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  • 特開-帯電防止表面保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096434
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】帯電防止表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240705BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20240705BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240705BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240705BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240705BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240705BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J133/04
C09J133/06
C09J133/14
C09J175/04
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077176
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2023035418の分割
【原出願日】2019-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】塚田 高士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】廣神 萌美
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓太
(57)【要約】
【課題】低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有するとともに、帯電防止性能と、耐汚染性能との両立を図ることが可能な帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム1の片面に、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの合計100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを1.0~6.0重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させたアクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2が形成されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる帯電防止表面保護フィルムであって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部と、
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、
をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、
前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなり、
前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤としてのアルカリ金属塩を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合せてなり、前記剥離剤層の前記帯電防止剤が、前記粘着剤層の表面に転写されてなり、
前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項3】
前記剥離剤層中のシリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項4】
前記剥離剤層中の帯電防止剤が、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用表面保護フィルム等の表面保護フィルムに好適に使用することができる帯電防止表面保護フィルムの製造方法、帯電防止表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有するとともに、帯電防止性能と耐汚染性能との両立を図ることが可能な帯電防止表面保護フィルムの製造方法、帯電防止表面保護フィルムを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板などの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼合される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、光学部材の製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このような光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されている。また、表面保護フィルムの粘着剤層の表面には、光学部材に貼合するまで、その粘着剤層を保護するために、離型処理された離型フィルムが貼合されている。
そして、偏光板などの光学部材は、表面保護フィルムが貼合された状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を受ける。このため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が混入していないこと、及び粘着剤組成物の低分子量成分が被着体の表面に付着するのを低減できること、即ち、耐汚染性能を有することが求められている。
また、偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がす際に、粘着剤層が被着体から剥がれる時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念される。このため、表面保護フィルムの粘着剤層には、優れた帯電防止性能を有することが求められている。
さらに、近年では、偏光板の偏光子の保護層(保護フィルムと呼ばれることもある。)として、従来、用いられているトリアセチルセルロース(TAC)以外に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー、ポリカーボネートなどの、偏光板の表面保護フィルムを剥がす時に、剥離帯電を起こし易い材料の採用が拡大している。このため、偏光板の表面保護フィルム用の粘着剤層に求められる帯電防止性能が、従来に比べて優れていることが必要とされている。
また、最終的に偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対して、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、(3)優れた帯電防止性能を有することなどが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能について、これら(1)~(3)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)~(3)の全ての要求性能を、同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、及び、(3)優れた帯電防止性能を有することについては、それぞれ、次のような提案が知られている。
【0006】
(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることに関しては、炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間接着した場合に粘着剤の被着体側への移着が生じ、また被着体に対する接着力の経時上昇性が大きいという問題があった。これを回避するため、炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコール性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した、ゲル分率が60%以上の粘着剤層、及びその粘着剤層を設けた表面保護部材が知られている(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の粘着剤層では、被着体に対する接着力が、経時変化で増大するのを完全に解決できていないという問題があった。
また、上記と同様の共重合体に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている。しかし、これらの粘着剤層は、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じるという問題や、手作業領域である高速の剥離速度での粘着力が大きくて再剥離性に劣るという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解決するため、a)炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1~15重量部と、c)炭素数が1~5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3~100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層では、加工時や保存時において、浮きなどの剥離現象を生じることがなく、その上、接着力の経時上昇性が小さくて再剥離性に優れており、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際に被着体上に糊残りを生じず、また高速剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
しかし、特許文献2に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層では、実施例1~3における粘着剤層のゲル分率がいずれも90%であり、低速の剥離速度での粘着力が過大になり易く、粘着剤層から未重合モノマーあるいはオリゴマーが溶出し易い。また、特許文献2には、帯電防止性能及び耐汚染性能に関する記載はなく、剥離帯電を起こし易い材料を被着体とした場合に、優れた帯電防止性能及び耐汚染性能を備えた粘着剤層に改良することが難しいという問題があった。
【0008】
また、(2)耐汚染性能を有することについては、0質量部以上0.5質量部未満のカルボキシル基含有モノマー、0.6~9質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.4~90.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり、重量平均分子量が10万以上100万未満である(メタ)アクリル系共重合体100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤0.1~5質量部を含む粘着剤組成物が開示されている(特許文献3)。
特許文献3に記載の粘着剤組成物では、特定組成の(メタ)アクリル系共重合体の架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を使用することを特徴とする。これにより、オートクレーブ処理時の圧力及び温度による収縮に追従しうる架橋構造を有する、粘着剤層を提供できる。このため、特許文献3に記載の粘着剤組成物を使用して形成された粘着剤層は、高温・高圧条件下(オートクレーブ処理時)であっても発泡を抑制・防止でき、耐汚染性能に優れ、また、透明性にも優れるとしている。
しかし、特許文献3に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層では、耐汚染性能が改良されているものの、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることによる優れた粘着性能とともに、帯電防止性能を両立させることは実現できておらず、更に解決すべき課題として残されている。
【0009】
また、(3)優れた帯電防止性能を有することについては、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが知られている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献4)。
しかし、特許文献4に記載の表面保護フィルムにおいては、被着体へのゴミの付着に係わる帯電防止性能の付与に関する記載はあるものの、優れた粘着性能とともに、耐汚染性能を両立させる解決手段は記載されておらず、更に解決すべき課題として残されている。
【0010】
また、近年では、帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布したりするのではなく、直接に粘着剤層に含有させることが提案されている。例えば、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が、ポリエーテル基を主鎖中に含むポリエーテルエステル系可塑剤に溶解された状態で分散されていることを特徴とする制電性粘着剤組成物が開示されている(特許文献5)。
特許文献5に記載の粘着剤組成物では、可塑剤として飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸と、炭素数1~20の非環式炭化水素基を有するアルコールとから形成されるエステル、あるいは、前記不飽和の非環式炭化水素基中の不飽和基がエポキシ化されたエステルからなる可塑剤を使用することが開示されている。このような飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸は、粘着剤層に使用されるアクリル共重合体を構成するアクリル単量体の炭素数と近い炭素数を有することにより、制電性粘着剤組成物との相溶性が良好になり、可塑剤がアクリル系制電性粘着剤組成物中に好適に保持されるため、ブリードアウトが抑制されるとしている。
しかし、特許文献5に記載の制電性粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層においては、帯電防止性能及びブリードアウトの改良技術の開示は有るものの、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることによる優れた粘着性能が得られることの記載はなく、優れた粘着性能を有する粘着剤層を得るという課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-225677号公報
【特許文献2】特開平11-256111号公報
【特許文献3】特開2011-122054号公報
【特許文献4】特開平11-070629号公報
【特許文献5】特開2014-118469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、を同時に達成するという課題を解決する従来技術は見当たらない。
また、従来から、帯電防止性能を備えた粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層、およびそれを用いた表面保護フィルムの、帯電防止性能と、被着体への耐汚染性能との関係はトレードオフの関係にあり、帯電防止性能を維持したまま、耐汚染性能を改善することは困難であった。
更に近年では、表面保護フィルムが貼合される被着体の材質の種類が増え、且つ、被着体の表面処理した状態も多岐にわたるため、表面保護フィルムを構成する粘着剤層が、全ての被着体に対して、特に、上記の(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、及び(2)耐汚染性能を有することが増々難しくなっている。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有するとともに、帯電防止性能と、耐汚染性能との両立を図ることが可能な帯電防止表面保護フィルムの製造方法、帯電防止表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の帯電防止表面保護フィルムは、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートのうち、2-エチルヘキシルアクリレートと、ホモポリマーのガラス転移点温度(Tg)が0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーとの含有割合を特定の範囲に規定している。さらに、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、その粘着剤層の表面に適量の20℃において液体のシリコーン系化合物および帯電防止剤を付与することにより、被着体に対する汚染性を低く抑えた(耐汚染性能を有する)上、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は、帯電防止表面保護フィルムの製造方法であって、次の工程(1)~(3)、
工程(1):アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~50重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなり、前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなる粘着剤組成物を作製する工程と、
工程(2):透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を作製する工程と、
工程(3):前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合せ、前記剥離剤層の前記帯電防止剤を、前記粘着剤層の表面に転写させる工程と、を工程(1)~(3)の順に経て作製され、前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムの製造方法を提供する。
【0016】
また、前記ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーが、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートからなる化合物群から選択した1種以上であることが好ましい。
【0017】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる帯電防止表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~50重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなり、前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなり、前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合せてなり、前記剥離剤層の前記帯電防止剤が、前記粘着剤層の表面に転写されてなり、前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0019】
また、前記ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーが、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートからなる化合物群から選択した1種以上であることが好ましい。
【0020】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0021】
また、前記(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0022】
また、偏光板用表面保護フィルムとして用いられる、帯電防止表面保護フィルムであり、前記偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムよりなる群から選択された少なくとも1種であり、かつ、前記偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
また、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0024】
また、前記(D)架橋遅延剤が、ケトエノール互変異性体の化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有してなり、前記(E)架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、前記(D)/前記(E)の重量部比率が、80~1000であることが好ましい。
【0025】
また、前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、HLB値が6~12で重量平均分子量が10000以下であるポリエーテル変性シロキサン化合物を、0.01~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0026】
また、前記剥離剤層中のシリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0027】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤が、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なく、被着体に対する耐汚染性能が経時変化しない。また、本発明によれば、LR偏光板やAG-LR偏光板などの、被着体の表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学用フィルムであっても、帯電防止表面保護フィルムを、被着体から剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
【0029】
本発明の帯電防止表面保護フィルムによれば、PMMAを基材とする偏光板用表面保護フィルムにおいても、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、及び(2)耐汚染性能を有することを両立させることができる。
また、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートのうち、2-エチルヘキシルアクリレートと、ホモポリマーのガラス転移点温度(Tg)が0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーとの含有割合を特定の範囲に規定したことにより、特に、PMMAを基材とする偏光板用表面保護フィルムにおいても、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、及び(2)耐汚染性能を有することを両立させることができる。
【0030】
なお、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上を含有させることが、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、及び(2)耐汚染性能を有することを両立させることに寄与している理由は、明確ではない。考えられる理由としては、これらのメタクリレートモノマーは、カルボキシル基やアミド基のような極性官能基、あるいはC10を超える長鎖のアルキル基を有しないにもかかわらず、Tgの高いポリマーが得られるため、架橋状態における粘着性能を大きく改善できること、また、偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層がPMMA系フィルムの場合には、該PMMA系フィルムの主成分であるメチルメタクリレートとの親和性が向上すること等がその理由として推定される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
図2】本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本実施形態の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この帯電防止表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に剥離剤層4が形成された剥離フィルム5が、貼合されている。
【0033】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、帯電防止表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
【0034】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0035】
また、本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がすことができ、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤であれば特に限定されるものではないが、光学用フィルムに貼合後の耐久性などを考慮すると、アクリル系ポリマーを架橋させたアクリル系の粘着剤層を用いるのが一般的である。
【0036】
前記粘着剤層2を構成する粘着剤組成物としては、アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~50重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上の合計を100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなり、前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなる粘着剤組成物が挙げられる。
【0037】
前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、非環状(直鎖、分枝状)、環状(単環、多環)のいずれでもよい。
【0038】
前記アクリル系ポリマーは、前記(A)の合計の100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなることが好ましい。
また、2-エチルヘキシルアクリレートは、前記(A)の合計の100重量部のうち、50重量部以上の割合で含有することが好ましく、60重量部以上の割合で含有することがより好ましく、70重量部以上の割合で含有することが特に好ましい。
また、前記(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートのうち、Tgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーとしては、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタメタクリレートからなる化合物群から選択した1種以上が挙げられる。これらのTgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの中でも、アルキル基の炭素数がC1~C6であるメタクリレートモノマーが好ましく、アルキル基の炭素数がC1~C4であるメタクリレートモノマーがより好ましく、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートからなる化合物群から選択した1種以上であることが特に好ましい。
また、Tgが0℃以上である単官能のメタクリレートモノマーの1種以上の合計は、前記(A)の合計の100重量部のうち、5~40重量部の割合で含有することが好ましく、8~40重量部の割合で含有することがより好ましく、10~35重量部の割合で含有することが特に好ましい。なお、以下の説明において、モノマーについて、単にTgという場合は、ホモポリマーのTgを指す場合がある。
【0039】
前記アクリル系ポリマーに用いられる(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、前記(A)の合計の100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部の割合で含有してなることが好ましく、2.0~6.0重量部の割合で含有してなることがより好ましく、2.5~5.5重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0040】
前記アクリル系ポリマーは、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合させるのが好ましい。さらに、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、前記アクリル系ポリマーとは別の成分として、粘着剤組成物に添加されてもよい。いずれの場合も、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、帯電防止補助剤として機能することができる。
【0041】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記アクリル系ポリマーに共重合することができる。他の水酸基がOHのままである、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであってもよく、他の水酸基がアルキルエーテルに変換されたアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等であってもよい。なお、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、前記(F)に該当することから、水酸基を含有しても、前記(B)には分類されない。
【0042】
前記ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコールとしては、1種または2種以上のアルキレン基を有するグリコール化合物であればよく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールなどが挙げられる。
【0043】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
また、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分は、0.2%以下であることが好ましい。「モノマー中のジエステル分」とは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
【0044】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0045】
前記アクリル系ポリマーは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上を、前記(A)の合計の100重量部に対して、1~50重量部の割合で共重合してなることが好ましく、1~35重量部の割合で共重合してなることがより好ましく、1~25重量部の割合で共重合してなることが特に好ましい。
【0046】
前記アクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万超過100万以下であることが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させたアクリル系ポリマーである。前記アクリル系ポリマーの酸価は、0.1~1.0であることが好ましい。これにより、耐汚染性能を改善することができる。ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0047】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、架橋剤として、(C)3官能以上のイソシアネート化合物を含有する。(C)3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。(C)3官能以上のイソシアネート化合物の割合としては、例えば、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~10重量部の割合で含有するのが好ましく、0.1~6重量部の割合で含有するのがより好ましい。
【0048】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(D)架橋遅延剤を含有する。(D)架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性体の化合物であり、(C)3官能以上のイソシアネート化合物の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。(D)架橋遅延剤は、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(D)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有することが好ましい。
【0049】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤を含有する。(E)架橋促進剤は、(C)3官能以上のイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよい。(E)架橋促進剤としては、金属キレート化合物が好ましい。金属キレート化合物は、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0050】
(E)架橋促進剤としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0051】
(D)架橋遅延剤は、(E)架橋促進剤とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(D)架橋遅延剤と(E)架橋促進剤との割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、(D)/(E)の重量部比率が、80~1000であることが好ましく、80~700であることがより好ましく、80~300であることが特に好ましい。ここで、(D)/(E)の重量部比率とは、(D)の重量部を(E)の重量部で除算して得られた商の値である。
【0052】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、任意成分として、(G)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してもよい。前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。ポリエーテル基を有するシロキサン単位において、ポリエーテル基の末端がOH基(上記一般式においてR=H)であってもよい。
【0053】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が6~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01~0.5重量部の割合で含有することが好ましく、0.02~0.35重量部の割合で含有することがより好ましく、0.02~0.25重量部の割合で含有することが特に好ましい。HLB値とは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0054】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
【0055】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤層の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、10000以下であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーとの相溶性の観点からは、HLB値が低く、分子量が低い方が相溶性は良好であるが、分子量が低いポリエーテル変性シロキサン化合物であれば、HLB値が比較的高く、前記アクリル系ポリマーとの相溶性がやや低くても、優れた帯電防止性が得られる。
【0056】
本実施形態の粘着剤組成物は、上述の添加剤に限らず、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0057】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5~40μm程度の厚みが好ましく、10~30μm程度の厚みがより好ましい。帯電防止表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03~0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。また、帯電防止表面保護フィルム10から剥離フィルム5を剥がす時の操作性に優れることから、剥離フィルム5の粘着剤層2からの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される剥離フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により、剥離剤層4が形成されている。
【0059】
樹脂フィルム3としては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。樹脂フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
樹脂フィルム3の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、樹脂フィルム3の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0060】
剥離剤層4を構成するジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS-776A、KS-847T、KS-779H、KS-837、KS-778、KS-830(信越化学工業(株)製)、SRX-211、SRX-345、SRX-357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC-300B、LTC-350G、LTC-310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX-290、SYLOFF-23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR-6501、TPR-6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62-7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62-7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0061】
剥離剤層4を構成する20℃において液体のシリコーン系化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられる。本実施形態では、粘着剤層の表面の帯電防止性を向上するために、ジメチルポリシロキサンを主成分とした剥離剤層の中に相溶している状態の20℃において液体のシリコーン系化合物が用いられる。本実施形態の用途には、変性シリコーン化合物の中でも、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリエーテル鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどで構成され、例えば、側鎖に用いるポリエチレンオキサイドの分子量を選択することにより、シリコーン剥離剤との相溶性や帯電防止効果などの物性が調整される。
また、ポリエーテル変性シリコーンとして市販されている製品には、例えば、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-642(信越化学工業(株)製)、SH8400、SH8700、SF8410(東レダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4441、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4450(モメンティブパーフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK-300、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK-330(ビックケミー社製)などが挙げられる。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する20℃において液体のシリコーン系化合物の添加量は、シリコーン化合物の種類や剥離剤との相溶性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する耐汚染性能、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0062】
剥離剤層4を構成する帯電防止剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤溶液に対して分散性の良いもので、かつ、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。こうした帯電防止剤としてはアルカリ金属塩が好適である。前記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられる。具体的には、例えば、Li、Na、Kよりなるカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSO、(CFSOよりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。特に、剥離剤層4中の帯電防止剤が、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。ここで、LiTFSIは、Li(CFSONを表す。また、LiFSIは、Li(FSONを表す。また、LiTFは、LiCFSOを表す。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や剥離剤との親和性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する耐汚染性能、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0063】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちにポリエーテル変性シリコーン及び帯電防止剤と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、シロキサンを主成分とする剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後ポリエーテル変性シリコーンと帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤やポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料、を添加しても良い。
【0064】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤との混合比率は、特に限定はないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100重量部に対して、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤を固形分として5~100重量部程度の重量比が好ましい。ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100重量部に対して5重量部の割合より少ないと、粘着剤層の表面への帯電防止剤の転写量も少なくなり、粘着剤に帯電防止の機能が発揮され難くなる。また、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100重量部に対して100重量部の割合を越えると、ポリエーテル変性シリコーンおよび帯電防止剤とともにジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤も、粘着剤層の表面に転写されてしまうため、粘着剤の粘着特性を低下させる可能性がある。
【0065】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、剥離フィルム5を貼合する方法、(2)剥離フィルム5の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0066】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
また、同様に、樹脂フィルム3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0067】
図2は、帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がした状態を示す断面図である。図1に示した帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がすことにより、剥離フィルム5の剥離剤層4に含まれる帯電防止剤7の一部が、帯電防止表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に、転写される(付着する)。そのため、図2においては、帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層2の表面に転写された帯電防止剤を、符号7の斑点で模式的に示している。
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルムでは、図2に示した剥離フィルムを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に転写された帯電防止剤7が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。なお、帯電防止剤7に加えて、20℃において液体のシリコーン系化合物が剥離剤層4から粘着剤層2の表面に転写されてもよい。
【0068】
図3は、本実施形態の光学部品の実施例を示した断面図である。
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、図3には、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10が貼合された光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、低反射処理偏光板(LR偏光板)やアンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)などの光学用フィルムの、防汚染処理した面に貼合される、帯電防止表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
本実施形態の光学部品によれば、帯電防止表面保護フィルム10を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【0069】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10は、偏光板用表面保護フィルムとして好適である。帯電防止表面保護フィルム10の粘着剤層2が、偏光板の偏光子の保護層に貼合されてもよい。ここで、偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された少なくとも1種以上が挙げられる。ここで、TACはトリアセチルセルロース、PMMAはポリメチルメタクリレート、PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
また、偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0070】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10において、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましく、1.0×10+11Ω/□以下であることが特に好ましい。粘着剤層2の表面抵抗率が大きいと、粘着剤層2を被着体から剥離する時に発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、粘着剤層2の表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層2を被着体から剥離する時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体に影響することを抑制することができる。
【0071】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10において、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層2の剥離帯電圧が+0.3~-0.3kVの範囲内であることが好ましい。低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物等の縮合物が挙げられる。含フッ素共重合体は、フッ素化されたモノマーに加えて、オレフィン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート等の、フッ素化されていないモノマーが共重合されていてもよい。低屈折率層は、高屈折率層等と組み合わせて反射防止層を構成してもよい。
【0072】
低屈折率層に対する剥離帯電圧を測定する際に、表面に低屈折率層を形成するための基材としては、PMMA基材およびTAC基材が挙げられる。また、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10において、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2は、PMMA基材およびTAC基材の表面に何も処理されていないプレーン層に対する剥離帯電圧が、+0.3~-0.3kVの範囲内であることが好ましい。
【0073】
粘着剤層2が、偏光板等の被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に2日(48hr)放置し、前記雰囲気下から取り出し後、1日経過した後に剥がした際に汚染が無いことが好ましい。被着体としては、偏光子に保護層を積層し、保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理された偏光板が挙げられる。低反射表面処理に用いられるフッ素化合物を含有する組成物は、上述のフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物と同一でもよく、異なってもよい。保護層及び表面処理としては、上述の偏光子の保護層及びその表面に施されている表面処理が挙げられる。具体的には、表面基材がTAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された1種であり、かつ、前記表面基材の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種である偏光板が挙げられる。
【0074】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10において、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2を、厚さ38μmのポリエステルフィルムの片面に、15μmの厚さに積層してなる帯電防止表面保護フィルム10が、偏光板の表面に貼り合わされた後に、前記偏光板から帯電防止表面保護フィルム10を剥離するときの、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましく、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が0.2~0.8N/25mmであることがより好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、帯電防止表面保護フィルム10を剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0075】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10において、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2のゲル分率は、95~100%であることが好ましく、97~100%であることがより好ましい。このように粘着剤層2のゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度での粘着力が過大にならず、粘着剤層2からの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0076】
本実施形態の粘着フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本実施形態の表面保護フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。本実施形態の表面保護フィルムは、粘着剤層2の表面に剥離剤層4の帯電防止剤が転写されることで帯電防止表面保護フィルムとなり、優れた帯電防止性能を備える。さらに、本実施形態の帯電防止表面保護フィルムは、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐汚染性能を有する。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0077】
また、光学フィルムの少なくとも一方の面に、剥離剤層4の帯電防止剤が転写された前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2を積層することにより、粘着剤層付き光学フィルムを得ることができる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等が挙げられる。
偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルム及び粘着フィルムの場合、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【実施例0078】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0079】
<粘着剤組成物の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート80重量部、n-ブチルメタクリレート20重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート4.5重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n=12)10重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液に対して、アセチルアセトン8.5重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)を2.0重量部、チタニウムトリスアセチルアセトネート0.1重量部、ポリエーテル変性シロキサン化合物(HLB=7)0.05重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0080】
[実施例2~6及び比較例1~4]
実施例1の粘着剤組成物の組成を各々、表1の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~4の粘着剤組成物を得た。比較例1、2の粘着剤組成物の場合は、さらに表2の「帯電防止剤」に示す化合物を粘着剤組成物に添加した。なお、実施例1~6及び比較例1~3のアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体であった。比較例4のアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10万の共重合体であった。
【0081】
表1の各欄及び表2の「帯電防止剤」において、各成分の重量部は、(A)アルキル基の炭素数が、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレートの合計を100重量部として求めた。表2の「(D)/(E)」は、重量部比率である。また、表1の(B)~(G)の各欄では、(A)、(B)、(F)の重量部の合計として算出されるアクリル系ポリマーの重量部を100重量部としたときの、各成分の含有割合(重量部)を括弧( )内の数値で示した。また、表2の「帯電防止剤」において、LiTFSIは、Li(CFSONを表し、LiTFは、LiCFSOを表す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
また、表1に用いた(A)~(G)の各成分の略記号の化合物名を、表3に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。
また、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのうち、F-1~F-3は、ジエステル分が0.2wt%以下のモノマーであり、F-4は、ジエステル分が0.8wt%のモノマーである。nの値は、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数を示す。
また、(G)ポリエーテル変性シロキサン化合物のうち、G-1~G-6の重量平均分子量は、10000以下である。
【0085】
【表3】
【0086】
<帯電防止表面保護フィルムの作製>
[実施例1]
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-345)5重量部、ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SH8400)0.15重量部、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(LiTFSI)を0.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離フィルムを得た。
実施例1の粘着剤組成物を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが15μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0087】
[実施例2~6]
実施例1の剥離剤層を形成する塗料の組成を、各々、表4の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の剥離剤層を形成する塗料を得た。
また、実施例1の粘着剤組成物及び剥離剤層を形成する塗料を、各々、実施例2~6の粘着剤組成物及び剥離剤層を形成する塗料にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0088】
[比較例1]
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-345)5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例1の剥離フィルムを得た。
比較例1の粘着剤組成物を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが15μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、比較例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0089】
[比較例2]
比較例1の粘着剤組成物を、比較例2の粘着剤組成物にした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
[比較例3~4]
実施例1の剥離剤層を形成する塗料の組成を、各々、表4の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3~4の剥離剤層を形成する塗料を得た。また、実施例1の粘着剤組成物及び剥離剤層を形成する塗料を、各々、比較例3~4の粘着剤組成物及び剥離剤層を形成する塗料にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3~4の帯電防止表面保護フィルムを得た。
なお、表4の「帯電防止剤」において、LiTFSIは、Li(CFSONを表し、LiFSIは、Li(FSONを表し、LiTFは、LiCFSOを表す。
【0090】
【表4】
【0091】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~4における帯電防止表面保護フィルムを、それぞれ、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、以下の試験方法により評価した。なお、実施例1~6及び比較例3~4の帯電防止表面保護フィルムでは、離型フィルムを剥がすことにより、剥離剤層の帯電防止剤を、粘着剤層の表面に転写させることができる。比較例1~2では、粘着剤層の全体に帯電防止剤を含有している。
【0092】
<粘着力の試験方法>
離型フィルムを剥がして、厚さが15μmの粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼合し、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。得られた測定試料を、180°方向に引張試験機を用いて低速度(0.3m/min)又は高速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
ここで、前記偏光板の偏光子の保護層は、AG-LR処理層を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0093】
<表面抵抗率の試験方法>
帯電防止表面保護フィルムをエージングした後、偏光板に貼合する前に、離型フィルムを剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタ(登録商標)UP-HT450(三菱ケミカルアナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0094】
<剥離帯電圧の試験方法>
離型フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、被着面にフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層を有する偏光板に貼合した。帯電防止表面保護フィルムを、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、被着体が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0095】
<耐汚染性能の試験方法>
ガラス板の片面上に、表6に示す表面基材及び表面処理(Plainの場合は未処理)を有する偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層(両面粘着テープ)を介して貼合した。その後、前記偏光板の表面に、帯電防止表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合した。被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に2日(48hr)放置し、前記雰囲気下から取り出した後、1日経過した後に、帯電防止表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。耐汚染性能の判断基準は、前記偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0096】
表5~6に、実施例1~6及び比較例1~4の帯電防止表面保護フィルムについての評価結果を示す。表5の「表面抵抗率」は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムは、被着体である偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることから、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることによる粘着性能が優れていた。
また、実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムは、剥離剤層の帯電防止剤を、粘着剤層の表面に転写させているため、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が+0.3~-0.3kVの範囲内であり、帯電防止性能が優れていた。
さらに、実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出して1日経過した後にも被着体である各種の偏光板に対する汚染がなく、耐汚染性能にも優れていた。
すなわち、表5~6に示された評価結果によれば、実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムが、本発明の課題を解決できたことが実証されている。
【0100】
比較例1の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーに共重合させた単官能のメタクリレートモノマーのTgが0℃未満で、粘着剤層の全体に帯電防止剤を含有し、剥離剤層が、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含有しない)では、耐汚染性能がやや悪かった。
また、比較例2の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーに共重合させた単官能のメタクリレートモノマー及び水酸基含有モノマーが過多で、アクリル系ポリマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、粘着剤層の全体に帯電防止剤を含有し、剥離剤層が、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含有しない)では、粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能が悪かった。
また、比較例3の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーが、Tgが0℃以上であるメタクリレートモノマー及びポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、カルボキシル基含有モノマーを含有する)では、粘着力が大きく、表面抵抗値が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能が悪かった。
また、比較例4の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーの重量平均分子量が小さい)では、耐汚染性能が悪かった。
このように、比較例1~4の帯電防止表面保護フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。
【符号の説明】
【0101】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…樹脂フィルム、4…剥離剤層、5…剥離フィルム、7…帯電防止剤、8…被着体(光学部品)、10…帯電防止表面保護フィルム、11…剥離フィルムを剥がした帯電防止表面保護フィルム、20…帯電防止表面保護フィルムを貼合した光学部品。
図1
図2
図3