(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096849
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】微細構造転写装置及び微細構造転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240709BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063574
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2020077631の分割
【原出願日】2020-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】岸村 敏治
(72)【発明者】
【氏名】中澤 良仁
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 直樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート状体(フィルム)に複数のレプリカを固着し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法を提供する。
【解決手段】微細構造転写装置1は、可撓性を有するシート状体4の巻出機5と、複数のガイドロール3を介してシート状体4の巻取機6と、巻出機5と巻取機6の間に配され、微細凹凸パターンが形成された表面に光硬化性樹脂が塗布されたモールド14又は表面に光硬化性樹脂が塗布された基板を載置するステージ11と、上方よりシート状体4をモールド14または基板に押圧しつつ、少なくともモールド14または基板の両端部間を往復移動するインプリントロール2と、押圧されたシート状体4に紫外光を照射する硬化光照射器8と、を備え、シート状体4に複数のレプリカを連続的に固着、又は基板にレプリカの微細凹凸パターンを転写する。第2ガイドロール3bの位置を、インプリントロールの位置に対し、鉛直方向および水平方向の位置制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状体をインプリントロールにより微細凹凸パターンが形成された表面に光硬化性樹脂が塗布されたモールドに押圧し、前記モールドに押圧された前記シート状体に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体を前記モールドから剥離することにより前記シート状体に複数のレプリカを固着し、
前記シート状体に固着された複数のレプリカのうち一のレプリカを前記インプリントロールにより前記シート状体を介して表面に光硬化性樹脂が塗布された基板に押圧し、前記基板に押圧された前記シート状体に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体を前記基板から剥離することにより、前記基板に前記レプリカの微細凹凸パターンを転写するようにした微細構造転写装置であって、
前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を捲回し前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き出す巻出機と、
複数のガイドロールを介して搬送される前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き取る巻取機と、
前記巻出機と前記巻取機の間に配され、前記モールドまたは前記基板を載置するステージと、
少なくとも前記モールドまたは前記基板の両端部間を往復移動する前記インプリントロールと、
前記硬化光を照射する硬化光照射器と、を備え、
前記複数のガイドロールは、前記シート状体を前記モールドに対向させて、または前記レプリカが固着されたシート状体を前記基板に対向させて搬送するガイドロールであって、搬送方向において前記インプリントロールの上流側に位置する第1ガイドロールと、搬送方向において前記インプリントロールの下流側に位置する第2ガイドロールと、を備え、
前記インプリントロールと前記第2ガイドロールの駆動が分かれており、
前記シート状体を前記インプリントロールにより前記モールドに押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記モールドの表面となす角度ΘR1と、前記レプリカが固着されたシート状体を前記インプリントロールにより前記基板に押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記基板の表面となす角度ΘP1との関係がΘP1<ΘR1となるように、前記第2ガイドロールの位置を、前記インプリントロールの位置に対し、鉛直方向および水平方向の位置制御を行うようにしたことを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細構造転写装置において、
前記インプリントロールが前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を押圧しつつ移動する場合、前記モールド又は前記基板の端部のうち前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体の搬送方向において上流側に位置する端部に前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体をクランプするフィルムクランプを備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微細構造転写装置において、
前記硬化光照射器は、前記インプリントロールと前記第1ガイドロールとの間に位置し、前記インプリントロールが前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を押圧しつつ移動する場合、硬化光を照射しつつ前記インプリントロールに追従するよう下流側に移動することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の微細構造転写装置において、
前記硬化光照射器は、前記インプリントロールと前記第1ガイドロールとの間に位置し、前記インプリントロールが前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を押圧しつつ下流側に移動した後に、硬化光を照射しつつ下流側へと移動することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項5】
可撓性を有するシート状体をインプリントロールにより微細凹凸パターンが形成された表面に光硬化性樹脂が塗布されたモールドに押圧し、前記モールドに押圧された前記シート状体に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体を前記モールドから剥離することにより前記シート状体に複数のレプリカを固着し、
前記シート状体に固着された複数のレプリカのうち一のレプリカを前記インプリントロールにより前記シート状体を介して表面に光硬化性樹脂が塗布された基板に押圧し、前記基板に押圧された前記シート状体に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体を前記基板から剥離することにより、前記基板に前記レプリカの微細凹凸パターンを転写するようにした微細構造転写方法であって、
前記微細構造転写方法を行う微細構造転写装置として、
前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を捲回し前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き出す巻出機と、
複数のガイドロールを介して搬送される前記シート状体または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き取る巻取機と、
前記巻出機と前記巻取機の間に配され、前記モールドまたは前記基板を載置するステージと、
少なくとも前記モールドまたは前記基板の両端部間を往復移動する前記インプリントロールと、
前記硬化光を照射する硬化光照射器と、を備え、
前記複数のガイドロールは、前記シート状体を前記モールドに対向させて、または前記レプリカが固着されたシート状体を前記基板に対向させて搬送するガイドロールであって、搬送方向において前記インプリントロールの上流側に位置する第1ガイドロールと、搬送方向において前記インプリントロールの下流側に位置する第2ガイドロールと、を備えたものを用い、
前記シート状体を前記インプリントロールにより前記モールドに押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記モールドの表面となす角度ΘR1と、前記レプリカが固着されたシート状体を前記インプリントロールにより前記基板に押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記基板の表面となす角度ΘP1との関係がΘP1<ΘR1となるように、前記第2ガイドロールの位置を、前記インプリントロールの位置に対し、鉛直方向および水平方向の位置制御を行うようにしたことを特徴とする微細構造転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にナノメートルオーダ等の微細な凹凸パターンが形成されたモールドを用いて、基板上に微細構造を反転転写する微細構造転写装置及び微細構造転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造に用いられる露光装置等の微細加工技術である紫外線/電子線リソグラフィは、設備価格が高価かつプロセスが複雑であり、製造にかかる時間とコストの改善等に問題があり、微細な凹凸パターンを形成したモールド(スタンパ或はテンプレート等とも称される)を樹脂材料などに直接転写するナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography,以下NILと称する)技術の進展により、シンプルな装置およびプロセスによって10nm~数100nmオーダの微細パターンを容易に実現できるとして装置価格や量産でのコストに優位性が高まってきた。例えば、特許文献1には、モールドに対し無電解メッキ法にて、モールドの表面に形成された微細な凹凸パターンを反転転写した微細構造体が開示されている。特に、特許文献1では得られた微細構造体の上面(微細な凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に緩衝材を配し、微細な凹凸パターンの表面に剥離剤をコートしてスタンパを形成する旨記載されている。
【0003】
また、特許文献2では、加熱加圧転写での昇温・冷却サイクルにかかる時間を改善するため、スタンパの基板加圧面の断面積より基板加圧面を保持する部位の断面積を小さくしたNIL装置が提案されている。特許文献3には、基板を仮載置する仮載置面を備え徐々に基板載置面まで移動させる仮置き部材を設けることで、基板と基板載置ステージとのエアボイドによる位置ずれを防止し高精度な転写を可能としたNIL装置が開示されている。
【0004】
特許文献4では、より高精度な転写を目的に、加熱加圧時に緩衝材を順次交換可能としたロールtoロール方式のNIL装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献5には、生産スループット向上し量産コストを下げることを目的に、転写ロールの回転速度を上昇しても正確に高精度にパターン転写可能とするように、多段に設けたローラによってスタンパを樹脂層に加熱加圧し転写する方式のNIL装置が開示されている。
【0006】
また、光硬化性樹脂を用いるものとして、例えば、特許文献6には、紫外線硬化性樹脂からなる薄膜を用いたワークにモールドを押し付けて圧縮成形し、紫外光を照射しパターン転写するNIL装置であって、紫外光の光源として、紫外光と同時に熱線が連続的に放射されることのない光源を用いることで温度上昇を抑制するものが開示されている。また、特許文献7には、ロールtoロール方式にて、透明フィルムが接着固定される光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートを送り出し、光硬化性転写層を露出させた後、スタンパにて押圧しUVランプより光照射し、スタンパの微細な凹凸パターンを転写するNIL装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-189128号公報
【特許文献2】特開2004-288784号公報
【特許文献3】特開2006-62208号公報
【特許文献4】特開2004-288804号公報
【特許文献5】特開2006-326948号公報
【特許文献6】WO2009/110596号公報
【特許文献7】特開2011-66100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1乃至特許文献6に開示されるNIL装置では、モールドを用いて基板を1枚毎にインプリントする構成である。しかしながら、モールドに直接接触するスタンプ方式であるため、モールドへの材料や異物付着によるモールドの損傷を招く虞がある。モールド製造に係る費用は極めて高価であり、且つモールド製造時間も長時間を要するため、モールドの使用回数を最小限にとどめる必要がある。また、モールドの段取り替え時におけるモールドの落下或は衝突等による、モールドの破損或は欠けが生ずる虞がある。
【0009】
そのため高価なマスタモールドを生産に使用することなく、マスタモールドによってソフト材料でレプリカモールドを形成し、レプリカモールドによって生産する方法が用いられている。しかしながら、レプリカモールドの交換頻度は、製品や材料により異なるものの、数百回毎に交換が必要であり、レプリカモールド(以下では、レプリカと称する)の交換と段取り作業に時間を要することから段取りコスト低減が望まれていた。
また、上述の特許文献7に開示されるNIL装置では、モールドを用いて中間スタンパ(レプリカ)を形成後、中間スタンパをピッチ送りし、中間スタンパにより基板を1枚毎にインプリントする構成である。従って、高価なモールドが、中間スタンパが形成される透明フィルムが接着固定される光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートの下部に常時配される構成であるため、光硬化性転写シートから落下する異物等によりモールドを損傷する虞がある。
【0010】
更に近年のスマートフォンやタブレット端末等の比較的小型なディスプレイの急激な普及に伴い、液晶パネル等の製造装置は、より高いスループットで製造することが望まれている。また、テレビ用の表示パネル等では、画面大型化と高解像度化が加速し、更に高精細な次世代型ディスプレイが望まれている。
【0011】
そこで、本発明者らは、シート状体(フィルム)に複数のレプリカを固着し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法、また、シート状体に連続した複数のレプリカを用いて、連続的に基板にパターン形成し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法として、先に特願2019-147429号「微細構造転写装置及び微細構造転写方法」を提案している。
さらに、本発明者らの検討によれば、シート状体(フィルム)に複数のレプリカを固着する際と、シート状体に連続した複数のレプリカを用いて、連続的に基板にパターン形成する際とでは、下流ガイドロールの配置を異なる構成にすることにより、良品のレプリカを形成し、かつ、良品のパターンを形成することが可能であることを見出した。
本発明は、シート状体(フィルム)に複数の良品のレプリカを固着し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法を提供する。また、本発明は、シート状体に連続した複数のレプリカを用いて、連続的に基板に良品のパターン形成し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、特許請求の範囲に記載のように構成したものである。
より具体的には、本発明に係る微細構造転写装置及び微細構造転写方法は、例えば、可撓性を有するシート状体(フィルム)をインプリントロールにより微細凹凸パターンが形成された表面に光硬化性樹脂が塗布されたモールドに押圧し、前記モールドに押圧された前記シート状体(フィルム)に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体(フィルム)を前記モールドから剥離することにより前記シート状体(フィルム)に複数のレプリカを固着し、前記シート状体(フィルム)に固着された複数のレプリカのうち一のレプリカを前記インプリントロールにより前記シート状体(フィルム)を介して表面に光硬化性樹脂が塗布された基板に押圧し、前記基板に押圧された前記シート状体(フィルム)に硬化光を照射し、前記光硬化性樹脂が硬化後に前記シート状体(フィルム)を前記基板から剥離することにより、前記基板に前記レプリカの微細凹凸パターンを転写するようにした微細構造転写装置及び微細構造転写方法であって、前記シート状体(フィルム)または前記レプリカが固着されたシート状体を捲回し、前記シート状体(フィルム)または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き出す巻出機と、複数のガイドロールを介して搬送される前記シート状体(フィルム)または前記レプリカが固着されたシート状体を巻き取る巻取機と、前記巻出機と前記巻取機の間に配され、前記モールドまたは前記基板を載置するステージと、少なくとも前記モールドまたは前記基板の両端部間を往復移動する前記インプリントロールと、前記硬化光を照射する硬化光照射器と、を備え、前記複数のガイドロールは、前記シート状体(フィルム)を前記モールドに対向させて、または前記レプリカが固着されたシート状体を前記基板に対向させて搬送するガイドロールであって、搬送方向において前記インプリントロールの上流側に位置する第1ガイドロールと、搬送方向において前記インプリントロールの下流側に位置する第2ガイドロールと、を備え、前記シート状体(フィルム)を前記インプリントロールにより前記モールドに押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記モールドの表面となす角度ΘR1と、前記レプリカが固着されたシート状体を前記インプリントロールにより前記基板に押圧する際の前記第2ガイドロールにかかるシート状体が前記基板の表面となす角度ΘP1との関係がΘP1<ΘR1となるように、前記第2ガイドロールの位置を、前記インプリントロールの位置に対し、鉛直方向および水平方向の位置制御を行う。さらに、前記第2ガイドロールは、前記シート状体(フィルム)を前記インプリントロールにより前記モールドに押圧する際には、前記インプリントロールと所定の距離となる位置まで上流側に移動し、前記インプリントロールより上方に位置し、前記インプリントロールと共に等速にて移動するようにし、前記レプリカが固着されたシート状体を前記インプリントロールにより前記基板に押圧する際には、前記基板の下流側端部を超える位置にて前記レプリカが固着されたシート状体を前記基板に対して位置決めした位置に停止させておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シート状体(フィルム)に連続的に良品の複数のレプリカを固着し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、シート状体に連続し固着した複数のレプリカを用いて、連続的に基板に良品のパターンを形成し得る。
例えば、シート状体に複数のレプリカを連続的に固着し得ることから、レプリカ形成のスループットの向上が図られる。また、仮に、シート状体に固着された複数のレプリカのうち、一のレプリカが使用限界に達した場合であっても、シート状体をピッチ送りすることのみで、次の新たなレプリカの使用が可能となることから、レプリカの交換と段取り作業におけるコストを低減できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の微細構造転写装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す微細構造転写装置の平面図である。
【
図3A】レプリカ形成時における撮像部による位置合わせ工程を示す図である。
【
図3B】レプリカ形成時におけるフィルムクランプ及びインプリントロール押圧工程を示す図である。
【
図3C】レプリカ形成時におけるナノインプリント動作工程を示す図である。
【
図3D】レプリカ形成時における硬化光照射工程を示す図である。
【
図3E】レプリカ形成時における剥離工程を示す図である。
【
図4A】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、シート状体に付加されたマーカ検出時の状態を示す図である。
【
図4B】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、位置決め動作及び位置決め確認時の状態を示す図である。
【
図4C】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、フィルムクランプ及び上流ガイドロールクランプ時の状態を示す図である。
【
図4D】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、インプリントロール下降時の状態を示す図である。
【
図4E】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、インプリントロール及び下流側ガイドロール押圧開始時の状態を示す図である。
【
図4F】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、インプリントロール及び下流側ガイドロール共に下流側へ移動し押圧時の状態を示す図である。
【
図4G】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、硬化光照射器下降時の状態を示す図である。
【
図4H】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、硬化光照時の状態を示す図である。
【
図4I】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、フィルムクランプ上昇/退避、及びインプリントロール及び下流側ガイドロール共に上流側へ移動開始時の状態を示す図である。
【
図4J】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、剥離時の状態を示す図である。
【
図4K】上流側ガイドロール、インプリントロール、及び下流側ガイドロールの動作を示す図であって、インプリントロール及び下流側ガイドロール共に上流側へ移動開始時の状態を示す図である。
【
図5】レプリカ形成時のプロセスの概要を示す図であって、(A)はフィルム位置合わせ、(B)は押圧(インプリント)、(C)は硬化光照射、(D)は剥離、及び(E)はレプリカ形成完了時を示す図である。
【
図6】
図1に示す微細構造転写装置の概略構成を示す側面図であって、ガラス基板へレプリカによる微細凹凸パターン転写時の側面図である。
【
図7】
図6に示す微細構造転写装置の平面図である。
【
図8A】ガラス基板へのパターン形成時においてレプリカ形成時とは異なる構成を説明する図である。
【
図8B】ガラス基板へのパターン形成時のプロセスの概要を示す図であって、(A)はレプリカ位置合わせ、(B)は押圧(インプリント)、(C)は硬化光照射、(D)は剥離、及び(E)はガラス基板へのパターン形成完了時を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施例に係る実施例2の微細構造転写装置の平面図である。
【
図10】本発明の他の実施例に係る実施例3の微細構造転写装置の平面図である。
【
図11A】レプリカ形成プロセスにおけるモールドのステージへのセット状態を示す図である。
【
図11B】レプリカ形成プロセスにおける光硬化性樹脂塗布及びモールド位置決め状態を示す図である。
【
図11C】レプリカ形成プロセスにおけるレプリカ連続形成状態を示す図である。
【
図11D】レプリカ形成プロセスにおけるモールド戻し状態を示す図である。
【
図12A】ガラス基板へのパターン形成プロセスにおけるガラス基板のステージへのセット状態を示す図である。
【
図12B】ガラス基板へのパターン形成プロセスにおける光硬化性樹脂塗布及びモールド位置決め状態を示す図である。
【
図12C】ガラス基板へのパターン形成プロセスにおけるパターン連続形成状態を示す図である。
【
図12D】ガラス基板へのパターン形成プロセスにおけるガラス基板戻し状態を示す図である。
【
図13】本発明の他の実施例に係る実施例4の微細構造転写装置の正面図である。
【
図14】
図13におけるA方向矢視図であって、バックアップロール機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、一つのモールド或は一つのモールドの表面に形成された微細な凹凸パターンを有する微細パターン領域を「セル」と称する。
また、本明細書では、モールド(金型)の微細パターンが転写されたレプリカにより、微細パターンが転写される被転写体としてガラス基板を一例として説明するが、これに限らず、被転写体として、樹脂基板或はフィルム基板等の様々なパネル材料の基板も含まれることは言うまでもない。すなわち、レプリカにより、微細パターンが転写される被転写体は、基板である。
【0016】
先ず、本発明に至った経緯について説明する。本発明は、先の特願2019-147429号「微細構造転写装置及び微細構造転写方法」に記載の提案に加えて、以下の知見に基づいてなされたものである。
上述したように、本発明者らは、シート状体(フィルム)に複数のレプリカを固着する際と、シート状体に連続して固着した複数のレプリカを用いて、連続的に基板にパターン形成する際とでは、下流ガイドロールの配置を異なる構成にすることにより、良品のレプリカを形成し、かつ、良品のパターンを形成することが可能であることを見出した。
すなわち、レプリカ形成の際とパターン形成の際では樹脂の塗布量が異なる。レプリカ形成時、モールド(金型)上に塗布される樹脂は、インプリント硬化後の膜厚が、例えば、数μm~数十μmとなる必要がある。これはパターン形成の際にレプリカとして繰り返しインプリント動作に耐えうる寿命を確保するためである。
一方、パターン形成時、例えばガラス基板上に塗布される樹脂は、インプリント硬化後の膜厚が例えば100nm~150nmとなる。インプリントにより形成されるパターンの残膜を20nm以下に抑えドライエッチングによる加工性を高めるため薄く塗布するものである。このナノメートルオーダの厚みとなると、塗布した樹脂にレプリカを高い圧力で押し付けても、樹脂が流動できないため、薄くすることはできない。このため塗布量で残膜を制御する必要がある。
これらプロセス条件によりレプリカ形成時とパターン形成時の塗布量は大きく異なる。また、樹脂の塗布は、例えば、ガラス基板面内で複数のセルに分かれたパターン形状に塗布するため、スピンコートのように全面に広がる塗布方式とは異なる方式が用いられ、インクジェット方式等の塗布となる。
【0017】
パターン形成時と比較して塗布量が多いレプリカ形成時は、インクジェットにより微量に全面塗布しても、滴下樹脂同士がつながり、数ミリ程度の大きさの樹脂のかたまりが形成され分布する。フィルムを用いてロールインプリントする場合、フィルムをインプリントロールに巻き付け一定角度で持ち上げないと、フィルムの傾斜が低くなりインプリントロールから離れている樹脂の液滴にフィルムが先行して触り、空気の巻き込みが発生する可能性がある。このためレプリカ形成時はインプリントロールが走行する前方のフィルムを一定角度で持ち上げることが好ましい。
一方、パターン形成時は、ガラス基板とレプリカの位置決めをする必要があるため、フィルムに形成したレプリカを基板と平行に広げ、カメラによりレプリカおよび基板の位置関係を認識して、基板を載置しているステージを移動させ位置決めする(詳細は後述)。この後、インプリントロールによりインプリントを行うときに、レプリカ形成と同様にフィルムを一定角度まで動かすと、位置決めしたフィルムにずれが生じインプリント後の貼り合せ精度が悪くなる可能性がある。このため、パターン形成時はガラス基板と略平行に位置決めしたフィルム姿勢を維持したまま、フィルムを傾斜させずインプリントすることが好ましい。パターン形成時の樹脂の塗布量は極少量であることから、フィルム傾斜が少なくても気泡を巻き込むことはない。
【0018】
これらより、微細構造転写装置は、レプリカ形成時は、フィルムを一定角度で持ち上げインプリントロールと下流ガイドロールが等速で移動する機能を備え、パターン形成時は、下流ガイドロールはインプリントロールと離れ、停止した状態でインプリントロールのみ移動する機能を備えることが好ましい。このためインプリントロールと下流ガイドロールの駆動が分かれていること(インプリントロールと下流ガイドロールの水平方向及び鉛直方向の位置制御が別個に行われること)が重要である。これらの検討により、本発明に至ったものである。
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例0020】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の微細構造転写装置の概略構成を示す側面図であり、
図2は、
図1に示す微細構造転写装置の平面図である。
図1及び
図2に示す白抜き矢印は、シート状体(フィルム)4の搬送方向(供給方向)を示している。
【0021】
(微細構造転写装置の構成)
図1に示すように、微細構造転写装置1は、上流側より、巻出しフィルム(シート状体)を捲回する巻出機5、巻出機5より送り出されるシート状体(フィルム)4を搬送するガイドロール3、シート状体(フィルム)4に空気を当ててフィルム表面に付着する塵埃を除去するドライクリーナ9、シート状体(フィルム)4を鉛直方向下方へと搬送する2つのガイドロール3、詳細後述するインプリントロール2に硬化光照射器8を介して上流側に配される上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3a、硬化光照射器8、インプリントロール2、及びインプリントロール2に隣接しその下流側に配される下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bを備える。なおここで、硬化光照射器8は、硬化光として、例えば紫外線(紫外光)を照射する。
また、微細構造転写装置1は、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bを通過するシート状体(フィルム)4を鉛直方向上方へと案内するガイドロール3、当該ガイドロール3よりシート状体(フィルム)4は水平に下流側へと搬送すると共に鉛直方向下方へとシート状体(フィルム)4を案内するガイドロール3、当該ガイドロール3をシート状体(フィルム)4が通過する際にモールド(金型)に形成された微細パターン領域の始端及び終端に相当する位置にマーカを付加するためレーザを照射するレーザーマーカ10、シート状体(フィルム)4に空気を当ててフィルム表面に付着する塵埃を除去するドライクリーナ9、ドライクリーナ9よりも下方に配される2つのガイドロール3、ダンサーロール7、クリーニングロール12、2つのガイドロール3、及びシート状体(フィルム)4を巻き取る巻取機6を備える。
【0022】
クリーニングロール12は、対をなすクリーニングロールの表面(外周面)には、予め糊等が塗布されており、シート状体(フィルム)4が対をなすクリーニングロール12に挟まれ接触しつつ通過することにより、フィルム表面に付着する塵埃などを除去する。この際、詳細後述するレプリカは硬化されており、且つ、シート状体(フィルム)4に強固に固着されているため、対をなすクリーニングロール12を通過する際に、シート状体(フィルム)4からレプリカが離脱又は剥離することは無い。なお、本実施例では、微細構造転写装置1がクリーニングロール12を有する構成を示すが、クリーニングロール12の設置は任意で良い。すなわち、クリーニングロール12を有しない構成としても良い。
【0023】
シート状体(フィルム)4は、可撓性であり、且つ、光を透過する性質を有する。ダンサーロール7は、
図1において左右、すなわち、水平面内において前後に変位することにより、搬送されるシート状体(フィルム)4に対し所定の張力を付与する。例えば、各ガイドロールの直径の相違に基づき、仮に、巻出機5から所定の送り量(速度)にて、シート状体(フィルム)4が送り出された場合であっても、フィルムに撓みが生じ得る。しかしながら、ダンサーロール7が前後に変位しシート状体(フィルム)4の張力を調整することで、上述の撓みを防止することができる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、微細構造転写装置1は、モールド(金型)14を載置し、水平面内においてX-Y方向に移動可能であると共に、回転方向(θ)に変位可能なステージ11を備える。モールド(金型)14の表面に形成された微細凹凸パターンに、予め光硬化性樹脂であるレジンが塗布されており、図示しないロボットアーム等の搬送機構により、ステージ11への搬入(ロード)及びステージ11からの搬出(アンロード)が行われる(
図2の矢印)。なお、ステージ11には、例えば、真空チャックが設けられており、載置されるモールド(金型)14を、真空チャックによりステージ11上に固定する。
【0025】
また、
図2に示すように、微細構造転写装置1は、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aと硬化光照射器8の間に、両端がガントリー13に移動可能に支持される撮像部支持部18の2箇所、シート状体(フィルム)4の幅方向に沿って相互に離間し保持される2つの上流側撮像部17aを備える。また、インプリントロール2と下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの間に、両端がガントリー13に移動可能に支持される撮像部支持部18の2箇所、シート状体(フィルム)4の幅方向に沿って相互に離間し保持される2つの下流側撮像部17bを備える。これら、上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bとして、例えば、CCD等が用いられる。上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bは、後述するシート状体(フィルム)4の位置決め時において、レーザーマーカ10により付加されたシート状体(フィルム)4上の4箇所のマーカ検出に用いられる。下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bとステージ11の間に、フィルムクランプ16が設けられている。
【0026】
(レプリカ形成時における微細構造転写装置の動作)
図3A乃至
図3Eはレプリカ形成時における各工程を示している。
図3Aに示す撮像部による位置合わせ工程では、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは、ステージ11に載置されるモールド(金型)14の表面と所定の間隔を維持しつつ下流側へと、ステージ11の端部を超える位置まで移動する。また、上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bは、それぞれ、シート状体(フィルム)4の鉛直方向上方であって、モールド(金型)14の表面の微細パターン領域の始端(シート状体(フィルム)4の搬送方向における上流側の端部)及び微細パターン領域の終端(シート状体(フィルム)4の搬送方向における下流側の端部)に相当する位置まで移動する。そして、上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bは、搬送されるシート状体(フィルム)4に付加されたマーカを検出すると、巻取機6はシート状体(フィルム)4の巻取動作を停止する。
【0027】
次に、
図3Bに示すフィルムクランプ及びインプリントロール押圧工程では、先ず、フィルムクランプ16が下降しシート状体(フィルム)4をクランプする。これにより、シート状体(フィルム)4は固定される。また、インプリントロール2が下降しシート状体(フィルム)4を押圧する。この状態で下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは、鉛直方向上方に配されるガイドロール3と共に上流側へと移動し、インプリントロール2と所定の距離となる位置で停止する。
【0028】
図3Cに示すナノインプリント動作工程では、インプリントロール2がシート状体(フィルム)4を押圧しつつ、且つ、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bと等速にて下流側へと移動する。このとき、
図4Cに示す例では、硬化光照射器8は、インプリントロール2及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3b及びその鉛直方向上方に配されるガイドロール3に追従するよう移動する。インプリントロール2が下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bと等速にて下流側へと移動することにより、これらの位置関係、すなわち、距離は一定に保たれるため、シート状体(フィルム)4のパス長さは変化することが無く、インプリントロール2がシート状体(フィルム)4を押圧しつつ移動しても、シート状体(フィルム)4に付与される張力は変動しない。
【0029】
図3Dに示す硬化光照射工程では、上述のように、硬化光照射器8は、インプリントロール2に追従するよう下流側へ移動するため、紫外線(硬化光)を照射しつつ下流側へと移動し、微細パターン領域を有するモールド(金型)14の表面に予め塗布された光硬化性樹脂は、インプリントロール2による押圧力と協働し、シート状体(フィルム)4に固着する。これにより、シート状体(フィルム)4に、モールド(金型)14の表面に形成された微細な凹凸パターンが反転転写される。従って、本実施例では、ナノインプリント動作工程と硬化光照射工程とが同時に実行される。
次に、
図3Eに示す剥離工程では、インプリントロール2は、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3b及びその鉛直方向上方に配されるガイドロール3と等速にて上流側へと移動することにより、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカが均一な状態にて、モールド(金型)14の表面より剥離される。すなわち、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカ及びモールド(金型)14に損傷を与えることなく剥離することが可能となる。
【0030】
以上のように、本実施例の微細構造転写装置1によれば、インプリントロール2が下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3b及びその鉛直方向上方に配されるガイドロール3と等速にて、下流側及び上流側へと往復移動することで、容易にレプリカを形成することが可能となる。
【0031】
続いて、
図4A乃至
図4Kを用いて、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3a、インプリントロール2及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの動作について詳細に説明する。
図4Aに示すように、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは下流側へと移動し、モールド(金型)14の下流側端部を超える位置にて停止する。このとき、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aと下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの軸心間の距離L1は、例えば4000mmである。また、モールド(金型)14の表面に形成された微細凹凸パターンの存在領域である微細パターン領域の長さL2は、例えば65inch等である。上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3a、インプリントロール2及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの間を搬送されるシート状体(フィルム)4の鉛直方向上方には、2つの上流側撮像部17a及び2つの下流側撮像部17bが位置付けられており、レーザーマーカ10により予めシート状体(フィルム)4に付加された、微細パターン領域の始端及び終端に対応する位置のマーカを検出する。なお、シート状体(フィルム)4の搬送は、一つのセルに相当する長さ分、巻取機6の駆動によりピッチ送りされている。
【0032】
図4Bに示すように、4箇所のマーカが、上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bにより検出されると、当該検出された4箇所のマーカを基準として、モールド(金型)14を載置するステージ11が、例えば、回転方向(θ)に回転し、4箇所のマーカと微細パターン領域の始端及び終端が重なるよう位置決めされる。位置決めの確認についても、上流側撮像部17a及び下流側撮像部17bによる撮像画像に基づき実行される。
位置決めが完了すると、
図4Cに示すように縦断面が略L字状のフィルムクランプ16がシート状体(フィルム)4をモールド(金型)14の表面に押圧しクランプする。また、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aもクランプする。
【0033】
次に、
図4Dに示すように、インプリントロール2が下降し、
図4Eに示すように、それまで、モールド(金型)14の下流側端部を超える位置にて停止していた下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは、インプリントロール2と所定の位置関係となるよう、上流側へと移動する。このとき、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは、インプリントロール2よりも鉛直方向上方に位置し、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aよりも上方に位置する。従って、インプリントロール2により押圧される位置から下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bにかかるシート状体(フィルム)4は、モールド(金型)14の表面と所定の角度Θ
R1をなすことになる。すなわち、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの位置は、インプリントロール2の位置に対し、鉛直方向および水平方向とも位置制御を行い、所定の角度Θ
R1をなすことになる。これにより、パターン形成時と比較して塗布量が多いレプリカ形成時は、インプリントロール2から離れている樹脂の液滴にシート状体(フィルム)4が先行して触ることがなくなり、空気の巻き込みの発生を防止することができる。インプリントロール2により押圧される位置から下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bにかかるシート状体(フィルム)4が、モールド(金型)14の表面となす角度Θ
R1は、塗布する樹脂の量に応じて設定され、また、実験等により空気の巻き込みの発生が防止できることを確認しておく。また、この角度Θ
R1は、量産時の歩留り向上に寄与することも確認しておくことが望ましい。さらに、剥離時における角度Θ
R2についても量産時の歩留り向上に寄与することを実験等により確認しておくことが望ましい。
【0034】
図4Fに示すように、インプリントロール2は、シート状体(フィルム)4を押圧しつつ、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bと等速にて、モールド(金型)14の下流側端部を超える位置まで移動する。インプリントロール2と下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bとが等速にて移動することにより、これらの位置関係は一定のまま下流側へと移動することにより、シート状体(フィルム)4に付与される張力の変動は生じない。ここで、例えば、インプリントロール2及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの移動速度は、150mm/sである。
【0035】
続いて、
図4Gに示すように、硬化光照射器8が、フィルムクランプ16の真上まで下降する。そして、硬化光照射器8は、モールド(金型)14の表面の微細パターン領域に予め塗布され、インプリントロール2による押圧力によりシート状体(フィルム)4に圧着された光硬化性樹脂に、シート状体(フィルム)4の上方より紫外線(硬化光)を照射しつつ、モールド(金型)14の下流側端部を超える位置に位置するインプリントロール2の近傍まで移動する。これにより、光硬化性樹脂は硬化し、シート状体(フィルム)4にモールド(金型)14の表面に形成された微細凹凸パターンが反転転写される。
【0036】
図4Iに示すように、次に、フィルムクランプ16は上昇し、モールド(金型)14より退避する。そして、インプリントロール2は、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bと共に、等速にて上流へと移動を開始する。
図4Jに示すように、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bと共に、等速にてインプリントロール2が上流側へと移動することにより、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカは均一の状態にて、モールド(金型)14の表面に形成された微細凹凸パターンより剥離される。インプリントロール2がモールド(金型)14の上流側端部近傍に達するまで、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aはクランプされ続ける。最後に、
図4Kに示されるように、インプリントロール2がモールド(金型)14の上流側端部近傍に達すると、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3aはクランプから開放され、インプリントロール2及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは上昇し、シート状体(フィルム)4に固着された1セル分のレプリカが得られる。
【0037】
図示しないが、その後、巻取機6は、少なくとも1セル分の長さ(ピッチ)のシート状体(フィルム)4を巻き取ることで、巻出機5は、シート状体(フィルム)4をピッチ送りする。その後、
図4A乃至
図4Kに示す動作を繰り返す(ステップ・アンド・リピート)ことにより、シート状体(フィルム)4に、同一のモールド(金型)14より転写された複数のレプリカを固着する。
【0038】
なお、上述の
図3A乃至
図3Eにおいては、ナノインプリント動作工程と硬化光照射工程とを同時に実行する場合を示したが、
図4A乃至
図4Kにおいては、ナノインプリント動作工程完了後に硬化光照射工程を実行する構成としている点が異なる。このように、ナノインプリント動作工程と硬化光照射工程とを同時に実行しても、或は、ナノインプリント動作工程完了後に硬化光照射工程を実行してもどちらでも良い。また、硬化光照射工程に係わるタクトは、光硬化性樹脂の光硬化特性、樹脂の塗布量、フィルムおよび基板材料との固着特性等による照射プロセス特性(照射速度・照射エネルギー等)に依存し、図示されない硬化光照射器制御機構により、照射開始タイミング、硬化光照射器移動速度および照射時間を任意にコントロールできる。
【0039】
図5は、レプリカ形成時のプロセスの概要を示す図であって、(A)はフィルム位置合わせ、(B)は押圧(インプリント)、(C)は硬化光照射、(D)は剥離、及び(E)はレプリカ形成完了時を示す図である。
図5(A)では表面に微細凹凸パターンが形成されたモールド(金型)14に予め光硬化性樹脂であるレジン19が塗布された状態で、シート状体(フィルム)4を位置合わせする。その後、
図5(B)ではインプリントロール2によりシート状体(フィルム)4をレジン19に押圧しつつ下流側へと移動する。
図5(C)では、レジン19に圧着されたシート状体(フィルム)4に、硬化光照射器8より紫外線(硬化光)を照射しつつ、硬化光照射器8は下流側へと移動する。
図5(D)では、インプリントロール2が上流側へと移動することにより、硬化後のレジンが固着されたシート状体(フィルム)4がモールド(金型)14より剥離される。
図5(E)では、完全にモールド(金型)14より剥離することにより、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカ20が形成される。
【0040】
(ガラス基板へのパターン形成時における微細構造転写装置の動作)
以下に、微細構造転写装置1により、ガラス基板へレプリカによる微細凹凸パターンを形成(転写)する動作について説明する。
図6は、
図1に示す微細構造転写装置の概略構成を示す側面図であって、ガラス基板へレプリカによる微細凹凸パターン転写時の側面図であり、
図7は、
図6に示す微細構造転写装置の平面図である。上述の
図1及び
図2と異なる点は、ステージ11に、モールド(金型)14が載置される構成に代えて、ガラス基板15を載置する構成としたことにある。よって、ここでは、
図6及び
図7についての説明を省略する。
【0041】
パターン形成は上述のレプリカ形成の際の各工程と略同様であるが
図3B~
図3Cにおける下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの位置が異なる。すなわち、上述の
図3Aの工程において、ステージ11に、予め光硬化性樹脂が塗布されたガラス基板15が載置され、このガラス基板15に対向して、シート状体(フィルム)4に固着された微細凹凸パターンを表面に有するレプリカが配置され、ガラス基板15と、シート状体(フィルム)4に固着された微細凹凸パターンを表面に有するレプリカとの位置決めがなされる。そして、インプリントロール2によりインプリントを行うときに、レプリカ形成と同様にフィルムを一定角度まで動かすと、位置決めしたフィルムにずれが生じインプリント後の貼り合せ精度が悪くなる可能性がある。このため、
図8Aに示すように、第2ガイドロール3bを、ガラス基板15の下流側端部を超える位置にてレプリカが固着されたシート状体20をガラス基板15に対して位置決めした位置に停止させておく。そして、パターン形成時はガラス基板15と略平行に位置決めしたフィルム姿勢を維持したまま、シート状体20をレプリカ形成の際のようには傾斜させずに(すなわちΘ
P1<Θ
R1の状態かつ略平行に近づくように)、インプリントロール2によりガラス基板15の光硬化性樹脂へ押圧しつつ、インプリントロール2を下流側に移動する。また、インプリントロール2に追従するよう、紫外線(硬化光)を照射しつつ下流側へ移動する硬化光照射器8により、ガラス基板15の光硬化性樹脂が硬化され、
図3Eに示すように、硬化された光硬化性樹脂を有するガラス基板15よりレプリカを剥離することで、ガラス基板15の表面に、微細凹凸パターンが形成される。
【0042】
また、上述の
図4A乃至
図4K(但し、
図4E~
図4Fを除く)に示した、上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3a、インプリントロール2、及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの動作についても、予め光硬化性樹脂が塗布されたモールド(金型)14に代えて、予め光硬化性樹脂が塗布されたガラス基板15とし、上述の上流側ガイドロール(第1ガイドロール)3a、インプリントロール2、及び下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの動作により、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカの微細凹凸パターンをガラス基板15上に形成(転写)するものである。なお、
図4Eに対応する工程では、
図8Aに示すように、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bは上流側に移動することなく、ガラス基板15と略平行に位置決めしたフィルム姿勢を維持したまま、シート状体(フィルム)4をレプリカ形成の際のようには傾斜させずに(すなわちΘ
P1<Θ
R1の状態かつ略平行に近づくように)、インプリントロール2によりガラス基板15の光硬化性樹脂へ押圧しつつ、インプリントロール2を下流側に移動する。
その後、インプリントロール2の移動に追従もしくは、インプリントロール2の移動後、紫外線(硬化光)を照射しつつ下流側へ移動する硬化光照射器8により、ガラス基板15の光硬化性樹脂が硬化される。そして所定の角度Θ
P2による剥離動作により、ガラス基板へパターン形成を行う。このとき剥離角度Θ
P2を大きくすることで、剥離速度アップに対し剥離性を向上することができ、生産タクトの向上に寄与できる。そのため量産時の歩留り向上に寄与できるように、実験等により確認のうえ剥離角度Θ
P2を決めておき、インプリントロール2の位置に対し、下流側ガイドロール(第2ガイドロール)3bの鉛直方向および水平方向の位置調整を行うことで、所定の角度Θ
P2をなす様に制御する。すなわちレプリカ形成の際は、関連する角度としてΘ
P1<Θ
R1かつΘ
R1<Θ
R2が好ましい。また、パターン形成の際は、Θ
P1<Θ
R1かつΘ
P1<Θ
P2が好ましい。
【0043】
なお、レプリカを使用限界数、例えば、数百回に達した時点で、巻取機6は、少なくとも1セル分の長さ(ピッチ)のシート状体を巻き取ることで、巻出機5は、シート状体をピッチ送りする。これにより、新たなレプリカにより、再度、
図4A乃至
図4Kの動作を繰り返し、複数のガラス基板15上にレプリカの微細凹凸パターンを転写しパターン形成するものである。
【0044】
このように、シート状体をピッチ送りすることのみで、新たなレプリカへの交換が可能となるため、レプリカ交換と段取り作業におけるコストを低減できる。
【0045】
また、同一の微細構造転写装置1にてレプリカを連続的に複数シート状体に固着でき、且つその後、ガラス基板へレプリカを用いてパターン形成することが可能となるため。スループットの向上を図ることが可能となる。
【0046】
図8Bは、ガラス基板へのパターン形成時のプロセスの概要を示す図であって、(A)はレプリカ位置合わせ、(B)は押圧(インプリント)、(C)は硬化光照射、(D)は剥離、及び(E)はガラス基板へのパターン形成完了時を示す図である。
図8B(A)では予め表面に光硬化性樹脂であるレジン19が塗布されたガラス基板15に、シート状体(フィルム)4に固着されたレプリカ20を位置合わせする。その後、
図8B(B)ではインプリントロール2によりシート状体(フィルム)4に固着されたレプリカ20を、レジン19が塗布されたガラス基板15に押圧しつつ下流側へと移動する。
図8B(C)では、ガラス基板15上のレジン19へ、シート状体(フィルム)4に固着されるレプリカ20を透過して、硬化光照射器8より紫外線(紫外光)を照射しつつ、硬化光照射器8は下流側へと移動する。
図8B(D)では、インプリントロール2が上流側へと移動することにより、硬化後のレジン19を有するガラス基板15より、シート状体(フィルム)4に固着されるレプリカ20が剥離される。
図8B(E)では、完全にガラス基板15よりシート状体(フィルム)4に固着されたレプリカ20を剥離することにより、ガラス基板15上にレプリカの微細凹凸パターンが形成される。
【0047】
なお、本実施例では、微細構造転写装置1にて、シート状体(フィルム)4に連続的に複数のレプリカ20を固着させた後、予め光硬化性樹脂が塗布されたガラス基板15にレプリカ20により、微細凹凸パターンを転写(形成)する構成としたが、必ずしもこれに限られるものでは無い。例えば、本実施例の微細構造転写装置1にて、シート状体(フィルム)4に連続的に複数のレプリカ20を固着させた後、当該レプリカを用いて他の装置にてガラス基板にレプリカの微細凹凸パターンを転写する構成としても良い。
【0048】
本実施例によれば、シート状体に連続的に複数のレプリカを固着し得る微細構造転写装置及び微細構造転写方法を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、シート状体に連続的に複数のレプリカを固着し得ることから、レプリカ形成のスループットの向上が図られる。
また、仮に、本実施例の微細構造転写装置にて、レプリカ形成とガラス基板上へのレプリカの微細凹凸パターンの転写によるパターン形成を行えば、シート状体に固着された複数のレプリカのうち、一のレプリカが使用限界に達した場合であっても、シート状体をピッチ送りすることのみで、次の新たなレプリカの使用が可能となることから、レプリカの交換と段取り作業におけるコストを低減できる。
レプリカ連続形成装置21にて形成されたレプリカ20は、レプリカ形状検査装置31に送られ、レプリカ20に形成(転写)された微細凹凸パターンに、欠陥或は不良が生じていないか検査が実行される。レプリカ形状検査装置31に用いられる形状検査装置としては、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)、或は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)、光学式検査装置であるスキャットロメトリ(Scatterometory)等を用いることができる。中でもAFMを用いることが望ましい。
レプリカ形状検査装置31にて、不良レプリカと判定された場合には、不良が特定されたセルの情報(配置、不良内容等)を認識し、図示しない記憶部に記憶する。レプリカ形状検査装置31とパターン形成装置41は、ネットワーク等を介して、不良セルの不良情報を共有する。
パターン形成装置41は、上流装置から搬入される光硬化性樹脂が塗布されたガラス基板15をパターン形成装置41へと搬送する、或は、パターン形成装置41にて微細凹凸パターンが形成されたガラス基板15を下流装置へ搬送する搬送機構42を備える。また、パターン形成装置41は、搬送機構42より搬入される光硬化性樹脂が塗布されたガラス基板15をガントリー13内に収容し、そこから、上述の実施例1に示した微細構造転写装置1と同様の巻出機5及び巻取機6、更には図示しない各種ロールを備え、レプリカ20の微細凹凸パターンを、ガラス基板15にパターン形成(転写)する。
本実施例によれば、レプリカ連続形成装置21にてシート状体に複数のレプリカを連続的に固着できることから、実施例1と同様に、レプリカ交換の段取り時間を低減することが可能となる。
また、本実施例によれば、レプリカ形状検査装置31にて不良判定されたセルをパターン形成装置41にて、自動的にスキップすることができ、良品のレプリカのみを用いた微細凹凸パターン形成が可能となるため、微細凹凸パターンが表面に形成されたガラス基板の歩留まりを向上することが可能となる。