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特開2024-96968露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096968
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067538
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2021511329の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2019069149
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】井田 真高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 琢己
(72)【発明者】
【氏名】松橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 暢章
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オーバーラップ部と非オーバーラップ部との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止する。
【解決手段】露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、前記減光部材は、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つと前記減光部材との第1方向における重なりを所望の大きさに変更可能に構成され、前記重なりが前記所望の大きさに調整された前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させることで、レンズエレメントの前記第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数を変化させる、保持部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、
前記減光部材は、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つと前記減光部材との第1方向における重なりを所望の大きさに変更可能に構成され、
前記重なりが前記所望の大きさに調整された前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させることで、レンズエレメントの前記第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数を変化させる、保持部と、を含む、
露光装置。
【請求項2】
前記光学系に対して前記基板を走査方向に移動させるステージを含み、
前記光学系は、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定する絞りを含み、
前記照射領域は、前記照射領域の前記走査方向と直交する非走査方向における端を含む端領域と、前記照射領域の前記非走査方向における中心を含む中心領域と、を含み、
前記ステージは、前記端領域により、前記基板上の露光領域が複数回露光されるように、前記基板を移動させる、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置し、
前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記入射面は、前記端領域に対応する第1領域と、前記中心領域に対応する第2領域と、を含み、
前記保持部は、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域と前記減光部材との、前記第1方向における重なりが変化するように、前記減光部材を制御する、
請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御によって、前記端領域の照度分布または露光量分布が変化する、
請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置する、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
前記光学系は、マスクに光を照射する照明光学系と、投影光学系と、を含み、
前記照明光学系は、前記フライアイレンズと、前記減光部材と、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定し、前記マスクと共役な位置に位置する絞りと、を含み、
前記投影光学系は、前記マスクからの光を前記基板に照射する、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
前記減光部材は、互いに重なる第1減光部材および第2減光部材を含み、
前記保持部は、前記第1減光部材と前記第2減光部材との前記第1方向における重なりが変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材の一方が他方に対して移動させる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記保持部は、前記保持部に伝達される信号に従って、前記減光部材と前記フライアイレンズの間隔が変化するように、前記減光部材を移動させる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記減光部材は、前記第1方向における幅が異なる第1減光部材および第2減光部材を含み、
前記保持部は、前記第1減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、または、前記第2減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材を選択的に前記第2方向に移動させる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記保持部は、第1制御信号に従って、前記第1減光部材を前記第2方向に移動させる、第1保持部材と、前記第1制御信号とは異なる第2制御信号に従って、前記第2減光部材を前記第2方向に移動させる、第2保持部材と、を含む、
請求項9に記載の露光装置。
【請求項11】
前記第1減光部材および前記第2減光部材は、前記第1方向に並んでいる、
請求項9に記載の露光装置。
【請求項12】
前記第1減光部材および前記第2減光部材は、前記第2方向に並んでいる、
請求項9に記載の露光装置。
【請求項13】
複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、
レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、
前記減光部材は、互いに重なる第1減光部材および第2減光部材を含み、
前記保持部は、前記第1減光部材と前記第2減光部材との前記第1方向における重なりが変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材の一方を他方に対して前記第1方向に移動させる、
露光装置。
【請求項14】
複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、
レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、
前記保持部は、前記保持部に伝達される信号に従って、前記減光部材と前記フライアイレンズの間隔が変化するように、前記減光部材を移動させる、
露光装置。
【請求項15】
複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、
レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、
前記減光部材は、前記第1方向における幅が異なる第1減光部材および第2減光部材を含み、
前記保持部は、前記第1減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、または、前記第2減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材を選択的に前記第2方向に移動させる、
露光装置。
【請求項16】
前記光学系に対して前記基板を走査方向に移動させるステージを含み、
前記光学系は、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定する絞りを含み、
前記照射領域は、前記照射領域の前記走査方向と直交する非走査方向における端を含む端領域と、前記照射領域の前記非走査方向における中心を含む中心領域と、を含み、
前記ステージは、前記端領域により、前記基板上の露光領域が複数回露光されるように、前記基板を移動させる、
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項17】
前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置し、
前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記入射面は、前記端領域に対応する第1領域と、前記中心領域に対応する第2領域と、を含み、
前記保持部は、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域と前記減光部材との、前記第1方向における重なりが変化するように、前記減光部材を制御する、
請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記制御によって、前記端領域の照度分布または露光量分布が変化する、
請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置する、
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項20】
前記光学系は、マスクに光を照射する照明光学系と、投影光学系と、を含み、
前記照明光学系は、前記フライアイレンズと、前記減光部材と、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定し、前記マスクと共役な位置に位置する絞りと、を含み、
前記投影光学系は、前記マスクからの光を前記基板に照射する、
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、
レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、
前記光学系に対して前記基板を走査方向に移動させるステージと、を含み、
前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置し、
前記光学系は、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定する絞りを含み、
前記照射領域は、前記照射領域の前記走査方向と直交する非走査方向における端を含む端領域と、前記照射領域の前記非走査方向における中心を含む中心領域と、を含み、
前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記入射面は、前記端領域に対応する第1領域と、前記中心領域に対応する第2領域と、を含み、
前記ステージは、前記端領域により、前記基板上の露光領域が複数回露光されるように、前記基板を移動させ、
前記保持部は、前記減光部材が前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域及び前記第2領域と重なる第1状態と、前記減光部材が前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域と重ならず前記第2領域と重なる第2状態との、いずれかになるように、前記減光部材を制御する、
露光装置。
【請求項22】
前記光学系は、マスクに光を照射する照明光学系と、投影光学系と、を含み、
前記照明光学系は、前記フライアイレンズと、前記減光部材と、前記絞りと、を含み、
前記投影光学系は、マスクからの光を前記基板に照射する、
請求項21に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスク上のパターン原版を大型基板に露光転写するための装置として、マスクおよび基板を、投影光学系に対して相対走査して露光を行なうスキャン型露光装置が知られている。スキャン露光により、露光視野はスキャン方向(走査方向)に拡大されるが、さらにスキャン方向と交差する方向(非スキャン方向)にも露光視野を拡大するために、複数回のスキャン露光を、その露光領域を非スキャン方向にオーバーラップさせて行う露光装置も知られている。
さらに、複数の投影光学系を非スキャン方向に並列的に備え、複数の投影光学系が露光する露光視野の一部をオーバーラップさせつつ露光を行うことで、一回の走査により基板上に電子回路を露光転写する方法も知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2016-54230号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、前記減光部材は、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つと前記減光部材との第1方向における重なりを所望の大きさに変更可能に構成され、前記重なりが前記所望の大きさに調整された前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させることで、レンズエレメントの前記第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数を変化させる、保持部と、を含む。
第2の態様によると、露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、前記減光部材は、互いに重なる第1減光部材および第2減光部材を含み、前記保持部は、前記第1減光部材と前記第2減光部材との前記第1方向における重なりが変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材の一方を他方に対して前記第1方向に移動させる。
第3の態様によると、露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、前記保持部は、前記保持部に伝達される信号に従って、前記減光部材と前記フライアイレンズの間隔が変化するように、前記減光部材を移動させる。
第4の態様によると、露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、を含み、前記減光部材は、前記第1方向における幅が異なる第1減光部材および第2減光部材を含み、前記保持部は、前記第1減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、または、前記第2減光部材と重なる前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記第1減光部材および前記第2減光部材を選択的に前記第2方向に移動させる。
第5の態様によると、露光装置は、複数のレンズエレメントを含むフライアイレンズと、前記フライアイレンズに入射する光の少なくとも一部を減光する減光部材と、を含み、前記フライアイレンズからの光を基板に照射する光学系と、レンズエレメントの第1方向における中心が前記減光部材と重なる、前記複数のレンズエレメントの数が変化するように、前記減光部材を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる保持部と、前記光学系に対して前記基板を走査方向に移動させるステージと、を含み、前記フライアイレンズの入射面は、前記基板と共役な位置に位置し、前記光学系は、前記減光された光による前記基板上の照射領域を設定する絞りを含み、前記照射領域は、前記照射領域の前記走査方向と直交する非走査方向における端を含む端領域と、前記照射領域の前記非走査方向における中心を含む中心領域と、を含み、前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記入射面は、前記端領域に対応する第1領域と、前記中心領域に対応する第2領域と、を含み、前記ステージは、前記端領域により、前記基板上の露光領域が複数回露光されるように、前記基板を移動させ、前記保持部は、前記減光部材が前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域及び前記第2領域と重なる第1状態と、前記減光部材が前記複数のレンズエレメントの少なくとも1つの前記第1領域と重ならず前記第2領域と重なる第2状態との、いずれかになるように、前記減光部材を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態の露光装置の構成を示す側面図。
図2】第1実施形態の露光装置の一部分を示す斜視図。
図3】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズからマスクまでを拡大して示した斜視図。
図4】第1実施形態の露光装置のマスク上の視野と基板上の視野との関係を表す図。図4(a1)、図4(a2)および図4(a3)は、それぞれ図1中の投影光学系19cにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図、図4(b1)、図4(b2)および図4(b3)は、それぞれ図1中の投影光学系19bにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図。
図5】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光エネルギー、および感光材料における実効感光量の一例を示す図。図5(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、図5(b)は基板22上に形成される露光領域を示す図、図5(c)は基板上に照射される露光量の一例を示す図、図5(d)は基板上に照射される露光量の他の一例を示す図。
図6】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズ、減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
図7】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光エネルギー、および感光材料における実効感光量の一例を示す図。図7(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、図7(b)は基板上に照射される露光量の一例を示す図、図7(c)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図8】オーバーラップ部における露光量の分布を示す図。
図9】変形例1の減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
図10図10(a)は、変形例2の減光部材および減光部材保持部をインプットレンズ側から見た上面図。図10(b)は、変形例2の減光部材および減光部材保持部の側面図。
図11】変形例3の減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
図12】変形例4の減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(露光装置の第1実施形態)
図1は、第1実施形態の露光装置100を示す側面図である。後述するように露光装置100は、5本の投影光学系19a~19eを備えているが、図1には、そのうちの2本である投影光学系19a、19bのみが示されている。
投影光学系19a~19eは、投影倍率(横倍率)が+1倍の正立正像を形成する光学系であり、マスク15に描画されているパターンを、基板22の上面に形成されている感光材料に露光転写する。なお、感光材料が形成された基板22は、被露光基板と解釈することができる。
【0007】
基板22は、不図示の基板ホルダーを介して基板ステージ27により保持される。基板ステージ27は、不図示のリニアモータ等により、基板ステージ定盤28上をX方向に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。基板ステージ27のX方向の位置は、基板ステージ27に取り付けられている移動鏡24の位置を介してレーザー干渉計25により計測される。同様に基板ステージ27のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
位置検出光学系23は、基板22上に形成されているアライメントマーク等の既存のパターンの位置を検出する。
【0008】
マスク15は、マスクステージ16により保持される。マスクステージ16は、不図示のリニアモータ等により、マスクステージ定盤17上をX方向に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。マスクステージ16のX方向の位置は、マスクステージ16に取り付けられている移動鏡13の位置を介してレーザー干渉計14により計測される。同様にマスクステージ16のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
【0009】
不図示の制御系は、レーザー干渉計14,25等の計測値に基づいて、不図示のリニアモータ等を制御して、マスクステージ16および基板ステージ27のXY位置を制御する。不図示の制御系は、基板22へのマスクパターンの露光に際しては、マスク15と基板22とを、投影光学系19a~19eによる結像関係を保ったまま、投影光学系19a~19eに対して相対的に、X方向に略同一速度で走査させる。
本明細書では、露光に際して、基板22が走査される方向(X方向)を「走査方向」および「スキャン方向」とも呼ぶ。また、基板22の面内に含まれる方向であってX方向と直交する方向(Y方向)を「非走査方向」および「非スキャン方向」とも呼ぶ。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。
なお、図1および以下の各図に矢印で示したX方向、Y方向、およびZ方向は、その矢印の指し示す方向を+方向とする。
【0010】
図2は、第1実施形態の露光装置100の照明光学系ILa~ILeの下流部から基板22までの部分を示す斜視図である。以下、図2も参照して説明を続ける。
図2に示したとおり、5つの投影光学系19a~19eのうち、3つの投影光学系19a、19c、19e(以下、総称してまたは個々に「第1列の投影光学系19F」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで配置されている。そして、2つの投影光学系19b、19d(以下、総称してまたは個々に「第2列の投影光学系19R」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで、第1列の投影光学系19Fよりも+X側に配置されている。
第1列の投影光学系19Fの各投影光学系は、その光軸がY方向に所定の間隔で離れて配置される。第2列の投影光学系19Rの各光学系も第1列の投影光学系19Fと同様に配置される。また、投影光学系19bは、その光軸のY方向の位置が、投影光学系19aと投影光学系19cのそれぞれの光軸を結んだ直線の略中心と一致するように、配置される。また、投影光学系19dも、投影光学系19bと同様に、配置される。
【0011】
第1実施形態の露光装置100は、各投影光学系19a~19eのそれぞれに対応して、複数の照明光学系ILa~ILeを備えている。一例として、図1に示されるように、投影光学系19aに対応する照明光学系ILaは、光軸IXaに沿って、インプットレンズ8a、フライアイレンズ11aおよびコンデンサーレンズ12aを備えている。他の照明光学系ILb~ILeも同様に、インプットレンズ8b~8e、フライアイレンズ11b~11e、およびコンデンサーレンズ12b~12eを含んでいる。なお、上述のように図2には、各照明光学系ILa~ILeのうち、フライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eのみが示されている。
なお、側面図である図1には、投影光学系19c~19eは、投影光学系19aまたは19bとX方向の位置が重なるため示していない。同様に、照明光学系ILc~ILeも、照明光学系ILaまたはILbとX方向の位置が重なるため示していない。
【0012】
ランプ等の光源1から供給される照明光は、楕円ミラー2、折り曲げミラー3、リレーレンズ4、折り曲げミラー5、リレーレンズ6、光ファイバー7等の導光光学系を介して、各照明光学系ILa~ILeに供給される。光ファイバー7は、1つの入射側71に入射した照明光を略均等に分岐して、5つの射出側72a~72eに射出する。光ファイバー7の5つの射出側72a~72eのそれぞれから射出された照明光は、各照明光学系ILa~ILeの中のインプットレンズ8a~8eに入射する。そして、照明光は、さらにフライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eを経て、マスク15上の各照明領域MIa~MIeに照射される。
【0013】
フライアイレンズ11a~11eは、その入射側面(インプットレンズ8b~8e側の面)が、投影光学系19a~19e、コンデンサーレンズ12a~12eおよびフライアイレンズ11a~11eを介して、基板22の上面(基板22が載置される基板ホルダーの上面もしくはその近傍)と共役(結像関係)である共役面CPと一致もしくはその近傍に位置するように配置されている。
【0014】
図3は、一例として、照明光学系ILcに含まれるフライアイレンズ11c、およびコンデンサーレンズ12cと、マスク15上の照明領域MIcを拡大して示した斜視図である。
フライアイレンズ11cは、照明領域MIcと相似形の、Y方向に長い長方形の断面形状(XY面内の形状)を有するレンズエレメント110が、X方向およびY方向に複数個配列されて形成されている。各レンズエレメント110の入射面(図3中の上方の面、すなわち+Z側の面)は、各レンズエレメント110およびコンデンサーレンズ12cからなる光学系により、マスク15上の照明領域MIc(マスク15が載置されるマスクステージの上面もしくはその近傍)に対する共役面CPとなっている。従って、基板22上の露光視野PIcに対する共役面CPでもある。それぞれのレンズエレメント110の入射面に照射される照明光は、マスク15上の照明領域MIcに重畳して照射される。これにより、照明領域MIc内の照明光の照度が略均一化される。
【0015】
照明光学系ILcを除く他の照明光学系ILa~ILeの構成も、図3に示した構成と同様である。
フライアイレンズ11a~11eは、それぞれの照明領域MIa~照明領域MIeに照明光を重畳して照射するオプチカルインテグレーターの一例である。
フライアイレンズ11a~11eの入射面側(インプットレンズ8a~8e側)には、後述する減光部材10a~10eが、減光部材保持部9a~9eにより保持され、配置されている。
【0016】
投影光学系19a~19eのそれぞれは、正立正像の像を形成するために、例えば2回結像型の光学系により構成される。この場合、各投影光学系19a~19eの上半分を構成する光学系により、各投影光学系19a~19eの光軸PAXa~PAXeの方向(Z方向)の中間付近にある中間像面20に、マスク15のパターンの中間像が形成される。中間像は、各投影光学系19a~19eの下半分を構成する光学系により再度結像され、基板22上に、マスク15のパターンの像が形成される。
【0017】
中間像面20は基板22と共役であるため、各投影光学系19a~19e内の中間像面20にそれぞれ視野絞り21a~21eを配置することにより、基板22上の各投影光学系19a~19eによる露光視野PIa~PIeを規定することができる。
【0018】
図4は、マスク15上の照明領域MIa~MIeと、視野絞り21a~21eと、露光視野PIa~PIeとの関係を示す図である。
図4(a1)は、投影光学系19cに対応するマスク15上の照明領域MIcを示す図であり、照明領域MIcは、フライアイレンズ11cのレンズエレメント110の断面形状と相似な長方形となっている。
【0019】
図4(a2)は、投影光学系19c内の視野絞り21cと、そこに照射される照明光MIc2を示す図である。視野絞り21cには、マスク15上の照明領域MIcの中間像である破線で示した照明光MIc2が照射される。照明光MIc2のうち、視野絞り21cの遮光部(斜線で示した部分)に照射された照明光は視野絞り21cにより遮光される。
一方、視野絞り21cの開口部21coを透過した照明光は、投影光学系19cの下半分を構成する光学系により基板22上で再度結像し、基板22上に露光視野PIcを形成する。
【0020】
図4(a3)は、基板22上の露光視野PIcを示すである。
一例として、投影光学系19c~19eが全屈折光学系から成るとき、中間像である照明光MIc2は照明領域MIcに対する倒立正像(像のX方向およびY方向が共に反転し、鏡像ではない像)であり、露光視野PIcは視野絞り21cに対する倒立正像となる。従って、図4(a2)および図4(a3)に示したとおり、視野絞り21cの開口部21coの形状と、露光視野PIcの形状は、相互にZ軸回りに180度回転したものと一致する。
【0021】
露光視野PIcは、一例として、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。ここで、露光視野PIcのうち、+X側の短辺の全てと-X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIccと呼ぶ。一方、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIclと呼び、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIcrと呼ぶ。
中心領域PIccのY方向の長さ(幅)を幅Wsと呼び、左端領域PIclおよび右端領域PIcrのY方向の長さ(幅)は等しく、これを幅Woと呼ぶ。
【0022】
一方、図4(b1)~図4(b3)は、それぞれ投影光学系19bに対応する、マスク15上の照明領域MIbと、視野絞り21bと、露光視野PIbとを示す図である。図4(b2)に示すとおり、投影光学系19bにおいては、視野絞り21bの開口部21boの形状は、投影光学系19cの視野絞り21cの開口部21coの形状をX方向に反転した形状となっている。その結果、図4(b3)に示すとおり、投影光学系19bの露光視野PIbの形状は、投影光学系19cの露光視野PIcの形状をX方向に反転した形状となっている。
【0023】
上述の露光視野PIcと同様に、露光視野PIbについても、-X側の短辺の全てと+X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIbcと呼ぶ。露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIblと呼び、露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIbrと呼ぶ。
【0024】
図5(a)は、基板22上での、5つの投影光学系19a~19eの各露光視野PIa~PIeを示す図である。第1列の投影光学系19Fである投影光学系19a、19eの露光視野PIa、PIeは、上述した投影光学系19cの露光視野PIcと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。一方、第2列の投影光学系19Rである投影光学系19dの露光視野PIdは、上述した投影光学系19bの露光視野PIbと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が-X側に、長辺が+X側にある台形である。
【0025】
投影光学系19a、19d、19eの露光視野PIa、PId、PIeについても、上述の露光視野PIb、PIcと同様に、中心領域PIac、PIdc、PIec、および左端領域PIal、PIdl、PIel、右端領域PIar、PIdr、PIerを定義できる。ただし、-Y方向の端に配置されている露光視野PIaは、視野絞り21aにより、その-Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため右端領域PIarは存在しない。また、+Y方向の端に配置されている露光視野PIeは、視野絞り21aにより、その+Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため左端領域PIelは存在しない。なお、視野絞り21aと21eとの形状を、視野絞り21cの形状と異ならせるようにしても良いし、別の部材を用いて、露光視野PIaでは右端領域PIarが存在しないよう、照明光を遮光するようにしてもよい。
【0026】
各露光視野PIa~PIeの各中心領域PIac~PIecのY方向の長さはいずれも幅Wsに等しく、左端領域PIal~PIdlおよび右端領域PIbr~PIerの長さは、いずれも幅Woに等しい。そして、露光視野PIa~PIeのうちY方向に隣接する2つの露光視野において、隣接する左端領域PIal~PIdlと右端領域PIbr~PIerのY方向の位置は、一致している。
各露光視野PIa~PIeのこのような形状および位置の設定は、投影光学系19a~19eの配置位置、および視野絞り21a~21eの開口部21ao~21eoの形状および位置を設定することにより行なう。
【0027】
図5(b)は、基板22が基板ステージ27によりX方向に走査され、図5(a)に示した露光視野PIa~PIeにより露光された際に、基板22上に形成される露光領域を示す図である。基板22上には、走査露光により各露光視野PIa~PIeにより露光される走査露光視野SIa~SIeが形成される。図5(b)において、第1列の投影光学系19a、19c、19eが形成する走査露光視野SIa、SIc、SIeは2点鎖線で示し、第2列の投影光学系19b、19dが形成する走査露光視野SIb、SIdは1点鎖線で示している。
【0028】
これらの走査露光視野SIa~SIeは、露光視野PIa~PIeがX方向への走査露光によりX方向に延長されたものである。各走査露光視野SIa~SIeのY方向(非走査方向)の端部は、それぞれ隣接する他の走査露光視野SIa~SIeの非走査方向の端部とオーバーラップしている。たとえば、左端領域PIalによる露光領域と右端領域PIbrによる露光領域とが一致する。他の露光領域においても同様であるため、説明は省略する。
【0029】
以下では、Y方向のうち、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された部分を非オーバーラップ部Sa~Seとも呼び、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光された部分をオーバーラップ部Oa~Odとも呼ぶ。
露光視野PIa~PIeのうち、左端領域PIal~PIdlと右端領域PIbr~PIerは、オーバーラップ部Oa~Odに対応する露光視野であり、中心領域PIac~PIecは、非オーバーラップ部Sa~Seに対応する露光視野である。
【0030】
図5(c)は、X方向への走査露光により基板22上に露光される露光量Eを示すグラフである。グラフの縦軸は露光量、横軸はY方向の座標である。図5(a)に示したとおり、Y方向の各微小区間で各露光視野PIa~PIeをX方向に積算した値は等しく、かつ、フライアイレンズ11の作用等により各露光視野PIa~PIe内の照度は均一であるため、基板22上の露光量Eは一定の値E1となる。
すなわち、Y方向のうち、非オーバーラップ部Sa~Seにおける露光量Eと、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量Eとは、共に露光量Eの値がE1となり等しくなる。
【0031】
電子デバイス等の製造工程で使用されているフォトレジスト等の感光材料では、実効的な感光量(以下、「実効感光量」とも呼ぶ)は露光量に比例する。すなわち露光量が同一であれば、その露光が時間的に連続して行われた場合であっても、時間的に複数に分割して行われた場合であっても、感光材料の実効感光量は変わらない。
従って、露光量が一定値であれば、フォトレジスト等の感光材料への実効感光量も一定値となる。
【0032】
しかし、一部の感光材料では、露光が時間的に連続して行われた場合と、時間的に複数に分割して行われた場合では、露光量が同一であっても感光材料の実効感光量が変化する。具体的には、露光が時間的に複数に分割して行われた場合には、時間的に連続して行われた場合に比べて、実効感光量が低下する。
【0033】
図5(d)は、このような一部の感光材料(以下、「非加算性感光材料」とも呼ぶ)に対して、図5(a)に示した露光視野PIa~PIeを用いてX方向に走査露光した場合の、非加算性感光材料の実効感光量EEを示すグラフである。
各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~Odは、始めに第1列の投影光学系19a、19c、19eにより露光され、その後第2列の投影光学系19b、19dにより露光されるため、露光が時間的に分割されて行われている。換言すると、オーバーラップ部Oa~Odは、時間的に離散的に露光が行われる。従って、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより時間的に分割されずに連続的に露光された非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEに対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEが低下している。具体的には、非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEの値がEE1に対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEの値はEE1よりも小さくなる。
【0034】
この結果、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合には、オーバーラップ部Oa~Odと非オーバーラップ部Sa~Seとで、実効感光量EEが異なることから、転写されたパターンの線幅や厚さが変化してしまうことになる。
時間的に連続的に露光が行われる非オーバーラップ部Sa~Seを、第1領域と解釈することもできる。一方、時間的に離散的に露光が行われるオーバーラップ部Oa~Odを、第2領域と解釈することもできる。
【0035】
そこで、第1実施形態の露光装置100では、照明光学系ILa~ILeのそれぞれのフライアイレンズ11a~11eの入射面側、つまりインプットレンズ8a~8eとフライアイレンズ11a~11eとの間の位置、且つフライアイレンズ11a~11eの入射面の近傍に、照度変更部材の一例である減光部材10a~10eを設けている。減光部材10a~10eの位置は、制御部50からの制御信号SigA~SigEにより制御される。
【0036】
図6は、照明光学系ILcに設けられているフライアイレンズ11c、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)、および減光部材保持部9c(9c1、9c2)を、インプットレンズ8c側から見た図である。以下、図6を参照して、照明光学系ILcに設けられている減光部材10c、および減光部材保持部9cについて説明するが、他の照明光学系ILa~ILeに設けられている減光部材10a~10e、および減光部材保持部9a~9eについても同様である。
【0037】
フライアイレンズ11cは、断面がY方向に長い長方形であるレンズエレメント110がX方向に複数配列されたレンズブロックが、Y方向に複数配列されている。上述のとおり、図6は、フライアイレンズ11cを入射面側であるインプットレンズ8c側から見た図である。そして、各レンズエレメント110の入射側面は、基板22上に形成される露光視野PIcに対する共役面CPとなっている。そのため、図6には、各レンズエレメント110の中に、露光視野PIcに対応する領域である露光視野対応領域IPIcを破線で示している。なお、露光視野PIcに対する露光視野対応領域IPIcの横倍率はβ倍であり、露光視野対応領域IPIcのうち、露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分のY方向の幅IWsは、β×Wsであるとする。
【0038】
減光部材10cのうち、Y方向の幅が幅W1である減光部材10c1a、10c1bは、減光部材保持部9c1の一部であるスライダー9c10に保持され、X方向及びZ方向に可動となっている。減光部材10c1a、10c1bのX方向の位置(フライアイレンズ11cへの挿入量)、およびZ方向の位置は、制御部50から減光部材保持部9c1に伝達される制御信号Sigc1に従って制御される。
【0039】
Y方向の幅が幅W2である減光部材10c2a、10c2bは、減光部材保持部9c2の一部であるスライダー9c20に保持され、減光部材10c1a、10c1bとは独立してX方向及びZ方向に可動となっている。減光部材10c2a、10c2bのX方向の位置、およびZ方向の位置は、制御部50から減光部材保持部9c2に伝達される制御信号Sigc2に従って制御される。スライダー9c10と減光部材保持部9c1の本体との相対位置関係、およびスライダー9c20と減光部材保持部9c2の本体との相対位置関係は、エンコーダー等により計測される。
【0040】
一例として、減光部材10c1a、10c1bの幅W1は上述の幅IWsより僅かに大きく、幅W2は上述の幅IWsより僅かに小さいが、幅W1と幅W2は、幅IWsと概ね同程度の幅である。従って、減光部材10c1a、10c1bを、いくつかのレンズエレメント110の露光視野対応領域IPIcの中の露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分を覆って配置することで、基板22上の非オーバーラップ部Scの露光量を減らすことができる。
【0041】
また、スライダー9c10をX方向に移動させることにより、減光部材10c1a、10c1bが覆うレンズエレメント110の数、および1つのレンズエレメント110内の遮光された部分の比率を変更することができる。これにより、露光視野PIcのうち中心領域PIccの照度を、左端領域PIclおよび右端領域PIcrの照度に対して、略連続して可変に低下させることができる。
スライダー9c20をX方向に移動させることにより、減光部材10c2a、10c2bをX方向に移動させることによっても、同様の効果が得られる。
【0042】
従って、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)は、基板22上の非オーバーラップ部Scへの露光量を、オーバーラップ部への露光量に対して小さくする、照度変更部材と解釈することができる。
減光部材10cは、金属製の薄板であっても良く、透明なガラス板上に減光部材により形成された遮光膜であってもよい。減光部材10cは、金属板のように照明光を完全に遮光するものに限られず、一部の照明光のみを遮光、透過させる部材であっても良い。つまり減光部材10cは、照度を変更するための照度変更部材であればよい。
他の照明光学系ILa~ILeが備える減光部材10a~10e、および減光部材保持部9a~9eについても、上述の減光部材10cおよび減光部材保持部9cの構造と、同様である。
【0043】
図7は、減光部材10c~10eを備えた第1実施形態の露光装置100において、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合の結果を説明する図である。
図7(a)は、図5(a)と同様に、基板22上の各露光視野PIa~PIeを示す。
図7(b)は、図5(c)と同様に、X方向への走査露光により基板22上に露光される露光量Eを示すグラフである。図7(b)に示した場合においては、減光部材保持部9a~9eにより減光部材10a~10eがフライアイレンズ11a~11eの入射面内に挿入されている。従って、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された非オーバーラップ部Sa~Seの露光量E2は、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~OdのY方向の中心位置での露光量E3と比較して少ない。
【0044】
図7(c)は、図7(b)に示した露光量により、上述の非加算性感光材料に生じる実効感光量EEを示すグラフである。時間的に分割されずに露光される非オーバーラップ部Sa~Seの露光量E2を、時間的に分割されて露光されるオーバーラップ部Oa~Odの露光量E3に比べて低減することにより、非加算性感光材料の非加算特性が相殺され、実効感光量EEをほぼ一定の値EE2とすることができる。
これにより、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、オーバーラップ部Oa~Odと非オーバーラップ部Sa~Seとの間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0045】
減光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されるので、フライアイレンズ11cの入射面においては、減光部材10cのXY方向のエッジは、ぼやけて投影される。逆に言えば、減光部材10cをフライアイレンズ11cの入射面からZ方向にどれだけ離して配置すれば良いかは、基板22上における減光部材10cのエッジの半影ボケの量を決定するパラメータである、フライアイレンズ11cの入射面と基板22との横倍率、およびフライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数に基づいて、決定することができる。
【0046】
一例として、オーバーラップ部Oa~OdのY方向の幅をDW、フライアイレンズ11cの入射面に対する基板22の横倍率をβ、フライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数をNAとするとき、減光部材10cの、フライアイレンズ11cの入射面からのZ方向の距離Dは、
0 ≦ D ≦ 1.2×DW/(β・NA) ・・・(1)とするのが良い。
距離Dが式(1)を満たす場合、減光部材10cのエッジによる基板22上の露光量変化(露光量ムラ)の影響をさらに低減することができ、かつ、オーバーラップ部Oa~Odの露光量が必要以上に低下することを防止できる。
【0047】
非加算性感光材料の非加算特性は、個々の非加算性感光材料に固有であるともに、基板22上に非加算性感光材料を形成してからの時間等によっても変動する。従って、露光対象である非加算性感光材料の非加算特性を正確に相殺するためには、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を、非加算特性に合わせて正確に制御する必要がある。
【0048】
第1実施形態の露光装置100では、図6に示したとおり、Y方向の幅が異なる2種類の減光部材10c1a、10c1b、および減光部材10c2a、10c2bを備えている。そして、制御部50からの制御信号SigC1、SigC2により、幅W1の減光部材10c1a、10c1bと、幅W2の減光部材10c2a、10c2bとのX方向の位置(フライアイレンズ11cへの挿入量)を制御する。これにより、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を、正確に制御することができる。
【0049】
図8は、第1実施形態の露光装置100におけるオーバーラップ部Ocにおける露光量分布Ea、Ebを示す図である。
露光量分布Eaは、照明光学系ILcのフライアイレンズ11cおよび照明光学系ILdのフライアイレンズ11dの入射面側に、幅W1の減光部材10c1a、10c1bが挿入されている場合の、オーバーラップ部Ocにおける露光量を示す。露光量分布Ebは、照明光学系ILcのフライアイレンズ11cおよび照明光学系ILdのフライアイレンズ11dの入射面側に、幅W2の減光部材10c2a、10c2bが挿入されている場合の、オーバーラップ部Ocにおける露光量を示す。なお、幅W1の減光部材10c1a、10c1bの+X方向の端部は、幅W2の減光部材10c2a、10c2bの+X方向の端部よりも、+X側にあるとしている。
【0050】
幅W1(>W2)の減光部材10c1a、10c1bは、非オーバーラップ部Sc、Sdの露光量を露光量E4に減光するのみでなく、オーバーラップ部Ocの両端の露光量も減光する。一方、幅W2(<W1)の減光部材10c2a、10c2bは、非オーバーラップ部Sc、Sdの露光量を露光量E5に減光するが、オーバーラップ部Ocの露光量は減光しない。ただし、減光部材10c1a、10c1b、10c2a、10c2bが挿入されたとしても、非オーバーラップ部Sc、Sdの露光量は減光されるが、非走査方向における露光量の分布は変更されない。
従って、露光量分布Eaにおいては、オーバーラップ部Ocにおける露光量の増加分Daの半値幅Waは、露光量分布Ebのオーバーラップ部Ocにおける露光量の増加分Dbの半値幅Wbよりも狭い。
【0051】
図8に示した露光量分布Eaは、幅W1の減光部材10c1a、10c1bのみが挿入されている場合の露光量分布であり、露光量分布Ebは、幅W2の減光部材10c2a、10c2bのみが挿入されている場合の露光量分布である。実際には、幅W1の減光部材10c1a、10c1bと幅W2の減光部材10c2a、10c2bとを、それぞれ任意の長さだけフライアイレンズ11c、11dの入射側面に挿入することができる。これにより、第1実施形態の露光装置100においては、露光量分布Ea、Ebを内挿または外挿して得られる自由度の高い光量分布をオーバーラップ部Ocに形成することができる。
【0052】
換言すれば、上述の第1実施形態においては、幅(W1、W2)の異なる複数の減光部材10c1a、10c1b、10c2a、10c2bのフライアイレンズ11の入射側面への挿入量(X方向の位置)を制御することにより、減光部材10のY方向の実効幅を変更していると解釈することができる。
【0053】
また、上述のように、減光部材10cを、照明光学系ILc、ILdの光軸IXcの方向(光軸方向)に移動することによっても、フライアイレンズ11cの入射面における減光部材10cのXY方向のエッジのボケ量を変更することができる。減光部材10cとフライアイレンズ11cの入射面とのZ方向の間隔(光軸方向の距離)を広くするとオーバーラップ部Oにおける露光量の増加分Daの半値幅は広がり、間隔を狭くすることで半値幅狭くすることができる。従って、照明光学系ILc、ILd内の減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bのZ方向位置(光軸方向の位置)をそれぞれ制御することによっても、オーバーラップ部Ocにおける露光量の分布を調整することができる。減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの光軸方向の位置は、制御部50からの制御信号SigC、SigDにより、それぞれ制御することができる。図8のように、幅W2の減光部材10c2a、10c2bのみが挿入されている露光量分布Ebにおいて、減光部材10c2a、10c2bとフライアイレンズ11cとのZ方向間隔を狭くすることで、半値幅Wbを半値幅Waに近づけることができる。これにより、オーバーラップ部Oにおける露光量を変更することなく、半値幅Wbを、半値幅Waへ近づけるように変更をすることができる。同様に、幅W1の減光部材10c1a、10c1bのみが挿入されている露光量分布Eaにおいて、減光部材10c1a、10c1bとフライアイレンズ11cとのZ方向間隔を広げることで、半値幅Waを半値幅Wbに近づけることもできる。
【0054】
上述のように、制御部50からの制御信号SigC、SigDにより、減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの光軸方向の位置を制御することにより、フライアイレンズ11cの入射面における減光部材10cのXY方向のエッジのボケ量を変更することができることを説明した。このように、フライアイレンズ11cの入射面における減光部材10cのZ方向の間隔を変更すると、ボケ量により、非オーバーラップ部Sc、Sdにおけるそれぞれの非オーバーラップ部Sc、Sdの非走査方向の端部の露光量が中央付近の露光量と略等しくならなくなる恐れがある。その際に、減光部材10c、10dの幅を変更することで、非オーバーラップ部Sc、Sdの非走査方向の端部の露光量が中央付近の露光量とを略等しくできる。
【0055】
なお、時間的に分割して行う露光に対する非加算性感光材料の実効感光量と積算露光量との関係は、それぞれの非加算性感光材料により異なる。従って、特定の非加算性感光材料に対して実際の露光を行う前に、例えば、減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの挿入量(X方向の位置)を異なる数段階に設定した複数の条件でテスト露光を行うと良い。そして、テスト露光の結果から減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの最適な挿入量を決定すると良い。
また、減光部材10cの挿入量の決定に際しては、基板ステージ27上に設けた照度センサ26を使用して、露光視野PIc内の中心領域PIcc、左端領域PIcl、および右端領域PIcrの照度を計測しながら行うと良い。
【0056】
なお、図6に示した幅W1の2本の減光部材10c1a、10c1bの+X方向の端部は、それぞれフライアイレンズ11cのレンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずれている。幅W2の2本の減光部材10c2a、10c2bについても同様である。上述のとおり、各レンズエレメント110中には、露光視野PIcに対応する露光視野対応領域IPIcwが存在するが、露光視野対応領域IPIcwは、レンズエレメント110のX方向の全面に渡って広がっているわけではない。すなわち、レンズエレメント110のX方向の両端部は、基板22上の露光視野PIcとは対応せず、投影光学系19c内の視野絞り21c上に投影され、視野絞り21cにより遮光される部分である。
【0057】
従って、例えば減光部材10c1aの+X方向の端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、減光部材10c1aをX方向に移動しても、基板22上の露光量を変更することができない。
そこで、第1実施形態においては、2本の減光部材10c1a、10c1b、および2本の減光部材10c2a、10c2bのそれぞれの+X方向の端部を、レンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずらしている。
【0058】
このような配置により、2本の減光部材10c1a、10c1bのうちの一方の+X方向端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、他方の+X方向端部はレンズエレメント110のX方向の中心の近傍に配置される。よって、2本の減光部材10c1a、10c1bをともにX方向に移動することにより、常に基板22上の露光量を変更することができる。なお、2本の減光部材10c1a、10c1bをそれぞれX方向に独立して移動させられる構成としても良い。2本の減光部材10c2a、10c2bについても同様である。
【0059】
なお、減光部材10c1a、10c1bは上述の2本に限られるわけではなく3本以上であって、それぞれが異なるレンズブロックに配置されていてもよい。この場合にも、減光部材の本数がm本(mは2以上の自然数)であれば、各減光部材の+X方向の端部は、ピッチPXに対して、PX/mだけずれて設定されていることが好ましい。
【0060】
なお、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)は、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されるとしたが、これに限定されない。減光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面、つまり基板22の上面に対する共役面CPに設けられても良い。減光部材10cが照明光を完全に遮光するものであると、それを共役面CPに一致して配置した場合には、オーバーラップ部Oa~Odの露光量と、非オーバーラップ部Sa~Se部の露光量とが不連続的に変化してしまう恐れがある。従って、この場合には、減光部材10cは、形状を変形させたり、フィルタのようなY方向の位置に応じて照明光の遮光率が連続的に変化させたりするものであると良い。
【0061】
(変形例1)
図9は、変形例1の減光部材10cおよび減光部材保持部9cを、インプットレンズ8c側から見た図である。変形例1の減光部材10cおよび減光部材保持部9cは、上述の第1実施形態における減光部材10cおよび減光部材保持部9cとほぼ同様である。従って、同一部材には同一の符号を付すとともに、以下では相違点のみを説明する。
【0062】
変形例1においては、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)のうち、減光部材10c1a、10c1bはフライアイレンズ11cの-X側に配置され、減光部材10c2a、10c2bはフライアイレンズ11cの+X側に配置されている。これに合わせて、減光部材保持部9c1もフライアイレンズ11cの-X側に配置され、減光部材保持部9c2フライアイレンズ11cの+X側に配置されている。
【0063】
減光部材10c1a、10c1bにより、フライアイレンズ11cのうちの-X側の端部の近傍に配置されているレンズエレメント110のみを減光すると、基板22上における、いわゆる照明テレセン(入射する照明光の光量重心の方向)が変動する恐れがある。変形例1においては、フライアイレンズ11cのうちの-X側の端部の近傍のレンズエレメント110は減光部材10c1a、10c1bにより減光される一方で、+X側の端部の近傍のレンズエレメント110は減光部材10c2a、10c2bにより減光される。
これにより、フライアイレンズ11cの入射面における照明光のX方向における光量分布がバランスされ、照明テレセンの変動を抑制することができる。
【0064】
(変形例2)
図10(a)は、変形例2の減光部材10c(10c3a、10c4a、10c3b、10c4b)および減光部材保持部9c(9c3、9c4)を、インプットレンズ側8cから見た図(上面図)である。図10(b)は、変形例2の減光部材10cおよび減光部材保持部9cの側面図である。以下では、上述の第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付すとともに、以下では相違点のみを説明する。
【0065】
変形例2の減光部材10cは、Y方向の端部がZ方向(照明光学系IL9の光軸IXcの方向)に重なって配置されている2つの減光部材10c3a、10c4aの組と、2つの減光部材10c3b、10c4bの組とを備えている。減光部材10c3aと減光部材10c3bは、スライダー9c30を介して、減光部材保持部9c3により、X方向、Z方向およびY方向に移動自在に保持されている。減光部材10c4aと減光部材10c4bも同様に、スライダー9c40を介して、減光部材保持部9c4により、X方向、Z方向およびY方向に移動自在に保持されている。
【0066】
図10(b)に示すように、2つの減光部材10c3a、10c4aの組の全体としてのY方向の幅W3は、それぞれを保持するスライダー9c30が+Y方向に移動し、スライダー9c40が-Y方向に移動すると増大する。一方、幅W3は、スライダー9c30が-Y方向に移動し、スライダー9c40が+Y方向に移動すると減少する。
従って、変形例2の減光部材10cにおいては、そのY方向の実質的な幅W3(実効幅)を可変とすることができる。これにより、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を制御することができる。この幅W3は、制御部50からの制御信号SigC3、SigC4が減光部材保持部9c3および減光部材保持部9c4を制御することにより、設定することができる。
【0067】
変形例2においても、制御部50は、スライダー9c30およびスライダー9c40の位置を介して、減光部材10cをZ方向に制御することもできる。
なお、制御部50は、減光部材10c3aと減光部材10c4aの+X方向の端部の位置が一致するように、および、減光部材10c3bと減光部材10c4bの+X方向の端部の位置が一致するように、スライダー9c30およびスライダー9c40のX方向の位置を制御する。
【0068】
(変形例3)
図11は、変形例3の減光部材10cおよび減光部材保持部9cを、インプットレンズ側8cから見た図である。変形例3の減光部材10cおよび減光部材保持部9cは、上述の変形例1の減光部材10cおよび減光部材保持部9cとほぼ同様である。従って、同一部材には同一の符号を付すとともに、以下では相違点のみを説明する。
なお、図11には、図9に示した変形例3の減光部材10cおよび減光部材保持部9cのうち、フライアイレンズ11cよりも-X側に配置されている減光部材10c1a、10c1bと減光部材保持部9c1に対応する部材のみを示している。
【0069】
変形例3においては、減光部材10c1a、10c1bのY方向の幅W10は、減光部材10c1a、10c1b内のX方向の位置に応じて変化する。一例として、幅W10は、X方向の位置に応じて単調減少している。
従って、減光部材10c1a、10c1bがフライアイレンズ11c内のX方向に並ぶ複数のレンズエレメント110を覆うとき、減光される部分のY方向の幅は、各レンズエレメント110により異なる。また、減光される部分のY方向の幅は、1つのレンズエレメント110の中においても、その+X方向の端と-X方向の端とでは異なる。
【0070】
この結果、X方向に走査露光された基板22上における減光部材10c1a、10c1bのY方向のエッジによる半影ボケの量を一層大きくし、半影ボケによる露光量の変化を緩やかにすることができる。
なお、減光部材10c1a、10c1bのY方向の幅W10は、X方向の位置に応じて単調増加するものであっても良い。
【0071】
なお、変形例3においては、図9に示した変形例1においてフライアイレンズ11cよりも+X側に配置されている減光部材10c2a、10c2bについても、そのY方向の幅を減光部材10c2a、10c2b内のX方向の位置に応じて変化させても良い。さらに、減光部材10c2a、10c2bと、減光部材10c2a、10c2bとで、X方向の位置の変化に対するY方向の幅の変化の割合を異ならせてもよい。
また、上述の変形例2の減光部材10c3a、10c4a、10c3b、10c4bにおいても、そのW方向の幅が、そのX方向の位置に応じて変化するものであっても良い。
【0072】
(変形例4)
図12は、変形例4の減光部材10c(10c1a、10c1b)および減光部材保持部9cを、インプットレンズ側8cから見た図である。変形例4の減光部材10cおよび減光部材保持部9cは、上述の変形例3の減光部材10cおよび減光部材保持部9cとほぼ同様である。従って、同一部材には同一の符号を付すとともに、以下では相違点のみを説明する。
【0073】
変形例4の減光部材10c1a、10c1bは、そのY方向の幅W20が、減光部材10c1a、10c1b内のX方向の位置に応じて増減している。従って、上述の変形例3と同様に、X方向に走査露光された基板22上における減光部材10c1a、10c1bのY方向のエッジによる半影ボケの量を一層大きくし、半影ボケによる露光量の変化を緩やかにすることができる。
【0074】
減光部材10c1a、10c1b内のX方向の位置に応じたY方向の幅W20の増減は、一例として周期P1により周期的に変化するものであってもよい。また、周期P1は、一例として、フライアイレンズ11cのレンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXよりも短くても良い。
なお、変形例4の、そのY方向の幅W20がX方向の位置に応じて増減する減光部材10c1a、10c1bを、上述の変形例2または変形例3の減光部材10a~10eに適用しても良い。
【0075】
以上の第1実施形態および各変形例においては、露光装置100は、5つの投影光学系19a~19eを有するものとしたが、投影光学系の本数は5つに限られるわけではなく、3つや8つなど、いくつであってもよい。
また、以上の第1実施形態および各変形例においては、複数の投影光学系19a~19eを有し、1度のX方向の走査により、各投影光学系が形成する複数の走査露光視野SIa~SIeが相互にY方向にオーバーラップするとしている。
【0076】
しかし、投影光学系19は1つであり、基板22のX方向への走査露光を、基板22およびマスク15をY方向に移動させつつ複数回行い、各走査露光により形成される複数の露光視野を相互にY方向にオーバーラップさせてもよい。この場合にも、1つの投影光学系19に対応する照明光学系ILは、上述の照明光学系ILa~ILeと同様の構成を備えることが望ましい。
なお、上述の第1実施形態のように複数の投影光学系19a~19eを有する装置は、一度の走査露光で基板22上の、より多くの面積を露光することができ、処理能力に優れている。
【0077】
以上の第1実施形態および各変形例においては、複数の投影光学系19a~19eは全屈折光学系から成るとしたが、これに限らず、反射屈折光学系や全反射光学系を採用することもできる。
また、以上の第1実施形態および各変形例においては、露光視野PIa~PIeの形状は台形であるとしたが、これは台形に限られるものではなく、例えば、その上記中心部分に相当する部分の形状が円弧であり、円弧の両端に三角形の右端領域および左端領域を備える視野であってもよい。
【0078】
以上の第1実施形態および各変形例においては、各投影光学系19a~19eの光軸PAXa~PAXe、および各照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXeは、基本的にはZ方向と平行に設定されているものとしている。ただし、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、光軸の向きはZ方向とは平行ではなくなる。
また、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、減光部材10a~10eの移動方向も基板22の走査方向(X方向)とは異なる方向になる。しかし、この場合であっても、減光部材10a~10eは、折り曲げミラーを含めた基板22とフライアイレンズ11a~11eの共役関係に基づいて基板22の走査方向に光学的に対応する方向(第1方向)に移動自在とすれば良い。さらに、減光部材10a~10eを、照明光学系ILの光軸IXの方向と、第1方向および光軸IXの方向と直交する方向との、計3方向に移動自在とすれば良い。
【0079】
また、以上の実施形態においては、各投影光学系19a~19eは、X方向に第1列の投影光学系19Fおよび第2列の投影光学系19Rの2列の光学系が配置されているものとしたが、これは2列に限られるものではなく、X方向に3列以上の光学系が配置されていてもよい。
【0080】
オプチカルインテグレーターとして、上述のフライアイレンズ11に代えて、ロッドインテグレーターを採用することもできる。ロッドインテグレーターを採用した場合には、基板22およびマスク15との共役面CPは、ロッドインテグレーターの射出側(マスク15の側)になるので、減光部材10もロッドインテグレーターの射出側の近傍に配置する。そして、ロッドインテグレーターの射出面のX側の一端の近傍を部分的に減光する構成とする。
【0081】
減光部材10a~10eを照明光学系ILa~ILe内に配置する代わりに、投影光学系19a~19eの中間像面20近傍に配置してもよい。この場合にも、減光部材は、中間像面20の近傍において、露光視野PIa~PIeの中心領域PIac~PIecに対応する部分を減光する構成とする。
【0082】
投影光学系19a~19e内に視野絞り21a~21eを配置する代わりに、照明光学系ILa~ILeの内部に中間像面(マスク15に対する共役面)を設け、照明光学系ILa~ILe内の中間像面に基板22上の露光視野PIa~PIeの形状を規定する視野絞り設けてもよい。
【0083】
以上の実施形態においては、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeは固定され、基板22が基板ステージ27により移動するものとしたが、代わりに、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeが基板ステージ上に設けられ、基板22に対して走査する構成としてもよい。
また、マスク15は、ガラス基板上にパターンが形成されたマスクに限らず、デジタルマルチミラーデバイスや液晶デバイスからなる可変整形マスクであってもよい。
【0084】
露光装置100の用途としては、ガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置であり、例えば有機EL(Electro―Luminescence)パネル製造用の露光装置にも適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
露光装置100により露光された基板(ガラスプレート等)は、不図示の現像装置により現像処理され、必要に応じて、露光および現像処理により形成された感光材料のパターンに基づいてエッチング加工等が行われる。
【0085】
また、露光対象はガラス基板に限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。また、露光対象の基板が可撓性を有するシート状である場合には、該シートがロール状に形成されていても良い。
【0086】
上述した第1実施形態および変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(1)第1実施形態または変形例の露光装置100は、被露光基板22を走査方向(X方向)へ移動させながら第1時間に被露光基板22上の第1露光領域SIa、SIc、SIeを露光する第1露光と、被露光基板22を走査方向へ移動させながら第1時間とは異なる第2時間に被露光基板22上の第2露光領域SIb、SIdを露光する第2露光とを行う露光装置において、複数のレンズエレメント110を有するフライアイレンズ11a~11eを含み照明光を供給する照明光学系ILa~ILeと、投影光学系19a~19eと、第1露光領域および第2露光領域のそれぞれの一部が重複する第2領域(オーバーラップ部Oa-~Od)を露光する照明光の照度に対して、第1露光領域の他部および第2露光領域の他部の領域である第1領域(非オーバーラップ部Sa-~Se)を露光する照明光の照度を相対的に低くするよう、フライアイレンズの入射側で第1領域を露光する照明光が通過する領域を覆う照度変更部材10a~10dと、を備えている。
さらに、照度変更部材10a~10dの複数のレンズエレメント110に対する相対移動を制御する制御部50を備え、相対移動により、照度変更部材10a~10eに覆われる領域が変更され、相対移動により、走査方向に直交する非走査方向(Y方向)における第1領域の露光量分布を維持したまま、非走査方向における第2領域の露光量分布が変更される。
この構成により、露光が時間的に複数に分割して行われた場合に時間的に連続して行われた場合に比べて実効感光量が低下する非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、第2領域(オーバーラップ部Oa-~Od)と、第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se)との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0087】
(2)第1実施形態または変形例の露光装置100は、複数のレンズエレメント110を有するフライアイレンズ11a~11eを有し、照明光を供給する照明光学系ILa~ILeと、投影光学系19a~19eと、被露光基板22上に所定パターンが露光されるよう、被露光基板22を投影光学系に対して走査方向(X方向)に相対移動させる基板ステージ27と、露光において、投影光学系の走査露光視野SIa~SIeにより時間的に連続的に露光される被露光基板22上の第1領域(非オーバーラップ部Sa-~Se)における露光量が、走査露光視野により時間的に離散的に露光される被露光基板上の第2領域(オーバーラップ部Oa-~Od)における露光量に比べて小さくするよう、フライアイレンズの入射側で第2領域を露光する照明光が通過する領域を覆う照度変更部材10a~10eと、照度変更部材の複数のレンズエレメント110に対する相対移動を制御する制御部50と、を備えている。
そして、相対移動により照度変更部材に覆われる領域が変更され、相対移動により走査方向に直交する非走査方向(Y方向)における第1領域(非オーバーラップ部Sa-~Se)の露光量分布を維持したまま、非走査方向における第2領域(オーバーラップ部Oa-~Od)の露光量分布が変更される。
この構成により、露光が時間的に複数に分割して行われた場合に時間的に連続して行われた場合に比べて実効感光量が低下する非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、第2領域(オーバーラップ部Oa-~Od)と、第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se)との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0088】
(3)照度変更部材10a~10eを照明光学系ILa~ILeの中の被露光基板22の共役面CPまたは共役面CPの近傍に配置することで、第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se)の露光量、および第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)の露光量を、正確に制御することができる。
(4)制御部50が、照度変更部材10a~10の、第1方向および照明光学系の光軸方向とそれぞれ直交する第2方向の実効幅を制御し、領域を覆う大きさを変更することによっても、第2領域の非走査方向における露光量分布を高精度に制御することができる。
【0089】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2019-069149号(2019年3月29日出願)
【符号の説明】
【0091】
100:露光装置、1:光源、ILa~ILe:照明光学系、10a~10e:減光部材(照度変更部材)、11a~11e:フライアイレンズ、12a~12e:コンデンサーレンズ、15:マスク、MIa~MIe:照明視野、19a~19e:投影光学系、21a~21e:視野絞り、22:基板、SIa~SIe:走査露光視野、Sa~Se:非オーバーラップ部(第1領域)、Oa~Od:オーバーラップ部(第2領域)、50:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12