(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097842
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】レーザー加工装置、及びレーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240711BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L21/304 611A
B23K26/352
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073839
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2022547504の分割
【原出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2020151606
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】溝本 康隆
(57)【要約】
【課題】基板のうねりを低減する、技術を提供する。
【解決手段】レーザー加工装置は、基板を保持する保持部と、前記基板の第1主面に照射するレーザー光線を発振する光源と、前記保持部に前記基板を保持した状態で、前記基板の前記第1主面における前記レーザー光線の照射点の位置を移動する移動部と、前記光源及び前記移動部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記光源及び前記移動部を制御することで、前記基板の前記第1主面に前記レーザー光線を照射し、前記基板の前記第1主面のうねりを低減する制御を行う。前記保持部は、前記基板を変形させずに保持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持部と、
前記基板の第1主面に照射するレーザー光線を発振する光源と、
前記保持部に前記基板を保持した状態で、前記基板の前記第1主面における前記レーザー光線の照射点の位置を移動する移動部と、
前記光源及び前記移動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源及び前記移動部を制御することで、前記基板の前記第1主面に前記レーザー光線を照射し、前記基板の前記第1主面のうねりを低減する制御を行い、
前記保持部は、前記基板を変形させずに保持する、レーザー加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1主面の前記うねりの測定データを参照し、前記第1主面の前記うねりを低減する制御を行う、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1主面の前記うねりの測定データを参照し、前記第1主面の単位面積当たりの前記レーザー光線の積算照射量を制御することで、前記第1主面の前記うねりを低減する制御を行う、請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記基板の前記第1主面の応力が実質的にゼロである状態で、前記基板の前記第1主面のうねりを測定するうねり測定部を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記レーザー光線が照射された後の前記第1主面を研削する研削部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記レーザー光線が照射された後の前記第1主面をエッチングするエッチング部を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
前記基板を反転させる反転部を備え、
前記制御部は、
前記基板の前記第1主面に前記レーザー光線を照射した後、前記基板を反転する制御と、前記基板の前記第1主面とは反対向きの第2主面にレーザー光線を照射する制御と、をこの順番で行う、請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項8】
前記レーザー光線が照射された後の前記第2主面を研削する研削部を備える、請求項7に記載のレーザー加工装置。
【請求項9】
前記レーザー光線が照射された後の前記第2主面をエッチングするエッチング部を備える、請求項7又は8に記載のレーザー加工装置。
【請求項10】
基板を保持部で保持することと、
前記保持部に前記基板を保持した状態で、前記基板の第1主面にレーザー光線を照射し、前記基板の前記第1主面のうねりを低減することと、
を含み、
前記保持部は、前記基板を変形させずに保持する、レーザー加工方法。
【請求項11】
前記第1主面の前記うねりの測定データを参照し、前記第1主面の前記うねりを低減する制御を行う、請求項10に記載のレーザー加工方法。
【請求項12】
前記第1主面の前記うねりの測定データを参照し、前記第1主面の単位面積当たりの前記レーザー光線の積算照射量を制御することで、前記第1主面の前記うねりを低減する制御を行う、請求項11に記載のレーザー加工方法。
【請求項13】
前記基板の前記第1主面の応力が実質的にゼロである状態で、前記基板の前記第1主面のうねりを測定することを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項14】
前記レーザー光線が照射された後の前記第1主面を研削することを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項15】
前記レーザー光線が照射された後の前記第1主面をエッチングすることを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項16】
前記基板の前記第1主面に前記レーザー光線を照射した後、前記基板を反転することと、前記基板の前記第1主面とは反対向きの第2主面にレーザー光線を照射することと、をこの順番で含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項17】
前記レーザー光線が照射された後の前記第2主面を研削することを含む、請求項16に記載のレーザー加工方法。
【請求項18】
前記レーザー光線が照射された後の前記第2主面をエッチングすることを含む、請求項16又は17に記載のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザー加工装置、及びレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウェハの加工方法が記載されている。この加工方法は、単結晶インゴットをスライスして得た半導体ウェハに、面取り工程と、ラッピング工程と、エッチング工程と、鏡面研磨工程とを施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2002-203823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、基板のうねりを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るレーザー加工装置は、基板を保持する保持部と、前記基板の第1主面に照射するレーザー光線を発振する光源と、前記保持部に前記基板を保持した状態で、前記基板の前記第1主面における前記レーザー光線の照射点の位置を移動する移動部と、前記光源及び前記移動部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記光源及び前記移動部を制御することで、前記基板の前記第1主面に前記レーザー光線を照射し、前記基板の前記第1主面のうねりを低減する制御を行う。前記保持部は、前記基板を変形させずに保持する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板のうねりを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るレーザー加工装置を示す平面図である。
【
図3】
図3(A)はレーザー加工前の基板の一例を示す側面図であり、
図3(B)はレーザー加工後の基板の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、うねり測定モジュールの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、レーザー加工モジュールの一例を示す図である。
【
図7】
図7(A)はレーザー光線の強度分布の第1例を示す図であり、
図7(B)はレーザー光線の強度分布の第2例を示す図である。
【
図8】
図8(A)は照射点の並べ方の第1例を示す平面図であり、
図8(B)は、照射点の並べ方の第2例を示す平面図であり、
図8(C)は、照射点の並べ方の第3例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
先ず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るレーザー加工装置1について説明する。レーザー加工装置1は、単結晶インゴットをスライスしたものである基板Wに対してレーザー加工を施す。
【0010】
基板Wは、シリコンウェハ又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。基板Wは、ベアウエハである。
【0011】
基板Wは、
図3(A)に示すように、第1主面Waと、第1主面Waとは反対向きの第2主面Wbとを含む。第1主面Wa及び第2主面Wbは、単結晶インゴットのスライスによって形成される。スライスの際に、破片が、第1主面Wa及び第2主面Wbに付着しうる。破片は、例えば切断刃の砥粒等である。
【0012】
レーザー加工装置1は、
図3(B)に示すように、基板Wの第1主面Waの全体に亘って表層Wa1を除去し、基板Wの第2主面Wbの全体に亘って表層Wb1を除去する。これにより、単結晶インゴットのスライスの際に基板Wに付着した破片を除去し、その破片による基板Wの欠陥の発生を抑制する。
【0013】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3と、制御モジュール9とを備える。X軸正方向に、搬入出ステーション2と処理ステーション3とがこの順番で並べて配置される。
【0014】
搬入出ステーション2は、載置台20と、搬送部23とを備える。載置台20は、複数の載置板21を備える。複数の載置板21は、Y軸方向に一列に配置される。複数(例えば3つ)の載置板21には、それぞれ、カセットCが載置される。一のカセットCは、処理前の基板Wを複数枚収容する。他の一のカセットCは、処理後の基板Wを複数枚収容する。残りの一のカセットCは、処理中に異常の生じた基板Wを複数枚収容する。なお、載置板21の数、及びカセットCの数は特に限定されない。
【0015】
搬送部23は、載置台20のX軸正方向側に隣接して配置され、処理ステーション3のX軸負方向側に隣接して配置される。搬送部23は、基板Wを保持する搬送アーム24を備える。搬送アーム24は、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能である。搬送アーム24は、載置台20上のカセットCと、処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、基板Wを搬送する。
【0016】
処理ステーション3は、第1処理ブロックG1と、第2処理ブロックG2と、第3処理ブロックG3と、第4処理ブロックG4と、搬送ブロックG5とを備える。第1処理ブロックG1と第2処理ブロックG2と第3処理ブロックG3と第4処理ブロックG4で囲まれる領域に、搬送ブロックG5が設けられる。第3処理ブロックG3は搬送ブロックG5のX軸負方向側に隣接して配置される。
【0017】
搬送ブロックG5は、基板Wを保持する搬送アーム38を備える。搬送アーム38は、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能である。搬送アーム38は、第1処理ブロックG1と、第2処理ブロックG2と、第3処理ブロックG3と、第4処理ブロックG4との間で、基板Wを搬送する。
【0018】
第1処理ブロックG1は、搬送ブロックG5のY軸正方向側に隣接して配置される。第1処理ブロックG1は、例えば、レーザー加工モジュール31を有する。レーザー加工モジュール31は、基板Wの第1主面Waにレーザー光線を照射し、第1主面Waの全体に亘って表層Wa1を除去する。また、レーザー加工モジュール31は、基板Wの第2主面Wbにレーザー光線を照射し、第2主面Wbの全体に亘って表層Wb1を除去する。表層Wa1、Wb1は、レーザー光線を吸収し、固相から気相に状態変化し飛散するか、または固相のまま飛散する。
【0019】
第2処理ブロックG2は、搬送ブロックG5のY軸負方向側に隣接して配置される。第2処理ブロックG2は、例えば、洗浄モジュール32と、エッチングモジュール33とを有する。洗浄モジュール32は、基板Wをスクラブ洗浄し、レーザー光線の照射点から飛散したデブリを基板Wから除去する。エッチングモジュール33は、基板Wをエッチングし、基板Wの表面粗さの低減、又はレーザー光線の照射による変色層の除去等を行う。なお、デブリの除去が不要である場合、洗浄モジュール32は不要である。また、表面粗さの低減、又は変色層の除去が不要である場合、エッチングモジュール33は不要である。洗浄モジュール32と、エッチングモジュール33との配置は、
図2の配置には限定されない。
【0020】
第3処理ブロックG3は、搬送ブロックG5のX軸負方向側に隣接して配置される。第3処理ブロックG3は、
図2に示すように、例えば、トランジションモジュール34と、うねり測定モジュール35と、反転モジュール36とを有する。トランジションモジュール34は、搬入出ステーション2の搬送アーム24と、処理ステーション3の搬送アーム38との間で基板Wを受け渡す。うねり測定モジュール35は、基板Wの第1主面Waのうねりを測定する。また、うねり測定モジュール35は、基板Wの第2主面Wbのうねりを測定する。うねりの測定には、市販の三次元形状測定器等が用いられる。反転モジュール36は、基板Wを反転させる。トランジションモジュール34と、うねり測定モジュール35と、反転モジュール36との配置は、
図2の配置には限定されない。
【0021】
第4処理ブロックG4は、搬送ブロックG5のX軸正方向側に隣接して配置される。第4処理ブロックG4は、例えば、研削モジュール37を有する。研削モジュール37は、基板Wの第1主面Waを研削し、第1主面Waの平坦度を向上する。また、研削モジュール37は、基板Wの第2主面Wbを研削し、第2主面Wbの平坦度を向上する。なお、レーザー光線の照射によって十分な平坦度が得られる場合、研削モジュール37は不要である。
【0022】
なお、処理ステーション3は、少なくともレーザー加工モジュール31を有すればよい。処理ステーション3を構成するモジュールの種類、配置、及び個数は、
図1及び
図2に示すものには限定されない。
【0023】
制御モジュール9は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ等の記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、レーザー加工装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御モジュール9は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、レーザー加工装置1の動作を制御する。
【0024】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係るレーザー加工方法について説明する。
図4に示すステップS101~S109は、制御モジュール9による制御下で実施される。
【0025】
先ず、搬入出ステーション2の搬送アーム24が、載置台20上のカセットCから基板Wを取り出し、トランジションモジュール34に搬送する。続いて、処理ステーション3の搬送アーム38が、トランジションモジュール34から基板Wを受け取り、うねり測定モジュール35に搬送する。この間、基板Wは、第1主面Waを上に向けて水平に保持される。
【0026】
次に、うねり測定モジュール35が、基板Wの第1主面Waのうねりを測定する(ステップS101)。うねりの測定は、重力とその抗力以外の外力、例えば吸着力の働いていない自然状態で行われる。自然状態は、基板Wを変形させない状態であり、基板表面の応力が実質的にゼロの状態である。例えば、うねりの測定は、
図5に示すように、基板Wをステージ35aの水平面に単に載せた状態で行われる。うねり測定モジュール35は変位計35bを有する。変位計35bは、基板Wの上面(例えば第1主面Wa)の高さの分布を測定する。変位計35bは、本実施形態では非接触式であるが、接触式でもよい。うねり測定モジュール35は、その測定データを制御モジュール9に送信する。上記ステップS101の後、搬送アーム38が、うねり測定モジュール35から基板Wを取り出し、レーザー加工モジュール31に搬送する。
【0027】
次に、レーザー加工モジュール31が、基板Wの第1主面Waに対してレーザー加工を施す(ステップS102)。具体液には、レーザー加工モジュール31は、
図6に示すように、第1主面Waにレーザー光線LBを照射し、その照射点Pの位置を第1主面Waの全体に亘って移動し、第1主面Waの全体に亘って表層Wa1を除去する。
【0028】
表層Wa1には、単結晶インゴットのスライスの際に破片が付着している。仮に破片の付着した状態のまま基板Wに対して研削(研磨を含む)を施すと、破片が基板Wに押し付けられ、基板Wに欠陥が生じてしまう。生じた欠陥は、その後のエッチングによって拡大しうる。
【0029】
本実施形態によれば、表層Wa1を除去するので、表層Wa1に付着した破片を除去できる。また、表層Wa1を除去するので、ブラシ洗浄等で除去できない破片をも除去できる。従って、破片による基板Wの欠陥の発生を抑制できる。
【0030】
また、レーザー加工モジュール31は、表層Wa1を除去する際に、第1主面Waのうねりを低減してもよい。除去量は、レーザー光線LBの出力(単位:W)と照射時間の積である積算照射量(単位:J)で制御する。積算照射量が多いほど、除去量が多い。
【0031】
制御モジュール9は、うねり測定モジュール35の測定データを参照し、第1主面Waのうねりを低減するように第1主面Waの単位面積当たりのレーザー光線LBの積算照射量を制御する。その制御は、光源31bの出力の制御、及び照射時間の制御から選ばれる1つ以上を含む。
【0032】
第1主面Waのうねりを低減すべく、仮に基板Wを定盤に押し付けて研磨すると、基板Wが弾性変形してしまう。それゆえ、基板Wのうねりが低減され難い。また、破片が基板Wに押し付けられ、基板Wに欠陥が生じてしまう。
【0033】
本実施形態によれば、制御モジュール9は、自然状態での第1主面Waのうねりの測定データを参照して単位面積当たりの積算照射量を制御するので、効率的にうねりを低減でき、効率的に平面に矯正できる。
【0034】
第1主面Waのレーザー加工は、自然状態で行われ、例えば基板Wをステージ31aの水平面に単に載せた状態で行われる。基板Wとステージ31aの間に異物が存在しても、異物が基板Wに押し付けられないので、基板Wに欠陥が生じない。
【0035】
なお、第1主面Waのレーザー加工は、うねりの測定とは異なり、ステージ31aの水平面に吸着した状態で行われてもよい。表層Wa1の除去量は積算照射量で決まるので、うねりの低減は可能である。また、吸着によって基板Wの位置ずれを防止できる。
【0036】
上記ステップS102の後、搬送アーム38が、レーザー加工モジュール31から基板Wを取り出し、洗浄モジュール32に搬送する。
【0037】
次に、洗浄モジュール32が、基板Wをスクラブ洗浄し(ステップS103)、レーザー光線LBの照射点Pから飛散したデブリを基板Wから除去する。上記ステップS103の後、搬送アーム38が、洗浄モジュール32から基板Wを取り出し、反転モジュール36に搬送する。
【0038】
次に、反転モジュール36が、基板Wを反転し(ステップS104)、基板Wの第2主面Wbを上に向ける。上記ステップS104の後、搬送アーム38が、反転モジュール36から基板Wを取り出し、うねり測定モジュール35に再度搬送する。この間、基板Wは、第2主面Wbを上に向けて水平に保持される。
【0039】
次に、うねり測定モジュール35が、基板Wの第2主面Wbのうねりを測定する(ステップS105)。うねりの測定は、自然状態で行われ、例えば基板Wをステージ35aの水平面に単に載せた状態で行われる。変位計35bが、基板Wの第2主面Wbの高さの分布を測定する。うねり測定モジュール35は、その測定データを制御モジュール9に送信する。上記ステップS105の後、搬送アーム38が、うねり測定モジュール35から基板Wを取り出し、レーザー加工モジュール31に再度搬送する。
【0040】
次に、レーザー加工モジュール31が、基板Wの第2主面Wbに対してレーザー加工を施す(ステップS106)。具体的には、レーザー加工モジュール31は、第2主面Wbにレーザー光線LBを照射し、その照射点Pの位置を第2主面Wbの全体に亘って移動し、第2主面Wbの全体に亘って表層Wb1を除去する。
【0041】
本実施形態によれば、表層Wb1を除去するので、表層Wb1に付着した破片を除去できる。また、表層Wb1を除去するので、ブラシ洗浄等で除去できない破片をも除去できる。従って、破片による基板Wの欠陥の発生を抑制できる。
【0042】
また、レーザー加工モジュール31は、表層Wb1を除去する際に、第2主面Wbのうねりを低減してもよい。除去量は、レーザー光線LBの出力(単位:W)と照射時間の積である積算照射量(単位:J)で制御する。積算照射量が多いほど、除去量が多い。
【0043】
制御モジュール9は、うねり測定モジュール35の測定データを参照し、第2主面Wbのうねりを低減するように第2主面Wbの単位面積当たりのレーザー光線LBの積算照射量を制御する。その制御は、光源31bの出力の制御、及び照射時間の制御から選ばれる1つ以上を含む。
【0044】
本実施形態によれば、制御モジュール9は、自然状態での第2主面Wbのうねりの測定データを参照して単位面積当たりの積算照射量を制御するので、効率的にうねりを低減でき、効率的に平面に矯正できる。
【0045】
第2主面Wbのレーザー加工は、自然状態で行われ、例えば基板Wをステージ31aの水平面に単に載せた状態で行われる。基板Wとステージ31aの間に異物が存在しても、異物が基板Wに押し付けられないので、基板Wに欠陥が生じない。
【0046】
なお、第2主面Wbのレーザー加工は、うねりの測定とは異なり、ステージ31aの水平面に吸着した状態で行われてもよい。表層Wb1の除去量は積算照射量で決まるので、うねりの低減は可能である。また、吸着によって基板Wの位置ずれを防止できる。
【0047】
上記ステップS106の後、搬送アーム38が、レーザー加工モジュール31から基板Wを取り出し、洗浄モジュール32に再度搬送する。
【0048】
次に、洗浄モジュール32が、基板Wをスクラブ洗浄し(ステップS107)、レーザー光線LBの照射点Pから飛散したデブリを基板Wから除去する。上記ステップS107の後、搬送アーム38が、洗浄モジュール32から基板Wを取り出し、エッチングモジュール33に搬送する。
【0049】
次に、エッチングモジュール33が、基板Wをエッチングし(ステップS108)、基板Wの表面粗さの低減、又はレーザー光線の照射による変色層の除去等を行う。エッチングモジュール33は、例えば、基板Wをウェットエッチングし、基板Wの第1主面Wa及び第2主面Wbを同時にエッチングする。なお、エッチングモジュール33は、基板Wをドライエッチングしてもよく、基板Wの第1主面Wa及び第2主面Wbを順番にエッチングしてもよい。上記ステップS108の後、搬送アーム38が、エッチングモジュール33から基板Wを取り出し、研削モジュール37に搬送する。
【0050】
次に、研削モジュール37が、基板Wを研削し(ステップS109)、基板Wの平坦度を向上する。研削モジュール37は、基板Wの第1主面Waを研削し、第1主面Waの平坦度を向上する。また、研削モジュール37は、基板Wの第2主面Wbを研削してもよく、第2主面Wbの平坦度を向上してもよい。第1主面Waの研削と、第2主面Wbの研削とは順番に行われ、途中で基板Wの反転が行われる。なお、研削は、研磨を含む。基板Wの研削(ステップS109)と、基板Wのエッチング(S108)の順番は逆であってもよい。例えば、基板Wの研削が行われ、続いて基板Wの両面が洗浄され、その後、基板Wのエッチングが行われてもよい。エッチングは、両面エッチングでもよいし、片面エッチングでもよい。
【0051】
最後に、搬送アーム38が、研削モジュール37から基板Wを取り出し、トランジションモジュール34に搬送する。続いて、搬入出ステーション2の搬送アーム24が、トランジションモジュール34から基板Wを取り出し、載置台20上のカセットCに基板Wを収容する。
【0052】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係るレーザー加工モジュール31について説明する。レーザー加工モジュール31は、例えば、保持部であるステージ31aと、光源31bと、移動部であるガルバノスキャナ31cとを備える。また、レーザー加工モジュール31は、fθレンズ31dと、ホモジナイザ31eと、アパーチャ31fとを備える。
【0053】
ステージ31aは、基板Wを保持する。例えば、ステージ31aは、基板Wのレーザー光線LBを照射する主面を上に向けて、基板Wを下方から水平に保持する。ステージ31aは、基板Wを吸着することなく自然状態で保持する。なお、本実施形態のステージ31aは基板Wを吸着しないが、吸着してもよい。後者の場合、ステージ31aは、真空チャック又は静電チャックである。
【0054】
光源31bは、基板Wの上面(例えば第1主面Wa)に照射するレーザー光線LBを発振する。レーザー光線LBは、基板Wに対し吸収性を有する。基板Wがシリコンウェハである場合、レーザー光線LBは例えばUV光である。基板Wは、レーザー光線LBを吸収し、固相から気相に状態変化し飛散するか、または固相のまま飛散する。その結果、基板Wの第1主面Waの表層Wa1が除去される。レーザー光線LBは、基板Wの上面に集光照射されてもよい。照射点Pは本実施形態ではパワー密度が最も高くなる集光点である。但し、照射点Pは、集光点ではなくてもよい。
【0055】
光源31bは、例えばパルスレーザーである。1パルス当たりの照射時間は、例えば30nsec以下である。1パルス当たりの照射時間が30nsec以下であれば、短時間の間に高いパワー密度のレーザー光線LBを基板Wに照射でき、基板Wの過熱を抑制できる。従って、基板Wの熱による劣化を抑制でき、例えば変色層の発生を抑制できる。1パルス当たりの照射時間は、好ましくは10psec以下である。1パルス当たりの照射時間が10psec以下であれば、同じ場所に複数回照射点Pを形成しても、基板Wの熱による劣化を抑制できる。
【0056】
ガルバノスキャナ31cは、例えば、ステージ31aで保持された基板Wの上方に配置される。ガルバノスキャナ31cによれば、ステージ31aを移動することなく、基板Wの上面におけるレーザー光線LBの照射点Pの位置を移動できる。ステージ31aが基板Wを吸着しない場合でも、ステージ31aが移動しなければ、ステージ31aに対する基板Wの位置ずれが生じない。従って、照射点Pの位置を精度良く制御できる。
【0057】
ガルバノスキャナ31cは、ガルバノミラー31c1と、ガルバノモータ31c2との組を2組(
図6には1組のみ図示)含む。1つのガルバノモータ31c2は、1つのガルバノミラー31c1を回転させ、X軸方向に照射点Pを変位させる。別の1つのガルバノモータ31c2は、別の1つのガルバノミラー31c1を回転させ、Y軸方向に照射点Pを変位させる。
【0058】
なお、本実施形態の移動部はガルバノスキャナ31cであるが、本開示の技術はこれに限定されない。移動部は、ガルバノスキャナ31cの代わりに、ポリゴンスキャナを含んでもよい。ポリゴンスキャナは、ガルバノスキャナ31cに比べて、スキャン速度が速く、高い周波数のパルスレーザーが使用可能である。移動部は、ステージ31aに基板Wを保持した状態で、基板Wの第1主面Waにおけるレーザー光線LBの照射点Pの位置を移動するものであればよい。例えば、移動部は、ステージ31aをX軸方向及びY軸方向に移動させるものであってもよく、モータ及びモータの回転運動をステージ31aの直線運動に変換するボールねじ機構等を有してもよい。また、移動部は、ステージ31aを鉛直軸の周りに回転させる機構を有してもよい。
【0059】
fθレンズ31dは、Z軸方向に対して垂直な焦点面を形成する。ガルバノスキャナ31cが照射点Pの位置をX軸方向またはY軸方向に移動させる間、fθレンズ31dが照射点PのZ軸方向位置を焦点面に維持し、また、焦点面における照射点Pの形状及び寸法を維持する。その結果、後述するように矩形の照射点Pを、基板Wの上面に規則正しく且つ隙間なく二次元的に並べることができる。照射点Pの高さは、焦点面の高さである。
【0060】
ホモジナイザ31eは、レーザー光線LBの強度分布を
図7(A)に示すガウシアン分布から
図7(B)に示すトップハット分布に変換し、その強度分布を均一化する。
【0061】
アパーチャ31fは、レーザー光線LBの断面形状を矩形に整形する。矩形は、長方形のみならず、正方形を含む。アパーチャ31fは、矩形の開口を有する遮光膜である。その開口は、例えば
図7(B)に矢印Dで示す範囲のレーザー光線LBを通過させる。
【0062】
ホモジナイザ31eとアパーチャ31fとによって、強度分布が均一な矩形の照射点Pを形成できる。その照射点Pを後述するように規則正しく且つ隙間なく二次元的に並べることによって、単位面積当たりのレーザー光線LBの積算照射量を精度良く制御できる。
【0063】
図8(A)に示すように、照射点Pは強度分布が均一な矩形であり、矩形の二辺はX軸方向に平行であり、矩形の残りの二辺はY軸方向に平行である。照射点PのX軸方向寸法X0は、照射点PのY軸方向寸法Y0と同一でもよいし、異なってもよい。
図8(B)及び
図8(C)において同様である。
【0064】
図8(A)に示すように、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0ずつ動かし、基板Wの上面のX軸方向全体に亘って照射点Pを隙間なく一列に並べる。その後、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをY軸方向にY0だけ動かすことと、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0ずつ動かすこととを繰り返し、基板Wの上面全体に亘って照射点Pを隙間なく二次元的に並べる。
【0065】
又は、
図8(B)に示すように、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の半値ずつ動かし、基板Wの上面のX軸方向全体に亘って照射点Pを重ねながら一列に並べる。その後、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをY軸方向にY0だけ動かすことと、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の半値ずつ動かすこととを繰り返し、基板Wの上面全体に亘って照射点Pを隙間なく二次元的に並べる。なお、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをY軸方向にY0だけ動かすことの代わりに、パルスのオフ時間の間に照射点PをY軸方向にY0の半値だけ動かすことを実施してもよい。
【0066】
又は、
図8(C)に示すように、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の2倍ずつ動かし、基板Wの上面のX軸方向全体に亘って隙間SPを形成しつつ照射点Pを一列に並べる。次いで、制御モジュール9は、上記隙間SPを照射点Pで埋めるように、再びレーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の2倍ずつ動かす。その後、制御モジュール9は、レーザー光線LBをパルス発振しながら、パルスのオフ時間の間に照射点PをY軸方向にY0だけ動かすことと、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の2倍ずつ動かすことと、上記隙間SPを照射点Pで埋めるように、パルスのオフ時間の間に照射点PをX軸方向にX0の2倍ずつ動かすこととを繰り返し、照射点Pを隙間なく二次元的に並べる。
【0067】
なお、本実施形態ではレーザー加工モジュール31とは別に、うねり測定モジュール35と、反転モジュール36とが設けられるが、本開示の技術はこれに限定されない。レーザー加工モジュール31は、うねり測定モジュール35の機能を有してもよい。また、レーザー加工モジュール31は、反転モジュール36の機能を有してもよい。
【0068】
以上、本開示に係るレーザー加工装置、及びレーザー加工方法の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0069】
本出願は、2020年9月9日に日本国特許庁に出願した特願2020-151606号に基づく優先権を主張するものであり、特願2020-151606号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0070】
1 レーザー加工装置
9 制御モジュール(制御部)
31 レーザー加工モジュール
31a ステージ(保持部)
31b 光源
31c 移動部(ガルバノスキャナ)