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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009716
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】シャント抵抗を用いた電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20240116BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R15/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111455
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】591198320
【氏名又は名称】株式会社TERADA
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】吉野 國由
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 将司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽通
(72)【発明者】
【氏名】金子 晋久
(72)【発明者】
【氏名】堂前 篤志
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA08
2G025AB05
2G025AC01
2G035AA03
2G035AB03
2G035AC02
2G035AD10
2G035AD13
2G035AD14
2G035AD20
2G035AD23
2G035AD28
2G035AD54
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】複数のシャント抵抗を用いた電流検出装置において、簡易な構成にてローコスト化を実現すると共に、ノイズ耐性を向上させる。
【解決手段】電流検出装置1Aの検出回路10a-1は、第1増幅率にてシャント抵抗S1,S2の電圧を加算増幅し、検出回路10a-2は、第1増幅率よりも高い第2増幅率にてシャント抵抗S1,S2の電圧を加算増幅する。電圧検出回路11aは、検出回路10a-1の出力電圧が飽和電圧VS以上の場合、検出回路10a-2をシャットダウンする。マイコン12Aは、検出回路10a-1,10a-2の出力電圧を電流値Ia1,Ia2に換算し、電流値Ia1が電流値IS以上の場合、電流値Ia1を選択し、電流値Ia1が電流値IS未満の場合、電流値Ia2を選択し、温度補正後の電流値Iaを求める。マイコン12Aは、同様にして第2系統の電流値Ibを求め、電流値Ia,Ibを加算し、測定電流値を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に流れる電流を検出する電流検出装置において、
前記負荷に流れる電流の経路上に接続された2以上の所定数のシャント抵抗と、
前記2以上の所定数のシャント抵抗におけるそれぞれの検出電圧を、所定の第1増幅率にて加算増幅し、第1増幅電圧を出力する第1検出回路と、
前記2以上の所定数のシャント抵抗におけるそれぞれの検出電圧を、前記第1増幅率よりも高い第2増幅率にて加算増幅し、第2増幅電圧を出力する第2検出回路と、
前記第1検出回路により出力された前記第1増幅電圧に基づいて、第1電流値を求め、前記第2検出回路により出力された前記第2増幅電圧に基づいて、第2電流値を求め、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力し、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する制御部と、
を備えたことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出装置において、
さらに、前記第1検出回路により出力された前記第1増幅電圧が前記第2検出回路の予め設定された飽和電圧以上である場合、前記第2検出回路をシャットダウンするための制御信号を出力する電圧検出回路を備えたことを特徴とする電流検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記2以上の所定数のシャント抵抗、前記第1検出回路及び前記第2検出回路からなる系統を複数備え、
前記制御部は、
前記複数の系統のそれぞれについて、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を系統電流値とし、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記系統電流値とし、
前記複数の系統のそれぞれの前記系統電流値を加算し、加算後の電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する、ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電流検出装置において、
前記2以上の所定数のシャント抵抗、前記第1検出回路、前記第2検出回路及び前記電圧検出回路からなる系統を複数備え、
前記制御部は、
前記複数の系統のそれぞれについて、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を系統電流値とし、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記系統電流値とし、
前記複数の系統のそれぞれの前記系統電流値を加算し、加算後の電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する、ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電流検出装置において、
前記制御部は、
前記複数の系統のそれぞれについて、前記系統電流値のばらつきを求め、前記ばらつきに基づいて異常を検出する、ことを特徴とする電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗を用いた電流検出装置に関し、特に、シャント抵抗を多数組み合わせることで、大電流を広範囲かつ高精度に検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーの効率的な利用に対する需要の高まりにより、太陽光発電、燃料電池等の分散型電源、電気自動車等の直流機器の普及が進んでいる。サーバ、データストレージ等の通信装置が動作するデータセンターでは、直流電力の大量消費が行われており、例えば直流48V及び1000A以上の分電盤が多数存在する。このような分電盤の主回路の電流を測定するために、シャント抵抗を用いた電流検出装置が知られている。
【0003】
しかしながら、シャント抵抗を用いた電流検出装置は、50mV定格の機器が多く、例えば1000Aを測定すると、シャント抵抗の消費電力は50Wとなり、発熱量が大きくなってしまう。また、シャント抵抗を並列に接続し、抵抗値を小さくした場合、接続部の抵抗値の影響が大きくなるため、温度等の影響を受けて測定精度が下がってしまう。さらに、シャント抵抗を用いた電流検出装置は、一般にサイズが大きく、設置が困難である。
【0004】
このような問題を解決するために、分電盤の主回路を流れる大電流を広範囲に測定し、かつ、分電盤内のブスバー(導体板)に容易に取り付け可能な複数のシャント抵抗を備えたシャントモジュールが知られている(例えば非特許文献1を参照)。
【0005】
また、大電流を広範囲に測定すると共に、小電流の検出精度を向上させる電流検出装置も知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1の電流検出装置は、測定電流の経路上に接続されたシャント抵抗、シャント抵抗の検出電圧を増幅する第1増幅回路、第1増幅回路の出力電圧を増幅する第2増幅回路、及び測定対象の電流を求める制御部を備え、制御部が小電流を精度高く測定するものである。
【0007】
具体的には、制御部は、第1増幅回路の出力電圧に基づいて第1電流値を求め、第2増幅回路の出力電圧に基づいて第2電流値を求める。そして、制御部は、電流値の広い範囲において、第1電流値を測定電流値として選択し、電流値が小さく狭い範囲において、第2電流値を測定電流値として選択する。
【0008】
ここで、第1電流値は、第1増幅回路の出力電圧に基づいて求められ、第2電流値は、第1増幅回路の出力電圧が増幅された電圧値(第2増幅回路の出力電圧)に基づいて求められる。これにより、電流値の小さく狭い範囲において、第2電流値の分解能を第1電流値よりも高くすることができ、小電流の検出精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-1795号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Harumichi Kato,etc,“Shunt Module Development for Simple DC High-Current Measurements”,IEEE,2018 Conference on Precision Electromagnetic Measurements(CPEM 2018),8-13 July 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1の電流検出装置は、シャント抵抗毎に、その検出電圧を増幅するための増幅回路だけでなく、増幅回路の出力電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換するADC(アナログデジタルコンバータ)、及びデジタルの電圧値を電流値に換算する電圧電流換算部等が必要となる。シャント抵抗毎にこれらの構成部品が必要であるため、部品点数が多くなってコストがかかり、処理負荷も高くなるという問題があった。
【0012】
また、特許文献1の電流検出装置は、1個のシャント抵抗を用いるものであるため、発熱量が大きくなってしまう。また、この電流検出装置は、第1増幅器及び第2増幅器が直列に接続されているため、例えば第1増幅器がノイズの影響を受けた場合、必然的にその影響が第2増幅器へ及んでしまう。このため、ノイズに対して頑健でなく、精度の高い小電流を得ることができない場合があるという問題があった。
【0013】
ここで、特許文献1の電流検出装置に、非特許文献1における複数のシャント抵抗を備えたシャントモジュールを組み合わせた装置を想定する。そうすると、複数のシャント抵抗を用いることになり、抵抗値が小さくて済むため、発熱量が大きくなるという問題を解決することができる。
【0014】
しかしながら、この組み合わせの電流検出装置は、シャント抵抗毎に、第1増幅回路及び第2増幅回路の2つの増幅回路が必要となるだけでなく、シャント抵抗毎に、2つのADC及び2つの電圧電流換算部等が必要となる。このため、部品点数が多くなってコストがかかり、処理負荷も高くなるという問題を解決することができない。
【0015】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のシャント抵抗を用いた電流検出装置において、簡易な構成にてローコスト化を実現可能な電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、請求項1の電流検出装置は、負荷に流れる電流を検出する電流検出装置において、前記負荷に流れる電流の経路上に接続された2以上の所定数のシャント抵抗と、前記2以上の所定数のシャント抵抗におけるそれぞれの検出電圧を、所定の第1増幅率にて加算増幅し、第1増幅電圧を出力する第1検出回路と、前記2以上の所定数のシャント抵抗におけるそれぞれの検出電圧を、前記第1増幅率よりも高い第2増幅率にて加算増幅し、第2増幅電圧を出力する第2検出回路と、前記第1検出回路により出力された前記第1増幅電圧に基づいて、第1電流値を求め、前記第2検出回路により出力された前記第2増幅電圧に基づいて、第2電流値を求め、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力し、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項2の電流検出装置は、請求項1に記載の電流検出装置において、さらに、前記第1検出回路により出力された前記第1増幅電圧が前記第2検出回路の予め設定された飽和電圧以上である場合、前記第2検出回路をシャットダウンするための制御信号を出力する電圧検出回路を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項3の電流検出装置は、請求項1に記載の電流検出装置において、前記2以上の所定数のシャント抵抗、前記第1検出回路及び前記第2検出回路からなる系統を複数備え、前記制御部が、前記複数の系統のそれぞれについて、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を系統電流値とし、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記系統電流値とし、前記複数の系統のそれぞれの前記系統電流値を加算し、加算後の電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の電流検出装置は、請求項2に記載の電流検出装置において、前記2以上の所定数のシャント抵抗、前記第1検出回路、前記第2検出回路及び前記電圧検出回路からなる系統を複数備え、前記制御部が、前記複数の系統のそれぞれについて、前記第1電流値が相対的に大きい範囲では、前記第1電流値を系統電流値とし、前記第1電流値が相対的に小さい範囲では、前記第2電流値を前記系統電流値とし、前記複数の系統のそれぞれの前記系統電流値を加算し、加算後の電流値を前記負荷に流れる電流の値として出力する、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項5の電流検出装置は、請求項3または4に記載の電流検出装置において、前記制御部が、前記複数の系統のそれぞれについて、前記系統電流値のばらつきを求め、前記ばらつきに基づいて異常を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、複数のシャント抵抗を用いた電流検出装置において、簡易な構成にてローコスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1~4の電流検出装置に用いるシャントモジュールの正面図(A)及び断面図(B)である。
図2】実施例1の電流検出装置の構成例を示す図である。
図3】検出回路の構成例を示す回路図である。
図4】バイアス回路の入出力特性を示す図である。
図5】電圧検出回路の構成例を示すブロック図である。
図6】電圧検出回路の処理例を示すフローチャートである。
図7】マイコンの構成例を示すブロック図である。
図8】選択部の処理例を示すフローチャートである。
図9】実施例2の電流検出装置の構成例を示す図である。
図10】実施例3の電流検出装置の構成例を示す図である。
図11】実施例4の電流検出装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔シャントモジュール〕
まず、実施例1~4の電流検出装置に用いるシャントモジュールについて説明する。図1は、シャントモジュールの正面図(A)及び断面図(B)である。
【0024】
図1(A)は、シャントモジュール100及びブスバー110(110-1,110-2)を上部から見た図である。図1(B)は、シャントモジュール100及びブスバー110(110-1,110-2)を側面から見た図であり、図1(A)の部分PP’の断面を示している。
【0025】
このシャントモジュール100は、4本のシャントバー101(101-1,・・・,101-4)、8本の検出端子102、2個のプリント基板105(105a,105b)、2個のコネクタ106(106a,106b)、2個の温度センサ108(108a,108b)等を備えて構成される。尚、シャントバー101-4及び当該シャントバー101-4に用いる2本の検出端子102は、図1(A)及び(B)には表れていない。
【0026】
シャントモジュール100は、4本のシャントバー101が並列に配置され、それぞれの両端にて図面の手前から見て右側のブスバー110-1及び左側のブスバー110-2に接続されている。2本のシャントバー101(101-1,101-2)(101-3,101-4)を一組として、ブスバー110-1,110-2の両面に、ボルト103及びナット104を用いて共締めにて固定されている。尚、4本のシャントバー101が、ブスバー110-1,110-2の片面のみに固定されるようにしてもよい。
【0027】
シャントモジュール100の上部(図面の手前側)には、2本のシャントバー101-1,101-2、4本の検出端子102、1個のプリント基板105a、1個のコネクタ106a、1個の温度センサ108a等が設けられている。
【0028】
また、シャントモジュール100の下部(図面の奥側)には、2本のシャントバー101-3,101-4、4本の検出端子102、1個のプリント基板105b、1個のコネクタ106b、1個の温度センサ108b等が設けられている。
【0029】
シャントバー101は、抵抗体を用いて電流をセンシングする部分であり、抵抗体である抵抗素子107を備えており、抵抗素子107近くに設けられた2本の検出端子102を介してプリント基板105に電気的に接続される。センシングされた電流は検出電圧として、検出端子102、プリント基板105及びコネクタ106を介して、後述する検出回路10へ送られる。
【0030】
温度センサ108は、周辺温度が反映された電流をセンシングする部分であり、検出対象(測定対象)の電流をシャントバー101におけるシャント抵抗の温度特性に合わせて補正するためのものであり、上部のシャントバー101-1,101-2用に1本の温度センサ108aが設けられ、下部のシャントバー101-3,101-4用に1本の温度センサ108bが設けられている。センシングされた電流は、プリント基板105及びコネクタ106を介して、後述する検出回路10へ送られる。
【0031】
スペーサ109は、シャントバー101とプリント基板105との間のスペースを確保するために設けられている。
【0032】
ここで、シャントモジュール100の上部に設けられたシャントバー101-1の抵抗をシャント抵抗S1、シャントバー101-2の抵抗をシャント抵抗S2とする。また、下部に設けられたシャントバー101-3の抵抗をシャント抵抗S3、シャントバー101-4の抵抗をシャント抵抗S4とする。
【0033】
図1に示した例では、シャントバー101及びブスバー110を固定するボルト103及びナット104は、1本のブスバー110の片側に対して、1組のボルト103及びナット104を用いるようにしたが、2組以上のボルト103及びナット104を用いるようにしてもよい。多くの組数のボルト103及びナット104を用いることで、接触抵抗が小さくなり、シャント抵抗S1,・・・,S4における通電電流のばらつきを小さくすることができる。
【0034】
以下、図1に示したシャントモジュール100を用いた電流検出装置について説明する。
【0035】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、1系統あたり並列に接続された2個のシャント抵抗を有する合計2系統の電流検出手段を備え、各系統では、第1増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第1検出回路と、第1増幅率よりも高い第2増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第2検出回路とが並列に接続されており、系統毎の電流検出手段にて検出した電流値を加算することで、測定電流値を求める例である。
【0036】
(電流検出装置/実施例1)
図2は、実施例1の電流検出装置の構成例を示す図である。この電流検出装置1Aは、電源200に接続された負荷201に流れる電流を、電源200のプラス側の端子と負荷201の片側の端子との間の電流の経路上に並列に接続された4個のシャント抵抗S1,・・・,S4を用いて検出する。尚、シャント抵抗S1,・・・,S4は、電源200のマイナス側の端子に接続される場合もある。
【0037】
電流検出装置1Aは、第1系統の電流検出手段、第2系統の電流検出手段及びマイコン(制御部)12Aを備えている。
【0038】
第1系統の電流検出手段は、2個のシャント抵抗S1,S2、プリント基板105a、コネクタ106a、温度センサ108a、検出回路10a-1,10a-2及び電圧検出回路11aを備えている。シャント抵抗S1の両端は、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して、検出回路10a-1,10a-2の入力端子に接続され、シャント抵抗S2の両端も同様である。温度センサ108aは、コネクタ106aを介してマイコン12Aの入力端子に接続される。
【0039】
検出回路10a-1の出力端子は、電圧検出回路11aの入力端子、及びマイコン12Aの入力端子に接続され、電圧検出回路11aの出力端子は、検出回路10a-2の入力端子に接続される。
【0040】
第2系統の電流検出手段は、2個のシャント抵抗S3,S4、プリント基板105b、コネクタ106b、温度センサ108b、検出回路10b-1,10b-2及び電圧検出回路11bを備えている。シャント抵抗S3の両端は、プリント基板105b及びコネクタ106bを介して、検出回路10b-1,10b-2の入力端子に接続され、シャント抵抗S4の両端も同様である。温度センサ108bは、コネクタ106bを介してマイコン12Aの入力端子に接続される。
【0041】
検出回路10b-1の出力端子は、電圧検出回路11bの入力端子、及びマイコン12Aの入力端子に接続され、電圧検出回路11bの出力端子は、検出回路10b-2の入力端子に接続される。
【0042】
検出回路10a-1は、シャント抵抗S1の検出電圧(電圧V1)及びシャント抵抗S2の検出電圧(電圧V2)を、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して入力する。検出回路10a-1は、シャント抵抗S1の電圧V1及びシャント抵抗S2の電圧V2を、予め設定された第1増幅率にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、増幅電圧VADa1を求める。増幅電圧VADa1は、電圧検出回路11a及びマイコン12Aに出力される。
【0043】
検出回路10a-2は、検出回路10a-1に比べて電流値が小さい範囲を扱う回路であり、電圧ゲインが検出回路10a-1よりも高くなるように設定されている。これにより、電流値が小さい範囲の低電流域において、電流値の分解能を高く設定することができる。
【0044】
検出回路10a-2は、シャント抵抗S1の電圧V1及びシャント抵抗S2の電圧V2を、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して入力すると共に、電圧検出回路11aからオンまたはオフの制御信号を入力する。
【0045】
検出回路10a-2は、オンの制御信号を入力している限り、通常どおりの加算増幅及びバイアス処理を行うように動作する(通常動作を行う)。一方、検出回路10a-2は、オフの制御信号を入力すると、当該検出回路10a-2による通常動作をシャットダウンし、後述するオペアンプ31の出力をハイインピーダンス状態とすることでゼロ電圧とし、低電流域の増幅電圧VADa2の信号として電圧Vrefの信号を出力する。これにより、後述するマイコン12Aは、検出回路10a-2からの低電流域の増幅電圧VADa2の信号として、過大電圧の信号の入力を回避することができる。
【0046】
検出回路10a-2は、通常動作において、シャント抵抗S1の電圧V1及びシャント抵抗S2の電圧V2を、第1増幅率よりも高い予め設定された第2増幅率にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、低電流域の増幅電圧VADa2を求める。低電流域の増幅電圧VADa2は、マイコン12Aに出力される。設計仕様により異なるが、第2増幅率は、例えば第1増幅率に対して10倍の値が用いられる。
【0047】
電圧検出回路11aは、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力し、増幅電圧VADa1が予め設定された飽和電圧VS以上であるか否かを判定する。電圧検出回路11aは、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS以上であると判定した場合、オフの制御信号を検出回路10a-2に出力する。これにより、検出回路10a-2の通常動作はシャットダウンし、後述するオペアンプ31の出力はハイインピーダンス状態になってゼロ電圧となり、低電流域の増幅電圧VADa2の信号として電圧Vrefの信号が出力される。
【0048】
一方、電圧検出回路11aは、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS未満であると判定した場合、オンの制御信号を検出回路10a-2に出力する。これにより、検出回路10a-2は通常動作を行い、加算増幅及びバイアス処理された低電流域の増幅電圧VADa2がマイコン12Aに出力される。
【0049】
前述のとおり、検出回路10a-2の電圧ゲインは検出回路10a-1よりも高い。このため、電流値が検出回路10a-2の検出範囲(低電流域)よりも大きい場合、検出回路10a-2は飽和してしまう。
【0050】
そこで、電圧検出回路11aが増幅電圧VADa1を監視し、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS以上である場合に、オフの制御信号を検出回路10a-2に出力するようにした。これにより、検出回路10a-2の飽和を防ぐことができる。
【0051】
尚、後述するマイコン12Aにおいても、AD変換後の増幅電圧VADa1が予め設定された飽和電圧VS以上であるか否かを判定し、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS以上である場合に、オフの制御信号を検出回路10a-2に出力することができる。しかし、マイコン12Aによる判定処理は、電圧検出回路11aよりも時間がかかるため、オフの制御信号の出力タイミングが遅れ、検出回路10a-2を飽和させてしまうことがあり得る。この場合、結果として、精度の高い測定電流値を得ることができない。そこで、電圧検出回路11aがこの判定処理を行うことにより、オフの制御信号を検出回路10a-2に迅速に出力することで、検出回路10a-2の飽和を確実に防ぎ、精度の高い測定電流値を確実に得るようにした。
【0052】
第2系統の検出回路10b-1,10b-2及び電圧検出回路11bは、第1系統の検出回路10a-1,10a-2及び電圧検出回路11aに対応し、それぞれ同様に動作する。
【0053】
検出回路10b-1は、シャント抵抗S3,S4の検出電圧(電圧V3,V4)を、プリント基板105b及びコネクタ106bを介して入力し、電圧V3,V4を、予め設定された第1増幅率(検出回路10a-1と同じ第1増幅率)にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、増幅電圧VADb1を求める。低電流域の増幅電圧VADb1は、電圧検出回路11b及びマイコン12Aに出力される。
【0054】
検出回路10b-2は、シャント抵抗S3,S4の電圧V3,V4を、プリント基板105b及びコネクタ106bを介して入力し、電圧V3,V4を、第1増幅率よりも高い予め設定された第2増幅率(検出回路10a-2と同じ第2増幅率)にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、電流値が小さい範囲の低電流域の増幅電圧VADb2を求める。増幅電圧VADb2は、マイコン12Aに出力される。
【0055】
検出回路10b-2は、電圧検出回路11bからオンまたはオフの制御信号を入力し、オンの制御信号を入力している限り、通常どおりの加算増幅及びバイアス処理を行うように動作する(通常動作を行う)。一方、検出回路10b-2は、オフの制御信号を入力すると、前述の検出回路10a-2と同様に、当該検出回路10b-2による通常動作をシャットダウンして後述するオペアンプ31の出力をハイインピーダンス状態にすることで出力電圧がゼロ電圧になり、低電流域の増幅電圧VADb2の信号として電圧Vrefの信号を出力する。
【0056】
電圧検出回路11bは、検出回路10b-1から増幅電圧VADb1を入力し、増幅電圧VADb1が予め設定された飽和電圧VS以上である場合、オフの制御信号を検出回路10b-2に出力する。一方、電圧検出回路11bは、増幅電圧VADb1が予め設定された飽和電圧VS未満である場合、オンの制御信号を検出回路10b-2に出力する。
【0057】
このように、電圧検出回路11bが増幅電圧VADb1を監視し、増幅電圧VADb1が飽和電圧VS以上である場合に、オフの制御信号を検出回路10b-2に出力することで、検出回路10b-2の飽和を防ぐことができる。
【0058】
マイコン12Aは、第1系統について、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力すると共に、検出回路10a-2から低電流域の増幅電圧VADa2を入力し、さらに、温度センサ108aから温度センサ信号Taを入力する。
【0059】
マイコン12Aは、増幅電圧VADa1、低電流域の増幅電圧VADa2及び温度センサ信号Taを、ADC20a-1,20a-2,20a-3にてAD変換してデジタル信号をそれぞれ生成し、電圧値のデジタル信号については電流の大きさを示す電流値にそれぞれ換算する。そして、マイコン12Aは、増幅電圧VADa1から換算された電流値が予め設定された電流値以上の所定範囲において、検出回路10a-1側の電流値(増幅電圧VADa1から換算された電流値)を選択し、電流値が予め設定された電流値よりも小さい所定範囲において、検出回路10a-2側の電流値(低電流域の増幅電圧VADa2から換算された電流値)を選択する。
【0060】
マイコン12Aは、温度センサ信号Taに基づいて、選択した電流値をシャント抵抗S1,S2の温度特性に合わせて補正し、第1系統の電流値Iaを求める。
【0061】
また、マイコン12Aは、第2系統について、検出回路10b-1から増幅電圧VADb1を入力すると共に、検出回路10b-2から低電流域の増幅電圧VADb2を入力し、さらに、温度センサ108bから温度センサ信号Tbを入力する。そして、マイコン12Aは、第1系統と同様の処理を行い、第2系統の電流値Ibを求める。
【0062】
マイコン12Aは、第1系統の電流値Ia及び第2系統の電流値Ibを加算し、加算結果を負荷201に流れる電流の値、すなわち測定電流値として出力する。
【0063】
(検出回路10a-1)
次に、図2に示した検出回路10a-1について詳細に説明する。尚、検出回路10b-1は、検出回路10a-1と同様の構成をなし、同様の機能を有する。検出回路10a-2,10b-2は、制御信号を入力する構成及びこれに伴う機能以外につき、検出回路10a-1と同様の構成をなし、同様の機能を有する。
【0064】
図3は、検出回路10a-1の構成例を示す回路図である。この検出回路10a-1は、加算増幅回路30及びバイアス回路40を備えている。加算増幅回路30は、オペアンプ31、抵抗32,・・・,37及びコンデンサ38,39を備えており、バイアス回路40は、オペアンプ41及び抵抗42,・・・,45を備えている。
【0065】
加算増幅回路30は、オペアンプ31の平衡増幅回路の入力側の抵抗32,33に抵抗34,35を追加し、加算増幅回路を構成している。
【0066】
ここで、抵抗32,33の抵抗値をR11、抵抗34,35の抵抗値をR12、抵抗36,37の抵抗値をR2、シャント抵抗S1の検出電圧をV1、シャント抵抗S2の検出電圧をV2、加算増幅回路30から出力される電圧(オペアンプ31の出力電圧)をV5とする。
【0067】
そうすると、加算増幅回路30から出力される電圧V5は、以下の式で表される。
[数1]
V5=-{(R2/R11)×V1+(R2/R12)×V2} ・・・(1)
例えばR11=R12とすると、加算増幅回路30による加算増幅処理の第1増幅率は、(R2/R11)となる。
【0068】
バイアス回路40は、反転増幅回路の入力にバイアス電圧(-Vref)を加算している。バイアス回路40の出力電圧(検出回路10a-1から出力される増幅電圧VADa1)は、以下の式で表される。
[数2]
ADa1=-V5+Vref ・・・(2)
【0069】
オペアンプ31には、抵抗36,37にコンデンサ38,39が並列に接続されている。コンデンサ38,39は、シャント抵抗S1,・・・,S4のインダクタンス成分による電圧上昇を抑え、不要な高周波ノイズを減衰するために設けられている。
【0070】
尚、検出回路10a-2は、検出回路10a-1と同様の構成に加え、オペアンプ31の制御端子が電圧検出回路11aの出力端子に接続されており、当該制御端子が、電圧検出回路11aから制御信号を入力するようになっている。また、検出回路10a-2に備えた加算増幅回路30の第2増幅率は、検出回路10a-1に備えた加算増幅回路30の第1増幅率よりも高くなるように、検出回路10a-2における抵抗値R11,R12,R2及び検出回路10a-1における抵抗値R11,R12,R2が予め設定される。
【0071】
検出回路10b-2も検出回路10a-2と同様であり、オペアンプ31の制御端子が電圧検出回路11bの出力端子に接続されており、当該制御端子が、電圧検出回路11bから制御信号を入力するようになっている。また、検出回路10b-2に備えた加算増幅回路30の第2増幅率は、検出回路10b-1に備えた加算増幅回路30の第1増幅率よりも高くなるように、それぞれの抵抗値R11,R12,R2が予め設定される。
【0072】
図4は、図3に示したバイアス回路40の入出力特性を示す図である。バイアス回路40の入力電圧は、加算増幅回路30から出力される電圧V5である。図4に示すように、バイアス回路40に入力される電圧V5が-MAXから+MAXまでの間で直線的に変化した場合、バイアス回路40から出力される増幅電圧VADa1は、VADMAXから0Vまでの間で直線的に変化する。このような入出力特性は、抵抗42,・・・,45の抵抗値に応じて定められる。
【0073】
尚、オペアンプ31の出力がハイインピーダンス状態になってゼロ電圧(V5=0)になると、バイアス回路40の出力電圧はVref(VADa1=Vref)となる。
【0074】
(電圧検出回路11a)
次に、図2に示した電圧検出回路11aについて詳細に説明する。尚、電圧検出回路11bは、電圧検出回路11aと同様の構成をなし、同様の機能を有する。
【0075】
図5は、電圧検出回路11aの構成例を示すブロック図である。この電圧検出回路11aは、絶対整流回路50、増幅回路51、コンパレータ52及び1次遅れ回路53を備えている。
【0076】
絶対整流回路50は、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力し、増幅電圧VADa1の信号に対し所定の絶対整流処理を施し、増幅回路51は、絶対整流回路50により絶対整流処理が施された電圧信号を増幅する。
【0077】
コンパレータ52は、増幅回路51により増幅された電圧信号の値(電圧値)と予め設定された設定値とを比較し、電圧値が設定値以上である場合、オフ(0)の信号を出力し、電圧値が設定値未満である場合、オン(1)の信号を出力する。
【0078】
電圧値は、当該電圧検出回路11aが入力した増幅電圧VADa1の値に対応し、設定値は、検出回路10a-2が飽和する飽和電圧VSの値に対応する。つまり、シャント抵抗S1,S2の電圧V1,V2が検出回路10a-1にて加算増幅及びバイアス処理された増幅電圧VADa1が、検出回路10a-2の飽和電圧VS以上である場合、検出回路10a-2の通常動作をシャットダウンさせるためのオフ(0)の信号が出力される。また、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS未満である場合、検出回路10a-2に通常動作をさせるためのオン(1)の信号が出力される。
【0079】
1次遅れ回路53は、コンパレータ52により出力されたオフ(0)またはオン(1)の信号に対し、予め設定された時定数による一次遅れ処理を施し、1次遅れ処理されたオフ(0)またはオン(1)の信号を制御信号として検出回路10a-2に出力する。1次遅れ回路53により、制御信号のチャタリングを防止することができる。
【0080】
図6は、電圧検出回路11aの処理例を示すフローチャートである。電圧検出回路11aは、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力し(ステップS701)、増幅電圧VADa1と予め設定された検出回路10a-2の飽和電圧VSとを比較する(ステップS702)。
【0081】
電圧検出回路11aは、ステップS702において、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS以上である場合(ステップS702:VADa1≧VS)、オフの制御信号を検出回路10a-2に出力する(ステップS703)。これにより、検出回路10a-2の動作はシャットダウンし、オペアンプ31の出力をハイインピーダンス状態にして出力電圧がゼロ電圧になると、低電流域の増幅電圧VADa2の信号として電圧Vrefの信号を出力することができる(VADa2=Vref)。
【0082】
一方、電圧検出回路11aは、ステップS702において、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS未満である場合(ステップS702:VADa1<VS)、オンの制御信号を検出回路10a-2に出力する(ステップS704)。これにより、検出回路10a-2は通常に動作し、検出回路10a-2から低電流域の増幅電圧VADa2が出力される。
【0083】
電圧検出回路11aは、ステップS703,S704の処理の後、ステップS701へ移行し、ステップS701~S704の処理を繰り返す。
【0084】
(マイコン12A)
次に、図2に示したマイコン12Aについて詳細に説明する。図7は、マイコン12Aの構成例を示すブロック図である。
【0085】
このマイコン12Aは、第1系統の処理を行うADC(アナログデジタルコンバータ)20a-1,20a-2,20a-3、VA(電圧電流)換算部60a-1,60a-2、選択部61a及び温度補正部62a、並びに第2系統の処理を行うADC20b-1,20b-2,20b-3、VA換算部60b-1,60b-2、選択部61b及び温度補正部62bを備え、さらに、加算部63を備えている。
【0086】
ADC20a-1は、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力し、増幅電圧VADa1のアナログ信号をデジタル信号に変換し、増幅電圧VADa1のデジタル信号をVA換算部60a-1に出力する。
【0087】
VA換算部60a-1は、ADC20a-1から増幅電圧VADa1のデジタル信号を入力し、予め設定された換算規則に従い、増幅電圧VADa1のデジタル信号を電流値Ia1に換算し、電流値Ia1を選択部61aに出力する。
【0088】
ADC20a-2は、検出回路10a-2から低電流域の増幅電圧VADa2を入力し、増幅電圧VADa2のアナログ信号をデジタル信号に変換し、増幅電圧VADa2のデジタル信号をVA換算部60a-2に出力する。
【0089】
VA換算部60a-2は、ADC20a-2から増幅電圧VADa2のデジタル信号を入力し、予め設定された換算規則に従い、増幅電圧VADa2のデジタル信号を電流値Ia2に換算し、低電流域の電流値Ia2を選択部61aに出力する。
【0090】
図8は、選択部61aの処理例を示すフローチャートである。選択部61aは、VA換算部60a-1から電流値Ia1を入力すると共に、VA換算部60a-2から電流値Ia2を入力する(ステップS901)。
【0091】
選択部61aは、電流値Ia1と予め設定された電流値ISとを比較する(ステップS902)。予め設定された電流値ISとしては、図6のステップS702における予め設定された検出回路10a-2の飽和電圧VSに対応する電流値(飽和電流値)よりも低い値が用いられる。
【0092】
選択部61aは、ステップS902において、電流値Ia1が電流値IS以上であると判定した場合(ステップS902:Ia1≧IS)、電流値Ia1を有効にするために、電流値Ia1,Ia2から電流値Ia1を選択する。そして、選択部61aは、選択した電流値Ia1を第1系統の選択電流値として、温度補正部62a及び異常検出部64に出力する(ステップS903)。
【0093】
一方、選択部61aは、ステップS902において、電流値Ia1が電流値IS未満であると判定した場合(ステップS902:Ia1<IS)、電流値Ia2を有効にするために、電流値Ia1,Ia2から電流値Ia2を選択する。そして、選択部61aは、選択した電流値Ia2を第1系統の選択電流値として、温度補正部62a及び異常検出部64に出力する(ステップS904)。
【0094】
選択部61aは、ステップS903,S904の処理の後、ステップS901へ移行し、ステップS901~S904の処理を繰り返す。
【0095】
図7に戻って、ADC20a-3は、温度センサ108aから温度センサ信号Taを入力し、温度センサ信号Taのアナログ信号をデジタル信号に変換し、温度センサ信号Taのデジタル信号を温度補正部62aに出力する。
【0096】
温度補正部62aは、選択部61aから第1系統の選択電流値(電流値Ia1または低電流域の電流値Ia2)を入力すると共に、ADC20a-3から温度センサ信号Taのデジタル信号を入力する。
【0097】
温度補正部62aは、温度センサ信号Taの値に基づいて、第1系統の選択電流値を予め設定されたシャント抵抗S1,S2の温度特性に合わせて補正し、温度補正後の第1系統の選択電流値を求める。そして、温度補正部62aは、温度補正後の第1系統の選択電流値を第1系統の電流値Iaとして加算部63に出力する。
【0098】
これにより、シャント抵抗S1に流れる電流値とシャント抵抗S2に流れる電流値とを加算した電流値が、第1系統の電流値Iaとして得られる。
【0099】
また、第1系統の電流値Iaが検出範囲内において予め設定された電流値IS以上の所定範囲にある場合、第1系統の電流値Iaは、検出回路10a-1により検出された増幅電圧VADa1に対応する電流値Ia1が温度補正されることで得られた電流値であるといえる。一方、第1系統の電流値Iaが検出範囲内において予め設定された電流値ISよりも小さい所定範囲にある場合、第1系統の電流値Iaは、検出回路10a-2により検出された低電流域の増幅電圧VADa2に対応する電流値Ia2が温度補正されることで得られた電流値であるといえる。
【0100】
第2系統の処理を行うADC20b-1,20b-2,20b-3、VA換算部60b-1,60b-2、選択部61b及び温度補正部62bは、第1系統の処理を行うADC20a-1,20a-2,20a-3、VA換算部60a-1,60a-2、選択部61a及び温度補正部62aと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
ここで、ADC20b-1は検出回路10b-1から増幅電圧VADb1を入力し、ADC20b-2は検出回路10b-2から低電流域の増幅電圧VADb2を入力し、ADC20b-3は、温度センサ108bから温度センサ信号Tbを入力する。
【0102】
また、選択部61bは、第2系統の選択電流値を温度補正部62b及び異常検出部64に出力し、温度補正部62bは、温度補正後の第2系統の選択電流値を第2系統の電流値Ibとして加算部63に出力する。
【0103】
加算部63は、温度補正部62aから第1系統の電流値Iaを入力すると共に、温度補正部62bから第2系統の電流値Ibを入力し、電流値Ia,Ibを加算し、加算結果を負荷201に流れる電流の値、すなわち測定電流値として出力する。
【0104】
これにより、測定電流値が検出範囲内において予め設定された電流値以上の所定範囲にある場合、測定電流値は、検出回路10a-1,10b-1により検出された増幅電圧VADa1,VADb1に対応する電流値Ia,Ibの加算値であるため、通常の分解能の測定電流値として出力される。一方、測定電流値が検出範囲内において予め設定された電流値よりも小さい所定範囲にある場合、測定電流値は、検出回路10a-2,10b-2により検出された低電流域の増幅電圧VADa2,VADb2に対応する電流値Ia,Ibの加算値であるため、通常よりも高い分解能の測定電流値として出力される。
【0105】
異常検出部64は、選択部61aから第1系統の選択電流値を入力すると共に、選択部61bから第2系統の選択電流値を入力し、第1系統の選択電流値及び第2系統の選択電流値のそれぞれについて、ばらつきの程度を求める。
【0106】
異常検出部64は、第1系統の選択電流値及び第2系統の選択電流値のそれぞれについて、ばらつきの程度が予め設定されたばらつき設定値未満である場合、当該系統のシャント抵抗は正常であると判定する。一方、異常検出部64は、ばらつきの程度が予め設定されたばらつき設定値以上である場合、当該系統のシャント抵抗が異常(破損している、または断線している等)であると判定し、これを示す異常信号を出力する。
【0107】
第1系統の選択電流値及び第2系統の選択電流値についてのばらつきの程度に基づいて、異常を判定するようにしたのは、シャント抵抗S1,・・・,S4に流れる電流にばらつきを生じるが、その割合は大きく変動することがないからである。
【0108】
例えば異常検出部64は、第1系統及び第2系統について、いずれもばらつきの程度がばらつき設定値未満である場合、シャント抵抗S1,・・・,S4及び当該電流検出装置1Aが正常であると判定する。また、異常検出部64は、第1系統について、ばらつきの程度がばらつき設定値以上である場合、シャント抵抗S1,S2が異常であると判定し、これを示す異常信号を出力する。また、異常検出部64は、第1系統及び第2系統について、いずれもばらつきの程度がばらつき設定値以上である場合、シャント抵抗S1,・・・,S4及び当該電流検出装置1Aが異常であると判定し、これを示す異常信号を出力する。このように、異常検出部64にて、系統毎にシャント抵抗の破損、断線等の異常を検出することができる。
【0109】
尚、異常検出部64は、選択部61a,61bから第1系統及び第2系統の選択電流値を入力する代わりに、温度補正部62a,62bから第1系統及び第2系統の電流値Ia,Ibを入力し、電流値Ia,Ibのそれぞれについて、ばらつきの程度を求めて異常を検出するようにしてもよい。
【0110】
以上のように、実施例1の電流検出装置1Aによれば、1系統あたり並列に接続された2個のシャント抵抗(第1系統ではシャント抵抗S1,S2、第2系統ではシャント抵抗S3,S4)を有する合計2系統の電流検出手段を備える。
【0111】
第1系統では、検出回路10a-1,10a-2が並列に接続されており、検出回路10a-1は、第1増幅率にてシャント抵抗S1,S2の検出電圧を加算増幅して増幅電圧VADa1を検出し、検出回路10a-2は、第1増幅率よりも高い第2増幅率にてシャント抵抗S1,S2の検出電圧を加算増幅し、低電流域の増幅電圧VADa2を検出する。
【0112】
電圧検出回路11aは、増幅電圧VADa1が予め設定された飽和電圧VS以上である場合、オフの制御信号を出力することで、検出回路10a-2の通常動作をシャットダウンする。一方、電圧検出回路11aは、増幅電圧VADa1が飽和電圧VS未満である場合、オンの制御信号を出力することで、検出回路10a-2に通常動作を行わせる。
【0113】
マイコン12Aは、増幅電圧VADa1及び低電流域の増幅電圧VADa2をAD変換し、増幅電圧VADa1及び低電流域の増幅電圧VADa2を電流値Ia1,Ia2に換算する。そして、マイコン12Aは、電流値Ia1が予め設定された電流値IS以上である場合(電流値Ia1の検出範囲内において相対的に大きい範囲では)、電流値Ia1を選択し、電流値Ia1が電流値IS未満である場合(電流値Ia1の検出範囲内において相対的に小さい範囲では)、電流値Ia2を選択し、選択した電流値Ia1,Ia2をシャント抵抗S1,S2の温度特性に合わせて補正し、第1系統の電流値Iaを求める。
【0114】
第2系統においても第1系統と同様の処理を行い、マイコン12Aは、第2系統の電流値Ibを求める。
【0115】
そして、マイコン12Aは、第1系統の電流値Ia及び第2系統の電流値Ibを加算し、加算結果を測定電流値として出力する。
【0116】
前述のとおり、特許文献1及び非特許文献1を組み合わせた電流検出装置を想定すると、シャント抵抗毎に、第1増幅回路及び第2増幅回路(検出回路10a-1及び検出回路10a-2に対応)の2つの回路が必要となるだけでなく、シャント抵抗毎に、2つのADC及び2つのVA換算部等が必要となり、部品点数が多くなってコストがかかり、処理負荷が高くなってしまう。
【0117】
これに対し、実施例1の電流検出装置1Aでは、2個のシャント抵抗S1,S2につき、2つの検出回路10a-1,10a-2、2つのADC20a-1,20a-2及び2つのVA換算部60a-1,60a-2等が必要となる。シャント抵抗S3,S4についても同様である。このため、特許文献1及び非特許文献1を組み合わせた電流検出装置に比べ、部品点数が少なくなってコストが下がり、処理負荷が低くなる。
【0118】
また、検出回路10a-1,10a-2は並列に接続されているため、一方がノイズの影響を受けたとしても、その影響が他方へ及ぶことがない。このため、第1増幅回路及び第2増幅回路が直列に接続された特許文献1の電流検出装置に比べ、ノイズに対して頑健となる。
【0119】
したがって、複数のシャント抵抗S1,・・・,S4を用いて電流を測定する場合に、簡易な構成にてローコスト化を実現すると共に、ノイズ耐性を向上させることができる。
【0120】
また、実施例1の電流検出装置1Aによれば、4個のシャント抵抗S1,・・・,S4のうち1個に流れる電流は、測定電流値の約1/4となるため、発熱量を抑えることができる。
【0121】
また、シャント抵抗S1,S2に流れる電流の加算値である第1系統の電流値Ia及びシャント抵抗S3,S4に流れる電流の加算値である第2系統の電流値Ibのそれぞれは、測定電流値の約1/2となるため、測定電流値の分解能は、測定電流値の最大値/2/(ADCの分解能)となり、測定精度を向上させることができる。
【0122】
また、仮に4個のシャント抵抗S1,・・・,S4のうちの1個のシャント抵抗が断線した場合、検出対象の電流は、断線していない他の3個のシャント抵抗に分散することとなる。(尚、シャント抵抗のそれぞれについて、測定電流の最大値を4/3倍とする必要がある。)2個または3個のシャント抵抗が断線した場合も、検出対象の電流は、他の2個または1個のシャント抵抗に分散することとなる。このため、シャント抵抗が断線したとしても、断線していないシャント抵抗が存在する限り、電流検出装置1Aによる測定電流値の検出を継続することができる。
【0123】
さらに、マイコン12Aの異常検出部64は、第1系統の選択電流値及び第2系統の選択電流値のそれぞれについて、ばらつきの程度を求め、シャント抵抗S1,・・・,S4及び当該電流検出装置1Aの異常を判定するようにした。
【0124】
これにより、シャント抵抗を多数組み合わせて電流値を広範囲かつ高精度に測定すると共に、自己診断機能も有する電流検出装置を実現することができる。
【0125】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例1は2系統の電流検出手段を備えていたが、実施例2は1系統の電流検出手段を備える。
【0126】
実施例2は、並列に接続された2個のシャント抵抗を有する1系統の電流検出手段を備え、第1増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第1検出回路と、第1増幅率よりも高い第2増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第2検出回路とが並列に接続されており、電流検出手段にて検出した電流値を測定電流値として求める例である。
【0127】
(電流検出装置/実施例2)
図9は、実施例2の電流検出装置の構成例を示す図である。この電流検出装置1Bは、電源200に接続された負荷201に流れる電流を、電源200のプラス側の端子と負荷201の片側の端子との間の電流の経路上に並列に接続された2個のシャント抵抗S1,S2を用いて検出する。
【0128】
電流検出装置1Bは、第1系統の電流検出手段及びマイコン12Bを備えている。
【0129】
第1系統の電流検出手段は、図2に示した電流検出装置1Aの第1系統の電流検出手段と同様であり、2個のシャント抵抗S1,S2、温度センサ108a、検出回路10a-1,10a-2及び電圧検出回路11aを備えている。
【0130】
第1系統の電流検出手段及びマイコン12Bにおける接続形態、並びに検出回路10a-1,10a-2及び電圧検出回路11aは、図2に示したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0131】
マイコン12Bは、検出回路10a-1から増幅電圧VADa1を入力すると共に、検出回路10a-2から低電流域の増幅電圧VADa2を入力し、さらに、温度センサ108aから温度センサ信号Taを入力する。
【0132】
マイコン12Bは、増幅電圧VADa1、低電流域の増幅電圧VADa2及び温度センサ信号Taを、ADC20a-1,20a-2,20a-3にてAD変換してデジタル信号をそれぞれ生成し、電圧値のデジタル信号については電流値にそれぞれ換算する。そして、マイコン12Bは、増幅電圧VADa1から換算された電流値が予め設定された電流値以上の所定範囲において、検出回路10a-1側の電流値(増幅電圧VADa1から換算された電流値)を選択し、電流値が予め設定された電流値よりも小さい所定範囲において、検出回路10a-2側の電流値(低電流域の増幅電圧VADa2から換算された電流値)を選択する。
【0133】
マイコン12Bは、温度センサ信号Taに基づいて、選択した電流値をシャント抵抗S1,S2の温度特性に合わせて補正し、温度補正後の電流値を測定電流値として出力する。
【0134】
マイコン12Bは、図7に示したマイコン12Aの構成のうち、ADC20a-1,20a-2,20a-3、VA換算部60a-1,60a-2、選択部61a及び温度補正部62aを備えている。温度補正部62aは、温度補正後の電流値を測定電流値として出力する。
【0135】
尚、マイコン12Bに備えたADC20a-1,20a-2,20a-3、VA換算部60a-1,60a-2、選択部61a及び温度補正部62aの処理の詳細については、マイコン12Aと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0136】
以上のように、実施例2の電流検出装置1Bによれば、並列に接続された2個のシャント抵抗S1,S2を有する1系統の電流検出手段を備える。
【0137】
これにより、実施例1の電流検出装置1Aと同様の効果を奏し、複数のシャント抵抗S1,S2を用いて電流を測定する場合に、一層簡易な構成にてローコスト化を実現すると共に、ノイズ耐性を向上させることができる。
【0138】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例1は2系統の電流検出手段を備えていたが、実施例3は4系統の電流検出手段を備える。
【0139】
実施例3は、1系統あたり並列に接続された2個のシャント抵抗を有する合計4系統の電流検出手段を備え、各系統では、第1増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第1検出回路と、第1増幅率よりも高い第2増幅率にて2個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第2検出回路とが並列に接続されており、系統毎の電流検出手段にて検出した電流値を加算することで、測定電流値を求める例である。
【0140】
(電流検出装置/実施例3)
図10は、実施例3の電流検出装置の構成例を示す図である。この電流検出装置1Cは、電源200に接続された負荷201に流れる電流を、電源200のプラス側の端子と負荷201の片側の端子との間の電流の経路上に並列に接続された8個のシャント抵抗S1,・・・,S8を用いて検出する。
【0141】
電流検出装置1Cは、第1系統の電流検出手段、第2系統の電流検出手段、第3系統の電流検出手段、第4系統の電流検出手段及びマイコン12Cを備えている。
【0142】
第1系統及び第2系統の電流検出手段は、図2に示した電流検出装置1Aの第1系統及び第2系統の電流検出手段と同様であり、第1系統及び第2系統の電流検出手段及びマイコン12Cにおける接続形態、並びに検出回路10a-1,10a-2,10b-1,10b-2及び電圧検出回路11a,11bは、図2に示したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0143】
第3系統の電流検出手段は、2個のシャント抵抗S5,S6、プリント基板105c、コネクタ106c、温度センサ108c、検出回路10c-1,10c-2及び電圧検出回路11cを備えている。また、第4系統の電流検出手段は、2個のシャント抵抗S7,S8、プリント基板105d、コネクタ106d、温度センサ108d、検出回路10d-1,10d-2及び電圧検出回路11dを備えている。
【0144】
シャント抵抗S5,・・・,S8、温度センサ108c,108d、検出回路10c-1,10c-2,10d-1,10d-2及び電圧検出回路11c,11dは、図2に示した電流検出装置1Aの第1系統及び第2系統におけるシャント抵抗S1,・・・,S4、温度センサ108a,108b、検出回路10a-1,10a-2,10b-1,10b-2及び電圧検出回路11a,11bと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0145】
マイコン12Cは、第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統の増幅電圧VADa1、低電流域の増幅電圧VADa2及び温度センサ信号Ta等を入力し、ADC20a-1,20a-2,20a-3,・・・,ADC20d-1,20d-2,20d-3にてAD変換してデジタル信号をそれぞれ生成する。
【0146】
マイコン12Cは、第1系統及び第2系統について、図7及び図8と同様の処理を行い、温度補正後の第1系統及び第2系統の電流値Ia,Ibを求める。また、マイコン12Cは、第3系統及び第4系統について、図7及び図8に示した第1系統または第2系統と同様の処理を行い、温度補正後の第3系統及び第4系統の電流値Ic,Idを求める。
【0147】
マイコン12Cは、第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統の電流値Ia,Ib,Ic,Idを加算し、加算結果を負荷201に流れる電流の値、すなわち測定電流値として出力する。
【0148】
以上のように、実施例3の電流検出装置1Cによれば、1系統あたり並列に接続された2個のシャント抵抗(第1系統ではシャント抵抗S1,S2、第2系統ではシャント抵抗S3,S4、第3系統ではシャント抵抗S5,S6、第4系統ではシャント抵抗S7,S8)を有する合計4系統の電流検出手段を備える。
【0149】
これにより、実施例1の電流検出装置1Aと同様の効果を奏する。すなわち、複数のシャント抵抗S1,・・・,S8を用いて電流を測定する場合に、簡易な構成にてローコスト化を実現すると共に、ノイズ耐性を向上させることができる。
【0150】
また、実施例3の電流検出装置1Cによれば、8個のシャント抵抗S1,・・・,S8のうち1個に流れる電流は、測定電流値の約1/8となるため、発熱量を一層抑えることができる。
【0151】
また、シャント抵抗S1,S2に流れる電流の加算値である第1系統の電流値Ia、シャント抵抗S3,S4に流れる電流の加算値である第2系統の電流値Ib、シャント抵抗S5,S6に流れる電流の加算値である第3系統の電流値Ic、及びシャント抵抗S7,S8に流れる電流の加算値である第4系統の電流値Idのそれぞれは、測定電流値の約1/4となるため、測定電流値の分解能は、測定電流値の最大値/4/(ADCの分解能)となり、測定精度を一層向上させることができる。
【0152】
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。実施例1は1系統あたり並列に接続された2個のシャント抵抗を有していたが、実施例4は1系統あたり並列に接続された4個のシャント抵抗を有する。
【0153】
実施例4は、1系統あたり並列に接続された4個のシャント抵抗を有する合計2系統の電流検出手段を備え、各系統では、第1増幅率にて4個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第1検出回路と、第1増幅率よりも高い第2増幅率にて4個のシャント抵抗の検出電圧を加算増幅する第2検出回路とが並列に接続されており、系統毎の電流検出手段にて検出した電流値を加算することで、測定電流値を求める例である。
【0154】
(電流検出装置/実施例4)
図11は、実施例4の電流検出装置の構成例を示す図である。この電流検出装置1Dは、2系統の電流検出手段により、電源200に接続された負荷201に流れる電流を、電源200のプラス側の端子と負荷201の片側の端子との間の電流の経路上に並列に接続された8個のシャント抵抗S1,・・・,S8を用いて検出する。
【0155】
電流検出装置1Dは、第1系統の電流検出手段及び第2系統の電流検出手段及びマイコン12Dを備えている。
【0156】
第1系統の電流検出手段は、4個のシャント抵抗S1,・・・,S4、プリント基板105a、コネクタ106a、温度センサ108a、検出回路10a’-1,10a’-2及び電圧検出回路11aを備えている。シャント抵抗S1,・・・,S4の両端は、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して、検出回路10a’-1,10a’-2の入力端子に接続される。温度センサ108aは、コネクタ106aを介してマイコン12Dの入力端子に接続される。
【0157】
第1系統の電流検出手段及びマイコン12Dにおける接続形態並びに電圧検出回路11aは、図2に示した電流検出装置1Aにおいて2個のシャント抵抗を追加した接続形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0158】
第2系統の電流検出手段は、4個のシャント抵抗S5,・・・,S8、プリント基板105b、コネクタ106b、温度センサ108b、検出回路10b’-1,10b’-2及び電圧検出回路11bを備えている。シャント抵抗S5,・・・,S8の両端は、プリント基板105b及びコネクタ106bを介して、検出回路10b’-1,10b’-2の入力端子に接続される。温度センサ108bは、コネクタ106bを介してマイコン12Dの入力端子に接続される。
【0159】
第2系統の電流検出手段及びマイコン12Dにおける接続形態並びに電圧検出回路11bは、図2に示した電流検出装置1Aにおいて2個のシャント抵抗を追加した接続形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0160】
検出回路10a’-1は、シャント抵抗S1の電圧V1、シャント抵抗S2の電圧V2、シャント抵抗S3の電圧V3及びシャント抵抗S4の電圧V4を、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して入力する。検出回路10a’-1は、これらの電圧V1,・・・,V4を、図2に示した検出回路10a-1と同様に、予め設定された第1増幅率にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、増幅電圧VADa1を求める。増幅電圧VADa1は、電圧検出回路11a及びマイコン12Dに出力される。
【0161】
検出回路10a’-2は、検出回路10a’-1に比べて電流値が小さい範囲を扱う回路であり、電圧ゲインが検出回路10a’-1よりも高くなるように設定されている。これにより、電流値が小さい範囲の低電流域において、電流値の分解能を高く設定することができる。
【0162】
検出回路10a’-2は、シャント抵抗S1の電圧V1、シャント抵抗S2の電圧V2、シャント抵抗S3の電圧V3及びシャント抵抗S4の電圧V4を、プリント基板105a及びコネクタ106aを介して入力すると共に、電圧検出回路11aからオンまたはオフの制御信号を入力する。
【0163】
検出回路10a’-2は、オンの制御信号を入力している限り、通常どおりの加算増幅及びバイアス処理を行うように動作する(通常動作を行う)。一方、検出回路10a’-2は、オフの制御信号を入力すると、当該検出回路10a’-2による通常動作をシャットダウンし、オペアンプ31の出力をハイインピーダンス状態にしてゼロ電圧とし、低電流域の増幅電圧VADa2の信号として電圧Vrefの信号を出力する。
【0164】
検出回路10a’-2は、通常動作において、電圧V1,・・・,V4を、第1増幅率よりも高い予め設定された第2増幅率にて加算増幅し、加算増幅された電圧にバイアスをかけることで、低電流域の増幅電圧VADa2を求める。低電流域の増幅電圧VADa2は、マイコン12Dに出力される。設計仕様により異なるが、第2増幅率は、例えば第1増幅率の10倍の値が用いられる。
【0165】
第2系統の検出回路10b’-1,10b’-2及び電圧検出回路11bは、第1系統の検出回路10a’-1,10a’-2及び電圧検出回路11aに対応し、それぞれ同様に動作する。
【0166】
マイコン12Dは、図2に示したマイコン12Aと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0167】
以上のように、実施例4の電流検出装置1Dによれば、1系統あたり並列に接続された4個のシャント抵抗(第1系統ではシャント抵抗S1,・・・,S4、第2系統ではシャント抵抗S5,・・・,S8)を有する合計2系統の電流検出手段を備える。
【0168】
これにより、実施例1の電流検出装置1Aと同様の効果を奏する。すなわち、複数のシャント抵抗S1,・・・,S8を用いて電流を測定する場合に、簡易な構成にてローコスト化を実現すると共に、ノイズ耐性を向上させることができる。
【0169】
また、実施例4の電流検出装置1Dによれば、8個のシャント抵抗S1,・・・,S8のうち1個に流れる電流は、測定電流値の約1/8となるため、発熱量を一層抑えることができる。
【0170】
また、シャント抵抗S1,・・・,S4に流れる電流の加算値である第1系統の電流値Ia及びシャント抵抗S5,・・・,S8に流れる電流の加算値である第2系統の電流値Ibのそれぞれは、測定電流値の約1/2となるため、測定電流値の分解能は、測定電流値の最大値/2/(ADCの分解能)となり、測定精度を向上させることができる。
【0171】
以上、実施例1,2,3,4を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2,3,4に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0172】
例えば、前述の実施例1,2,3では1系統あたり2個のシャント抵抗を有し、実施例4では1系統あたり4個のシャント抵抗を有するようにしたが、シャント抵抗の個数はこれらに限定されるものではない。本発明は、1系統あたり2以上の所定数のシャント抵抗を有していればよい。
【0173】
また、前述の実施例1,4では2系統の電流検出手段を備え、実施例2では1系統の電流検出手段を備え、実施例3では4系統の電流検出手段を備えるようにしたが、系統数はこれらに限定されるものではない。本発明は、1系統以上の所定数の電流検出手段を備えていればよい。
【符号の説明】
【0174】
1 電流検出装置
10 検出回路
11 電圧検出回路
12 マイコン(制御部)
20 ADC(アナログデジタルコンバータ)
30 加算増幅回路
31,41 オペアンプ
32,33,34,35,36,37,42,43,44,45 抵抗
38,39 コンデンサ
40 バイアス回路
50 絶対整流回路
51 増幅回路
52 コンパレータ
53 1次遅れ回路
60 VA(電圧電流)換算部
61 選択部
62 温度補正部
63 加算部
64 異常検出部
100 シャントモジュール
101 シャントバー
102 検出端子
103 ボルト
104 ナット
105 プリント基板
106 コネクタ
107 抵抗素子
108 温度センサ
109 スペーサ
110 ブスバー
200 電源
201 負荷
S1,S2,S3,S4 シャント抵抗
ADa1,VADa2,VADb1,VADb2 増幅電圧
Ta,Tb 温度センサ信号
VS 飽和電圧
IS 電流値
Ia 第1系統の電流値
Ib 第2系統の電流値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11