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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097318
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20240710BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02B6/30
G02B6/46 311
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063836
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2023013885の分割
【原出願日】2019-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 百合子
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
(72)【発明者】
【氏名】那須 悠介
(57)【要約】
【課題】光導波路チップと光ファイバとの光学的な接続点に与えられる、光ファイバにおける変形からの復元力を低減し、当該接続点での光損失を抑制することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の光モジュールは、光ファイバブロックと、前記光ファイバブロックが取り付けられ、湾曲した部分を有する光ファイバと、前記光ファイバと光学的に接続された光導波路チップと、を備えた光モジュールであって、前記光ファイバの近傍に壁構造を配置および取り外し可能な光モジュールであって、前記壁構造の配置位置は、前記光ファイバと接触するとき、前記壁構造から前記光ファイバが受ける抗力により、前記光導波路チップと前記光ファイバブロックの光接続部に与えられる前記光ファイバの復元力を低減させる位置である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバブロックと、
前記光ファイバブロックが取り付けられ、湾曲した部分を有する光ファイバと、
前記光ファイバと光学的に接続された光導波路チップと、
を備えた光モジュールであって、
前記光ファイバの近傍に壁構造を配置および取り外し可能な光モジュールであって、
前記壁構造の配置位置は、前記光ファイバと接触するとき、前記壁構造から前記光ファイバが受ける抗力により、前記光導波路チップと前記光ファイバブロックの光接続部に与えられる前記光ファイバの復元力を低減させる位置であることを特徴とする、
光モジュール。
【請求項2】
光ファイバブロックと、
前記光ファイバブロックが取り付けられ、湾曲した部分を有する光ファイバと、
前記光ファイバと光学的に接続された光導波路チップと、
前記光ファイバの近傍に壁構造と、
を備えた光モジュールであって、
前記壁構造は、前記光ファイバと接触するとき、前記壁構造から前記光ファイバが受ける抗力により、前記光導波路チップと前記光ファイバブロックの光接続部に与えられる前記光ファイバの復元力を低減させる位置に配置されており、
前記壁構造はL字断面形状であることを特徴とする、
光モジュール。
【請求項3】
前記壁構造は、前記光導波路チップの上部に配置された、前記光ファイバを保持するためのキャリアに形成されていることを特徴とする、
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記壁構造は、前記光導波路チップを搭載する電子基板に形成されていることを特徴とする、
請求項2または3に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電気信号及び光信号を伝達および信号処理するための光通信用部品に関し、より詳細には、光ファイバブロックが取り付けられた光ファイバと光導波路チップとの光学接続部に働く応力を低減する構造を持つ、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
通信需要の急速な増大を背景として、通信網の大容量化に向けた検討が精力的に行われている。光モジュールに関しても、通信設備の単位体積あたりのビットレート向上を目的とし、機能の高集積化・小型化が強く要求されている。ボールグリッドアレイ(BGA:Ball Grid Array)は、多数の電気的インターフェースを高密度に実現できるため、光モジュールの小型化のためのキー技術である(非特許文献1)。また、BGAパッケージは、リフロー実装により基板へ実装されるので、従来光モジュールで用いられていた側面出しのピンパッケージやFPCパッケージを半田付けで実装する場合に比べ、実装コストの低減も期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-244223号公報
【特許文献2】特開2012-53217号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Tanobe, Y. Kurata, Y. Nakanishi, H. Fukuyama, M. Itoh, and E. Yoshida, “Compact 100Gb/s DP-QPSK integrated receiver module employing three-dimensional assembly technology,” OPTICS EXPRESS 22(5), (2014) pp. 6108-6113.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1(a)、(b)は、それぞれ、従来の光ファイバ付き光デバイスの上面図と、図1(a)のIB-IB’における断面図である。電子デバイスと異なり、光デバイス100は、基板105上の光導波路チップ102及びICチップ103と、光信号を入出力するための光ファイバ200と光導波路チップ102とを光学的に結合する光ファイバブロック201とを備えることが一般的である。なお、基板105の裏面に、ボールグリッドアレイ電極101が設けられている場合がある。また、光デバイス100において、光導波路チップ102及びICチップ103の上部に、リッド104が配置されていてもよい。
【0006】
光デバイス100は加熱されると、その形状が変化してしまうため、光ファイバ200が接続された光デバイス100をリフロー工程に通すと、光ファイバ200が炉内で暴れてしまう恐れがある。
【0007】
そこで、特許文献1のように、光ファイバ200を光モジュール上でリールに巻いた状態で保持する形態が容易に考えられる。このとき、他の部品への影響を最小限にするため、小さな領域に光ファイバを保持しようとすると、光ファイバを小さな曲率半径(例えば5mm)を有する空間を形成するように湾曲する必要がある。しかし、図2(a)で示すとおり、光ファイバ200と光導波路チップ102との光接続部(作用点1に相当)へ、特許文献2で述べられているような、光ファイバ200を湾曲することによる復元力が与えられる。この応力が光導波路チップ102と光ファイバ200との光接続部に働くと、この光接続部を固定している接着剤が変形することにより、光接続点の位置関係が移動してしまい、光接続損失が増大するという問題が発生してしまう。なお、光モジュールの他端側を保持する光ファイバ保持機構の部分に光ファイバ200が押し当てられる部分が作用点2に相当する。
【0008】
本発明の実施形態にかかる発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光導波路チップと光ファイバとの光学的な接続点に与えられる、光ファイバにおける変形からの復元力を低減し、当該接続点での光損失を抑制することができる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態にかかる発明は、このような課題を解決するために、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態にかかる光モジュールの一態様は、光ファイバブロックと、前記光ファイバブロックが取り付けられ、湾曲した部分を有する光ファイバと、前記光ファイバと光学的に接続された光導波路チップと、を備えた光モジュールであって、前記光ファイバの近傍に壁構造を配置および取り外し可能な光モジュールであって、前記壁構造の配置位置は、前記光ファイバと接触するとき、前記壁構造から前記光ファイバが受ける抗力により、前記光導波路チップと前記光ファイバブロックの光接続部に与えられる前記光ファイバの復元力を低減させる位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態にかかる発明を用いれば、光ファイバを湾曲させたとき、壁構造と接触する部分に光ファイバが接触することにより、光導波路チップと光ファイバとの光学的な接続点に与えられ、光ファイバ変形による復元力を低減し、本接続点の光損失増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)従来の光ファイバ付き光デバイスの上面図である。(b)従来の光ファイバ付き光デバイスの断面図である。
図2】(a)本発明の原理を示す図である。(b)本発明の原理を示す図である。
図3】(a)従来の光モジュールの底面図である。(b)従来の光モジュールの側面図である。
図4】(a)本発明の第1の実施形態に係る光モジュールの底面図である。(b)本発明の第1の実施形態に係る光モジュールの側面図である。
図5】(a)本発明の第2の実施形態に係る光モジュールの底面図である。(b)本発明の第2の実施形態に係る光モジュールの側面図である。
図6】(a)本発明の第3の実施形態に係る光モジュールの底面図である。(b)本発明の第3の実施形態に係る光モジュールの側面図である。
図7】(a)本発明の第4の実施形態に係る光モジュールの底面図である。(b)本発明の第4の実施形態に係る光モジュールの側面図である。
図8】(a)本発明の第5の実施形態に係る光モジュールの上面図である。(b)本発明の第5の実施形態に係る光モジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面においては同一の機能を有する部分は同一の番号を付することで、説明の明瞭化を図っている。但し、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0014】
(実施形態1)
図4(a),(b)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態による光モジュールの構成を示す底面図と側面図である。本発明の第1の実施形態による光モジュール300は、光導波路チップ102を含む光デバイス100と、光導波路チップ102の端面に接着配置される光ファイバブロック201と、光ファイバブロック201を介して一端が光導波路チップと光学的に接続された光ファイバ200と、光ファイバ200の他端側を保持する光ファイバ保持機構501と、光デバイス100および光ファイバ保持機構501がその表面に固定されるキャリア500とを備える光モジュールであって、光ファイバ保持機構501から光ファイバブロック201にかけて光ファイバ200はU字状に曲げられて配置され、光ファイバ200のU字状の曲部の外側など(光ファイバの復元力を低減させる位置)に光ファイバ200に接して壁構造400がキャリアの表面に形成されている。
【0015】
図4(a),(b)に示すように、本発明の実施形態1に係る光モジュール300は、光デバイス100と、光デバイス100と光ファイバブロック201が取り付けられた光ファイバ200と、光デバイス100の上部にリフロー可能な粘着層502で固定されたキャリア500と、キャリア500の下部に配置された壁構造400とを含む。
【0016】
光デバイス100に含まれる光導波路チップ102は光ファイバブロック201の光学端面と接着剤で固定され、光ファイバブロック201が取り付けられた光ファイバ200と光学的に接続されている。なお、光導波路チップ102は、シリコンフォトニクスチップであってもよい。
【0017】
本実施形態では、光ファイバ200は1本であるが、光ファイバ200は複数本光ファイバブロック201に取り付けられており、複数点で光導波路チップ102と光学的に接続されても良い。
【0018】
本実施形態では、壁構造400はキャリア500と同一の材料で作製されている。例えば、軽量な金属であるアルミの切削加工で形成することも可能であるし、樹脂で形成されていてもよい。また、壁構造400はキャリア500と異なる材料で作製され、キャリア500に耐熱性接着剤等で固定されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、キャリア500と光デバイス100はリフロー可能な粘着層で固定されているが、接着剤等他の方法で固定されていてもよい。
【0020】
光ファイバ200は、光ファイバコアを保護するための被覆の材質や形状によっては、強い弾性をもつ。つまり、小さな曲率半径、例えば5mm程度を有する空間を形成するように湾曲させられると、直線形状に戻ろうとする復元力が働く。図3に示すように壁構造400が無い構造では、光ファイバ保持機構501に光ファイバ200が押し当てられる部分(作用点2)及び光ファイバブロック201と光導波路チップ102との接続面106(作用点1)の2部分が光ファイバの変形を拘束し、復元力がこの2つの部分に与えられる。この復元力は変形が大きくなるほど大きくなり、光ファイバを小さな領域に保持しようとすればするほど、この復元力は大きくなる。
【0021】
光ファイバブロック201と光導波路チップ102との接続面106は、接着剤により固定されている。そのため、復元力が接着剤を変形させ、光学的接続位置を移動させてしまい、光接続部で光損失が増大してしまうことがある。
【0022】
本実施形態の光モジュールでは、図2(b)に示すとおり、変形による復元力は、壁構造400と光ファイバ200が接する部分の抗力とつりあう。よって、光導波路チップ102と光ファイバブロック201の接続面106に働く復元力を低減させることができ、光学的接続位置の移動による、光導波路チップ102と光ファイバブロック201との光接続部での光損失増大を防ぐことが可能となる。
【0023】
本発明の実施形態にかかる発明を用いれば、図2(b)に示すように、光ファイバを湾曲させたとき、壁構造400と接触する部分(作用点部3)に光ファイバが接触することにより、光導波路チップ102と光ファイバ200との光学的な接続点に与えられ、光ファイバ200の変形による復元力を低減し、本接続点の光損失増大を抑制することができる。なお、壁構造400は、光ファイバ200が湾曲した部分のうちで光ファイバブロック201にもっとも近い部分に配置されている。光デバイス100から最も遠い箇所で光ファイバ200の部位を2部分に分けるとすると、概ね光ファイバブロック201のある側の部分に壁構造400が形成されている。
【0024】
また、本実施形態の光モジュールでは、壁構造400と光ファイバ200は接着剤やテープ等では固定されておらず、壁構造400と物理的に接触しているのみである。本実施形態の光モジュールはBGA(BallGrid Array)電極101を含み、リフロー実装等の高温プロセスによって、別の電子基板に実装されることを想定している。そのため、壁構造400と光ファイバ200が例えば接着剤で固定されてしまうと、壁構造400を含むキャリア500と光ファイバ200の熱膨張係数とが一致しない場合、光モジュール300が高温となる実装プロセス時に光接続部に引っ張りまたは押し込み応力が働き、本光接続部の光損失が増大するおそれがある。そのため、キャリアの材料選定の自由度が低くなり、安価な材料を選択することができなくなってしまう。そのため、本実施形態の光モジュールでは、接着剤で固定されていない例を示した。
【0025】
(実施形態2)
図5(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態による光モジュールの構成を示す底面図と側面図である。図5(a),(b)に示すように、本発明の実施形態2に係る光モジュール300は、実施形態1に示した構成について、壁構造400が、複数の箇所、例えば、2か所に分割されて配置されたものである。このように、壁構造400は複数に分割されても、接続面106に働く復元力を低減する効果がある。
【0026】
(実施形態3)
図6(a),(b)は、それぞれ、本発明の第3の実施形態による光モジュールの構成を示す底面図と側面図である。
【0027】
図6(a),(b)に示すように、本発明の実施形態3に係る光モジュール300は、実施形態1に示した光モジュール300の構成とは、壁構造400の配置が異なる。壁構造400は、光ファイバ200が湾曲した部分のうちで光ファイバブロック201にもっとも近い部分よりも光ファイバブロック201に近い部分において、光ファイバが接触する位置に配置されている。図6に示した部分(光ファイバの直線形状の部分)に壁構造400を配置したとき、光ファイバ200は直線形状に戻ろうとする復元力により、壁構造400に押し当てられる。壁構造400と光ファイバ200が接触している部分では、光ファイバは壁構造400からの抗力を受けるので、本実施形態3の壁構造400は、光ファイバブロック201と光導波路チップ102との接続面に働く復元力を低減する効果がある。
【0028】
(実施形態4)
図7(a),(b)は、それぞれ、本発明の第4の実施形態による光モジュールの構成を示す底面図と側面図である。
【0029】
図7(a),(b)に示すように、本発明の実施形態4に係る光モジュール300は、実施形態3に示した構成について、壁構造400がリッド104に配置されている。VIIC-VIIC´の断面図に示す通り、光ファイバ200は復元力によりリッド104に配置された壁構造400に押し当てられる。壁構造400と光ファイバ200が接触している部分では、光ファイバは壁構造400からの抗力を受けるので、壁構造400を用いた光モジュールは、光ファイバブロック201と光導波路チップ102との接続面に働く復元力を低減する効果がある。
【0030】
(実施形態5)
図8(a),(b)は、本発明の第5の実施形態による光モジュール300の構成を示す上面図と側面図である。
【0031】
図8(a),(b)に示すように、本発明の実施形態5に係る光モジュール300は、実施形態1に示した構成について、壁構造400が光デバイス100の搭載される電子基板600に配置されているものである。光ファイバ200は復元力により電子基板600に配置された壁構造400に押し当てられる。壁構造400と光ファイバ200が接触している部分では、光ファイバは壁構造400からの抗力を受けるので、壁構造400は、光ファイバブロックと光導波路チップとの接続面に働く復元力を低減する効果がある。本実施形態の壁構造400は、光モジュール300をリフロー実装した後に取り外しができるものでもよい。
【0032】
本実施の形態では電子基板に壁構造が形成されているが、同様の方法で光導波路チップを搭載した基板105に壁構造400が形成されていてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8