(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097015
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び電源システム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240709BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
H01L21/302 101B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069030
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2020154843の分割
【原出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小林 憲
(57)【要約】
【課題】複数の高周波電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させる。
【解決手段】各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の第2期間の後の第3期間に第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有する第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部と、第1期間、第3期間及び第4期間にゼロパワーレベルを有し、第2期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部と、第1期間、第2期間及び第4期間にゼロパワーレベルを有し、第3期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部と、を有するプラズマ処理装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第3期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
チャンバと、
前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第4期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第4期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項3】
チャンバと、
前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第4期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第3期間、前記第4期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項4】
チャンバと、
前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間に前記第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間に前記第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第5期間の後の第6期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第4期間、前記第5期間及び前記第6期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間、前記第4期間及び前記第6期間にゼロパワーレベルを有し、前記第5期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2RFパルス信号の周波数は、前記第1RFパルス信号の周波数よりも低い、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第3RFパルス信号の周波数は、前記第2RFパルス信号の周波数よりも低い、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1RFパルス信号は、20MHz~60MHzの周波数であり、
前記第2RFパルス信号は、1MHz~15MHzの周波数であり、
前記第3RFパルス信号は、100kHz~4MHzの周波数である、
請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
各サイクルは、50μs~1000μsの期間を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
チャンバと、
前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間及び前記第3期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第2パワーレベルを有する、第2RF生成部と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第2RFパルス信号の周波数は、前記第1RFパルス信号の周波数よりも低い、
請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第3期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
電源システム。
【請求項12】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第4期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第4期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
電源システム。
【請求項13】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第4期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第3期間、前記第4期間及び前記第5期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
電源システム。
【請求項14】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間に前記第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第4期間の後の第5期間に前記第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第5期間の後の第6期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第4期間、前記第5期間及び前記第6期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、
第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間、前記第3期間、前記第4期間及び前記第6期間にゼロパワーレベルを有し、前記第5期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、
電源システム。
【請求項15】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、
第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間及び前記第3期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第2パワーレベルを有する、第2RF生成部と、を有する、
電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、2つの高周波電源を有し、チャンバ上部のアンテナ及び下部電極(サセプタ)に2周波の高周波電力を供給するICP(Inductively Coupled Plasma)装置を提案する。2つの高周波電源のうち、一方の高周波電源から下部電極に、例えば13MHzの周波数のバイアス用の高周波電力が供給される。チャンバの上方にはアンテナが設けられ、他方の高周波電源からアンテナの外側コイルを構成する線路の中点またはその近傍に、例えば27MHzのプラズマ励起用の高周波電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の高周波(RF;Radio Frequency)電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、チャンバと、前記チャンバに結合され、第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部であり、前記第1RFパルス信号は、各サイクル内の第1期間にゼロより大きい第1パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第1期間の後の第2期間にゼロパワーレベルを有し、各サイクル内の前記第2期間の後の第3期間に前記第1パワーレベルよりも小さくゼロより大きい第2パワーレベルを有し、各サイクル内の前記第3期間の後の第4期間にゼロパワーレベルを有する、第1RF生成部と、前記チャンバに結合され、第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部であり、前記第2RFパルス信号は、前記第1期間、前記第3期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第2期間にゼロより大きい第3パワーレベルを有する、第2RF生成部と、前記チャンバに結合され、第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部であり、前記第3RFパルス信号は、前記第1期間、前記第2期間及び前記第4期間にゼロパワーレベルを有し、前記第3期間にゼロより大きい第4パワーレベルを有する、第3RF生成部と、を有する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、複数の高周波電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す断面模式図。
【
図2】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る2つのバイアスRFパルス信号の整合回路の一例を示す図。
【
図4】ラジカル、イオン、電子温度、イオンエネルギー、副生成物の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る2周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【
図6】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【
図7】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【
図8】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【
図9】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理システム]
初めに、
図1及び
図2を参照しながら、実施形態に係るプラズマ処理システムについて説明する。
図1は、実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す断面模式図である。
図2は、実施形態に係るプラズマ処理装置1の一例を示す図である。
【0010】
実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、3つの高周波電力パルス(3つのRFパルス信号)をチャンバ10内に供給することによりチャンバ10内の処理ガスからプラズマを生成するように構成されている。プラズマ処理装置1は、2つの高周波電力パルス(2つのRFパルス信号)をチャンバ10内に供給することによりチャンバ10内の処理ガスからプラズマを生成するように構成されてもよい。そして、プラズマ処理装置1は、生成されたプラズマを基板に曝すことにより基板を処理する。
【0011】
プラズマ処理装置1は、チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部を含む。チャンバ10は、プラズマ処理空間10sを規定する。また、チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するためのガス入口10aと、プラズマ処理空間からガスを排出するためのガス出口10bとを有する。ガス入口10aは、少なくとも1つのガス供給部20に接続される。
【0012】
ガス出口10bは、例えばチャンバ10の底部に設けられた排気口であり、排気システム40に接続される。排気システム40は、圧力弁及び真空ポンプを含んでもよい。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、粗引きポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0013】
基板支持部11は、プラズマ処理空間10s内に配置され、基板Wを支持する。プラズマ生成部は、プラズマ処理空間10s内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間10sにおいて形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)であってもよい。
【0014】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。実施形態において、
図1に示すように、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ21を含んでもよい。コンピュータ21は、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)21a、記憶部21b、及び通信インターフェース21cを含んでもよい。処理部21aは、記憶部21bに格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部21bは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース21cは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0015】
以下に、
図2の誘導結合プラズマ処理装置を一例として、プラズマ処理装置1の構成例について更に説明する。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を含む。チャンバ10は、誘電体窓10c及び側壁10dを含む。誘電体窓10c及び側壁10dは、チャンバ10内のプラズマ処理空間10sを規定する。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部13、ガス供給部20、電力供給部及びアンテナ14を含む。
【0016】
基板支持部11は、チャンバ10内のプラズマ処理空間10sに配置される。アンテナ14は、チャンバ10(誘電体窓10c)の上部に配置される。
【0017】
基板支持部11は、本体部及び環状部材(エッジリング)12を含む。本体部は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)11aと、環状部材12を支持するための環状領域(エッジリング支持面)11bと、を有する。本体部の環状領域11bは、本体部の中央領域11aを囲んでいる。基板Wは、本体部の中央領域11a上に配置され、環状部材12は、本体部の中央領域11a上の基板Wを囲むように本体部の環状領域11b上に配置される。実施形態において、本体部は、静電チャック111及び導電部材112を含む。静電チャック111は、導電部材112の上に配置される。導電部材112は、RF電極として機能し、静電チャック111の上面は、基板支持面11aとして機能する。また、図示は省略するが、実施形態において、基板支持部11は、静電チャック111及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。なお、チャンバ10、基板支持部11、及び環状部材12は、軸Zを中心軸として軸Zが一致するように配置される。
【0018】
ガス導入部13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するように構成される。実施形態において、ガス導入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓10cに形成された中央開口部に取り付けられる。
【0019】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース23及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。実施形態において、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスを、それぞれに対応のガスソース23からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0020】
電力供給部は、チャンバ10に結合されるRF電力供給部31を含む。RF電力供給部31は、3つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電部材112又はアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。なお、プラズマ生成部は、プラズマ処理空間10s内に少なくとも1つの処理ガスを供給するガス供給部20と、RF電力供給部31とを含み、処理ガスからプラズマを生成するように構成されてもよい。
【0021】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電力供給部31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0022】
実施形態において、RF電力供給部31は、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cを含む。ソースRF生成部31aは、アンテナ14に結合され、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cは、導電部材112に結合される。ソースRF生成部31aは、第1整合回路33を介してアンテナ14に接続され、プラズマ生成用の第1RFパルス信号(以下、HF電力ともいう。)を生成するように構成される。実施形態において、第1RFパルス信号は、20MHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。生成された第1RFパルス信号は、アンテナ14に供給される。第1RFパルス信号は、複数の第1パルスサイクルを含み、複数の第1パルスサイクルの各々は、第1期間、第2期間及び第3期間を含む。第1RFパルス信号は、第1期間に第1パワーレベル、第2期間に第2パワーレベル及び第3期間に第3パワーレベルを有する。第1RFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である。従って、第1RFパルス信号は、High/Middle/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、第1RFパルス信号は、High/Lowパワーレベル及びゼロパワーレベル(Off)を有してもよい。ソースRF生成部31aは、第1整合回路33に結合され、複数の第1パルスサイクルを含む第1RFパルス信号を生成するように構成された第1RF生成部の一例である。
【0023】
また、第1バイアスRF生成部は、第2整合回路34及び給電ライン37を介して基板支持部11の導電部材112に接続され、第2RFパルス信号(以下、LF1電力ともいう。)を生成するように構成される。生成された第2RFパルス信号は、基板支持部11の導電部材112に供給される。実施形態において、第2RFパルス信号は、第1RFパルス信号よりも低い周波数を有する。実施形態において、第2RFパルス信号は、1MHz~15MHzの範囲内の周波数を有する。第2RFパルス信号は、第4期間に第4パワーレベル、及び前記第5期間に第5パワーレベルを有する。第4期間は、30μs以下である。従って、第2RFパルス信号は、High/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、第2RFパルス信号は、0よりも大きいパワーレベル及びゼロパワーレベル、すなわちオン/オフ信号を有してもよい。第1バイアスRF生成部は、第2整合回路34に結合され、複数の第2パルスサイクルを含む第2RFパルス信号を生成するように構成された第2RF生成部の一例である。
【0024】
また、第2バイアスRF生成部は、第2整合回路34及び給電ライン37を介して基板支持部11の導電部材112に接続され、第3RFパルス信号(以下、LF2電力ともいう。)を生成するように構成される。生成された第3RFパルス信号は、基板支持部11の導電部材112に供給される。実施形態において、第3RFパルス信号は、第2RFパルス信号よりも低い周波数を有する。実施形態において、第3RFパルス信号は、100kHz~4MHzの範囲内の周波数を有する。第3RFパルス信号は、第6期間に第6パワーレベル、及び第7期間に第7パワーレベルを有する、第3RFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である。従って、第3RFパルス信号は、High/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、第3RFパルス信号は、0よりも大きいパワーレベル及びゼロパワーレベル、すなわちオン/オフ信号を有してもよい。第2バイアスRF生成部は、第2整合回路34に結合され、複数の第3パルスサイクルを含む第3RFパルス信号を生成するように構成された第3RF生成部の一例である。
【0025】
このように、第1RFパルス信号、第2RFパルス信号及び第3RFパルス信号はパルス化される。第2RFパルス信号及び第3RFパルス信号はオン状態とオフ状態との間、或いは2以上の異なるオン状態(High/Low)の間でパルス化される。第1RFパルス信号は2以上の異なるオン状態(High/Low)とオフ状態との間、或いは3以上の異なるオン状態(High/Middle/Low)の間でパルス化される。第1RFパルス信号は、オン状態とオフ状態との間、或いは2つの異なるオン状態(High/Low)の間でパルス化されてもよい。
【0026】
第1整合回路33は、ソースRF生成部31a及びアンテナ14に接続され、アンテナ14を介してチャンバ10に接続される。第1整合回路33は、第1RFパルス信号がソースRF生成部31aから第1整合回路33を介してアンテナ14に供給されるのを可能にする。なお、第1整合回路33は、他のプラズマ処理装置においては、アンテナ14以外の構成に接続されてもよい。例えば、2つの対向する電極を含む容量結合プラズマ処理装置においては、第1整合回路33は、2つの電極のうち一方に接続されてもよい。
【0027】
第2整合回路34は、第1バイアスRF生成部31b、第2バイアスRF生成部31c及び基板支持部11(導電部材112)に接続される。第2整合回路34は、第2RFパルス信号が第1バイアスRF生成部31bから第2整合回路34を介して基板支持部11に供給されるのを可能にする。また、第2整合回路34は、第3RFパルス信号が第2バイアスRF生成部31cから第2整合回路34を介して基板支持部11に供給されるのを可能にする。
【0028】
制御部2は、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cのそれぞれに各パルス信号の供給を指示する制御信号を出力する。これにより、予め定められたタイミングに複数のパルスサイクルを含む第1RFパルス信号、第2RFパルス信号、及び第3RFパルス信号が供給され、チャンバ10内の処理ガスからプラズマが生成される。そして、生成されたプラズマを基板に曝すことにより基板処理が行われる。これにより、プロセスの効能を向上させ、高精度の基板処理を可能にする。制御部2による第1RFパルス信号、第2RFパルス信号、及び第3RFパルス信号のオン・オフ状態又は0以上のパワーレベルの制御タイミングについては後述する。
【0029】
[第2整合回路の内部構成の一例]
次に、第2整合回路34の構成の一例について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る第2整合回路34の内部構成の一例を示す図である。
【0030】
第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cは、第2整合回路34及び給電ライン37を介して、基板支持部11(導電部材112)に接続される。第1バイアスRF生成部31bから供給される第2RFパルス信号を、以下の説明ではLF1電力(LF1 Power)とも表記する。また、第2バイアスRF生成部31cから供給される第3RFパルス信号を、以下の説明ではLF2電力(LF2 Power)とも表記する。
【0031】
第1バイアスRF生成部31bから供給される第2RFパルス信号(LF1電力)が第2整合回路34内の給電ライン36を介して反対側(第2バイアスRF生成部31c側)に結合すると、チャンバ10へ供給されるLF1電力の供給効率が低下する。同様に、第2バイアスRF生成部31cから供給される第3RFパルス信号(LF2電力)が給電ライン36を介して反対側(第1バイアスRF生成部31b側)に結合すると、チャンバ10へ供給されるLF2電力の供給効率が低下する。そうすると、チャンバ10へのバイアス電力の供給が低下するために、イオンエネルギーの制御等が難しくなり、プロセスの性能が悪化する。
【0032】
そこで、本実施形態に係る第2整合回路34は、第1調整回路34b1、第1分離回路34b2、第2調整回路34c1、第2分離回路34c2を有する。第1調整回路34b1及び第1分離回路34b2は、第1バイアスRF生成部31bと給電ライン37との間に接続される。第2調整回路34c1及び第2分離回路34c2は、第2バイアスRF生成部31cと給電ライン37との間に接続される。係る構成により、第1バイアスRF生成部31bにおいて生成された第2RFパルス信号(LF1電力)が、第2バイアスRF生成部31cへの結合を抑制しつつ、基板支持部11(導電部材112)に供給される。また、第2バイアスRF生成部31cにおいて生成された第3RFパルス信号(LF2電力)が、第1バイアスRF生成部31bへの結合を抑制しつつ、基板支持部11(導電部材112)に供給される。
【0033】
第1調整回路34b1は、可変素子を有し、第1バイアスRF生成部31bの負荷側(基板支持部11側)のインピーダンスを、第1バイアスRF生成部31bの出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。一実施形態において、第1調整回路34b1の可変素子は、可変コンデンサである。
【0034】
第2分離回路34c2は、第2バイアスRF生成部31cと基板支持部11との間に接続され、第1バイアスRF生成部31bからのLF1電力である第2RFパルス信号の結合を防止する。
【0035】
第2調整回路34c1は、可変素子を有し、第2バイアスRF生成部31cの負荷側(基板支持部11側)のインピーダンスを、第2バイアスRF生成部31cの出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。一実施形態において、第2調整回路34c1の可変素子は、可変インダクタである。
【0036】
第1分離回路34b2は、第1バイアスRF生成部31bと基板支持部11との間に接続され、第2バイアスRF生成部31cからのLF2電力である第3RFパルス信号の結合を防止する。
【0037】
第2分離回路34c2は、インダクタL2を含むRFチョーク回路である。第1分離回路34b2は、コンデンサC1とインダクタL1とを含む共振回路である。第1分離回路34b2は、コンデンサC1とインダクタL1により構成される。第2分離回路34c2は、インダクタL2により構成される。
【0038】
第1分離回路34b2は、第2RFパルス信号からはインピーダンスが0または0近くに見え、第3RFパルス信号からはインピーダンスが高く、第1バイアスRF生成部31b側が壁に見えるようにC1とL1の回路定数を設定する。これにより、第1分離回路34b2において第3RFパルス信号から見たインピーダンスをZLF2とし、プラズマの負荷インピーダンスをZchamberと表記すると、ZLF2>>Zchamberが成立する。
【0039】
また、第2分離回路34c2は、第3RFパルス信号からはインピーダンスが0又は0近くに見え、第2RFパルス信号からはインピーダンスが高く、第2バイアスRF生成部31c側が壁に見えるようにL2の回路定数を設定する。これにより、第2分離回路34c2において第2RFパルス信号から見たインピーダンスをZLF1とすると、ZLF1>>Zchamberが成立する。
【0040】
このように、第1分離回路34b2の回路定数を上記のように設定することで、第1分離回路34b2では、インピーダンスZ
LF2がプラズマの負荷インピーダンスZ
chamberよりもはるかに大きくなる。これにより、第1分離回路34b2は、第2バイアスRF生成部31cからの第3RFパルス信号の結合を防止する(
図3の「LF2 Power→×」)。この結果、LF2電力は、給電ライン37を介してチャンバ10内に供給され、これにより、LF2電力の供給効率の低下を抑制できる。
【0041】
同様に、第2分離回路34c2の回路定数を上記のように設定することで、第2分離回路34c2では、インピーダンスZ
LF1がプラズマの負荷インピーダンスZ
chamberよりもはるかに大きくなる。これにより、第2分離回路34c2は、第1バイアスRF生成部31bからの第2RFパルス信号の結合を防止する(
図3の「LF1 Power→×」)。この結果、LF1電力は、給電ライン37を介してチャンバ10内に供給され、これにより、LF1電力の供給効率の低下を抑制できる。
【0042】
係る構成により、異なる周波数を有する2つのバイアス電力(LF1電力及びLF2電力)のパルス信号を基板支持部11に効率良く供給することができる。
【0043】
[パルス信号]
例えば、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスの場合、HF電力、LF1電力及びLF2電力のパルス信号を用いて、イオンの入射角を垂直にしたり、マスク選択比を高めたりすることができる。
【0044】
図4は、ラジカル、イオン、電子温度、イオンエネルギー、副生成物の一例を示す図である。
図4の横軸は、RF電力の供給を停止(オフ)した後の経過時間(1周期)を示す。
図4の縦軸は、オフ時間におけるラジカル(Radical)、イオン(Ions)、電子温度(Te)、イオンエネルギー(ε
l)、副生成物(By-products)の各時間における状態を示す。
【0045】
これによれば、ラジカル(Radical)は、RF電力をオフ状態にしてからの変化が緩やかであるのに対して、イオン(Ions)及びプラズマ温度(Te)はRF電力をオフ状態にしてからの変化がラジカルよりも早い。このようなプラズマ中のラジカルやイオンの減衰やエネルギーの変化等を考慮してHF電力及びLF電力(例えばLF1電力及びLF2電力)のパルス信号を制御する。HF電力をオフ状態にした後に供給するLF電力のパルス信号の一例としては、プラズマ温度(Te)が高い初期時間は、LF電力をオフ状態にし、プラズマ温度(Te)が低下した後にLF電力をオン状態にする制御が考えられる。これによれば、イオンはまだ残っているが、プラズマ温度(Te)が低い時間にLF電力を用いて、イオンの基板への引き込みを効率的に行うことができる。
【0046】
HF電力をオフ状態にした後に供給するLF電力のパルス信号の他の例としては、プラズマパラメータとしてイオンエネルギーを示すεlを用い、プラズマ電子温度Teがほぼ変化しない時間にLF2電力を制御する。これにより、イオンエネルギーεlをコントロールしてイオンの入射角をより垂直に制御することができる。
【0047】
このように、HF電力及びLF電力をオン・オフ状態にするタイミングを、ラジカル、イオン、プラズマ電子温度、イオンエネルギー、副生成物等のプラズマパラメータの動きに応じて細かく制御する。これにより、プロセスの性能を向上させることができる。以下、高周波電力のパルス信号の供給タイミングについて、
図5~
図9を参照しながら説明する。なお、高周波電力のパルス信号の供給タイミングは、制御部2により制御される。
【0048】
(2周波のパルス信号)
図5は、実施形態に係る2周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図である。
図5に示す2周波の高周波電力パルスのうちHF電力(Source Power)は、複数の第1パルスサイクルを含む。LF1電力(Bias Power)のパルス信号は、複数の第2パルスサイクルを含む。以下、各パルス信号の供給タイミングについて説明する。
図5の横軸は、1周期の時間を示し、縦軸は、HF電力及びLF1電力のオン・オフ状態を示す。HF電力の複数の第1パルスサイクルのそれぞれは、期間(1)及び期間(2)を含み、LF1電力の複数の第2パルスサイクルのそれぞれは、期間(3)及び期間(4)を含む。
図5の例では、複数の第1パルスサイクルのそれぞれは、期間(1)、期間(2)及び排気期間を1周期として、HF電力の第1RFパルス信号が繰り返される。複数の第2パルスサイクルのそれぞれは、期間(4)、期間(3)及び排気期間を1周期としてLF1電力の第2RFパルス信号が繰り返される。
【0049】
ソースRF生成部31aは、第1RFパルス信号(HF電力)を生成するように構成される。本実施形態では、第1RFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。第1バイアスRF生成部31bは、第2RFパルス信号(LF1電力)を生成するように構成される。本実施形態では、第2RFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。
【0050】
HF電力のオン状態とLF1電力のオン状態とは時間的にオーバーラップしない。例えば第1RFパルス信号は、期間(1)に第1パワーレベル、及び期間(2)に第2パワーレベルを有し、第1パワーレベルがオン状態、第2パワーレベルがオフ状態である。すなわち、第2パワーレベルは、ゼロパワーレベルである。第2RFパルス信号は、期間(3)に第3パワーレベル、及び期間(4)に第4パワーレベルを有し、第3パワーレベルがオン状態、第4パワーレベルがオフ状態である。すなわち、第4パワーレベルは、ゼロパワーレベルである。
【0051】
第1RFパルス信号は、27MHzの周波数を有してもよい。第2RFパルス信号の周波数は、第1RFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第2RFパルス信号は、13MHzの周波数を有する。第1パワーレベルがHigh、第2パワーレベルがLowでもよい。また、第3パワーレベルがHigh、第4パワーレベルがLowでもよい。
【0052】
図5の期間(1)において、HF電力はオン状態に維持され、期間(1)と時間的に一致する期間(4)において、LF1電力はオフ状態に維持される。これにより、時刻t
0から時刻t
1までの時間は、HF電力の供給により、ラジカルとイオンを含むプラズマが生成される。
【0053】
時刻t
1にHF電力はオフ状態に遷移し、LF1電力はオン状態に遷移し、期間(2)にHF電力はオフ状態を維持し、期間(2)と時間的に一致する期間(3)にLF1電力はオン状態を維持する。期間(2)では、HF電力がオフ状態であるため、
図4に一例を示すように、ラジカル、イオン、プラズマ温度はそれぞれの時定数をもって減衰する。期間(3)におけるLF1電力の供給により、エッチングする凹部の底部に到達させるイオンフラックス(イオン量)を制御し、エッチングを促進する。時刻t
2にHF電力はオフ状態を維持し、LF1電力はオフ状態に遷移する。期間(2)及び期間(3)の後の排気期間では、HF電力及びLF1電力がオフ状態であるため、副生成物が排気される。排気期間は、副生成物が基板W上に付着しない時間に予め設定されている。
【0054】
排気期間後の時刻t3に1周期が終了し、次の周期の期間(1)に移行する。そして、次の周期の時刻t0において再びHF電力はオン状態に遷移し、期間(4)にてLF1電力はオフ状態を維持する。すなわち、期間(1)、期間(2)及び排気期間を1周期として、HF電力の第1パルスサイクルが繰り返される。また、期間(4)、期間(3)及び排気期間を1周期として、LF1電力の第2パルスサイクルが繰り返される。1周期は1kHz~20kHzである。複数のパルスサイクルは、同一の時間期間を有し、各パルスサイクルは、50μs~1000μsの時間期間を有する。すなわち、パルスサイクルの1周期は50μs~1000μsである。
【0055】
期間(3)は、期間(1)と時間的に重複しない。つまり、第1バイアスRF生成部31bは、第2RFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、第1RFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してオフセットさせ、HF電力のオン状態とLF1電力のオン状態を時間的に重ならないようにする。
【0056】
加えて、期間(3)は、30μs以下に設定される。期間(1)、(2)及び(4)は、任意の時間に設定され、30μsよりも長くてもよい。つまり、本例ではLF1電力は、期間(3)において30μs以下の時間、オン状態に維持され、期間(4)及び排気期間の任意の時間はオフ状態に維持され、オン・オフを繰り返す。このようにして、LF1電力の1周期における供給時間を30μs以下にすることで、イオンを垂直に制御し、異方性の高いエッチングが可能になる。
【0057】
なお、期間(1)のHF電力のパワーレベルは、第1パワーレベルの一例であり、期間(2)のHF電力のパワーレベルは、第2パワーレベルの一例である。期間(3)のLF1電力のパワーレベルは、第3パワーレベルの一例であり、期間(4)のLF1電力のパワーレベルは、第4パワーレベルの一例である。
【0058】
(3周波のパルス信号)
図6~
図9は、実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図である。
図6~
図9に示す3周波の高周波電力であるHF電力(Source Power)、LF1電力(Bias1 Power)及びLF2電力(Bias2 Power)の各パルス信号は、複数のパルスサイクルをそれぞれ含む。以下、各パルス信号の供給タイミングについて説明する。
図6~
図9の横軸は、1周期の時間を示し、縦軸は、HF電力、LF1電力及びLF2電力のオン・オフ状態を示す。HF電力の第1パルスサイクル、LF1電力の第2パルスサイクル、LF2電力の第3パルスサイクル(いずれのパルスサイクルも排気期間を含む)を1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0059】
3周波の高周波電力パルスの制御では、LF1電力のオン状態とLF2電力のオン状態とは時間的にオーバーラップせず、LF1電力をオン状態にしている間、LF2電力をオフ状態にし、LF1電力をオフ状態にしている間、LF2電力をオン状態にする。また、HF電力のHighパワーレベルとLF1電力のオン状態は時間的にオーバーラップせず、HF電力をHighパワーレベルにしている間、LF1電力をオフ状態にし、LF1電力をオン状態にしている間、HF電力をオフ状態又はLowパワーレベルにする。同様に、HF電力のHighパワーレベルとLF2電力のオン状態は時間的にオーバーラップせず、HF電力をHighパワーレベルにする間、LF2電力をオフ状態にし、LF2電力をオン状態にする間、HF電力をオフ状態又はLowパワーレベルにする。
【0060】
ソースRF生成部31aは、第1RFパルス信号(HF電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第1RFパルス信号は、3つのパワーレベル(High/Low/Off)を有する。これらのパワーレベルは対象プロセスに応じて任意に設定及び変更可能である。例えば第1RFパルス信号は、27MHzの周波数を有する。
【0061】
第1バイアスRF生成部31bは、第2RFパルス信号(LF1電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第2RFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。つまり、第2RFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つまたはそれ以上のパワーレベルを有する。第2RFパルス信号の周波数は、第1RFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第2RFパルス信号は、13MHzの周波数を有する。
【0062】
第2バイアスRF生成部31cは、第3RFパルス信号(LF2電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第3RFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。つまり、第3RFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つまたはそれ以上のパワーレベルを有する。第3RFパルス信号の周波数は、第2RFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第3RFパルス信号は、1.2MHzの周波数を有する。
【0063】
図6~
図9では、HF電力が第1RFパルス信号、LF1電力が第2RFパルス信号、LF2電力が第3RFパルス信号の状態を示す。
【0064】
図6の期間(1)では、HF電力は、Highパワーレベルを有し、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態である。つまり、時刻t
0から時刻t
11までの時間は、HF電力の供給により、ラジカルとイオンを含むプラズマが生成される。これにより、
図6(a)に示すように、マスク101を介してエッチング対象膜100がエッチングされ、エッチング対象膜100に形成されたホールHLの内壁に、主にラジカルRが付着する。
【0065】
期間(1)経過後の時刻t
11にHF電力がオフ状態に遷移すると、
図4に一例を示すように、ラジカル、イオン、プラズマ温度はそれぞれの時定数をもって減衰する。これらのプラズマパラメータの減衰状態に応じて、HF電力をオフ状態にする期間(3)、パワーレベルを下げる期間(2)及び副生成物を排気する期間にLF1電力及びLF2電力をそれぞれオンするタイミングを制御する。このとき、LF1電力をオン状態にする期間(4)は、HF電力をHighパワーレベルにする期間(1)とは時間的に重複しない。また、LF2電力をオン状態にする期間(6)は、期間(1)及び期間(4)とは時間的に重複しない。
【0066】
本実施形態では、時刻t
11において、HF電力はHighパワーレベルからオフ状態に遷移し、LF1電力はオン状態に遷移する。これにより、期間(3)と時間的に一致する期間(4)においてLF1電力はオン状態に維持され、
図6(b)に示すように、エッチングされた凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。また、エッチング時の副生成物の量を抑制できる。LF2電力は時刻t
11にオフ状態を維持し、期間(3)と時間的に一致する期間(7)においてLF2電力はオフ状態に維持される。
【0067】
更に期間(4)は、30μs以下の時間に設定される。また、期間(4)は期間(1)と時間的に重複しない。期間(4)においてLF1電力の供給を30μs以下の短時間行うことで、更にイオンを垂直に制御し、異方性の高いエッチングが可能になる。
【0068】
期間(3)及び期間(4)経過後の時刻t12において、HF電力は、Lowパワーレベルに遷移し、LF1電力は、オフ状態に遷移し、LF2電力は、オン状態に遷移する。時刻t13まで期間(2)において、HF電力は、Lowパワーレベルを維持する。期間(3)及び(2)において、HF電力は、Lowパワーレベルであってもよく、オフ状態でもよい。期間(2)と時間的に一致する期間(5)においてLF1電力は、オフ状態に維持され、期間(2)と時間的に一致する期間(6)においてLF2電力は、オン状態に維持される。前述した通り、期間(6)は、期間(1)及び期間(4)とは時間的に重複しない。
【0069】
本実施形態では、期間(4)で供給したLF1電力の周波数よりも低い周波数のLF2電力を期間(6)で供給する。LF2電力のVppはLF1電力のVppよりも大きい。これにより、期間(6)では、期間(4)よりもバイアス電圧のVppをより大きくでき、イオンエネルギーε
lをより大きくし、イオン入射角をより垂直に制御できる。これにより、LF2電力を供給している期間(6)においてエッチングされた凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。これにより
図6(c)に示すように、ホールHLの底部の角部等に残った副生成物B等がエッチングされ、エッチングを促進できる。
【0070】
このようにして、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスにおいて、HF電力、LF1電力及びLF2電力のパルス信号を用いて、マスク選択比を高め、イオンの入射角を垂直にすることができる。これにより、エッチング形状を垂直にしたり、エッチングを促進したりすることができる。ただし、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスは基板処理の一例であり、プロセスの種類はこれに限らない。
【0071】
排気期間では、副生成物の排気を制御する。つまり、排気期間には、HF電力、LF1電力及びLF2電力をオフ状態に制御する。これにより、
図6(d)に示すように、ホールHL内の副生成物Bを排気する。これにより、次のサイクルのエッチングを促進できる。排気期間は、副生成物Bが基板W上に再付着しない時間に予め設定されている。
【0072】
図6の例では、HF電力のパワーレベルを3レベルに制御し、LF1電力及びLF2電力のパワーレベルをオン・オフ状態の2レベルに制御したが、これに限らない。例えば、HF電力のパワーレベルを4レベル又はそれ以上に制御してもよい。
【0073】
時刻t14において、1周期が終了し、次の周期の期間(1)に移行する。そして、次の周期の時刻t0において、HF電力は、Highパワーレベルに遷移し、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態を維持する。第1RFパルス信号は、期間(1)→期間(3)→期間(2)→排気期間の順にHF電力を予め定められた状態にする。第2RFパルス信号は、期間(4)→期間(5)→排気期間の順にLF1電力を予め定められた状態にする。第3RFパルス信号は、期間(7)→期間(6)→排気期間の順にLF2電力を予め定められた状態にする。各パルスサイクルは繰り返され、1周期は1kHz~20kHzであり、期間(4)は30μs以下である。複数の第1~第3パルスサイクルは、同一の時間期間を有し、各パルスサイクルは、50μs~1000μsの時間期間を有する。すなわち、パルスサイクルの1周期は50μs~1000μsである。
【0074】
なお、期間(1)のHF電力のパワーレベルは、第1パワーレベルの一例であり、期間(2)のHF電力のパワーレベルは、第2パワーレベルの一例であり、期間(3)のHF電力のパワーレベルは、第3パワーレベルの一例である。期間(4)のLF1電力のパワーレベルは、第4パワーレベルの一例であり、期間(5)のLF1電力のパワーレベルは、第5パワーレベルの一例である。期間(6)のLF2電力のパワーレベルは、第6パワーレベルの一例であり、期間(7)のLF2電力のパワーレベルは、第7パワーレベルの一例である。
【0075】
図7は、3周波の高周波電力パルスの制御の他の例を示す。本例においても、HF電力の第1パルスサイクル、LF1電力の第2パルスサイクル、LF2電力の第3パルスサイクルを1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。いずれのパルスサイクルも排気期間を含み得る。
【0076】
図6のパルスサイクルパターンと、
図7のパルスサイクルパターンとの違いは、
図7では、期間(1)の終了時刻t
11の後にディレイ時間Tdelayがあるが、
図6では、時刻t
11の後にディレイ時間Tdelayがない点である。以下では、この相違点について説明し、
図7のその他のパルスサイクルパターンについては
図6と同じであるため、説明を省略する。
【0077】
例えば、
図4に示すように、プラズマ温度(Te)が高いときにLF1電力又はLF2電力をオン状態にすると、副生成物が多く発生し、これにより、エッチングが阻害される場合がある。よって、プラズマ温度が高いときを避けてLF1電力又はLF2電力をオン状態にすることが考えられる。つまり、時刻t
11から予め定められたディレイ時間Tdelayが経過した後の時刻t
21にはプラズマ温度が低下している。このタイミングにLF1電力はオン状態に遷移する。つまり、HF電力がオフ状態に遷移した時刻t
11からディレイ時間Tdelayだけシフト(遅延)してからLF1電力がオン状態に遷移する。これにより、エッチング時の副生成物の量を抑制でき、エッチングを促進できる。
【0078】
なお、本実施形態では、ディレイ時間TdelayにおいてHF電力はオフ状態である、しかしながら、ディレイ時間TdelayのHF電力のパワーレベルは期間(1)のHF電力のパワーレベルよりも低いLowレベルであってもよい。HF電力のパワーレベルを下げることでLF1電力を供給する時刻t21のタイミングよりも前のディレイ時間Tdelayにラジカルとイオンの生成を減らすことができる。この結果、ディレイ時間Tdelay経過後の時刻t21から時刻t12までの期間(4)においてエッチング対象膜に形成された凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。期間(4)は30μs以下の時間に設定される。また、期間(4)は期間(1)と時間的に重複しない。なお、次の期間(5)及び排気期間は、任意の時間に設定され、30μsよりも長くてもよい。このようにして、期間(4)においてLF1電力の供給を30μs以下の短時間行うことで、更にイオンを垂直に制御し、異方性の高いエッチングが可能になる。
【0079】
また、時刻t12にてLF1電力がオフ状態に遷移し、LF2電力がオン状態に遷移する。期間(5)ではLF1電力はオフ状態に遷移し、期間(5)と時間的に重複する期間(6)ではLF2電力はオン状態に遷移する。これにより、期間(6)では、期間(4)と比較してイオン入射角をより垂直に制御できる。ただし、ディレイ時間Tdelayを長くしすぎるとイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelayは予め適切な値に設定されている。
【0080】
係る制御により、LF1電力のオン・オフ状態とLF2電力のオン・オフ状態とを互いに異なる時間帯にオン状態に遷移させることで、主にイオンの挙動を制御する。HF電力は、期間(3)においてゼロパワーレベルを有し、LF1電力は、期間(4)において0よりも大きいパワーレベルを有し、LF2電力は、期間(4)と重複する期間(7)においてゼロパワーレベルを有する。LF2電力は、期間(6)において0よりも大きいパワーレベルを有し、LF1電力は、期間(6)と重複する期間(5)においてゼロパワーレベルを有し、HF電力は、期間(2)において0よりも大きいパワーレベルを有する。つまり、LF1電力とLF2電力は、0よりも大きいパワーレベルを有する時間が重ならない。
【0081】
LF2電力の方が、LF1電力よりもマスク選択比が高く、垂直なエッチングが可能である。HF電力のパワーレベルが期間(2)よりも高い期間(1)では、ラジカルとイオンが大量に生成されており、その期間(1)にLF2電力を供給しても上記効果は発揮しにくい。一方、HF電力のパワーレベルが期間(1)よりも低い期間(2)及びゼロパワーレベルの期間(3)では、ラジカルとイオンの生成が低下する。よって、期間(3)と重なる期間(4)にLF1電力を供給し、期間(2)と重なる期間(6)にLF2電力を供給することで上記効果を発揮しやすい。よって、これらの期間にLF1電力又はLF2電力を供給することで、イオンエネルギーを高め、イオン入射角を垂直にできる。これにより、期間(2)、(3)では、期間(1)よりもマスク選択比が高く、垂直なエッチングが可能になる。
【0082】
なお、LF1電力とLF2電力はオン状態とオフ状態の2つのパワーレベルを有するパルス信号を生成可能である。ただし、LF1電力とLF2電力をオン状態とオフ状態とその中間のパワーレベルというように、2つ以上のパワーレベルを有するパルス信号が生成されてもよい。LF1電力とLF2電力は2つの異なるオン状態を有してもよい。
【0083】
図8は、3周波の高周波電力パルスのパルスパターンの他の例を示す。HF電力の第1パルスサイクル、LF1電力の第2パルスサイクル、LF2電力の第3パルスサイクルを1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。いずれのパルスサイクルも排気期間を含み得る。
【0084】
図8のパルスサイクルパターンと、
図7のパルスサイクルパターンとの違いは、LF1電力のオン状態とLF2電力のオン状態の順番が逆であり、これに応じてディレイ時間Tdelayのタイミングもシフトしている点である。ディレイ時間TdelayはLF1電力がオン状態に遷移する直前に設けられている。
【0085】
本例においても、プラズマ温度が高いときを避けてLF1電力又はLF2電力をオン状態にする。本例では、LF2電力、LF1電力の順にオン状態にする。期間(1)経過後の時刻t11にはプラズマ温度は低下している。このタイミング、つまりHF電力がHighパワーレベルよりも低いLowパワーレベルに遷移した時刻t11にLF2電力がオン状態に遷移し、期間(2)に時間的に一致する期間(6)においてLF2電力をオン状態に維持する。これにより、エッチング時の副生成物の量を抑制でき、エッチングを促進できる。
【0086】
時刻t11から時刻t12までの期間(2)に時間的に一致する期間(5)においてLF1電力は、オフ状態を維持する。本実施形態では、時刻t12にHF電力はオフ状態に遷移し、LF1電力は、オフ状態を維持し、LF2電力は、オフ状態に遷移する。ディレイ時間TdelayにおいてHF電力はオフ状態に維持される、しかしながら、ディレイ時間TdelayのHF電力のパワーレベルは期間(1)のHF電力のパワーレベルよりも低いLowレベルであってもよい。HF電力のパワーレベルをさらに下げることでLF1電力を供給する時刻t22のタイミングよりも前のディレイ時間Tdelayにラジカルとイオンの生成を減らすことができる。時刻t12からディレイ時間Tdelay経過後の時刻t22において、LF1電力は、オン状態に遷移する。時刻t22において、HF電力及びLF2電力は、オフ状態を維持する。この結果、ディレイ時間Tdelay経過後の時刻t22から時刻t13までの期間(4)においてエッチング対象膜に形成された凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。このとき、期間(4)は30μs以下の時間に設定される。また、期間(4)は期間(1)と時間的に重複しない。なお、期間(2)と時間的に一致する期間(5)及び排気期間は、任意の時間に設定され、30μsよりも長くてもよい。つまり、本例ではLF1電力は、期間(4)において30μs以下の時間、オン状態を維持する。このようにして、期間(4)においてLF1電力の供給を30μs以下の短時間行うことで、更にイオンを垂直に制御し、異方性の高いエッチングが可能になる。ただし、ディレイ時間Tdelayを長くしすぎるとイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelayは予め適切な値に設定されている。
【0087】
図9は、3周波の高周波電力パルスの制御の他の例を示す。本例においても、HF電力の第1パルスサイクル、LF1電力の第2パルスサイクル、LF2電力の第3パルスサイクルを1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。いずれのパルスサイクルも排気期間を含み得る。
【0088】
図9のパルスサイクルパターンと、
図7及び
図8のパルスサイクルパターンとの違いは、ディレイ時間Tdelayを、
図7及び
図8ではLF1電力がオン状態に遷移する直前に設けたが、
図9ではLF2電力がオン状態に遷移する直前に設けた点である。
【0089】
本例では、期間(1)においてHF電力は、Highパワーレベルに維持され、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態に維持される。期間(3)と期間(3)に時間的に一致する期間(5)及び(7)において、HF電力、LF1電力及びLF2電力のすべてが、オフ状態に維持される(排気期間)。
【0090】
その後、時刻t21において、HF電力は、Highパワーレベルよりも低いLowパワーレベルに遷移し、LF1電力は、オン状態に遷移する。時刻t21において、LF2電力は、オフ状態を維持する。そして、期間(2)において、HF電力は、Lowパワーレベルに維持される。期間(2)と時間的に重複する(すなわち、期間(2)の第1の部分と時間的に一致する)期間(4)においてLF1電力は、30μs以下の時間、オン状態を維持する。期間(2)中の時刻t22にLF1電力はオフ状態に遷移し、時刻t22からディレイ時間Tdelay経過後の時刻t23にLF2電力はオン状態に遷移する。時刻t22及び時刻t23において、HF電力は、Lowパワーレベルに維持される。そして、時刻t23から期間(2)と時間的に重複する(すなわち、期間(2)の第2の部分と時間的に一致する)期間(6)においてLF2電力は、オン状態を維持する。
【0091】
このように、本例では、HF電力がLowパワーレベルに維持されている期間(2)中に、LF1電力とLF2電力を交互にオン状態にする。また、期間(4)においてLF1電力の供給を30μs以下の短時間行う。これにより、更にイオンを垂直に制御し、異方性の高いエッチングが可能になる。なお、期間(6)経過後の時刻t24から時刻t25までの間の排気期間の制御については、他のパルスサイクルと同じであるため、説明を省略する。
【0092】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、複数の高周波電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させることができる。
【0093】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
12 環状部材
13 ガス導入部
14 アンテナ
20 ガス供給部
21 コンピュータ
21a 処理部
21b 記憶部
21c 通信インターフェース
31 RF電力供給部
31a ソースRF生成部
31b 第1バイアスRF生成部
34b1 第1調整回路
34b2 第1分離回路
34c1 第2調整回路
34c2 第2分離回路
31c 第2バイアスRF生成部
33 第1整合回路
34 第2整合回路
37 給電ライン