(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098052
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】抗プラスミン剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9066 20060101AFI20240711BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/539 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/739 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/65 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K36/9066
A61P7/04
A61P43/00 111
A61K36/539
A61K36/739
A61K36/65
A61K36/48
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081351
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2019205931の分割
【原出願日】2019-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】久保 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】古林 宗子
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、抗プラスミン剤として有用な新たな植物由来成分を提供することである。
【解決手段】シソ科タツナミソウ属、ショウガ科ウコン属、バラ科ワレモコウ属、ボタン科ボタン属、及び/又はマメ科アスパラトゥス属の植物の抽出物、並びに/若しくは、ミカン科ミカン属の植物の果汁を含む抗プラスミン剤は、優れた抗プラスミン効果を奏する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショウガ科ウコン属の抽出物を含む、抗プラスミン剤。
【請求項2】
前記ショウガ科ウコン属の植物が、ウコン、マンゴージンジャー、ハルウコン、ガジュツ、及びクスリウコンからなる群より選択される、請求項1に記載の抗プラスミン剤。
【請求項3】
シソ科タツナミソウ属、バラ科ワレモコウ属、ボタン科ボタン属、及び/又はマメ科アスパラトゥス属の植物の抽出物、並びに/若しくは、ミカン科ミカン属の植物の果汁をさらに含む、請求項1又は2に記載の抗プラスミン剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗プラスミン作用を有する植物由来成分に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスミンは血栓の主成分であるフィブリンを分解する酵素として知られており、通常時は、前駆体であるプラスミノーゲンの形で血漿中に存在している。プラスミノーゲンはプラスミノーゲンアクチベーター(PA)によるペプチド結合の切断により活性化されてプラスミンを遊離し、遊離したプラスミンは血栓の溶解に寄与する。プラスミノーゲンの活性化はプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI)により制御されており、PAとPAIとのバランスによって組織の恒常性が維持されている。
【0003】
細胞表面で生じたプラスミンは、直接的又は間接的に細胞外タンパク質の分解を行い、細胞の移動、組織修復等に関与する。皮膚組織においても、プラスミノーゲン/プラスミン系は、形態形成や疾患の発症などに関与していることが知られており、表皮細胞の増殖にPAが関与しているという報告がなされている(非特許文献1)。
【0004】
抗プラスミン剤は、PAによるプラスミノーゲンの活性化を阻害することによりフィブリン分解を防ぎ止血作用を発揮する薬剤であり、プラスミンによる作用を阻止する目的で用いられている。抗プラスミン剤の例としては、イプシロンアミノカプロン酸及びトラネキサム酸といった合成プラスミン阻害剤が古くから知られている。更にその後、シラカバ抽出物(特許文献1)、セイヨウカラハナソウ抽出物およびローマカミツレ抽出物(特許文献2)といった植物抽出物も見出されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】kirchheimer JC et al., Eur J Biochem, 181, 103-107 (1989)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-338614号公報
【特許文献2】特開2000-229833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
植物由来成分は天然物ゆえの複雑な多成分系を構築しているため、製剤形態や共存する他の成分によっては様々に安定性等の性質が異なりうる。このため、これまで知られている植物抽出物を含む抗プラスミン剤だけでは、ますます多様化する製剤処方に柔軟に対応することができなくなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、抗プラスミン剤として有用な新たな植物由来成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、シソ科タツナミソウ属、ショウガ科ウコン属、バラ科ワレモコウ属、ボタン科ボタン属、及びマメ科アスパラトゥス属の植物の抽出物と、ミカン科ミカン属の植物の果汁とに、抗プラスミン活性があることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. シソ科タツナミソウ属、ショウガ科ウコン属、バラ科ワレモコウ属、ボタン科ボタン属、及び/又はマメ科アスパラトゥス属の植物の抽出物、並びに/若しくは、ミカン科ミカン属の植物の果汁を含む、抗プラスミン剤。
項2. 前記シソ科タツナミソウ属の植物が、オウゴン、スカルキャップ、及びハンシレンからなる群より選択される、項1に記載の抗プラスミン剤。
項3. 前記ショウガ科ウコン属の植物が、ウコン、マンゴージンジャー、ハルウコン、ガジュツ、及びクスリウコンからなる群より選択される、項1又は2に記載の抗プラスミン剤。
項4. 前記バラ科ワレモコウ属の植物が、ワレモコウ及び/又はオランダワレモコウである、項1~3のいずれかに記載の抗プラスミン剤。
項5. 前記ボタン科ボタン属の植物が、ボタン、シャクヤク、及びヤマシャクヤクからなる群より選択される、項1~4のいずれかに記載の抗プラスミン剤。
項6. 前記マメ科アスパラトゥス属の植物がルイボスである、項1~5のいずれかに記載の抗プラスミン剤。
項7. 前記ミカン科ミカン属の植物が、ライム、ダイダイ、アマダイダイ、グレープフルーツ、プルット、ユズ、スダチ、カボス、マンダリン、レモン、シトロン、ブシュカン、ナツミカン、オレンジ、ハッサク、シークワシャー、タチバナ、イヨカン、セイヒ、ウンシュウミカン、ベルガモット、及びブンタンからなる群より選択される、項1~6のいずれかに記載の抗プラスミン剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抗プラスミン剤として有用な新たな植物由来成分が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】各植物由来成分のプラスミン活性の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の抗プラスミン剤は、シソ科タツナミソウ属、ショウガ科ウコン属、バラ科ワレモコウ属、ボタン科ボタン属、及び/又はマメ科アスパラトゥス属の植物の抽出物、並びに/若しくは、ミカン科ミカン属の植物の果汁を有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の抗プラスミン剤について詳述する。
【0014】
シソ科タツナミソウ属の植物抽出物
シソ科(Labiatae)タツナミソウ属(Scutellaria)の植物抽出物は、抗アレルギー作用、抗菌作用、収れん作用、保湿作用等を有することが知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、シソ科タツナミソウ属の植物抽出物の好ましい例としては、オウゴン(Scutellaria baicalensis Georgi)の抽出物、スカルキャップ(Scutellaria lateriflora Linne)の抽出物、及びハンシレン(Scutellaria barbata D. Don.)の抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上述の植物抽出物の中でも、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、好ましくはオウゴンの抽出物が挙げられる。オウゴンの抽出物は、オウゴンエキスとして医薬部外品原料規格等に示されている。具体的には、オウゴンの抽出物は、オウゴンの根から、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。オウゴンの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン又はこれらの混合溶媒が挙げられる。オウゴンエキスについては、例えば、株式会社ヤマダ薬研、一丸ファルコス株式会社、丸善製薬株式会社等から商業的に入手可能である。
【0016】
本発明の抗プラスミン剤におけるシソ科タツナミソウ属の植物抽出物の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.00009~10重量%、好ましくは0.0009~5重量%、より好ましくは0.009~3重量%、さらに好ましくは0.09~0.9重量%が挙げられる。
【0017】
ショウガ科ウコン属の植物抽出物
ショウガ科(Zingiberaceae)ウコン属(Curcuma)の植物抽出物は、抗酸化作用、抗老化作用等が知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、ショウガ科ウコン属の植物抽出物の好ましい例としては、ウコン(Curcuma longa Linne)の抽出物、マンゴージンジャー(Curcuma amada Roxb.)の抽出物、ハルウコン(Curcuma aromatica Salisb.)の抽出物、ガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe)の抽出物、及びクスリウコンの抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上述の植物抽出物の中でも、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、好ましくはウコンの抽出物が挙げられる。ウコンの抽出物は、ウコンエキスとして医薬部外品原料規格等に示されている。具体的には、ウコンの抽出物は、ウコンの根茎から、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。ウコンの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混合溶媒が挙げられる。ウコンエキスについては、例えば、株式会社ヤマダ薬研、一丸ファルコス株式会社、丸善製薬株式会社、日油株式会社等から商業的に入手可能である。
【0019】
本発明の抗プラスミン剤におけるショウガ科ウコン属の植物抽出物の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.00008~10重量%、好ましくは、0.0008~5重量%、より好ましくは0.008~1重量%、さらに好ましくは0.08~0.8重量%が挙げられる。
【0020】
バラ科ワレモコウ属の植物抽出物
バラ科(Rosaceae)ワレモコウ属(Sanguisorba)の植物抽出物は、収れん作用、抗菌作用、抗アレルギー作用、抗老化作用、育毛作用、消臭作用等が知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、バラ科ワレモコウ属の植物抽出物の好ましい例としては、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis Linne)の抽出物、オランダワレモコウ(Sanguisorba minor Scop.)の抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、1種を単独で用いてもよいし、2種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上述の植物抽出物の中でも、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、好ましくはワレモコウの抽出物が挙げられる。ワレモコウの抽出物は、ワレモコウエキスとして医薬部外品原料規格等に示されている。具体的には、ワレモコウの抽出物は、ワレモコウの根及び根茎から、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。ワレモコウの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混合溶媒が挙げられる。ワレモコウエキスについては、例えば、丸善製薬株式会社等から商業的に入手可能である。
【0022】
本発明の抗プラスミン剤におけるバラ科ワレモコウ属の植物抽出物の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.00008~10重量%、好ましくは0.0008~5重量%、より好ましくは0.008~3重量%、さらに好ましくは0.08~0.8重量%が挙げられる。
【0023】
ボタン科ボタン属の植物抽出物
ボタン科(Paeoniaceae)ボタン属(Paeonia)の植物抽出物は、細胞賦活作用、抗菌作用、保湿・バリア改善作用、抗シワ作用等が知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、ボタン科ボタン属の植物抽出物の好ましい例としては、ボタン(Paeonia suffruticosa Andrews)の抽出物、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.)の抽出物、ヤマシャクヤク(Paeonia japonica (Makino) Miyabe et Takeda)の抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上述の植物抽出物の中でも、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、好ましくはシャクヤクの抽出物が挙げられる。シャクヤクの抽出物は、シャクヤクエキスとして医薬部外品原料規格等に示されている。具体的には、シャクヤクの抽出物は、シャクヤクの根から、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。シャクヤクの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混合溶媒が挙げられる。シャクヤクエキスについては、例えば、株式会社ヤマダ薬研、一丸ファルコス株式会社、丸善製薬株式会社等から商業的に入手可能である。
【0025】
本発明の抗プラスミン剤におけるボタン科ボタン属の植物抽出物の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.0001~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、さらに好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0026】
マメ科アスパラトゥス属の植物抽出物
マメ科(Fabaceae)アスパラトゥス(Aspalathus)属の植物抽出物は、抗アレルギー作用、抗酸化作用等が知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、マメ科アスパラトゥス属の植物抽出物の好ましい例としては、ルイボス(Aspalathus linearis (Burm. f.) R. Dahlgren)の抽出物が挙げられる。
【0027】
ルイボスの抽出物は、アスパラサスリネアリスエキスとして医薬部外品原料規格等に示されている。具体的には、ルイボスの抽出物は、ルイボスの全草から、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。ルイボスの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは、1,3-ブチレングリコールが挙げられる。アスパラサスリネアリスエキスについては、例えば、丸善製薬株式会社、株式会社ヤマダ薬研、一丸ファルコス株式会社等から商業的に入手可能である。
【0028】
本発明の抗プラスミン剤におけるマメ科アスパラトゥス属の植物抽出物の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.0005~10重量%、好ましくは0.005~7.5重量%、より好ましくは0.05~6重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%が挙げられる。
【0029】
ミカン科ミカン属の果汁
ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)の果汁は、抗酸化作用、保湿作用、収れん作用、ピーリング作用、角質柔軟作用等が知られている公知の成分である。本発明において、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、ミカン科ミカン属の植物抽出物の好ましい例としては、ライム(Citrus aurantifolia
Swingle)の果汁、ダイダイ(Citrus aurantium Linne)の果汁、アマダイダイ(Citrus sinensis (L.) Osbeck)の果汁、グレープフルーツ(Citrus paradisi Macfad.)の果汁、プルット(Citrus hystrix DC.)の果汁、ユズ(Citrus junos Siebold ex Tanaka)の果汁、スダチ(Citrus sudachi Hort. ex Shirai)の果汁、カボス(Citrus sphaerocarpa Hort. ex Tanaka)の果汁、マンダリン(Citrus reticulata Blanco)の果汁、レモン(Citrus limon (Linne) Osbeck)の果汁、シトロン(Citrus medica L.)の果汁、ブシュカン(Citrus medica Linne var. sarcodactylis (Hoola van Nooten) Swingle)の果汁、ナツミカン(Citrus natsudaidai Hayata)の果汁、オレンジ(Citrus sinensis Osbeck)の果汁、ハッサク(Citrus aurantium L. subsp. hassaku Hiroe)の果汁、シークワシャー(Citrus depressa Hayata)の果汁、タチバナ(Citrus tachibana (Makino) Tanaka)の果汁、イヨカン(Citrus iyo Hort. ex Tanaka)の果汁、セイヒ(Citrus tangerina Hort. ex Tanaka)の果汁、ウンシュウミカン(Citrus unshiu (Swingle) Marcow.)の果汁、ベルガモット(Citrus bergamia Risso et Poit.)の果汁、ブンタン(Citrus grandis Osbeck)の果汁が挙げられる。これらの植物果汁は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上述の植物果汁の中でも、より一層好ましい抗プラスミン活性を得る観点から、好ましくはライムの果汁が挙げられる。ライムの果汁は、具体的には、ライム果実を圧搾して得ることができる。ライム果汁の具体的な形態としては、生の果汁及び乾燥果汁が挙げられる。ライム果汁は、生の果汁については、例えば、丸善製薬株式会社等から商業的に入手可能である。
【0031】
本発明の抗プラスミン剤におけるミカン科ミカン属の果汁の含有量としては特に限定されず、付与すべき抗プラスミン効果に応じて適宜決定することができるが、例えば、乾燥重量換算量で、0.001~10重量%、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0032】
他の成分
本発明の抗プラスミン剤は、上記成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗炎症剤、抗酸化剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の抗プラスミン剤は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)等の水性基剤;天然由来油、鉱物油、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール等の油性基剤;界面活性剤;清涼化剤、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0034】
用途・製剤形態
本発明の抗プラスミン剤は、プラスミンやプラスミノーゲンアクチベーター活性に対して拮抗的に作用しプラスミンの活性発現を直接的又は間接的に阻害する用途で用いられる。また、本発明の抗プラスミン剤の製剤形態については、特に制限されず、液状、固形状、半固形状等のいずれであってもよい。
【実施例0035】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
表1に示す植物由来素材(表中、BGは1,3-ブチレングリコールを表す。)について、文献R Homma et al., The International Journal of Biochemistry & Cell Biology
37 (2005) 1911-1920に記載の方法に準拠し、以下に記載する方法でプラスミン活性を測定することで、抗プラスミン活性能を測定した。
【0037】
【0038】
(プラスミン活性測定方法)
(1)試薬及び検体調製
(1-1)基質溶液
基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA;株式会社ペプチド研究所;3104-v)5.3mgにDMSO860.7μlを加え、10mMストック溶液を調製し、-20℃で保管した。使用時には、200mM Tris-HCl(pH8.0)で基質濃度が2mMとなるように希釈した。
【0039】
(1-2)プラスミン溶液
34U/μLのプラスミン溶液(富士フイルム和光純薬;166-24231)1μlに、200mM Tris-HCl(pH8.0)33μlを加え、プラスミン1U/μlストック溶液を調製した。使用時には、200mM Tris-HCl(pH8.0)でプラスミン濃度が100mU/mlとなるように希釈した。
【0040】
(1-3)検体溶液
オウゴン根エキスについては、エキスの乾燥重量換算で0.09重量%、0.45重量%、及び0.90重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
ウコン根茎エキスについては、エキスの乾燥重量換算で0.08重量%、0.40重量%、及び0.80重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
ワレモコウ(根及び根茎)エキスについては、エキスの乾燥重量換算で0.08重量%、0.40重量%、及び0.80重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
シャクヤク根エキスについては、エキスの乾燥重量換算で0.10重量%、0.50重量%、及び1.00重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
ルイボス(全草)エキスについては、エキスの乾燥重量換算で0.50重量%、2.50重量%、及び5.00重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
ライム果汁については、果汁の乾燥重量換算で1.00重量%、5.00重量%、及び10.00重量%となるようにそれぞれ検体溶液を調製した。
なお、検体溶液の調製においては、表1に示す各商品を希釈する場合は、各商品に用いられている溶媒と同じ組成の溶媒を用いて希釈した。
【0041】
(2)測定プロトコル
(2-1)分注操作
(サンプル)
96穴マイクロプレートに、検体溶液を40μLずつ分注した。
検体溶液を分注したウェルに、基質溶液を50μLずつ分注した。
基質溶液を分注したウェルに、プラスミン溶液10μLずつ分注した。
【0042】
(コントロール)
検体溶液の代わりに1,3-BG水溶液を分注したことを除いて、上記を同様に基質溶液及びプラスミン溶液の分注操作を行った。
【0043】
(ブランク)
96穴マイクロプレートに、検体溶液又はコントロールを40μLずつ分注した後、各ウェルに200mM Tris-HClを60μLずつ分注した。
【0044】
(2-2)測定
37℃でプラスミンと基質との酵素反応を行った。酵素反応時間は、プラスミンと基質との酵素反応開始後60分とした。酵素反応によって、基質に結合したMCAが切断されることで、蛍光物質AMCが遊離し、蛍光を発する。プラスミン活性が高いほど蛍光強度が強くなる。つまり、蛍光強度が弱いほど抗プラスミン活性が高くなる。得られた蛍光を、EnSight(測定波長:Ex380nm,Em460nm)にて測定した。
【0045】
(3)解析
各サンプルの蛍光強度それぞれから、ブランクの蛍光強度それぞれを減じ、コントロールでのプラスミン活性を100%として、各植物由来成分のプラスミン活性の比率(%)を求めた。結果を
図1に示す。
【0046】
図1に示す通り、いずれの植物由来成分も抗プラスミン活性が認められ、濃度依存性も確認できた。