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特開2024-97239ストーカ炉の火格子脱落防止構造及びストーカ炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097239
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ストーカ炉の火格子脱落防止構造及びストーカ炉
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/00 20060101AFI20240710BHJP
   F23H 15/00 20060101ALI20240710BHJP
   F23H 7/08 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F23G5/00 109
F23H15/00
F23H7/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000678
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 善博
(72)【発明者】
【氏名】武田 翼
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261BA06
3K261BA12
3K261BA23
(57)【要約】
【課題】何らかの理由によって上方から火格子の元端近傍に落下した被処理物に起因して当該火格子が脱落する可能性を低く抑える。
【解決手段】火格子脱落防止構造は、複数の火格子を含む可動段12及び固定段11を交互に階段状に重ねて配置した搬送路を備えるストーカ炉1の火格子脱落防止構造であって、火格子の各々の元端側に嵌合して当該火格子を保持し、当該火格子をストーカ炉本体又は駆動機構に取付けるための取付部40を備え、少なくとも一部の前記取付部40には、上方から落下してくる被処理物を下方へ排出して前記火格子と当該取付部との嵌合箇所の隙間に堆積する被処理物の量を軽減するための開口30,31が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火格子を含む可動段及び固定段を交互に階段状に重ねて配置した搬送路を備えるストーカ炉の火格子脱落防止構造であって、
前記搬送路を構成する複数の前記火格子の各々の元端側に嵌合して当該火格子を保持し、当該火格子をストーカ炉本体又は駆動機構に取付けるための取付部を備え、
少なくとも一部の前記取付部には、上方から落下してくる被処理物を下方へ排出して前記火格子と当該取付部との嵌合箇所の隙間に堆積する被処理物の量を軽減するための開口が設けられている
ことを特徴とするストーカ炉の火格子脱落防止構造。
【請求項2】
前記開口の少なくとも一部は前記火格子の元端の鉛直下方に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載のストーカ炉の火格子脱落防止構造。
【請求項3】
前記火格子は、元端側よりも先端側が低くなるような傾斜を設けて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のストーカ炉の火格子脱落防止構造。
【請求項4】
前記開口から下方へ排出された被処理物を、前記搬送路で搬送された被処理物と共に搬送するための回避路を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のストーカ炉の火格子脱落防止構造。
【請求項5】
前記取付部は、前記搬送路の幅方向に並ぶ複数の火格子を保持するために平面視長方形状の平板部を備え、前記平板部には、当該取付部の強度を維持するためのリブが立設されており、
前記開口は、前記リブを避けるようにして当該平板部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のストーカ炉の火格子脱落防止構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の火格子脱落防止構造を備えることを特徴とするストーカ炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ炉の火格子脱落防止構造及びストーカ炉に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品屑等の被処理物の焼却等に用いられるストーカ炉は、短冊状の火格子を複数配列して可動とした可動段と、同じく短冊状の火格子を複数配列した固定段とを交互に階段状に重ねることによって形成された搬送路を備えている。このストーカ炉においては、固定段の表面を摺動するようにして可動段を進退させることにより、被処理物を焼却しつつ搬送している(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4104078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のストーカ炉では、被処理物が微細である場合に、例えば固定段又は可動段の互いに隣接する火格子の隙間や、固定段及び可動段の段差の隙間から下方へと落下する可能性がある。また、当初は微細でなかったとしても、段差の隙間へ入り込み、固定段と可動段との摺動によって微細化(粉体化)された被処理物が、それらの隙間から下方へと落下する可能性もあった。
【0005】
落下した微細な被処理物が下段側の火格子の元端近傍に堆積すると、その火格子の取付け状態に悪影響を与える可能性があり、その被処理物の堆積が一定以上になると、火格子を脱落させるおそれのあることも判明した。例えば図4(A)に示すとおり固定段を構成する火格子(固定火格子)11Sの元端下側に凹部11Pが設けられており、凹部11Pと取付部40の凸部40Pとを嵌合させることによって固定火格子11Sがストーカ炉本体に取付けられている場合、本願発明者等の検証によると、微細な被処理物2がその嵌合箇所Pである凹部11Pと凸部40Pとの隙間に入り込み、次第に堆積し、この堆積が進むと図4(B)に示すとおり固定火格子11Sの元端側を浮き上がらせて取付け状態が悪化し、最終的に脱落に至るということが判明した(図4の説明の詳細は後述する)。
【0006】
そこで本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、何らかの理由によって上方から火格子の元端近傍に落下した被処理物に起因して当該火格子が脱落する可能性を低く抑えることのできるストーカ炉の火格子脱落防止構造及びストーカ炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明に係る火格子脱落防止構造は、複数の火格子を含む可動段及び固定段を交互に階段状に重ねて配置した搬送路を備えるストーカ炉の火格子脱落防止構造であって、前記搬送路を構成する複数の前記火格子の各々の元端側に嵌合して当該火格子を保持し、当該火格子をストーカ炉本体又は駆動機構に取付けるための取付部を備え、少なくとも一部の前記取付部には、上方から落下してくる被処理物を下方へ排出して前記火格子と当該取付部との嵌合箇所の隙間に堆積する被処理物の量を軽減するための開口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため本発明に係る火格子脱落防止構造において、前記開口の少なくとも一部は前記火格子の元端の鉛直下方に位置してもよい。
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係る火格子脱落防止構造において、前記火格子は、元端側よりも先端側が低くなるような傾斜を設けて配置されてもよい。
【0010】
上記目的を達成するため本発明に係る火格子脱落防止構造において、前記開口から下方へと排出された被処理物を、前記搬送路で搬送された被処理物と共に搬送するための回避路を更に備えてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため本発明に係る火格子脱落防止構造において、前記取付部は、前記搬送路の幅方向に並ぶ複数の火格子を保持するために平面視長方形状の平板部を備え、前記平板部には、当該取付部の強度を維持するためのリブが立設されており、前記開口は、前記リブを避けるようにして当該平板部に設けられてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため本発明に係るストーカ炉は、本発明に係る何れかの火格子脱落防止構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るストーカ炉の火格子脱落防止構造又はこれを備えたストーカ炉によれば、火格子の元端側を保持する取付部の所定箇所に開口を設け、何らかの理由によって上方から落下してくる微細な被処理物(例えば、上段の火格子の隙間や固定段及び可動段の段差の隙間から落下してくる微細な被処理物)を下方へと排出するので、火格子と取付部との嵌合箇所に入り込む被処理物の量を軽減することができ、被処理物の堆積に起因した火格子の脱落の可能性を低く抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1はストーカ炉の概略側面図である。
図2図2はストーカ炉の搬送路及びその周辺の概略平面図である。
図3図3(A)は可動段に連結された台車の概略平面図、図3(B)は台車の概略側面図である。
図4図4(A)は固定段と取付部の嵌合箇所を説明する概略側面図、図4(B)は従来の固定火格子が脱落する原因を説明する図である。
図5図5(A)は開口の形成先を説明する概略側面図、図5(B)は開口の形成先を説明する概略平面図である。
図6図6(A)は上段固定段用ブラケットの平面図、図6(B)は図6(A)のA-A断面図、図6(C)は図6(A)のB-B断面図である。
図7図7(A)は上段固定段用ブラケット受けの平面図、図7(B)は図7(A)のC-C断面図、図7(C)は図7(A)のD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るストーカ炉の火格子脱落防止構造及びストーカ炉について好ましい一実施形態に基づいて説明する。
【0016】
[ストーカ炉の全体構成]
先ず、図面を参照してストーカ炉の全体構成について説明する。図1はストーカ炉の概略側面図、図2はストーカ炉の搬送路及びその周辺の概略平面図、図3(A)は可動段に連結された台車の概略平面図、図3(B)は台車の概略側面図である。ストーカ炉1は、図1図2に示すとおり、炉壁200で囲われるようにして配置された搬送路100と、搬送路100の下方に配置されるホッパ300と、搬送路100の可動段12に連結される台車20と、台車20に連結された駆動機構400と、搬送路100を加熱する不図示の加熱装置とを備える。
【0017】
搬送路100は、図1に示すとおり、2つの可動段12,12及び2つの固定段11,11を搬送方向(太い白抜き矢印の方向)の反対方向に交互に階段状に積み上げるようにして配置した焼却用の搬送路である。以下では必要に応じて2つの可動段12,12を下段側から順番に「下段可動段12」,「上段可動段12」と称し、2つの固定段11,11を下段側から順番に「下段固定段11」,「上段固定段11」とも称す。
【0018】
固定段11,11の各々は、図2に示すとおり、平面視短冊状の複数の固定火格子11S,11S,…を搬送路100の幅方向にかけて並べて配列している。これらの固定段11,11は、それぞれ取付部40,40を介してストーカ炉1の本体側(炉壁200の側)に固定されている。なお、固定火格子11S,11S,…の各々は、元端側よりも先端側が低くなるような傾斜を設けて配置されている。
【0019】
可動段12,12の各々は、図2に示すとおり、平面視短冊状の複数の可動火格子12S,12S,…を搬送路100の幅方向にかけて並べて配列している。これらの可動段12,12は、それぞれ取付部40,40を介して台車20に固定されている。なお、可動火格子12S,12S,…の各々は、元端側よりも先端側が低くなるような傾斜を設けて配置されている。
【0020】
台車20は、これに連結された駆動機構400によって図3の左右方向にかけて進退可能とされている。台車20が進退すると、これに伴って図1に示す可動段12,12が固定段11,11の表面をそれぞれ摺動するようにして進退するので、これによって搬送路100上の被処理物が図1の太い白抜き矢印に示すルートで搬送されていく。この搬送路100によって搬送された被処理物は、図1の左下方へ落下した後、不図示のコンベアなどで搬送される。
【0021】
台車20は、図3(A),(B)に示すとおり、階段状に梁22,23を配したフレーム構造を有しており、梁22,23に設けられた取付部40,40を介して上述した可動段12,12(図1)を支持している。なお、図3(B)内に破線で示す線は、台車20の梁22,23と可動段12,12と取付部40,40とのおおよその位置関係を示している。なお、図3に示した例では、台車20の下段に位置する梁22(取付部40の一部を構成する)に、火格子脱落防止構造としての開口32,32,32が設けられている。これら開口32,32,32のレイアウト(開口パターン)はあくまで一例であって、必要に応じて変更することも可能である。尚、取付部40及び火格子脱落防止構造の詳細は下述する。
【0022】
[取付部及び火格子脱落防止構造の概要]
次に、取付部及び火格子脱落防止構造の概要について説明する。本実施形態の火格子脱落防止構造は、主として取付部40に設けられている。ここでは代表して、特定の固定段11の取付部40に設けられた火格子脱落防止構造に着目して説明するが、他の固定段11又は可動段12の取付部40にも同様の脱落防止構造が設けられていてもよい。
【0023】
図4(A)は固定段と取付部の嵌合箇所を説明する概略側面図、図4(B)は従来の固定火格子が脱落する原因を説明する図、図5(A)は開口の形成先を説明する概略側面図、図5(B)は開口の形成先を説明する概略平面図である。
【0024】
図4(A)に示した取付部40にはブラケット40B及びブラケット受け40Mが含まれる。
ブラケット40Bは、固定段11を構成する固定火格子11S,11S,…の元端下側に嵌合し、これらの固定火格子11S,11S,…を保持する例えば鉄製の鋼材である。特に、図4(A)、図5(A)に示した例では、固定火格子11S,11S,…の各々の元端下側に凹部11Pが設けられているので、ブラケット40Bは、それらの凹部11Pに嵌合する平板状の凸部40Pを備えている。また、このブラケット40Bは、略水平な平板部40Hも備えており、その平板部40Hを含めた全体の形状は、断面略横倒T字状をしている。
【0025】
ブラケット受け40Mは、ブラケット40Bの平板部40Hの下面側にボルト等で固定される例えば鉄製の鋼材であって、その形状は断面略下向きコ字状をしている。このブラケット受け40Mは、不図示のフレーム(梁材、桁材など)を介してストーカ炉1の本体側に固定される。
【0026】
ここで、従来は、図4(B)に示すとおり、固定火格子11S,11S,…とブラケットBの嵌合箇所Pに被処理物2が入り込み、これが堆積すると、固定火格子11S,11S,…の元端側が次第に浮き上がり、その姿勢が不適切となった結果バランスを失い、凹部11Pと凸部40Pの嵌合が外れ、固定火格子11Sが脱落する可能性があった。また、固定火格子11S,11S,…が、元端側よりも先端側が低くなるような傾斜を設けて配置されていることで、嵌合箇所Pに被処理物2が入り込む可能性が高くなるおそれがあった。
【0027】
そこで、本実施形態の取付部40を構成するブラケット40Bの平板部40Hには、図5(A),(B)に示すとおり、複数の開口30,30,30,…が設けられている。
また、本実施形態の取付部40を構成するブラケット受け40Mの天井部(ブラケット40Bが固定される面)にも、開口31,31,…が設けられている。
なお、ブラケット40Bの平板部40Hにおける開口30のレイアウト(開口パターン)と、ブラケット受け40Mの天井部における開口31のレイアウト(開口パターン)とは、完全に一致している必要はない。
そして、取付部40のブラケット40Bに設けられた開口30,30,30,…及びブラケット受け40Mに設けられた開口31,31,31,…は、例えば取付部40の上部に位置する搬送路100の隙間(可動火格子12S,12Sの隙間や固定火格子11Sと可動火格子12Sの段差の隙間)から落下してくる被処理物2,2,…を下方へ排出し、嵌合箇所Pの隙間に入り込む被処理物2の量を軽減するという機能を有している。つまり、取付部40のブラケット40Bに設けられた開口30,30,…及びブラケット受け40Mに設けられた開口31,31…は、火格子脱落防止構造としての機能を果たす。
【0028】
なお、ブラケット40Bにおける開口30,30,…の形成先及びブラケット受け40Mにおける開口31,31,…の形成先は、ブラケット40B及びブラケット受け40Mのうち前述した嵌合箇所Pになるべく近い方が望ましく、開口30,30,…,31,31,…の少なくとも一部が嵌合箇所Pの下方に位置していることが更に望ましい。つまり、開口30,30,…,31,31,…は固定火格子11の元端よりも搬送方向手前側(上流側)に位置してもよいが、開口30,30,…,31,31,…の少なくとも一部が固定火格子11Sの元端の鉛直下方に位置していることが更に望ましい。具体的に、図5(A),(B)に示した例では、ブラケット40Bの開口30,30,…が、搬送方向奥側(下流側)にまで延在しており、固定火格子11の下側にまで入り込んでいる。このような位置の開口30,30,…は、嵌合箇所Pに被処理物2が堆積するのを効率的に抑制できる。
【0029】
尚、本実施形態では、ブラケット受け40Mの開口31,31,…を、ブラケット40Bの開口30,30,…と同様に搬送方向奥側(下流側)にまで延在させ、固定火格子11の下側に入り込むようにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態のストーカ炉1には、火格子脱落防止構造の一部として、図1に示すとおりホッパ300が配置される。このホッパ300は、階段状の搬送路100の下方に配置されており、細い白抜き矢印で示すとおり取付部40,40,40,40の開口30,30,…,31,31,…(図5参照)から排出された被処理物2を回収することが可能である。ホッパ300によって回収された被処理物2は、前述した不図示のコンベア(回避路)に落下し、正規の搬送路100で搬送された被処理物2と共にまとめて搬送される。したがって、本実施形態の火格子脱落防止構造によれば、搬送路100の隙間から落下した微細な被処理物2を除去する作業の負担も軽減される。
【0031】
なお、本実施形態では、開口(符号30,31,32)の設け先を、取付部40のブラケット40B、ブラケット受け40M、及び梁22(図3参照)としたが、これに限定されることはない。例えば、何れかの可動段12がブラケット40Bを介して直接的に台車20に取付けられる場合には、ブラケット受け40Mが省略されることもある。また、ブラケット40(及びブラケット受け40M)に設けられた開口(符号30,31)の下方(被処理物2の落下ルート)が台車20の梁によって妨げられない場合には、その梁に開口(符号32)を設ける必要はない。
【0032】
[ブラケットの具体例]
次に、ブラケット40Bの具体例として、上段固定段用ブラケットの構造の詳細について説明する。尚、以下に説明する上段固定段用ブラケット40Bの構造は、他のブラケットにも同様に適用することができるが、ブラケットの取付先や配置に応じて種々に変形することが可能である。
図6(A)は上段固定段用ブラケットの平面図、図6(B)は図6(A)のA-A断面図、図6(C)は図6(A)のB-B断面図である。
図6に示すとおり、上段固定段用ブラケット40Bは、前述したブラケット受け40M(図5(A))に固定される平板部40Hと、前述した固定火格子11S,11S,…(図5(A))に嵌合する板状の凸部40P(前述した嵌合箇所Pに相当)とを有し、平板部40H及び板状の凸部40Pの全体の断面形状は前述したとおり横倒略T字状である。そして、平板部40H及び板状の凸部40Pの全体は、搬送路100の幅方向に並ぶ複数の固定火格子11S,11S,…を保持するために、搬送路100の幅方向に長い平面視長方形状をしている。
ここで、上段固定段用ブラケット40Bにおいて、平板部40Hの表面側と板状の凸部40Pとの間には、当該ブラケット40Bの強度を維持するためのリブR,R,R,…が立設されている。また、上段固定段用ブラケット40Bの平板部40Hには、当該ブラケット40Bをブラケット受け40M(図5)に対してボルト固定するためのボルト孔41,41,…も設けられている。
このため、上段固定段用ブラケット40Bの開口30,30,…は、これらのリブR,R,R,…及び固定用ボルト孔41,41,…を避けるようにして平板部40Hに設けられている。言い換えると、リブR,R,R,…及び固定用ボルト孔41,41,…は、開口30,30,…を避けるようにして設けられている。いずれにせよ、平板部40Hにおける開口30の割合(開口率)とリブRの個数との関係は、火格子脱落防止機能とブラケット40Bの強度低下とが所望のバランスになるように選定されている。
なお、図6に示す開口30,30,…のパターン(開口パターン)は一例であって、適宜に変更することが可能である。例えば、上述した図5(B)に示したように、固定火格子11S毎に開口30が設けられていてもよい。因みに、図5(B)では搬送路100の幅方向において複数の固定火格子11S,11S,…が取り付けられる位置の一部に開口30,30,…が設けられている(つまり個々の開口30の幅が個々の固定火格子11Sの幅よりも狭く設定されている)が、搬送路100の幅方向において少なくとも1つの固定火格子11Sが取り付けられる位置の全領域に開口30が設けられている(つまり個々の開口30の幅が個々の固定火格子11Sの幅相当に設定されている)ことが好ましい。これにより、少なくとも1つの固定火格子11Sの元端近傍に堆積する被処理物2を、搬送路100の幅方向全領域にかけて下方へ排出することが可能となる。更に、搬送路100の幅方向において全ての固定火格子11Sが取り付けられる位置の全領域に開口30が設けられている(つまり開口30の幅が固定火格子11Sの幅より広く設定され、場合によっては隣接する開口30が連続している)ことが好ましい。なお、ブラケット40Bにおける開口30のパターンについての上記説明は、ブラケット受け40Mにおける開口31のパターンにも同様に当てはまる。
【0033】
[ブラケット受けの具体例]
次に、ブラケット受け40Mの具体例として、上段固定段用ブラケット受けの構造について説明する。尚、以下に説明する上段固定段用ブラケット受け40Mの構造は、他のブラケット受けにも同様に適用することができるが、ブラケット受けの取付先や配置に応じて種々に変形することが可能である。
図7(A)は上段固定段用ブラケット受けの平面図、図7(B)は図7(A)のC-C断面図、図7(C)は図7(A)のD-D断面図である。
図7(A),(B),(C)に示すとおり、上段固定段用ブラケット受け40Mの形状は、断面略下向きコ字状をしている。
ここで、上段固定段用ブラケット受け40Mの内部には、当該ブラケット受け40Mの強度を維持するための不図示のリブが立設されている。また、上段固定段用ブラケット受け40Mの天井部40Uには、当該ブラケット受け40Mをブラケット40B(図6)に対してボルト固定するためのボルト孔42,42,…も設けられている。
このため、上段固定段用ブラケット受け40Mの開口31,31,…は、不図示のリブ及び固定用ボルト孔42,42,…を避けるようにして天井部40Uに設けられている。言い換えると、不図示のリブ及び固定用ボルト孔42,42,…は、開口31,31,…を避けるようにして設けられている。いずれにせよ、天井部40Uにおける開口31の割合(開口率)と不図示のリブの個数との関係は、火格子脱落防止機能とブラケット受け40Mの強度低下とが所望のバランスになるように選定されている。
なお、図7に示す開口31,31,…のパターン(開口パターン)は一例であって、適宜に変更することが可能である。
【0034】
[実施形態の効果]
以上説明したとおり、本実施形態に係る火格子脱落防止構造又はこれを備えたストーカ炉1によれば、可動段12又は固定段11を保持する取付部40の所定場所に開口30,30,…,31,31,…,32,32,…を設け、何らかの理由によって上方から落下してくる微細な被処理物(具体的には、上段の固定火格子11S,11S,…又は可動火格子12S,12S,…の隙間や固定段11及び可動段12の段差の隙間から落下してくる微細な被処理物2)を下方へと排出するので、火格子11S,11S,…,12S,12S,…と取付部40との嵌合箇所Pに入り込む被処理物2の量を軽減することができ、被処理物2の堆積に起因した火格子11S,11S,…,12S,12S,…の脱落の可能性を低く抑えることができるという効果がある。
【0035】
[開口形状の変形例]
図3図6図7等に描かれた開口30,31,32は何れも平面視長方形状であるが、開口30,31,32の輪郭形状はこれに限定されることはない。隅部にアールをつけてもよいし、輪郭を曲線状にしてもよいし、長方形以外の多角形状にしてもよい。但し、加工容易性を考慮すると、開口30,31,32の輪郭形状は平面視長方形状又はこれに近い形状にすることが望ましいと考えられる。
【0036】
[嵌合箇所の変形例]
上述した実施形態では火格子の下側に凹部を設けて取付部の側に凸部を設けたが、火格子の下側に凸部を設けて取付部の側に凹部を設けることも可能であるし、凹凸形状以外の形状に変形してもよい。例えば、火格子の凹部と取付部の凸部の側面にそれぞれ傾斜を設けるなど、被処理物が堆積しにくい形状にしてもよい。つまり、嵌合箇所Pの形状は必要に応じて様々に変形することが可能である。いずれの形状を採用したとしても、被処理物2の堆積による火格子脱落という問題は生じ得るので、本実施形態の火格子脱落防止構造が有効である。
【0037】
[開口の形成先の変形例]
上述した実施形態では、火格子脱落防止構造である開口30,31,32の形成先として、ブラケット40B、ブラケット受け40M、台車20の梁21を例に挙げたが、取付部40の開口30,31,32の下方かつホッパ300の上部の空間に何らかの部材(桁材、梁材など)が配置される場合には、その部材にも、上方から落下してくる被処理物2を通過させるための開口が設けられる。
【0038】
[その他]
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、固定段及び可動段の段数、固定段又は可動段に配置された複数の火格子の枚数などは、種々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ストーカ炉
100 搬送路
11 固定段
11P 凹部
11S 固定火格子
12 可動段
12S 可動火格子
2 被処理物
20 台車
200 炉壁
22 梁
23 梁
30 開口
31 開口
32 開口
300 ホッパ
40 取付部
400 駆動機構
40B ブラケット
40H 平板部
40M ブラケット受け
40P 凸部
40U 天井部
41 ボルト孔
42 ボルト孔
P 嵌合箇所
R リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7