(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098014
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/26 20060101AFI20240711BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240711BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G02B5/26
G02B5/22
G02B5/28
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079605
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2023533586の分割
【原出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021113057
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 崇
(57)【要約】
【課題】本発明は、高入射角においても可視光領域の透過率変化が少なく、可視光領域の透過性と近赤外光領域の遮蔽性に優れた光学フィルタの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタであって、前記基材は、近赤外線吸収ガラスと、樹脂膜とを有し、前記樹脂膜は、厚さが10μm以下であり、樹脂と、色素(NIR1)とを含み、前記光学フィルタが所定の分光特性(i-1)~(i-3)、(i-6)~(i-8)等をすべて満たす光学フィルタに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の主面側に誘電体多層膜1と、前記基材の他方の主面側に誘電体多層膜2と、を備える光学フィルタであって、
前記基材は、近赤外線吸収ガラスと、樹脂膜とを有し、
前記樹脂膜は、厚さが10μm以下であり、樹脂と、色素(NIR1)とを含み、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-3)、(i-6)~(i-8)をすべて満たし、
入射角0度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(0deg)MAXが2.6%以下であり、
入射角50度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(50deg)MAXが3%以下である、光学フィルタ。
(i-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(0deg)AVEが80%以上
(i-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEが80%以上
(i-3)前記平均透過率T450-600(0deg)AVEと前記平均透過率T45
0-600(50deg)AVEとの差の絶対値が5%以下
(i-6)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmにおける最大透過率T450-600(0deg)MAXが90%以上
(i-7)入射角0度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(0deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-8)入射角50度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(50deg)が、610~650nmの範囲にある
【請求項2】
前記分光特性(i-6)において、波長450~600nmにおける前記最大透過率T450-600(0deg)MAXが93%以上である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
波長750~1000nmにおける前記最大透過率T750-1000(50deg)MAXが2.1%以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-4)~(i-5)をさらに満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-4)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(0deg)が80%以上
(i-5)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(50deg)が80%以上
【請求項5】
入射角0度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(0deg)が85%以上である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-19)および(i-20)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-19)入射角0度での分光透過率曲線において、波長370~400nmの平均透過率T370-400(0deg)AVEが2%以下
(i-20)入射角50度での分光透過率曲線において、波長370~400nmの平均透過率T370-400(50deg)AVEが2%以下
【請求項7】
入射角0度での分光透過率曲線において、波長700~1000nmにおける平均透過率が0.4%以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
入射角50度での分光透過率曲線において、波長700~1000nmにおける平均透過率が0.2%以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記近赤外線吸収ガラスが、下記分光特性(iii-1)および(iii-2)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iii-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが90%以上
(iii-2)波長450nmにおける内部透過率T450が92%以上
【請求項10】
前記近赤外線吸収ガラスが、下記分光特性(iii-3)および(iii-4)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iii-3)内部透過率が50%となる波長IR50が、625~650nmの範囲にある
(iii-4)波長750~1000nmの平均内部透過率T750-1000AVEが2.5%以下
【請求項11】
前記近赤外線吸収ガラスが、下記分光特性(iii-5)および(iii-6)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iii-5)波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T1000-1200MAXが5%以下
(iii-6)内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAX≧10
【請求項12】
前記樹脂膜が、下記分光特性(iv-1)~(iv-3)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iv-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが93%以上
(iv-2)波長450~600nmにおける最大内部透過率T450-600MAXが95%以上
(iv-3)波長450nmにおける内部透過率T450が86%以上
【請求項13】
前記樹脂膜が、下記分光特性(iv-4)~(iv-5)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iv-4)波長650~900nmの分光透過率曲線において内部透過率が50%となる最短の波長をIR50(S)とし、最長の波長をIR50(L)としたとき、
IR50(L)-IR50(S)≧90nm
(iv-5)波長700~800nmにおける最小内部透過率T700-800MINが10%以下
【請求項14】
前記樹脂膜は、前記色素(NIR1)として前記樹脂中で680~740nmに最大吸収波長を有するスクアリリウム化合物を含み、
前記樹脂中における最大吸収波長が前記色素(NIR1)の前記樹脂中における最大吸収波長よりも20~60nm大きい色素(NIR2)としてスクアリリウム化合物およびシアニン化合物の少なくとも一方をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
前記樹脂膜の層数が1層または2層である請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルタを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を透過し、近赤外光を遮断する光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し、近赤外波長領域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。
【0003】
このような光学フィルタは、例えば、透明基板の片面または両面に、屈折率が異なる誘電体薄膜を交互に積層(誘電体多層膜)し、光の干渉を利用して遮蔽したい光を反射する反射型のフィルタ等、様々な方式が挙げられる。
【0004】
特許文献1および2には、誘電体多層膜および色素を含む吸収層を有する光学フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/151348号
【特許文献2】国際公開第2018/043564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘電体多層膜を有する光学フィルタは、光の入射角により誘電体多層膜の光学膜厚が変化するために、入射角による分光透過率曲線の変化が問題である。例えば、多層膜の積層数に応じて各層界面の反射光に起因する干渉により可視光領域の透過率の激しい変化、いわゆるリップルが生じ、光の入射角度が大きいほど強く発生しやすい。このようなフィルタを使用すると、固体撮像素子の分光感度が入射角の影響を受けるおそれがある。特に、近年のカメラモジュール低背化に伴い高入射角条件での使用が想定されるため、入射角の影響を受けにくい光学フィルタが求められている。
【0007】
本発明は、高入射角においても可視光領域の透過率変化が少なく、可視光領域の透過性と近赤外光領域の遮蔽性に優れた光学フィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する光学フィルタ等を提供する。
〔1〕基材と、前記基材の一方の主面側に誘電体多層膜1と、前記基材の他方の主面側に誘電体多層膜2と、を備える光学フィルタであって、
前記基材は、近赤外線吸収ガラスと、樹脂膜とを有し、
前記樹脂膜は、厚さが10μm以下であり、樹脂と、色素(NIR1)とを含み、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-3)、(i-6)~(i-8)をすべて満たし、
入射角0度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(0deg)MAXが2.6%以下であり、
入射角50度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(50deg)MAXが3%以下である、光学フィルタ。
(i-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(0deg)AVEが80%以上
(i-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEが80%以上
(i-3)前記平均透過率T450-600(0deg)AVEと前記平均透過率T45
0-600(50deg)AVEとの差の絶対値が5%以下
(i-6)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmにおける最大透過率T450-600(0deg)MAXが90%以上
(i-7)入射角0度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(0deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-8)入射角50度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(50deg)が、610~650nmの範囲にある
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高入射角においても可視光領域の透過率変化が少なく、可視光領域の透過性と近赤外光領域の遮蔽性に優れた光学フィルタが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は一実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は一実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は近赤外線吸収ガラスの分光透過率曲線を示す図である。
【
図5】
図5は例1-1の樹脂膜の分光透過率曲線を示す図である。
【
図6】
図6は例2-1の基材の分光透過率曲線を示す図である。
【
図7】
図7は例4-1の光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(I)で示される化合物を化合物(I)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(I)からなる色素を色素(I)ともいい、他の色素についても同様である。また、式(I)で表される基を基(I)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0012】
本明細書において、内部透過率とは、{実測透過率/(100-反射率)}×100の式で示される、実測透過率から界面反射の影響を引いて得られる透過率である。
本明細書において、基材の透過率、色素が樹脂に含有される場合を含む樹脂膜の透過率の分光は、「透過率」と記載されている場合も全て「内部透過率」である。一方、色素をジクロロメタン等の溶媒に溶解して測定される透過率、誘電体多層膜の透過率、誘電体多層膜を有する光学フィルタの透過率は、実測透過率である。
【0013】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その全波長領域において透過率が90%を下回らない、すなわちその波長領域において最小透過率が90%以上であることをいう。同様に、特定の波長域について、透過率が例えば1%以下とは、その全波長領域において透過率が1%を超えない、すなわちその波長領域において最大透過率が1%以下であることをいう。内部透過率においても同様である。特定の波長域における平均透過率および平均内部透過率は、該波長域の1nm毎の透過率および内部透過率の相加平均である。
光学特性は、紫外可視分光光度計を用いて測定できる。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0014】
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、基材と、基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える。
ここで基材は、近赤外線吸収ガラスと、近赤外線吸収ガラスの少なくとも一方の主面に積層された厚さ10μm以下の樹脂膜とを有する。さらに樹脂膜は、樹脂と、樹脂中で680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)とを含む。
誘電体多層膜の反射特性と、近赤外線吸収ガラスおよび近赤外線吸収色素を含む基材の吸収特性とにより、光学フィルタ全体として可視光領域の優れた透過性と近赤外光領域の優れた遮蔽性を実現できる。
【0015】
図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。
図1~3は、一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【0016】
図1に示す光学フィルタ1Aは、近赤外線吸収ガラス11と樹脂膜12とを有する基材10の一方の主面側に誘電体多層膜20を有する例である。なお、「基材の主面側に特定の層を有する」とは、基材の主面に接触して該層が備わる場合に限らず、基材と該層との間に、別の機能層が備わる場合も含む。
図1の光学フィルタ1Aでは、誘電体多層膜20は近赤外線吸収ガラス11表面に設けられているが、樹脂膜12表面に設けられていてもよい。
【0017】
図2に示す光学フィルタ1Bは、基材10の両主面に誘電体多層膜20A,20Bを有する例である。
【0018】
図3に示す光学フィルタ1Cは、基材10が近赤外線吸収ガラス11の両主面に樹脂膜12A,12Bを有し、基材10の両主面に誘電体多層膜20A,20Bを有する例である。
【0019】
本発明の光学フィルタは、下記分光特性(i-1)~(i-13)をすべて満たす。
(i-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(0deg)AVEが80%以上
(i-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEが80%以上
(i-3)前記平均透過率T450-600(0deg)AVEと前記平均透過率T450-600(50deg)AVEとの差の絶対値が5%以下
(i-4)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(0deg)が80%以上
(i-5)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(50deg)が80%以上
(i-6)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmにおける最大透過率T450-600(0deg)MAXが90%以上
(i-7)入射角0度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(0deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-8)入射角50度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(50deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-9)前記波長IR50(0deg)と前記波長IR50(50deg)との差の絶対値が10nm以下
(i-10)入射角0度での分光透過率曲線において、波長1000~1200nmにおける最大透過率T1000-1200(0deg)MAXが5%以下
(i-11)入射角50度での分光透過率曲線において、波長1000~1200nmにおける最大透過率T1000-1200(50deg)MAXが5%以下
(i-12)前記透過率T450(0deg)/前記最大透過率T1000-1200(0deg)MAX≧25
(i-13)前記透過率T450(50deg)/前記最大透過率T1000-1200(50deg)MAX≧10
【0020】
分光特性(i-1)~(i-13)を全て満たす本フィルタは、50度という高入射角においても可視光領域の透過率変化が少なく、近赤外光領域の遮蔽性に優れた光学フィルタである。
【0021】
分光特性(i-1)~(i-2)を満たすことで、高入射角においても450~600nmの可視光領域の透過性に優れ、分光特性(i-3)を満たすことで、高入射角においても450~600nmの可視光領域の透過率変化(リップル)が少ないことを意味する。
T450-600(0deg)AVEは、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上である。
T450-600(50deg)AVEは、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上である。
T450-600(0deg)AVEとT450-600(50deg)AVEとの差は、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4%以下である。
【0022】
分光特性(i-4)~(i-5)を満たすことで、青色光領域における透過性に優れることを意味する。
T450(0deg)は、好ましくは82%以上、より好ましくは85%以上である。
T450(50deg)は、好ましくは81%以上、より好ましくは82%以上である。
【0023】
分光特性(i-6)を満たすことで、高入射角においても450~600nmの可視光領域の透過性に優れることを意味する。
T450-600(0deg)MAXは、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上である。
【0024】
分光特性(i-7)~(i-8)を満たすことで、近赤外領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
IR50(0deg)は、好ましくは615~640nm、より好ましくは615~635nmである。
IR50(50deg)は、好ましくは615~640nm、より好ましくは615~635nmである。
【0025】
分光特性(i-9)を満たすことで、高入射角においても610~650nmの領域の分光曲線がシフトしにくいことを意味する。
分光特性(i-9)における絶対値は、好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下である。
【0026】
分光特性(i-10)~(i-11)を満たすことで、高入射角においても1000~1200nmの赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T1000-1200(0deg)MAXは、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下である。
T1000-1200(50deg)MAXは、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
【0027】
分光特性(i-12)~(i-13)を満たすことで、高入射角においても可視光領域の透過性と赤外領域の遮光性が両立されていることを意味する。
T450(0deg)/T1000-1200(0deg)MAXは、好ましくは30以上、より好ましくは40以上である。
T450(50deg)/T1000-1200(50deg)MAXは、好ましくは15以上、より好ましくは20以上である。
【0028】
本発明の光学フィルタは、下記分光特性(i-14)~(i-15)をさらに満たすことが好ましい。
(i-14)入射角0度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(0deg)MAXが1%以下
(i-15)入射角50度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(50deg)MAXが1%以下
【0029】
分光特性(i-14)~(i-15)を満たすことで、高入射角においても750~1000nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T750-1000(0deg)MAXは、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下である。
T750-1000(50deg)MAXは、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
【0030】
本発明の光学フィルタは、下記分光特性(i-16)~(i-18)をさらに満たすことが好ましい。
(i-16)入射角0度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長UV50(0deg)が、400~440nmの範囲にある
(i-17)入射角50度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長UV50(50deg)が、400~440nmの範囲にある
(i-18)前記波長UV50(0deg)と前記波長UV50(50deg)との差の絶対値が3nm以下
【0031】
分光特性(i-16)~(i-17)を満たすことで、近紫外領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
分光特性(i-18)を満たすことで、高入射角においても400~440nmの領域の分光曲線がシフトしにくいことを意味する。
UV50(0deg)は、好ましくは400~430nm、より好ましくは410~430nmである。
UV50(50deg)は、好ましくは400~430nm、より好ましくは410~430nmである。
分光特性(i-18)は、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2nm以下である。
【0032】
本発明の光学フィルタは、下記分光特性(i-19)~(i-22)をさらに満たすことが好ましい。
(i-19)入射角0度での分光透過率曲線において、波長370~400nmの平均透過率T370-400(0deg)AVEが2%以下
(i-20)入射角50度での分光透過率曲線において、波長370~400nmの平均透過率T370-400(50deg)AVEが2%以下
(i-21)入射角0度での分光透過率曲線において、波長370~400nmにおける最大透過率T370-400(0deg)MAXが3%以下
(i-22)入射角50度での分光透過率曲線において、波長370~400nmにおける最大透過率T370-400(50deg)MAXが3%以下
【0033】
分光特性(i-19)~(i-22)を満たすことで、高入射角においても370~400nmの近紫外領域の遮光性に優れることを意味する。
T370-400(0deg)AVEは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。
T370-400(50deg)AVEは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。
T370-400(0deg)MAXは、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
T370-400(50deg)MAXは、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0034】
<誘電体多層膜>
本フィルタにおいて、誘電体多層膜は、基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層される。
【0035】
本フィルタにおいて、誘電体多層膜は、下記分光特性(v-1)~(v-5)をすべて満たすことが好ましい。
(v-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの最小透過率T450-600(0deg)MINが90%以上
(v-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの最小透過率T450-600(50deg)MINが90%以上
(v-3)前記最小透過率T450-600(0deg)MINと前記最小透過率T450-600(50deg)MINとの差の絶対値が5%以下
(v-4)入射角0度での分光透過率曲線において、波長700~1200nmの平均透過率T700-1200(0deg)AVEが30~75%
(v-5)入射角50度での分光透過率曲線において、波長700~1200nmの平均透過率T700-1200(50deg)AVEが30~75%
【0036】
分光特性(v-4)~(v-5)を満たすことで、近赤外領域を穏やかに遮光し、分光特性(v-1)~(v-3)を満たすことで、可視光領域において高入射角における透過率の変化(リップル)が小さいことを意味する。
T450-600(0deg)MINは、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上である。
T450-600(50deg)MINは、好ましくは90%以上、より好ましくは90.5%以上である。
(v-3)は、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下である。
T700-1200(0deg)AVEは、好ましくは40%~75%、より好ましくは50%~75%である。
T700-1200(50deg)AVEは、好ましくは40%~75%、より好ましくは50%~75%である。
【0037】
本フィルタにおいて、誘電体多層膜は、下記分光特性(v-6)~(v-8)をさらに満たすことが好ましい。
(v-6)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(0deg)AVEが91%以上
(v-7)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEが91%以上
(v-8)前記平均透過率T450-600(0deg)AVEと前記平均透過率T450-600(50deg)AVEとの差の絶対値が5%以下
分光特性(v-6)~(v-8)を満たすことで、高入射角においても可視光の透過性に優れ、かつ、入射角変動に伴う透過率の変化(リップル)が小さいことを意味する。
T450-600(0deg)AVEは、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。
T450-600(50deg)AVEは、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。
(v-8)は、好ましくは4%以下、より好ましくは3.5%以下である。
【0038】
本発明における誘電体多層膜は、上記分光特性(v-4)~(v-5)に示すように近赤外領域を穏やかに遮光することが好ましい。近赤外領域の反射特性を高めるように誘電体多層膜を設計すると、可視光領域においてリップルが発生しやすい。本発明では、誘電体多層膜の近赤外領域を強く遮光しない設計とすることで、上記分光特性(v-1)~(v-3)に示すように可視光領域のリップルが抑制される。誘電体多層膜の反射特性で遮光しきれない近赤外光領域の遮光性は、後述する基材の吸収特性によって補完され、本発明は光学フィルタ全体として優れた近赤外線遮光性を有する。
【0039】
本フィルタにおいて、誘電体多層膜の少なくとも一方は近赤外線反射層(以下、NIR反射層とも記載する。)として設計されることが好ましい。誘電体多層膜の他方はNIR反射層、近赤外域以外の反射域を有する反射層、または反射防止層として設計されることが好ましい。
【0040】
NIR反射層は、近赤外域の光を遮蔽するように設計された誘電体多層膜である。NIR反射層としては、例えば、可視光を透過し、近赤外域の光を主に反射する波長選択性を有する。なお、NIR反射層の反射領域は、樹脂膜の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。NIR反射層は、NIR反射特性に限らず、近赤外域以外の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
【0041】
NIR反射層は、例えば、屈折率の異なる誘電体膜を交互に積層した誘電体多層膜から構成される。
誘電体膜としては、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)、中屈折率の誘電体膜(中屈折率膜)、高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)が挙げられ、これらのうち2以上の誘電体膜を組み合わせて積層することが好ましい。なかでも、可視領域においてリップルを生じない程度に赤外領域の遮光性を高める観点から、中屈折率膜を少なくとも有することが好ましい。
【0042】
高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が2.2以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa2O5、TiO2、TiO、Ti2O3、Nb2O5が挙げられる。その他市販品としてキヤノンオプトロン社製、OS50(Ti3O5)、OS10(Ti4O7)、OA500(Ta2O5とZrO2の混合物)、OA600(Ta2O5とTiO2の混合物)などが挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiO2が好ましい。
【0043】
中屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6~2.1である。中屈折率膜の材料としては、例えばZrO2、Nb2O5、Al2O3、HfO2や、キヤノンオプトロン社が販売しているOM-4、OM-6(Al2O3とZrO2との混合物)、OA-100、Merck社が販売しているH4、M2(アルミナランタニア)等が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、Al2O3系の化合物やAl2O3とZrO2との混合物が好ましい。
【0044】
低屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.5以下であり、より好ましくは1.4~1.5である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO2、SiOxNy、MgF2等が挙げられる。その他市販品としてキヤノンオプトロン社製、S4F、S5F(SiO2とAlO2の混合物)が挙げられる。これらのうち、成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiO2が好ましい。
【0045】
分光特性(v-1)~(v-5)、すなわち近赤外光領域の穏やかな遮光特性と可視光領域の低リップル特性を満たす誘電体多層膜とするには、所望の波長帯域を透過、選択する際に数種類の分光特性の異なる誘電体膜を組み合わせることが挙げられる。具体的には、中屈折率層と低屈折率層の材質で層間の屈折率差を小さくすることで可視光領域での反射リップルを抑制できる。従来の赤外線カットフィルターではSiO2/TiO2等の低屈折率材料と高屈折率材料を用いて近赤外光領域の遮光性を高めているが、この構成では可視光領域での反射リップルが生じやすい。本発明の光学フィルタの構成では、基材(色素と吸収ガラス)の吸収特性により近赤外領域の透過率を下げることが可能であるので、必ずしも可視光領域にリップルが生じやすい低屈折率層/高屈折率層の組み合わせを用いる必要がない。
【0046】
NIR反射層は、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数が、好ましくは20層以上、より好ましくは30層以上、さらに好ましくは35層以上である。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。
また、反射層の膜厚は、全体として2~10μmが好ましい。
【0047】
また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0048】
NIR反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数の反射層で構成される。2層の反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯および近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。
【0049】
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体多層膜を交互に積層して得られる。
【0050】
<基材>
本発明の光学フィルタにおいて、基材は、近赤外線吸収ガラスと、厚さ10μm以下の樹脂膜とを有する。樹脂膜は、樹脂と、当該樹脂中で680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)とを含み、近赤外線吸収ガラスの少なくとも一方の主面に積層される。
【0051】
<基材の分光特性>
基材は下記分光特性(ii-1)~(ii-7)をすべて満たすことが好ましい。
(ii-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが85%以上
(ii-2)波長450~600nmにおける最大内部透過率T450-600MAXが92%以上
(ii-3)波長450nmにおける内部透過率T450が82%以上
(ii-4)内部透過率が50%となる波長IR50が、610~650nmの範囲にある
(ii-5)波長750~1000nmの平均内部透過率T750-1000AVEが1.5%以下
(ii-6)波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T1000-1200MAXが5%以下
(ii-7)内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAX≧15
【0052】
分光特性(ii-1)~(ii-2)を満たすことで、450~600nmの可視光領域の透過性に優れることを意味する。
T450-600AVEは、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上である。
T450-600MAXは、好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上である。
【0053】
分光特性(ii-3)を満たすことで、青色光領域における透過性に優れることを意味する。
T450は、好ましくは83%以上、より好ましくは84%以上である。
【0054】
分光特性(ii-4)を満たすことで、近赤外領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
IR50は、好ましくは615~640nm、より好ましくは615~635nmの範囲にある。
【0055】
分光特性(ii-5)を満たすことで、750~1000nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T750-1000AVEは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下である。
【0056】
分光特性(ii-6)を満たすことで、1000~1200nmの赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T1000-1200MAXは、好ましくは4.8%以下、より好ましくは4.5%以下である。
【0057】
分光特性(ii-7)を満たすことで、可視光領域の透過性と赤外領域の遮光性が両立されていることを意味する。
内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAXは、好ましくは17以上、より好ましくは18以上である。
【0058】
基材は下記分光特性(ii-8)をさらに満たすことが好ましい。
(ii-8)波長750~1000nmにおける最大内部透過率T750-1000MAXが2%以下
分光特性(ii-8)を満たすことで、750~1000nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T750-1000MAXは、好ましくは1.2%以下、より好ましくは0.8%以下である。
【0059】
基材は下記分光特性(ii-9)~(ii-11)をさらに満たすことが好ましい。
(ii-9)内部透過率が50%となる波長UV50が、400~440nmの範囲にある
(ii-10)波長370~400nmの平均内部透過率T370-400AVEが3%以下
(ii-11)波長370~400nmにおける最大内部透過率T370-400MAXが5%以下
分光特性(ii-9)を満たすことで、近紫外領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
UV50は、好ましくは400~430nm、より好ましくは410~430nmの範囲にある。
分光特性(ii-10)~(ii-11)を満たすことで、370~400nmの近紫外領域の遮光性に優れることを意味する。
T370-400AVEは、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
T370-400MAXは、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4%以下である。
【0060】
本発明において、基材は、上記分光特性(ii-1)~(ii-3)に示すように可視光領域の透過性と、分光特性(ii-5)~(ii-6)に示すように、近赤外光領域および赤外光領域の遮光性に優れ、分光特性(ii-7)に示すように、当該透過性と遮光性を両立するものである。特に、近赤外光領域および赤外光領域における遮光性が高いことで、上述した誘電体多層膜の遮光性を補うことができる。
【0061】
本発明において、基材は、近赤外線吸収ガラスの吸収能と、近赤外線吸収色素(NIR1)を含む樹脂膜の吸収能とを併せ持つ。
【0062】
<近赤外線吸収ガラス>
近赤外線吸収ガラスは下記分光特性(iii-1)~(iii-6)をすべて満たすことが好ましい。
(iii-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが90%以上
(iii-2)波長450nmにおける内部透過率T450が92%以上
(iii-3)内部透過率が50%となる波長IR50が、625~650nmの範囲にある
(iii-4)波長750~1000nmの平均内部透過率T750-1000AVEが2.5%以下
(iii-5)波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T1000-1200MAXが5%以下
(iii-6)内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAX≧10
【0063】
分光特性(iii-1)を満たすことで、450~600nmの可視光領域の透過性に優れ、分光特性(iii-2)を満たすことで、青色光領域における透過性に優れることを意味する。
T450-600AVEは、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上である。
T450は、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上である。
【0064】
分光特性(iii-3)を満たすことで、近赤外領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
IR50は、好ましくは625~645nm、より好ましくは625~640nmの範囲にある。
【0065】
分光特性(iii-4)を満たすことで、750~1000nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T750-1000AVEは、好ましくは2%以下、より好ましくは1.2%以下である。
【0066】
分光特性(iii-5)を満たすことで、1000~1200nmの赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T1000-1200MAXは、好ましくは4.8%以下、より好ましくは4.5%以下である。
【0067】
分光特性(iii-6)を満たすことで、可視光領域の透過性と赤外領域の遮光性が両立されていることを意味する。
T450/T1000-1200MAXは、好ましくは15以上、より好ましくは18以上である。
【0068】
本発明において、近赤外線吸収ガラスは、上記特性(iii-3)に示すように、近赤外光の吸収が625~650nmの領域から始まり、上記特性(iii-4)に示すように、750nm以降は高い遮光性を示すことが好ましい。これにより、上述した誘電体多層膜の遮光性を補うことができる基材が得られる。
【0069】
近赤外線吸収ガラスとしては、上記分光特性が得られるガラスであれば制限されず、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラスが挙げられる。なかでも、上記分光特性が得られやすい観点から、リン酸塩系ガラスが好ましい。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
【0070】
例えば、リン酸塩系ガラスとして以下のガラスを構成する成分を含有することが好ましい。なお、下記のガラス構成成分の各含有割合は、酸化物換算の質量%表示である。
P2O5は、ガラスを形成する主成分(ガラス形成酸化物)であり、近赤外線カット性を高めるための必須成分であるが、65%未満ではその効果が十分得られず、74%を超えると溶融温度が上がり、可視域の透過率が低下するため好ましくない。好ましくは67~73%であり、より好ましくは68~72%である。
Al2O3は、耐候性を高めるための必須成分であるが、5%未満ではその効果が十分得られず、10%を超えるとガラスの溶融温度が高くなり、近赤外線カット性および可視域透過性が低下するため好ましくない。好ましくは6~10%であり、より好ましくは7~9%である。
B2O3は、ガラスの溶融温度を低くするための必須成分であるが、0.5%未満ではその効果が十分得られず、3%を超えると近赤外線カット性が低下するため好ましくない。好ましくは0.7~2.5%であり、より好ましくは0.8~2.0%である。
Li2Oは、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする効果があるが、10%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは0~5%であり、より好ましくは0~3%である。
Na2Oは、ガラスの溶融温度を低くするための必須成分であるが、3%未満ではその効果が十分得られず、10%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは4~9%であり、より好ましくは5~9%である。
Li2O+Na2Oは、ガラスの溶融温度を低くするための必須成分であるが、3%未満ではその効果が十分ではなく、15%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは4~13%であり、より好ましくは5~10%である。
【0071】
MgOは、必須成分ではないものの、ガラスの安定性を高める効果があるが、2%を超えると近赤外線カット性が低下するため好ましくない。好ましくは1%以下であり、含有しないことがより好ましい。
CaOは、必須成分ではないものの、ガラスの安定性を高める効果があるが、2%を超えると近赤外線カット性が低下するため好ましくない。好ましくは1.5%以下であり、含有しないことがより好ましい。
SrOは、必須成分ではないものの、ガラスの安定性を高める効果があるが、5%を超えると近赤外線カット性が低下するため好ましくない。好ましくは0~4%であり、より好ましくは0~3%である。
BaOは、ガラスの溶融温度を低くするための必須成分であるが、3%未満ではその効果が十分得られず、9%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは3~8%であり、より好ましくは4~8%である。
MgO+CaO+SrO+BaOは、ガラスの安定性を高め、ガラスの溶融温度を低くするための必須成分であるが、3%未満であるとその効果が十分ではなく、15%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは3~12%であり、より好ましくは4~10%である。
【0072】
CuOは、近赤外線カット性を高めるための必須成分であるが、0.5%未満であるとその効果が十分に得られず、20%を超えると可視域透過率が低下するため好ましくない。好ましくは1~15%であり、より好ましくは2~10%である。もっとも好ましくは3~9%である。
【0073】
K2Oは、リン酸塩系ガラスにおいては実質的に含有しないことが好ましい。K2Oはガラスの溶融温度を下げる効果が知られている。しかしながら、本発明者が確認したところ、リン酸ガラスにおいてK2OとNa2Oとの両者を含有すると、K2Oを含有せずNa2Oのみ含有する場合と比較し、ガラスの溶融温度が高くなる結果となった。その理由としては、以下が考えられる。P2O5とNa2Oとを等モル混合した場合の液相温度は2成分系の相図から約628℃である。これに対し、P2O5とK2Oを等モル混合した場合の液相温度は2成分系の相図から800℃を超える。これは、リン酸ガラスにおいて、Na2Oの一部をK2Oに置換すると、液相温度は上がる方向となり、溶融温度も上昇することを示唆している。なお、本発明における実質的に含有しないとは、原料として意図して用いないことを意味しており、原料成分や製造工程から混入する不可避不純物については実質的に含有していないとみなす。また、前記不可避不純物を考慮し、実質的に含有しないこととは含有量が0.05%以下であることを意味する。
【0074】
リン酸塩系ガラスにおいて、可視域透過率が高く、近赤外域の光の透過率が低い分光特性を得るには、ガラス成分中の銅イオンについて、紫外域に吸収を持ち可視域透過率を低くする要因となるCu+よりも近赤外域に吸収をもつCu2+を極力多く存在させることが重要である。
ガラス成分中の銅は、ガラスの溶融温度が高いほど還元される、つまりCu2+が還元されてCu+になる、傾向にある。よって、Cu2+を多く存在させるためには、ガラスの溶融温度を極力低くすることが有効である。なお、本発明の近赤外線カットフィルタガラスの溶融温度は、1150℃以下が好ましく、1100℃以下がより好ましく、1080℃以下がさらに好ましい。
そのため、ガラスの溶融温度を高くする効果があるAl2O3に対してガラスの溶融温度を低くする効果があるBaO、B2O3の比率を大きくする。これらのガラス成分中のバランスは、(BaO+B2O3)/Al2O3を大きくすればいいが、大きすぎる場合、耐候性の低下につながるため、これらの比は0.3~2.4の範囲である。さらにこれらの比は、0.3~2.0が好ましく、0.5~1.5がより好ましい。
リン酸塩系ガラスにおいて、可視域透過率が高く、近赤外域の光の透過率が低い分光特性、具体的には600~700nm付近の光の急峻なカットオフ特性を得るためには、ガラス中のCu2+の6配位構造の歪みを小さくし、Cu2+の吸収ピークを長波長側に移動させる、つまりガラス中のCu2+による近赤外域の光の吸収を一層高く機能させることが重要である。
そのため、ガラス中のCu2+の6配位構造の歪みを小さくするには、ガラス中に非架橋酸素の数が多く、かつ、修飾酸化物のフィールドストレングス(フィールドストレングスは、価数Zをイオン半径rの2乗で割った値:Z/r2であり、カチオンが酸素を引き付ける強さの程度を表す)が小さいことが必要であると考えた。
ガラス中の非架橋酸素の数を多くするためには、ガラスのネットワークを形成する網目状酸化物におけるP2O5を他の網目状酸化物に比べて多くする必要がある。P2O5は、Al2O3やB2O3と比べて分子中に酸素を多く含有するため、Cu2+は非架橋酸素を配位しやすくなり、Cu2+周りの歪みが小さくなる。他方、ガラスの耐候性を高めるには、耐候性に影響があるAl2O3をP2O5との比率において高くすることが有効である。
そのため、ガラスに含有する網目状酸化物のバランスは、P2O5/Al2O3が6.5~10の範囲である。さらにこれらの比は、7~10が好ましく、7~9.5がより好ましい。
【0075】
また、ガラス中の修飾酸化物のフィールドストレングスが小さいほど、吸収ピークの波数が小さくなり、Cu2+の近赤外域の光の吸収性が上がることがわかっている。そのためには、フィールドストレングスが相対的に小さいNa2Oを他の修飾酸化物と比較し多く含有することが効果的である。
かかる観点から、ガラスに含有する修飾酸化物のバランスは、Na2O/(Li2O+MgO+CaO+SrO+BaO)を大きくすればよいが、大きすぎる場合、耐候性の低下につながるため、これらの比は0.5~3の範囲である。さらにこれらの比は、0.5~2.5が好ましく、0.7~2がより好ましい。
【0076】
また、近赤外線吸収ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
【0077】
近赤外線吸収ガラスは、カメラモジュール低背化の観点から、厚さが好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下であり、素子強度の観点から、好ましくは0.15mm以上である。
【0078】
<樹脂膜>
樹脂膜は下記分光特性(iv-1)~(iv-5)をすべて満たすことが好ましい。
(iv-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが93%以上
(iv-2)波長450~600nmにおける最大内部透過率T450-600MAXが95%以上
(iv-3)波長450nmにおける内部透過率T450が86%以上
(iv-4)波長650~900nmの分光透過率曲線において内部透過率が50%となる最短の波長をIR50(S)とし、最長の波長をIR50(L)としたとき、
IR50(L)-IR50(S)≧90nm
(iv-5)波長700~800nmにおける最小内部透過率T700-800MINが10%以下
【0079】
分光特性(iv-1)~(iv-2)を満たすことで、450~600nmの可視光領域の透過性に優れることを意味する。
T450-600AVEは、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上である。
T450-600MAXは、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である。
【0080】
分光特性(iv-3)を満たすことで、青色光領域における透過性に優れることを意味する。
T450は、好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上である。
【0081】
分光特性(iv-4)を満たすことで、700nm近傍の近赤外光領域を幅広く遮光できることを意味する。
IR50(L)-IR50(S)は、好ましくは95nm以上、より好ましくは105nm以上である。
【0082】
分光特性(iv-5)を満たすことで、700~800nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T700-800MINは、好ましくは9%以下、より好ましくは7%以下である。
【0083】
樹脂膜は、下記分光特性(iv-6)~(iv-7)をさらに満たすことが好ましい。
(iv-6)内部透過率が50%となる波長IR50(S)が、650~700nmの範囲にある
(iv-7)内部透過率が50%となる波長IR50(L)が、740~850nmの範囲にある
分光特性(iv-6)~(iv-7)を満たすことで、700nm近傍の近赤外光領域を効率的に遮光できることを意味する。
IR50(S)は、好ましくは650~690nm、より好ましくは660~690nmである。
IR50(L)は、好ましくは750~830nm、より好ましくは760~830nmである。
【0084】
樹脂膜は、下記分光特性(iv-8)をさらに満たすことが好ましい。
(iv-8)波長700~800nmの平均内部透過率T700-800AVEが30%以下
分光特性(iv-8)を満たすことで、700~800nmの近赤外領域の遮光性に優れることを意味する。
T700-800AVEは、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。
【0085】
樹脂膜は、下記分光特性(iv-9)~(iv-11)をさらに満たすことが好ましい。
(iv-9)内部透過率が50%となる波長UV50が、400~440nmの範囲にある
(iv-10)波長370~400nmの平均内部透過率T370-400AVEが3%以下
(iv-11)波長370~400nmにおける最大内部透過率T370-400MAXが5%以下
分光特性(iv-9)~(iv-11)を満たすことで、370~400nmの近紫外領域の遮光性に優れることを意味する。
UV50は、好ましくは400~430nm、より好ましくは410~430nmの範囲にある。
T370-400AVEは、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
T370-400MAXは、好ましくは4.8%以下、より好ましくは4.6%以下である。
【0086】
本発明における樹脂膜は、680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)を含むことで、上記特性(iv-4)および(iv-5)に示すように、700nm付近の近赤外光領域の幅広い遮光性に特に優れる。これにより、赤外線吸収ガラスでは遮光性がやや弱い700nm付近の近赤外光領域を、色素の吸収特性によって遮光できる。
【0087】
色素(NIR1)は、樹脂中において680~740nm、好ましくは700~730nmに最大吸収波長を有する。ここで、樹脂とは、樹脂膜を構成する樹脂を指す。
NIR色素としては、1種類の化合物からなってもよく、2種以上の化合物を含んでもよい。
ここで、本発明における樹脂膜は、色素(NIR1)に加え、最大吸収波長が異なる他の近赤外線吸収色素をさらに含むことが好ましい。これにより樹脂膜が700nm付近の近赤外光領域の幅広い遮光性を獲得でき、特性(iv-4)が得られやすい。他の近赤外線吸収色素としては、樹脂中における最大吸収波長が色素(NIR1)よりも20~60nm大きい色素(NIR2)が好ましい。また、色素(NIR2)の最大吸収波長は700~800nmが好ましい。
【0088】
色素(NIR1)としては、最大吸収波長の領域、可視光域の透過性、樹脂への溶解性、耐久性の観点から、スクアリリウム化合物が好ましい。色素(NIR1)であるスクアリリウム化合物の最大吸収波長は680~740nmが好ましい。
色素(NIR2)としては、最大吸収波長の領域、可視光域の透過性、樹脂への溶解性、耐久性の観点から、スクアリリウム化合物およびシアニン化合物が好ましい。また、色素(NIR2)であるスクアリリウム化合物の最大吸収波長は740~770nmが好ましい。色素(NIR2)であるシアニン化合物の最大吸収波長は740~800nmが好ましい。
【0089】
<NIR1:スクアリリウム化合物>
色素(NIR1)であるスクアリリウム化合物としては、下記式(I)で示される化合物であることが好ましい。
なお、スクアリリウム化合物中に同一の記号が2以上存在する場合、それらの記号は同一でも異なっていてもよい。シアニン化合物についても同様である。
【0090】
<スクアリリウム化合物(I)>
【0091】
【0092】
ただし、上記式中の記号は以下のとおりである。
R24およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基、-NR27R28(R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29(R29は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)、-NHR30、または、-SO2-R30(R30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R41、R42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0093】
【0094】
R21とR22、R22とR25、およびR21とR23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。
複素環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
複素環Bが形成される場合のR22とR25、および複素環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-および-X2-Y2-(窒素に結合する側がX1およびX2)として、X1およびX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1およびY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X1およびX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1およびY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0095】
【0096】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR38R39(R38およびR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R31~R36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
R27、R28、R29、R31~R37、複素環を形成していない場合のR21~R23、およびR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
複素環を形成していない場合の、R21、R22、R23およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基を示す。
【0097】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-3)のいずれかで示される化合物が挙げられ、樹脂への溶解性、樹脂中での耐熱性や耐光性、これを含有する樹脂層の可視光透過率の観点から、式(I-1)で示される化合物が特に好ましい。
【0098】
【0099】
式(I-1)~式(I-3)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0100】
化合物(I-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。この場合、R31~R36としては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。なお、-Y1-X1-として、具体的には、式(11-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
【0101】
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(11-3)
-C(CH3)2-C(CH3)(nC3H7)- …(11-4)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0102】
また、化合物(I-1)において、R21は、溶解性、耐熱性、さらに分光透過率曲線における可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、独立して、式(4-1)または(4-2)で示される基がより好ましい。
【0103】
【0104】
式(4-1)および式(4-2)中、R71~R75は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0105】
化合物(I-1)において、R24は-NR27R28が好ましい。-NR27R28としては、樹脂と塗工溶媒への溶解性の観点から-NH-C(=O)-R29または-NH-SO2-R30が好ましい。
【0106】
化合物(I-1)において、R24が-NH-C(=O)-R29の化合物を式(I-11)に示す。
【0107】
【0108】
R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0109】
R29としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基、または置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基が好ましい。置換基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0110】
R29としては、直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基、および炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基から選ばれる基が好ましい。
【0111】
R29としては、独立して1つ以上の水素原子が水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5~25の炭化水素基である基も好ましく使用できる。
【0112】
化合物(I-11)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0113】
【0114】
化合物(I-11)としては、これらの中でも、化合物(1-11-1)~(1-11-12)、化合物(1-11-17)~(1-11-28)が、樹脂への溶解性、最大吸収波長、耐光性、耐熱性の観点、吸光度の高さの点で好ましく、特に化合物(1-11-1)~(1-11-12)が耐光性、耐熱性の観点で好ましい。本発明の構成は、誘電体多層膜による紫外光領域の遮光性が穏やかであるため、色素の耐光性は特に重要である。
【0115】
<NIR2:スクアリリウム化合物>
色素(NIR2)であるスクアリリウム化合物としては、下記式(II)で示される化合物であることが好ましい。
【0116】
<スクアリリウム化合物(II)>
【0117】
【0118】
ただし、上記式中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有する5員環または6員環であり、環Zが有する水素原子は置換されていてもよい。
R1とR2、R2とR3、およびR1と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、その場合、ヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1が有する水素原子は置換されていてもよい。ヘテロ環を形成していない場合のR1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。R4およびヘテロ環を形成していない場合のR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有してもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0119】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられ、樹脂への溶解性、樹脂中での可視光透過性の観点から、式(II-3)で示される化合物が特に好ましい。
【0120】
【0121】
式(II-1)、式(II-2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R3~R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0122】
式(II-3)中、R1、R4、およびR9~R12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を示す。
【0123】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR1およびR2は、樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数7~15のアルキル基がより好ましく、R1とR2の少なくとも一方が、炭素数7~15の分岐鎖を有するアルキル基がさらに好ましく、R1とR2の両方が炭素数8~15の分岐鎖を有するアルキル基が特に好ましい。
【0124】
化合物(II-3)におけるR1は、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、エチル基、イソプロピル基が特に好ましい。
【0125】
R4は、可視光透過性、合成容易性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
R7およびR8は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。
【0126】
R9~R12は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
-CR9R10-CR11R12-として、下記基(13-1)~(13-5)で示される2価の有機基が挙げられる。
-CH(CH3)-C(CH3)2- …(13-1)
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(13-2)
-C(CH3)2-CH2- …(13-3)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(13-4)
-CH(CH3)-C(CH3)(CH2-CH(CH3)2)-…(13-5)
【0127】
化合物(II-3)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0128】
【0129】
化合物(II-3)としては、これらの中でも、化合物(II-3-1)~化合物(II-3-4)が樹脂への溶解性、吸光係数の高さ、耐光性、耐熱性の観点から好ましい。
【0130】
化合物(I)~(II)は、それぞれ公知の方法で製造できる。化合物(I)については、米国特許第5,543,086号明細書、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号明細書に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号明細書に記載された方法で製造可能である。
【0131】
<NIR2:シアニン化合物>
色素(NIR2)であるシアニン化合物としては、下記式(III)で示される化合物であることが好ましい。
【0132】
【0133】
ただし、上記式中の記号は以下のとおりである。
R101~R109は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基、または、炭素数5~20のアリール基を示す。R110~R114は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~15のアルキル基を示す。
X-は一価のアニオンを示す。
n1は0または1である。-(CH2)n1-を含む炭素環に結合する水素原子はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基または炭素数5~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0134】
上記において、アルキル基(アルコキシ基が有するアルキル基を含む)は直鎖であってもよく、分岐構造や飽和環構造を含んでもよい。アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、炭素数5~20のアリール基における置換基としては、ハロゲン原子および炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられる。
【0135】
式(III)において、R101は、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基が好ましく、樹脂中で高い可視光透過率を維持する観点から分岐を有する炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。
【0136】
式(III)において、R102~R105、R108、R109はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素数5~20のアリール基が好ましく、高い可視光透過率が得られる観点から水素原子がより好ましい。
【0137】
式(III)において、R110~R114はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~15のアルキル基が好ましく、高い可視光透過率が得られる観点から水素原子がより好ましい。
【0138】
R106、R107は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基(鎖状、環状、分岐状のアルキル基を含んでもよい)が好ましく、水素原子、または炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。また、R106とR107は、同じ基が好ましい。
【0139】
X-としては、I-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、式(X1)、および(X2)で示されるアニオン等が挙げられ、好ましくは、BF4
-、またはPF6
-である。
【0140】
【0141】
以下の説明において、色素(III)における、R101~R114を除く部分を骨格(III)ともいう。
【0142】
式(III)において、n1が1の化合物を下式(III-1)に、n1が0の化合物を下式(III-2)に示す。
【0143】
【0144】
式(III-1)および式(III-2)において、R101~R114およびX-は、式(III)の場合と同様である。R115~R120は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、炭素数5~20のアリール基を示す。R115~R120はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基(鎖状、環状、分岐状のアルキル基を含んでもよい)が好ましく、水素原子、または炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。また、R115~R120は、同じ基であることが好ましい。
【0145】
式(III-1)、式(III-2)でそれぞれ示される化合物としては、より具体的には、それぞれ、各骨格に結合する原子または基が、以下の表に示される原子または基である化合物が挙げられる。下記表に示す全ての化合物において、R101~R109は式の左右で全て同一である。
【0146】
下記表におけるR110-R114は、各式の中央のベンゼン環に結合する原子または基を示し、5個全てが水素原子の場合「H」と記載した。R110-R114のうち、いずれかが置換基であり、それ以外が水素原子の場合、置換基である符号と置換基の組合せのみを記載した。例えば、「R112-C(CH3)3」の記載はR112が-C(CH3)3であり、それ以外は水素原子であることを示す。
【0147】
下記表におけるR115-R120は、式(III-1)における中央のシクロヘキサン環に結合する原子または基を示し、6個全てが水素原子の場合「H」と記載した。R115-R120のうち、いずれかが置換基であり、それ以外が水素原子の場合、置換基である符号と置換基の組合せのみを記載した。
【0148】
【0149】
色素(III-1)としては、これらの中でも、可視光域の透過性、樹脂への溶解性、耐熱性、耐光性の観点から、色素(III-1-1)~(III-1-12)等が好ましい。特に色素(III-1-1)、(III-1-5)、(III-1-9)が合成上の容易さという点で特に好ましい。
【0150】
色素(III)は、例えば、Dyes and pigments 73(2007)
344-352やJ.Heterocyclic chem,42,959(2005)に記載された方法で製造可能である。
【0151】
樹脂膜におけるNIR色素の含有量は、樹脂100質量部に対し好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.3~15質量部である。なお、2種以上の化合物を組み合わせる場合、上記含有量は各化合物の総和である。
また、色素(NIR1)および色素(NIR2)を併用する場合、色素(NIR1)の含有量は樹脂100質量部に対し好ましくは0.1~10質量部、色素(NIR2)の含有量は樹脂100質量部に対し好ましくは0.1~10質量部である。
【0152】
<UV色素>
樹脂膜は、上記NIR色素以外に、他の色素を含有してもよい。他の色素としては、樹脂中で370~440nmに最大吸収波長を有する色素(UV)が好ましい。これにより、近紫外領域を効率的に遮光できる。
【0153】
色素(UV)としては、オキサゾール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、ナフタルイミド色素、オキサジアゾール色素、オキサジン色素、オキサゾリジン色素、ナフタル酸色素、スチリル色素、アントラセン色素、環状カルボニル色素、トリアゾール色素等が挙げられる。この中でも、メロシアニン色素が特に好ましい。また、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0154】
色素(UV)としては、特に、下式(M)で示されるメロシアニン色素が好ましい。
【0155】
【0156】
式(M)における記号は以下のとおり。
【0157】
R1は、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
置換基としては、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基または塩素原子が好ましい。上記アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基およびジアルキルアミノ基の炭素数は1~6が好ましい。
【0158】
置換基を有しないR1として具体的には、水素原子の一部が脂肪族環、芳香族環もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、水素原子の一部が芳香族環、アルキル基もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、および水素原子の一部が脂肪族環、アルキル基もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0159】
R1が非置換のアルキル基である場合、そのアルキル基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、その炭素数は1~6がより好ましい。
【0160】
R1が水素原子の一部が脂肪族環、芳香族環もしくはアルケニル基で置換された炭素数1~12のアルキル基である場合、炭素数3~6のシクロアルキル基を有する炭素数1~4のアルキル基、フェニル基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、フェニル基で置換された炭素数1または2のアルキル基が特に好ましい。なお、アルケニル基で置換されたアルキル基とは、全体としてアルケニル基であるが1、2位間に不飽和結合を有しないものを意味し、例えばアリル基や3-ブテニル基等をいう。
【0161】
好ましいR1は、水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基である。特に好ましいR1は炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0162】
R2~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0163】
R2およびR3は、少なくとも一方が、アルキル基であることが好ましく、いずれもアルキル基であることがより好ましい。R2およびR3がアルキル基でない場合は、水素原子がより好ましい。R2およびR3は、いずれも炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0164】
R4およびR5は、少なくとも一方が、水素原子が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。R4またはR5が水素原子でない場合は、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0165】
Yは、R6およびR7で置換されたメチレン基または酸素原子を表す。
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。
【0166】
Xは、下記式(X1)~(X5)で表される2価基のいずれかを表す。
【0167】
【0168】
R8およびR9は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、R10~R19は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
R8~R19の置換基としては、R1における置換基と同様の置換基が挙げられ、好ましい態様も同様である。R8~R19が置換基を有しない炭化水素基である場合、置換基を有しないR1と同様の態様が挙げられる。
【0169】
式(X1)において、R8およびR9は異なる基であってもよいが、同一の基が好ましい。R8およびR9が非置換のアルキル基である場合、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、炭素数は1~6がより好ましい。
【0170】
好ましいR8およびR9は、いずれも、水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基である。特に好ましいR8およびR9は、いずれも、炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0171】
式(X2)において、R10とR11は、いずれも、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、それらは同一のアルキル基が特に好ましい。
【0172】
式(X3)において、R12およびR15は、いずれも水素原子であるか、置換基を有しない炭素数1~6のアルキル基が好ましい。同じ炭素原子に結合した2つの基であるR13とR14は、いずれも水素原子であるか、いずれも炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0173】
式(X4)における、同じ炭素原子に結合した2つの基R16とR17およびR18とR19は、いずれも水素原子であるか、いずれも炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0174】
化合物(M)は公知の方法で製造できる。
【0175】
樹脂膜における色素(UV)の含有量は、樹脂100質量部に対し好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは1~10質量部である。かかる範囲であれば、樹脂特性の低下を招きにくい。
【0176】
<基材構成>
本フィルタにおける基材は、近赤外線吸収ガラスの少なくとも一方の主面に樹脂膜を積層した複合基材である。
【0177】
樹脂としては、透明樹脂であれば制限されず、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂等から選ばれる1種以上の透明樹脂が用いられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
樹脂膜の分光特性やガラス転移点(Tg)、密着性の観点から、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂が好ましい。
【0178】
NIR色素やその他の色素として複数の化合物を用いる場合、これらは同一の樹脂膜に含まれてもよく、また、それぞれ別の樹脂膜に含まれてもよい。
【0179】
樹脂膜は、色素と、樹脂または樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを支持体に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。この際の支持体は、本フィルタに用いられる近赤外線吸収ガラスでもよいし、樹脂膜を形成する際にのみ使用する剥離性の支持体でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0180】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を支持体上に塗工後、乾燥させることにより樹脂膜が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0181】
また、樹脂膜は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもある。得られたフィルム状樹脂膜を近赤外線吸収ガラスに積層し熱圧着等により一体化させることにより基材を製造できる。
【0182】
樹脂膜は、光学フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。
【0183】
樹脂膜の厚さは、塗工後の基板内の面内膜厚分布、外観品質の観点から10μm以下、好ましくは5μm以下であり、また、適切な色素濃度で所望の分光特性を発現する観点から好ましくは0.5μm以上である。なお、光学フィルタが樹脂膜を2層以上有する場合は、各樹脂膜の総厚が上記範囲内であることが好ましい。
【0184】
基材の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、フィルム状でもよい。
【0185】
本フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
【0186】
以上に記載した通り、本明細書には下記の光学フィルタ等が開示されている。
〔1〕基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタであって、
前記基材は、近赤外線吸収ガラスと、前記近赤外線吸収ガラスの少なくとも一方の主面に積層された厚さ10μm以下の樹脂膜とを有し、
前記樹脂膜は、樹脂と、前記樹脂中で680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)とを含み、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-13)をすべて満たす光学フィルタ。
(i-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(0deg)AVEが80%以上
(i-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEが80%以上
(i-3)前記平均透過率T450-600(0deg)AVEと前記平均透過率T450-600(50deg)AVEとの差の絶対値が5%以下
(i-4)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(0deg)が80%以上
(i-5)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450nmにおける透過率T450(50deg)が80%以上
(i-6)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmにおける最大透過率T450-600(0deg)MAXが90%以上
(i-7)入射角0度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(0deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-8)入射角50度での分光透過率曲線において、透過率が50%となる波長IR50(50deg)が、610~650nmの範囲にある
(i-9)前記波長IR50(0deg)と前記波長IR50(50deg)との差の絶対値が10nm以下
(i-10)入射角0度での分光透過率曲線において、波長1000~1200nmにおける最大透過率T1000-1200(0deg)MAXが5%以下
(i-11)入射角50度での分光透過率曲線において、波長1000~1200nmにおける最大透過率T1000-1200(50deg)MAXが5%以下
(i-12)前記透過率T450(0deg)/前記最大透過率T1000-1200(0deg)MAX≧25
(i-13)前記透過率T450(50deg)/前記最大透過率T1000-1200(50deg)MAX≧10
〔2〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-14)~(i-15)をさらに満たす、〔1〕に記載の光学フィルタ。
(i-14)入射角0度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(0deg)MAXが1%以下
(i-15)入射角50度での分光透過率曲線において、波長750~1000nmにおける最大透過率T750-1000(50deg)MAXが1%以下
〔3〕前記基材が、下記分光特性(ii-1)~(ii-7)をすべて満たす、〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルタ。
(ii-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが85%以上
(ii-2)波長450~600nmにおける最大内部透過率T450-600MAXが92%以上
(ii-3)波長450nmにおける内部透過率T450が82%以上
(ii-4)内部透過率が50%となる波長IR50が、610~650nmの範囲にある
(ii-5)波長750~1000nmの平均内部透過率T750-1000AVEが1.5%以下
(ii-6)波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T1000-1200MAXが5%以下
(ii-7)内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAX≧15
〔4〕前記基材が、下記分光特性(ii-8)をさらに満たす、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
(ii-8)波長750~1000nmにおける最大内部透過率T750-1000MAXが2%以下
〔5〕前記近赤外線吸収ガラスが、下記分光特性(iii-1)~(iii-6)をすべて満たす、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
(iii-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが90%以上
(iii-2)波長450nmにおける内部透過率T450が92%以上
(iii-3)内部透過率が50%となる波長IR50が、625~650nmの範囲にある
(iii-4)波長750~1000nmの平均内部透過率T750-1000AVEが2.5%以下
(iii-5)波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T1000-1200MAXが5%以下
(iii-6)内部透過率T450/最大内部透過率T1000-1200MAX≧10
〔6〕前記樹脂膜が、下記分光特性(iv-1)~(iv-5)をすべて満たす、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
(iv-1)波長450~600nmの平均内部透過率T450-600AVEが93%以上
(iv-2)波長450~600nmにおける最大内部透過率T450-600MAXが95%以上
(iv-3)波長450nmにおける内部透過率T450が86%以上
(iv-4)波長650~900nmの分光透過率曲線において内部透過率が50%となる最短の波長をIR50(S)とし、最長の波長をIR50(L)としたとき、
IR50(L)-IR50(S)≧90nm
(iv-5)波長700~800nmにおける最小内部透過率T700-800MINが10%以下
〔7〕前記樹脂膜は、色素(NIR2)をさらに含み、
前記色素(NIR2)は、前記樹脂中における最大吸収波長が、前記色素(NIR1)の前記樹脂中における最大吸収波長よりも20~60nm大きい、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
〔8〕前記誘電体多層膜が、下記分光特性(v-1)~(v-5)をすべて満たす、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
(v-1)入射角0度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの最小透過率T450-600(0deg)MINが90%以上
(v-2)入射角50度での分光透過率曲線において、波長450~600nmの最小透過率T450-600(50deg)MINが90%以上
(v-3)前記最小透過率T450-600(0deg)MINと前記最小透過率T450-600(50deg)MINとの差の絶対値が5%以下
(v-4)入射角0度での分光透過率曲線において、波長700~1200nmの平均透過率T700-1200(0deg)AVEが30~75%
(v-5)入射角50度での分光透過率曲線において、波長700~1200nmの平均透過率T700-1200(50deg)AVEが30~75%
〔9〕前記誘電体多層膜が、屈折率1.6~2.1の誘電体薄膜を含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
〔10〕前記樹脂膜は、前記樹脂中で680~740nmに最大吸収波長を有する色素(NIR1)としてスクアリリウム化合物を含み、
前記樹脂中における最大吸収波長が前記色素(NIR1)の前記樹脂中における最大吸収波長よりも20~60nm大きい色素(NIR2)としてスクアリリウム化合物およびシアニン化合物の少なくとも一方をさらに含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
〔11〕前記樹脂膜は、前記樹脂中で370~440nmに最大吸収波長を有する色素(UV)をさらに含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の光学フィルタ。
〔12〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の光学フィルタを備えた撮像装置。
【実施例0187】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
各分光特性の測定には、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、UH-4150形)を用いた。
なお、入射角度が特に明記されていない場合の分光特性は入射角0°(光学フィルタ主面に対し垂直方向)で測定した値である。
【0188】
各例で用いた色素は下記のとおりである。
化合物1(スクアリリウム化合物):国際公開第2014/088063号および国際公開第2016/133099号に基づき合成した。
化合物2(メロシアニン化合物):独国特許公報第10109243号明細書に基づき合成した。
化合物3(スクアリリウム化合物):国際公開第2017/135359号に基づき合成した。
化合物4(シアニン化合物):Dyes and Pigments、73、344-352(2007)に記載の方法に基づき合成した。
化合物5(シアニン化合物):Dyes and Pigments、73、344-352(2007)に記載の方法に基づき合成した。
化合物6(ジインモニウム化合物):日本国特許第4800769号公報に記載の方法に基づき合成した。
【0189】
【0190】
<色素の樹脂中の分光特性>
ポリイミド樹脂(三菱ガス化学株式会社製「C3G30G」(商品名)、屈折率1.59)をγ-ブチロラクトン(GBL):シクロヘキサノン=1:1(質量比)に溶解して、樹脂濃度8.5質量%のポリイミド樹脂溶液を調製した。
上記各化合物1~6の各色素をそれぞれ樹脂100質量部に対して7.5質量部の濃度で前記樹脂溶液に添加し、50℃、2時間撹拌・溶解することで塗工液を得た。得られた塗工液をアルカリガラス(SCHOTT社製、D263ガラス、厚み0.2mm)にスピンコート法により塗布し、およそ膜厚が1.0μmになるように塗工膜をそれぞれ形成した。
得られた塗工膜について、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における分光透過率曲線を測定した。
上記各化合物1~6の、ポリイミド樹脂中の分光特性を下記表に示す。なお、下記表に示す分光特性については、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
【0191】
【0192】
<近赤外線吸収ガラスの分光特性>
近赤外線吸収ガラスとして、リン酸塩ガラス(AGC社製、SP50T)を準備した。
近赤外線吸収ガラスについて、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における分光透過率曲線を測定した。
得られた分光特性のデータから、波長450~600nmの平均内部透過率T
450-600AVE、最大内部透過率T
450-600MAX、波長450nmにおける内部透過率T
450、内部透過率が50%となる波長IR50、波長750~1000nmの平均内部透過率T
750-1000AVE、波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T
1000-1200MAX、内部透過率T
450/最大内部透過率T
1000-1200MAX、を算出した。
結果を下記表に示す。なお、下記表に示す分光特性については、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
また、近赤外線吸収ガラスの分光透過曲線を
図4に示す。
【0193】
【0194】
上記に示すように、用いた近赤外線吸収ガラスは、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の遮光性に優れていることが分かる。
【0195】
<例1-1~例1-5:樹脂膜の分光特性>
化合物1~6のいずれかの色素を、上記化合物の分光特性を算出した際と同様に調製したポリイミド樹脂溶液に、下記表に記載の濃度でそれぞれ混合し、50℃、2時間撹拌・溶解することで塗工液を得た。得られた塗工液をアルカリガラス(SCHOTT社製、D263ガラス、厚み0.2mm)にスピンコート法により塗布し、膜厚3.0μmの樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜について、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における分光透過率曲線を測定した。
得られた分光特性のデータから、波長450~600nmの平均内部透過率T
450-600AVE、最大内部透過率T
450-600MAX、波長450nmにおける内部透過率T
450、波長650~900nmの分光透過率曲線において内部透過率が50%となる最短の波長IR50
(S)と最長の波長IR50
(L)との差、波長700~800nmの平均内部透過率T
700-800AVE、最小内部透過率T
700-800MIN、内部透過率が50%となる波長UV50、波長370~400nmの平均内部透過率T
370-400AVE、最大内部透過率T
370-400MAXを算出した。
結果を下記表に示す。なお、下記表に示す分光特性については、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
また、例1-1の樹脂膜の分光透過率曲線を
図5に示す。
なお、例1-1~1-5は参考例である。
【0196】
【0197】
<例2-1~例2-5:基材の分光特性>
化合物1~6のいずれかの色素を、上記化合物の分光特性を算出した際と同様に調製したポリイミド樹脂溶液に、下記表に記載の濃度でそれぞれ混合し、50℃、2時間撹拌・溶解することで塗工液を得た。得られた塗工液を、厚み0.28nmの近赤外線吸収ガラス(AGC社製、SP50T)にスピンコート法により塗布し、膜厚3.0μmの樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜について、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における分光透過率曲線を測定した。
得られた分光特性のデータから、波長450~600nmの平均内部透過率T
450-600AVE、最大内部透過率T
450-600MAX、波長450nmにおける内部透過率T
450、内部透過率が50%となる波長IR50、波長750~1000nmの平均内部透過率T
750-1000AVE、最大内部透過率T
750-1000MAX、波長1000~1200nmにおける最大内部透過率T
1000-1200MAX、内部透過率T
450/最大内部透過率T
1000-1200MAX、内部透過率が50%となる波長UV50、波長370~400nmの平均内部透過率T
370-400AVE、を算出した。
結果を下記表に示す。なお、下記表に示す分光特性については、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
また、例2-1の基材の分光透過率曲線を
図6に示す。
なお、例2-1~2-5は参考例である。
【0198】
【0199】
上記結果より、近赤外線吸収能および可視光透過性に優れたガラスと、700~800nm付近を深く吸収して可視光透過性が高い色素を組み合わせることで、基材の吸収特性のみで光学フィルタの分光特性をほぼ担保できることが分かる。特に、本発明における基材は、可視光透過率と近赤外光透過率の比(T450/T1000-1200MAX)が高いことから、可視光透過性と近赤外遮蔽性が両立されている。
【0200】
<例3-1~例3-4:誘電体多層膜の分光特性>
アルカリガラス(SCHOTT社製、D263ガラス、厚み0.2mm)の表面に、下記表に示す高屈折率材料、中屈折率材料、低屈折率材料のうち2つの材料を蒸着により交互に積層させ、下記表に示す厚さの誘電単多層膜を形成した。
得られた誘電単多層膜について、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における入射角0度および入射角50度での分光透過率曲線を測定した。
得られた分光特性のデータから、波長450~600nmにおける入射角0度での最小透過率T450-600(0deg)MIN、入射角50度での最小透過率T450-600(50deg)MIN、最小透過率T450-600(0deg)MINと最小透過率T450-600(50deg)MINとの差、波長450~600nmにおける入射角0度での平均透過率T450-600(0deg)AVE、入射角50度での平均透過率T450-600(50deg)AVE、平均透過率T450-600(0deg)AVEと平均透過率T450-600(50deg)AVEとの差、波長700~1200nmにおける入射角0度での平均透過率T700-1200(0deg)AVE、入射角50度での平均透過率T700-1200(50deg)AVE、を算出した。
結果を下記表に示す。
なお、例3-1~3-4は参考例である。
【0201】
【0202】
上記結果から、入射角0degおよび50degで450-600nmにおける透過率が高く、かつ、透過率が変化しにくい、すなわち可視光領域において透過性が高くかつリップルが発生しにくい多層膜であることが分かる。また、700-1200nmの透過率から、近赤外光領域が緩やかに遮光されていることが分かる。
【0203】
<例4-1~例4-9:光学フィルタの分光特性>
例2-1~2-5のいずれかの構成の基材と、例3-1~3-4のいずれかの構成の誘電体多層膜(反射膜)とを備えた光学フィルムについて、紫外可視分光光度計を用いて350~1200nmの波長範囲における入射角0度および入射角50度での分光透過率曲線を測定した。
光学フィルタの構成は、樹脂膜/近赤外線吸収ガラス/反射膜とした。
得られた分光特性のデータから、波長450~600nmにおける入射角0度での平均透過率T
450-600(0deg)AVE、入射角50度での平均透過率T
450-600(50deg)AVE、平均透過率T
450-600(0deg)AVEと平均透過率T
450-600(50deg)AVEとの差、波長450nmにおける入射角0度での透過率T
450(0deg)、入射角50度での透過率T
450(50deg)、波長450~600nmにおける入射角0度での最大透過率T
450-600(0deg)MAX、入射角0度で透過率が50%となる波長IR50
(0deg)、入射角50度で透過率が50%となる波長IR50
(50deg)、波長IR50
(0deg)と波長IR50
(50deg)との差の絶対値、波長1000~1200nmにおける入射角0度での最大透過率T
1000-1200(0deg)MAX、入射角50度での最大透過率T
1000-1200(50deg)MAX、透過率T
450(0deg)/最大透過率T
1000-1200(0deg)MAX、透過率T
450(50deg)/最大透過率T
1000-1200(50deg)MAX、入射角0度で透過率が50%となる波長UV50
(0deg)、入射角50度で透過率が50%となる波長UV50
(50deg)、波長UV50
(0deg)と波長UV50
(50deg)との差の絶対値、波長370~400nmの入射角0度での平均透過率T
370-400(0deg)AVE、入射角50度での平均透過率T
370-400(50deg)AVE、波長750~1000nmにおける入射角0度での最大透過率T
750-1000(0deg)MAX、入射角50度での最大透過率T
750-1000(50deg)MAX、波長370~400nmにおける入射角0度での最大透過率T
370-400(0deg)MAX、入射角50度での最大透過率T
370-400(50deg)MAX、を算出した。
結果を下記表に示す。
また、例4-1の光学フィルタの分光透過率曲線を
図7に示す。
なお、例4-1~4-3、4-5、4-6、4-9は実施例であり、例4-4、4-7、4-8は比較例である。
【0204】
【0205】
上記結果より、例4-1~例4-3、例4-5、例4-6、例4-9の光学フィルタは、高入射角でも可視光領域におけるリップル発生が小さく、可視光領域の透過性と700~1200nmの近赤外領域の遮光性に優れることが分かる。
例4-4の光学フィルタは、平均透過率T450-600(0deg)AVEと平均透過率T450-600(50deg)AVEとの差が大きく、高入射角では可視光透過率の変化が大きい。例4-4では、入射角50度での波長450nmにおける透過率T450(50deg)や波長450~600nmの平均透過率T450-600(50deg)AVEも低い。例4-4で用いた誘電体多層膜は、近赤外領域の遮光性に優れる反面、高入射角では可視光領域においてリップルが発生しやすいと考えられる。
例4-7および例4-8の光学フィルタは、波長450nmにおける入射角50度での透過率T450(50deg)が低いことが分かる。また、波長450~600nmにおける入射角0度での最大透過率T450-600(0deg)MAXも低い。例4-7および例4-8では、最大吸収波長が722nmの化合物1と併用した色素化合物の最大吸収波長が、例4-7では845nm(化合物5使用)、例4-8では1112nm(化合物6使用)である。一般的に、最大吸収波長が長波長であるほど可視光領域の透過性も低下する傾向にあるため、例4-7および例4-8では可視光領域の透過性が低下したと考えられる。
【0206】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2021年7月7日出願の日本特許出願(特願2021-113057)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の光学フィルタは、可視光の透過性に優れ、かつ、高入射角においても可視光領域の透過率変化が少なく、近赤外光領域の遮蔽性に優れた分光特性を有する。近年、高性能化が進む、例えば、輸送機用のカメラやセンサ等の撮像装置の用途に有用である。