウエットエッチング処理等の液処理が施される。このような液処理を行う枚葉式の基板処理装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1の装置は、ウエハを保持し回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより保持されたウエハWの下面に対して接離可能な非回転の円盤状の部材(下面移動部材)を備えている。下面移動部材の内部にはヒーターが埋設されている。下面移動部材の上面とウエハWの下面との間に0.5~3mm程度の隙間が形成され、この隙間が薬液で満たされ、薬液は非回転の下面移動部材のヒーターにより加熱される。スピンチャックにより基板を30~50rpm程度の低速で回転させることにより、隙間内の薬液の淀みを防止しつつ、温調された薬液により基板の下面に薬液処理を施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3837026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板を加熱しながら薬液処理を行うにあたり、薬液の消費量を削減しつつ面内均一性の高い処理を行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、基板を水平姿勢で保持するとともに鉛直軸線周りに回転させる回転テーブルと、前記回転テーブルと一緒に回転するように前記回転テーブルに設けられ、前記回転テーブル上に載置された前記基板を加熱する電気ヒーターと、前記回転テーブルに保持された前記基板の表面に処理液を供給する少なくとも1つの処理液ノズルと、前記処理液ノズルに前記処理液を供給する処理液供給機構と、を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、前記基板を回転テーブルに保持させる基板保持工程と、前記回転テーブルを第1の速度で回転させながら、前記基板の中心部に前記処理液としての薬液を供給し、これにより、前記基板の表面の全体が第1の厚さを有する前記薬液の液膜で覆われるようにする液膜形成工程と、前記液膜形成工程の後に、前記回転テーブルを前記第1の速度より低い第2の速度で回転させながら、前記基板の中心部に前記薬液を供給し、これにより、前記基板の表面の全体が前記第1の厚さより大きい第2の厚さを有する前記薬液の液膜で覆われるようにする液膜厚さ調整工程と、前記液膜厚さ調整工程の後に、前記回転テーブルを前記第2の速度以下の第3の速度で回転させた状態、あるいは前記回転テーブルを揺動回転させた状態、あるいは前記回転テーブルの回転を停止させた状態で、前記電気ヒーターにより前記回転テーブルを加熱し、これにより前記基板および前記基板を覆う前記薬液の液膜を加熱して前記薬液と前記基板の表面との反応を促進させる、液膜加熱工程と、を備えた基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板を加熱しながら薬液処理を行うにあたり、薬液の消費量を削減しつつ面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す概略平面図である。
図2図1の基板処理装置に含まれる処理ユニットの構成の一例を示す概略断面図である。
図3】上記の処理ユニットに設けられたホットプレートのヒーターの配置の一例を説明するための概略平面図である。
図4】上記ホットプレートの上面の構成の一例を示す概略平面図である。
図5】上記の処理ユニットに設けられた吸着プレートの下面の構成の一例を示す概略平面図である。
図6】上記吸着プレートの上面の構成の一例を示す概略平面図である。
図7】上記処理ユニットに設けられた第1電極部の構成の一例を示す概略平面図である。
図8図2に示した第1電極部及び第2電極部周辺の構造を拡大して示す概略断面図である。
図9図5及び図6に示した吸着プレートの概略断面図である。
図10図9とは別の切断面における吸着プレートの概略断面図である。
図11A-11P】薬液処理の手順を説明する図である。
図12】乾燥工程の変形例を説明する図である。
図13】スイッチ機構を用いずにホットプレートのヒーターへの給電を可能とする電力伝送機構の第1構成例の原理を説明するための概略図である。
図14図13に示した電力伝送機構の第1構成例の概略軸方向断面図である。
図15】スイッチ機構を用いずにホットプレートのヒーターへの給電を可能とする電力伝送機構の第2構成例の概略軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して基板処理装置(基板処理システム)の一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0011】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0012】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0013】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0014】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0015】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0016】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0017】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0018】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0019】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0020】
次に、処理ユニット16の一実施形態の構成について説明する。処理ユニット16は、枚葉式の液処理ユニットとして構成されている。
【0021】
図2に示すように、処理ユニット16は、回転テーブル100と、ウエハWに処理液を供給する処理液供給部700と、回転した基板から飛散した処理液を回収する液受けカップ(処理カップ)800と、を備えている。回転テーブル100は、ウエハW等の円形の基板を水平姿勢で保持して回転させることができる。回転テーブル100、処理液供給部700、液受けカップ800等の処理ユニット16の構成部品は、ハウジング1601(処理チャンバとも呼ばれる)内に収容されている。
【0022】
図2は、処理ユニット16の左半部のみを示しているが、処理ユニット16は図2の右端に示された回転軸線Axに関して概ね対称な構成を有している。回転時における回転テーブル100の動的バランスを確保するために、回転テーブル100に1つ以上のバランスウエイト178を装着してもよい。
【0023】
回転テーブル100は、吸着プレート120と、ホットプレート140と、支持プレート170と、周縁カバー体180と、中空の回転軸200と、を有している。吸着プレート120は、その上に載置されたウエハWを水平姿勢で吸着する。ホットプレート140は、吸着プレート120を支持するとともに加熱する、吸着プレート120にとってのベースプレートである。支持プレート170は、吸着プレート120及びホットプレート140を支持する。
【0024】
回転軸200は、支持プレート170から下方に延びている。回転テーブル100は、回転軸200の周囲に配設された電動駆動部(回転駆動機構)102により、鉛直方向に延びる回転軸線Ax周りに回転させられ、これにより、保持したウエハWを回転軸線Ax周りに回転させることができる。電動駆動部102(詳細は図示せず)は、電動モータで発生した動力を動力伝達機構(例えばベルト及びプーリー)を介して回転軸200に伝達して回転軸200を回転駆動するものとすることができる。電動駆動部102は、電動モータにより回転軸200を直接回転駆動するものであってもよい。
【0025】
吸着プレート120は、ウエハWの直径よりやや大きい直径(構成次第では、同じ直径であってもよい)、つまりウエハWの面積より大きいかあるいは等しい面積、を有する円板状の部材である。吸着プレート120は、ウエハWの下面(処理対象ではない面)を吸着する上面(表面)120Aと、ホットプレート140の上面に接触する下面(裏面)120Bとを有している。吸着プレート120は、熱伝導性セラミックス等の高熱伝導率材料、例えばSiCにより形成することができる。吸着プレート120を構成する材料の熱伝導率は、150W/m・k以上であることが好ましい。
【0026】
ホットプレート140は、吸着プレート120の直径と概ね等しい直径を有する円板状の部材である。ホットプレート140は、プレート本体141と、プレート本体141に設けられた電気式のヒーター(電気ヒーター)142とを有している。プレート本体141は、熱伝導性セラミックス等の高熱伝導率材料、例えばSiCにより形成されている。プレート本体141を構成する材料の熱伝導率は、例えば150W/m・k以上とすることが好ましい。
【0027】
ヒーター142は、プレート本体141の下面(裏面)に設けられた面状ヒーター、例えば、ポリイミドヒーターにより構成することができる。好ましくは、ホットプレート140には、図3に示すような複数(例えば10個)の加熱ゾーン143-1~143-10が設定される。ヒーター142は、各加熱ゾーン143-1~143-10にそれぞれ割り当てられた複数のヒーター要素142Eから構成されている。各ヒーター要素142Eは、各加熱ゾーン143-1~143-10内を蛇行して延びる導電体から形成されている。図3では、加熱ゾーン143-1内にあるヒーター要素142Eのみを示した。
【0028】
これらの複数のヒーター要素142Eに、後述する給電部300により、互いに独立して給電することができる。従って、ウエハWの異なる加熱ゾーンを異なる条件で加熱することができ、ウエハWの温度分布を制御することができる。
【0029】
図4に示すように、プレート本体141の上面(表面)には、1つ以上(図示例では2つ)のプレート用吸引口144Pと、1つ以上の(図示例では中心部の1つ)基板用吸引口144Wと、1つ以上(図示例では外側の2つ)のパージガス供給口144Gと、を有している。プレート用吸引口144Pは、吸着プレート120をホットプレート140に吸着させるための吸引力を伝達するために用いられる。基板用吸引口144Wは、ウエハWを吸着プレート120に吸着させるための吸引力を伝達するために用いられる。
【0030】
さらにプレート本体141には、後述するリフトピン211が通過する複数(図示例では3つ)のリフトピン穴145Lと、回転テーブル100の組み立て用のネジにアクセスするための複数(図示例では6つ)のサービスホール145Sが形成されている。通常運転時には、サービスホール145Sはキャップ145Cで塞がれている。
【0031】
上述したヒーター要素142Eは、上記のプレート用吸引口144P、基板用吸引口144W、パージガス供給口144G、リフトピン穴145L及びサービスホール145Sを避けて配置されている。また、回転軸200との連結を電磁石により行うことでサービスホールを無くすこともできる。
【0032】
図5に示すように、吸着プレート120の下面120Bには、プレート用の下面吸引流路溝121Pと、基板用の下面吸引流路溝121Wと、下面パージ流路溝121Gとが形成されている。吸着プレート120がホットプレート140上に適切な位置関係で載置されているときに、プレート用の下面吸引流路溝121Pの少なくとも一部がプレート用吸引口144Pに連通する。同様に、基板用の下面吸引流路溝121Wの少なくとも一部が基板用吸引口144Wに連通し、下面パージ流路溝121Gの少なくとも一部がパージガス供給口144Gに連通する。プレート用の下面吸引流路溝121Pと、基板用の下面吸引流路溝122Wと、下面パージ流路溝121Gとは互いに分離されている(連通していない)。
【0033】
図10には、ホットプレート140の吸引口144P(あるいは144W,144G)と吸着プレート120の流路溝121P(あるいは121W,121G)とが重なりあい、互いに連通している状態が概略的に示されている。
【0034】
図6及び図9に示すように、吸着プレート120の上面120Aには、複数の(図示例では5個の)太い環状の仕切壁124が形成されている。太い仕切壁124は、上面120Aに、互いに分離した複数の凹領域125W、125G(外側の4つの円環状領域と最も内側の円形領域)を画定する。
【0035】
基板用の下面吸引流路溝121Wの複数の箇所に、吸着プレート120を厚さ方向に貫通する複数の貫通穴(129G)が形成されており、各貫通穴は、基板用の下面吸引流路溝121Wと複数(図示例では4つ)の凹領域125Wのいずれか1つとを連通させている。
【0036】
また、下面パージ流路溝121Gの複数の箇所に、吸着プレート120を厚さ方向に貫通する貫通穴(129G)が形成されており、各貫通穴は、下面パージ流路溝121Gと最も外側の凹領域125Gとを連通させている。最も外側の凹領域125Gは、単一の円環状の上面パージ流路溝となる。
【0037】
内側の4つの凹領域125W内の各々には、複数の細い概ね環状の分離壁127が同心円状に設けられている。細い分離壁127は、各凹領域125W内に、当該凹領域内を蛇行して延びる少なくとも1つの上面吸引流路溝を形成する。つまり、細い分離壁127は、各凹領域125W内に吸引力を均等に分散させる。
【0038】
図2に示すように、回転軸線Axの付近には、吸引/パージ部150が設けられている。吸引/パージ部150は、中空の回転軸200の内部に設けられたロータリージョイント151を有する。ロータリージョイント151の上ピース151Aには、ホットプレート140のプレート用吸引口144P及び基板用吸引口144Wに連通する吸引配管152Wと、パージガス供給口144Gに連通するパージガス供給配管152Gが接続されている。
【0039】
図示はしていないが、吸引配管152Wを分岐させて、分岐吸引配管を、プレート用吸引口144P及び基板用吸引口144Wの真下においてホットプレート140のプレート本体141に接続してもよい。この場合、プレート本体141に、プレート本体141を貫通して上下方向に延びる貫通穴を形成し、各貫通口に分岐吸引配管を接続してもよい。同様に、パージガス供給配管152Gを分岐させて、分岐パージガス供給配管を、パージガス供給口144Gの真下においてホットプレート140のプレート本体141に接続してもよい。この場合、プレート本体141に、プレート本体141を貫通して上下方向に延びる貫通穴を形成し、各貫通穴にパージガス供給配管を接続してもよい。上述した分岐吸引配管または分岐パージガス配管が、図10に概略的に示されている(参照符号152WB、152GBが付けられている)
【0040】
上記に代えて、吸引配管152W及びパージガス供給配管152Gをホットプレート140のプレート本体141の中央部に接続してもよい。この場合、プレート本体141の内部に、吸引配管152Wとプレート用吸引口144P及び基板用吸引口144Wとをそれぞれ連通させる流路と、パージガス供給配管152Gとパージガス供給口144Gとを連通させる流路と、が設けられる。
【0041】
ロータリージョイント151の下ピース151Bには、吸引配管152Wに連通する吸引配管153Wと、パージガス供給配管151Gに連通するパージガス供給配管153Gが接続されている。ロータリージョイント151は、吸引配管152W,153W同士の連通、並びにパージガス供給配管152G,153G同士の連通を維持したまま、上ピース151A及び下ピース151Bが相対回転可能であるように構成されている。このような機能を有するロータリージョイント151それ自体は、公知である。
【0042】
吸引配管153Wは、真空ポンプ等の吸引装置154に接続されている。パージガス供給配管153Gは、パージガス供給装置155に接続されている。吸引配管153Wは、パージガス供給装置155にも接続されている。また、吸引配管153Wの接続先を吸引装置154とパージガス供給装置155との間で切り替える切替装置156(例えば三方弁)が設けられている。
【0043】
ホットプレート140には、ホットプレート140のプレート本体141の温度を検出するための複数の温度センサ146が埋設されている。温度センサ146は、例えば、10個の加熱ゾーン143-1~143-10に一つずつ設けることができる。温度センサ146の検出値と目標値(目標温度)の偏差に基づいて、例えば給電部300に設けられた制御機能により、各加熱ゾーン(143-1~143-10)のヒーター要素142eへの供給電力が制御され、これにより、各各加熱ゾーンの温度が目標値に維持される。また、ホットプレート140のヒーター142に近接した位置に、ヒーター142の過熱を検出するための少なくとも1つのサーモスイッチ147が設けられている。
【0044】
ホットプレート140と支持プレート170との間の空間Sには、上記温度センサ146及びサーモスイッチ147に加えて、温度センサ146及びサーモスイッチ147の検出信号を送信するための制御信号配線(第1導電ライン)148A,148Bと、ヒーター142の各ヒーター要素142Eに給電するための給電配線(第1導電ライン)149と、が設けられている。
【0045】
図2に示すように、ロータリージョイント151の周囲には、スイッチ機構160が設けられている。スイッチ機構160は、回転軸線Axの方向に関して固定された第1電極部161Aと、回転軸線Axの方向に可動の第2電極部161Bと、第2電極部161Bを回転軸線Axの方向に移動(昇降)させる電極移動機構162(昇降機構)と、を有している。なお、第1電極部161A及び第2電極部161Bが回転軸線Axの方向に相対的に移動可能であればよい。つまり、電極移動機構(図示せず)が第1電極部161Aを回転軸線Axの方向に移動させ、第2電極部161Bが回転軸線Axの方向に関して固定されていてもよい。
【0046】
図7に示すように、第1電極部161Aは、第1電極担持体163Aと、第1電極担持体163Aに担持された複数の第1電極164Aとを有している。複数の第1電極164Aには、制御信号配線148A,148Bに接続された制御信号通信用の第1電極164AC(図7では小さな「○」で示す。)と、給電配線149に接続されたヒーター給電用の第1電極164AP(図7では大きな「○」で示す。)と、が含まれる。
【0047】
第1電極担持体163Aは、回転軸線Axの方向から見て概ね円形の形状を有する、全体として円板状の部材である。第1電極担持体163Aの中心部には、ロータリージョイント151の上ピース151Aが挿入される円形の穴167が形成されている。ロータリージョイント151の上ピース151Aは、第1電極担持体163Aに固定されていてもよい。第1電極担持体163Aの周縁部は、ネジ穴171を用いて支持プレート170にねじ止めすることができる。
【0048】
図2に概略的に示されるように、第2電極部161Bは、第2電極担持体163Bと、第2電極担持体163Bに担持された複数の第2電極164Bとを有している。第2電極担持体163Bは、図7に示した第1電極担持体163Aと概ね同じ直径の全体として円板状の部材である。第2電極担持体163Bの中心部には、ロータリージョイント151の下ピース151Bが通過しうるサイズの円形の穴が形成されている。
【0049】
第1電極164Aに対して昇降することにより第1電極164Aに対して接離する第2電極164Bは、第1電極164Aと同じ平面的配置を有している。なお、以下、ヒーター給電用の第1電極164AP(受電電極)と接触する第2電極164B(給電電極)を「第2電極164BP」とも呼ぶ。また、制御信号通信用の第1電極164ACと接触する第2電極164Bを「第2電極164BC」とも呼ぶ。第2電極164BPは、給電装置(給電部)300の電力出力端子に接続されている。第2電極164BCは給電部300の制御用入出力端子に接続されている。
【0050】
図7に示すように、第1電極担持体163Aの中央領域にはヒーター給電用の第1電極164APが設けられ、中央領域の外側の外側領域には制御信号通信用の第1電極164ACが設けられている。複数の第1電極164APを、第1電極164Aのうちの第1電極群とも呼ぶ。複数の第1電極164ACを、第1電極164Aのうちの第2電極群とも呼ぶ。
【0051】
なお、第2電極164B(164BP,164BC)は対を成す第1電極164A(164AP,164AC)に適合した位置(水平方向位置、高さ方向位置)に配置されることは自明であり、第2電極164Bの配置についての説明は省略する。
【0052】
各第2電極164Bと給電部300の電力出力端子及び制御用入出力端子とを接続する導電路(第2導電ライン)168A,168B,169(図2を参照)は、少なくとも部分的にフレキシブルな電線により形成されている。フレキシブルな電線により、第2電極164Bと給電部300との導通が維持されたまま、第2電極部161B全体が回転軸線Ax周りに中立位置から正転方向及び逆転方向にそれぞれ予め定められた角度範囲(言い換えれば、限定された角度範囲)だけ回転することが可能となる。この角度範囲は例えば180度であるが、この角度に限定されるものではない。このことは、第1電極164Aと第2電極164Bとの接続を維持したまま、回転テーブル100を概ね±180度回転させることができることを意味する。
【0053】
対を成す第1電極164A及び第2電極164Bの一方をポゴピンとして構成してもよい。図2では、第2電極164Bの全てがポゴピンとして形成されている。なお、「ポゴピン」は、バネが内蔵された伸縮可能な棒状電極を意味する用語として広く用いられている。電極として、ポゴピンに代えて、コンセント、マグネット電極、誘導電極等を用いることもできる。
【0054】
対を成す第1電極164A及び第2電極164B同士が適切に接触しているときに第1電極担持体163Aと第2電極担持体163Bとを相対回転不能にロックするロック機構165を設けることが好ましい。ロック機構165は、例えば図2及び図8に示すように、第1電極担持体163Aに設けられた孔165Aと、第2電極担持体に設けられるとともに孔に嵌合するピン165Bとから構成することができる。
【0055】
対を成す第1電極164A及び第2電極164B同士が適切に接触していることを検出するセンサ172(図2に概略的に示した)を設けることも好ましい。このようなセンサとして、第1電極担持体163Aと第2電極担持体163Bとの角度位置関係が適切な状態にあることを検出する角度位置センサ(図示せず)を設けてもよい。また、このようなセンサとして、第1電極担持体163Aと第2電極担持体163Bとの回転軸線Ax方向の距離が適切な状態にあることを検出する距離センサ(図示せず)を設けてもよい。さらには上記ロック機構165の孔165Aにピン165Bが適切に嵌合していることを検出する接触式のセンサ(図8参照)を設けてもよい。
【0056】
図8に示す接触式のセンサを実現するため、孔165A及びピン165Bが2つずつ設けられる。好ましくは、ピン165Bは導電性材料から形成され、第1電極担持体163Aは絶縁性材料から形成される。第1電極担持体163Aには、2つの電極175Aと、これら2つの電極175Aを電気的に接続する導電部材175Bからなる導通部材が設けられている。2つの電極175Aは、2つの孔165Aにそれぞれ対応する位置に設けられている。2つのピン165Bは、導電部材175Cを介して導通センサ175Dに接続されている。各ピン165Bが対応する孔165Aに適切に挿入されると、ピン165Bの先端が電極175Aに接触し、このことが導通センサ175Dにより検出される。
【0057】
導通センサ175Dにより孔165A及びピン165Bの適切な嵌合が確認されているときのみに、電気ヒーター142への給電を可能とする制御機能を給電部300に設けることが好ましい。そうすることにより、例えば、ヒーター給電用の第1電極164AP及び第2電極164BPとの間に放電が生じ、電極または電気回路に損傷が生じることを防止することができる。
【0058】
図2において概略的に示された電極移動機構162は、図8に示すように、第2電極担持体163Bを押し上げるプッシュロッド162Aと、プッシュロッド162Aを昇降させる昇降機構162B(エアシリンダ、ボールねじ等)を備えて構成することができる。少なくとも一つの永久磁石173Aを第1電極担持体163Aに設けるとともに、少なくとも一つの電磁石173Bを第2電極担持体163Bに設けることができる。永久磁石173A及び電磁石173Bは上記ロック機構165の一部を構成する。これにより、必要に応じて、第1電極部161Aと第2電極部161Bとを上下方向に相対移動不能に電磁気的な吸引力により結合すること、並びに、第1電極部161Aと第2電極部161Bとを電磁気的な反発力により分離することができる。好ましくは、複数個の永久磁石173A及び永久磁石の数と同数の電磁石173Bが設けられ、回転軸線Axを中心とする円周方向に等間隔に配置される。
【0059】
第1電極部161Aと第2電極部161Bとの結合及び切り離しが回転テーブル100の同じ角度位置で行われるのならば、第2電極部161Bが回転軸線Ax周りに回転可能に支持されていなくてもよい。すなわち、第1電極部161Aと第2電極部161Bとが分離されたときに、第2電極部161Bを支持する部材(例えば上記のプッシュロッド162A、あるいは別の支持テーブル)があればよい。第1電極部161Aと第2電極部161Bとが例えば電磁気力により結合しているときには、第2電極部161Bは第2電極部161Bを支持する部材(例えばプッシュロッド162A、あるいは別の支持テーブル)から離れていてもよい。
【0060】
回転テーブル100の電動駆動部102は、回転テーブル100を任意の回転角度位置で停止させる位置決め機能を有している。位置決め機能は、回転テーブル100(または回転テーブル100により回転させられる部材)に付設されたロータリーエンコーダーの検出値に基づいて電動駆動部102のモータを回転させることにより実現することができる。回転テーブル100を予め定められた回転角度位置に停止させた状態で、第2電極部161Bを電極移動機構162により上昇させることにより、第1及び第2電極部161A,161Bの対応する電極同士を適切に接触させることができる。第2電極部161Bを第1電極部161Aから分離するときも、回転テーブル100を上記の予め定められた回転角度位置に停止させた状態で分離を行うことが好ましい。
【0061】
上述したように、吸着プレート120と支持プレート170との間の空間S内及び空間Sに面する位置に、複数の電装部品(ヒーター、配線、センサ類)が配置されている。周縁カバー体180は、ウエハWに供給される処理液、特に腐食性の薬液が空間S内に侵入することを防止し、電装部品を保護する。空間Sに、パージガス供給配管152Gから分岐させた配管(図示せず)を介してパージガス(Nガス)を供給してもよい。そうすることにより、空間Sの外部から空間S内に薬液由来の腐食性のガスが侵入することが防止され、空間S内を非腐食性の雰囲気に維持することができる。
【0062】
また、特に、第1電極部の第1電極と第2電極部の第2電極とが接触する第1電極担持体163Aと第2電極担持体163Bとの間の空間SEに、不活性ガス(Nガス)を供給する不活性ガス供給機構を設けることが好ましい。この不活性ガス供給機構は、パージガス供給装置155と、パージガス供給装置155から空間SEに不活性ガスとしてのNガスを供給する不活性ガス供給配管176とから構成することができる。つまり、空間S内にパージガスとしてのNガスを供給するパージガス供給装置155を、空間SEに不活性ガスとしてのNガスを供給する不活性ガス供給装置として兼用する。処理ユニット16の運転中は、常時、空間SEに不活性ガスを供給しておくことが好ましい。これにより電極の表面が良好な状態に維持されるため、処理ユニット16の動作信頼性を高めることができる。
【0063】
空間SEに不活性ガス(Nガス)を供給するために、パージガス供給装置155から独立した専用の不活性ガス供給源を用いてもよい。また、空間S内にパージガスとしてのNガスを供給することにより空間SEにNガスが満たされるのであれば、空間SE専用の不活性ガス供給機構を設けなくてもよい。
【0064】
図2に示すように、周縁カバー体180は、上部181、側周部182及び下部183を有する。上部181は、吸着プレート120の上方に張り出し、吸着プレート120に接続されている。周縁カバー体180の下部183は、支持プレート170に連結されている。
【0065】
周縁カバー体180の上部181の内周縁は、吸着プレート120の外周縁よりも半径方向内側に位置している。上部181は、吸着プレート120の上面に接する円環状の下面184と、下面184の内周縁から立ち上がる傾斜した円環状の内周面185と、内周面185の外周縁から半径方向外側に概ね水平に延びる円環状の外周面186とを有している。内周面185は吸着プレート120の中心部に近づくに従って低くなるように傾斜している。
【0066】
吸着プレート120の上面120Aと周縁カバー体180の上部181の下面184との間には、液の浸入を防止するためにシールが施されていることが好ましい。シールは、上面120Aと下面184との間に配置されたOリング192(図9を参照)とすることができる。
【0067】
図5に示すように、プレート用の下面吸引流路溝121Pの一部が、吸着プレート120の最外周部分において円周方向に延びている。また、図6に示すように、吸着プレート120の上面120Aの最外周部分に、凹溝193が円周方向に連続的に延びている。図9に示すように、最外周の下面吸引流路溝121Pと凹溝193とは、吸着プレート120を厚さ方向に貫通する円周方向に間隔を空けて設けられた複数の貫通穴129Pを介して連通している。凹溝193の上には、周縁カバー体180の上部181の下面184が載置される。従って、プレート用の下面吸引流路溝121Pに作用する負圧により、周縁カバー体180の上部181の下面184は、吸着プレート120の上面120Aに吸着される。この吸着により、Oリング192が潰れるため、確実なシールが実現される。
【0068】
外周面186すなわち周縁カバー体180の頂部の高さは、吸着プレート120に保持されたウエハWの上面の高さより高い。従って、ウエハWが吸着プレート120に保持された状態で、ウエハWの上面に処理液を供給すると、ウエハWの上面が液面LS(図2参照)よりも下に位置するようにウエハWを浸漬しうる液溜まりを形成することができる。すなわち、周縁カバー体180の上部181は、吸着プレート120に保持されたウエハWの周囲を囲む堰を形成し、周縁カバー体180の上部181と吸着プレート120により処理液を貯留しうる凹所が形成される。この構成を利用して、ウエハWの浸漬処理を行うことも可能である。
【0069】
周縁カバー体180の上部181の内周面185の傾斜は、回転テーブル100を高速回転させたときに、上記の槽内にある処理液を、外方にスムースに飛散させることを容易とする。つまりこの傾斜があることにより、回転テーブル100を高速回転させたときに、周縁カバー体180の上部181の内周面に液が留まることを防止することができる。
【0070】
なお、本願明細書に開示された薬液処理においては(詳細後述)、ウエハWを処理液の浴に浸漬させるのではなく、ウエハWの表面にパドルを形成する液盛り処理を行っている。ウエハWの浸漬処理を行わないのであれば、周縁カバー体180の上部181の高さは図示例よりも低くてもよいし、内周面185の傾斜も図示例よりも緩やかでもよい。
【0071】
周縁カバー体180の半径方向外側には、周縁カバー体180と一緒に回転する回転カップ188(回転液受け部材)が設けられている。回転カップ188は、円周方向に間隔を空けて設けられた複数の連結部材189を介して、回転テーブル100の構成部品、図示例では周縁カバー体180に連結されている。回転カップ188の上端は、ウエハWから飛散する処理液を受け止め得る高さに位置している。周縁カバー体180の側周部182の外周面と回転カップ188の内周面との間に、ウエハWから飛散する処理液が流下する通路190が形成されている。
【0072】
液受けカップ800は、回転テーブル100の周囲を囲み、ウエハWから飛散した処理液を回収する。図示された実施形態においては、液受けカップ800は、固定外側カップ要素801と、固定内側カップ要素804と、昇降可能な第1可動カップ要素802及び第2可動カップ要素803と、固定内側カップ要素804とを有している。互いに隣接する2つのカップ要素の間(801と802の間、802と803の間、803と804の間)にそれぞれ第1排出通路806、第2排出通路807、第3排出通路808が形成される。第1及び第2可動カップ要素802、803の位置を変更することにより、3つの排出通路806、807,808のうちのいずれか選択された1つに、周縁カバー体180と回転カップ188との間の通路190から流出する処理液を導くことができる。第1排出通路806、第2排出通路807及び第3排出通路808は、それぞれ、半導体製造工場に設置された酸系排液通路、アルカリ系排液通路及び有機系排液通路(いずれも図示せず)のいずれか一つに接続される。第1排出通路806、第2排出通路807及び第3排出通路808内には、図示しない気液分離構造が設けられている。第1排出通路806、第2排出通路807及び第3排出通路808は、エゼクタ等の排気装置(図示せず)を介して工場排気系に接続され、吸引されている。このような液受けカップ800は、本件出願人による特許出願に関連する公開公報、特開2012-129462号、特開2014-123713号等により公知であり、詳細についてはこれらの公開公報を参照されたい。
【0073】
回転軸線Axの方向に関してホットプレート140の3つのリフトピン穴145Lと整列するように、吸着プレート120及び支持プレート170にもそれぞれ3つのリフトピン穴128L、171Lが形成されている。
【0074】
回転テーブル100には、リフトピン穴145L,128L,171Lを貫通して、複数(図示例では3つ)のリフトピン211が設けられている。各リフトピン211は、リフトピン211の上端が吸着プレート120の上面120Aから上方に突出する受け渡し位置(上昇位置)と、リフトピン211の上端が吸着プレート120の上面120Aの下方に位置する処理位置(下降位置)との間で、移動可能である。
【0075】
各リフトピン211の下方にはプッシュロッド212が設けられている。プッシュロッド212は、昇降機構213例えばエアシリンダにより昇降させることができる。プッシュロッド212によりリフトピン211の下端を押し上げることにより、リフトピン211を受け渡し位置に上昇させることができる。複数のプッシュロッド212を回転軸線Axを中心とするリング状支持体(図示せず)に設け、共通の昇降機構によりリング状支持体を昇降させることにより複数のプッシュロッド212を昇降させてもよい。
【0076】
受け渡し位置にあるリフトピン211の上に載っているウエハWは、固定外側カップ要素801の上端809よりも高い高さ位置に位置し、処理ユニット16の内部に侵入してきた基板搬送装置17のアーム(図1参照)との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0077】
リフトピン211がプッシュロッド212から離れると、リターンスプリング214の弾性力により、リフトピン211は処理位置に下降し、当該処理位置に保持される。図1において、符号215はリフトピン211の昇降をガイドするガイド部材、符号216はリターンスプリング214を受けるスプリング受けである。なお、固定内側カップ要素804には、回転軸線Ax周りのスプリング受け216の回転を可能とするための円環状の凹所810が形成されている。
【0078】
処理液供給部700は、複数のノズルを備える。複数のノズルには、薬液ノズル701、リンスノズル702、乾燥促進液ノズル703が含まれる。薬液ノズル701に、薬液供給源701Aから、薬液供給ライン(配管)701Cに介設された開閉弁、流量制御弁等の流れ制御機器(図示せず)を含む薬液供給機構701Bを介して薬液が供給される。リンス液供給源702Aから、リンス液供給ライン(配管)702Cに介設された開閉弁、流量制御弁等の流れ制御機器(図示せず)を含むリンス液供給機構702Bを介してリンス液が供給される。乾燥促進液供給源703Aから、乾燥促進液供給ライン(配管)703Cに介設された開閉弁、流量制御弁等の流れ制御機器(図示せず)を含む乾燥促進液供給機構703Bを介して乾燥促進液、例えばIPA(イソプロピルアルコール)が供給される。
【0079】
薬液供給ライン701Cに、薬液を温調するための温調機構として、ヒーター701Dを設けることができる。さらに、薬液供給ライン701Cを構成する配管に、薬液を温調するためのテープヒーター(図示せず)を設けてもよい。リンス液供給ライン702Cにもこのようなヒーター類を設けてもよい。
【0080】
薬液ノズル701、リンスノズル702及び乾燥促進液ノズル703はノズルアーム704の先端により支持されている。ノズルアーム704の基端は、ノズルアーム704を昇降及び旋回させるノズルアーム駆動機構705により支持されている。ノズルアーム駆動機構705により、薬液ノズル701、リンスノズル702及び乾燥促進液ノズル703をウエハWの上方の任意の半径方向位置(ウエハWの半径方向に関する位置)に位置させることが可能である。
【0081】
ハウジング1601の天井部に、回転テーブル100上にウエハWが存在しているか否かを検出するウエハセンサ860と、ウエハWの温度(あるいはウエハW上にある処理液の温度)を検出する1つまたは複数の赤外線温度計870(1つだけ図示した)が設けられている。複数の赤外線温度計870が設けられる場合、各赤外線温度計870は、各加熱ゾーン143-1~143-10にそれぞれ対応するウエハWの領域の温度を検出することが好ましい。
【0082】
次に、図11A図11Pを参照して、ウエハWに対して薬液処理を行う場合を例にとって、基板処理装置の動作について説明する。薬液は、例えばウエットエッチング処理用の薬液、あるいは洗浄処理用の薬液とすることができる。なお、図11A図11Pにおいて、FFUから下方に延びる矢印の数はFFUから処理チャンバ1601内に供給されるガスの流量に概ね対応している。参照符号CAは清浄空気、参照符号DAはドライエアを意味している。液受けカップ800からの排気流量は参照符号EXHが付けられた矢印の数に概ね対応している。また、図11A図11PにおいてFFUの左側に記載されたS1~S16は、図がステップ1~ステップ16に対応していることを意味している。
【0083】
以下の説明において、記載の簡略化のため、下記の通り処理パラメータを表示することとする。
項目「プレート加熱スイッチ」はスイッチ機構160の状態を示している。「ON」は、スイッチ機構160の第2電極部161Bが上昇して第1電極部161Aと電気的に接触し、ホットプレート140に給電されている状態を表している。「OFF」は、スイッチ機構160の第2電極部161Bが下降して第1電極部161Aから離れている状態(開状態)を表している。
項目「プレート温度」は、ウエハWが載置される回転テーブル100の吸着プレート120の温度を表している。吸着プレート120の温度はホットプレート140により加熱されることにより上昇する。ウエハWが吸着プレート120に吸着されて一体化されてからある程度の時間が経過した後においては、ウエハWの温度は吸着プレート120の温度と概ね等しいと考えてよい。
項目「チャンバ給気流量」は、FFU(ファンフィルタユニット(図2も参照))からのハウジング(処理チャンバ)1610内への給気の流量を表している。
項目「カップ排気流量」は、液受けカップ800からの排気の流量を表している。
項目「ウエハ回転」は、回転テーブル100により回転させられるウエハWの回転数を表している。同方向への連続回転の場合は単に回転数を記し、揺動回転(交互に正逆転)する場合にはその旨を記す。
項目「薬液ノズル」は、薬液ノズル701からの薬液の吐出の有無、および薬液ノズル701の位置(吐出時のみ記載する)を表している。
項目「リンスノズル」は、リンスノズル702からのリンス液(ここではDIW)の吐出の有無、およびリンスノズル702の位置(吐出時のみ記載する)を表している。
項目「IPAノズル」は、乾燥促進液ノズル703から乾燥促進液としてのIPAの吐出の有無、および乾燥促進液ノズル703の位置(吐出時のみ記載する)を表している。
【0084】
[ステップ1(ウエハ保持工程)]
常温(例えば約24℃)のウエハWを保持した基板搬送装置17のアーム(図1を参照)が、処理ユニット16内に侵入し、常温(例えば約24℃)の吸着プレート120の真上に位置する。また、リフトピン211が受け渡し位置に位置する。この状態で、基板搬送装置17のアームが下降し、これによりウエハWがリフトピン211の上端の上に載り、ウエハWがアームから離れる。次いで、基板搬送装置17のアームが処理ユニット16から退出する。次いで、吸引装置154が作動し、吸着プレート120がホットプレート140に吸着され、また、吸着プレート120の表面に吸引力が作用し始める。この状態で、リフトピン211が処理位置まで下降し、その過程で、ウエハWが吸着プレート120の上面120Aに載り、ウエハWは直ちに吸着プレート120に吸着される。
【0085】
その後、ウエハセンサ860によりウエハWが吸着プレート120に適切に吸着されているかの検査が行われる。ウエハWが吸着プレート120に吸着されることにより、ホットプレート140から吸着プレート120を介してウエハWに熱が伝わる。このため、ウエハWを効率良く加熱することができ、また、加熱ゾーンごとに精確に温度制御を行うことができる。
【0086】
パージガス供給装置155から吸着プレート120の上面の最も外側の凹領域125Gに常時パージガス(例えばNガス)が供給されている。これにより、ウエハWの下面の周縁部と吸着プレート120の周縁部の接触面に隙間があっても、その隙間からウエハWの周縁部と吸着プレート120の周縁部との間に処理液が浸入することはない。
【0087】
ステップ1のプロセス条件は下記の通りである。以下、他のステップの説明において特段の記載が無い場合でも、処理チャンバ1610内を微陽圧に維持するため、チャンバ給気流量をカップ排気流量よりやや大きめにしてもよい。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:24℃(23~27℃)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0088】
[ステップ2(予備加熱工程)]
次に、スイッチ機構160をONにし、ホットプレート140に給電して発熱させ、これにより吸着プレート120およびこれに吸着されたウエハWを65℃に加熱する(図11B参照)。ここで65℃というのは、後述する薬液処理温度(ここでは60℃)よりやや高い温度(60℃+α℃)である。
【0089】
ステップ2の終了後、ステップ5の開始までホットプレート140に給電されないため、吸着プレート120およびウエハWの温度は放熱により低下する。ステップ2ではこの温度低下を補償する。ステップ5の開始時点で、吸着プレート120およびウエハWの温度が薬液処理温度と概ね同じ温度となるようにα℃を定めればよい。ステップ5の開始時点でのホットプレート140(あるいはウエハW)の制御目標温度は薬液処理温度(ここでは60℃)であるから、制御目標温度と実際温度との差が殆ど無い状態で温度制御が開始されるので、ハンチング、オーバーシュート等は殆ど発生しない。このため、薬液によるエッチング量それ自体を目標値に近づけることができ、また、エッチング量の面内均一性も向上する。
【0090】
α℃は、0~+10℃以下の範囲(0~+5℃以下の範囲でもよい)の適当な温度に定めることができる。α℃を決定するにあたり、吸着プレート120およびこれに熱的に結合された部材の熱容量などが考慮される。ステップ2は、例えば35秒程度の間実施される。35秒というのは、例えば吸着プレート120およびウエハWの温度が常温から薬液処理温度である65℃まで上昇するのに必要な時間に概ね相当する。
【0091】
昇温期間(例えば35秒程度)の間に、薬液ノズル701からダミーディスペンスポート(図11Bのみに参照符号710を付して概略的に示した)に向けて薬液のダミーディスペンスが行われる。薬液ノズル701に接続された薬液供給ライン701Cに滞留している薬液の温度は放熱により低くなっている。薬液ノズル701からウエハWに薬液を吐出する直前にこの低温の薬液をダミーディスペンスにより薬液ラインから排出しておくことにより、吐出開始直後から所望の温度の薬液がウエハWに供給されるようになる。ダミーディスペンスは、薬液ノズル701から吐出される薬液の温度Tが、常温より高い予め定められた温度Tpに達するまで行われる。
【0092】
この温度Tpは、ステップ5における薬液処理温度Tcと概ね等しい温度とすることができる。これによりホットプレート140の負担(加熱に要する電力)が低減される。しかしながら、温度Tpが少なくとも常温よりも高ければホットプレート140の負担はいくらかは低減されるため、温度Tpを常温よりも高く薬液処理温度Tcより低い任意の温度としてもよい。
【0093】
なお、ダミーディスペンスポート710は、当該技術分野において周知の通り、液吐出ノズル(ここでは薬液ノズル701)のホームポジション(図11Bに示した液受けカップ800の外側の待機位置)に対応する位置に設けられている。ダミーディスペンスポート710は、液吐出ノズルから吐出した薬液を受けるように構成されている。ダミーディスペンスポート710で受けた液は、再利用のために回収されるか、あるいは工場廃液系に廃棄される。薬液ノズル701からダミーディスペンスポートに吐出された薬液の清浄度は高いため、回収して再利用してもよい。
【0094】
ステップ2のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:ON
プレート温度:65℃
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:ダミーディスペンス位置で吐出
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0095】
[ステップ3]
次に、図11Cに示すように、スイッチ機構160をOFFにする。これにより、吸着プレート120およびウエハWの温度が徐々に低下してゆく。また、薬液ノズル701をウエハWの中心部の真上に移動させる。ステップ3のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し(ウエハWの中心部の真上に移動)
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0096】
[ステップ4(液膜形成工程および膜厚調整工程)]
次に、図11Dに示すように、ウエハWを高速で(例えば500rpm以上、具体的には例えば1000rpm程度)回転させた状態で、薬液ノズル701からウエハWの中心に例えば60℃程度の温度の薬液を供給し、その後に、薬液ノズル701からウエハWの中心に薬液を供給し続けたまま、ウエハWの回転速度を10rpm程度の低速に低下させる。
【0097】
高速で回転しているウエハWの中心部に供給された薬液は、遠心力により、瞬時に(例えば1秒未満の時間で)ウエハWの表面全体に広がる。これによりウエハWの表面全体が薄い薬液の液膜により覆われる。この段階は、後述の薬液パドル形成段階に先立ち実行されるプリウエット段階であると見なすことできる。薬液を瞬時にウエハWの表面全体に広げることにより、ウエハWの表面と薬液との接触時間の面内均一性が高まり、その結果として薬液処理の面内均一性が高くなる。
【0098】
なお、ウエハWを回転させないかあるいは低速回転させた状態で比較的長時間(例えば5秒程度)をかけてウエハWの表面に薬液を広げた場合、ウエハWの表面にパーティクル等の異物が付着しやすくなる。一旦付着した異物はその後のリンス処理等によっても除去し難い。これに対して上記のように薬液を瞬時にウエハWの表面全体に広げることにより、このような問題は発生しない。
【0099】
高速回転(例えば500rpm以上)するウエハWの表面全体に広げた後にウエハWの中心に薬液を供給し続けたままでウエハWの回転速度を低下させる(例えば、高速回転の回転速度の1/2以下、具体的には例えば10rpm程度)ことにより、所望の膜厚の薬液の液膜(「薬液のパドル」とも呼ばれる)をウエハWの表面に形成することができる。
【0100】
薬液の液膜(参照符号「CHM」が付けられている)は、薬液の蒸発により処理結果に問題が生じない程度の厚さがあればよい。このステップ4において、薬液ノズル701からウエハWに供給される薬液の総量は、例えば100mlあるいはそれ以下である。また、このステップ4において、薬液ノズル701からウエハWに供給される薬液の温度は、ウエハW上に存在する薬液の温度が概ね60℃に維持できるような温度であれば、例えば、常温以上かつ薬液処理温度Tc以下の適当な温度とすることができる。
【0101】
ステップ4のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大(0.5m/min)
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:1000rpm→10rpm
薬液ノズル:ウエハWの中心部の真上から薬液を吐出
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0102】
ウエハWに供給される薬液は、ステップ4で供給されるものが全てである。薬液のパドルを形成するステップ4で供給される薬液の総量は、温調された薬液を回転するウエハWに供給し続けることにより行われる従来の薬液処理工程で使用される薬液の総量の1/5~1/10程度である。つまり、本実施形態の薬液処理工程では、従来方法と比較して大幅な省薬液を達成することができる。
【0103】
ステップ4においては、ウエハWの回転速度を一度だけ(1000rpm→10rpm)低下させることに限定されるものではなく、二段階以上で(例えば1000rpm→100rpm→10rpm)低下させてもよい。
【0104】
[ステップ5(液膜加熱工程)]
次に、ウエハWの回転を停止し、スイッチ機構160をONにし、ホットプレート140に給電して発熱させ、これにより、吸着プレート120、これに吸着されたウエハWおよびウエハW上の薬液の温度を前述した薬液処理温度Tcである60℃に維持する。また、図11Eに示すように、回転テーブル100(吸着プレート120およびウエハW)を揺動回転させて、ウエハW上に液膜を形成している薬液を攪拌し、薬液とウエハW表面の反応を促進するとともに反応の均一性を向上させる。揺動回転は、例えば、45度の正回転と45度の逆回転とを交互に繰り返すものとすることができる。揺動角度は、薬液の物性(例えば粘度)に応じて変更することができる。処理の均一性の観点から揺動回転は行った方が好ましいが、揺動回転を行わずに単に回転を停止させてもよい。
【0105】
なおこのとき、薬液ノズル701はホームポジションに戻してもよい。但し、図2に示すように薬液ノズル701とリンスノズル702とが同じノズルアーム704の先端に配置されている場合には、薬液ノズル701は(すなわちリンスノズル702も)ウエハWの中心部の真上に位置し続けてもよい。この点については、リンスノズル702と乾燥促進液ノズル703との関係においても同じである。
【0106】
ステップ5のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:ON
プレート温度:60℃
チャンバ給気流量:0.1m/min
カップ排気流量:0.1m/min
ウエハ回転数:揺動回転
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0107】
ステップ5の実行中においては、チャンバ給気流量およびカップ排気流量を例えば0.1m/min程度まで低下させ、処理チャンバ1610内の気流を弱める。これにより、処理チャンバ1610内における薬液由来の蒸気の分圧(例えば、水蒸気の分圧すなわち湿度)を上昇させ、液膜を形成している薬液の蒸発ないし揮発を抑制する。これにより、ウエハW上における液膜の部分的消失、あるいは許容できない薬液の濃度変化を防止することができる。別の言い方をすれば、ステップ4において形成される薬液の液膜(パドル)の厚さをより薄くすることが可能となる。
【0108】
また、液受けカップ800に流入する清浄空気CAの流速はウエハWの周縁部近傍で比較的高い。このため、ウエハWの周縁部近傍は冷えやすく、ウエハWの面内での薬液の温度分布が不均一になる傾向にある。この傾向は、上述したようにチャンバ給気流量およびカップ排気流量を低下させることによって緩和され、ウエハW面内における薬液の反応量分布を均一化することができる。
【0109】
実際の装置において、揺動回転による薬液攪拌により温度幅(ウエハW面内の最高温度-最低温度)が改善することが確認されている。具体的な例としては、チャンバ給気流量およびカップ排気流量を0.4m/minとしたときには、揺動回転による薬液攪拌無しの場合に2.043℃、揺動回転による薬液攪拌有りの場合に1.072℃であった。チャンバ給気流量およびカップ排気流量を0.1m/minに低減したときには、揺動回転による薬液攪拌無しの場合に1.377℃、揺動回転による薬液攪拌有り場合に0.704℃であった。なお、揺動回転による薬液攪拌有りの場合、チャンバ給気流量およびカップ排気流量を0.4m/minとしたときにはエッチング均一性指数が2.9、チャンバ給気流量およびカップ排気流量を0.1m/minとしたときにはエッチング均一性指数が1.9と、薬液処理の面内均一性が大きく向上することが確認されている。エッチング均一性指数は次式による。
エッチング均一性指数=(面内におけるエッチング量最大値-エッチング量最小値)/(エッチング量平均値×2)
【0110】
[ステップ6]
次に、図11Fに示すように、スイッチ機構160をOFFにする。これにより、吸着プレート120およびウエハWの温度が徐々に低下してゆく。また、リンスノズル702(図11Fには図示せず)をウエハWの中心部の真上に位置させるか、あるいは中心部の真上に向けて移動させる。チャンバ給気流量およびカップ排気流量を例えば0.8m/min程度まで増加させ、処理チャンバ1610内の気流を強める。
【0111】
ステップ6のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.8m/minよりやや大
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し(ウエハWの中心部の真上に移動)
IPAノズル:吐出無し
【0112】
[ステップ7]
次に、図11Gに示すように、ウエハWを比較的低速(例えば100rpm以下、具体的には30rpm程度)で回転させた状態で、リンスノズル702からウエハWの中心に常温のリンス液(ここではDIW(純水))を供給する。これにより、ウエハWの表面上にある薬液が洗い流され、薬液とウエハW表面との反応が停止する。ウエハWを低速で回転させるため、ウエハWから飛散した薬液およびリンス液が液受けカップ800に衝突することに起因して生じ得るスプラッシュの形成が抑制される。このため、薬液を含む液のミストがウエハWに再付着することが防止される。
【0113】
ステップ7のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱およびDIWにより徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.8m/min
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:10rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:ウエハWの中心部の真上からDIWを吐出
IPAノズル:吐出無し
【0114】
[ステップ8]
次に、図11Hに示すように、リンスノズル702からウエハWの中心にDIWを供給し続けたまま、ウエハWの回転速度を1000rpm程度の高速に増加させる。高速回転しているウエハWの中心部に供給されたDIWは、ウエハWの周縁に向けて広がりながら流れ、周縁の外方に飛散する。これにより、ウエハWの表面上に残留している薬液および反応生成物等がDIWにより洗い流される。また、このステップ7においては、ウエハWおよび吸着プレート120は、常温のDIWにより熱を奪われ、温度が概ね常温まで低下する。このステップ7においては、ウエハWおよび吸着プレート120の温度を均一に低下させるため、リンスノズル702をウエハWの中心の真上の位置とウエハWの周縁の真上の位置との間で往復させている。また、リンスノズル702を往復させるにあたってリンスノズル702からのDIWの吐出量を吐出位置に応じて変化させてもよく、これにより、より均一な温度低下が実現される。
【0115】
ステップ8のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱およびDIWによりほぼ常温まで低下)
チャンバ給気流量:0.8m/min
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:1000rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:ウエハWの中心部と周縁部との間を往復しながらDIWを吐出
IPAノズル:吐出無し
【0116】
[ステップ9]
次に、図11Iに示すように、ウエハWの回転速度を維持したまま、リンスノズル702からのDIWの吐出を停止し、ウエハWの中心部の真上に位置する乾燥促進液ノズル703から常温のIPAをウエハWの中心部に吐出する。ステップ9により、ウエハWの中心部に吐出されたIPAによりウエハW上のリンス液が置換され、ウエハWの表面がIPAの液膜により覆われる。
【0117】
ステップ9を実行するにあたり、FFUから供給されるガスを清浄空気(クリーンルーム内エアをHEPAフィルタで濾過したもの)からドライエア(DA)またはNガス(窒素ガス)に切り替える。ドライエアは上記清浄空気(CA)と同等の清浄度を有し、かつ、清浄空気よりも大幅に低い露点を有している。Nガスは、高い清浄度を有し、かつ、清浄空気よりも大幅に低い酸素濃度および水分含有量を有している。つまり、処理チャンバ1610内の雰囲気が、容易に結露が生じない雰囲気(例えば湿度1%未満の雰囲気)に変更される。このときの、チャンバ給気流量(ドライエアまたはNガスの供給流量)およびカップ排気流量を例えば0.4m/min程度とされる。
【0118】
ステップ9のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(ほぼ常温)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:1000rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:ウエハWの中心部の真上からIPAを吐出
【0119】
[ステップ10]
次に、図11Jに示すように、乾燥促進液ノズル703からウエハWの中心に常温のIPAを供給し続けたまま、ウエハWの回転速度を10rpm程度の低速に低下させる。ウエハWの中心にIPAを供給し続けたままでウエハWの回転速度を低下させることにより、所望の膜厚のIPAの液膜(「IPAのパドル」とも呼ばれる)をウエハWの表面に形成することができる。IPAの液膜は、IPAの蒸発により処理結果に問題が生じない程度の厚さがあればよい。このとき、チャンバ給気流量(ドライエアまたはNガスの供給流量)およびカップ排気流量は、例えば0.1m/min~0.4m/min程度の範囲内の適当な値に設定される。チャンバ給気流量とカップ排気流量とは概ね等しい(好ましくはわずかにチャンバ給気流量の方が大きい。)。
【0120】
ステップ10において(ステップ9でも)IPAを常温で供給する、ウエハWに供給されるIPAの清浄度を高くすることができる。IPAを加熱した状態で供給する場合には、乾燥促進液ノズル703にIPAを供給する処理液供給機構において、加熱されたIPAがフィルタを通過する。このとき、常温では析出する不純物が加熱されたIPA中には溶け込んでしまうなどの理由により、フィルタの濾過効率が実質的に低下することになる。IPAを常温で供給することにより、この問題を解決することができる。ステップ10が終了したら、乾燥促進液ノズル703をホームポジションに退避させてよい。
【0121】
ステップ10のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(概ね常温)
チャンバ給気流量:0.1~0.4m/min(ドライエアまたはNガス)
カップ排気流量:0.1~0.4m/min
ウエハ回転数:10rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:ウエハWの中心部の真上からIPAを吐出
【0122】
[ステップ11]
次に、図11Kに示すように、ウエハWの回転を停止し、スイッチ機構160をONにし、ホットプレート140に通電して発熱させ、これにより、吸着プレート120、これに吸着されたウエハWおよびウエハW上のIPAを例えば78℃程度まで昇温する。このときには、回転テーブル100(吸着プレート120およびウエハW)を揺動回転させてもよく、回転テーブル100を静止させてもよい。このときもチャンバ給気流量およびカップ排気流量を引き続き低流量で維持し、液膜を形成しているIPAの蒸発または揮発を抑制する。これにより、ウエハW上における好ましく無い位置での液膜の部分的消失を防止することができる。IPAの温度を上昇させることによりIPAの表面張力が低下し、後述のステップ13においてパターン倒壊抑制効果が大きくなる。また、IPAの温度を上昇させることによりIPA中に溶け込むことが可能な物質がIPA中に溶け込むので、パーティクル発生を抑制することもできる。
【0123】
ステップ11のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:ON
プレート温度:78℃
チャンバ給気流量:0.1~0.4m/min(ドライエアまたはNガス)
カップ排気流量:0.1~0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm(または揺動回転)
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0124】
[ステップ12]
次に、図11Lに示すように、スイッチ機構160をOFFにする。これにより、吸着プレート120およびウエハWの温度が徐々に低下してゆく。チャンバ給気流量およびカップ排気流量を例えば0.4m/min程度まで増加させ、処理チャンバ1610内の気流を強める。ステップ12のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0125】
[ステップ13]
次に、図11Mに示すように、ウエハWを1000~1500rpm程度の高速で回転させ、これによりウエハWの表面からIPAを振り切って除去する。ステップ8のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.4m/minよりやや大
カップ排気流量:0.4m/min
ウエハ回転数:1000rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0126】
[ステップ14(ウエハ搬出工程)]
ウエハWが乾燥したら、図11Nに示すように、FFUから供給されるガスをドライエアから清浄空気に変更し、チャンバ給気流量およびカップ排気流量を例えば0.8m/min程度まで増加させ、処理チャンバ1610内の気流をさらに強める。そして、ウエハWの回転を停止し、基板搬送装置17のアームによりウエハWを処理ユニット16から取り出す。
【0127】
ステップ14のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱により徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.8m/minよりやや大
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0128】
ウエハ搬出工程の詳細について図2も参照して説明する。まず、切替装置(三方弁)156を切り替えて、吸引配管155Wの接続先を吸引装置157Wからパージガス供給装置159に変更する。これにより、プレート用の下面吸引流路溝121Pにパージガスを供給するとともに、基板用の下面吸引流路溝122Wを介して吸着プレート120の上面120Aの凹領域125Wにパージガスを供給する。これにより、吸着プレート120に対するウエハWの吸着が解除される。
【0129】
上記の操作に伴い、ホットプレート140に対する吸着プレート120の吸着も解除される。1枚のウエハWの処理が終了する毎にホットプレート140に対する吸着プレート120の吸着を解除しなくても構わないので、この吸着解除が行われないような配管系統に変更しても構わない。
【0130】
次いで、リフトピン211を受け渡し位置まで上昇させる。上記のパージにより吸着プレート120に対するウエハWの吸着が解除されているため、ウエハWを吸着プレート120から容易に離すことができる。このため、ウエハWの傷付きを防止することができる。
【0131】
次いで、リフトピン211上に載っているウエハWを、基板搬送装置17のアーム(図1および図11Nを参照)で持ち上げて、処理ユニット16の外部に搬出する。その後、ウエハセンサ860により、吸着プレート120上にウエハWが存在しないことの確認が行われる。
【0132】
[ステップ15]
次に、図11Oに示すように、チャンバ給気流量およびカップ排気流量をそのまま維持したままで、リンスノズル702を回転テーブル100の吸着プレート120の中心部の真上に移動させる。回転テーブル100を1000rpm以下程度の回転数で回転させる。この状態で、リンスノズル702から吸着プレート120の中心部にリンス液としてのDIWを供給し、吸着プレート120の表面を洗浄する。この洗浄を行うことにより、次に処理するウエハWの裏面が汚染されることを防止することができる。
【0133】
このステップ15において、吸着プレート120は、常温のDIWにより熱を奪われ、温度が概ね常温まで低下する。ステップ14においては、リンスノズル702を吸着プレート120の中心の真上の位置とウエハWの周縁の真上の位置との間で往復させてもよい。これにより、吸着プレート120の全面が均一に洗浄され、また、吸着プレート120の温度も均一に低下させることができる。
【0134】
ステップ15のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(放熱およびDIWにより徐々に低下)
チャンバ給気流量:0.8m/minよりやや大
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:~1000rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出(ウエハWの中心部に固定、またはウエハWの中心部と周縁部の間で移動)
IPAノズル:吐出無し
【0135】
[ステップ16]
次に、図11Pに示すように、リンスノズル702からのDIWの吐出を停止し、回転テーブル100を1000~1500rpm程度の高速で回転させ、これにより吸着プレート120の表面を振り切り乾燥する。以上により処理ユニット16における1サイクル(ステップ1~ステップ16)の動作が終了する。次に処理すべきウエハがある場合には、ステップ1に戻る。
【0136】
ステップ16のプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:OFF
プレート温度:無制御(常温)
チャンバ給気流量:0.8m/minよりやや大
カップ排気流量:0.8m/min
ウエハ回転数:1000~1500rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0137】
<第1変形実施形態>
上記の実施形態では、ステップ4~5において、加熱した薬液を薬液ノズル701から供給したが、常温の薬液を供給してもよい。常温の薬液を供給することにより、清浄度の高い薬液を供給することができる。その理由は、(ステップ10で常温のIPAを供給することと同じ理由であるが)、高温では薬液中に溶け込んでしまう物質が常温では析出するので、薬液供給機構701Bを含む薬液供給系に設けられたフィルタにより効率良く濾過することができるようになるからである。なお、この場合、常温の薬液によりウエハWが冷やされるため、ステップ5において、薬液およびウエハWを薬液処理温度Tcまで昇温させるための時間が必要となる。
【0138】
温調された薬液を供給する薬液供給系は、薬液貯留タンクと、薬液貯留タンクに接続された循環ラインと、循環ラインに介設されたポンプ、ヒーターおよびフィルタ等の機器とを有し、循環ラインから分岐する分岐ラインを介して処理ユニットに処理液が送られるように構成されている場合が多い。常温の薬液を処理ユニットに供給するならば、常温の薬液を循環させてフィルタで濾過することができ、タンクおよび循環ラインを循環する薬液の清浄度を高めることができる。また、温調された薬液を循環させないことにより、薬液の成分蒸発による薬液の組成または濃度の変化の問題も解消することができる。また、常温の薬液を供給するならば、循環ラインにヒーターを設ける必要が無く、また、循環ラインを介さずにタンクから処理ユニットに薬液を供給することも可能となる。このた」め、基板処理システムのコストを低減することができるという効果もある。
【0139】
<第2変形実施形態>
上記の実施形態では、ステップ10で形成したIPAの液膜(パドル)を、ステップ11においてウエハWの全体を均一に加熱することにより加熱し、ステップ13において振り切りにより除去したが、これには限定されない。ウエハWを回転させずに、図12の模式図に示すように、マランゴニ力を用いてIPAの液膜を除去してもよい。なお、図12では、ホットプレート140が、同心の4つの加熱ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4を有している。最も内側の加熱ゾーンZ1は円形であり、その外側にある加熱ゾーンZ2,Z3,Z4はリング状である。なお、加熱ゾーンZ2,Z3,Z4は、先に図3を参照して説明した10個の加熱ゾーン143-1~143-10の、半径方向位置が同じもの同士を同じように加熱することにより実現することができる。
【0140】
まず、図12(A)に示すように、ウエハWの中心部の加熱ゾーンZAが最も温度が高く(例えば80℃以上)ウエハWの周縁部に近づくに従って温度が低く(L)なるような温度分布が形成されるようにホットプレート140に給電する。図12において、参照符号Tsが付された階段状の細実線は、各加熱ゾーン(ZA~Z4の設定温度)、曲線状の太実線は吸着プレート120表面(すなわちウエハW)の実際の温度分布を示している。
【0141】
次に、図12(B)に示すように、ガスノズル706から不活性ガス例えば窒素ガス(Nガス)を吹き付けることにより乾燥コアDCを形成する。ここで用いるガスノズル706は、前述したノズル701~703を支持しているノズルアーム704により支持されていてもよいし、別の図示しないノズルアームにより支持されていてもよい。なお、図12(A)に示すような温度分布を形成することにより、ガスを吹き付けなくても乾燥コアを形成することができるが、ウエハWの中心部の適切な位置に適切なサイズ、適切なタイミングでの乾燥コアを形成するためには、ガスを吹き付けた方が好ましい。
【0142】
上記の温度勾配があるため、乾燥コアDCは徐々に半径方向外側に拡大してゆく。このとき、図12(C)~(E)に示すように、温度分布を変化させゆくことにより、マランゴニ力を利用して乾燥コアDCを効率良く拡大することができる。詳細には、気液界面B(ウエハWの表面上のIPA液膜と乾燥コアとの境界を意味する)およびその半径方向内側の領域が最も温度が高く、かつ、当該領域の温度が約90℃程度となるように、温度分布を制御する。そうすると、気液界面Bを境に、半径方向内側の乾燥コアDC側では温度が相対的に高いので表面張力が小さく、半径方向外側のIPA液膜側では温度が相対的に低いので表面張力が大きくなる。このため、マランゴニ力を駆動力として、IPA液膜は半径方向外側に向けて移動する。気液界面Bは徐々に半径方向外側に移動してゆくので、気液界面Bがある加熱ゾーンからそのすぐ外側の加熱ゾーンに移動したら当該外側の加熱ゾーンの温度を90℃に上げる、という操作を繰り返すことにより、気液界面B付近のIPAの液温を概ね90℃に維持しつつ、気液界面Bを連続的に半径方向外側に移動させることができる。この過程において、ウエハW上にあるIPAはウエハWの周縁から外方にこぼれ落ちるか、あるいは蒸発する。最終的には、図12(E)に示すように、乾燥コア(DC)がウエハWの周縁まで広がり、ウエハWは乾燥する。
【0143】
上記の乾燥過程において、液膜を形成するIPAは流動できる状態を保ちながら、半径方向外側に移動してゆく。IPAの流動性があるため、IPA液膜中に存在するパーティクルP(図12ではドットで示す)は、IPA液膜の移動とともに半径方向外側に移動することができる。このためウエハWの表面にパーティクルPが残存することを抑制することができる。
【0144】
第2変形実施形態では、先に説明したステップ1~ステップ10については前述した実施形態と同様である。その後、ステップ11~ステップ13の代わりに以下のステップ11Aを実行する。ステップ11Aの終了後はステップ14に進む。
ステップ11Aのプロセス条件は下記の通りである。
プレート加熱スイッチ:ON
プレート温度:最高で100℃(下記のゾーン温度制御)
チャンバ給気流量:0.2~0.4m/min(ドライエアまたはNガスを供給) カップ排気流量:0.2~0.4m/min
ウエハ回転数:0rpm
薬液ノズル:吐出無し
リンスノズル:吐出無し
IPAノズル:吐出無し
【0145】
なお、前述した実施形態のステップ13のようにIPAの液膜を振り切りにより除去した場合には、ウエハWの回転数を高くすると直ちにIPAの液膜が薄くなり、IPA液膜中に存在するパーティクルがIPAの液膜中をウエハの半径方向外側に向けて移動し難くなくなるため、第2変形実施形態と比較するとパーティクルがウエハWの表面に残留しやすくなる傾向にある。
【0146】
実際の装置において、19nm以上のサイズのパーティクル増分が、ステップ11~ステップ13を実行した場合には平均33であったのに対して、ステップ11Aを実行した場合には平均12.3であり、大幅な改善が認められた。
【0147】
<第3変形実施形態>
ホットプレート140のヒーター142への給電を、回転テーブルの回転時に給電が不可能となるスイッチ機構160に代えて、回転テーブルの一方向への連続回転時にもヒーター142への給電が可能となる電力伝送機構を介して行ってもよい。このような電力伝送機構の構成例のいくつかを以下に説明する。
【0148】
第1構成例に係る電力伝送機構910について図13の動作原理図と、図14の軸方向断面図を参照して説明する。電力伝送機構910は、接触式の電力伝送機構である。電力伝送機構は、ロータリージョイント151と同軸に設けられ、好ましくはロータリージョイント151に組み込まれるかあるいは一体化されている。
【0149】
図13に示すように、電力伝送機構910は、転動軸受け(ボールまたはローラーベアリング)に類似した構成を有しており、アウターレース911と、インナーレース912と、複数の転動体(例えばボール)913とを有する。アウターレース911、インナーレース912および転動体913は、導電性材料(導電体)から形成される。好ましくは電力伝送機構910の構成要素(911,912,913)間に適度な予圧が印加される。そうすることにより、転動体913を介してアウターレース911とインナーレース912との間により安定した導通を確保することができる。
【0150】
上記動作原理による電力伝送機構910が組み込まれたロータリージョイント151の具体例が図14に示されている。ロータリージョイント151は、ハウジング1601内に設けられたフレームまたはこれに固定されたブラケット(いずれも図示せず)に固定された下ピース151Bと、回転テーブル100またはこれと連動して回転する部材(図示せず)に固定された上ピース151Aとを有する。
【0151】
図14に示されたロータリージョイント151の構成自体は公知であるが、簡単に説明しておく。すなわち、上ピース151Aの円筒形の中心孔152Aに、下ピース151Bの円柱形の中心突起152Bが挿入されている。中心突起152Bは一対のベアリング153を介して上ピース151Aに支承されている。中心孔152Aの内周面に扱うガスの種類に応じた数(図14ではGAS1およびGAS2の2つであるがこれには限定されない)の円周溝154Aが形成されている。各円周溝154Aの両脇にガスのリークを防止するためのシールリング155Sが設けられている。
【0152】
上ピース151A内には、複数の円周溝154Aにそれぞれ連通するガス通路156Aが形成されている。各ガス通路156Aの端部がガス出口ポート157Aとなっている。中心突起152Bの外周面には、複数の円周溝154Aにそれぞれ対応する軸方向位置に複数の円周溝154Bが設けられている。下ピース151B内には、複数の円周溝154Bにそれぞれ連通するガス通路156Bが形成されている。各ガス通路156Bの端部がガス入口ポート157Bとなっている。
【0153】
図14に示した構成によれば、上ピース151Aと下ピース151Bとが回転しているときにも、実質的にガスリーク無しに、ガス入口ポート157Bおよびガス出口ポート157Aとの間でガスを流すことができる。勿論、ガス入口ポート157Bおよびガス出口ポート157Aとの間で吸引力を伝達することもできる。
【0154】
ロータリージョイント151の上ピース151Aと下ピース151Bとの間に、電力伝送機構910が組み込まれている。図14の例では、アウターレース911が下ピース151Bの円筒形の凹所に嵌め込まれ(例えば圧入され)、上ピース151Aの円柱形の外周面がインナーレース912に嵌め込まれている(例えば圧入され)。アウターレース911と下ピース151Bとの間、並びに上ピース151Aとインナーレース912との間は、適当な電気的絶縁処理が施されている。
【0155】
アウターレース911は電線916を介して電源(あるいは給電制御部)915に電気的に接続され、ホットプレート140のヒーター142に電線914を介して電気的に接続されている。なお、図14の例では、インナーレース912が回転テーブル100と一体的に回転する回転部材であり、アウターレース911は非回転部材である。電源915は、図2に示す給電部300の一部であってもよい。
【0156】
図14に示した構成において、電力伝送機構910の転動軸受けを軸方向に相互に絶縁させて多段に設けることにより、多チャンネルの給電を行うことも可能である。この場合、ホットプレート140の複数の加熱ゾーン143-1~143-10に対して独立した給電を行うことができる。
【0157】
第3変形実施形態の第1構成例の適用にあたっては、図2に示した処理ユニット16のロータリージョイント151およびスイッチ機構160を、図13および図14に記載した機構に入れ替えればよい。
【0158】
次に、第2構成例に係る電力伝送機構920について図15を参照して説明する。電力伝送機構920も、接触式の電力伝送機構である。図15に示す電力伝送機構920は、それ自体公知のスリップリングからなり、多チャンネル給電が可能なように構成されている。この場合も、ホットプレート140の複数の加熱ゾーン143-1~143-10に対して独立した給電を行うことができる。
【0159】
スリップリングは、導電体である回転リングおよびブラシから構成されている。スリップリングは固定部921および回転部922から構成される。固定部921は、ハウジング1601内に設けられたフレームまたはこれに固定されたブラケット(いずれも図示せず)に固定されている。回転部922は、回転テーブル100またはこれと連動して回転する部材(図示せず)に固定されている。固定部921の側周面には、電源あるいは給電制御部(図示せず)に電気的に接続された複数の電線923が接続される複数の端子が設けられている。回転部922の軸方向端面から、前記複数の端子とそれぞれ導通している複数の電線924が延出し、ホットプレート140の各加熱ゾーン143-1~143-10のヒーター要素142eに電気的に接続されている。
【0160】
図15の構成例では、ロータリージョイント151の下ピース151Bが、その中心に貫通孔158を有する中空部材として構成されている。貫通孔の内部にスリップリングとして構成された電力伝送機構920が格納されている。図14の構成例と同様に、ロータリージョイント151の下ピース151Bは、ハウジング1601内に設けられたフレームまたはこれに固定されたブラケット(いずれも図示せず)に固定されている。また、ロータリージョイント151の上ピース151Aは、回転テーブル100またはこれと連動して回転する部材(図示せず)に固定されている。
【0161】
第3変形実施形態の第2構成例の適用にあたっては、図2に示した処理ユニット16のロータリージョイント151およびスイッチ機構160を、図17Cに記載した機構に入れ替えればよい。
【0162】
電力伝送機構の第3構成例として、磁界結合を利用した電磁誘導方式または磁界共鳴方式のワイヤレス式の(非接触式の)電力伝送機構(このような電力伝送機構それ自体は公知である)を用いてもよい。この場合、ワイヤレス電力伝送機構は、図2に概略的に示すように、ギャップを開けて対面した円周方向に延びる送電コイル903および受電コイル902を有する。送電コイル903および受電コイル902の周囲には、磁束を集めるためおよび磁界漏洩を防止するためのフェライトシート(図示せず)が取り付けられている。送電コイル903は非回転部材例えば固定外側カップ要素801に取り付けることができ、受電コイル902は回転部材例えば支持プレート170に取り付けることができる。受電コイル902は図示しない電線を介してホットプレート140のヒーター142に電気的に接続されている。送電コイル903は図示しない電線を介して図示しない電源(あるいは給電制御部)に電気的に接続されている。
【0163】
上述した非接触式の電力伝送機構を用いる場合にも、例えば、送電コイル903および受電コイル902を複数組設けることにより、多チャンネルの給電を行うことができる。
【0164】
第3変形実施形態の第3構成例の適用にあたっては、図2に示した処理ユニット16のスイッチ機構160を、図2に記載した電力伝送機構(902,903)に入れ替えればよい。
【0165】
第3変形実施形態の第1~第3構成例を適用するにあたり、ホットプレート140と支持プレート170との間の空間S内の適当な部位に、電力伝送機構を介して送られてきた電力を多チャンネルに分配する分配器および個々の加熱ゾーンへの給電を制御する制御モジュール(いずれも図示せず)を設置してもよい。そうすることにより、電力伝送機構が単チャンネルに対応するものであったとしても、ホットプレート140の複数の加熱ゾーン143-1~143-10に対して独立した給電を行うことが可能となる。
【0166】
電力伝送機構が多チャンネルの電力伝送が可能であるように構成されている場合には、1つまたは複数の伝送チャンネルを制御信号または検出信号を伝送するために、あるいはアースをとるために用いてもよい。
【0167】
上述した第3変形実施形態に係る構成を適用した場合においても、前述したウエハWの薬液処理(したステップ1~ステップ16、および第1および第2変形実施形態に係るステップ)を実行することができる。この場合、ウエハWの回転を停止しなくてもホットプレート140のヒーター142に給電できるため、ウエハWおよび/または処理液の加熱のために回転テーブルを停止または揺動回転させているステップ(例えばステップ11)においてウエハWを例えば低速回転させてもよい。
【0168】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0169】
処理対象である基板は、半導体ウエハに限定されるものではなく、その他の基板、例えばガラス基板、セラミック基板等、半導体装置製造に用いられる任意の種類の基板であってよい。
【符号の説明】
【0170】
W 基板(ウエハ)
Ax 回転(鉛直)軸線
100 回転テーブル
142 電気ヒーター
701 ノズル(薬液ノズル)
701B 処理液供給機構(薬液供給機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図11K
図11L
図11M
図11N
図11O
図11P
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持するとともに鉛直軸線周りに回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルと一緒に回転するように前記回転テーブルに設けられ、前記回転テーブル上に載置された前記基板を加熱する電気ヒーターと、
前記回転テーブルに保持された前記基板の表面に薬液、リンス液および乾燥用溶剤を供給する処理液供給部と、
を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、
前記基板を前記回転テーブルにより保持して回転させながら、前記基板の表面の中心部に処理液を供給し、前記基板の表面に所定の厚さの液膜を形成する工程と、
前記液膜の形成が完了した後に前記電気ヒーターで前記基板を所定の温度に加熱する液膜加熱工程と、
前記液膜加熱工程の後に、前記基板の表面にリンス液を供給して、前記基板から前記薬液を除去するリンス工程と、
前記リンス工程の後に、前記基板の表面にある前記リンス液よりも表面張力が低くかつ揮発性が高い乾燥用溶剤を供給して、前記基板上のリンス液を前記乾燥用溶剤に置換する乾燥用溶剤置換工程と、
前記乾燥用溶剤置換工程の後に、前記乾燥用溶剤を前記基板から除去して前記基板を乾燥させる乾燥工程と、
を備え、
前記乾燥工程は、前記基板に、中心部において温度が高く周縁部において温度が低い温度勾配が形成されるように前記電気ヒーターにより前記回転テーブルを加熱する工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記回転テーブルに設けた電気ヒーターが、同心に設けられた複数の加熱ゾーンを有しており、前記乾燥工程において前記回転テーブルを加熱する工程は、相対的に半径方向内側にある加熱ゾーンが相対的に半径方向外側にある加熱ゾーンよりも温度が高くなるように前記電気ヒーターに給電することを含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は、前記基板の中心部にある前記乾燥用溶剤にガスノズルから不活性ガスを吹き付けて、前記基板の中心部に、前記乾燥用溶剤が除去された乾燥コアを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記乾燥工程は、前記回転テーブルの回転を停止した状態で行われる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記回転テーブルに設けた電気ヒーターが、同心に設けられた複数の加熱ゾーンを有しており、
前記乾燥工程は、前記回転テーブルの回転を停止した状態で行われ、
前記乾燥工程は、前記基板の中心部にある前記乾燥用溶剤にガスノズルから不活性ガスを吹き付けて、前記基板の中心部に、前記乾燥用溶剤が除去された乾燥コアを形成することをさらに含み、
前記回転テーブルを加熱する工程において、前記乾燥コアと前記乾燥用溶剤の液膜との境界である気液界面を半径方向外側に移動させることにより乾燥を進行させ、このとき、前記気液界面の移動に合わせて、前記気液界面よりも乾燥コア側の前記基板の温度が乾燥用溶剤側の前記基板の温度よりも相対的に高くなるように、前記複数の加熱ゾーンの温度が制御される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板を水平姿勢で保持するとともに鉛直軸線周りに回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルと一緒に回転するように前記回転テーブルに設けられ、前記回転テーブル上に載置された前記基板を加熱する電気ヒーターと、
前記回転テーブルに保持された前記基板の表面に薬液、リンス液および乾燥用溶剤を供給する処理液供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記基板を前記回転テーブルにより保持して回転させながら、前記基板の表面の中心部に処理液を供給し、前記基板の表面に所定の厚さの液膜を形成する工程と、
前記液膜の形成が完了した後に前記電気ヒーターで前記基板を所定の温度に加熱する液膜加熱工程と、
前記液膜加熱工程の後に、前記基板の表面にリンス液を供給して、前記基板から前記薬液を除去するリンス工程と、
前記リンス工程の後に、前記基板の表面にある前記リンス液よりも表面張力が低くかつ揮発性が高い乾燥用溶剤を供給して、前記基板上のリンス液を前記乾燥用溶剤に置換する乾燥用溶剤置換工程と、
前記乾燥用溶剤置換工程の後に、前記乾燥用溶剤を前記基板から除去して前記基板を乾燥させる乾燥工程と、
を実行させ、
前記制御部は、前記乾燥工程において、前記電気ヒーターにより前記回転テーブルを加熱させ、このとき、前記基板に、中心部において温度が高く周縁部において温度が低い温度勾配が形成されるように前記電気ヒーターを制御する、基板処理装置。
【請求項7】
前記回転テーブルに設けた電気ヒーターが、同心に設けられた複数の加熱ゾーンを有しており、
前記制御部は、前記乾燥工程において前記回転テーブルを加熱するときに、相対的に半径方向内側にある加熱ゾーンが相対的に半径方向外側にある加熱ゾーンよりも温度が高くなるように前記電気ヒーターに給電する、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
不活性ガスを前記基板に吐出するガスノズルをさらに備え、
前記制御部は、前記乾燥工程において、前記ガスノズルに、前記基板の中心部にある前記乾燥用溶剤に不活性ガスを吹き付けさせて、前記基板の中心部に前記乾燥用溶剤が除去された乾燥コアを形成する、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記乾燥工程を、前記回転テーブルの回転を停止した状態で実行させる、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記回転テーブルに設けた電気ヒーターが、同心に設けられた複数の加熱ゾーンを有しており、
前記制御部は、前記乾燥工程を、前記回転テーブルの回転を停止した状態で実行させ、
前記制御部は、前記乾燥工程において、前記回転テーブルを加熱するときに、前記乾燥コアと前記乾燥用溶剤の液膜との境界である気液界面を半径方向外側に移動させることにより乾燥を進行させ、このとき、前記気液界面の移動に合わせて前記気液界面よりも乾燥コア側の前記基板の温度が、乾燥用溶剤側の前記基板の温度よりも相対的に高くなるように、前記電気ヒーターの前記複数の加熱ゾーンの温度を制御する、請求項8に記載の基板処理装置。