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特開2024-97301高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097301
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/02 20060101AFI20240710BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F04D27/02 D
F04D27/00 L
F04D27/00 101E
F04D27/02 B
F04D27/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218356
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023000571
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】中田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】沢井 幸光
(72)【発明者】
【氏名】姫田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】高村 純一
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰広
【テーマコード(参考)】
3H021
【Fターム(参考)】
3H021AA01
3H021BA02
3H021BA25
3H021CA05
3H021DA09
3H021DA14
3H021DA15
3H021EA05
3H021EA12
3H021EA15
(57)【要約】
【課題】サージングを防止しつつ高炉への送風を起動できる高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システムを提供する。
【解決手段】高炉101に送風する送風機本体1と、吸込弁4と、放風弁14と、吐出仕切弁9とを備え、吸込圧力センサ5及び送風圧力センサ17の計測圧力比に基づいて送風機本体1の静翼角度と、吸込弁4、放風弁14及び吐出仕切弁9の開度とを制御する制御部は、放風弁14全開で送風機本体1を起動させ、吸込弁4を微開とし、計測圧力比が目標圧力比となるまで、PID制御により放風弁14の開度を減少させ、目標圧力比に到達した後、吸込圧力センサ5が目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により吸込弁4の開度を増大させ、圧力制御により放風弁14の開度を減少させ、計測圧力比を一定に維持し、吸込弁4が全開となったとき、吐出仕切弁9を開いて高炉101への送風を開始する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される複数の動翼及び角度調整可能な複数の静翼を有し、高炉(101)に送風する送風機本体(1)と、
前記送風機本体(1)の吸込側に配置された吸込管(3)に設けられ、吸込風量を調整する吸込弁(4)と、
前記送風機本体(1)の吐出側に配置された前記高炉(101)に繋がる送風管(6)に設けられ、開閉を切換える吐出仕切弁(9)と、
前記送風機本体(1)の吐出側に配置された前記高炉(101)に繋がる送風管(6)から分岐された放風管(11)に設けられ、放風量を調整する放風弁(14)と、
前記吸込管(3)内の前記吸込弁(4)と前記送風機本体(1)との間の圧力を計測する吸込圧力センサ(5)と、
前記送風管(1)内の前記放風管(11)への分岐部(12)より上流の圧力を計測する送風圧力センサ(17)と、
前記吸込圧力センサ(5)及び前記送風圧力センサ(17)から各々の計測圧力が入力され、入力された各計測圧力に基づいて、前記静翼の角度(1a)、前記吸込弁(4)の開度(4a)、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)、及び、前記吐出仕切弁(9)の開閉を制御する制御部(21)と
を備え、
前記制御部(21)は、
前記送風機本体の前記静翼角度(1a)を予め設定された起動角度に調整し、前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開に調整し、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を全開に調整し、前記送風機本体(1)の前記動翼を回転させる電動機(1c)を起動させ、前記動翼を回転させて動翼回転数(1b)を定格回転数とした吸込絞り運転を実行し、
前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開としたままで、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力及び前記送風圧力センサ(17)の計測圧力の比である計測圧力比が、設定された目標圧力比に到達するまで、圧力比PID制御により前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を減少させていき、
前記計測圧力比が前記目標圧力比に到達した後、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力が目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により、前記吸込弁(4)の開度(4a)を徐々に増大させるとともに、圧力制御により、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を徐々に減少させて、前記計測圧力比を一定に維持させ、
前記吸込弁(4)の開度(4a)が全開となったときに、前記吐出仕切弁(9)を開いて前記高炉(101)への送風を開始し、最低負荷運転を実行する
ことを特徴とする高炉用送風機。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉用送風機における制御部(21)に用いられる制御システムであって、
前記送風機本体の前記静翼角度(1a)を予め設定された起動角度に調整し、前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開に調整し、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を全開に調整し、前記送風機本体(1)の前記動翼を回転させる電動機(1c)を起動させ、前記動翼を回転させて動翼回転数(1b)を定格回転数とした吸込絞り運転を実行し、
前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開としたままで、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力及び前記送風圧力センサ(17)の計測圧力の比である計測圧力比が、設定された目標圧力比に到達するまで、圧力比PID制御により前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を減少させてゆき、
前記計測圧力比が前記目標圧力比に到達した後、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力が目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により、前記吸込弁(4)の開度(4a)を徐々に増大させるとともに、圧力制御により、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を徐々に減少させて、前記計測圧力比を一定に維持させ、
前記吸込弁(4)の開度(4a)が全開となったときに、前記吐出仕切弁(9)を開いて前記高炉(101)への送風を開始し、最低負荷運転を実行する
ことを特徴とする、高炉用送風機の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システムに関し、より詳しくは、送風機の前後の圧力比を検知しながら吸込弁及び放風弁の開閉を行わせることにより、サージングを防止しつつ高炉への送風を起動できる高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用送風機は、高炉(blast furnace)を操業するうえでの最重要設備であり、十分な信頼性が求められるエネルギー設備である。
【0003】
特許文献1には、高炉の熱風炉切換期間中に、放風運転を行っている高炉送風制御方法が開示されている。この制御方法は、送風中の熱風炉に通風しながら燃焼中の熱風炉充圧するため、高炉への送風流量、送風圧力の変動が生ずる課題がある。
【0004】
特許文献2には、サージング防止を図ることを目的とした高炉用送風機の運転方法が開示されている。
【0005】
ところで、高炉建設時の最初の火入れに際しては、それまで停止していた送風機を起動させて高炉の送風することになる。また、高炉は通常、1ヶ月に1回程度、停止(休風)し、そのタイミングで送風機も停止させるので、その後、停止していた送風機を起動させて高炉の送風することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-234218号公報
【特許文献2】特開昭55-128510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
送風機の起動直後は、送風機への吸込風量を調整する吸込弁が、起動位置である微開状態であり、不安定な運転状態である。そのため、送風機の起動後、速やかに(例えば、20分以内に)吸込弁を開放するとともに放風弁を閉鎖し、最低負荷運転へ移行させなければならない。放風弁は、送風機から外気に放出される風量を調整する弁である。
【0008】
吸込弁の開放に合わせて、送風機の前後の圧力比が一定となるように放風弁を閉鎖させるには、吸込弁が低開度の状態では、Cv値変化が大きいため、放風弁の応答が大きくなり、送風圧力のハンチング、放風弁の急速閉鎖(圧力比の急上昇や、サージングトリップ)が発生する虞がある。
【0009】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたものであり、送風機の前後の圧力比を検知しながら吸込弁及び放風弁の開閉を行わせることにより、サージングを防止しつつ高炉への送風を起動できる高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システムを提供することを課題とする。
【0010】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
回転操作される複数の動翼及び角度調整可能な複数の静翼を有し、高炉(101)に送風する送風機本体(1)と、
前記送風機本体(1)の吸込側に配置された吸込管(3)に設けられ、吸込風量を調整する吸込弁(4)と、
前記送風機本体(1)の吐出側に配置された前記高炉(101)に繋がる送風管(6)に設けられ、開閉を切換える吐出仕切弁(9)と、
前記送風機本体(1)の吐出側に配置された前記高炉(101)に繋がる送風管(6)から分岐された放風管(11)に設けられ、放風量を調整する放風弁(14)と、
前記吸込管(3)内の前記吸込弁(4)と前記送風機本体(1)との間の圧力を計測する吸込圧力センサ(5)と、
前記送風管(1)内の前記放風管(11)への分岐部(12)より上流の圧力を計測する送風圧力センサ(17)と、
前記吸込圧力センサ(5)及び前記送風圧力センサ(17)から各々の計測圧力が入力され、入力された各計測圧力に基づいて、前記静翼の角度(1a)、前記吸込弁(4)の開度(4a)、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)、及び、前記吐出仕切弁(9)の開閉を制御する制御部(21)と
を備え、
前記制御部(21)は、
前記送風機本体の前記静翼角度(1a)を予め設定された起動角度に調整し、前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開に調整し、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を全開に調整し、前記送風機本体(1)の前記動翼を回転させる電動機(1c)を起動させ、前記動翼を回転させて動翼回転数(1b)を定格回転数とした吸込絞り運転を実行し、
前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開としたままで、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力及び前記送風圧力センサ(17)の計測圧力の比である計測圧力比が、設定された目標圧力比に到達するまで、圧力比PID制御により前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を減少させていき、
前記計測圧力比が前記目標圧力比に到達した後、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力が目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により、前記吸込弁(4)の開度(4a)を徐々に増大させるとともに、圧力制御により、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を徐々に減少させて、前記計測圧力比を一定に維持させ、
前記吸込弁(4)の開度(4a)が全開となったときに、前記吐出仕切弁(9)を開いて前記高炉(101)への送風を開始し、最低負荷運転を実行する
ことを特徴とする高炉用送風機。
(請求項2)
請求項1に記載の高炉用送風機における制御部(21)に用いられる制御システムであって、
前記送風機本体の前記静翼角度(1a)を予め設定された起動角度に調整し、前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開に調整し、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を全開に調整し、前記送風機本体(1)の前記動翼を回転させる電動機(1c)を起動させ、前記動翼を回転させて動翼回転数(1b)を定格回転数とした吸込絞り運転を実行し、
前記吸込弁(4)の開度(4a)を微開としたままで、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力及び前記送風圧力センサ(17)の計測圧力の比である計測圧力比が、設定された目標圧力比に到達するまで、圧力比PID制御により前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を減少させてゆき、
前記計測圧力比が前記目標圧力比に到達した後、前記吸込圧力センサ(5)の計測圧力が目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により、前記吸込弁(4)の開度(4a)を徐々に増大させるとともに、圧力制御により、前記放風弁(14、15)の開度(14a、15a)を徐々に減少させて、前記計測圧力比を一定に維持させ、
前記吸込弁(4)の開度(4a)が全開となったときに、前記吐出仕切弁(9)を開いて前記高炉(101)への送風を開始し、最低負荷運転を実行する
ことを特徴とする、高炉用送風機の制御システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、送風機の前後の圧力比を検知しながら吸込弁及び放風弁の開閉を行わせることにより、サージングを防止しつつ高炉への送風を起動できる高炉用送風機及び高炉用送風機の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る高炉用送風機を模式的に示す図
図2】実施形態に係る高炉用送風機の制御部の作用を示すブロック図
図3】実施形態に係る高炉用送風機における制御内容を示すタイムチャート
図4】実施形態に係る高炉用送風機における吸込風量と計測圧力比との関係を示すグラフ
図5】実施形態に係る高炉用送風機における制御結果を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る高炉用送風機は、高炉の建設時の最初の火入れに際しての送風機本体の起動や、停止(休風)後の送風機本体の起動において、吸込弁の開度及び放風弁の開度を自動制御して、サージングを防止しつつ高炉への送風を自動的に起動できるようにするものである。
また、本発明に係る高炉用送風機は、高炉の新設時に高炉とともに構成することもできるし、既設の高炉に適用することもできる。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る高炉用送風機を模式的に示す図である。
【0018】
高炉101には、熱風炉102により昇温させた圧縮空気が供給される。熱風炉102は、燃焼及び圧縮と、高炉101への供給とを繰り返す。
【0019】
実施形態に係る高炉用送風機は、高炉101の熱風炉102に送風する送風機本体1を備えている。この送風機本体1は、軸流圧縮機であり、電動機1cにより回転操作される複数の動翼及び角度調整可能な複数の静翼を備えている。
【0020】
複数の動翼は、図示しないが、例えば略円筒状のケーシング内で回転駆動される略円筒状のロータの外周面に立設されている。複数の静翼は、例えばケーシングの内周面に立設されている。各静翼は、図2に示す制御部21により、角度調整が可能である。制御部21では、本発明の高炉用送風機の制御システムが実行される。
【0021】
送風機本体1には、空気濾過器2を経て、送風機本体1の吸込側に配置された吸込管3から清浄された外気が吸込まれる。吸込管3には、吸込弁4が設けられている。吸込弁4は、吸込管3内を通過する吸込風量を調整する。また、吸込管3には、吸込圧力センサ5が設けられている。吸込圧力センサ5は、吸込管3内の吸込弁4と送風機本体1との間の圧力を計測し、計測値を出力する。
【0022】
送風機本体1の吐出側には、高炉101の熱風炉102に繋がる送風管6が配置されている。送風管6には、逆止弁7、チョーク防止弁8、吐出仕切弁9が順次例えば直列に設けられている。
【0023】
送風管6には、分岐管として放風管11が設けられている。放風管11は、送風管6からの分岐部12から放風サイレンサ13に至る配管である。放風サイレンサ13は、送風機本体1からの送風が放風管11を経て放出されるときの騒音を低減させる。
【0024】
放風管11には、主放風弁14が設けられている。主放風弁14には、副放風弁15が並列に設けられている。つまり、副放風弁15は、主放風弁14の上流位置から主放風弁14の下流位置に至るバイパス管16に設けられている。主放風弁14及び副放風弁15は、放風管11を経る放風量を調整する。主放風弁14は、放風管11を経る放風量を大幅に調整し、副放風弁15は、放風管11を経る放風量を微調整する。
【0025】
送風管6には、送風圧力センサ17が設けられている。送風圧力センサ17は、送風管6内の放風管11への分岐部12より上流の圧力を計測し、計測値を出力する。
【0026】
図2は、実施形態に係る高炉用送風機の制御部の作用を示すブロック図である。
【0027】
この高炉用送風機は、図2に示すように、制御部21を備えている。制御部21は、吸込圧力センサ5及び送風圧力センサ17から各々の計測圧力が入力され、入力された各計測圧力に基づいて、送風機本体1の静翼角度1a、吸込弁4の開度4a、主放風弁14の開度14a、副放風弁15の開度15a、逆止弁7の開閉、チョーク防止弁8の開閉、吐出仕切弁9の開閉を制御する。
【0028】
なお、本発明に係る高炉用送風機を、既設の高炉に適用する場合には、既設の高炉に付設された既設の高炉用送風機と置換して設けることができる。
または、既設の高炉に付設された既設の高炉用送風機に対して、制御部21及び制御に必要なセンサや開閉弁を追設することによっても構成することができる。
【0029】
図3は、実施形態に係る高炉用送風機における制御内容を示すタイムチャートである。
この高炉用送風機においては、制御部21は、図3に示すように、以下の制御を実行する。
【0030】
〔1〕起動準備及び送風機本体1の起動
送風機本体1の静翼角度1aを予め設定された起動角度(例えば、-15°)に調整し、吸込弁4の開度4aを微開(例えば、15%開)に調整し、主放風弁14の開度14a、及び副放風弁15の開度15aを全開(100%開)に調整する。送風管6の逆止弁7、チョーク防止弁8、吐出仕切弁9は全て閉じる(0%開)。
これによって、空気濾過器2を経て、放風サイレンサ13に至る送風流路が完成する。
【0031】
送風機本体1の動翼を回転させる電動機1cを起動させ、動翼を回転させて動翼回転数1bを定格回転数(例えば、3,000rpm)とした吸込絞り運転を実行する。本実施形態においては、送風機本体1の電源は三相交流であり、電源投入は、交流電源の周期に対して同期させる同期投入を行う。
【0032】
〔2〕最低負荷運転への移行(1)
吸込弁4の開度4aを微開としたままで、吸込圧力センサ5の計測圧力及び送風圧力センサ17の計測圧力の比である計測圧力比が、予め設定された目標圧力比に、ランプ関数で徐々に上昇して到達するまで、圧力比PID制御により、主放風弁14の開度14aを減少させてゆく。
【0033】
〔3〕最低負荷運転への移行(2)
計測圧力比が目標圧力比に到達した後、吸込圧力センサ5の計測圧力が、予め設定された目標圧力以上となるまで、ステップ応答制御により、吸込弁4の開度4aを徐々に増大させるとともに、圧力制御により、主放風弁14の開度14aを徐々に減少させて、計測圧力比を一定に維持させる。
【0034】
図4は、実施形態に係る高炉用送風機における吸込風量と計測圧力比との関係を示すグラフである。
【0035】
ここで、計測圧力比を一定に維持するとは、図4に示すように、吸込風量(Nm/min.dry)を増大させつつ、計測圧力比(Pr)が、その吸込風量におけるサージ領域に入らないようにすることである。
【0036】
すなわち、図4に示すように、吸込風量が0~3000Nm/min.dryでdあるときには、計測圧力比(Pr)は、チョーク防止線からサージ緊急開放線までの間である2.5~4.5から、2.7~4.5の範囲とし、吸込風量が3000~5000Nm/min.dryでdあるときには、計測圧力比(Pr)は、チョーク防止線からサージ緊急開放線までの間である2.7~4.5から、3.0~6.0の範囲とし、吸込風量が5000~7000Nm/min.dryであるときには、計測圧力比(Pr)は、チョーク防止線からサージ緊急開放線までの間である3.0~6.0から、3.5~6.2の範囲となっている。このように、計測圧力比が、吸込風量が増大していくに従い、チョーク防止線、サージ緊急開放線までの間を維持するように、一定に保つことによって、人手によらず、且つ、送風機の負荷を抑えて、自動で送風開始段階に移行することができる。
【0037】
〔4〕送風開始
吸込弁4の開度4aが全開となり、高炉101の熱風炉102へ指定風量及び指定風圧の送風ができる状態となったときに、図3に示すように、送風管6の逆止弁7、チョーク防止弁8、吐出仕切弁9を開いて、高炉101の熱風炉102への送風を開始し、最低負荷運転を実行する。図示の例では、まず吐出仕切弁9を開放し全開になったら、逆止弁7を徐々に開放し、逆止弁7の開放開始直後に、チョーク防止弁8を開放していき、チョーク防止弁8が全開した後に、逆止弁7を全開するようにしているが、これに限定されない。
主放風弁14は、チョーク防止弁8の開放開始とほぼ同時期に閉動作を開始する。また、副放風弁15は、チョーク防止弁8が全開する直前に閉動作を開始する。この時、主放風弁14、及び副放風弁15は、圧力比PID制御により、各々の弁の閉度を調整しながら、自動的に閉動作する。また、送風機本体1の静翼角度1aを大きくする(例えば、+15°)。
【0038】
図5は、実施形態に係る高炉用送風機における制御結果を示すタイムチャートである。
【0039】
図5において、2点鎖線で囲まれた部分が、本発明における最低負荷運転移行の場面であり、図3のA,B,C,D点に対応する位置である。
【0040】
これらの位置について、図5に基づき説明する。
図示の例において、A点は、圧力比PID制御を開始する時点であり、吸込圧力センサ5と送風圧力センサ17との計測圧力から算出された圧力比を上げ始める地点である。
【0041】
このA点からB点までの間、吸込弁開度4aを約15度で固定したまま、主放風弁開度14aを徐々に閉じていくように動作させ、計測圧力比が、設定された目標圧力比に到達するように動作させている。
【0042】
B点は、計測圧力比が、目標圧力比、図示の例では圧力比3.5に到達した時点であり、このB点において、主放風弁開度14aは100%の開度から、約50%の開度まで閉じられているように動作している。このB点になると、次に計測圧力比を一定に保ちつつ、吸込圧力が目標圧力になるように動作させる。
【0043】
具体的には、B点からC点までの間に、吸込弁の開度4aが、微開信号により、徐々に開く動作をすると共に、主放風弁の開度14aを、ゆっくり閉じていることがわかる。
つまり、B点からC点までの間に、目標圧力比である3.5を一定に保ちつつ、吸込弁の開度4aと主放風弁の開度14aとを制御しながら、計測された吸込圧力が、約50kPaGから、80kPaGまで上がっており、目標圧力である100kPaG以上に到達するまで、主放風弁を徐々に閉じながら、吸込弁を徐々に開くように動作させている。
【0044】
C点になった時点で、主放風弁の開度14aは全閉状態になり、吸込弁を徐々に微開信号で徐々に開いていき、C点を経過した4時11分になると、吸込圧力が目標圧力である100kPaG以上となっていることがわかる。
【0045】
吸込圧力が目標圧力に到達すると、吸込弁に開信号で、大きく開度を開けていき、D点になった段階で、吸込弁が全開になり、4時12分の段階で、最低負荷運転への移行が完了している。
【0046】
つまり、本発明により、図5に示すように、計測圧力比を安定させながら、送風機本体1の電源投入後から、最低負荷運転へ自動的に移行させることに成功し、送風機の起動制御技術が確立された。図示の例では、4時00分に、送風機本体1の電源投入後、4時11分前には、吸込圧力が目標圧力に到達し、4時12分前のD点で、吸込弁の開度が全開とされ、最低負荷運転へ移行していることがわかる。
【符号の説明】
【0047】
1 送風機本体
1a 静翼角度
1b 動翼回転数
1c 電動機
2 空気濾過器
3 吸込管
4 吸込弁
4a 吸込弁の開度
5 吸込圧力センサ
6 送風管
7 逆止弁
8 チョーク防止弁
9 吐出仕切弁
11 放風管
12 分岐部
13 放風サイレンサ
14 主放風弁
14a 主放風弁の開度
15 副放風弁
15a 副放風弁の開度
16 バイパス管
17 送風圧力センサ
21 制御部
101 高炉
102 熱風炉
図1
図2
図3
図4
図5