(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097287
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】風味油の製造方法、風味油混合油の製造方法、食品への風味の付与方法、及び微細藻類の風味油の製造のための使用
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240710BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20240710BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L27/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116821
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2023000694
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淑子
(72)【発明者】
【氏名】前盛 もも子
(72)【発明者】
【氏名】本池 千恵
(72)【発明者】
【氏名】藤井 九達
【テーマコード(参考)】
4B026
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DL09
4B026DP03
4B026DX03
4B047LB03
4B047LB09
4B047LE02
4B047LF01
4B047LF02
4B047LF04
4B047LF08
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG11
4B047LG56
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】微細藻類を利用して、食品に風味を付与する素材として有用な風味油を提供する。
【解決手段】食用油脂と微細藻類とを含有する原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする風味油の製造方法である。ある態様においては、更に、前記加熱処理した原料混合物を固液分離して、その液部を回収する工程を含む風味油の製造方法であってよい。微細藻類としては、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、クロレラ属(Chlorella)などであり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と微細藻類とを含有する原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする風味油の製造方法。
【請求項2】
更に、前記加熱処理した原料混合物を固液分離して、その液部を回収する工程を含む、請求項1記載の風味油の製造方法。
【請求項3】
前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂100質量部に対して、前記微細藻類を0.1質量部以上50質量部以下の割合で混合する、請求項1記載の風味油の製造方法。
【請求項4】
前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂と前記微細藻類と更に水を混合して前記原料混合物を得る、請求項1記載の風味油の製造方法。
【請求項5】
前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂100質量部に対して、前記微細藻類を0.1質量部以上50質量部以下、前記水を0質量部超50質量部以下の割合で混合する、請求項4記載の風味油の製造方法。
【請求項6】
前記微細藻類は、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、及びクロレラ属(Chlorella)からなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1記載の風味油の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた風味油と、他の食用油脂とを混合する工程を含む、風味油混合油の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた風味油を食品に付与する、該食品への風味の付与方法。
【請求項9】
前記風味は、魚介風味、海苔風味、鶏油風味、又はフルーツ風味である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項7記載の製造方法で得られた風味油混合油を食品に付与する、該食品への風味の付与方法。
【請求項11】
前記風味は、魚介風味、海苔風味、鶏油風味、又はフルーツ風味である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
微細藻類の風味油の製造のための使用。
【請求項13】
前記微細藻類は、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、及びクロレラ属(Chlorella)からなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項12記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に風味を付与する素材として有用な風味油に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を食用油脂で処理することで、その食材に由来する風味を付与した風味油が知られている。風味油は、ネギ、オニオン、ガーリック、唐辛子、バジル等の野菜類や、エビ、煮干し、鰹節等の魚介類、醤油等の調味料など、様々な食材について、その食材に由来する特有の風味が高められた食品を簡単に調理、加工等することができるので、レストランの調理や冷凍食品加工などの業務用では勿論のこと、一般家庭の消費者にも好評である。
【0003】
一方、近年、光合成を行って環境中のCO2を固定する微細藻類を食品素材として用いることが検討されている。例えば、特許文献1(特表2012-505656号公報)には、微細藻類のバイオマスを粉末状、フレーク状、ペースト状、油状の形態に調製して、その藻類バイオマスを、栄養バー、栄養飲料、グルテンフリークッキー、ベジタリアンハンバーガー、大麦パスタ、藻類ミルク、ケーキ類等に配合して用いることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、微細藻類を利用して風味油を得ることは行われていない。
【0006】
本発明の目的は、微細藻類を利用して、食品に風味を付与する素材として有用な風味油を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その第1の観点においては、食用油脂と微細藻類とを含有する原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする風味油の製造方法を提供するものである。
【0008】
上記の風味油の製造方法においては、更に、前記加熱処理した原料混合物を固液分離して、その液部を回収する工程を含むことが好ましい。
【0009】
上記の風味油の製造方法においては、前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂100質量部に対して、前記微細藻類を0.1質量部以上50質量部以下の割合で混合することが好ましい。
【0010】
上記の風味油の製造方法においては、前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂と前記微細藻類と更に水を混合して前記原料混合物を得ることが好ましい。
【0011】
上記の風味油の製造方法においては、前記原料混合物を得る工程において、前記食用油脂100質量部に対して、前記微細藻類を0.1質量部以上50質量部以下、前記水を0質量部超50質量部以下の割合で混合することが好ましい。
【0012】
上記の風味油の製造方法においては、前記微細藻類は、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、及びクロレラ属(Chlorella)からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明は、その第2の観点においては、上記の製造方法で得られた風味油と、他の食用油脂とを混合する工程を含む、風味油混合油の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、その第3の観点においては、上記の製造方法で得られた風味油又は上記の製造方法で得られた風味油混合油を食品に付与する、該食品への風味の付与方法を提供するものである。
【0015】
上記の食品への風味の付与方法においては、前記風味は、魚介風味、海苔風味、鶏油風味、又はフルーツ風味であることが好ましい。
【0016】
本発明は、その第4の観点においては、微細藻類の風味油の製造のための使用を提供するものである。
【0017】
上記の使用においては、前記微細藻類は、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、及びクロレラ属(Chlorella)からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、微細藻類を利用して、食品に風味を付与する素材として有用な風味油を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いる食用油脂としては、当業者に周知の油脂を適宜採用し得る。食用に供することができればよく、特に制限はないが、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。なかでも、製造時の作業性等の点で、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油等の10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂から選ばれる1種又は2種以上を60質量%以上100質量%以下配合した油脂が好ましく、80質量%以上100質量%以下配合した油脂がより好ましい。油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd 16b-93に記載のMethod Iの方法に従って測定できる。
【0020】
本発明に用いる微細藻類としては、当業者に周知の藻類を適宜採用し得る。食用に供することができればよく、特に制限はないが、例えば、アンフィジニウム属(Amphidinium)、シンビオジニウム属(Symbiodinium)などの渦鞭毛藻;ケトセロス属(Chaetoceros)、シクロテラ属(Cyclotella)、シリンドロテカ(Cylindrotheca)、タラシオシラ属(Thalassiosira)、ナビクラ属(Navicula)、フィッツリフェラ属(Fistulifera)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、リゾソレニア属(Rhizosolenia)などの珪藻類;シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)、ポルフィリジウム属(Phorphyridium)などの紅藻;ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)などの真正眼点藻;アナベナ属(Anabaena)、アルスロスピラ属(Arthrospila)、グロエオバクター属(Gloeobacter)サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus)、シネコシスティス属(Synechocystis)、シネココッカス属(Synechococcus)、ノストック属(Nostoc)、プロクロロコッカス属(Prochlorococcu)、ミクロシスティス属(Microcystis)などのラン藻類;クラミドモナス属(Chlamydomonas)、クロレラ属(Chlorella)、デスモデスムス属(Desmodesmus)、ドナリエラ属(Dunaliella)、ヘマトコッカス属(Hematococcus)、ボトリオコッカス属(Botryococcus)、ボルボックス属(Volvox)などの緑藻類;プラシノ藻(Prasinophyceae)、ユーグレナ藻(Euglena)、イカダモ(Scenedesmus)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、シュードコリシスティス属(Pseudochoricystis)などが挙げられる。微細藻類は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。なかでも、後述する実施例で示されるような、魚介風味(牡蠣、たらこ、エビ)、海苔風味、鶏油風味、フルーツ風味(マンゴー)などの風味を得る観点では、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)(「スピルリナ」ともいう。)、クロレラ属(Chlorella)などが好ましく例示され得る。
【0021】
本発明は、食用油脂と微細藻類とを含有する原料混合物を得、これを加熱処理して風味油を得るものである。微細藻類は、植物プランクトンとも呼ばれ、海水中や淡水中で光合成を通じてCO2を固定し食物連鎖の基礎になっている。その体内には、糖質、タンパク質、ミネラル、食物繊維、脂質などが含まれており、そのような成分が加熱された油脂中で複雑な反応を起こすことによって、多岐にわたる風味が得られるものと考えられる。
【0022】
本発明において、上記原料混合物を加熱処理するには、特に制限はないが、例えば、原料混合物をタンク等の容器に収容し、そのタンク等の容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式の加熱手段などで加熱すればよい。加熱温度としては、例えば、70℃以上180℃以下などであってよく、70℃超170℃以下などであってよく、80℃以上160℃以下などであってよい。加熱時間としては、0分間以上120分間以下などであってよく、0分間以上60分間以下などであってよく、0分間以上30分間以下などであってよい。ここで、加熱時間が0分間とは加熱温度に達温後すぐに加熱を停止することを意味する。また、適当な撹拌手段により原料混合物を撹拌しつつ加熱処理を行ってもよい。なお、典型的には、油温を所定温度に達温させた後には、達温後すぐに、もしくは多少の時間をおいて加熱を停止し、冷却することが好ましい。冷却は、例えば、放冷、空冷、水冷等の手段が挙げられる。これによれば、達温させた後の時間を抑えることにより、必要以上のエネルギーの使用が防がれて生産性が高められる。また、焦げの発生や風味の成分の飛散消失が防がれる場合がある。
【0023】
本発明において、上記原料混合物中の微細藻類は、食用油脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下の割合で混合することが好ましく、0.2質量部以上30質量部以下の割合で混合することがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下の割合で混合することが更に好ましい。
【0024】
本発明において、上記原料混合物中には、本発明による作用効果を害しない範囲であれば、適宜適当な副素材を配合してもよい。例えば、香料、香辛料抽出物、動物エキス、乳化剤、シリコーン等を適宜適当量で配合して、上記原料混合物をなすようにしてもよい。
【0025】
ある態様において、上記原料混合物の加熱処理後には、静置分離、遠心分離、ろ別などの適当な固液分離手段で処理して、液部を回収してもよい。固液分離処理によれば、原料とした微細藻類その他の固形原料や加熱処理により生じる不溶物を取り除くことができる。
【0026】
本発明の限定されない任意の態様において、上記原料混合物には、食用油脂及び微細藻類と更に水を混合してもよい。これによれば、その水分によって風味が醸成されやすくなる場合がある。また、微細藻類を膨潤させたり、分散させたりして、微細藻類を食用油脂と混合しやすくなる場合がある。水は、微細藻類と混合してこれを食用油脂と合わせてもよく、食用油脂と混合しこれを微細藻類と合わせてもよく、食用油脂と微細藻類と水とを一緒に混合してもよい。
【0027】
上記原料混合物に水を混合して含有せしめる場合、その水は、当該原料混合物に含有せしめる食用油脂100質量部に対して、0質量部超50質量部以下の割合で混合することが好ましく、1質量部以上45質量部以下の割合で混合することがより好ましく、2質量部以上40質量部以下の割合で混合することが更に好ましい。
【0028】
上記のようにして得られた風味油は、他の食用油脂と混合して、その風味油を含有してなる風味油混合油となしてもよい。他の食用油脂としては、当業者に周知の油脂を適宜採用し得る。特に制限はないが、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。他の食用油脂との配合比に特に制限はないが、風味油と他の食用油脂との合計質量の100質量部あたりの当該風味油の含有量が、0.1質量部以上100質量部未満などであってよく、1質量部以上80質量部以下などであってよく、5質量部以上50質量部以下などであってよい。
【0029】
上記のようにして得られた風味油や、それを配合した風味油混合油には、所望される風味が損なわれない範囲で、適宜適当な添加素材を配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール等の酸化防止剤、香料、香辛料抽出物、動物エキス等の風味付与材、乳化剤、シリコーンなどが挙げられる。
【0030】
上記のようにして得られた風味油や、それを含有してなる風味油混合油は、各種食品に使用でき、それらに良好な風味を付与することができる。すなわち、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油、炒め油等の調理用油、練りこみ油、インジェクション用油、仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の工程中あるいはその工程後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して当該食品に組み込ませることで、風味油に由来する風味をその食品に付与することができる。その食品としては、炒飯、野菜炒め等の炒め物類、お好み焼き、焼そば、焼肉等の焼き物類、麻婆豆腐のソース、パスタソース、味付け肉のたれ等のソース類、ラーメンスープ、コンソメスープ、コーンスープ、ポタージュスープ、たまごスープ、カレー、シチュー等のスープ類、明太子、カズノコ等の魚卵加工品類、餃子、肉まんの具、ハンバーグ、ソーセージ、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の食肉加工品類、おにぎり、炊き込みご飯、ピラフ等の米飯類、ケーキ、ロールパン、クッキー、あめ、グミ等の製菓製パン類、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ゼリー等の冷菓類、唐揚げ粉、チヂミ粉、粉末スープ等の調整粉類、シーズニングソース、ドレッシング、マヨネーズ、ポン酢、中華料理の素、鍋つゆ等の調味料類、マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、フレンチフライ、唐揚げ、イカリング、コロッケ等の油ちょう食品等であってよい。また、これらの食品に含まれる食肉素材の一部もしくは全部を、他の素材、例えば植物素材で代替したプラントベース食品等であってよい。
【0031】
食品への添加量としては、所望する風味付けにより適宜設定すればよく、特に制限はない。典型的に例えば、風味付けしたい食品の100質量部に対する風味油の添加量としては、0.1質量部以上30質量部以下などであってよく、0.1質量部以上20質量部以下などであってよく、0.1質量部以上15質量部以下などであってよい。
【実施例0032】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
表1には、試験に使用した材料を示す。
【0034】
【0035】
[試験例1]
表2に示す原料配合で、各種の風味油を調製した。具体的には、直径15cm手鍋に原料を入れ、撹拌子で撹拌ながら電気コンロにかけて加熱し、油温が設定した加熱温度に達したらその温度を維持して、所定時間経過後(「0分」の場合は達温した直後)に電気コンロから鍋を外して放冷し、油温が60℃になったら濾紙でろ過し、その液部を風味油として回収した。
【0036】
評価は、専門パネラー3名が調製した風味油を口に含み、感じられる風味を合議により決定することにより行った。
【0037】
表2には、加熱温度の違いを検討した結果を示す。
【0038】
【0039】
表2に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて加熱処理すると、その加熱処理条件(温度)によって、様々な風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0040】
表3には、加熱温度を130℃として加熱時間の違いを検討した結果を示す。
【0041】
【0042】
表3に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて130℃で加熱処理すると、その処理時間として0~20分間の範囲で焼きたらこの風味が得られることが明らかとなった。
【0043】
表4には、加熱温度を150℃として加熱時間の違いを検討した結果を示す。
【0044】
【0045】
表4に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて150℃で加熱処理すると、その処理時間として0~20分間の範囲で焼いたエビの風味が得られることが明らかとなった。
【0046】
表5には、微細藻類や水の配合量を変えて検討した結果を示す。
【0047】
【0048】
表5に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて130℃又は150℃で加熱処理すると、その微細藻類の配合量として菜種油100質量部に対して0.5~10質量部の範囲、且つ、その水の配合量として菜種油100質量部に対して2~40質量部の範囲で、それぞれ、130℃の加熱温度では焼たらこの風味を有する風味油が得られ、150℃の加熱温度では焼いたエビの風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0049】
表6には、食用油脂の種類を変えて検討した結果を示す。
【0050】
【0051】
表6に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて130℃又は150℃で加熱処理すると、その食用油脂の種類(菜種油、大豆油、又はコーン油)によらず、それぞれ、130℃の加熱温度では焼たらこの風味を有する風味油が得られ、150℃の加熱温度では焼いたエビの風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0052】
表7には、水の配合量や加熱温度を変えて検討した結果を示す。
【0053】
【0054】
表7に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて加熱処理すると、その原料の水の配合量や加熱温度によって、様々な風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0055】
表8には、加熱様式の違いを検討した結果を示す。なお、実施例7-2では、105℃に達温するまで開放して水分を蒸散させた後、10分間加熱還流した。また、実施例7-3では、加温中も開放せず水分を蒸散させずに120℃まで達温させた。
【0056】
【0057】
表8に示されるように、菜種油に微細藻類であるナンノクロロプシスを加えて加熱処理すると、その加熱処理条件(加熱様式)によって、様々な風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0058】
表9には、微細藻類の種類や加熱温度を変えて検討した結果を示す。
【0059】
【0060】
表9に示されるように、菜種油に微細藻類であるスピルリナを加えて加熱処理すると、その加熱処理条件(温度)によって、様々な風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0061】
表10には、微細藻類の種類や加熱温度を変えて検討した結果を示す。
【0062】
【0063】
表10に示されるように、菜種油に微細藻類製品であるクロレラを加えて加熱処理すると、その加熱処理条件(温度)によって、様々な風味を有する風味油が得られることが明らかとなった。
【0064】
[試験例2]
試験例1で調製した風味油を各種の食品に適用したときに得られる風味について、専門パネラー4名が食して評価した。
【0065】
(1)エビ風味油の評価
米菓(商品名「ハイハイン」、亀田製菓株式会社製)の100質量部に、実施例4-6で調製した風味油の1質量部をかけた。
その結果、風味油をかけた米菓は、4名の専門パネラー全員において、エビ風味が感じられるといった評価であった。
【0066】
(2)たらこ風味油の評価
たらこ入りのおにぎり(商品名「厳選米おむすび 生たらこ」、株式会社セブン&アイ・ホールディングス製)からたらこを半量抜き出し、残ったたらことおにぎりのご飯とをよく混ぜた混ぜご飯を用意した。上記混ぜご飯の100質量部に実施例4-3で調製した風味油の1質量部を加え、更によく混ぜた。
その結果、風味油を加えた混ぜご飯は風味油を加えていない混ぜご飯と比べて、4名の専門パネラー全員において、たらこ風味が強くなったといった評価であった。
【0067】
(3)鶏油風味油の評価
たまごスープの素(商品名「7プレミアム ふんわり食感のたまごスープ」、株式会社セブン&アイ・ホールディングス製)の160gに沸騰水を加え、たまごスープを用意した。上記たまごスープの100質量部に実施例8-3で調製した風味油の1質量部を加え、よく混ぜた。
その結果、風味油を加えたたまごスープは、4名の専門パネラー全員において、鶏油の風味が感じられるといった評価であった。
【0068】
(4)マンゴー風味油の評価
バニラアイス(商品名「爽 バニラ」、株式会社ロッテ製)100質量部に実施例8-1で調製した風味油の3質量部をかけ、よく混ぜた。
その結果、風味油をかけたバニラアイスは、4名の専門パネラー全員において、マンゴーの風味が感じられるといった評価であった。