IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-導光板用ガラス板 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096328
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】導光板用ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20240705BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20240705BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C03C3/068
C03C3/095
C03C17/34 Z
G02B3/00 Z
G02B1/115
G02B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074856
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2020539490の分割
【原出願日】2019-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2018163582
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018218577
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】安間 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢治
(57)【要約】
【課題】高屈折率かつ低密度であるとともに、製造特性が良好な光学ガラスの提供。
【解決手段】本発明は、屈折率(n)が1.81~2.15、密度が6.0g/cm以下、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tが900~1200℃、失透温度が1300℃以下、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有割合が5~44%である光学ガラス及び該光学ガラスを用いた光学部品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率(n)が1.81~2.15、
密度(d)が6.0g/cm以下、
ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tが900~1200℃、
失透温度が1300℃以下、
酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有割合が5%~44%である、
ことを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
ガラス転移点(Tg)が600℃以上である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物基準のモル%表示で、
TiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)からなる群から選ばれる少なくとも1種を30%~80%、SiOとBの合量が20%~70%、アルカリ土類金属成分(MgO、CaO、SrO、BaO)を含む場合にはアルカリ土類金属成分中のBaOの含む割合が0.5以下である請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
失透温度における粘性(失透粘性)がlogη=0.4以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
ヤング率(E)が60GPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
アッベ数(v)が60以下、50~350℃での熱膨張係数αが50~150×10-7/Kである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
板厚が0.01~2mmの板状であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
一の主表面の面積が8cm以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
対向する主表面は両面に研磨が施され、一の主表面の面積が25cmのガラス板としたとき、そのガラス基板のLTVが2μm以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
直径8インチの円形のガラス板としたとき、一の主表面の反りが50μm以下である請求項1~9のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
表面粗さRaが2nm以下である請求項1~10のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の板状の光学ガラスを有することを特徴とする光学部品。
【請求項13】
前記板状の光学ガラスの表面に反射防止膜を有する請求項12に記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル機器、例えばプロジェクター付きメガネ、眼鏡型やゴーグル型ディスプレイ、仮想現実拡張現実表示装置、虚像表示装置などに用いられるガラスとしては、画像の広角化、高輝度・高コントラスト化、導光特性向上、回折格子の加工容易性などの面から、高屈折率が求められる。また、従来、車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどの用途に、小型で撮像画角の広い撮像ガラスレンズが用いられておりこのような撮像ガラスレンズに対しては、より小型で広い範囲を撮影するために、高屈折率が求められる。
【0003】
上記用途に用いられる光学ガラスとしては、ユーザーの装着感を好ましいものとするため、また、自動車やロボットは軽量化が求められ、装置全体の重量を減量するために、密度が低いことが求められる。さらに、外部環境での使用を考慮すると、酸性雨や、洗浄の際に使用される洗剤やワックスなどの薬剤による表面劣化や変質の少ないことも重要である。
【0004】
このうち車載用のガラスレンズに関しては、例えば、所定の耐酸性を有する車載カメラ用のレンズガラス材を用いることで、屈折率および強度を高め、さらに、耐酸性や耐水性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2013-256446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、高屈折率の組成にする場合、屈折率を高めるガラス構成成分として重金属酸化物が使用されることが多い。そのため、一般に、高屈折率ガラスの密度は大きくなっていた。
【0007】
また、ウェアラブル機器には板状に成形されたガラスが用いられることがあり、製造効率の高いフロート法、フュージョン法、ロールアウト法といった成型方法によって生産されることがあるが、効率的に製造するためには製造時の温度とガラスの粘性との関係が重要である。
さらに光学部品として用いられる場合、可視光透過率も重要なパラメータであり、高屈折率ガラスの場合、高い温度で溶解すると、特に短波長側の可視光透過率が低下するおそれがあり、一方で粘性カーブが急峻であると、製造するにあたり粘性の制御が困難になる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解消するためになされたものであり、高屈折率かつ低密度であるとともに、製造特性が良好な光学ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学ガラスは、屈折率(n)が1.81~2.15、密度が6.0g/cm以下、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tが900~1200℃、失透温度が1300℃以下、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有割合が5%~44%であることを特徴とする。
本発明の光学部品は、本発明の板状の光学ガラスを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、光学ガラスの反りを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光学ガラスおよび光学部品の実施形態について説明する。
【0012】
本発明の光学ガラスは、上記のように所定の屈折率(n)、密度(d)および溶解特性を有しており、これら各特性について順番に説明する。
本発明の光学ガラスは1.81~2.15の範囲の高い屈折率(n)を有する。屈折率(n)が1.81以上であるので、本発明の光学ガラスは、ウェアラブル機器に用いる光学ガラスとして画像の広角化、高輝度・高コントラスト化、導光特性向上、回折格子の加工容易性などの面で好適である。また車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどの用途に用いられる小型で撮像画角の広い撮像ガラスレンズとしては、より小型で広い範囲を撮影するために好適である。この屈折率(n)は好ましくは、1.85以上であり、より好ましくは1.88以上、さらに好ましくは1.91以上、さらに好ましくは1.94以上、さらに好ましくは1.97以上、さらに好ましくは1.99以上、さらに好ましくは2.00以上である。
一方で屈折率(n)が2.15を超えるガラスは密度が高くなりやすく、また失透温度が高くなりやすい傾向がある。特に、光学ガラスの密度の低さを重要視する場合には、この屈折率(n)は好ましくは、2.10以下であり、より好ましくは2.06以下、さらに好ましくは2.03以下、さらに好ましくは2.01以下、さらに好ましくは1.98以下、さらに好ましくは1.95以下、さらに好ましくは1.94以下、よりさらに好ましくは1.92以下である。
【0013】
また、本発明の光学ガラスは、6.0g/cm以下となる密度(d)を有する。本発明の光学ガラスは、上記した範囲の密度を有することで、ウェアラブル機器に用いられた場合にユーザーの装着感を好ましいものにでき、車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどに用いられた場合に、装置全体の重量を減量できる。この密度(d)は好ましくは5.6g/cm以下であり、より好ましくは5.2g/cm以下、さらに好ましくは4.8g/cm以下、さらに好ましくは4.6g/cm以下、さらに好ましくは4.4g/cm以下、さらに好ましくは4.2g/cm以下である。
一方で本発明の光学ガラスにおいて、ガラス表面に傷を付けにくくするためには、密度(d)は、3.3g/cm以上が好ましい。この密度(d)は、より好ましくは3.6g/cm以上、さらに好ましくは3.9g/cm以上であり、さらに好ましくは4.2g/cm以上であり、さらに好ましくは4.4g/cm以上であり、よりさらに好ましくは4.7g/cm以上である。
【0014】
また、本発明の光学ガラスは、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tが900~1200℃の範囲である。Tは溶解性の基準温度であり、ガラスのTが高すぎると、高温で溶解する必要が生じるため、高屈折率ガラスの場合、特に短波長側の可視光透過率が低下するおそれがある。このTは好ましくは1180℃以下であり、より好ましくは1150℃以下、さらに好ましくは1130℃以下、よりさらに好ましくは1110℃以下である。
一方でTが低すぎると、粘性カーブが急峻になり、製造するにあたり粘性の制御が困難になる問題がある。本発明の光学ガラスは、上記した範囲のTを有することで、製造特性を良好にできる。このTは好ましくは、950℃以上であり、より好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1050℃以上、さらに好ましくは1080℃以上、よりさらに好ましくは1100℃以上、特に好ましくは1120℃以上である。
【0015】
また、本発明の光学ガラスは、失透温度は1300℃以下である。このような特性を有すると、成形時におけるガラスの失透を抑制でき、成形性が良好である。この失透温度は、より好ましくは1275℃以下、さらに好ましくは1250℃以下、さらにより好ましくは1225℃以下、さらにより好ましくは1200℃以下、さらにより好ましくは1175℃以下、さらにより好ましくは1150℃以下、さらにより好ましくは1125℃以下、さらにより好ましくは1100℃以下、さらにより好ましくは1075℃以下、特に好ましくは1050℃以下である。ここで、失透温度とは、加熱、溶融したガラスを自然放冷により冷却する際に、ガラス表面および内部に長辺又は長径で1μm以上の結晶の認められない最も低い温度である。
【0016】
また、本発明の光学ガラスにおいて、ガラス転移点(Tg)は600℃以上であることが好ましい。本発明の光学ガラスは、600℃以上のTgを有することでプロセスにおけるたわみ等の変形を抑制することができる。このTgは、より好ましくは630℃以上、さらに好ましくは660℃以上、さらに好ましくは690℃以上、さらに好ましくは720℃以上、特に好ましくは750℃以上である。プレス成型およびリドロー成形等の成形を行う場合にはTgは800℃以下であることが好ましい。より好ましくは760℃以下、さらに好ましくは720℃以下、さらにより好ましくは680℃以下、特に好ましくは640℃以下である。Tgは、例えば熱膨張法によって測定できる。
【0017】
また、本発明の光学ガラスは、失透温度における粘性(失透粘性)ηをdPa・s単位で表したときに、logη=0.4以上であることが好ましい。このような特性を有すると、成形時におけるガラスの失透を抑制でき、成形性が良好である。この失透温度における粘性は、より好ましくはlogη=0.5以上、さらに好ましくはlogη=0.6以上、さらにより好ましくはlogη=0.7以上、特に好ましくは0.8以上である。
【0018】
また、本発明の光学ガラスは、60以下のアッベ数(v)を有することが好ましい。本発明の光学ガラスを導光板のようなガラス板に適用する場合は、上記した範囲の低いvを有することで、ウェアラブル機器の光学設計が容易になり、色収差の改善もしやすくなるので、高精細な画像や映像を再現できる。vは、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは40以下、さらに好ましくは38以下、さらに好ましくは35以下、よりさらに好ましくは32以下、特に好ましくは30以下である。
また、本発明の光学ガラスは、15以上のアッベ数(v)を有することが好ましい。具体的には、本発明の光学ガラスを導光板のようなガラス板に適用する場合は、上記した範囲の高いvを有することで、表面に塗布する樹脂との屈折率マッチングが得やすくなる。vは、より好ましくは18以上、さらに好ましくは21以上、さらに好ましくは23以上、さらに好ましくは25以上、よりさらに好ましくは27以上、特に好ましくは29以上である。
【0019】
また、本発明の光学ガラスの50~350℃における熱膨張係数(α)は、50~150(×10-7/K)が好ましい。本発明の光学ガラスは、上記した範囲のαとすると、周辺部材との膨張マッチングが良好である。このαの下限は、好ましくは60(×10-7/K)以上であり、より好ましくは70(×10-7/K)以上であり、さらに好ましくは80(×10-7/K)以上であり、特に好ましくは90(×10-7/K)以上である。
【0020】
また、本発明の光学ガラスは、上記した範囲のαとすると、冷却時の割れが起こりにくくなるため冷却速度を上昇できる。その結果、光学ガラスの仮想温度(Tf)とガラス転移温度(Tg)との差(Tf-Tg)を0℃以上とすることが可能になり、ガラスの構造をより疎なものとし、光学ガラスに何らかの衝撃が加わってもガラスの構造が緻密化することでその衝撃を吸収しやすくなる。その結果、光学ガラス自体の強度を向上し、落下等による破損を抑制できる。このαの上限は、好ましくは120(×10-7/K)以下であり、より好ましくは110(×10-7/K)以下であり、さらに好ましくは100(×10-7/K)以下であり、特に好ましくは95(×10-7/K)以下である。
【0021】
本発明の光学ガラスは、厚さが0.01~2mmのガラス板が好ましい。厚さが0.01mm以上であれば、光学ガラスの取り扱い時や加工時の破損を抑制できる。また、光学ガラスの自重によるたわみを抑えられる。この厚さは、より好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.3mm以上であり、よりさらに好ましくは0.5mm以上である。一方で厚さが2mm以下であれば、光学ガラスを用いた光学素子を軽量にできる。この厚さは、より好ましくは1.5mm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以下であり、よりさらに好ましくは0.8mm以下である。
【0022】
本発明の光学ガラスがガラス板である場合においては、一の主表面の面積は8cm以上が好ましい。この面積が8cm以上であれば、多数の光学素子を配置でき生産性が向上する。この面積はより好ましくは30cm以上であり、さらに好ましくは170cm以上であり、よりさらに好ましくは300cm以上であり、特に好ましくは1000cm以上である。一方で面積が6500cm以下であればガラス板の取り扱いが容易になり、ガラス板の取り扱い時や加工時の破損を抑制できる。この面積はより好ましくは4500cm以下であり、さらに好ましくは4000cm以下であり、よりさらに好ましくは3000cm以下であり、特に好ましくは2000cm以下である。
【0023】
本発明の光学ガラスがガラス板である場合においては、一の主表面の25cmにおけるLTV(Local Thickness Variation)は2μm以下が好ましい。この範囲の平坦度を有することで、一の主表面にインプリント技術等を用いて所望形状のナノ構造を形成でき、また所望の導光特性を得ることができる。特に、導光体では光路長の差異によるゴースト現象や歪みを防止できる。このLTVは、より好ましくは1.8μm以下であり、さらに好ましくは1.6μm以下であり、よりさらに好ましくは1.4μm以下であり、特に好ましくは1.2μm以下である。
【0024】
本発明の光学ガラスを直径8インチの円形のガラス板としたとき、反りは50μm以下が好ましい。このガラス板の反りが50μm以下であれば、一の主表面にインプリント技術等を用いて所望形状のナノ構造を形成でき、また所望の導光特性が得られる。複数の導光体を得ようとするとき、品質の安定したものが得られる。このガラス基板の反りはより好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは20μm以下である。
【0025】
また、直径6インチの円形のガラス板としたとき、反りは30μm以下が好ましい。このガラス板の反りは30μm以下であれば、一の主表面にインプリント技術等を用いて所望形状のナノ構造を形成でき、また所望の導光特性が得られる。複数の導光体を得ようとするとき、品質の安定したものが得られる。このガラス板の反りはより好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。
【0026】
また、各辺が6インチの正方形のガラス板としたとき、反りは100μm以下が好ましい。このガラス板の反りは100μm以下であれば、一の主表面にインプリント技術等を用いて所望形状のナノ構造を形成でき、また所望の導光特性が得られる。複数の導光体を得ようとするとき、品質の安定したものが得られる。このガラス板の反りはより好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは35μm以下であり、特に好ましくは20μm以下である。
【0027】
図1は、本発明の光学ガラスをガラス板G1としたときの断面図である。「反り」とは、ガラス板G1の一の主表面G1Fの中心を通り、ガラス板G1の一の主表面G1Fに対して直交する任意の断面において、ガラス板G1の基準線G1Dとガラス板G1の中心線G1Cとの垂直方向の距離の最大値Bと最小値Aとの差Cである。
【0028】
前記直交する任意の断面とガラス板G1の一の主表面G1Fとの交線を、底線G1Aとする。前記直交する任意の断面とガラス板G1の他の一の主表面G1Gとの交線を、上線G1Bとする。ここで、中心線G1Cは、ガラス板G1の板厚方向の中心を結んだ線である。中心線G1Cは、底線G1Aと上線G1Bとの後述するレーザ照射の方向に対しての中点を求めることにより算出される。
【0029】
基準線G1Dは、以下のように求められる。まず、自重の影響をキャンセルする測定方法のもとに、底線G1Aを算出する。該底線G1Aから、最小自乗法により直線を求める。求められた直線が、基準線G1Dである。自重による影響をキャンセルする測定方法としては公知の方法が用いられる。
【0030】
例えば、ガラス板G1の一の主表面G1Fを3点支持し、レーザ変位計によりガラス板G1にレーザを照射し、任意の基準面からの、ガラス板G1の一の主表面G1Fおよび他の一の主表面G1Gの高さを測定する。
【0031】
次に、ガラス板G1を反転させ、一の主表面G1Fを支持した3点に対向する他の一の主表面G1Gの3点を支持し、任意の基準面からの、ガラス基板G1の一の主表面G1Fおよび他の一の主表面G1Gの高さを測定する。
反転前後における各測定点の高さの平均を求めることで自重による影響がキャンセルされる。例えば、反転前に、上述のとおり、一の主表面G1Fの高さを測定する。ガラス板G1を反転後、一の主表面G1Fの測定点に対応する位置で、他の一の主表面G1Gの高さを測定する。同様に、反転前に、他の一の主表面G1Gの高さを測定する。ガラス板G1を反転後、他の一の主表面G1Gの測定点に対応する位置で、一の主表面G1Fの高さを測定する。
反りは、例えば、レーザ変位計により測定される。
【0032】
また、本発明の光学ガラスにおいて、一の主表面の表面粗さRaは2nm以下が好ましい。この範囲のRaを有することで、一の主表面にインプリント技術等を用いて所望形状のナノ構造を形成でき、また所望の導光特性が得られる。特に、導光体では界面での乱反射が抑制されてゴースト現象や歪を防止できる。このRaは、より好ましくは1.7nm以下であり、さらに好ましくは1.4nm以下、さらにより好ましくは1.2nm以下、特に好ましくは1nm以下である。ここで、表面粗さRaは、JIS B0601(2001年)で定義された算術平均粗さである。本明細書では、10μm×10μmのエリアを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した値である。
【0033】
[ガラス成分]
次に、本発明の光学ガラスが含有し得る各成分の組成範囲の一実施形態について詳細に説明する。本明細書において、各成分の含有割合は、特に断りのない限り、酸化物基準のモル%で示す。また、本発明の光学ガラスにおいて、「実質的に含有しない」とは、不可避不純物を除き含有しないことを意味する。不可避不純物の含有割合は、本発明において0.1%以下である。
【0034】
本実施形態の光学ガラスにおける上記特性を満たす組成としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、高屈折率成分であるTiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)からなる群から選ばれる少なくとも1種を30%~80%、ガラス骨格成分であるSiOとBの合量が20%~70%、アルカリ土類金属成分(MgO、CaO、SrO、BaO)を含む場合にはアルカリ金属成分のうちBaOを含む割合が0.5以下である。
この条件を満たすガラス組成Aにおける各成分について、以下具体的に説明する。なお、本発明の光学ガラスは、上記した特性を有する限り、下記実施形態の組成に限定されない。
【0035】
<ガラス組成A>
SiOは、ガラス形成成分であり、ガラスに高い強度とクラック耐性を付与し、ガラスの安定性および化学的耐久性を向上させる成分である。SiOの含有割合は、5%以上44%以下であることが好ましい。SiOの含有割合が5%以上で、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tを好ましい範囲にできる。SiOの含有割合は、7%以上が好ましく、9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、11%以上が特に好ましい。一方、SiOの含有割合が44%以下で、高い屈折率を得るための成分をより多く含有させることができる。SiOの含有割合は、38%以下がより好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、15%以下がさらに好ましく、12%以下が特に好ましい。
【0036】
は、Tgを低くし、ガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上し、失透温度を低下させる成分であるが、Bの量が多いと屈折率が低下し易い。そのため、Bの含有割合は0%以上40%以下が好ましい。Bの含有割合は、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がさらに好ましく、23%以下がさらに好ましく、22%以下が特に好ましい。また、Bの含有割合は、5%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましく、18%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。
【0037】
SiOとBはガラス形成成分であり、ガラスの安定性を向上させる成分である。SiOとBの合量が多いとガラスの失透温度が低下し,製造しやすくなる。そのためSiOとBの合量は20%以上である。25%以上が好ましく、28%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、32%以上が特に好ましい。一方で、SiOとBの合量を少なくすると屈折率を向上させることができる。そのため特に高い屈折率が求められる場合には、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下がさらに好ましく、33%以下がさらに好ましく、32%以下が特に好ましい。
【0038】
を含有する場合にはBに対するSiOの比SiO/Bが大きいとガラスが失透しやすくなる。そのためBを含有する場合にはSiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
【0039】
TiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)は、ガラスの屈折率を高める高屈折率成分である。これら成分の含有割合は合量で30%~80%であることが好ましい。特に高い屈折率が求められる場合は、40%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上がよりさらに好ましく、67%以上が特に好ましい。一方で、高屈折率成分が80%超であると失透しやすくなる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、これら成分の含有割合は、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下であり、特に好ましくは45%以下である。
【0040】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)の含有割合は合量で0%以上10%以下である。このアルカリ金属成分を多くすることでTgを低くできる。しかし、LiO+NaO+KOが多くなりすぎると、Tが低くなり易く、粘性カーブが急峻になり製造特性が低下する。一方、LiO+NaO+KOが少なすぎると、Tが高くなり易く、溶解温度が高くなり高屈折率成分のうちTiO、Nbといった成分が還元され易く着色する恐れがある。そのため、LiO+NaO+KOを含有する場合、0.5%以上10%以下であることが好ましい。LiO+NaO+KOは、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。また、LiO+NaO+KOは、6%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。「LiO+NaO+KO」はLiO、NaOおよびKOからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属酸化物成分の合量を示すものである。以下、同様に「+」で繋げられた構成は、「+」で繋がれた成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の合量を示すものである。
【0041】
LiOの含有割合は0%以上10%以下である。LiOを含有する場合の含有割合は0.2%以上10%以下である。LiOを含有させると、強度(Kc)およびクラック耐性(CIL)を向上させることができる。本発明の光学ガラスがLiOを含有する場合、その含有割合は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。一方、LiOは、多すぎると失透し易くなる。特に失透に対する品質が求められる場合にはLiOの含有割合は、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
本実施形態の光学ガラスを化学強化する場合には、LiOの含有割合は、3.0%以上が好ましく、6.0%以上がより好ましく、9.0%以上がさらに好ましく、11.0%以上が特に好ましい。
【0042】
NaOは失透を抑制し、Tgを低くする成分であり、その含有割合は0%以上10%以下である。NaOを含有させると、優れた失透抑制効果が得られる。本発明の光学ガラスがNaOを含有する場合、その含有割合は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上が特に好ましい。一方、NaOは、多すぎると、強度およびクラック耐性が低下し易い。特に強度が求められる場合のNaOの含有割合は、7%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0043】
LiOとNaOの合量が多くなるとTgが低くなる傾向にあるため、LiOとNaOの合量は0%以上10%以下が好ましい。より好ましくは6%以下であり、さらに好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
【0044】
Oは失透を抑制し、Tgを低くする成分であり、その含有割合は0%以上10%以下である。KOを含有させると、優れた失透抑制効果が得られる。本発明の光学ガラスがKOを含有する場合、その含有割合は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上が特に好ましい。一方、KOは、多すぎると、強度およびクラック耐性が低下し易い。特に強度が求められる場合のKOの含有割合は、7%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0045】
MgOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスのアッベ数や屈折率等の光学恒数を調整する成分である。一方、MgOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、MgOの含有割合は、0%以上10%以下が好ましい。MgOの含有割合は、8%以下がより好ましく、6%以下が特に好ましい。また、MgOの含有割合は、0.3%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましい。
【0046】
CaOは、失透を抑制する成分であるが、CaOの量が多いと、クラック耐性が低下し易い。そのため、CaOの含有割合は、0%以上25%以下が好ましい。CaOの含有割合は、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましい。また、CaOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0047】
SrOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスの光学恒数を調整する成分である。一方、SrOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、SrOの含有割合は、0%以上20%以下が好ましい。SrOの含有割合は15%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、4%以下が特に好ましい。また、SrOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0048】
MgOとCaOとSrOの合量が多くなるとガラスが失透しやすくなる。そのためMgOとCaOとSrOの合量は30%以下が好ましい。より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、特に好ましくは2%以下である。
【0049】
BaOは、失透を抑制する成分であるが、BaOの量が多いと、密度が大きくなりやすい。そのため、BaOが含有される場合には、0%以上30%以下が好ましい。BaOの含有割合は25%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、8%以下がさらに好ましく、4%以下が特に好ましい。また、BaOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0050】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)を含む場合には、アルカリ土類金属成分中のBaOの比(BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.5以下にすることで、比重を小さくすることができる。好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。アルカリ金属成分のうちBaOが含む割合を大きくすることで失透温度を低下させることができる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.4以上が特に好ましい。
【0051】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)とアルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の合量が多くなるとガラスのTgが低下しやすくなる。そのためアルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分の合量は30%以下が好ましい。より好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、特に好ましくは2%以下である。
【0052】
Alは、化学的耐久性を向上させる成分であるが、Alが多くなると、ガラスが失透し易くなる。そのため、Alの含有割合は0%以上5%以下が好ましい。Alの含有割合は3%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。またAlの含有割合は0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0053】
TiOはガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくする成分であり、その含有割合は、0%以上50%以下である。TiOを含有する場合、その含有割合は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましく、28%以上がさらに好ましく、30%以上がさらに好ましく、32%以上が特に好ましい。一方、TiOは多すぎると着色しやすく、また、透過率が低下する。そのため、特に透過率が求められる場合にはTiOの含有割合は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、37%以下がさらに好ましく、35%以下がさらに好ましく、34%以下がさらに好ましく、33%以下がさらに好ましく、32%以下が特に好ましい。
【0054】
を含有する場合にはBに対するTiOの比TiO/Bが大きいと、溶解温度を高くする必要が生じるためTiが還元されやすくなりガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのためBを含有する場合はTiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0055】
WOは添加することでガラスの失透を抑制させるが、その添加量が多すぎると、かえってガラスが失透し易くなる。そのため、WOの含有割合は0%以上10%以下が好ましい。WOの含有割合は、6%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、1.0%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。また、WOを添加することでガラスの屈折率を向上させることができる。そのため特に高い屈折率が求められる場合には、WOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0056】
Nbは、ガラスの屈折率を高めるとともに、アッベ数(v)を小さくする成分である。Nbの含有割合は、0%以上35%以下である。Nbの含有割合は、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、2.5%以上がさらに好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましい。
また、Nbは、多すぎると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、6%以下がさらに好ましく、4%以下がさらに好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0057】
TiOとWOとNbの合量が少なくなるとガラスの屈折率が低下する。そのためTiOとWOとNbの合量は10%以上50%以下が好ましい。より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは30%以上である。
【0058】
はガラスの屈折率を高めるとともに、ガラスのTを好ましい範囲に調整できる成分であり、その含有割合は0%以上7%以下である。Yの含有割合は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、2.5%以上がさらに好ましく、3%以上がさらに好ましく、3.5%以上がさらに好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。また、Yは、多すぎると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3.5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。
【0059】
ZrOはガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を高める成分であり、その含有割合は0%以上20%以下である。ZrOを含有することで、クラック耐性を向上させることができる。ZrOを含有する場合、その含有割合は、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上がさらに好ましく、6.5%以上が特に好ましい。一方、ZrOが多すぎると、失透しやすくなる。そのためより低い表面粗さRaが求められる用途については、ZrOの含有割合は、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。
【0060】
ZnOはガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上15%以下である。ZnOを含有する場合、その含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。一方、ZnOの量が多いと失透し易くなるため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、ZnOの含有割合は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0061】
Laはガラスの屈折率を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上35%以下である。Laを含有する場合、その含有割合は、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、16%以上がさらに好ましく、18%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。一方で、Laの量が多すぎると機械的特性が低下するとともに失透温度が上昇する。そのため、機械的特性や製造特性が重要となる場合には、Laの含有割合は、30%以下が好ましい。25%以下がより好ましく、22%以下がさらに好ましく、20%以下がさらに好ましく、19%以下がさらに好ましく、18%以下がさらに好ましく、17%以下が特に好ましい。
【0062】
Gdはガラスの屈折率を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上15%以下である。Gdを含有する場合、その含有割合は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。一方で、Gdの量が多すぎると機械的特性が低下するとともに失透温度が上昇する。そのため、機械的特性や製造特性が重要となる場合には、Gdの含有割合は、10%以下が好ましく、7%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、4%以下がさらに好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0063】
SiOとBの合量に対するZrOとTaとNbの合量の比(ZrO+Ta+Nb)/(SiO+B)が大きくなると、ガラスの失透粘性が低下しやすくなる。そのため(ZrO+Ta+Nb)/(SiO+B)は1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましく、0.4以下がさらに好ましく、0.35以下が特に好ましい。
【0064】
LaとGdとYとYbの合量に対するNbとTiOとWOとTaの合量の比(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が大きくなると、ガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのため(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は10.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましく、5.0以下がさらに好ましく、4.5以下がさらに好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.5以下がさらに好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.3以下が特に好ましい。一方で、(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が小さくなると、ガラスのTgが低下しやすくなる。そのため高い耐熱性が求められる用途に対しては(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましく、1.1以上がさらに好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.4以上がさらに好ましい、2.0以上がさらに好ましく、3.0以上がさらに好ましく、3.5以上が特に好ましい。
【0065】
Asは、有害な化学物質であるため、近年使用を控える傾向にあり、環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、実質的に含有しないことが好ましい。
【0066】
さらに本実施形態の光学ガラスには、SbおよびSnOのうちの少なくとも一種が含有されることが好ましい。これらは必須の成分ではないが、屈折率特性の調整、溶融性の向上、着色の抑制、透過率の向上、清澄、化学的耐久性の向上などの目的で添加できる。これらの成分を含有させる場合、合計で、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0067】
さらに本実施形態の光学ガラスには、Vを含有することが好ましい。Vは必須ではないが、透過率の向上、清澄性向上などの目的で添加できる。Vを含有させる場合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0068】
さらに本実施形態の光学ガラスには、Fが含有されることが好ましい。Fは必須ではないが、溶解性の向上、透過率の向上、清澄性向上などの目的で添加できる。Fを含有させる場合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0069】
さらに本実施形態の光学ガラスには、ガラス原料を溶融容器内で加熱、溶融し、溶融ガラスを得る溶融工程において、溶融ガラス中の水分量を高める操作を行うことが好ましい。ガラス中の水分量を高める操作は限定されないが、たとえば溶融雰囲気に水蒸気を付加する処理および溶融物内に水蒸気を含むガスをバブリングする処理が考えられる。水分量を高める操作は必須ではないが、透過率の向上、清澄性向上などの目的で行うことができる。
【0070】
また、本実施形態の光学ガラスでLiOやNaOのアルカリ金属酸化物を含有するものは、LiイオンをNaイオンまたはKイオンに、NaイオンをKイオンに置換することで、化学的に強化できる。すなわち、化学強化処理すれば、光学ガラスの強度を向上させることができる。
【0071】
<ガラス組成A1>
上記したガラス組成Aでアルカリ土類金属成分が5%以下であるガラス組成をガラス組成A1とし、各成分について説明する。このガラス組成A1で説明しなかった成分については、上記したガラス組成Aの成分の説明と同一であるため省略する。
【0072】
SiOは、ガラス形成成分であり、ガラスに高い強度とクラック耐性を付与し、ガラスの安定性および化学的耐久性を向上させる成分である。SiOの含有割合は、5%以上30%以下であることが好ましい。SiOの含有割合が5%以上で、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tを好ましい範囲にできる。SiOの含有割合は、7%以上が好ましく、9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、11%以上が特に好ましい。一方、SiOの含有割合が30%以下で、高い屈折率を得るための成分をより多く含有させることができる。SiOの含有割合は、25%以下がより好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、13%以下がさらに好ましく、12%以下が特に好ましい。
【0073】
は、Tgを低くし、ガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上し、失透温度を低下させる成分であるが、Bの量が多いと屈折率が低下し易い。そのため、Bの含有割合は5%以上40%以下が好ましい。Bの含有割合は、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がさらに好ましく、23%以上がさらに好ましく、22%以下が特に好ましい。また、Bの含有割合は、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、18%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。
【0074】
SiOとBはガラス形成成分であり、ガラスの安定性を向上させる成分であり、合量で20%以上45%以下である。SiOとBの合量が多いとガラスの失透温度が低下し、製造しやすくなる。そのためSiOとBの合量は20%以上である。25%以上が好ましく、28%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、32%以上が特に好ましい。一方で、SiOとBの合量を少なくすると屈折率を向上させることができる。そのため特に高い屈折率が求められる場合には、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下がさらに好ましく、33%以下がさらに好ましく、32%以下が特に好ましい。
【0075】
に対するSiOの比SiO/Bが大きいとガラスが失透しやすくなる。そのためSiO/Bは好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
【0076】
TiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)は、ガラスの屈折率を高める高屈折率成分である。これら成分の含有割合は合量で45%~80%であることが好ましい。特に高い屈折率が求められる場合は、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上がよりさらに好ましく、67%以上が特に好ましい。一方で、高屈折率成分が80%超であると失透しやすくなる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、これら成分の含有割合は、より好ましくは75%以下であり、さらに好ましくは70%以下であり、特に好ましくは68%以下である。
【0077】
MgOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスのアッベ数や屈折率等の光学恒数を調整する成分である。一方、MgOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、MgOの含有割合は、0%以上5%以下が好ましい。MgOの含有割合は、4%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。また、MgOの含有割合は、0.3%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましい。
【0078】
CaOは、失透を抑制する成分であるが、CaOの量が多いと、クラック耐性が低下し易い。そのため、CaOの含有割合は、0%以上5%以下が好ましい。CaOの含有割合は、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。また、CaOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0079】
SrOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスの光学恒数を調整する成分である。一方、SrOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、SrOの含有割合は、0%以上5%以下が好ましい。SrOの含有割合は15%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。また、SrOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0080】
MgOとCaOとSrOの合量が多くなるとガラスが失透しやすくなる。そのためMgOとCaOとSrOの合量は5%以下が好ましい。より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
【0081】
BaOは、失透を抑制する成分であるが、BaOの量が多いと、密度が大きくなりやすい。そのため、BaOが含有される場合には、0%以上5%以下が好ましい。BaOの含有割合は4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。また、BaOの含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0082】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)を含む場合には、アルカリ土類金属成分中のBaOの比(BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.5以下にすることで、比重を小さくすることができる。好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。アルカリ金属成分のうちBaOが含む割合を大きくすることで失透温度を低下させることができる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.4以上が特に好ましい。
【0083】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)とアルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の合量が多くなるとガラスのTgが低下しやすくなる。そのためアルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分の合量は15%以下が好ましい。より好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下である。
【0084】
に対するTiOの比TiO/Bが大きいと、溶解温度を高くする必要が生じるためTiが還元されやすくなりガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのためTiO/Bは好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0085】
ガラス組成A1で得られる光学ガラスは、1.92~2.15の範囲の高い屈折率(n)を有する。屈折率(n)が1.92以上である。この光学ガラスは、ウェアラブル機器に用いる光学ガラスとして画像の広角化、高輝度・高コントラスト化、導光特性向上、回折格子の加工容易性などの面で好適である。また車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどの用途に用いられる小型で撮像画角の広い撮像ガラスレンズとしては、より小型で広い範囲を撮影するために好適である。この屈折率(n)は好ましくは、1.95以上であり、より好ましくは1.97以上、さらに好ましくは1.98以上、さらに好ましくは1.99以上、さらに好ましくは2.00以上である。
一方で屈折率(n)が2.15を超えるガラスは密度が高くなりやすく、また失透温度が高くなりやすい傾向がある。特に、光学ガラスの密度の低さを重要視する場合には、この屈折率(n)は好ましくは、2.10以下であり、より好ましくは2.06以下、さらに好ましくは2.03以下、さらに好ましくは2.01以下、さらに好ましくは1.98以下、さらに好ましくは1.95以下、さらに好ましくは1.94以下、よりさらに好ましくは1.93以下である。
【0086】
また、ガラス組成A1で得られる光学ガラスは、4.0g/cm以上6.0g/cm以下となる密度(d)を有する。この光学ガラスは、上記した範囲の密度を有することで、ウェアラブル機器に用いられた場合にユーザーの装着感を好ましいものにでき、車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどに用いられた場合に、装置全体の重量を減量できる。この密度(d)は好ましくは5.8g/cm以下であり、より好ましくは5.6g/cm以下、さらに好ましくは5.4g/cm以下、さらに好ましくは5.2g/cm以下、さらに好ましくは5.1g/cm以下、さらに好ましくは5.0g/cm以下である。
一方で光学ガラスの表面に傷を付けにくくするためには、密度(d)は、4.0g/cm以上が好ましく、より好ましくは4.3g/cm以上、さらに好ましくは4.6g/cm以上であり、よりさらに好ましくは4.7g/cm以上、特に好ましくは4.8g/cm以上である。
【0087】
<ガラス組成A2>
上記したガラス組成Aでアルカリ土類金属成分が5%超50%以下かつBが15%未満であるガラス組成をガラス組成A2とし、各成分について説明する。このガラス組成A2で説明しなかった成分については、上記したガラス組成Aの成分の説明と同一であるため省略する。
【0088】
SiOは、ガラス形成成分であり、ガラスに高い強度とクラック耐性を付与し、ガラスの安定性および化学的耐久性を向上させる成分である。SiOの含有割合は、5%以上44%以下であることが好ましい。SiOの含有割合が5%以上で、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tを好ましい範囲にできる。SiOの含有割合は、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、24%以上がさらに好ましく、28%以上がさらに好ましく、30%以上が特に好ましい。一方、SiOの含有割合が44%以下で、高い屈折率を得るための成分を含有させることができる。SiOの含有割合は、37%以下がより好ましく、35.5%以下がさらに好ましく、34%以下がさらに好ましく、33%以下がさらに好ましく、31%以下が特に好ましい。
【0089】
は、ガラス形成成分であり、任意成分である。Bは、Tgを低くし、ガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上し、失透温度を低下させる成分である。屈折率と機械強度のバランスからBの含有割合は、0%以上15%未満が好ましい。Bの含有割合は、14%以下がより好ましく、13%以下がさらに好ましく、12%以下がさらに好ましく、11%以上がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。また、Bの含有割合は、1%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、5%以上がさらに好ましく、7%以上が特に好ましい。
【0090】
SiOとBはガラス形成成分であり、ガラスの安定性を向上させる成分であり、合量で30%以上70%以下である。SiOとBの合量が多いとガラスの失透温度が低下し、製造しやすくなる。そのためSiOとBの合量は30%以上である。32%以上が好ましく、34%以上がより好ましく、36%以上がさらに好ましく、37%以上が特に好ましい。一方で、SiOとBの合量を少なくすると屈折率を向上させることができる。そのため特に高い屈折率が求められる場合には、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0091】
を含有する場合、Bに対するSiOの比SiO/Bが大きいとガラスが失透しやすくなる。そのためBを含有する場合にSiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。
【0092】
TiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)は、ガラスの屈折率を高める高屈折率成分である。これら成分の含有割合は合量で30%~55%であることが好ましい。特に高い屈折率が求められる場合は、33%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、36%以上がさらに好ましく、37%以上がよりさらに好ましく、38%以上が特に好ましい。一方で、この高屈折率成分が多くなると失透しやすくなる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、これら成分の含有割合は、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、特に好ましくは35%以下である。
【0093】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)の含有割合は合量で0%以上10%以下である。このアルカリ金属成分を多くすることでTgを低くできる。しかし、LiO+NaO+KOが多くなりすぎると、Tが低くなり易く、粘性カーブが急峻になり製造特性が低下する。一方、LiO+NaO+KOが少なすぎると、Tが高くなり易く、溶解温度が高くなり着色する恐れがある。そのため、LiO+NaO+KOを含有する場合、0.5%以上10%以下であることが好ましい。LiO+NaO+KOは、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましく、2%以上がさらに好ましく、3%以上が特に好ましい。また、LiO+NaO+KOは、6%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0094】
LiOの含有割合は0%以上10%以下である。LiOを含有する場合の含有割合は0.2%以上10%以下である。LiOを含有させると、強度(Kc)およびクラック耐性(CIL)を向上させることができる。本発明の光学ガラスがLiOを含有する場合、その含有割合は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましく、2%以上が特に好ましい。一方、LiOは、多すぎると失透し易くなる。特に失透が問題になる場合にはLiOの含有割合は、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
本実施形態の光学ガラスを化学強化する場合には、LiOの含有割合は、3.0%以上が好ましく、6.0%以上がより好ましく、9.0%以上がさらに好ましく、11.0%以上が特に好ましい。
【0095】
CaOは、失透を抑制する成分であるが、CaOの量が多いと、クラック耐性が低下し易い。そのため、CaOの含有割合は、0%以上25%以下が好ましい。CaOの含有割合は、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下がさらに好ましく、6.5%以下が特に好ましい。また、CaOの含有割合は、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましい。
【0096】
SrOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスの光学恒数を調整する成分である。一方、SrOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、SrOの含有割合は、0%以上20%以下が好ましい。SrOの含有割合は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。また、SrOの含有割合は、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましい。
【0097】
MgOとCaOとSrOの合量が多くなるとガラスが失透しやすくなる。そのためMgOとCaOとSrOの合量は30%以下が好ましい。より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、特に好ましくは14%以下である。
【0098】
BaOは、失透を抑制する成分であるが、BaOの量が多いと、密度が大きくなりやすい。そのため、BaOが含有される場合には、0%以上30%以下が好ましい。BaOの含有割合は20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、11%以下がさらに好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。また、BaOの含有割合は、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、6%以上が特に好ましい。
【0099】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有割合は、その合量で5%以上50%以下である。この合量が50%以下であればガラスの失透を抑制できるので好ましい。より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは27%以下であり、さらに好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは23%以下であり、さらに好ましくは21%以下であり、特に好ましくは20%以下である。この合量が5%以上であれば、ガラスの溶融性を向上できるので好ましい。より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは13%以上であり、さらに好ましくは16%以上であり、さらに好ましくは18%以上であり、特に好ましくは19%以上である。
【0100】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)中のBaOの比(BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.5以下にすることで、比重を小さくすることができる。好ましくは0.45以下、より好ましくは0.42以下、さらに好ましくは0.40以下、特に好ましくは0.35以下である。アルカリ土類金属成分のうちBaOが含む割合を大きくすることで失透温度を低下させ、製造特性を向上させることができる。製造特性が特に重要な場合には、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.35以上が特に好ましい。
【0101】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)とアルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の合量が多くなるとガラスのTgが低下しやすくなる。そのためアルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分の合量は30%以下が好ましい。より好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは14%以下であり、さらに好ましくは13%以下であり、さらに好ましくは12%以下であり、特に好ましくは11.5%以下である。
【0102】
TiOはガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくする成分であり、その含有割合は、0%以上50%以下である。TiOを含有する場合、その含有割合は、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、17%以上がさらに好ましく、19%以上がさらに好ましく、20%以上がさらに好ましく、22%以上が特に好ましい。一方、TiOは多すぎると着色しやすく、また、透過率が低下する。そのため、特に透過率が求められる場合にはTiOの含有割合は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がさらに好ましく、23%以下がさらに好ましく、22%以下がさらに好ましく、21%以下が特に好ましい。
【0103】
を含む場合には、Bに対するTiOの比TiO/Bが大きいと溶解温度を高くする必要が生じるためTiが還元されやすくなりガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのためBを含む場合にはTiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.7以下である。
【0104】
Nbは、ガラスの屈折率を高めるとともに、アッベ数(v)を小さくする成分である。Nbの含有割合は、0%以上35%以下である。Nbの含有割合は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上がさらに好ましく、7%以上がさらに好ましく、8%以上がさらに好ましく、10%以上が特に好ましい。
また、Nbは、多すぎると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。
【0105】
TiOとWOとNbの合量が少なくなるとガラスの屈折率が低下する。そのためTiOとWOとNbの合量は10%以上50%以下が好ましい。より好ましくは14%以上であり、さらに好ましくは18%以上であり、さらに好ましくは22%以上であり、特に好ましくは26%以上である。一方で、TiOとWOとNbの合量が多くなると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、28%以下が特に好ましい。
【0106】
ZrOはガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を高める成分であり、その含有割合は0%以上20%以下である。ZrOを含有することで、クラック耐性を向上させることができる。ZrOを含有する場合、その含有割合は、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上が特に好ましい。一方、ZrOが多すぎると、失透しやすくなる。そのため特に製造特性が重要になる場合には、ZrOの含有割合は、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、6%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0107】
ZnOはガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上15%以下である。ZnOを含有する場合、その含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。一方、ZnOの量が多いと失透し易くなるため、ZnOの含有割合は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0108】
Laはガラスの屈折率を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上35%以下である。Laを含有する場合、その含有割合は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、6%以上がさらに好ましく、7%以上が特に好ましい。一方で、Laの量が多すぎると機械的特性が低下するとともに失透温度が上昇する。そのため、機械的特性や製造特性が重要となる場合には、Laの含有割合は、30%以下が好ましい。25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。
【0109】
LaとGdとYとYbの合量に対するNbとTiOとWOとTaの合量の比(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が大きくなると、ガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのため(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は10.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましく、5.0以下がさらに好ましく、4.5以下がさらに好ましく、4.0以下が特に好ましい。一方で、(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が小さくなると、ガラスのTgが低下しやすくなる。そのため高い耐熱性が求められる用途に対しては(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、3.0以上がさらに好ましく、3.5以上が特に好ましい。
【0110】
ガラス組成A2で得られる光学ガラスは、1.81~1.96の範囲の高い屈折率(n)を有する。屈折率(n)が1.81以上である。この光学ガラスは、ウェアラブル機器に用いる光学ガラスとして画像の広角化、高輝度・高コントラスト化、導光特性向上、回折格子の加工容易性などの面で好適である。また車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどの用途に用いられる小型で撮像画角の広い撮像ガラスレンズとしては、より小型で広い範囲を撮影するために好適である。この屈折率(n)は好ましくは、1.84以上であり、より好ましくは1.86以上、さらに好ましくは1.87以上、さらに好ましくは1.88以上、さらに好ましくは1.89以上、特に好ましくは1.90以上である。
一方で屈折率(n)が1.96を超えるガラスは密度が高くなりやすく、また失透温度が高くなりやすい傾向がある。特に、光学ガラスの密度の低さを重要視する場合には、この屈折率(n)は好ましくは、1.94以下であり、より好ましくは1.93以下、さらに好ましくは1.92以下、さらに好ましくは1.91以下、さらに好ましくは1.90以下、さらに好ましくは1.89以下、さらに好ましくは1.88以下、よりさらに好ましくは1.87以下である。
【0111】
また、ガラス組成A2で得られる光学ガラスは、3.3g/cm以上5.4g/cm以下となる密度(d)を有する。この光学ガラスは、上記した範囲の密度を有することで、ウェアラブル機器に用いられた場合にユーザーの装着感を好ましいものにでき、車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどに用いられた場合に、装置全体の重量を減量できる。この密度(d)は好ましくは5.2g/cm以下であり、より好ましくは5.0g/cm以下、さらに好ましくは4.8g/cm以下、さらに好ましくは4.6g/cm以下、さらに好ましくは4.4g/cm以下、さらに好ましくは4.2g/cm以下である。
一方で光学ガラスの表面に傷を付けにくくするためには、密度(d)は、3.6g/cm以上が好ましい。より好ましくは3.8g/cm以上、さらに好ましくは4.0g/cm以上であり、よりさらに好ましくは4.2g/cm以上、特に好ましくは4.3g/cm以上である。
【0112】
また、この光学ガラスは、失透温度は1300℃以下である。このような特性を有すると、成形時におけるガラスの失透を抑制でき、成形性が良好である。この失透温度は、より好ましくは1275℃以下、さらに好ましくは1240℃以下、さらにより好ましくは1225℃以下、さらにより好ましくは1200℃以下、さらにより好ましくは1175℃以下、さらにより好ましくは1150℃以下、さらにより好ましくは1125℃以下、さらにより好ましくは1100℃以下、さらにより好ましくは1075℃以下、特に好ましくは1050℃以下である。ここで、失透温度とは、加熱、溶融したガラスを自然放冷により冷却する際に、ガラス表面および内部に長辺又は長径で1μm以上の結晶の認められない最も低い温度である。
【0113】
<ガラス組成A3>
上記したガラス組成Aでアルカリ土類金属成分が5%超50%以下かつBが15%以上であるガラス組成をガラス組成A3とし、各成分について説明する。このガラス組成A3で説明しなかった成分については、上記したガラス組成Aの成分の説明と同一であるため省略する。
【0114】
SiOは、ガラス形成成分であり、ガラスに高い強度とクラック耐性を付与し、ガラスの安定性および化学的耐久性を向上させる成分である。SiOの含有割合は、5%以上44%以下であることが好ましい。SiOの含有割合が5%以上で、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tを好ましい範囲にできる。SiOの含有割合は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましく、13%以上がさらに好ましく、14%以上がさらに好ましく、15%以上が特に好ましい。一方、SiOの含有割合が44%以下で、高い屈折率を得るための成分を含有させることができる。SiOの含有割合は、37%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、23%以下がさらに好ましく、20%以下がさらに好ましく、17%以下が特に好ましい。
【0115】
は、ガラス形成成分であり、必須成分である。Bは、Tgを低くし、ガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上し、失透温度を低下させる成分であるが、Bの量が多いと屈折率が低下し易い。そのため、Bの含有割合は、15%以上40%以下が好ましい。Bの含有割合は、35%以下がより好ましく、32%以下がさらに好ましく、29%以下がさらに好ましく、27%以下がさらに好ましく、26%以下が特に好ましい。また、Bの含有割合は、18%以上がより好ましく、21%以上がさらに好ましく、23%以上がさらに好ましく、24%以上が特に好ましい。
【0116】
SiOとBはガラス形成成分であり、ガラスの安定性を向上させる成分であり、合量で30%以上70%以下である。SiOとBの合量が多いとガラスの失透温度が低下し、製造しやすくなる。そのためSiOとBの合量は30%以上であり、32%以上が好ましく、34%以上がより好ましく、36%以上がさらに好ましく、39%以上が特に好ましい。一方で、SiOとBの合量を少なくすると屈折率を向上させることができる。そのため特に高い屈折率が求められる場合には、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下がさらに好ましく、42%以下が特に好ましい。
【0117】
を含有する場合、Bに対するSiOの比SiO/Bが大きいとガラスが失透しやすくなる。そのためBを含有する場合にSiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。
【0118】
TiO、Ta、WO、Nb、ZrOおよびLn(LnはY、La、Gd、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である)は、ガラスの屈折率を高める高屈折率成分である。これら成分の含有割合は合量で30%~55%であることが好ましい。特に高い屈折率が求められる場合は、33%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、36%以上がさらに好ましく、37%以上がよりさらに好ましく、38%以上が特に好ましい。一方で、この高屈折率成分が多くなると失透しやすくなる。より低い表面粗さRaが求められる用途については、これら成分の含有割合は、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、特に好ましくは35%以下である。
【0119】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)の含有割合は合量で0%以上10%以下である。このアルカリ金属成分を多くすることでTgを低くできる。しかし、LiO+NaO+KOが多くなりすぎると、Tが低くなり易く、粘性カーブが急峻になり製造特性が低下する。一方、LiO+NaO+KOが少なすぎると、Tが高くなり易く、溶解温度が高くなり着色する恐れがある。そのため、LiO+NaO+KOを含有する場合、0.5%以上10%以下であることが好ましい。LiO+NaO+KOは、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましく、2%以上がさらに好ましく、3%以上が特に好ましい。また、LiO+NaO+KOは、6%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0120】
LiOの含有割合は0%以上10%以下である。LiOを含有する場合の含有割合は0.2%以上10%以下である。LiOを含有させると、強度(Kc)およびクラック耐性(CIL)を向上させることができる。本発明の光学ガラスがLiOを含有する場合、その含有割合は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましく、2%以上が特に好ましい。一方、LiOは、多すぎると失透し易くなる。特に失透が問題になる場合にはLiOの含有割合は、6%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.1%以下が特に好ましい。
本実施形態の光学ガラスを化学強化する場合には、LiOの含有割合は、3.0%以上が好ましく、6.0%以上がより好ましく、9.0%以上がさらに好ましく、11.0%以上が特に好ましい。
【0121】
CaOは、失透を抑制する成分であるが、CaOの量が多いと、クラック耐性が低下し易い。そのため、CaOの含有割合は、0%以上25%以下が好ましい。CaOの含有割合は、20%以下がより好ましく、17%以下がさらに好ましく、14%以下がさらに好ましく、13%以下がさらに好ましく、12%以下がさらに好ましく、11.5%以下が特に好ましい。また、CaOの含有割合は、4%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましく、10%以上がさらに好ましく、11%以上が特に好ましい。
【0122】
SrOは、ガラスの溶融性を向上させ、失透を抑制し、ガラスの光学恒数を調整する成分である。一方、SrOの量が多くなると、かえって失透を促進してしまう。そのため、SrOの含有割合は、0%以上20%以下が好ましい。SrOの含有割合は15%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。また、SrOの含有割合は、2%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、7%以上が特に好ましい。
【0123】
MgOとCaOとSrOの合量が多くなるとガラスが失透しやすくなる。そのためMgOとCaOとSrOの合量は30%以下が好ましい。より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは22%以下であり、さらに好ましくは21%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、特に好ましくは19.5%以下である。
【0124】
BaOは、失透を抑制する成分であるが、BaOの量が多いと、密度が大きくなりやすい。そのため、BaOが含有される場合には、0%以上30%以下が好ましい。BaOの含有割合は20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、11%以下がさらに好ましく、9%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。また、BaOの含有割合は、2%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、7%以上が特に好ましい。
【0125】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有割合は、その合量で5%以上50%以下である。この合量が50%以下であればガラスの失透を抑制できるので好ましい。より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは32%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは29%以下であり、さらに好ましくは28%以下であり、特に好ましくは20%以下である。この合量が5%以上であれば、ガラスの溶融性を向上できるので好ましい。より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは26%以上である。
【0126】
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)中のBaOの比(BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.5以下にすることで、比重を小さくすることができる。好ましくは0.45以下、より好ましくは0.42以下、さらに好ましくは0.40以下、特に好ましくは0.35以下である。アルカリ土類金属成分のうちBaOが含む割合を大きくすることで失透温度を低下させ、製造特性を向上させることができる。製造特性が特に重要な場合には、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.3以上が特に好ましい。
【0127】
アルカリ金属成分(LiO+NaO+KO)とアルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の合量が多くなるとガラスのTgが低下しやすくなる。そのためアルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分の合量は30%以下が好ましく、より好ましくは29%以下であり、さらに好ましくは28%以下であり、特に好ましくは27.5%以下である。
【0128】
TiOはガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくする成分であり、その含有割合は、0%以上50%以下である。TiOを含有する場合、その含有割合は、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、17%以上がさらに好ましく、19%以上がさらに好ましく、20%以上がさらに好ましく、20.5%以上が特に好ましい。一方、TiOは多すぎると着色しやすく、また、透過率が低下する。そのため、特に透過率が求められる場合にはTiOの含有割合は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がさらに好ましく、23%以下がさらに好ましく、22%以下がさらに好ましく、21%以下が特に好ましい。
【0129】
を含む場合には、Bに対するTiOの比TiO/Bが大きいと溶解温度を高くする必要が生じるためTiが還元されやすくなりガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのためBを含む場合にはTiO/Bは好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.0以下である。
【0130】
Nbは、ガラスの屈折率を高めるとともに、アッベ数(v)を小さくする成分である。Nbの含有割合は、0%以上35%以下である。Nbの含有割合は、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましく、2.0%以上がさらに好ましく、2.5%以上が特に好ましい。
また、Nbは、多すぎると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。
【0131】
TiOとWOとNbの合量が少なくなるとガラスの屈折率が低下する。そのためTiOとWOとNbの合量は10%以上50%以下が好ましい。より好ましくは14%以上であり、さらに好ましくは18%以上であり、さらに好ましくは22%以上であり、特に好ましくは23%以上である。一方で、TiOとWOとNbの合量が多くなると失透し易くなる。そのため、より低い表面粗さRaが求められる用途については、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下が特に好ましい。
【0132】
ZrOはガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を高める成分であり、その含有割合は0%以上20%以下である。ZrOを含有することで、クラック耐性を向上させることができる。ZrOを含有する場合、その含有割合は、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、3%以上がさらに好ましく、4%以上が特に好ましい。一方、ZrOが多すぎると、失透しやすくなる。そのため特に製造特性が重要になる場合には、ZrOの含有割合は、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、6%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0133】
ZnOはガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上15%以下である。ZnOを含有する場合、その含有割合は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。一方、ZnOの量が多いと失透し易くなるため、ZnOの含有割合は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0134】
Laはガラスの屈折率を向上させる成分であり、その含有割合は0%以上35%以下である。Laを含有する場合、その含有割合は、2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、4.5%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。一方で、Laの量が多すぎると機械的特性が低下するとともに失透温度が上昇する。そのため、機械的特性や製造特性が重要となる場合には、Laの含有割合は、30%以下が好ましい。25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましく、7%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましい。
【0135】
LaとGdとYとYbの合量に対するNbとTiOとWOとTaの合量の比(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が大きくなると、ガラスが着色し透過率が低下しやすくなる。そのため(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は10.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、7.0以下がさらに好ましく、6.0以下がさらに好ましく、5.5以下がさらに好ましく、5.0以下が特に好ましい。一方で、(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)が小さくなると、ガラスのTgが低下しやすくなる。そのため高い耐熱性が求められる用途に対しては(Nb+TiO+WO+Ta)/(La+Gd+Y+Yb)は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が特に好ましい。
【0136】
ガラス組成A3で得られる光学ガラスは、1.81~1.96の範囲の高い屈折率(n)を有する。屈折率(n)が1.81以上である。この光学ガラスは、ウェアラブル機器に用いる光学ガラスとして画像の広角化、高輝度・高コントラスト化、導光特性向上、回折格子の加工容易性などの面で好適である。また車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどの用途に用いられる小型で撮像画角の広い撮像ガラスレンズとしては、より小型で広い範囲を撮影するために好適である。この屈折率(n)は好ましくは、1.820以上であり、より好ましくは1.830以上、さらに好ましくは1.835以上、さらに好ましくは1.840以上、さらに好ましくは1.845以上、特に好ましくは1.850以上である。
一方で屈折率(n)が1.96を超えるガラスは密度が高くなりやすく、また失透温度が高くなりやすい傾向がある。特に、光学ガラスの密度の低さを重要視する場合には、この屈折率(n)は好ましくは、1.92以下であり、より好ましくは1.90以下、さらに好ましくは1.89以下、さらに好ましくは1.88以下、さらに好ましくは1.87以下、さらに好ましくは1.86以下、さらに好ましくは1.855以下、よりさらに好ましくは1.853以下である。
【0137】
また、ガラス組成A3で得られる光学ガラスは、3.3g/cm以上5.4g/cm以下となる密度(d)を有する。この光学ガラスは、上記した範囲の密度を有することで、ウェアラブル機器に用いられた場合にユーザーの装着感を好ましいものにでき、車載用カメラ、ロボット用視覚センサーなどに用いられた場合に、装置全体の重量を減量できる。この密度(d)は好ましくは5.2g/cm以下であり、より好ましくは5.0g/cm以下、さらに好ましくは4.6g/cm以下、さらに好ましくは4.2g/cm以下、さらに好ましくは4.1g/cm以下、さらに好ましくは4.0g/cm以下である。
一方で光学ガラスの表面に傷を付けにくくするためには、密度(d)は、3.6g/cm以上が好ましい。より好ましくは3.7g/cm以上、さらに好ましくは3.8g/cm以上であり、よりさらに好ましくは3.9g/cm以上、特に好ましくは3.95g/cm以上である。
【0138】
また、この光学ガラスは、失透温度は1300℃以下である。このような特性を有すると、成形時におけるガラスの失透を抑制でき、成形性が良好である。この失透温度は、より好ましくは1275℃以下、さらに好ましくは1240℃以下、さらにより好ましくは1225℃以下、さらにより好ましくは1200℃以下、さらにより好ましくは1175℃以下、さらにより好ましくは1150℃以下、さらにより好ましくは1100℃以下、さらにより好ましくは1050℃以下、さらにより好ましくは1025℃以下、特に好ましくは1020℃以下である。ここで、失透温度とは、加熱、溶融したガラスを自然放冷により冷却する際に、ガラス表面および内部に長辺又は長径で1μm以上の結晶の認められない最も低い温度である。
【0139】
[光学ガラスおよびガラス成形体の製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように製造される。すなわち、まず、上記所定のガラス組成となるように原料を秤量し、均一に混合する。作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融する。その後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝、強化白金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1200~1400℃の温度範囲で2~10時間溶融し、脱泡、撹拌などにより均質化して泡切れ等を行った後、金型に鋳込んで徐冷する。これにより本発明の光学ガラスが得られる。
【0140】
さらに、この光学ガラスは、溶融したガラスをフロート法、フュージョン法、ロールアウト法といった成型方法によって板状に成形することでガラス板にもできる。また、溶融したガラスを一旦ブロック状に成形したのち、リドロー法等でガラス板にもできる。また、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等の手段を用いて、ガラス成形体を作製できる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のレンズプリフォームを作製し、このレンズプリフォームに対してリヒートプレス成形した後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、例えば研磨加工を行って作製したレンズプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりできる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0141】
上記のように製造される本発明の光学ガラスの残留泡は、1kg当たり10個(10個/kg)以下が好ましく、7個/kg以下がより好ましく、5個/kg以下がさらに好ましく、3個/kg以下が特に好ましい。上記した方法でガラス板を成形する場合、残留泡が10個/kg以下であれば、泡の含まれないガラス板を効率よく成形できる。また、残留泡が内部に包まれる最小サイズの円の直径を残留泡の個々の大きさとしたとき、残留泡の個々の大きさは80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0142】
また、前記直径を残留泡の縦方向の長さLとし、この直径と垂直に交わる直線で残留泡の最大長さとなる直線の長さを残留泡の横方向の長さLとしたとき、残留泡の形状を縦横比で表すとL/Lは0.90以上が好ましく、0.92以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。このようにL/Lが0.90以上であれば、残留泡は真円(真球)に近い状態となり、例え残留泡が含まれていたとしても、楕円の残留泡と比べるとガラスの強度低下が抑えられ、ガラス板を作成するときに、残留泡が起点となる割れの発生を抑制できる。また、ガラス基板に残留泡が存在しても、楕円の残留泡と比べるとガラス板に入射する光の異方散乱が抑えられる効果も有する。残留泡の大きさや形状は、レーザ顕微鏡(キーエンス社製:VK-X100)によって測定された値から得られる。
【0143】
このようにして作製されるガラス板やガラス成形体のような光学部材は、様々な光学素子に有用であるが、その中でも特に、(1)ウェアラブル機器、例えばプロジェクター付きメガネ、眼鏡型やゴーグル型ディスプレイ、仮想現実拡張現実表示装置、虚像表示装置などに使われる導光体、フィルターやレンズ等、(2)車載用カメラ、ロボット用視覚センサーに使われるレンズやカバーガラス等、に好適に用いられる。車載用カメラのような過酷な環境に曝される用途であっても好適に用いられる。また、有機EL用ガラス基板,ウエハーレベルレンズアレイ用基板、レンズユニット用基板、エッチング法によるレンズ形成基板、光導波路といった用途にも好適に用いられる。
【0144】
以上説明した本実施形態の光学ガラスは高屈折率かつ低密度であるとともに、製造特性が良好であり、ウェアラブル機器、車載用、ロボット搭載用、の光学ガラスとして好適である。また、この光学ガラスの主表面にSiOなどの低屈折率膜と、TiOなどの高屈折率膜とを交互に積層した4~10層の誘電体多層膜からなる反射防止膜を形成した光学部品もウェアラブル機器、車載用、ロボット搭載用に好適である。
【実施例0145】
表1~9に示す化学組成(酸化物換算のモル%)となるように原料を秤量した。原料は、いずれも、各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物、水酸化物、メタリン酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定して使用した。
【0146】
秤量した原料を均一に混合し、内容積約300mLの白金ルツボ内に入れて、約1300℃で約2時間溶融、清澄、撹拌後、1300℃で0.5時間保持し、およそ650℃に予熱した縦50mm×横100mmの長方形のモールドに鋳込み後、約1℃/分で徐冷して例1~85のサンプルとした。なお、ここで例1~80が実施例、例81~85が比較例である。
【0147】
[評価]
上記で得られた各サンプルについて、屈折率(n)、密度(d)、失透温度、粘度(ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度T)、を次のように測定した。得られた結果を表1~9に併せて示した。
【0148】
屈折率(n):サンプルのガラスを一辺が30mm、厚さが10mmの三角形状プリズムに加工し、屈折率計(Kalnew社製、機器名:KPR-2000)により測定した。
密度(d):JIS Z8807(1976、液中で秤量する測定方法)に準じて測定した。
失透温度:白金皿にサンプル約5gを入れ、1000℃~1400℃まで5℃刻みにてそれぞれ1時間保持したものを自然放冷により冷却した後、結晶析出の有無を顕微鏡により観察して、長辺又は長径で1μm以上の結晶の認められない最低温度を失透温度とした。
【0149】
温度T:ASTM C 965-96に規定されている方法に従い、回転粘度計を用いてガラスの粘度を測定し、ガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度T(℃)を測定した。
【0150】
ガラス転移点(Tg):示差熱膨張計(TMA)を用いて測定した値であり、JIS R3103-3(2001年)により求めた。
ヤング率(E):20mm×20mm×1mmの板状のサンプルについて、超音波精密板厚計(OLYMPAS社製、MODEL 38DL PLUS)を用いて測定した(単位:GPa)。
【0151】
LTV:ガラス基板の板厚を非接触レーザ変位計(黒田精工製ナノメトロ)により、50mm×50mm×1mmの板状のサンプルについて、3mm間隔で測定し、LTVを算出した。
反り:ガラス基板の2つの主表面の高さを非接触レーザ変位計(黒田精工製ナノメトロ)により、直径8インチ×1mmおよび直径6インチ×1mmの円板状のサンプルについて、3mm間隔で測定し、図1を参照して説明した上記方法により反りを算出した。
表面粗さ(Ra):20mm×20mm×1mmの板状のサンプルについて、10μm×10μmのエリアを、原子間力顕微鏡(AFM)(オクスフォードインストゥルメンツ社製)を用いて測定した値である。
アッベ数(ν):上記屈折率測定に使用したサンプルを用いて、νd=(n-1)/(n-n)により算出する。nはヘリウムd線、nは水素F線、およびnは水素C線に対する屈折率である。これらの屈折率も上記した屈折率計を使用して測定した。
熱膨張係数(α):示差熱膨張計(TMA)を用いて50~350℃の範囲における線熱膨張係数を測定し、JIS R3102(1995年)により50~350℃の範囲における平均線熱膨張係数を求めた。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
【表7】
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
上記各実施例(例1~80)の光学ガラスは、いずれも、屈折率(n)が1.81以上と高屈折率である。また、密度が6.0g/cm以下と低い。またガラスの粘性が10dPa・sとなるときの温度Tが900~1200℃であるため製造特性が良好である。また、失透温度が1300℃以下であるため製造特性が良好である。そのため、ウェアラブル機器や車載用カメラやロボット用視覚に用いられる光学ガラスに好適である。
【0162】
一方、比較例である例81および例84のガラスは、失透温度が1300℃より高く製造特性が劣る。例81、82および例83のガラスは、屈折率(nd)が1.81より低い。例85のガラスは、Siの含有量が5モル%より低い。
【0163】
上記各実施例(例1~80)のガラス組成を溶融したガラスから得られる光学ガラスは、温度Tが900~1200℃であるため製造特性が良好であるため、残留泡の大きさは小さく個数も少ないので、泡、異物、脈理、分相等の欠点が存在しないガラス板が得られる。したがって、上記したような大きさのサンプルを形成するとLTVの値は2μm以下、反りの値(直径6インチの円形のガラス板)は30μm以下、Raの値は2nm以下の光学ガラスを得ることができる。さらに、失透温度が1300℃以下であり失透の発生を抑えられるため、LTVの値は1.5μm以下、反りの値(直径6インチの円形のガラス板)は18μm以下、Raの値は1nm以下を実現できると考えられる。
【0164】
本実施例の上記欠点が存在しない3種のガラス板を精密研磨したところ、LTVの値は1.0、1.2、1.2μm,反りの値は45、32、38,Raの値は0.198、0.284、0.266が得られた。よって本発明の実施例の上記の欠点が存在しないガラス板を精密研磨することでLTVの値は2μm以下、反りの値は50μm以下、Raの値は2nm以下の光学ガラスを得ることができる。
【0165】
本発明のガラスを化学強化する際には、たとえば硝酸ナトリウム塩を400℃に加熱し溶融した融液に、ガラスを30分浸漬し、化学強化処理を行って強化ガラスを得ることができる。
【0166】
以上より、本発明の光学ガラスは、高屈折率かつ低密度であるとともに、製造特性が良好であり、ウェアラブル機器、車載用、ロボット搭載用、等の光学ガラスとして好適である。上記実施例の光学ガラスにSiOなどの低屈折率膜と、TiOなどの高屈折率膜とを交互に積層した4~10層の誘電体多層膜からなる反射防止膜を形成した光学部品も、ウェアラブル機器、車載用、ロボット搭載用として好適である。
【0167】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年8月31日出願の日本特許出願(特願2018-163582)、2018年11月21日出願の日本特許出願(特願2018-218577)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の主表面の25cm におけるLTVが2μm以下である導光板用ガラス板であって、
屈折率(n)が1.88~2.10であり
化物基準のモル%表示で、
SiOの含有割合が10%~30%であり、
の含有割合が5%~23%であり、
BaOの含有割合が0%~15%であり、
ZnOの含有割合が0%~5%であり、
ZrO の含有割合が5%~10%であり、
TiO の含有割合が10%~34%であり、
Nb の含有割合が3%~6%であり、
La の含有割合が10%~30%であり、
Gd の含有割合が0%~5%であり、
の含有割合が0%~5%であり、
に対するSiO の比SiO /B が3.0以下であり、
SiO とB の合量に対するZrO とTa とNb の合量の比(ZrO +Ta +Nb )/(SiO +B )が0.6以下である、
導光板用ガラス板。
【請求項2】
一の主表面の25cm におけるLTVが2μm以下である導光板用ガラス板であって、
屈折率(n )が1.89~1.93であり、
酸化物基準のモル%表示で、
アルカリ土類金属成分(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有割合が19%~25%であり、
SiO の含有割合が28%~34%であり、
の含有割合が5%~12%であり、
BaOの含有割合が6%~11%であり、
ZnOの含有割合が0%~2%であり、
ZrO の含有割合が1%~5%であり、
TiO の含有割合が17%~23%であり、
Nb の含有割合が4%~7%であり、
La の含有割合が4%~10%であり、
Gd の含有割合が0%~5%であり、
アルカリ金属成分とアルカリ土類金属成分の合量は30%以下であり、
La とGd とY とYb の合量に対するNb とTiO とWO とTa の合量の比(Nb +TiO +WO +Ta )/(La +Gd +Y +Yb )は2.0~5.0である、
導光板用ガラス板。
【請求項3】
一の主表面の25cm におけるLTVが2μm以下である導光板用ガラス板であって、
屈折率(n )が1.99~2.06であり、
酸化物基準のモル%表示で、
SiO の含有割合が7%~12%であり、
の含有割合が18%~25%であり、
BaOの含有割合が0%~4%であり、
ZnOの含有割合が0%~2%であり、
ZrO の含有割合が5%~8%であり、
TiO の含有割合が25%~34%であり、
Nb の含有割合が3%~6%であり、
La の含有割合が15%~25%であり、
Gd の含有割合が0%~5%であり、
の含有割合が2.5%~5%であり、
に対するSiO の比SiO /B が3.0以下であり、
SiO とB の合量に対するZrO とTa とNb の合量の比(ZrO +Ta +Nb )/(SiO +B )が0.6以下である、
導光板用ガラス板。
【請求項4】
一の主表面の25cm におけるLTVが2μm以下である導光板用ガラス板であって、
屈折率(n )が1.94~2.10であり、
密度(d)が4.0~5.2g/cm であり、
酸化物基準のモル%表示で、
SiO の含有割合が9%~20%であり、
の含有割合が12%~22%であり、
BaOの含有割合が0.5%~15%であり、
ZnOの含有割合が0.5%~5%であり、
ZrO の含有割合が3%~10%であり、
TiO の含有割合が28%~37%であり、
Nb の含有割合が2.5%~6%であり、
La の含有割合が10%~18%であり、
Gd の含有割合が0%~5%であり、
の含有割合が0%~5%であり、
Li Oの含有割合が0%~4%であり、
CaOの含有割合が0%~6%であり、
SrOの含有割合が0%~4%であり、
に対するSiO の比SiO /B が3.0以下であり、
SiO とB の合量に対するZrO とTa とNb の合量の比(ZrO +Ta +Nb )/(SiO +B )が0.6以下である、
導光板用ガラス板。
【請求項5】
ヤング率(E)が60GPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導光板用ガラス板
【請求項6】
アッベ数(v)が18以上30以下、50~350℃での熱膨張係数αが80~95×10-7/Kである、請求項1~5のいずれか1項に記載の導光板用ガラス板