(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097071
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アリールスルホン酸エステル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/28 20060101AFI20240709BHJP
C07C 309/75 20060101ALI20240709BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C07C303/28
C07C309/75
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073304
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2021516147の分割
【原出願日】2020-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019085954
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光正
(72)【発明者】
【氏名】島田 淳平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安全で、反応時間や収率等の再現性が高く、さらに高収率で目的物が得られるアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)のアリールスルホン酸を、DMF触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)のハロゲン化物を製造する際に、アリールスルホン酸のDME溶液をハロゲン化試薬中に滴下する第1工程と、得られたアリールスルホン酸ハロゲン化物を、特定の有機溶媒中、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の塩基の存在下、15℃以下でアルコールと反応させる第2工程を備えるアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
(Aは芳香族基、Bはハロゲン原子で置換された芳香族基、nは1≦n≦4を満たす整数、qは1≦qを満たす整数。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)
【化2】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表し、A、B、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造する際に、前記アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を前記ハロゲン化試薬中に滴下して、前記スルホ基をハロゲン化して前記アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成する第1工程と、
前記第1工程で得られたアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、下記式(3)
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のアルキル基を表すが、2つのRが結合して窒素原子とともに環構造を形成してもよい。)
で表される塩基の存在下、15℃以下で下記式(4)
【化4】
(式中、D
1は、置換または非置換の二価炭化水素基を示し、D
2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基を示し、D
3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D
2が単結合である場合は水素原子であってもよい。)
で表されるアルコール化合物と反応させて下記式(5)
【化5】
(式中、A、B、D
1、D
2、D
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を合成する第2工程を備え、
前記第2工程の反応で使用する有機溶媒が、式(4)で表されるアルコール化合物、または、式(4)で表されるアルコール化合物と他の有機溶媒の混合溶媒である(ただし、式(4)で表されるアルコール化合物がプロピレングリコールモノエチルエーテルである場合、有機溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテルのみを使用する場合を除く。)
ことを特徴とするアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
下記式(2)
【化6】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表し、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、下記式(3)
【化7】
(式中、Rは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のアルキル基を表すが、2つのRが結合して窒素原子とともに環構造を形成してもよい。)
で表される塩基の存在下、15℃以下で下記式(4)
【化8】
(式中、D
1は、置換または非置換の二価炭化水素基を示し、D
2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基を示し、D
3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D
2が単結合である場合は水素原子であってもよい。)
で表されるアルコール化合物と反応させ下記式(5)
【化9】
(式中、A、B、D
1、D
2、D
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を合成する工程を備え、
前記反応で使用する有機溶媒が、式(4)で表されるアルコール化合物、または、式(4)で表されるアルコール化合物と他の有機溶媒の混合溶媒である(ただし、式(4)で表されるアルコール化合物がプロピレングリコールモノエチルエーテルである場合、有機溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテルのみを使用する場合を除く。)
ことを特徴とするアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(3)で表される塩基が、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンまたは4-モルフォリノピリジンである請求項1または2記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記アリールスルホン酸ハロゲン化物と前記アルコール化合物との反応が、-30~10℃で行われる請求項1~3のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アリールスルホン酸ハロゲン化物と前記アルコール化合物との反応が、-20~10℃で行われる請求項4記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記式(3)で表される塩基が、前記アリールスルホン酸ハロゲン化物が有するスルホン酸ハライド基1molに対し、1.1mol以上用いられる請求項1~5のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記その他の有機溶媒が、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクタム類、およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上である請求項1~6のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項8】
前記Bが、その少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基である請求項1~7のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項9】
前記Bが、その全ての水素原子がフッ素原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基である請求項8記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項10】
前記qが、2である請求項1~9のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項11】
前記Bが、下記式(B1)で表される2価の基である請求項10記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【化10】
【請求項12】
前記qが、1である請求項1~9のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項13】
前記Bが、下記式(B2)~(B6)のいずれかで表される2価の基である請求項12記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【化11】
【請求項14】
前記Aが、ベンゼン環またはナフタレン環である請求項1~13のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化試薬が、塩化チオニルである請求項1、3~14のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項16】
前記第1工程において、アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成した後、得られた反応液に貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させる操作を含む請求項1、3~15のいずれか1項記載のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法。
【請求項17】
下記式(1)
【化12】
(式中、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)
【化13】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、A、B、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造する方法であって、
前記アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を前記ハロゲン化試薬中に滴下して、前記スルホ基をハロゲン化する工程、および
アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成した後、得られた反応液に貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させる操作を含む
ことを特徴とするアリールスルホン酸ハロゲン化物の製造方法。
【請求項18】
前記貧溶媒が、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類からなる群より選ばれる1種以上である請求項17記載のアリールスルホン酸ハロゲン化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールスルホン酸エステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子は、ディスプレイや照明といった分野での実用化が期待されており、低電圧駆動、高輝度、高寿命等を目的とし、材料や素子構造に関する様々な開発がなされている。
この有機EL素子では複数の機能性薄膜が用いられるが、その中の1つである正孔注入層は、陽極と正孔輸送層または発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動および高輝度を達成するために重要な役割を果たす。
【0003】
近年、低分子オリゴアニリン系材料やオリゴチオフェン系材料を有機溶媒に溶解させた均一系溶液からなる電荷輸送性ワニスが見出され、このワニスから得られる正孔注入層を有機EL素子中に挿入することで、下地基板の平坦化効果や、優れた有機EL素子特性が得られることが報告されている。
これら低分子オリゴアニリン系材料の電子受容性物質として、本出願人は、アリールスルホン酸エステル化合物が好適であることを既に報告している(特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、前記特許文献1,2において、アリールスルホン酸エステル化合物は、アリールスルホン酸化合物のピリジニウム塩やナトリウム塩を、DMF等の溶媒中で塩化チオニルで酸クロライド化(第1工程)した後、ピリジン等の塩基中でエステル化(第2工程)して製造されている。
しかし、第1工程については、出発原料として塩を用いる特許文献1,2の方法では、アリールスルホン酸を塩にする工程が余分に必要となることから量産には不向きであるため、アリールスルホン酸を直接酸クロライド化する手法が望まれるが、この手法では急激な酸性ガスが発生するためその制御が難しく、安全性の面で課題があり、更にスケールが大きくなった場合、反応中に大きな塊が発生し、撹拌が困難になることがあった。さらに反応後に過剰の塩化チオニルを留去するために濃縮乾固することから、再現性よく目的物を得ることができない等の課題もあり、量産には不向きであった。
また、第2工程のエステル化にあたっても、スケールが大きくなると反応時間や収率等の点で再現性が低く、特に、エステル化部位が増えると原料である酸クロライドや生成物であるエステル化物の分解が多くなるため、目的物を高収率で得ることは困難であるうえ、濃縮乾固等の工程が必要であり、目的物を高収率で効率的に得るために改善の余地があった。
このような観点から、量産に対応し得る新たなアリールスルホン酸エステルの製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/099808号
【特許文献2】国際公開第2017/217457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安全で、反応時間や収率等の再現性が高く、さらに高収率で目的物が得られるアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル溶液をハロゲン化試薬中に滴下してアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造し、さらにこのスルホン酸ハロゲン化物を、特定の有機溶媒中で特定の塩基を用いて低温下でエステル化することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)
【化1】
(式中、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)
【化2】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、A、B、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造する際に、前記アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を前記ハロゲン化試薬中に滴下して、前記スルホ基をハロゲン化して前記アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成する第1工程と、
前記第1工程で得られたアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、下記式(3)
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のアルキル基を表すが、2つのRが結合して窒素原子とともに環構造を形成してもよい。)
で表される塩基の存在下、15℃以下で下記式(4)
【化4】
(式中、D
1は、置換または非置換の二価炭化水素基を示し、D
2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基を示し、D
3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D
2が単結合である場合は水素原子であってもよい。)
で表されるアルコール化合物と反応させて下記式(5)
【化5】
(式中、A、B、D
1、D
2、D
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を合成する第2工程を備え、
前記第2工程の反応で使用する有機溶媒が、式(4)で表されるアルコール化合物、または、式(4)で表されるアルコール化合物と他の有機溶媒の混合溶媒である(ただし、式(4)で表されるアルコール化合物がプロピレングリコールモノエチルエーテルである場合、有機溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテルのみを使用する場合を除く。)
ことを特徴とするアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
2. 下記式(2)
【化6】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表し、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、下記式(3)
【化7】
(式中、Rは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のアルキル基を表すが、2つのRが結合して窒素原子とともに環構造を形成してもよい。)
で表される塩基の存在下、15℃以下で下記式(4)
【化8】
(式中、D
1は、置換または非置換の二価炭化水素基を示し、D
2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基を示し、D
3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D
2が単結合である場合は水素原子であってもよい。)
で表されるアルコール化合物と反応させ下記式(5)
【化9】
(式中、A、B、D
1、D
2、D
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を合成する工程を備え、
前記反応で使用する有機溶媒が、式(4)で表されるアルコール化合物、または、式(4)で表されるアルコール化合物と他の有機溶媒の混合溶媒である(ただし、式(4)で表されるアルコール化合物がプロピレングリコールモノエチルエーテルである場合、有機溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテルのみを使用する場合を除く。)
ことを特徴とするアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
3. 前記式(3)で表される塩基が、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンまたは4-モルフォリノピリジンである1または2のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
4. 前記アリールスルホン酸ハロゲン化物と前記アルコール化合物との反応が、-30~10℃で行われる1~3のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
5. 前記アリールスルホン酸ハロゲン化物と前記アルコール化合物との反応が、-20~10℃で行われる4のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
6. 前記式(3)で表される塩基が、前記アリールスルホン酸ハロゲン化物が有するスルホン酸ハライド基1molに対し、1.1mol以上用いられる1~5のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
7. 前記その他の有機溶媒が、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクタム類、およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上である1~6のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
8. 前記Bが、その少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基である1~7のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
9. 前記Bが、その全ての水素原子がフッ素原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基である8のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
10. 前記qが、2である1~9のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
11. 前記Bが、下記式(B1)で表される2価の基である10のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
【化10】
12. 前記qが、1である1~9のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
13. 前記Bが、下記式(B2)~(B6)のいずれかで表される2価の基である12のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
【化11】
14. 前記Aが、ベンゼン環またはナフタレン環である1~13のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
15. 前記ハロゲン化試薬が、塩化チオニルである1、3~14のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
16. 前記第1工程において、アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成した後、得られた反応液に貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させる操作を含む1、3~15のいずれかのアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法、
17. 下記式(1)
【化12】
(式中、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数である。)
で表されるアリールスルホン酸化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)
【化13】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、A、B、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造する方法であって、
前記アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を前記ハロゲン化試薬中に滴下して、前記スルホ基をハロゲン化する工程、および
アリールスルホン酸ハロゲン化物を合成した後、得られた反応液に貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させる操作を含む
ことを特徴とするアリールスルホン酸ハロゲン化物の製造方法、
18. 前記貧溶媒が、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類からなる群より選ばれる1種以上である17のアリールスルホン酸ハロゲン化物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法は、酸ハロゲン化物製造時のガス発生を適切に制御できるため安全性に優れ、また、エステル化反応における反応時間や収率等の再現性が高いだけでなく、反応速度が速く、かつ、目的物の収率も良好である。
さらに、本発明の製造方法は、ハロゲン化反応後およびエステル化反応後の濃縮乾固等の工程を簡略化できるという利点も有する。
このような特徴を有する本発明の製造方法は、ラボスケールでの合成方法としてだけでなく、量産化を目的とした工業的製法としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
(1)第1工程
本発明に係るアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法の第1工程は、上述のとおり、下記式(1)表されるアリールスルホン酸化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)触媒の存在下でハロゲン化試薬と反応させて下記式(2)で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を製造する際に、アリールスルホン酸化合物の1,2-ジメトキシエタン(以下、DMEとも略記する。)溶液またはジエチレングリコールジエチルエーテル(以下、DEGDEEとも略記する。)溶液をハロゲン化試薬中に滴下して、スルホ基をハロゲン化する工程である。
【0011】
【0012】
前記各式において、Aは、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基を表し、Bは、ハロゲン原子で置換されたq価の炭素数6~20の芳香族基を表し、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数であり、Xは、ハロゲン原子を表す。
【0013】
Aの炭素数6~20の芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環等が挙げられるが、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ナフタレン環がより好ましい。なお、Aは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等のスルホ基以外の置換基で置換されていてもよい。
Bの炭素数6~20の芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環等が挙げられるが、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が好ましくビフェニル環がより好ましい。
Bが有するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、フッ素原子が好ましい。なお、Bは、シアノ基、ニトロ基、パーフルオロアリル基等のハロゲン原子以外の置換基で置換されていてもよい。
Bは、その少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より一層好ましくは全ての水素原子がフッ素原子で置換された(パーフルオロ構造を有する)炭素数6~20の芳香族基である。中でも、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、4-ニトロ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、3,4-ジシアノ―2,5,6-トリフルオロフェニル基、4-パーフルオロアリル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、パーフルオロビフェニルジイル基が好ましく、パーフルオロビフェニル-4,4’-ジイル基、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基がより好ましい。
【0014】
また、nは、Aに結合するスルホ基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であるが、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、2がより一層好ましい。
qは、Bと酸素原子との結合数を示し、1≦qを満たす整数であるが、1~4の整数が好ましく、1または2がより好ましく、2がより一層好ましい。
Xのハロゲン原子としては、前記Bで例示したものが挙げられるが、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0015】
本発明において好適なA-(SO3H)n基としては下記式(A1)および(A2)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、(A1)が好ましい。
【0016】
【0017】
また、本発明において好適なBは、下記式(B1)~(B6)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、(B1)が好適である。
【0018】
【0019】
本発明の製造方法の第1工程の原料である前記式(1)で表されるアリールスルホン酸化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
【0021】
第1工程において、アリールスルホン酸化合物のDME溶液の調製に用いられるDME 第1工程において、アリールスルホン酸化合物のDME溶液またはDEGDEE溶液の調製に用いられるDMEまたはDEGDEEの量は、アリールスルホン酸化合物が溶解する量であれば特に制限はないが、アリールスルホン酸化合物の溶解性と滴下量とのバランスを考慮すると、質量比で、アリールスルホン酸1に対して、0.1~10が好ましく、1~7がより好ましく、1~3がより一層好ましい。
【0022】
ハロゲン化試薬としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができ、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン等が挙げられるが、反応性、安全性、作業性、価格等を考慮すると、塩化チオニルが好ましい。
ハロゲン化試薬の使用量は、アリールスルホン酸化合物が有する全てのスルホ基がハロゲン化される理論量以上であれば制限はないが、少なすぎると反応の進行が遅くなったり、触媒として使用するDMF由来の不純物が残存したりする場合があるため、反応速度、結晶化後のスルホン酸化合物の収率や純度、作業性、再現性、コストの点から、通常、アリールスルホン酸化合物に対して、通常1~10質倍程度で用いられ、その下限値は、好ましくは1.5質量倍であり、その上限値は、好ましくは5質量倍、より好ましくは3.5質量倍である。
本発明では、ハロゲン化試薬そのものにアリールスルホン酸化合物のDME溶液またはDEGDEE溶液を滴下しても、ハロゲン化試薬と有機溶媒との混合物に前記DME溶液または前記DEGDEE溶液を滴下してもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、反応に影響しない有機溶媒であれば特に制限はないが、アリールスルホン酸化合物の溶解に用いられるDMEまたはDEGDEEが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法の第1工程では、反応加速、転化率向上を目的にDMF等の触媒を添加する。触媒として用いられるDMFの使用量は、特に限定されるものではないが、少なすぎると反応の進行が遅くなる一方、多すぎるとDMF由来の不純物が生成するため、これらのバランスを考慮すると、アリールスルホン酸が有するスルホ基1molに対し、0.025mol以上が好ましく、0.025~0.25molがより好ましく、0.075~0.125molがより一層好ましい。アリールスルホン酸1molに対するモル当量(以下、eqと表記する)は、アリールスルホン酸が有するスルホ基の数に応じて適宜設定することができ、例えば、アリールスルホン酸が4つのスルホ基を有するものである場合、0.1eq以上が好ましく、0.1~1eqがより好ましく、0.3~0.5eqがより一層好ましい。
DMF等の触媒は、滴下されるアリールスルホン酸のDME溶液中またはDEGDEE溶液中に添加しても、ハロゲン化試薬中に添加しても、その双方に添加してもよいが、反応速度、ガス発生制御のしやすさ、操作の簡便化等の点から、ハロゲン化試薬中に添加することが好ましい。
【0024】
反応温度は、反応が進行する限り特に制限されるものではないが、反応を速やかに進行させるとともに、酸性ガスの発生を適度に調節することを考慮すると、30~85℃程度が好ましく、50~85℃がより好ましく、60~80℃がより一層好ましい。
なお、アリールスルホン酸化合物のDME溶液またはDEGDEE溶液の滴下時に、ハロゲン化試薬を前記温度範囲に加熱しておくことが好適である。
【0025】
反応時間は、用いる触媒の種類や量、反応温度等を考慮して適宜設定されるが、通常、1~48時間程度である。
反応終了後は、貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させ、これをろ別し、洗浄、乾燥等をして目的物を得ることができる。本発明では、反応液に貧溶媒を加えてアリールスルホン酸ハロゲン化物を析出させることにより、反応液の濃縮により単離する方法に比べて、反応液に残存するハロゲン化試薬を容易かつ確実に除去することができるともに、再現性よく目的物を得ることができる。
【0026】
貧溶媒としては、目的のアリールスルホン酸ハロゲン化物が沈殿し、かつ当該アリールスルホン酸ハロゲン化物の分解を促進する等の悪影響がないものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)が好ましく、トルエン、n-ヘプタン、アセトニトリルがより好ましい。
【0027】
(2)第2工程
本発明に係るアリールスルホン酸エステル化合物の製造方法の第2工程は、上述のとおり第1工程で得られたアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、下記式(3)で表される塩基の存在下、15℃以下で下記式(4)で表されるアルコール化合物と反応させて下記式(5)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を合成する工程である。
【0028】
【0029】
式(3)において、Rは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のアルキル基を表すが、2つのRが結合して窒素原子とともに環構造を形成してもよい。
【0030】
Rの炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~10の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロブチル、ビシクロペンチル基等の炭素数3~20の環状アルキル基などが挙げられる。
また、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、ヘテロ原子を含有していてもよい、炭素数1~5のアルキル基またはR同士が結合して形成される炭素数2~5のアルキレン基が好ましく、メチル、エチル、テトラメチレン、ペンタメチレン、3-オキサペンタメチレン基が好ましく、2つのRがいずれもメチル基、2つのRがいずれもエチル基、2つのRが結合した3-オキサペンタメチレン基がより好ましい。
【0031】
前記式(3)で表される塩基の具体例としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(以下、DMAPと略記する。)、N,N-ジエチル-4-アミノピリジン、4-モルフォリノピリジン(以下、4MPと略記する。)等が挙げられるが、反応速度を高めるとともに、全てのスルホン酸ハライド基をエステル化して目的物の収率を高めることを考慮すると、DMAPが最適である。
【0032】
式(3)で表される塩基の使用量は、特に限定されるものではないが、少なすぎると反応の進行が遅くなる一方、多すぎるとアリールスルホン酸ハロゲン化合物や目的物の分解が進行するため、反応速度を高めるとともに、全てのスルホン酸ハライド基をエステル化して目的物の収率を高めることを考慮すると、アリールスルホン酸ハロゲン化物が有するスルホン酸ハライド基1molに対し、1.1mol以上が好ましく、1.1~1.5molがより好ましく、1.1~1.3molがより一層好ましい。当該アリールスルホン酸ハロゲン化物1molに対するモル当量(eq)は、アリールスルホン酸ハロゲン化物が有するスルホン酸ハライド基の数に応じて適宜設定することができ、例えば、アリールスルホン酸ハロゲン化物が4つのスルホン酸ハライド基を有するものである場合、4.4eq以上が好ましく、4.4~6.0eqがより好ましく、4.4~5.2eqがより一層好ましい。
【0033】
【0034】
式(4)において、D1は、置換または非置換の二価炭化水素基を示し、D2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基を示し、D3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D2が単結合である場合は水素原子であってもよい。
【0035】
D1の置換または非置換の二価炭化水素基としては、例えば、置換または非置換の炭素数1~5のアルキレン基、炭素数1~2アルキレンオキシ炭素数1~2アルキレン基、炭素数1~2アルキレンチオ炭素数1~2アルキレン基、炭素数1~2アルキレンカルボニル炭素数1~2アルキレン基や、これらの基の水素原子の一部または全部がさらに、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基、ハロゲン原子等で置換されたものが挙げられる。本発明では、炭素数1~5のアルキレン基が好ましい。炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレンおよびペンタメチレン基が挙げられ、メチレン、エチレン、プロピレンおよびトリメチレン基が好ましい。
【0036】
D2は、単結合、O、S、または置換もしくは非置換の2価アミノ基であるが、本発明ではOが好ましい。ここで、2価の置換アミノ基としては、-N(CH3)-、-N(C2H5)-、-N(C3H7)-等が挙げられる。
【0037】
D3は、置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示すが、D2が単結合である場合は水素原子であってもよい。置換もしくは非置換の一価炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル、キシリル、トリル、ビフェニル、ナフチル基等の芳香環基(アリール基);ベンジル、フェニルエチル、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部または全部がさらに、上述した置換基で置換されたものが挙げられる。本発明では、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルおよびフェニル基が好ましい。
【0038】
また、式(4)で表されるアルコール化合物は、前記D1、D2およびD3が一緒になって下記式(D’)で表される構造を有する、下記式(4’)で表されるアルコール化合物が好ましい。
【0039】
【0040】
式(D’)および式(4’)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の一価脂肪族炭化水素基を表し、R3は、直鎖状もしくは分岐状の一価脂肪族炭化水素基またはアルコキシ基を表す。ただし、R1、R2およびR3の炭素数の合計は2以上である。R1、R2およびR3の炭素数の合計は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0041】
前記直鎖状若しくは分岐状の一価脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、デシル基等の炭素数1~18のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~18のアルケニル基等が挙げられる。
【0042】
アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシおよびフェノキシ基等が挙げられる。
【0043】
R1としては、メチル基がより好ましい。R2としては、水素原子が好ましい。R3としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシおよびフェノキシ基がより好ましく、エトキシ、n-ブトキシおよびフェノキシ基がより一層好ましい。
【0044】
式(4)で表されるアルコール化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-ヘプタノール、シクロヘプタノール、n-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、n-ノナノール、3-ノナノール、2-ブチル-1-オクタノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のグリコールモノエーテル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、1-オクタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルが好ましい。
【0045】
アルコール化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、反応速度や塩基の溶解性の観点から、質量比で、アリールスルホン酸ハロゲン化物1に対し、2~10が好ましく、3~7がより好ましく、3.5~6がより一層好ましい。
また、アリールスルホン酸ハロゲン化物とアルコール化合物の溶液またはスラリー中のアルコール化合物の量は、質量比で、アリールスルホン酸ハロゲン化物1に対し、2~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0046】
【化21】
(式中、A、B、D
1、D
2、D
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
【0047】
また、前記式(5)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物の好ましい態様としては、例えば、下記式(5’)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
【化22】
(式中、A、B、R
1、R
2、R
3、nおよびqは、前記と同じ意味を表す。)
【0049】
第2工程の反応は、式(2)で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物を、有機溶媒中、式(3)で表される塩基の存在下、15℃以下で式(4)で表されるアルコール化合物と反応させて式(5)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物を好適に与える限り、その操作は特に限定されるものではなく、式(2)で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物と、式(4)で表されるアルコール化合物および有機溶媒のいずれか一方または両方との混合溶液またはスラリー中に、式(4)で表されるアルコール化合物および有機溶媒のいずれか一方または両方と、式(3)で表される塩基との混合溶液を滴下してもよいが、式(2)で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物や目的物の安定性、反応速度、塩基の溶解性、作業性、反応時の温度管理の容易性等を考慮すると、式(2)で表されるアリールスルホン酸ハロゲン化物と式(4)で表されるアルコール化合物との溶液またはスラリー中に、式(4)で表されるアルコール化合物と有機溶媒と式(3)で表される塩基との混合溶液あるいは有機溶媒と式(3)で表される塩基との混合溶液を滴下することが望ましい。この場合において、滴下させる組成物(例えば、滴下ロート内の組成物)とその滴下を受ける組成物(例えば、反応フラスコ内の組成物)のいずれにも式(4)で表されるアルコール化合物を含める場合、高収率で目的のエステル体を得る観点から、そのエステル体に対応するアルコール化合物のみを用いる必要がある。
【0050】
前記有機溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。その具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ラクタムおよびラクトン類(N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン等)、尿素類(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが挙げられる。
また、第2工程の反応で用い得る有機溶媒としては、上述の有機溶媒のほか、式(4)で表されるアルコール化合物も用い得る。つまり、本発明においては、式(4)で表されるアルコール化合物は、原料化合物と有機溶媒の両方として機能し得る。
なお、溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
これらの中でも、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)、ラクタム類(N-メチル-2-ピロリドン等)が好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略記する)がより好ましい。
前記有機溶媒の使用量は、反応に影響せず、前記式(3)で表される塩基を含む混合溶液を滴下する場合は当該塩基を溶解する量であれば特に限定されるものではないが、多すぎると反応が遅くなり、少なすぎると反応が完結しないことから、質量比で、アリールスルホン酸ハロゲン化物1に対し、通常1~10であり、2~10が好ましく、2~7がより好ましく、2~6がより一層好ましく、2~4が更に好ましい。
また、前記式(3)で表される塩基を溶解できない量の有機溶媒を用いる場合は、質量比で、アリールスルホン酸ハロゲン化物1に対し、目的のエステル体に対応するアルコール化合物1~2をそこへ加えて当該塩基を溶解させ得る。
【0052】
本発明において好適なA-(SO3-D1-D2-D3)n基としては下記式(A3)および(A4)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、(A3)が好ましい。
【0053】
【化23】
(式中、D
1、D
2およびD
3は、前記と同じ意味を表す。)
【0054】
また、A-(SO
3-D
1-D
2-D
3)
n基のより好ましい態様としては、下記式(A3’)および(A4’)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、(A3’)が好ましい。
【化24】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
【0055】
また、本発明の第2工程において好適なBは、第1工程で好適なものと同様である。
【0056】
本発明の製造方法で得られるアリールスルホン酸エステル化合物の好適な態様としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化25】
(式中、D
1、D
2およびD
3は、前記と同じ意味を表す。)
【0058】
また、本発明の製造方法で得られるアリールスルホン酸エステル化合物のより好適な態様としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
【化26】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
【0060】
第2工程の反応系中の水分量は、反応を良好に進行させるという観点から、10mol%以下が好ましく、8mol%以下がより好ましく、7mol%以下がより一層好ましい。なお下限値は特に限定されないが、通常、1mol%程度である。
したがって、第2工程で用いられる試薬は、脱水されたものを用いることが好ましく、特に有機溶媒は含有水分量が50ppm未満のものを用いることが好ましい。
【0061】
第2工程の好適な態様としては、エステル化に用いられるアルコール化合物、式(3)で表される塩基およびNMPあるいはアセトニトリルを含む有機溶媒の混合溶液を、アリールスルホン酸ハロゲン化物をエステル化に用いられるアルコール化合物に溶解または懸濁させた液中に滴下法にて添加する手法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
なお、この場合、NMPあるいはアセトニトリルの添加量は、質量比で、アリールスルホン酸ハロゲン化物1に対し、通常1~10であり、2~10が好ましく、2~7がより好ましく、2~6がより一層好ましく、2~4が更に好ましい。
【0062】
本発明では、反応時間を適切にするとともに副反応を抑制するという点から、第2工程の反応温度が15℃以下とされるが、-30~12℃が好ましく、-25~10℃がより好ましく、-20~10℃がより一層好ましく、-15~0℃がさらに好ましく、-15~-5℃が特に好ましい。
反応時間は、用いる塩基の量、反応温度等を考慮して適宜決定されるが、通常、1~48時間程度である。反応終了(完結)後に長時間放置しておくと、副反応物が増加することがあるため、反応終了後は速やかに後処理することが好ましい。反応が終了したか否かは、例えば液体クロマトグラフィーを用いた反応追跡で確認できるが、この方法に限定されない。
反応終了後は、反応液をろ過し、ろ物を酢酸エチル等の溶媒で洗浄、塩酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液等による洗浄等を行って目的物を得ることができる。なお、目的物の分解を抑制する観点から、洗浄工程も低温下で行うことが好ましく、その温度は、通常10℃以下であり、その下限値は、溶液が凍結しない限り特に限定されるものではないが、通常-10℃程度である。
【0063】
本発明の製造方法で好適に得られるアリールスルホン酸エステル化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【0065】
なお、前記説明では、第1工程で得られたアリールスルホン酸ハロゲン化物を用いた第2工程の方法によるエステル化について言及したが、本発明における第2工程の方法は、第1工程の方法以外の方法で製造されたアリールスルホン酸ハロゲン化物のエステル化に適用できるものであり、その原料は、第1工程で得られたハロゲン化物に限定されるものではない。
【実施例0066】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。また、実施例および比較例において、質量倍は、各工程の出発物質である後述のアリールスルホン酸XもしくはX-2、またはアリールスルホン酸X-ClもしくはX-Cl-2の1質量部に対する質量比を意味する。
【0067】
PGEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
MeCN:アセトニトリル
DME:1,2-ジメトキシエタン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
THF:テトラヒドロフラン
DMAP:N,N-ジメチルアミノピリジン
4MP:4-モルフォリノピリジン
NMI:N-メチルイミダゾール
Et3N:トリエチルアミン
Py:ピリジン
NEM:N-エチルモルフォリン
DEGDEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル
SOCl2:塩化チオニル
【0068】
[1H-NMR]
装置:Varian社製、フーリエ変感型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)「INOVA-400」400MHz
溶媒:DMSO-d6、CDCl3
内標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
【0069】
[LC-MS]
装置:Q-Exactive(Thermo製)
モード:APCI-APPI
カラム:XBridge C18,2.1mm×150mm,5μm
流速:0.22mL/min
温度:45℃
【0070】
[HPLC]
<HPLC分析液の調製>
後述のアリールスルホン酸X-PGEEの合成工程で得た反応液およびその原材料であるアリールスルホン酸X-ClのHPLC分析では、CH3CNを用いて未反応の酸クロライドをアミド体としたものを用いて分析を行った。
【0071】
【0072】
<分析条件>
装置:(株)島津製作所製、液体クロマトグラフ「Prоminence-i」
カラム:Poroshell 120 EC-C18 2.7μm、3.0×50mm(Agilent)
オーブン:40℃
検出波長:254nm
流速:0.8mL/分
溶離液:グラジエント
(A)水:(B)アセトニトリル
グラジエント条件;0-5分(B40A60→B100)、5-15分(B100)、
15-20分(B100→B40A60)、20-30分(B40A60)
サンプル注入量:2μL
データ採取時間:20分
【0073】
下記式(P)で表される化合物の構造とHPLCの保持時間との関係を表1および表2に記す。ここで、下記式(P)のR1~R4に関し、表中の「Cl」は、未反応のClがn-Bu2N化されたものであることを示し、「A」は、下記式(Q)で表される基であることを示す。
【0074】
【化29】
【化30】
(式中、*は結合手を示す。)
【0075】
【0076】
【0077】
後述の実施例および比較例では、反応液のHPLC測定により得られたクロマトグラムに現れた各ピークについてピーク面積を算出し、表1および表2に示した保持時間との関係に基づいて、当該反応液に含まれる生成物の比率を求めた。
【0078】
[実施例1-1] アリールスルホン酸X-Clの合成
下記の手順に従い、スルホニルハライド化合物(アリールスルホン酸X-Cl)を合成した。
【化31】
【0079】
窒素雰囲気下、1L四つ口フラスコに塩化チオニル245g(3質量倍)、DMF 2.6g(0.4eq)を加え、73℃にて1時間撹拌した。40℃にて、DME 232g(2.9質量倍)にアリールスルホン酸X 30gを加え溶解した。さらにアリールスルホン酸X 30g、アリールスルホン酸X 20gを分割して加え溶解後、滴下漏斗に移し替え、1,2-ジメトキシエタン8g(0.1質量倍)で洗浄した。この溶液を73℃にて塩化チオニル、DMFの混合溶液に4時間かけて滴下し、19時間撹拌した。この際、反応終了まで酸性ガスが発生するため、還流管の上部より水酸化ナトリウム水溶液へ通じて系外に放出した。また、この際、塊は発生せず、撹拌も良好であった。また、滴下途中でアリールスルホン酸X-Clが析出した。19時間後の反応液をHPLC分析したところ、アリールスルホン酸X-Cl(98.0%)、3置換体(0.3%)であった。
反応の終結を確認後、n-ヘプタン240g(3質量倍)を73℃から60℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃まで2時間かけて冷却し、2時間撹拌した。析出したアリールスルホン酸X-Clを窒素加圧ろ過し、質量比4:1のn-ヘプタン:1,2-ジメトキシエタン溶液160g(2質量倍)でろ取物を3回洗浄した。この後、n-ヘプタン80g(1質量倍)でろ取物を2回洗浄した。得られた結晶を60℃にて減圧乾燥を行い、アリールスルホン酸X-Clを80.6g得た(収率:93.1%、LC area:98.0%)。1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ7.49(s、2H)、8.39、8.42(d、J=0.03Hz,2H)、8.64(s、2H)、8.78、8.81(d、J=0.03Hz,2H)、8.87、8.88(d,J=0.01Hz,2H)
実施例1-1では、塩化チオニルのDMF溶液にアリールスルホン酸XのDME溶液を滴下することで、撹拌不良がなく、酸性ガスの発生量を調整することが可能となり、アリールスルホン酸X-Clを安全かつ効率よく製造できることが確認された。
【0080】
[実施例1-2] アリールスルホン酸X-PGEEの合成
【化32】
【0081】
窒素雰囲気下、500mL四つ口フラスコにアリールスルホン酸X-Cl 60.0g、脱水PGEE 180g(3質量倍)を加え、-3℃まで冷却した。冷却後、DMAP 29.0g(3.9eq)、脱水NMP 128.6g(2.1質量倍)、脱水PGEE 51.4g(0.9質量倍)の混合溶液を-3℃から-0.6℃で45分かけて滴下した。その後、DMAP(4.8g、0.6eq)、脱水NMP 21.4g(0.4質量倍)、脱水PGEE 8.6g(0.1質量倍)の混合溶液を-1.7℃から-1.1℃で3時間かけて滴下し、-4.8℃で21時間撹拌した。21時間後の反応液をHPLC分析したところ、アリールスルホン酸X-PGEE(96.2%)、3置換体(3.3%)、原料+中間体(0.02%)であった。その後、反応液をろ過し、4℃に冷却した酢酸エチル120g(2質量倍)でろ取物を2回洗浄した。得られたろ液を5.5℃まで昇温し、4℃に冷却した酢酸エチル360g(6質量倍)を加え撹拌した。5℃から8℃にて、5℃に冷却した15質量%塩化アンモニウム水溶液600g(10質量倍)を滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後3分静置した。水層を除去した後に撹拌を再開し、5℃に冷却した15質量%塩化アンモニウム水溶液600g(10質量倍)を再度5℃から5.5℃にて、滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後5分静置した。水層を除去した後に撹拌を再開し、5℃に冷却した15質量%塩化アンモニウム水溶液300g(5質量倍)を5℃にて滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後7分静置した。水層を除去した後、ジイソプロピルエーテル270g(4.5質量倍)を加えた。95mm桐山漏斗に酢酸エチル:ジイソプロピルエーテル=2:1(質量比)の溶液720g(12質量倍)で懸濁した中性シリカゲル60N 240g(4質量倍)を充填し、分液後の溶液をろ過した。ろ過後、さらに質量比2:1の酢酸エチル:ジイソプロピルエーテル溶液1,880g(31質量倍)でろ過し、ろ過器上のシリカゲルを洗浄した。得られた溶液を25℃で462g(7.7質量倍)まで減圧濃縮し、酢酸エチル(82g、1.3質量倍)を加え、全量を540g(9質量倍)に調整した。この溶液を3℃まで冷却し、撹拌しながらイソプロパノール(1,500g、25質量倍)を3℃から5℃にて1時間かけて滴下後、3℃にて23時間撹拌した。アリールスルホン酸X-PGEE析出を確認後、この溶液を25℃で900g(15質量倍)まで減圧濃縮し、イソプロパノール(1,200g、20質量倍)を加えた。再度溶液を25℃で900g(15質量倍)まで減圧濃縮し、イソプロパノール1,200g(20質量倍)を加えた。析出物をろ過し、ろ取物をジイソプロピルエーテル120g(2質量倍)で2回洗浄した。得られた結晶を25℃、5hPaで12時間、40℃、5hPaで5時間減圧乾燥し、アリールスルホン酸X-PGEEを72.2g得た(収率:94.2%、LC area:99.4%)。1H-NMRおよびLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ0.92-0.97(m、12H)、1.34 and 1.40(a pair of d、J=6.5Hz,12H)、3,32-3,52(m、16H)、4.80-4.87(m、4H)、7.37(s、2H)、8.22(d、J=8.5Hz,2H)、8.45(s,2H)、8.61(d,J=8.5Hz,2H)、8.69(s,2H)
LC/MS(ESI+) m/z; 1264[M+NH4]+
【0082】
[実施例2]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに脱水PGEE600mg(3質量倍)を加え、-10℃にてDMAP 113mg(4.5eq)、脱水NMP 500mg(2.5質量倍)、PGEE 200mg(1質量倍)の混合溶液を約1分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0083】
[実施例3]
塩基を4MPに変更した以外は、実施例2と同様の操作でアリールスルホン酸X-PGEEの合成およびHPLCによる分析を実施した。
【0084】
[比較例1]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに0℃にて脱水クロロホルム1.66g(8.3質量倍)、脱水ピリジン720mg(3.6質量倍)を5分かけて滴下、脱水PGEE 260mg(1.3質量倍)を3分かけて滴下した後、25℃まで昇温し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0085】
[比較例2]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに-10℃にて脱水クロロホルム1.66g(8.3質量倍)を加えた。-10℃にて脱水ピリジン720mg(3.6質量倍)を1分かけて滴下し、脱水PGEE 260mg(1.3質量倍)を3分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0086】
[比較例3]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに-10℃にて脱水ピリジン720mg(3.6質量倍)を2分かけて滴下し、脱水PGEE 260mg(1.3質量倍)を3分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0087】
[比較例4]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに-10℃にて脱水ピリジン720mg(3.6質量倍)を2分かけて滴下し、脱水PGEE 800mg(4質量倍)を3分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0088】
[比較例5]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに-10℃にて脱水ピリジン200mg(1質量倍)を1分かけて滴下し、脱水PGEE 260mg(1.3質量倍)を3分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0089】
[比較例6]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに脱水PGEE 800mg(4質量倍)を加え、-10℃にて脱水ピリジン 700mg(3.5質量倍)を1分かけて滴下し、4時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0090】
[比較例7]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに脱水PGEE 800mg(4質量倍)を加え、0℃にて脱水ピリジン700mg(43.6eq)を1分かけて滴下し、23時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0091】
[比較例8]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 10gに脱水PGEE 30g(3質量倍)を加え、1℃から4.5℃でDMAP 5.63g(4.5eq)、脱水PGEE 35g(3.5質量倍)の混合溶液を1時間かけて滴下し、4.5℃にて25時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0092】
[比較例9]
窒素雰囲気下、アリールスルホン酸X-Cl 200mgに脱水PGEE 600mg(3質量倍)を加え、-10℃にてDMAP 113mg(4.5eq)、脱水PGEE 700mg(3.5質量倍)の混合溶液を1分かけて滴下し、42時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0093】
[比較例10]
窒素雰囲気下、脱水PGEE 84g(8.4質量倍)に4℃に冷却した。4℃にてアリールスルホン酸X-Cl 2gを加え、5分撹拌し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.68gを加え5分撹拌した。2℃から4℃にてこの操作を5回繰り返した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.34gを加え、42時間撹拌した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。その後、析出物をろ過し、ろ取物を水20g(2質量倍)で2回洗浄した。得られた結晶を25℃、5hPaで7時間減圧乾燥し、アリールスルホン酸X-PGEEを0.78g得た(収率:6%、LC area:87.5%)
【0094】
実施例2~3および比較例1~10の結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
*1 比較例1~4において、Pyの3.6質量倍は、塩基として45eqに相当
*2 比較例5において、Pyの1質量倍は、塩基として12eqに相当
*3 比較例6~7において、Pyの43.6eqは、溶媒として3.5質量倍に相当
【0096】
[比較例2-1~2-4]
塩基を表4に示した化合物に変更した以外は、実施例2と同様の操作でアリールスルホン酸X-PGEEを合成した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0097】
比較例2-1~2-4の結果を表4に示す。なお、表4には、実施例2および3の結果も併記した。
【0098】
【0099】
[実施例4、5]
塩基の使用量を表5に示した量に変更した以外は、実施例2と同様の操作でアリールスルホン酸X-PGEEを合成した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0100】
実施例4~5の結果を表5に示す。なお、表5には、実施例2の結果も併記した。
【0101】
【0102】
[実施例6~13]
反応温度に関する条件および/または溶媒に関する条件を表6に示した条件に変更した以外は、実施例2と同様の操作でアリールスルホン酸X-PGEEを合成した。その際、表に記載の反応時間の時点で一部反応液をサンプリングし、HPLCにて分析した。
【0103】
実施例6~13の結果を表6に示す。なお、表6には、実施例2の結果も併記した。
【0104】
【0105】
[実施例14~40]
溶媒に関する条件を表7に示した条件に変更した以外は、実施例2と同様の操作でアリールスルホン酸X-PGEEの合成およびHPLCによる分析を実施した。結果を表7に示す。なお、表7には、実施例2の結果も併記した。
【0106】
【0107】
[実施例41-1] アリールスルホン酸X-Cl-2の合成
国際公開第2009/096352号の記載の方法に従って、下記式アリールスルホン酸X-2を合成し、その後、下記の手順に従い、スルホニルハライド化合物(アリールスルホン酸X-Cl-2)を合成した。
【化33】
【0108】
窒素雰囲気下、40℃にて、DEGDEE 20.2g(0.9質量倍)にアリールスルホン酸X-2 22.4gを溶解させた溶液を500mL四つ口フラスコに塩化チオニル33.8g(1.5質量倍)、DMF 0.32g(0.1eq)を加え、75℃にて1時間撹拌した混合溶液に30分かけて滴下し、使用した滴下ロートをDEGDEE 11.37g(0.5質量倍)で洗いこみ、75℃で4時間撹拌した。この際、反応終了まで酸性ガスが発生するため、還流管の上部より水酸化ナトリウム水溶液へ通じて系外に放出した。また、この際、塊は発生せず、撹拌も良好であった。また、滴下途中でアリールスルホン酸X-Cl-2が析出した。3時間後の反応液をHPLC分析したところ、アリールスルホン酸X-Cl-2(98.0%)、1置換体(0.3%)であった。
反応の終結を確認後、n-ヘプタン224g(3質量倍)を73℃から60℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃まで1時間かけて冷却し、10時間撹拌した。析出したアリールスルホン酸X-Cl-2を窒素加圧ろ過し、n-ヘプタン44.8g(2質量倍)でろ取物を3回洗浄した。得られた結晶を50℃にて減圧乾燥を行い、アリールスルホン酸X-Cl-2を20.5g得た(収率:85%、LC area:98.4%、1置換体0.2%)。
【0109】
[実施例41-2] アリールスルホン酸X-PGEE-2の合成
【化34】
【0110】
窒素雰囲気下、100mL四つ口フラスコにアリールスルホン酸X-Cl-2 2.5g、脱水PGEE 15g(6質量倍)を加え、2℃まで冷却した。冷却後、DMAP 1.2g(2.3eq)、脱水NMP 6.3g(2.5質量倍)、脱水PGEE 2.5g(1質量倍)の混合溶液を2℃から7℃で11分かけて滴下し、2℃で3時間撹拌した。3時間後の反応液をHPLC分析したところ、アリールスルホン酸X-PGEE-2(93.8%)、1置換体(2.0%)、原料(0%)であった。その後、4℃に冷却した酢酸エチル23g(9.2質量倍)を加え撹拌した。5℃から8℃にて、5℃に冷却した1M塩酸12.53gを滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後5分静置した。水層を除去した後に撹拌を再開し、5℃に冷却した15質量%塩化アンモニウム水溶液12.5g(5質量倍)を再度5℃から7℃にて、滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後5分静置した。水層を除去した後に撹拌を再開し、5℃に冷却した15質量%塩化アンモニウム水溶液12.6g(5質量倍)を5℃にて滴下し、5℃にて10分撹拌を続けた後5分静置した。水層を除去した後、ジイソプロピルエーテル11.25g(4.5質量倍)を加えた。40mm桐山漏斗に酢酸エチル:ジイソプロピルエーテル=2:1(質量比)の溶液30g(12質量倍)で懸濁した中性シリカゲル60N 10g(4質量倍)を充填し、分液後の溶液をろ過した。ろ過後、さらに質量比2:1の酢酸エチル:ジイソプロピルエーテル溶液47.5g(19質量倍)でろ過し、ろ過器上のシリカゲルを洗浄した。得られた溶液を25℃で7.7g(3質量倍)まで減圧濃縮し、撹拌しながらイソプロパノール(25g、10質量倍)を滴下した。滴下後1℃まで冷却した後、1℃にて2時間撹拌した。その後析出物をろ過し、ろ取物をジイソプロピルエーテル2.5g(1質量倍)で2回洗浄した。得られた結晶を25℃にて3時間減圧真空乾燥し、アリールスルホン酸X-PGEE-2を3.4g得た(収率:78.9%、LC area:98.0%)、1置換体(0.4%)。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ0.88-0.96(m、6H)、1.31、1.33、1.38、1.40(each s、6H)、3,23-3,51(m、8H)、4.74-4.90(m、2H)、7.24(d,J=1.2Hz,1H)、8.20(d、J=9.0、1.8Hz,1H)、8.43(s,1H)、8.55(d,J=9.0Hz,1H)、8.67(d,J=1.8Hz,1H)
LC/MS(ESI+) m/z 693.1043[M+H]+