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特開2024-97250静電チャック、基板処理装置、および静電チャックの製造方法
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  • 特開-静電チャック、基板処理装置、および静電チャックの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097250
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】静電チャック、基板処理装置、および静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240710BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240710BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240710BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101L
H01L21/302 101G
C23C14/50 A
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000700
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】南 雅人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知弥
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K029BD01
4K029JA01
4K029JA06
4K030GA02
4K030JA03
5F004AA01
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB29
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB54
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】基板処理のムラを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】静電チャックは、基板を支持する支持面を備える。前記支持面は、同じ高さに形成された複数の突起部が面方向に並ぶことにより構成される。相互に隣接し合う前記複数の突起部同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲である。また前記支持面の平面視で、前記支持面の1mm単位に占める前記複数の突起部の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する支持面を備える静電チャックであって、
前記支持面は、同じ高さに形成された複数の突起部が面方向に並ぶことにより構成され、
相互に隣接し合う前記複数の突起部同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、
かつ前記支持面の平面視で、前記支持面の1mm単位に占める前記複数の突起部の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である、
静電チャック。
【請求項2】
前記支持面の平面視で、前記複数の突起部の間隔に対する前記複数の突起部の最大幅の倍率は、0.2倍乃至0.7倍の範囲である、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記複数の突起部は、前記支持面の平面視で円形状に形成され、
前記複数の突起部の直径は、0.1mm乃至0.3mmの範囲である、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記複数の突起部の高さは、0.01mm乃至0.05mmの範囲である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記静電チャックは、前記基板としてフラットパネルディスプレイ用基板を支持するものであり、
前記支持面は、当該支持面の平面視で方形状に形成され、第1方向の寸法が1490mm以上であり、第1方向と直交する第2方向の寸法が1790mm以上である、
請求項1乃至3のいずか1項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記静電チャックは、アルミナにより形成された下層および上層と、前記下層および前記上層の間で電極を構成する中間層と、を有し、
前記複数の突起部は、前記上層に一体形成されて、当該上層から突出している、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項7】
フラットパネルディスプレイ用基板に対して基板処理を行う処理容器と、
前記処理容器の内部に設けられ、前記フラットパネルディスプレイ用基板を支持する支持面を備える静電チャックと、を含むフラットパネルディスプレイ用の基板処理装置であって、
前記支持面は、同じ高さに形成された複数の突起部が面方向に並ぶことにより構成され、
相互に隣接し合う前記複数の突起部同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、
かつ前記支持面の平面視で、前記支持面の1mm単位に占める前記複数の突起部の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である、
基板処理装置。
【請求項8】
基板を支持する支持面を備える静電チャックの製造方法であって、
前記支持面は、同じ高さに形成された複数の突起部が面方向に並ぶことにより構成され、
(A)前駆体の表面を平坦化する工程と、
(B)平坦化した前記前駆体の表面に点状の複数のマスクを形成する工程と、
(C)ブラスト加工を行うことで前記複数のマスクの間に隙間を形成した後に、前記マスクを除去する工程と、をこの順に行うことで、前記複数の突起部を形成する、
静電チャックの製造方法。
【請求項9】
前記(B)の工程では、スクリーン印刷により前記前駆体の表面に点状の複数のインクを塗布し、その後に前記複数のインクに紫外線を照射して硬化させることで前記複数のマスクを形成する、
請求項8に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項10】
前記(C)の工程では、前記複数のマスクを有する前記前駆体にブラスト材を吹き付けることで前記前駆体を彫り込み、その後に前記前駆体の表面を研磨することで前記マスクを除去する、
請求項8に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項11】
相互に隣接し合う前記複数の突起部同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、
かつ前記支持面の平面視で、前記支持面の1mm単位に占める前記複数の突起部の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である、
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項12】
前記支持面の平面視で、前記複数の突起部の間隔に対する前記複数の突起部の最大幅の倍率は、0.2倍乃至0.7倍の範囲である、
請求項11に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項13】
前記複数の突起部は、前記支持面の平面視で円形状に形成され、
前記複数の突起部の直径は、0.1mm乃至0.3mmの範囲である、
請求項12に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項14】
前記複数の突起部の高さは、0.01mm乃至0.05mmの範囲である、
請求項11に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項15】
前記静電チャックは、前記基板としてフラットパネルディスプレイ用基板を支持するものであり、
前記支持面は、当該支持面の平面視で方形状に形成され、第1方向の寸法が1490mm以上であり、第1方向と直交する第2方向の寸法が1790mm以上である、
請求項11に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項16】
前記静電チャックは、アルミナにより形成された下層および上層と、前記下層および前記上層の間で電極を構成する中間層と、を有し、
前記複数の突起部は、前記上層に一体形成されて、当該上層から突出している、
請求項11に記載の静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャック、基板処理装置、および静電チャックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器(処理容器)の内部において、基板を支持する静電チャックが開示されている。この静電チャックのチャックプレートは、シリコーン等の誘電体樹脂からなる弾性体に構成されている。また、チャックプレートの上面は、エンボス加工が施されることで、複数の凸部(突起部)を有している。
【0003】
あるいは、基板処理装置は、複数の突起部を備えずに、平坦状の支持面を有する静電チャックを適用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/115952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、静電チャックにより支持している基板に対する基板処理のムラを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を支持する支持面を備える静電チャックであって、前記支持面は、同じ高さに形成された複数の突起部が面方向に並ぶことにより構成され、相互に隣接し合う前記複数の突起部同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、かつ前記支持面の平面視で、前記支持面の1mm単位に占める前記複数の突起部の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である、静電チャックが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、静電チャックにより支持している基板に対する基板処理のムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す側面断面図である。
図2図2(A)は、静電チャックの一部を拡大して示す側面断面図である。図2(B)は、一構成例の支持面を拡大して示す平面図である。図2(C)は、他の構成例の支持面を拡大して示す平面図である。
図3】静電チャックの複数の突起部を拡大して示す側面断面図である。
図4】静電チャックの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5(A)~図5(D)は、静電チャックの製造方法を示す第1説明図~第4説明図である。
図6図6(A)および図6(B)は、静電チャックの製造方法を示す第5説明図および第6説明図である。図6(C)は、製造方法の研磨ステップにより研磨される各突起部を拡大して示す図である。
図7図7(A)は、本実施形態に係る静電チャックによる基板の支持状態を示す拡大断面図である。図7(B)は、第1比較例に係る静電チャックによる基板の支持状態を示す拡大断面図である。図7(C)は、第2比較例に係る静電チャックによる基板の支持状態を示す拡大断面図である。
図8】静電チャックの所定方向に沿った電界のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す側面断面図である。図1に示すように、一実施形態に係る静電チャック67は、基板処理装置の一例であるフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)用のプラズマ処理装置100に適用される。FPDとしては、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)やエレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)等があげられる。以下、本発明の理解の容易化のため、このプラズマ処理装置100の構成について、先に説明していく。
【0011】
プラズマ処理装置100は、平面視で方形状のフラットパネルディスプレイ用基板(以下、単に基板Gと言う)に対して、各種の基板処理を行う誘導結合型プラズマ(Inductive Coupled Plasma: ICP)の装置に構成される。基板の材料としては、ガラス、または透明な合成樹脂等があげられる。各種の基板処理としては、エッチング処理、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜処理等があげられる。
【0012】
プラズマ処理装置100によって処理される基板Gの平面寸法は、例えば、第6世代の1500mm×1800mm程度~第10世代の2800mm×3100mm程度の範囲を少なくとも含む。基板Gの厚みは、例えば、0.3mm~数mm程度である。
【0013】
図1に示すプラズマ処理装置100は、直方体形状の箱型の処理容器10と、処理容器10内に収容されて基板Gが載置される基板載置台60と、を備える。また、プラズマ処理装置100は、装置の各種の構成を制御する制御部90を有する。
【0014】
処理容器10は、誘電体板11と、誘電体板11の鉛直方向上側に設置されるアンテナ容器12と、誘電体板11の鉛直方向下側に設置される処理容器本体13と、を含み、誘電体板11により内部が上下2つの空間に区画されている。アンテナ容器12は、誘電体板11と共にアンテナ室を形成している。処理容器本体13は、誘電体板11と共に処理室Sを形成している。
【0015】
また、処理容器10は、アンテナ容器12と処理容器本体13との間に、方形枠状の支持枠14を挟んでいる。支持枠14は、処理容器10の内側に突出する部分を有し、この部分により誘電体板11を支持している。処理容器10は、接地線13cを介して接地されている。
【0016】
アンテナ容器12および処理容器本体13は、アルミニウム等の金属により形成されている。誘電体板11は、アルミナ(Al)等のセラミックスや石英により形成されている。
【0017】
処理容器本体13の側壁13aには、処理容器本体13の内部に基板Gを搬入出可能にする搬入出口13bが設けられている。搬入出口13bは、ゲートバルブ20により開閉される。ゲートバルブ20の開放時に、図示しない搬送装置が、搬入出口13bを介して処理容器本体13の内部に基板Gを搬入または搬出する。
【0018】
また、処理容器本体13の底部には、ガス排気部50に接続される複数の排気口13dが設けられている。ガス排気部50は、複数の排気口13dに接続される複数のガス排気管51と、各ガス排気管51の排気路を開閉する開閉弁52と、各ガス排気管51が接続される排気装置53と、を備える。排気装置53は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有し、基板処理時に処理容器本体13の内部を真空引きする。
【0019】
誘電体板11の下面には、シャワーヘッド30が設けられている。シャワーヘッド30は、誘電体板11を支持するための支持梁を兼ねている。シャワーヘッド30は、アルミニウム等の金属により形成されている。シャワーヘッド30の表面は、陽極酸化処理等が施されてもよい。シャワーヘッド30は、水平方向に延在するガス流路31と、このガス流路31とシャワーヘッド30の鉛直方向下側にある処理室Sとの間を連通する複数のガス吐出孔32とを有する。
【0020】
シャワーヘッド30には、ガス流路31にガスを供給する処理ガス供給部40が接続されている。処理ガス供給部40は、ガス供給管41と、ガス供給管41の途中位置に設けられる開閉バルブ42および流量制御器43と、ガス供給管41の端部に設けられる処理ガス供給源44と、を含む。なお、複数種類のガスを供給する場合、ガス供給管41は、途中位置で分岐して、それぞれに開閉バルブ、流量制御器および処理ガス供給源を備えるとよい。プラズマ処理装置100は、プラズマ処理時に、処理ガス供給源44からガス供給管41を介してシャワーヘッド30のガス流路31にガスを供給し、各ガス吐出孔32から処理室Sにガスを吐出する。
【0021】
処理容器10は、アンテナ容器12の内部に高周波アンテナ15を備える。高周波アンテナ15は、銅やアルミニウム等の導電性を有する金属から形成されるアンテナ線15aを、環状もしくは渦巻き状に配線することにより構成される。
【0022】
アンテナ線15aの端子には、アンテナ容器12の上方に延びる給電部材16が接続されている。給電部材16の上端には、給電線17が接続され、給電線17は、インピーダンス整合を行う整合器18を介して高周波電源19に接続されている。例えば、プラズマ処理装置100は、13.56MHzの高周波電力を、高周波電源19から高周波アンテナ15に印加することで、処理容器本体13内に誘導電界を形成する。この誘導電界により、シャワーヘッド30から処理室Sに供給された処理ガスがプラズマ化され、プラズマ中のイオンおよびラジカルが基板Gに提供される。高周波電源19は、プラズマ発生用のソース源となり、基板載置台60に接続されている後記の高周波電源73(電源の一例)は、発生したイオンを引き付けて運動エネルギを付与するバイアス電源となる。このように、イオンソース源では誘導結合を利用してプラズマを生成する一方で、別電源であるバイアス電源を基板載置台60に接続してイオンエネルギの制御を行うことで、プラズマの生成とイオンエネルギを独立して制御でき、基板処理の自由度が高められる。なお、高周波電源19から出力される高周波電力の周波数は、0.1MHz~500MHzの範囲内で適宜設定されることが好ましい。
【0023】
一方、処理容器10(処理容器本体13)内に設置される基板載置台60は、温調エリアを形成する基材61を有する。また、基板載置台60は、基板Gを直接支持する静電チャック67を、基材61の上面に備える。
【0024】
基材61は、平面視で方形に形成され、基板載置台60に載置される基板Gと同程度の平面寸法を有する。例えば、基材61の短辺(第1方向)の長さは1500mm~3000mm程度の範囲であり、基材61の長辺(第2方向)の長さは1800mm~3400mm程度の範囲である。また、静電チャック67の支持面67sも、基板Gに応じて平面視で方形状に形成され、例えば、短辺(第1方向)の寸法が1400mm以上、長辺(第2方向)の寸法が1790mm以上に設定される。
【0025】
基材61は、高い熱伝導率を有する金属製プレートであり、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等から形成され、絶縁材料からなる矩形部材68に載置されている。矩形部材68は、処理容器本体13の底板に固定されている。
【0026】
基材61は、温調媒体流路62を内部に有する。なお、基板載置台60は、温調媒体流路62に限らず種々の温調手段を有してよい。例えば、基材61の温調エリアは、ヒータのみを有する形態、温調媒体流路62とヒータの双方を有する形態等でもよい。
【0027】
温調媒体流路62の両端には、温調媒体を供給する送り配管64aと、温調媒体流路62を流通して昇温された温調媒体を排出する戻り配管64bとが接続される。送り配管64aと戻り配管64bには、送り流路82と戻り流路83がそれぞれ接続されており、送り流路82と戻り流路83はチラー81に接続されている。チラー81は、温調媒体の温度や吐出流量を制御すると共に、温調媒体を圧送する。チラー81と、送り流路82および戻り流路83とにより、基材61に固有の温調源80が形成される。
【0028】
プラズマ処理装置100は、静電チャック67もしくは基材61に熱電対等の図示しない温度センサを備え、基板Gの温度を監視する構成としてもよい。温度センサの検出情報が制御部90に送信されると、制御部90は、検出情報に基づいてチラー81を制御して、基板載置台60および基板Gの温度調整を行う。なお、基材61は、複数の温調エリアを設定してよく、この場合、各々の温調エリアに対応して異なる温調媒体流路、チラー、温調源を備えることが好ましい。
【0029】
また、基板載置台60は、静電チャック67と基板Gの間に、例えば、Heガス等の伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給部(不図示)を備える。伝熱ガス供給部は、静電チャック67内および基材61内に設けられる多数の貫通孔(不図示)を介して、基板Gの下面に伝熱ガスを供給する。これにより、温調制御される基板載置台60の温度が伝熱ガスを介して基板Gに速やかに熱伝達され、基板Gの温調制御が行われる。
【0030】
さらに、基板載置台60は、複数のリフトピン(不図示)を備える。リフトピンは、図示しない昇降機構により鉛直方向に沿って昇降し、静電チャック67の支持面67sから上方に突出して、搬送装置との間で基板Gの受け取りおよび受け渡しを行う。
【0031】
また、静電チャック67および基材61の外周と、矩形部材68の上面とにより段部が形成され、この段部には、方形枠状のフォーカスリング69が載置される。フォーカスリング69の設置状態で、フォーカスリング69の上面は、静電チャック67の上面よりも低くなる。フォーカスリング69は、アルミナ等のセラミックスもしくは石英等から形成される。基板Gが静電チャック67の支持面67sに載置された状態において、フォーカスリング69の上端面の内側端部は基板Gの外周縁部に覆われる。
【0032】
基材61には貫通孔63aが設けられており、給電部材70は、貫通孔63aを貫通して基材61の温調エリアの下面に接続されている。給電部材70の下端には給電線71が接続されている。給電線71は、インピーダンス整合を行う整合器72を介してバイアス電源である高周波電源73に接続されている。すなわち、基材61を構成する温調エリアが高周波電源73に対して電気的に接続されている。プラズマ処理装置100は、高周波電源73から基板載置台60に、例えば13.56MHzの高周波電力を印加することにより、高周波電源19により生成されたイオンを基板Gに引き付けることができる。なお、基材61の下面に給電部材70が接続され、基材61に高周波電力が印加される形態であってもよい。
【0033】
基板載置台60の静電チャック67は、誘電体671と、誘電体671の内部に埋め込まれる電極672と、を含む。電極672は、給電線74を介して直流電源75に接続されている。制御部90は、給電線74に設けられる図示しないスイッチをオンすることで、直流電源75から電極672に直流電圧を印加して、誘電体671に静電力(クーロン力)を生じさせる。この静電力により、静電チャック67の支持面67sに基板Gが静電吸着された状態となる。
【0034】
以下、この静電チャック67の構成について、さらに具体的に説明していく。図2(A)は、静電チャック67の一部を拡大して示す側面断面図である。図2(B)は、一構成例の支持面67sを拡大して示す平面図である。図2(C)は、他の構成例の支持面67sを拡大して示す平面図である。なお、図2(A)、および後記の図3図5図7は、発明の理解の容易化のために、水平方向の寸法に対して鉛直方向の寸法を大きく誇張して図示している。
【0035】
図2(A)に示すように、静電チャック67は、母材に対して複数の材料を溶射して積層していくことにより、下層673、中間層674および上層675を有する3層構造に形成される。母材は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等からなるプレートを適用できる。この母材として、上記した基材61を使用してもよく、基材61とは異なる部材を適用してもよい。
【0036】
下層673および上層675は、静電チャック67の誘電体671を構成する。下層673および上層675を形成する材料としては、例えば、アルミナ(Al)等の絶縁材料があげられる。一方、中間層674は、静電チャック67の電極672を構成する。中間層674を形成する材料としては、例えば、タングステン(W)等の導電性を有する材料があげられる。すなわち、3層構造は、アルミナを母材に最初に溶射して下層673を形成し、次にタングステンを下層673に溶射して中間層674を形成し、最後に再びアルミナを中間層674に溶射して上層675を形成することで製造される。
【0037】
そして、本実施形態に係る静電チャック67の上層675の表面(基準面675a)には、静電チャック67の製造においてエンボス加工が施されることで、複数の突起部676が設けられる。特に本実施形態において、複数の突起部676は、0.3mm以下の最大幅を有するマイクロエンボスに形成される。複数の突起部676の各々は、上層675と同じ材料(アルミナ等)にからなり、当該上層675に一体成形されている。各突起部676は、基準面675aから鉛直方向上側に向かって同じ高さで突出している。相互に隣接し合う2つの突起部676の間には、一定の幅の隙間676cが介在している。
【0038】
各突起部676は、図2(B)に示すように平面視で、静電チャック67の短辺に平行な第1方向に沿って等間隔に並ぶ突起列を形成し、さらに静電チャック67の長辺に平行な第2方向に沿って突起列を等間隔に配置したマトリックス状を呈している。なお、図2(C)に示すように、隣り合う2つ突起列の各突起部676は、千鳥状にずれて形成されてもよい。
【0039】
各突起部676は、平面視で正円形状に形成されている。ただし、各突起部676の平面視の形状は、正円形状に限定されず、楕円形状、方形状を含む多角形状等に形成されてもよい。例えば、正方形の複数の突起部676がマトリックス状に配置されることで、各突起部676同士の間に格子状の隙間676cが形成されてもよい。
【0040】
図3は、静電チャック67の複数の突起部676を拡大して示す側面断面図である。図3に示すように、各突起部676は、上層675の基準面675aに連結される基部677と、基部677の上部に連なる頭部678と、を有する。各突起部676の頭部678が、基板Gを支持する支持面67sを構成している。
【0041】
基部677は、基準面675aから鉛直方向上側に向かって徐々に小径となる円錘形状に形成されている。なお、基部677は、鉛直方向に沿って一定の外径を有する柱状に形成されてもよい。
【0042】
頭部678は、基部677の外周面に対して滑らかに連続しており、半球状の曲面に形成されている。頭部678の曲率半径は、基部677の半径よりも小さく設定されている。頭部678において最も鉛直方向上側に位置する最頂部678aが、基板Gに直接接触する部分となる。
【0043】
頭部678において少なくとも最頂部678aは、後述する静電チャック67の製造方法の研磨工程によって、鏡面磨きされた研磨部679となっている。研磨部679は、最頂部678aのみに限定されず、最頂部678aの周囲を囲う頭部678の曲面周辺部678bに連続していてよい。研磨部679の表面粗さRaとしては、例えば、0.1乃至0.5の範囲に設定することがあげられる。一方、基部677の外周面は、研磨部679を備えていなくてもよく、この外周面の表面粗さRaは、例えば、0.5乃至1.0の範囲となっている。研磨部679により滑らかな曲面を呈していることで、各突起部676は、基板Gの対向面(下面)を傷つけることなく支持することが可能となる。
【0044】
あるいは、頭部678の最頂部678aは、水平方向に沿って平坦に形成されてもよい。この場合、最頂部678aと曲面周辺部678bは、研磨部679により形成されたR状の境界を介して連続しているとよい。
【0045】
基準面675aに対する各突起部676の高さHは、各突起部676の耐久性や静電チャック67と基板Gの間を流れる伝熱ガスの流通性等を考慮して適切に設定されることが好ましく、例えば、0.01mm乃至0.05mmの範囲に設定されるとよい。本実施形態では、各突起部676の高さHを0.02mm(=20μm)としている。
【0046】
また、複数の突起部676同士の間隔Dは、0.2mm乃至0.5mmの範囲に設定されることが好ましい。本実施形態では、複数の突起部676同士の間隔Dを0.35mm(=350μm)としている。なお、本明細書において、複数の突起部676同士の間隔Dとは、隣り合う突起部676の最頂部678a同士の距離を指している。
【0047】
そして、各突起部676の直径φ(最大幅)は、後述する複数の突起部676同士の間隔Dに応じて適宜設定されることが好ましい。例えば、複数の突起部676同士の間隔Dに対して、各突起部676の直径φは0.2倍~0.7倍の倍率に設定されるとよい。このような倍率を採用することで、静電チャック67は、各突起部676により基板Gを安定的に支持しつつ、隙間676cを通して伝熱ガスをスムーズに流通させることができる。なお、本実施形態において、突起部676の直径φとは、基準面675aと接する箇所の基部677の直径に相当する。したがって、突起部676の頭部678の直径は、基部677の直径よりもさらに小さい。また、各突起部676が方形である場合、各突起部676の最大幅は、対角線の長さとなる。
【0048】
ただし、各突起部676の直径φが0.1mm未満の場合には、突起部676の製造の困難性、突起部676の耐久性の低下等の懸念がある。このため、各突起部676の直径φの下限は0.1mmにするとよい。また、各突起部676の直径φが0.3mmを超える場合には、突起部676が基板Gに近接する箇所が増大して後述する電界にムラが生じ易くなる可能性がある。したがって、各突起部676の直径φとしては、0.1mm乃至0.3mmの範囲に設定することがより好ましい。本実施形態では、突起部676の直径φは、0.175mm(=175μm)としている。
【0049】
静電チャック67は、以上の各突起部676の設計を採ることで、1mm単位当たりの突起部676の数を増やしつつ、隙間676c(間隔D)を充分に確保することができる。1mm単位当たりにおいて多数の突起部676が基板Gに接触することで、基板Gを安定して支持することが可能となる。
【0050】
より詳細には、静電チャック67は、支持面67sの平面視で、支持面67sの1mm単位に占める複数の突起部676の面積の占有率を、3%乃至40%の範囲に設定することが好ましい。占有率が3%未満の場合には、基板Gの支持が不安定になる一方で、占有率が40%を超える場合には、反応副生成物の堆積時に温度ムラが生じ易くなる可能性がある。なお、複数の突起部676の面積とは、支持面67sの1mm単位において、基準面675aに連結している箇所の基部677の面積を合算したものを言う。
【0051】
各突起部676の形状および各突起部676同士の間隔Dが微小であることで、本実施形態に係る静電チャック67は、従来の製造方法によりエンボス加工を行うことが難しくなる。従来の製造方法とは、静電チャック67の上層675に複数の貫通孔を有する金属製のマスクプレート(不図示)を載せて、このマスクプレートの載置状態で、突起部676の材料であるアルミナを溶射で吹き付ける方法である。そこで、本実施形態に係る静電チャック67は、従来と異なる製造方法によりエンボス加工を行い、各突起部676を形成する。
【0052】
次に、突起部676を有する静電チャック67の製造方法について、図4図6を参照しながら説明する。図4は、静電チャック67の製造方法を示すフローチャートである。図5(A)~図5(D)は、静電チャック67の製造方法を示す第1説明図~第4説明図である。図6(A)および図6(B)は、静電チャック67の製造方法を示す第5説明図および第6説明図である。図6(C)は、製造方法の研磨ステップにより研磨される各突起部676を拡大して示す図である。
【0053】
図4に示すように、静電チャック67の製造方法では、3層構造形成工程(S1)、平面研削盤加工工程(S2)、スクリーン印刷工程(S3)およびブラスト加工工程(S4)を、この順に実施する。
【0054】
3層構造形成工程(S1)は、上記したように、静電チャック67の下層673、中間層674、上層675からなる3層構造を母材(例えば、基材61)に積層する。なお、3層構造形成工程(S1)では、後に上層675を削って各突起部676を生成可能とするために、上層675の肉厚を下層673の肉厚よりも厚く形成する。
【0055】
平面研削盤加工工程(S2)は、3層構造形成工程(S1)により形成された前駆体P1の上層675の表面を平坦状に加工する。この平面研削盤加工工程(S2)では、図5(A)に示すような平面研削盤200を使用する。例えば、平面研削盤200は、前駆体P1の表面に沿って回転しながら水平方向に移動する砥石201と、前駆体P1を支持する支持台(不図示)とを有する。平面研削盤200は、砥石201の動作下に上層675を研削することで、上層675の表面を平坦状にする。
【0056】
図4のスクリーン印刷工程(S3)は、平面研削盤加工工程(S2)により形成された前駆体P2に対して、スクリーン印刷を行うことでマスクを形成する。詳細には、スクリーン印刷工程(S3)では、インクIを塗布するスクリーン印刷ステップ(S31)と、塗布されたインクIを硬化する硬化ステップ(S32)と、を順に行う。
【0057】
スクリーン印刷ステップ(S31)では、図5(B)に示すようなスクリーン印刷装置300を使用する。スクリーン印刷装置300は、方形枠状のフレーム301と、このフレーム301の内側にセットされる製版302と、製版302の鉛直方向下側において前駆体P2を支持する支持台(不図示)とを有する。製版302には、静電チャック67の各突起部676の平面形状、および各突起部676同士の間隔Dに対応した複数の孔302hが形成されている。つまり、各孔302hの直径は、各突起部676の直径φと略同一に設定されており、各孔302h同士の間隔は、各突起部676同士の間隔Dと略同一に設定されている。
【0058】
スクリーン印刷ステップ(S31)では、印刷の前に、この製版302の上面に、マスクMに適用されるインクIが充填される。インクIは、紫外線UVの照射により硬化可能、かつ後記のブラスト加工工程(S4)での除去が抑制される材料が適宜選択されることが好ましい。例えば、インクIの材料としては、ポリエステル、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の樹脂材料があげられる。
【0059】
図5(C)に示すように、スクリーン印刷において、スクリーン印刷装置300は、スキージ303により製版302にインクIを押し付けながら、製版302の上面に沿ってスキージ303をスライドさせる。これにより、製版302が下方の前駆体P2に接触すると共に、製版302の各孔302hを介して、インクIが前駆体P2に点状(ドット状)に塗布される。
【0060】
その後、図4の硬化ステップ(S32)では、スクリーン印刷装置300から前駆体P2を取り出して、点状に塗布されたインクIを硬化させる。図5(D)に示すように、この硬化ステップ(S32)では、インクIを有する前駆体P2の上方に紫外線照射装置310を配置して、紫外線照射装置から紫外線UVを照射する。これにより、インクIが硬化して、点状の複数のマスクMを平坦状の表面に有する前駆体P3が形成される。なお、マスクMの作成はインクジェット印刷等でも形成できるが、粘着不足なくマイクロサイズにインクを点状印刷する上で、スクリーン印刷であることが好ましい。
【0061】
そして、図4のブラスト加工工程(S4)は、点状の複数のマスクMを有する前駆体P3に対してブラスト加工を行うことで、各突起部676を形成する。詳細には、ブラスト加工工程では、ブラスト材を吹き付けてマスクM以外の前駆体P3を彫り込むエンボス形成ステップ(S41)と、マスクMを有する各突起部676を研磨する研磨ステップ(S42)と、を順に行う。
【0062】
エンボス形成ステップでは、図6(A)に示すようなブラスト装置400を使用する。ブラスト装置400は、ブラスト材を吹き付けながら移動するノズル401と、前駆体P3を支持する支持台(不図示)とを有する。このブラスト材は、硬化したマスクMの研削を抑制しながら、上層675(アルミナ)を研削可能な材料が適用される。例えば、ブラスト材としては、粒状のガラスビーズ、アルミナ、シリコンカーバイド(SiC)、ジルコニア(ZrО)等があげられる。
【0063】
ブラスト装置400は、ノズル401と前駆体P3を相対移動させながらブラスト材を吹き付けることで、マスクMの周囲の上層675全体を彫り込んでいく。例えば、ブラスト装置400は、上層675の表面に対してブラスト材を吹き付ける単位作業時間を均一にすることで、同じ深さの隙間466cを上層675に形成することができる。これにより、頭部678の上にマスクMが残った状態の各突起部676を有する前駆体P4が形成される。このようにブラストによる掘り込みでエンボス形成することで、従来の溶射による製法よりも最頂部678aの高さが揃い、かつエンボスが脱落し難くなる。
【0064】
研磨ステップ(S42)では、各突起部676上のマスクMを除去しつつ、各突起部676にバフ研磨を行うことで、上記した研磨部679を形成する。例えば、研磨ステップ(S42)では、図6(B)に示すような研磨装置410を使用する。研磨装置410は、バフ412を回転させなら移動する研磨体411と、前駆体P4を支持する支持台(不図示)とを有する。バフ412は、マスクMを除去可能かつ各突起部676を研磨可能なものが適用される。このバフ412としては、例えば、麻、綿等の布材や、ナイロン等のスポンジ材があげられる。研磨装置410は、先にマスクMを除去する専用の研磨体411を使用し、その後に各突起部676の頭部678が半球状となるように研磨を行う別の研磨体411を使用してもよい。
【0065】
図6(C)に示すように、平面研削盤加工工程(S2)により平坦状を呈していた各突起部676の上端は、上記のバフ研磨によって、半球状に研磨される。すなわち、本実施形態に係る各突起部676は、バフ412の回転下に、頭部678(最頂部678aおよび曲面周辺部678b)全体が鏡面磨きされて、研磨部679を有した状態となる。
【0066】
以上の製造方法により製造された静電チャック67の支持面67sは、エンボス加工された同じ高さの複数の突起部676により基板Gの重量を分散して支持することができる。特に、基板Gと直接接触する各突起部676の最頂部678aに研磨部679を有することで、各突起部676は、基板Gの損傷を抑制して基板Gを支持することが可能となる。
【0067】
次に、複数の突起部676を有する静電チャック67により基板Gを支持した際の効果について、図7および図8を参照しながら説明する。図7(A)は、本実施形態に係る静電チャック67による基板Gの支持状態を示す拡大断面図である。図7(B)は、第1比較例に係る静電チャックC1による基板Gの支持状態を示す拡大断面図である。図7(C)は、第2比較例に係る静電チャックC2による基板Gの支持状態を示す拡大断面図である。
【0068】
第1比較例に係る静電チャックC1は、エンボス加工を行わずに、溶射(または研削)により略平坦状の支持面67sを形成したものである。ただし図7(B)に示すように、平坦状の支持面67sであってもmm単位に拡大して見た場合は、多数の鋸歯状の凹凸が形成された状態となっている。すなわち、静電チャックC1は、支持面67sを構成する複数の鋸歯状の凸において基板Gを支持する。
【0069】
プラズマ処理装置100のプラズマ処理等に伴ってデポDPが生じた場合、この静電チャックC1の支持面67sでは、複数の鋸歯状の凹の箇所にデポDPが溜まるようになる。そして、このようにデポDPが溜まっていくことで、静電チャックC1がデポDPを介して基板Gに多く接触する部分と、デポDPがないことで基板Gに殆ど接触しない部分とが生じるようになる。換言すれば、基板Gに多く接触する部分と、基板Gに殆ど接触しない部分とでは、静電チャックC1を温度調整した際の熱伝達にムラが発生するようになる。そして、基板Gの面内温度分布にムラが生じることで、基板処理にもムラが出るようになり、フラットパネルディスプレイの表示ムラにつながる。
【0070】
一方、第2比較例に係る静電チャックC2は、エンボス加工を行うことで支持面67sを形成したものである。ただし、第2比較例に係るエンボス加工は、上記した溶射によって上層675に各突起部676を形成したものである。そのため、図7(C)に示すようにmm単位に拡大して見た場合、各突起部676の頭部にも、複数(多数)の鋸歯状の凹凸が形成された状態となっている。したがって、静電チャックC2も、各突起部676における複数の鋸歯状の凸において基板Gを支持する。
【0071】
プラズマ処理装置100のプラズマ処理等に伴ってデポDPが生じた場合、この静電チャックC2の支持面67sでは、複数の突起部676間の隙間676cにデポDPが溜まるようになる。このため、静電チャックC2がデポDPを介して基板Gに多く接触する部分が抑制される。ただし、各突起部676においては、デポDPを介して基板Gに多く接触する部分が発生し、デポDPがない時の支持状態と、デポDPがある時の支持状態とでは、各突起部676の熱伝達特性に多少の違いが生じることになる。
【0072】
これに対して、本実施形態に係る静電チャック67の支持面67sは、上記した製造方法によって、マイクロエンボス(複数の突起部676)を形成している。しかも図7(A)に示すようにmm単位に拡大して見た場合、各突起部676は、鏡面磨きされた最頂部678a(研磨部679)において基板Gを支持する。
【0073】
プラズマ処理装置100のプラズマ処理等に伴ってデポDPが生じると、この静電チャック67の支持面67sでは、複数の突起部676間の隙間676cにデポDPが溜まり、各突起部676の最頂部678aには殆ど溜まらないことになる。その結果、静電チャック67がデポDPを介して基板Gに多く接触する部分が抑制されると共に、各突起部676においてもデポDPの堆積による熱伝達特性の変化が可及的に抑えられる。したがって、静電チャック67は、基板処理を複数繰り返しても基板Gの面内温度分布を継続的に均一に保つことができると言え、基板処理のムラを低減することが可能となる。
【0074】
図8は、静電チャック67、C2の所定方向に沿った電界のシミュレーション結果を示すグラフである。図8中の実線は、本実施形態に係る静電チャック67による基板Gの支持時の電界である一方で、図8中の2点鎖線は、第2比較例に係る静電チャックC2による基板Gの支持時の電界である。なお、静電チャック67、C2の電界とは、高周波電源73から基材61に所定の高周波電圧を印加することで生じる電界である。
【0075】
第2比較例に係る静電チャックC2において複数の突起部676は、概ね5mm程度離れた位置に配置されている。静電チャックC2の各突起部676は、上記したように溶射によって形成されるためである。そのため、静電チャックC2の電界は、図8に示すように、複数の凸形状を有するように形成される。電界の各凸形状の箇所は、静電チャックC2の各突起部676が基板Gを支持している位置に一致する。換言すれば、静電チャックC2では、各突起部676によって、基板Gにかかる電界にムラがある(電界の変化が大きい)と見なすことができる。
【0076】
これに対して、本実施形態に係る静電チャック67において、複数の突起部676同士の間隔は0.2乃至0.5mmであり、また支持面67sの1mm単位に占める複数の突起部676の面積の占有率が3%乃至40%の範囲である。すなわち、第2比較例に係る静電チャックC2に対して、静電チャック67は、非常に小さい多数の突起部676により基板Gを支持しているため、実質的に平坦な支持面67sによって基板Gを支持している状態と言える。
【0077】
そのため、静電チャック67の電界は、概ね平坦状に変化するように形成される。換言すれば、静電チャック67は、基板Gの面内における電界の分布を概ね均一にした(電界の変化が小さい)状態で基板Gを支持することができる。これにより、静電チャック67は、支持している基板Gに対する基板処理のムラを一層低減することが可能となる。なお、基板処理のムラとは、基板処理の内容にもよるが、基板Gに対する処理量の変化のことである。例えば、基板処理がエッチングの場合には、エッチングレートの面内均一性が大きく変化することを言い、あるいは基板処理が成膜の場合には、膜厚の面内均一性が大きく変化することを言う。換言すれば、本実施形態に係る静電チャック67は、マイクロエンボス加工した各突起部676によって、基板処理の面内均一性を大幅に高めることができる。
【0078】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0079】
本開示の第1の態様は、基板Gを支持する支持面67sを備える静電チャック67であって、支持面67sは、同じ高さに形成された複数の突起部676が面方向に並ぶことにより構成され、相互に隣接し合う複数の突起部676同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、かつ支持面67sの平面視で、支持面67sの1mm単位に占める複数の突起部676の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である。
【0080】
上記によれば、静電チャック67は、可及的に小さな形状でかつ隙間をあけて並んだ複数の突起部676により基板Gを安定して支持することができる。これにより、デポDPが各突起部676にまばらに堆積することで、デポDPを介して基板Gの面内温度分布にムラが生じることを抑制できる。しかも、支持面67sは、各突起部676にとり実質的に平坦状に形成されていることで、電界が局所的に高く変化することを回避して、基板Gに対する電界のムラを抑えることができる。これらによって、静電チャック67は、支持している基板Gに対する基板処理のムラが大幅に抑制され、フラットパネルディスプレイの表示ムラを抑えることができる。
【0081】
また、支持面67sの平面視で、複数の突起部676の間隔Dに対する複数の突起部676の最大幅の倍率は、0.2倍乃至0.7倍の範囲である。これにより、静電チャック67は、充分に小さな複数の突起部676により支持面67sを形成することになり、基板Gを良好に支持しつつ、デポDPが堆積可能な隙間676cを確保できる。
【0082】
また、複数の突起部676は、支持面67sの平面視で円形状に形成され、複数の突起部676の直径は、0.1mm乃至0.3mmの範囲である。これにより、静電チャック67は、基板Gをさらに安定して支持することができる。
【0083】
また、複数の突起部676の高さは、0.01mm乃至0.05mmの範囲である。これにより、静電チャック67は、基板Gの下面における伝熱ガスの流通性を維持しつつ、各突起部676の耐久性を高めることができる。
【0084】
また、静電チャック67は、基板Gとしてフラットパネルディスプレイ用基板を支持するものであり、支持面67sは、当該支持面67sの平面視で方形状に形成され、第1方向の寸法が1490mm以上であり、第1方向と直交する第2方向の寸法が1790mm以上である。このように、重量を有するフラットパネルディスプレイ用基板に対して複数の突起部676からなる支持面67sによって支持することで、温度や電界のムラを効果的に抑えることができる。
【0085】
また、静電チャック67は、アルミナにより形成された下層673および上層675と、下層673および上層675の間で電極672を構成する中間層674と、を有し、複数の突起部676は、上層675に一体形成されて、当該上層675から突出している。これにより、静電チャック67は、複数の突起部676による温度や電界の伝達特性の均一化をより促進することができる。
【0086】
また、本開示の第2の態様は、フラットパネルディスプレイ用基板(基板G)に対して基板処理を行う処理容器10と、処理容器10の内部に設けられ、フラットパネルディスプレイ用基板を支持する支持面67sを備える静電チャック67と、を含むフラットパネルディスプレイ用の基板処理装置(プラズマ処理装置100)であって、支持面67sは、同じ高さに形成された複数の突起部676が面方向に並ぶことにより構成され、相互に隣接し合う複数の突起部676同士の間隔は、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、かつ支持面67sの平面視で、支持面67sの1mm単位に占める複数の突起部676の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である。この場合でも、基板処理装置は、基板処理のムラを抑制することができる。
【0087】
また、本開示の第3の態様は、基板Gを支持する支持面67sを備える静電チャック67の製造方法であって、支持面67sは、同じ高さに形成された複数の突起部676が面方向に並ぶことにより構成され、(A)前駆体の表面を平坦化する工程と、(B)平坦化した前駆体の表面に点状の複数のマスクMを形成する工程と、(C)ブラスト加工を行うことで複数のマスクMの間に隙間676cを形成した後に、マスクMを除去する工程と、をこの順に行うことで、複数の突起部676を形成する。この場合でも、静電チャック67の製造方法は、基板処理のムラを抑制することができる。
【0088】
また、(B)の工程では、スクリーン印刷により前駆体の表面に点状の複数のインクIを塗布し、その後に複数のインクIに紫外線を照射して硬化させることで複数のマスクMを形成する。これにより、製造方法は、各突起部676のサイズに対応したマスクMを良好に形成できる。
【0089】
また、(C)の工程では、複数のマスクMを有する前駆体にブラスト材を吹き付けることで前駆体を彫り込み、その後に前駆体の表面を研磨することでマスクMを除去する。これにより、製造方法は、各突起部676および隙間676cを精度よく形成することができる。
【0090】
また、相互に隣接し合う複数の突起部676同士の間隔Dは、0.2mm乃至0.5mmの範囲であり、かつ支持面67sの平面視で、支持面の1mm単位に占める複数の突起部676の面積の占有率は、3%乃至40%の範囲である。
【0091】
また、支持面67sの平面視で、複数の突起部676の間隔に対する複数の突起部676の最大幅の倍率は、0.2倍乃至0.7倍の範囲である。
【0092】
また、複数の突起部676は、支持面67sの平面視で円形状に形成され、複数の突起部676の直径は、0.1mm乃至0.3mmの範囲である。
【0093】
また、複数の突起部676の高さは、0.01mm乃至0.05mmの範囲である。
【0094】
また、静電チャック67は、基板Gとしてフラットパネルディスプレイ用基板を支持するものであり、支持面67sは、当該支持面67sの平面視で方形状に形成され、第1方向の寸法が1490mm以上であり、第1方向と直交する第2方向の寸法が1790mm以上である。
【0095】
また、静電チャック67は、アルミナにより形成された下層673および上層675と、下層673および上層675の間で電極672を構成する中間層674と、を有し、複数の突起部676は、上層675に一体形成されて、当該上層675から突出している。
【0096】
今回開示された実施形態に係る静電チャック67、基板処理装置(プラズマ処理装置100)、静電チャック67の製造方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0097】
本開示の静電チャック67は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 処理容器
67 静電チャック
67s 支持面
676 突起部
100 プラズマ処理装置(基板処理装置)
G 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8