(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097186
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20240710BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000546
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 紀之
【テーマコード(参考)】
2C362
2H045
【Fターム(参考)】
2C362BA04
2C362BA90
2C362DA32
2C362DA41
2H045AA01
2H045AA24
2H045AA59
2H045BA23
2H045CA63
2H045DA04
(57)【要約】
【課題】ドライバICを適切に冷却可能な光走査装置を提供する。
【解決手段】光走査装置は、多面鏡と、多面鏡を回転させるモータと、モータの回転を制御するドライバICと、モータ及びドライバICを支持する基板とを備える。基板は、基板の内部に形成された空気流路と、基板の外部から空気流路に空気を流入させる流入口と、モータに対面する位置に形成されて、空気流路を通過した空気を基板の外部に流出させる流出口とを有する。ドライバICは、基板を厚み方向から見たときに空気流路に重なる位置において、基板に支持されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面鏡と、
前記多面鏡を回転させるモータと、
前記モータの回転を制御するドライバICと、
前記モータ及び前記ドライバICを支持する基板とを備え、
前記基板は、
前記基板の内部に形成された空気流路と、
前記基板の外部から前記空気流路に空気を流入させる流入口と、
前記モータに対面する位置に形成されて、前記空気流路を通過した空気を前記基板の外部に流出させる流出口とを有し、
前記ドライバICは、前記基板を厚み方向から見たときに前記空気流路に重なる位置において、前記基板に支持されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記基板は、
ベースプレートと、
前記ドライバICを支持するプリント基板とを重ね合わせて構成され、
前記モータは、前記プリント基板を挟んで前記ベースプレートと反対側に配置され、
前記流出口は、前記プリント基板を厚み方向に貫通し、
前記空気流路は、前記ベースプレート及び前記プリント基板の互いに対面する面のうちの一方または両方に形成された凹溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記プリント基板は、前記ベースプレートに対面する面と反対側の面のみにおいて、前記ドライバICを支持していることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記プリント基板は、リジット基板またはフレキシブル基板であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記プリント基板には、前記空気流路に連通すると共に、前記ドライバICに対面する位置で前記プリント基板を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記貫通孔には、前記ドライバICを支持する側の開口面積が、前記ベースプレートに対面する側の開口面積より小さくなるように、内部に段差が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記空気流路は、
複数の前記流入口それぞれに接続されて、前記ドライバICに対面する位置または前記ドライバICより空気の流れの上流側で合流する複数の上流側流路と、
複数の前記上流側流路の合流位置から前記流出口に向けて延びる下流側流路とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項8】
感光体と、
前記感光体に走査光を射出して、静電潜像を形成する請求項1に記載の光走査装置と、
前記感光体に形成された静電潜像にトナーを供給して、トナー像を形成する現像部と、
前記感光体に形成されたトナー像を被記録媒体に転写する転写部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多面鏡と、多面鏡を回転させるモータと、モータの回転を制御するドライバICと、モータ及びドライバICを支持する基板とを備える光走査装置が知られている。このような光走査装置を駆動させると、ドライバICが発熱するという課題がある。
【0003】
このような課題を解決することを目的として、特許文献1には、回転体が回転することによって、回路基板と筐体との間に形成された隙間を流れる風で、ドライバICを冷却する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、コイルの近傍を通過して暖められた風がドライバICに供給されるので、ドライバICの冷却が不十分になる可能性がある。その結果、ドライバICの寿命が短くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ドライバICを適切に冷却可能な光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、多面鏡と、前記多面鏡を回転させるモータと、前記モータの回転を制御するドライバICと、前記モータ及び前記ドライバICを支持する基板とを備え、前記基板は、前記基板の内部に形成された空気流路と、前記基板の外部から前記空気流路に空気を流入させる流入口と、前記モータに対面する位置に形成されて、前記空気流路を通過した空気を前記基板の外部に流出させる流出口とを有し、前記ドライバICは、前記基板を厚み方向から見たときに前記空気流路に重なる位置において、前記基板に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバICを適切に冷却可能な光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す図。
【
図3】ポリゴンミラーを駆動するポリゴンモータ周辺の断面図。
【
図6】流出口を閉塞した場合のドライバICの温度変化を示す図。
【
図7】流出口を開放した場合のドライバICの温度変化を示す図。
【
図9】変形例に係る流入口及び空気供給孔を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像形成装置1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、感光体2(潜像担持体)と、現像部3(現像手段)と、給紙部4と、光走査装置6(露光手段)と、転写ローラ7と、転写部8(転写手段)と、クリーニング装置9と、レジストローラ対10と、定着ユニット11と、排紙部12と、制御部13(制御手段)とを備える。
【0010】
感光体2は、円柱状の回転体である。感光体2の表面には、光走査装置6から射出される各走査光の被走査面である感光層2aが形成されている。感光体2は、装置本体14に回転自在に支持されており、図示しない駆動手段によって
図1に矢印aで示す方向に回転駆動される。
【0011】
現像部3は、感光体2上に形成された静電潜像にトナーを供給して、トナー像を形成する。現像部3は、現像剤担持体である現像ローラ17を有する。現像部3は、内部に収納されたトナーを、感光層2a上に形成された静電潜像に、現像ローラ17を用いて付着させる。これにより、現像部3は、静電潜像を可視化させてトナー像を形成する。
【0012】
給紙部4は、被記録媒体である用紙Pを供給する。給紙部4は、例えば、用紙Pを供給する手差し給紙部15と、手差し給紙部15に配置された用紙Pをレジストローラ対10に向けて給送する給紙ローラ16とを有している。
【0013】
光走査装置6は、外部に接続された上位装置5からの画像情報に基づいて、感光体2の表面に静電潜像を形成する。より詳細には、光走査装置6は、射出した走査光によって感光層2aに静電潜像を形成する。モノクロ画像を形成する画像形成装置1の場合、装置本体14に光走査装置6が1個だけ設けられている。カラー画像を形成可能な画像形成装置1の場合、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック各色のトナーに対応する静電潜像を形成する、それぞれ独立した複数の光走査装置6を備えてもよい。
【0014】
転写ローラ7は、転写位置において感光体2に対面して配置されている。転写部8は、感光体2と転写ローラ7とのニップ部である転写位置において、感光体2上に形成されたトナー像を用紙Pに転写する。クリーニング装置9は、転写後の感光体2から残留トナーを除去する。レジストローラ対10は、給紙部4から給送された用紙Pを所定のタイミングで転写位置に給送する。
【0015】
定着ユニット11は、転写位置にてトナー像を転写された用紙Pのトナー像を定着させる。定着ユニット11は、熱源を内部に有する加熱ローラ18と、加熱ローラ18と圧接して定着位置である定着ニップを形成する加圧ローラ19とを有している。定着ユニット11は、トナー像が転写された用紙Pを定着ニップに通すことで、熱と圧力との作用により転写されたトナー像を用紙Pの表面に定着させる。加熱ローラ18は、アルミニウム製の円筒ローラと、円筒外周に形成されたシリコーンゴム層と、円筒内部に設けられた発熱器であるハロゲンヒータとを有している。
【0016】
排紙部12は、定着ユニット11を通過してトナー像が定着された用紙Pを機外に排出する。排紙部12は、例えば、対向して配置された一対の排紙ローラ対20と、排紙ローラ対20によって排出された用紙Pを保持する排紙トレイ21とを有している。
【0017】
制御部13は、上述した各部の動作を制御する。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メインメモリ(MEM-P)、ノースブリッジ(NB)、サウスブリッジ(SB)を有している。さらに制御部13は、AGP(Accelerated Graphics Port)バス、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ローカルメモリ(MEM-C)を有している。さらに制御部13は、HD(Hard Disk)、HDD(Hard Disk Drive)、PCIバス、ネットワークI/Fを有している。
【0018】
CPUは、メインメモリに記憶されたプログラムに従ってデータを加工及び演算したり、上述した各部の動作を制御したりするものである。メインメモリは、制御部13の記憶領域として働き、制御部13の各機能を実現させるプログラムやデータを記憶する。ローカルメモリ(MEM-C)は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いる。HDは、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HDDは、CPUの制御に従ってHDに対するデータの読み出しまたは書き込みを制御する。ネットワークI/Fは、通信ネットワークを介して情報処理装置等の外部機器に対して情報を送受信する。
【0019】
制御部13は、通信ネットワーク等を介した例えばパソコン等の上位装置5との双方向通信を制御するための通信制御手段として機能する。さらに制御部13は、上位装置5から送られる画像データを光走査装置6に送る画像データ処理手段としても機能する。
【0020】
図2は、光走査装置6の詳細構成を示す図である。
図2に示すように、光走査装置6は、走査光である光束Lからなるレーザ光の光源である面発光レーザアレイからなる光源ユニット22と、光源ユニット22から入射した光束Lをほぼ平行にするカップリングレンズ23とを有している。さらに光走査装置6は、カップリングレンズ23よりも光束Lの進行方向下流側に配置された開口板24と、シリンドリカルレンズ25とを有している。また光走査装置6は、回転によって入射した光束Lを偏向する偏向器である回転多面鏡としてのポリゴンミラー26と、偏向された走査光の主走査方向への等角度運動を等速直線運動へと替える走査レンズとしてのfθレンズ27とを有している。
【0021】
光走査装置6は、fθレンズ27を通過した光束Lの光路上に配置されたトロイダルレンズ28と、光束Lを反射によって所定の位置へ誘導するための2個のミラー29、30とを有している。ミラー29は光束Lを反射し光路上のシリンドリカルレンズ25とポリゴンミラー26との間に配置される。ミラー30は光束Lを反射し光路上のトロイダルレンズ28と感光体2との間に配置される。さらに光走査装置6は、走査光の一部を同期用走査光として受光して画像の書き始め位置を決定するための同期検知手段31を有している。
【0022】
開口板24は、開口部を有しており、カップリングレンズ23を透過した平行な光束Lのビーム径を規定する。シリンドリカルレンズ25は、開口板24の開口部を通過した光束Lを、ミラー29を介してポリゴンミラー26の偏向反射面近傍に集光する。ポリゴンミラー26は、高さの低い正六角柱形状の部材からなり、側面には6面の偏向反射面が形成されている。ポリゴンミラー26は、図示しない駆動手段によって、矢印bで示す方向に一定の角速度で回転駆動される。
【0023】
図3は、ポリゴンミラー26を駆動するポリゴンモータ40周辺の断面図である。
図3に示すように、ポリゴンミラー26は、二段構造の多面鏡26a、26bで構成されマグネット44が内周面に固定される。また、ポリゴンモータ40は、シャフト41と、軸受ユニット42と、コア51と巻き線52からなるコイル43とを備える。さらに、ポリゴンモータ40は、基板45に支持されている。
【0024】
詳しくは、軸受ユニット42は、例えば、軸受ハウジング46と、スラスト軸受47と、軸受スリーブ48(焼結含油動圧軸受)と、軸受シール49とで構成される。また、軸受ハウジング46は、シャフト41、スラスト軸受47、軸受スリーブ48、及び軸受シール49を収容する収容凹部50を有する。
【0025】
シャフト41は、軸受ユニット42に対して回転可能に支持され、軸受ユニット42はベースプレート70の表面にプリント基板60を有する基板45に支持されている。このようにシャフト41は基板45に対して回転可能に支持されることになる。
【0026】
また、ポリゴンモータ40のシャフト41の先端は、基板45の表面側(プリント基板60側)に突出している。さらに、シャフト41の先端には、多面鏡26a、26bが締結(焼きバメ)されている。そして、シャフト41は、多面鏡26a、26bと一体回転する。
【0027】
軸受ユニット42の軸受ハウジング46は、基板45に機械締結またはカシメまたは圧入され固定されている。また、軸受ユニット42は、シャフト41を回転可能に支持する。さらに、軸受ユニット42の軸受ハウジング46の外周面には、コイル43を固定支持する。
【0028】
スラスト軸受47は、軸受ハウジング46の収容凹部50の最奥部に配置されシャフト41の他の先端を支持している。軸受スリーブ48は、収容凹部50の内側壁に沿って配置された円筒形状の部材である。シャフト41は、先端がスラスト軸受47に接触するまで、軸受スリーブ48に内挿されている。軸受スリーブ48の内周面には、シャフト41の回転によって動圧を発生させ、シャフト41を支持する動圧溝が形成されている。軸受シール49は、シャフト41に外挿されて、収容凹部50の開口部をシールする。
【0029】
コイル43は、軸受ハウジング46の外周面から放射状に延びる複数のティースを備えるコア51と、複数のティースそれぞれに巻回された複数の巻き線52とで構成されている。コア51は、電磁鋼板を積層して構成される。巻き線52を構成する巻き線は、軸受ハウジング46に沿って、すなわち放射状に延びるコア51のティースに巻回して巻き線の端部がプリント基板60に沿って延設され、プリント基板60の所定位置にはんだ付けされる。そして、複数の巻き線52には、U相、V相、W相のいずれかの電流が供給される。
【0030】
マグネット44は、コイル43の外周面を覆う円筒形状の多極磁石である。マグネット44は、多面鏡26a、26b内周面に固定されて、多面鏡26a、26b及びシャフト41と一体回転する。また、マグネット44は、径方向において所定の間隔を隔ててコイル43に対面している。シャフト41、多面鏡26a、26bからなるポリゴンミラー26、及びマグネット44は、ポリゴンモータ40のロータ(回転体)を構成する。
【0031】
複数の巻き線52は、U相、V相、W相の電流が供給されることによって、磁界を発生する。そして、磁界を発生した巻き線52とマグネット54との間に生じる引力及び斥力によって、シャフト41及びマグネット44と共に多面鏡26a、26bが回転する。
【0032】
基板45は、ポリゴンモータ40(より詳細には、軸受ハウジング46)と、ポリゴンモータ40の駆動を制御するドライバIC55とを支持する。また、基板45は、光走査装置6のフレームに固定される。基板45は、例えば、プリント基板60と、ベースプレート70とを重ね合わせて構成される。軸受ユニット42、コイル43、プリント基板60、及びベースプレート70は、ポリゴンモータ40のステータを構成する。
【0033】
図4は、プリント基板60及びベースプレート70の平面図である。
図5は、基板45の分解斜視図である。
【0034】
図4(A)及び
図5に示すように、プリント基板60は、略矩形(長方形)の平板である。プリント基板60は、厚み方向の表面60a及び表面60aと反対側の裏面60bを有する。プリント基板60は、例えば、厚さが0.8mmのリジット基板(FR-4、CEM-3、紙フェノール、スチール、アルミなど)またはフレキシブル基板である。そして、プリント基板60には、バーリング孔61a、61b、61c、61dと、切り欠き62a、62bと、軸受挿通孔63と、空気供給孔64(貫通孔)とが形成されている。
【0035】
図4(B)及び
図5に示すように、ベースプレート70は、六角形の平板である。ベースプレート70は、厚み方向の表面70a及び表面70aと反対側の裏面70bを有する。ベースプレート70は、例えば、厚さが0.8~1.0mmの亜鉛メッキ鋼板(SECC)である。そして、ベースプレート70には、バーリング71a、71b、71c、71dと、被固定孔72a、72b、72cと、軸受固定孔73と、凹溝74とが形成されている。
【0036】
バーリング孔61a~61dは、プリント基板60の四隅において、プリント基板60を厚み方向に貫通している。バーリング71a~71dは、ベースプレート70の四隅において、ベースプレート70からプリント基板60に向けて突出する円筒部である。また、プリント基板60の裏面60b及びベースプレート70の表面70a(以下、同じ)を重ね合わせると、プリント基板60のバーリング孔61a~61dに、ベースプレート70のバーリング71a~71dが進入する。
【0037】
そして、バーリング孔61a~61dに進入したバーリング71a~71dをバーリングカシメすることによって、バーリング71a~71dのバーリング孔61a~61dから突出した部分が外側に押し広げられて、プリント基板60及びベースプレート70が締結される。なお、バーリングカシメ後のベースプレート70の平面度は、0.05mm以下となるのが望ましい。また、プリント基板60及びベースプレート70の締結(固定)方法は、バーリングカシメに限定されず、ボルトによる締結でもよいし、接着剤による接着でもよい。
【0038】
被固定孔72a~72cは、ベースプレート70の外縁部において、ベースプレート70を厚み方向に貫通している。プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせたとき、被固定孔72a、72bは切り欠き62a、62bに対面する位置に形成され、被固定孔72cはプリント基板60から外れた位置に形成されている。そして、被固定孔72a~72cには、光走査装置6のフレームにプリント基板60及びベースプレート70からなる基板45を固定するためのボルトが挿通される。
【0039】
軸受挿通孔63は、プリント基板60を厚み方向に貫通する。軸受固定孔73は、ベースプレート70を厚み方向に貫通する。軸受挿通孔63の直径は、軸受固定孔73の直径より大きく設定されている。そして、プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせると、軸受挿通孔63及び軸受固定孔73は連通する。さらに、プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせると、軸受挿通孔63及び凹溝74は連通する。
【0040】
図3に示すように、プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせた基板45のベースプレート70の軸受固定孔73には、軸受ハウジング46が固定される。また、軸受固定孔73に固定された軸受ハウジング46は、プリント基板60の軸受挿通孔63を通過して、ベースプレート70の裏面70b側に突出する。すなわち、軸受ハウジング46は、ベースプレート70の裏面70b側とプリント基板60の表面60a側の両方に突出している。さらに、軸受ハウジング46及び軸受挿通孔63の間には、隙間が形成される。この隙間は、凹溝74(空気流路80)を通過した空気を基板45の外部に流出させる流出口82として機能する。
【0041】
空気供給孔64は、プリント基板60を厚み方向に貫通する。空気供給孔64は、プリント基板60の表面60aに支持(実装)されたドライバIC55に対面するプリント基板60の隅ではない中心部付近の位置に形成されている。換言すれば、ドライバIC55は2方向または4方向にピンがあり、そのピンがプリント基板60の表面60aで支持されるため、中心部付近の空気供給孔64を塞ぐように、ドライバIC55はプリント基板60の表面60aに支持されている。また、プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせると、空気供給孔64は、凹溝74(空気流路80)に連通する。すなわち、空気供給孔64は、プリント基板60の表面60aに支持されたドライバIC55を、空気流路80に露出させる。そして、空気供給孔64は、空気流路80を通過する空気をドライバIC55に供給する。
【0042】
凹溝74は、ベースプレート70の表面70a(プリント基板60と対面する面)を凹ませて形成されている。プリント基板60及びベースプレート70を重ね合わせると、凹溝74の開口面は、プリント基板60の裏面60bによって閉塞される。プリント基板60によって開口面が閉塞された凹溝74は、空気を通過させる空気流路80を構成する。また、凹溝74の一端は、ベースプレート70の外縁まで到達している。ベースプレート70の外縁に到達した凹溝74の端部は、基板45の外部から空気流路80に空気を流入させる流入口81として機能する。本実施形態に係る空気流路80(凹溝74)は、流入口81から流出口82に向けて直線的に延設されている。
【0043】
図3に示すように、ポリゴンモータ40(より詳細には、多面鏡26a、26b、シャフト41、及びマグネット44で構成されるロータ)は、プリント基板60の表面60a側(すなわち、プリント基板60を挟んでベースプレート70と反対側)に配置されている。そして、流出口82は、基板45を厚み方向から見たときに、ポリゴンモータ40と重なる位置に形成されている。
【0044】
また、
図3に示すように、ドライバIC55は、プリント基板60の表面60a側のみに実装されている。すなわち、本実施形態に係るドライバICは、片面実装タイプである。そして、ドライバIC55は、基板45を厚み方向から見たときに、空気流路80と重なる位置において、プリント基板60の表面60aに支持されている。さらに、プリント基板60の表面60aに実装されたドライバIC55の上端位置は、多面鏡26aより下方にある多面鏡26b及び多面鏡26bの下端位置よりも下方のマグネット44の下端位置より低い位置に設定される。
【0045】
上記構成の光走査装置6において、ポリゴンモータ40(より詳細には、多面鏡26a、26b、シャフト41、及びマグネット44で構成されるロータ)が回転すると、プリント基板60の表面60a(より詳細には、流出口82の周辺)の空気の圧力が低下する。これにより、流出口82を挟んで空気流路80の内外に圧力差が発生して、空気流路80内の空気が流出口82を通じて基板45の外部に流出する。その結果、流入口81を通じて基板45の外部から空気流路80に空気が流入する。すなわち、空気流路80には、流入口81から流出口82に向かう空気の流れが生じる。さらに、空気流路80内の空気の一部は、空気供給孔64にも供給される。
【0046】
その結果、空気流路80を通過する空気は、ドライバIC55を冷却した後に流出口82から流出する。すなわち、空気供給孔64に進入した空気がドライバIC55に接触して、ドライバIC55を冷却させる。さらに、ドライバIC55を冷却した空気は流出口82から流出し、ポリゴンモータ40の軸受ユニット42及び巻き線52を冷却する。
【0047】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0048】
上記の実施形態によれば、流入口81から空気流路80に流入した空気は、ドライバIC55を冷却した後に流出口82から流出して、その後に巻き線52とプリント基板60の表面60aとの間を通過する。これにより、流入口81からの空気流路80内の空気が、高温が上昇した他部材、例えばシャフト41と摺接する軸受ユニット42やコイル43の巻き線52に触れることなくダイレクトにドライバIC55に触れる。このため、空気流路80内の空気の温度とドライバIC55の温度との温度差が大きくなるので、ドライバIC55を適切に冷却することができる。その結果、ドライバIC55(光走査装置6)の寿命を延伸することができる。
【0049】
以下、
図6及び
図7を参照して、本実施形態によるドライバIC55の温度変化を説明する。
図6は、流出口82を閉塞した場合のドライバIC55の温度変化を示す図である。
図7は、流出口82を開放した場合のドライバIC55の温度変化を示す図である。なお、
図6におけるドライバIC55の初期温度は25℃であり、
図7におけるドライバIC55の初期温度は33℃である。
【0050】
流出口82を閉塞すると、空気流路80内の空気の対流が停止する。その結果、
図6に示すように、ドライバIC55の温度は、時間の経過と共に上昇する。一方、流出口82を開放すると、空気流路80内を流入口81から流出口82に向かう空気の流れが発生する。その結果、
図7に示すように、ドライバIC55の温度は、時間の経過と共に温度降下し雰囲気温度に近づく。例えば、雰囲気温度が32℃の場合、初期温度33℃のドライバICの温度降下は1℃程度になり雰囲気温度に近づく。
【0051】
これにより、ドライバIC55の温度上昇に係わる内部抵抗の増大を小さくでき、ポリゴンモータ40の駆動時にドライバIC55の発熱(W=I2×R)を抑えることができる。これにより、光走査装置6の動作時にドライバIC55の温度を低い状態に維持できるので、ドライバIC55の熱劣化が低減される。その結果、温度加速度モデル(アレニウスモデル:L=A・exp(Ea/k・T)によれば、本実施形態に係る光走査装置6は、従来の光走査装置(例えば、流出口82を閉塞した光走査装置6)と比較して、およそ1000時間の寿命延伸が可能となる。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、空気供給孔64を設けることによって、空気流路80内の空気をドライバIC55に接触させることができる。これにより、ドライバIC55の冷却効率が向上する。なお、ドライバIC55の冷却効率が十分となるように、空気供給孔64に替えて、プリント基板60全体を薄くしたり、ドライバIC55と対抗する部分を薄くした溝にしてもよい。
【0053】
さらに、上記の実施形態によれば、ドライバIC55の上端位置を多面鏡26a、26b及びマグネット44の下端位置より下方に設定し回転する際に生じる異音(風切り音)を低減した。また、多面鏡26a、26b及びマグネット44とドライバIC55との水平方向の距離を、例えば、シャフト41の中心から多面鏡26a、26bの放射方向の先端までの距離の1.2倍以上3.0倍以下、より好ましくは1.5倍以上2.0倍以下の距離で確保すれば、多面鏡26a、26b及びマグネット44が回転する際に生じる異音(風切り音)を低減し基板45を小型にすることができる。
【0054】
なお、上記の実施形態では、空気流路80を構成する凹溝74をベースプレート70のみに形成する例を説明したが、プリント基板60にのみ形成してもよいし、プリント基板60及びベースプレート70の両方に形成してもよい。すなわち、空気流路80は、プリント基板60及びベースプレート70の互いに対面する面(すなわち、裏面60b及び表面70a)のうちの一方または両方に形成された凹溝によって構成されていればよい。そして、プリント基板60及びベースプレート70の両方に凹溝を形成する場合は、基板45の厚み方向から見て互いに重なる位置に形成するのが望ましい。
【0055】
また、上記の実施形態では、プリント基板60の表面60aにのみドライバIC55を実装した片面実装タイプの例を説明したが、本発明は両面実装タイプのプリント基板60にも適用可能である。例えば、プリント基板60の裏面60bのうち、凹溝74に対面する位置に配線パターンを形成すれば、冷却効果を向上させることができる。
【0056】
さらに、空気供給孔64の形状は、四角形に限定されず、円形、台形、三角形、その他の幾何学形状でもよい。同様に、空気流路80及び流入口81の形状も長方形に限定されず、台形、半楕円形、その他の幾何学形状でもよい。
【0057】
[変形例]
次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の変形例を説明する。
図8は、変形例に係る凹溝74A、74B、74Cを示す図である。
図9は、変形例に係る流入口81A及び空気供給孔64Aを示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0058】
図8(A)に示すように、凹溝74Aは、直線的に延設されていることに限定されず、途中で屈曲していてもよい。また、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、流入口81は、複数の位置に設けられていてもよい。そして、空気流路80B、80Cは、複数の流入口81それぞれに接続されて、ドライバIC55に対面する位置またはドライバIC55より空気の流れの上流側で合流する空気流路80B、80Cの一部を成す複数の上流側流路83と、複数の上流側流路83の合流位置から流出口82に向けて延びる空気流路80B、80Cの一部を成す下流側流路84とで構成されていてもよい。さらに、下流側流路84の開口面積(空気の流れに直交する断面積)は、上流側流路83の開口面積より大きく設定されていてもよい。
【0059】
図9(A)に示すように、流入口81Aは、ベースプレート70の裏面70bに開口していてもよい。さらに、流入口81A及び空気供給孔64を一直線上に配置することによって、ドライバIC55へ向かう空気の流れがスムーズになる。すなわち、流入口81、81Aの位置は、ベースプレート70の外縁に限定されない。
【0060】
図9(B)に示すように、空気供給孔64Aには、段差65が形成されていてもよい。そして、空気供給孔64Aの段差65より表面60a側(ドライバIC55を支持する側)の開口面積は、空気供給孔64Aの段差65より裏面60b側(ベースプレート70に対面する側)の開口面積より小さく設定されている。これにより、段差65より表面60a側の部分がドライバIC55の熱を空気流路80側に伝える熱伝導部材として機能する。そして、空気流路80内の空気が段差65に当たることによって、冷却効率がさらに向上する。
【0061】
図10は、変形例に係る光ビーム走査装置200を示す図である。
図10は、光ビーム走査装置200を上からの視点で示す。例えば、光ビーム走査装置200は、他の色でも同じ構成である。
【0062】
図10に示すように、光ビーム走査装置200は光源ユニット222から発せられた光がシリンドリカルレンズ224を通り、主走査方向で感光体206の中間点から光源ユニット222の反対側にずれた回転軸230を中心に矢印D方向に回転するポリゴンミラー204によって偏向される。偏向された光は、fθレンズ226やトロイダルレンズ227、ミラー228及び図示しない透過ガラスを通り、感光体206に照射されるようになっている。上記構成の光ビーム走査装置200は、これら光学部品を1つのユニット内に組み込み、防塵等の理由によってケーシングで密閉されている。
【0063】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0064】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 多面鏡と、
前記多面鏡を回転させるモータと、
前記モータの回転を制御するドライバICと、
前記モータ及び前記ドライバICを支持する基板とを備え、
前記基板は、
前記基板の内部に形成された空気流路と、
前記基板の外部から前記空気流路に空気を流入させる流入口と、
前記モータに対面する位置に形成されて、前記空気流路を通過した空気を前記基板の外部に流出させる流出口とを有し、
前記ドライバICは、前記基板を厚み方向から見たときに前記空気流路に重なる位置において、前記基板に支持されていることを特徴とする光走査装置である。
<2> 前記基板は、
ベースプレートと、
前記ドライバICを支持するプリント基板とを重ね合わせて構成され、
前記モータは、前記プリント基板を挟んで前記ベースプレートと反対側に配置され、
前記流出口は、前記プリント基板を厚み方向に貫通し、
前記空気流路は、前記ベースプレート及び前記プリント基板の互いに対面する面のうちの一方または両方に形成された凹溝によって構成されていることを特徴とする前記<1>に記載の光走査装置である。
<3> 前記プリント基板は、前記ベースプレートに対面する面と反対側の面のみにおいて、前記ドライバICを支持していることを特徴とする前記<2>に記載の光走査装置である。
<4> 前記プリント基板は、リジット基板またはフレキシブル基板であることを特徴とする前記<2>または前記<3>に記載の光走査装置である。
<5> 前記プリント基板には、前記空気流路に連通すると共に、前記ドライバICに対面する位置で前記プリント基板を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする前記<2>または前記<3>に記載の光走査装置である。
<6> 前記貫通孔には、前記ドライバICを支持する側の開口面積が、前記ベースプレートに対面する側の開口面積より小さくなるように、内部に段差が形成されていることを特徴とする前記<5>に記載の光走査装置である。
<7> 前記空気流路は、
複数の前記流入口それぞれに接続されて、前記ドライバICに対面する位置または前記ドライバICより空気の流れの上流側で合流する複数の上流側流路と、
複数の前記上流側流路の合流位置から前記流出口に向けて延びる下流側流路とで構成されていることを特徴とする前記<1>乃至前記<6>のいずれか1項に記載の光走査装置である。
<8> 感光体と、
前記感光体に走査光を射出して、静電潜像を形成する前記<1>乃至前記<7>のいずれか1項に記載の光走査装置と、
前記感光体に形成された静電潜像にトナーを供給して、トナー像を形成する現像部と、
前記感光体に形成されたトナー像を媒体に転写する転写ローラとを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0065】
1 :画像形成装置
2,206 :感光体
2a :感光層
3 :現像部
4 :給紙部
5 :上位装置
6 :光走査装置
7 :転写ローラ
8 :転写部
9 :クリーニング装置
10 :レジストローラ対
11 :定着ユニット
12 :排紙部
13 :制御部
14 :装置本体
15 :手差し給紙部
16 :給紙ローラ
17 :現像ローラ
18 :加熱ローラ
19 :加圧ローラ
20 :排紙ローラ対
21 :排紙トレイ
22,222 :光源ユニット
23 :カップリングレンズ
24 :開口板
25,224 :シリンドリカルレンズ
26,204 :ポリゴンミラー
26a,26b :多面鏡
27,226 :fθレンズ
28,227 :トロイダルレンズ
29,30,228 :ミラー
31 :同期検知手段
40 :ポリゴンモータ
41 :シャフト
42 :軸受ユニット
43 :コイル
44 :マグネット
45 :基板
46 :軸受ハウジング
47 :スラスト軸受
48 :軸受スリーブ
49 :軸受シール
50 :収容凹部
51 :コア
52 :巻き線
55 :ドライバIC
60 :プリント基板
60a,70a :表面
60b,70b :裏面
61a~61d,71a~71d :バーリング孔
62a,62b :切り欠き
63 :軸受挿通孔
64,64A :空気供給孔
65 :段差
70 :ベースプレート
72a~72c :被固定孔
73 :軸受固定孔
74,74A,74C :凹溝
80,80B,80C :空気流路
81,81A :流入口
82 :流出口
83 :上流側流路
84 :下流側流路
230 :回転軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】