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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097145
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】非接触プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20240710BHJP
   G01C 3/00 20060101ALI20240710BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G01C3/06 110A
G01C3/00 120
G01C3/06 140
G01B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000435
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 利久
(72)【発明者】
【氏名】田村 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】上島 泰
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065EE02
2F065FF09
2F065FF11
2F065GG06
2F065HH03
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL13
2F065LL62
2F065MM16
2F065QQ28
2F112AA09
2F112BA12
2F112CA12
2F112DA08
2F112DA15
2F112DA25
2F112GA01
(57)【要約】
【課題】温度変化が生じても結像位置を適切に検出する。
【解決手段】非接触プローブ10は、測定対象物にスポット状のレーザ光を走査する照射部20と、測定対象物で反射されたレーザ光を複数の画素列から構成される受光面のうち選択された複数の画素列で撮像して撮像画像を生成する撮像部30と、撮像画像におけるレーザ光の結像位置を検出する位置検出部41と、結像位置が選択された複数の画素列に含まれるように、選択された複数の画素列を変更する画素列変更部42を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物にスポット状のレーザ光を走査する照射部と、
前記測定対象物で反射された前記レーザ光を複数の画素列から構成される受光面のうち選択された複数の画素列で撮像して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像における前記レーザ光の結像位置を検出する位置検出部と、
前記結像位置が前記選択された複数の画素列に含まれるように、前記選択された複数の画素列を変更する画素列変更部と、
を備える、非接触プローブ。
【請求項2】
前記画素列変更部は、前記結像位置が前記選択された複数の画素列において画素の列方向と直交する直交方向での中心に位置するように、前記選択された複数の画素列を変更する、
請求項1に記載の非接触プローブ。
【請求項3】
前記画素列変更部が前記画素列を変更した際の結像位置が、前記位置検出部が前回検出した結像位置から前記列方向及び前記直交方向に移動した移動量から、前記測定対象物との距離を補正する距離補正部を更に備える、
請求項2に記載の非接触プローブ。
【請求項4】
前記画素列変更部が前記画素列を変更した際の結像位置が、前記位置検出部が前回検出した結像位置から移動した移動方向に基づいて、外部温度の温度上昇と温度下降を判別する温度判別部を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の非接触プローブ。
【請求項5】
温度センサが検出した前記外部温度を取得する温度取得部を更に備え、
前記温度判別部は、
前記移動方向が画素の列方向と直交する直交方向における第1向きである場合には、前記温度取得部が取得した前記外部温度が上昇中であると判別し、
前記移動方向が前記第1向きとは逆側の第2向きである場合には、前記温度取得部が取得した前記外部温度の下降中であると判別する、
請求項4に記載の非接触プローブ。
【請求項6】
前記温度判別部が前記温度上昇と判別した場合に前記結像位置の温度に対応した温度補正量と、前記温度下降と判別した場合の前記結像位置の温度に対応した温度補正量とを異ならせる補正量算出部を更に備える、
請求項5に記載の非接触プローブ。
【請求項7】
前記補正量算出部が求めた前記温度補正量に基づいて、前記測定対象物との距離を補正する距離補正部を更に備える、
請求項6に記載の非接触プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物との距離を求める非接触プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ワークの測定部位にスポット状のレーザ光(ビームスポット)を走査して測定部位との距離を測定する非接触プローブを有する三次元測定機が開示されている。非接触プローブは、レーザ光を受光する受光面(具体的には、ラインセンサ)を有しており、三角測量法の原則から距離を求める際に、測定部位で反射されたレーザ光の受光面の画素列(一列の画素列)に対する結像位置によって測定部位との距離を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-189143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定中に温度変化が生じることにより、受光光学系のレンズやミラー、レンズを固定しているフレーム等が膨張または収縮することで、受光面での結像位置がずれることがある。例えば、受光面に並ぶ画素の列方向と直交する直交方向での結像位置のずれ量が、画素列の画素サイズよりも大きくなってしまうと、結像位置を検出できなくなってしまう恐れがある。なお、画素列の画素サイズを大きくすることで上記の不具合の発生を防ぐことも検討され得るが、この場合には、分解能が落ちることになる。また、対応できる結像位置のずれ量は画素サイズの範囲内に限定されるので、過大なずれ量には対応できない。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、温度変化が生じても結像位置を適切に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、測定対象物にスポット状のレーザ光を走査する照射部と、前記測定対象物で反射された前記レーザ光を複数の画素列から構成される受光面のうち選択された複数の画素列で撮像して撮像画像を生成する撮像部と、前記撮像画像における前記レーザ光の結像位置を検出する位置検出部と、前記結像位置が前記選択された複数の画素列に含まれるように、前記選択された複数の画素列を変更する画素列変更部と、を備える、非接触プローブを提供する。
【0007】
また、前記画素列変更部は、前記結像位置が前記選択された複数の画素列において画素の列方向と直交する直交方向での中心に位置するように、前記選択された複数の画素列を変更することとしてもよい。
【0008】
また、前記画素列変更部が前記画素列を変更した際の結像位置が、前記位置検出部が前回検出した結像位置から前記列方向及び前記直交方向に移動した移動量から、前記測定対象物との距離を補正する距離補正部を更に備えることとしてもよい。
【0009】
また、前記非接触プローブは、前記画素列変更部が前記画素列を変更した際の結像位置が、前記位置検出部が前回検出した結像位置から移動した移動方向に基づいて、外部温度の温度上昇と温度下降を判別する温度判別部を更に備えることとしてもよい。
【0010】
また、前記非接触プローブは、温度センサが検出した前記外部温度を取得する温度取得部を更に備え、前記温度判別部は、前記移動方向が画素の列方向と直交する直交方向における第1向きである場合には、前記温度取得部が取得した前記外部温度が上昇中であると判別し、前記移動方向が前記第1向きとは逆側の第2向きである場合には、前記温度取得部が取得した前記外部温度の下降中であると判別することとしてもよい。
【0011】
また、前記非接触プローブは、前記温度判別部が前記温度上昇と判別した場合に前記結像位置の温度に対応した温度補正量と、前記温度下降と判別した場合の前記結像位置の温度に対応した温度補正量とを異ならせる補正量算出部を更に備えることとしてもよい。
【0012】
また、前記非接触プローブは、前記補正量算出部が求めた前記温度補正量に基づいて、前記測定対象物との距離を補正する距離補正部を更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度変化が生じても結像位置を適切に検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一の実施形態に係る非接触プローブ10の構成を説明するためのブロック図である。
図2】非接触プローブ10を構成する光学的要素を簡略化して示した模式図である。
図3】エリアセンサ32において信号処理を施す有効画素列を説明するための模式図である。
図4】第1比較例に係るラインセンサ130を説明するための模式図である。
図5】第2比較例に係るラインセンサ230を説明するための模式図である。
図6】本実施形態における有効画素列の変更を説明するための模式図である。
図7】温度変化と結像位置の移動量との関係を説明するための模式図である。
図8】結像位置の移動方向から温度上昇又は温度下降の特定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<非接触プローブの構成>
一の実施形態に係る非接触プローブ10の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一の実施形態に係る非接触プローブ10の構成を説明するためのブロック図である。図2は、非接触プローブ10を構成する光学的要素を簡略化して示した模式図である。
【0017】
非接触プローブ10は、例えば測定対象物であるワークの座標を測定する座標測定装置に装着されている。非接触プローブ10は、座標測定装置においてワークに対して移動可能な移動機構に支持されている。非接触プローブ10は、レーザ光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射されたレーザ光を撮像することで、測定対象物との距離を測定する。
【0018】
非接触プローブ10は、図1に示すように、照射部20と撮像部30を有する。
照射部20は、測定対象物Wにスポット状のレーザ光を走査する。照射部20は、レーザ光を出射する光源21と、光源21を駆動する光源駆動部22と、照射光学系23を有する。
【0019】
光源21は、例えばレーザダイオードであり、光源駆動部22から印加される駆動電圧に応じた光量のレーザ光を出射する。
【0020】
照射光学系23は、光源21から出射されたレーザ光を測定対象物Wに照射する光学系である。照射光学系23は、光源21から出射されたレーザ光を平行化するコリメータレンズと、レーザ光の照射方向を変化させる照射側走査ミラー(例えばガルバノミラー等)を含む。
【0021】
撮像部30は、測定対象物Wで反射されたレーザ光であるビームスポットを複数の画素列から構成される受光面のうち選択された複数の画素列で撮像して撮像画像を生成する。撮像部30は、受光光学系31と、受光光学系31を介してレーザ光を受光するエリアセンサ32と、信号処理部33を有する。
【0022】
受光光学系31は、測定対象物Wで反射されたレーザ光をエリアセンサ32に導く光学系である。受光光学系31は、測定対象物Wで反射されたレーザ光を反射する受光側走査ミラー(例えばガルバノミラー等)と、受光側走査ミラーで反射されたレーザ光を集光する集光レンズを含む。
【0023】
エリアセンサ32は、所定領域に亘って配置された複数の画素を有しており、複数の画素は、エリアセンサ32の受光面を成す。各画素には、ビームスポットを受光可能な受光素子が設けられている。このため、エリアセンサ32の各素子は、受光量に応じた電荷を蓄積する。
【0024】
信号処理部33は、エリアセンサ32の各画素の受光素子に蓄積された電荷を順に読み出し、信号処理を施すことにより、撮像画像を生成する。信号処理部33は、エリアセンサ32の全ての画素のうちの一部の画素列(有効画素列)の受光素子に蓄積された電荷を読みだして、信号処理を施す。このように信号処理を施す有効画素列を限定することで、信号処理部33の処理時間が長くなってしまうことを防止できる。
【0025】
図3は、エリアセンサ32において信号処理を施す有効画素列を説明するための模式図である。図3に示す列方向は、各画素列の画素の配列方向を意味し、直交方向は、列方向に直交する方向を意味する。図3では、エリアセンサ32が16個の画素列で構成されているとしたが、これには限定されず、エリアセンサ32が16個よりも多い画素列で構成されていてもよい。信号処理部33は、エリアセンサ32の16個の画素列のうちの一部の画素列を有効画素列にして、有効画素列の各受光素子に蓄積された電荷を読みだして、信号処理を施す。具体的には、信号処理部33は、3つの画素列(図3では7番目、8番目、9番目)を有効にして、信号処理を施す。
【0026】
ところで、測定中に温度変化が生じることにより、受光光学系31のレンズやミラー、レンズを固定しているフレーム等が膨張または収縮することで、撮像部30の受光面での結像位置が移動することがある。例えば、受光面に並ぶ画素の列方向と直交する直交方向での結像位置の移動量が、画素列の画素サイズよりも大きくなってしまうと、結像位置を検出できなくなってしまう恐れがある。
【0027】
図4は、第1比較例に係るラインセンサ130を説明するための模式図である。図4では、移動前の結像位置が白丸(〇)で示され、移動後の結像位置が黒丸(●)で示されている。第1比較例においては、本実施形態とは異なり、一列のラインセンサ130でビームスポットを受光する。このため、図4に示すように、列方向と直交する直交方向での結像位置の移動量が、画素列の画素サイズよりも大きくなってしまうと、結像位置を検出できない。
【0028】
図5は、第2比較例に係るラインセンサ230を説明するための模式図である。図5でも、移動前の結像位置が白丸で示され、移動後の結像位置が黒丸で示されている。第2比較例では、画素サイズが第1比較例よりも横方向に大きくなっている。第2比較例では、移動後の結像位置を検出可能ではあるが、画素サイズが大きいため画素分解能が落ちることになってしまい、結像位置の移動量を精度良く求められない。また、第2比較例でも、対応できる結像位置の移動量は画素サイズの範囲内に限定されるので、過大な移動量には対応できない。
【0029】
上述した第1比較例及び第2比較例に対して、本実施形態の非接触プローブ10は、撮像画像におけるビームスポットの結像位置を検出し、結像位置が選択された複数の画素列(すなわち、有効画素列)に含まれるように、選択された有効画素列を変更する。
【0030】
図6は、本実施形態における有効画素列の変更を説明するための模式図である。図6でも、移動前の結像位置が白丸で示され、移動後の結像位置が黒丸で示されている。ここでは、変更前の有効画素列が、直交方向に連続する7番目、8番目、9番目の画素列であるものとする。結像位置が8番目の画素列から9番目の画素列に移動しているため、信号処理部33は、結像位置の移動に追従するように、8番目、9番目、10番目の画素列を有効画素列に変更する。このように、信号処理部33は、温度変化に起因する結像位置の移動にリアルタイムに追従するように、有効画素列を変更する。これにより、結像位置が有効画素列の中心に位置することになり、その後に結像位置が移動しても有効画素列から外れにくくなり、結像位置を適切に検出できる。
なお、上記では、直交方向に連続する3つの画素列が有効画素列であることとしたが、これに限定されず、例えば直交方向に連続する5つの画素列が有効画素列であることとしてもよい。
【0031】
以下では、結像位置の移動に伴い有効画素列を変更する信号処理部33の詳細構成について説明する。
【0032】
<信号処理部の詳細構成>
信号処理部33は、図1に示すように、位置検出部41と、画素列変更部42と、温度取得部43と、温度判別部44と、補正量算出部45と、距離算出部46を有する。
【0033】
位置検出部41は、撮像画像におけるレーザ光の結像位置を検出する。例えば、位置検出部41は、直前に生成した撮像画像におけるビームスポットの結像位置を検出する。位置検出部41は、有効画素列においてビームスポットを受光した画素を特定することで、結像位置を検出する。なお、ビームスポットが複数の画素に跨って受光された場合には、位置検出部41は、ビームスポットを受光した複数の画素を特定する。
【0034】
画素列変更部42は、結像位置が選択された複数の画素列に含まれるように、選択された複数の画素列を変更する。すなわち、画素列変更部42は、結像位置が移動した場合に、結像位置が有効画素列に含まれるように有効画素列をずらす。このように、結像位置の移動に応じて有効画素列が追従するように有効画素列をリアルタイムに変更することで、その後に結像位置が有効画素列から外れることを抑制できる。
【0035】
画素列変更部42は、結像位置が選択された複数の画素列において画素の列方向と直交する直交方向での中心に位置するように、選択された複数の画素列を変更する。例えば、図6に示すように、有効画素列が7番目~9番目の画素列である場合に、結像位置が8番目の画素列から9番目の画素列にずれると、画素列変更部42は、有効画素列を8番目~10番目に変更する。これにより、移動した結像位置が、変更後の有効画素列の中心(9番目の画素列の画素)に位置することになり、結像位置がその後に再度移動しても、有効画素列から外れる可能性が低くなる。
【0036】
温度取得部43は、温度センサが検出した外部温度を取得する。外部温度は、非接触プローブ10の周囲の温度であり、非接触プローブ10のレンズやミラーに影響を与える。温度センサは、例えば非接触プローブ10に設けられている。温度取得部43は、取得した外部温度を温度判別部44に出力する。なお、温度取得部43は、取得した外部温度を記憶部に記憶せず、最新の外部温度を温度判別部44に順次出力する。
【0037】
ところで、結像位置の移動(ずれ)は、温度変化に起因するが、結像位置の移動量は、温度上昇時と温度下降時で異なることが分かっている。具体的には、温度上昇時の温度変化量と、温度下降時の温度変化量が同一であっても、図7に示すように、結像位置の移動特性が異なる。
【0038】
図7は、温度変化と結像位置の移動量との関係を説明するための模式図である。図7には、実験から求まった、温度変化と結像位置の移動量との関係を表すグラフが示されている。外部温度が温度T1から温度T2へ上昇する場合には、結像位置の温度上昇に伴う移動量は実線L1の特性を示す。一方で、外部温度が温度T2から温度T1へ下降する場合には、結像位置の温度下降に伴う移動量は破線L2の特性を示す。図7から分かるように、実線L1と破線L2は一致しない。
【0039】
本実施形態では、結像位置の温度変化に起因する移動量をより精度良く特定するために、非接触プローブ10は、温度上昇時に結像位置が移動しているか、又は温度下降時に結像位置が移動しているかを判別する。このような判別を行うために、図1に示す温度判別部44が設けられている。
【0040】
温度判別部44は、画素列変更部42が有効画素列を変更した際の結像位置が、位置検出部41が前回検出した結像位置から移動した移動方向に基づいて、外部温度の温度上昇と温度下降を判別する。具体的には、温度判別部44は、直交方向において結像位置が移動する向きに応じて、外部温度の温度上昇と温度下降を判別する。
【0041】
図8は、結像位置の移動方向から温度上昇又は温度下降の特定方法を説明するための模式図である。図8では、説明の便宜上、有効画素列の一部のみが示されている。また、図8でも、前回検出した結像位置が白丸で示され、今回検出した結像位置が黒丸で示されている。図8(a)では結像位置が右下に移動しているため、温度判別部44は温度上昇中であると判定する。一方で、図8(b)では結像位置が左上に移動しているため、温度判別部44は温度下降中であると判定する。
【0042】
上記のように、温度判別部44は、結像位置の移動方向が直交方向における第1向き(具体的には、右向き)である場合には、温度取得部43が取得した外部温度が上昇中であると判別する。一方で、温度判別部44は、結像位置の移動方向が第1向きとは逆側の第2向き(具体的には、左向き)である場合には、温度取得部43が取得した外部温度の下降中であると判別する。これにより、温度判別部44は、外部温度の変化を記憶しなくても、結像位置が移動した際に外部温度が上昇中か下降中であるかをリアルタイムに判別できる。なお、第1向きと第2向きは、非接触プローブ10の特性等から予め設定されている。
【0043】
補正量算出部45は、結像位置が移動した際に、結像位置に基づいて測定対象物との距離を算出するための補正量を算出する。例えば、補正量算出部45は、画素列変更部42が図6に示すように有効画素列を変更した場合に、有効画素列の変更に応じた補正量を算出する。
【0044】
補正量算出部45は、画素列変更部42が画素列を変更した際の結像位置が、位置検出部41が前回検出した結像位置から列方向及び直交方向に移動した移動量から、測定対象物Wとの距離を補正する補正量を算出する。例えば、補正量算出部45は、温度変化に起因して結像位置が図8(a)に示すように移動すると、直交方向の移動量X1と列方向の移動量Y1から、補正量を算出する。同様に、補正量算出部45は、結像位置が図8(b)に示すように移動すると、直交方向の移動量X2と列方向の移動量Y2から、補正量を算出する。
【0045】
また、補正量算出部45は、温度判別部44による判別結果に基づいて、測定対象物Wとの距離を補正する温度補正量を算出してもよい。補正量算出部45は、温度判別部44によって温度上昇と判別された場合の結像位置の温度に対応した温度補正量と、温度判別部44によって温度下降と判別された場合の結像位置の温度に対応した温度補正量とを異ならせる。例えば、補正量算出部45は、温度上昇と判別された場合の温度補正量を、温度下降と判別された場合の温度補正量よりも大きくする。これにより、図7に示す温度変化と移動量の変化に対応した温度補正量を求めることができる。なお、温度補正量の値は、予めキャリブレーションされている。
【0046】
距離算出部46は、位置検出部41が撮像画像中で検出した結像位置に基づいて、測定対象物Wとの距離を算出する。なお、距離算出部46が算出する測定対象物Wとの距離は、結像位置が図3に示す列方向の上側に位置するほど短くなり、結像位置が列方向の下側に位置するほど長くなる。
【0047】
距離算出部46は、位置検出部41が検出した結像位置に、補正量算出部45が求めた補正量を加えて、測定対象物Wとの距離を算出する距離補正部として機能する。例えば、距離算出部46は、画素列変更部42が有効画素列を変更した際の結像位置の列方向及び直交方向の移動量に対応した補正量から、測定対象物Wとの距離を補正する。
【0048】
また、距離算出部46は、位置検出部41が検出した結像位置に、補正量算出部45が求めた温度補正量を加えて、測定対象物Wとの距離を算出する。例えば、距離算出部46は、温度判別部44によって温度上昇中であると判定された場合には温度上昇に対応した温度補正量に基づいて測定対象物Wとの距離を補正し、温度判別部44によって温度下降中であると判定された場合には温度下降に対応した温度補正量に基づいて測定対象物Wとの距離を補正する。上記のように測定対象物Wとの距離を算出することで、温度変化が生じても、測定対象物Wとの距離を精度良く算出できる。
【0049】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の非接触プローブ10は、撮像画像におけるレーザ光(ビームスポット)の結像位置を検出し、結像位置が選択された複数の画素列(すなわち、有効画素列)に含まれるように、選択された有効画素列を変更する。
これにより、温度変化に起因して結像位置が移動しても、結像位置の移動にリアルタイムに追従するように有効画素列を変更することで、結像位置が有効画素列の中心に位置することになり、結像位置がその後に再度移動しても、有効画素列から外れる可能性が低くなる。この結果、温度変化が生じても結像位置を適切に検出し続けることができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
10 非接触プローブ
20 照射部
30 撮像部
41 位置検出部
42 画素列変更部
43 温度取得部
44 温度判別部
45 補正量算出部
46 距離算出部
W 測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8