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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098090
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】SiCエピタキシャル基板
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240711BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B25/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082679
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2022016461の分割
【原出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】近藤 禎彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 潤也
(57)【要約】
【課題】平坦性に優れたSiCエピタキシャル基板を得る新規な基板製造方法および平坦性に優れたSiCエピタキシャル基板を提供する。
【解決手段】炭化珪素基板2の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させたエピタキシャル膜3を有するSiCエピタキシャル基板1であって、SiCエピタキシャル基板1は、エピタキシャル膜3からなる主面1aと、その反対面である主面1bとを有し、主面1bにおいて、10mm角のサイトを基準にしたSBIRの最大値が0.1μm以上1.5μm以下の条件を満たすSiCエピタキシャル基板1。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させたエピタキシャル膜を有するSiCエピタキシャル基板であって、
前記SiCエピタキシャル基板は、前記エピタキシャル膜からなる第1主面と、その反対面である第2主面とを有し、直径が150mm以上であり、
前記第2主面において、10mm角のサイトを基準にしたSBIRの最大値が0.1μm以上1.5μm以下であり、かつ、前記第1主面において、10mm角のサイトを基準にしたSFQRの最大値が0.1μm以上1.5μm以下であり、
前記10mm角のサイトを基準にしたSBIRの最大値は、直径が150mm以上の前記第2主面を区分けした、複数の10mm角のサイトから求められており、
前記10mm角のサイトを基準にしたSFQRの最大値は、直径が150mm以上の前記第1主面を区分けした、複数の10mm角のサイトから求められている、SiCエピタキシャル基板。
【請求項2】
請求項1に記載のSiCエピタキシャル基板において、
前記SBIRは、0.5μm以下となるサイト比率が65%以上である、SiCエピタキシャル基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載のSiCエピタキシャル基板において、
前記SFQRは、0.3μm以下となるサイト比率が85%以上である、SiCエピタキシャル基板。
【請求項4】
請求項1に記載のSiCエピタキシャル基板において、
前記SBIRは、0.5μm以下となるサイト比率が99%以上である、SiCエピタキシャル基板。
【請求項5】
請求項1に記載のSiCエピタキシャル基板において、
前記SFQRは、0.5μm以下となるサイト比率が98%以上である、SiCエピタキシャル基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のSiCエピタキシャル基板において、
前記SiCエピタキシャル基板は、直径が200mm以上である、SiCエピタキシャル基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素基板の表面にエピタキシャル膜を有するSiCエピタキシャル基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以下、「SiC」と称することもある。)基板の表面に、炭化珪素からなるエピタキシャル膜を形成したSiCエピタキシャル基板は、気相成長方法に行うのが一般的である。ところで、このSiCを気相成長させる際に、エピタキシャル膜の形成面とは反対面(裏面)等にも付着し、SiCが突起状に成長してしまうことが知られている。
【0003】
このように、基板の裏面にSiCが成長してしまうと、基板面が変化ししてしまったり、三次元的に成長した突起により凹凸が生じてしまったり、いずれの場合も、想定していた基板形状から変化してしまうため、その基板の平坦性が悪化してしまう。そのため、これら基板を用いて半導体素子を作製すると、半導体素子の特性に悪影響を及ぼす原因ともなる。
【0004】
このような場合、予定していないエピタキシャル成長によって形成されたSiCを、基板の裏面を研磨する等により、除去操作を行う必要があった。このような除去操作を行う場合、基板の表面を保護する保護膜を形成し、除去操作を行った後、その保護膜を除去するというように、SiC基板の製造プロセスにおける工程が煩雑になってしまう。
【0005】
そこで、エピタキシャル成長の前に、裏面に保護膜を形成し、保護膜上に突起を形成させるようにして、基板の裏面に形成されるSiCの突起等を容易に除去可能としたSiC基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-160750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エピタキシャル成長によるエピタキシャル膜を形成する際には、上記の他に、平坦性を損なう場合がある。
【0008】
例えば、SiC基板のエピタキシャル膜は、SiC基板の中央部に比べ外周部において原料ガスの揺らぎが発生するため、エピタキシャル成長の速度が変化し、形成されるエピタキシャル膜の厚みにバラツキが生じる場合がある。
【0009】
また、使用するSiC基板のもともとの平坦性にバラツキがあり、例えば、中央部と外周部で厚みがやや異なり、全体的にテーパーになっていると、エピタキシャル膜はもともとの基板の平坦性を引き継いで、形成されるSiCエピタキシャル基板の平坦性も担保できない場合がある。
【0010】
このように、SiCエピタキシャル基板の平坦性が十分に確保されないと、その後に行われるフォトリソグラフィー工程において、問題が生じてしまう。すなわち、SiCエピタキシャル基板の裏面を真空チャックに固定し、エピタキシャル膜を有する表面にマスクパターンを形成するが、このとき、SiCエピタキシャル基板の平坦性が悪化していると、マスクパターンの位置が所望の位置からズレてしまい、得られる半導体チップの歩留まりが低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明者らは、上記問題を解決し、平坦性に優れたSiCエピタキシャル基板を得る新規な基板製造方法および平坦性に優れたSiCエピタキシャル基板を提供するために、鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板は、炭化珪素基板の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させたエピタキシャル膜を有するSiCエピタキシャル基板であって、前記SiCエピタキシャル基板は、前記エピタキシャル膜からなる第1主面と、その反対面である第2主面とを有し、前記第2主面において、10mm角のサイトを基準にしたSBIRの最大値が0.1μm以上1.5μm以下の条件を満たす。
【0013】
一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法は、(a)板状の炭化珪素基板を準備する工程と、(b)前記炭化珪素基板の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させて、エピタキシャル膜からなる第1主面を形成する工程と、(c)前記エピタキシャル膜の表面に、保護膜を形成する工程と、(d)前記炭化珪素基板の前記第1主面の反対面を、前記第1主面の形状を基準として研削または研磨加工をして、第2主面を形成する工程と、(e)前記保護膜を除去する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
一実施の形態のSiCエピタキシャル基板およびその製造方法によれば、平坦性の高いSiCエピタキシャル基板を提供することができる。また、この平坦性の高いSiCエピタキシャル基板は、半導体チップの製造工程の1つであるフォトリソグラフィーにおいて、マスクパターンの基板主面に対して垂直方向のずれを抑制でき、半導体チップの製造歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の側面図である。
図2図1のSiCエピタキシャル基板において、平坦性を評価するサイトの区分けの一例を示す図である。
図3】SBIRの測定方法を説明するための図である。
図4】SFQRの測定方法を説明するための図である。
図5】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
図6】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
図7】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
図8】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
図9】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
図10】一実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態であるSiCエピタキシャル基板およびその製造方法について説明する。
【0017】
なお、本実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために、平面図であってもハッチングを付す場合や、断面図であってもハッチングを省略する場合がある。
【0018】
<検討の経緯>
まず、本実施の形態を説明するために、従来技術の課題について補足して説明する。例えば、上記従来の技術で説明した特許文献1においては、上記説明した平坦性の確保以外にも、以下のように実用上、課題となる点が存在する。
【0019】
例えば、この特許文献1に記載のSiCエピタキシャル基板の製造方法では、炭化珪素基板において、エピタキシャル膜の形成前に保護膜を形成し、その後エピタキシャル成長を行う。そして、その後、裏面に付着した物質を保護膜のリフトオフにより除去している。ところが、この方法では保護膜が付いた状態でエピタキシャル成長を行うため、保護膜としてレジスト等の有機物を使用できない。
【0020】
また、この特許文献1においては、エピタキシャル成長後の保護膜をリフトオフするために、異方性エッチング、Wetエッチングを用いるが、この場合付着物が障壁となり保護膜が一部残留するおそれがある。
【0021】
また、保護膜の除去にテープ剥離を用いることも考えられるが、この場合には、テープの密着力が一様でなかったり、剥離する際に作用する力が一様でなかったりするため、やはり保護膜が一部残留するおそれがあり、さらに、テープ残渣などのコンタミが発生するおそれもある。
【0022】
本発明では、上記解決しようとする課題に記載した平坦性の他に、上記したように特許文献1で課題となり得る保護膜について、その形成および除去をより簡便に、かつ、残留等の発生を抑制し得る技術についても検討を行った。以下、この点も含み、本実施の形態の技術的思想について詳細に説明する。
【0023】
<SiCエピタキシャル基板>
本実施の形態のSiCエピタキシャル基板は、例えば、図1に示したように、炭化珪素基板2の表面にエピタキシャル膜3が形成されているSiCエピタキシャル基板1が挙げられる。このSiCエピタキシャル基板1は、平板状の基板であって、エピタキシャル膜3からなる主面1a(第1主面)と、その反対面である主面1b(第2主面)を有する。本明細書において、このエピタキシャル膜3からなる面(主面1a)またはエピタキシャル膜3が形成される炭化珪素基板2の面を「表面」、この表面の反対面を「裏面」という場合もある。
【0024】
炭化珪素基板2は、単結晶の炭化珪素(SiC)から構成される基板である。なお、本実施の形態においては、SiCエピタキシャル基板1としたときの平坦性が後述するように所定の範囲を満たす良好なものとなっている。
【0025】
エピタキシャル膜3は、炭化珪素基板2の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させたエピタキシャル膜である。
【0026】
このSiCエピタキシャル基板1は、その大きさは特に限定されるものではないが、半導体チップの製造にあたって、その効率性等を考慮すると、基板の直径は150mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましい。
【0027】
上記のように、SiCエピタキシャル基板1は、炭化珪素基板2の表面にエピタキシャル膜3が形成されているが、その基板の平坦性が非常に良好なものである点に特徴を有する。
【0028】
SiCエピタキシャル基板1の平坦性については、具体的には、SBIR(Site Back Surface Referenced Ideal Ranges)に着目し、この特性が良好となり得る新たな製造方法を見出し、それによりきわめて平坦性の良好なSiCエピタキシャル基板1を得ることができた。
【0029】
すなわち、本実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板1のSBIRは、SiCエピタキシャル基板1の主面1bにおいて、10mm角のサイトを基準にしたときの最大値が0.1μm以上1.5μm以下の条件を満たすものである。
【0030】
このようにSBIRを所定の範囲のものとしたことにより、本実施の形態のSiCエピタキシャル基板1は、基板としての平坦性が良好で、半導体チップの製造においてチップの製造歩留まりを良好なものとできる。より具体的には、フォトリソグラフィー工程を行う際に、SiCエピタキシャル基板1のエピタキシャル膜3にマスクパターンを形成するが、SiCエピタキシャル基板1の平坦性が良好であるため、形成されるマスクパターンが所望のパターンとなって、基板の主面に対して垂直方向のずれが生じることを抑制できる。したがって、このSiCエピタキシャル基板1を用いて半導体チップを製造する際には、マスクパターンとのずれを非常に小さくできるため、その製造歩留まりを向上させることができる。
【0031】
さらに、このSBIRは、0.5μm以下となるサイト比率が65%以上であることが好ましい。このようなサイト比率の条件を満たすと、SiCエピタキシャル基板1において、平坦性が非常に良好であり、半導体チップの製造歩留まりをより向上できる。
【0032】
なお、上記サイト比率は、SiCエピタキシャル基板1において、図2に示したようにサイトを区分けしたとき、全サイトの数に対するSBIRが0.5μm以下となるサイトの数との比(SBIRが0.5μm以下のサイト数/全サイト数)で算出される比率である。
【0033】
このSBIRの測定にあたっては、まず、図2に示したように、SiCエピタキシャル基板1において、例えば、10mm角の大きさを1つのサイト(評価領域)とし、複数のサイト10を区画して定める。この10mm角のサイトを基準として、以下のようにSBIRを求めることができる。なお、本実施の形態では10mm角のサイトを定めた例を示し、そのサイトを基準として平坦性を評価しているが、このサイトの大きさは任意に変更可能である。
【0034】
次に、図3に示すように、SiCエピタキシャル基板1における測定対象である主面1bの反対面となる主面1aを平坦面に吸着および固定することにより、主面1aを平坦にする。ここで、図3中の矢印10aは、正方形のサイトにおける一辺の長さを模式的に表している。SBIRは、所定の範囲(例えば10mm角の範囲)のサイトにおける、主面1bを基準とするサイト表面上の最高点の高さと最低点の高さの差(図3中、矢印tSBIRで示す高さの差)である。
【0035】
本実施形態においては、SBIRの最大値が1.5μm以下であることが好ましいが、その値が小さいほど合焦精度を向上させることができるため好ましい。本実施の形態によれば、SiCエピタキシャル基板1を、10mm角を単位とする複数のサイトに区分したときに、最大値が上記範囲(0.1μm以上1.5μm以下)であり、かつ、SBIRが0.5μm以下であるサイト比率が65%以上であることが特に好ましい。このような条件を満足させることで、フォトリソグラフィー加工を精度良く行うことができ、得られる半導体チップの製造歩留まりを向上できる。さらに上記サイト比率が高くなるほど好ましく、それにより、フォトリソグラフィー加工を適用した際に、より微細な配線パターンを実現することもできる。平坦性を向上することで、露光の波長が短くてDOF(Depth of Focus)の範囲が小さい、即ち焦点深度の狭い露光装置を使用でき、更に微細な配線パターンを実現できるのでより好ましい。
【0036】
また、SiCエピタキシャル基板1の平坦性については、さらに、SFQR(Site Front side least sQuares focal plane Range)について、この特性も良好なものとし得ることを見出している。
【0037】
すなわち、本実施の形態におけるSiCエピタキシャル基板1のSFQRは、SiCエピタキシャル基板1の主面1aにおいて、10mm角のサイトを基準にしたときの最大値が0.1μm以上1.5μm以下の条件を満たすものである。
【0038】
このようにSFQRを所定の範囲のものとしたことにより、本実施の形態のSiCエピタキシャル基板1は、より基板としての平坦性が良好で、半導体チップの製造においてチップの製造歩留まりを良好なものとできる。より具体体には、フォトリソグラフィー工程を行う際に、SiCエピタキシャル基板1のエピタキシャル膜3にマスクパターンを形成するが、SiCエピタキシャル基板1の平坦性が良好であるため、形成されるマスクパターンが所望のパターンとなって、基板の主面に対して垂直方向のずれが生じることを抑制できる。したがって、このSiCエピタキシャル基板1を用いて半導体チップを製造する際には、マスクパターンとのずれを非常に小さくできるため、その製造歩留まりを向上させることができる。
【0039】
さらに、このSFQRは、0.3μm以下となるサイト比率が85%以上であることが好ましい。このようなサイト比率の条件を満たすと、SiCエピタキシャル基板1において、平坦性が非常に良好であり、半導体チップの製造歩留まりをより向上できる。
【0040】
なお、上記サイト比率は、SiCエピタキシャル基板1において、図2に示したようにサイトを区分けしたとき、全サイトの数に対するSFQRが0.3μm以下となるサイトの数との比(SFQRが0.3μm以下のサイト数/全サイト数)で算出される比率である。
【0041】
このSFQRの測定にあたって、まず、上記SBIRの測定と同様に、図2に示すように、SiCエピタキシャル基板1において、例えば、10mm角の大きさを1つのサイト(評価領域)とし、複数のサイト10を区画して定める。この10mm角のサイトを基準として、以下のようにSFQRを求めることができる。なお、本実施の形態では10mm角のサイトを定め、そのサイトを基準として平坦性を評価しているが、このサイトの大きさは任意に変更可能である。
【0042】
次に、図4に示すように、SiCエピタキシャル基板1における測定対象である主面1aの反対面となる主面1bを平坦面に吸着および固定することにより、主面1bを平坦にする。ここで、図4中の矢印10aは、正方形のサイトにおける一辺の長さを模式的に表している。SFQRは、この状態において、最小二乗法を用いて、所定の範囲(例えば10mm角の範囲)のサイトにおける表面の形状に基づいて基準面11を算出し、この基準面11から測ったサイト表面上の最高点までの距離と、サイト表面上の最低点までの距離との合計(図4中、矢印tSFQRで示す距離)である。
【0043】
本実施形態においては、SFQRの最大値が1.5μm以下であることが好ましいが、その値が小さいほどステッパー(縮小投影露光装置)で露光する際の合焦精度を向上させることができ好ましい。本実施の形態によれば、SiCエピタキシャル基板1を、10mm角を単位とする複数のサイトに区分したときに、最大値が上記範囲(0.1μm以上1.5μm以下)であり、かつ、SFQRが0.3μm以下であるサイト比率が85%以上であることが好ましい。このような条件を満足させることで、フォトリソグラフィー加工を精度よく行うことができ、得られる半導体チップの製造歩留まりを向上できる。さらに上記サイト比率が高くなるほど好ましく、それにより、フォトリソグラフィー加工を適用した際に、より微細な配線パターンを実現することもできる。
【0044】
<SiCエピタキシャル基板の製造方法>
次に、本実施の形態のSiCエピタキシャル基板の製造方法について、上記説明したSiCエピタキシャル基板1を例にして、詳細に説明する。
【0045】
(a)基板の準備工程
まず、板状の炭化珪素基板を準備する((a)工程)。この工程は、図5に示したように、炭化珪素基板21を用意するものである。この図5は、炭化珪素基板21の側面を模式的に示した図である。この炭化珪素基板21は、SiCエピタキシャル基板1を構成する炭化珪素基板2の材料となるものであり、平板状の炭化珪素基板である。
【0046】
この炭化珪素基板21は、上記のように平板状であり、主面21aと主面21bとを有する。このとき、主面21aを、炭化珪素をエピタキシャル成長させる面、主面21bがその反対面(研磨または研削により加工される面)とする。
【0047】
ここで用意する炭化珪素基板21は、オフ角θを有するオフ基板であることが好ましい。具体的には、主面21b、または、主面21bの法線21nが、[000-1]方向から、[1120]方向に角度がθ傾いていることが好ましい。このオフ角θは、0.5°以上8°以下であることが好ましく、0.5°以上5°以下であることがより好ましい。
【0048】
上記炭化珪素基板21を用意するにあたっては、まず、炭化ケイ素単結晶のインゴットよりワイヤーソーにより板状に切り出す。そして、ワイヤーソーの切断面はうねりや凹凸が発生しているため、ダイヤモンド研削砥石やダイヤモンドスラリーなどを用いて凹凸部分を選択的に除去して平坦化する。
【0049】
平坦化された炭化珪素基板の主面21aは、CMP(化学機械研磨)が施されていることが好ましい。具体的には、第1主面の表面粗さRaが1nm以下になるまで、CMPによって研磨されていることが好ましい。より好ましくは主面21aの表面粗さRaは0.2nm以下である。
【0050】
表面粗さRaは、例えば、白色干渉顕微鏡によって測定することができる。例えば、主面21aを100μm長で3か所測定し、平均を求めることによって得られた値である。表面粗さRaは理想的には0nmでもあり得るが、現実的に表面粗さRaが0nmとなることはない。このため、表面粗さRaの好ましい範囲の下限値は0よりも大きい。なお、本明細書における表面粗さRaは、JIS B 0601-2001に規定される表面粗さRaである。
【0051】
なお、このとき用意する炭化珪素基板21は、主面21aはエピタキシャル成長を行うために、その表面粗さRaを0.2nm以下としておくことが好ましい。このように平滑な面としておくことで、後述するエピタキシャル成長により形成されるエピタキシャル膜もその平滑性を引き継いだ好ましい面を有する膜とできる。
【0052】
一方、主面21bは、後述するエピタキシャル膜を形成する工程において、付着物が形成されたり、荒れが生じたりすることがあり、また、その後、後述する研磨または研削する工程において、その表層は除去され、新たに平滑な面が形成される面である。そのため、上記(a)工程で用意する炭化珪素基板21において、この主面21bは、平滑性を向上させるような加工を事前に行う必要がない。すなわち、この主面21bは、例えば、その表面粗さRaが200nm以上となるような粗い面としておくことができる。
【0053】
このように、炭化珪素基板21においては、一方を平滑な面、一方を粗く平滑でない面として準備すればよく、両面を平滑な面の基板とする必要がないため、その点で製造コストを抑制できる。
【0054】
(b)エピタキシャル膜の成長工程
次に、(a)工程で準備した炭化珪素基板の表面に、炭化珪素をエピタキシャル成長させて、エピタキシャル膜が形成された第1主面を形成する((b)工程)。この工程は、用意した炭化珪素基板21の主面21aに、エピタキシャル膜3を形成する工程である。
【0055】
このエピタキシャル膜3の形成は、次のような手法を挙げることができる。例えば、炭化珪素基板21を、SiCでコートされたプレート上に載置し、これをSiCでコートされたサセプタ内に設置して、プレートおよびサセプタを誘導加熱等により加熱することで、炭化珪素基板21の温度を炭化珪素がエピタキシャル成長できる温度、例えば、1500℃以上1700℃以下、にまで昇温する。
【0056】
この加熱状態を維持しながら、減圧下、キャリアガスとして水素、および原料ガスとしてモノシラン、プロパン等、ドーパントガスとして窒素等の混合ガスを流し、炭化珪素基板21の表面に炭化珪素をエピタキシャル成長させる。
【0057】
これにより、炭化珪素基板21の主面21a上に、エピタキシャル膜3を形成でき、図6に示したように、炭化珪素基板21の主面21a全面に、エピタキシャル膜3が堆積した基板が得られる。このようにして形成されるエピタキシャル膜3は、その表面が、最終的に得られるSiCエピタキシャル基板1の主面1aとなる。
【0058】
このとき得られるエピタキシャル膜3の厚さは、半導体デバイスに求められる性能に応じて任意に設定することができる。エピタキシャル膜3の厚さとしては、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。
【0059】
なお、このとき、炭化珪素基板21の主面21a以外の面に、SiCのエピタキシャル成長により付着物DPが形成される場合がある。また、炭化珪素基板21に荒れRが形成される場合がある。本実施の形態においては、このような付着物DPや荒れRが形成されても最終的に得られるSiCエピタキシャル基板に影響はなく、その理由については後述する(d)研削または研磨加工工程において説明する。
【0060】
(c)保護膜の形成工程
次いで、(b)工程で形成したエピタキシャル膜の表面に、保護膜を形成する((c)工程)。この工程では、上記(b)工程により、炭化珪素基板21の主面21aに形成されたエピタキシャル膜3の表面に、保護膜を形成する。この(c)工程により、図7で示したように、エピタキシャル膜3の上に保護膜22が形成される。
【0061】
本実施の形態においては、エピタキシャル膜3を形成した後に、保護膜22を形成するものであり、上記特許文献1に記載したように、保護膜が高温となる条件に晒されることがなく、高温耐性が必要なく、公知の保護膜を特に限定せずに使用可能であり、幅広い保護膜を用いることができる。
【0062】
ここで形成する保護膜22は、液状の材料を、エピタキシャル膜3上に塗布して、乾燥することで、一定の膜厚を有する保護膜を形成してもよいし、予め一定の膜厚として保護膜を形成しておき、これをエピタキシャル膜3上に貼り合わせてもよい。
【0063】
液状の材料を用いる場合には、公知の薄膜形成の技術を適用することでき、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング等の手法が挙げられ、中でも均一な膜厚の保護膜を形成しやすいことからスピンコーティングが好ましい。このとき用いる液状の材料は、その粘度が100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましい。
【0064】
なお、本実施の形態では、特に基板への負荷を減らし、平坦性を良好に保持できる材料を用いることが好ましい。このような保護膜22の材料としては、レジスト、液体ワックス等が挙げられる。これら材料によれば、保護膜22の形成が容易であり、その除去も簡易な操作で行うことができ好ましい。
【0065】
ここで使用できるレジストは、エピタキシャル膜3を保護できるものであれば特に限定されるものではなく、公知のレジストを使用でき、例えば、OFPR-800,500,8600,8600 LB、TSMR-8900,V90(以上、東京応化工業株式会社製、商品名)等のポジ型レジストが挙げられる。このポジ型レジストには、例えば、乳酸エチル、酢酸ブチル等の成分が含まれる。
【0066】
ここで使用できる液体ワックスは、エピタキシャル膜3を保護できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の液体ワックスを使用でき、例えば、スカイリキッド LA-3011H,4011H,5011H,5511H(以上、日化精工株式会社製、商品名)等が挙げられる。この液体ワックスには、例えば、ロジン、イソプロピルアルコール(IPA)等の成分が含まれる。
【0067】
上記のようなレジストや液体ワックスを使用することで、特許文献1に記載のように異方性エッチングやWetエッチングをすることなく、簡便な操作により保護膜を除去でき、また、保護膜の残留を抑制することもできる。
【0068】
本実施形態では、平坦性を得るために液状の材料を用いる。仮に、フィルムを貼り付けて保護膜にすると、フィルムは厚いので平坦性がばらつく虞がある。液状の材料を例えばスピンコート等で形成して保護膜とすることにより、面内の膜厚分布を例えば20%以下に抑えることにより所望の平坦性を得ることができる。
【0069】
(d)研削または研磨加工工程
さらに、保護膜を形成した後、炭化珪素基板21の主面21aの反対面21bを、エピタキシャル膜3の表面(主面1a)の形状を基準として研削または研磨加工をして、主面1bを形成する((d)工程)。
【0070】
この加工工程について、以下、研磨する場合を例に説明する。この研磨にあたって、まずは、炭化珪素基板21、エピタキシャル膜3および保護膜22を有する基板に対し、保護膜22側の面を吸着や接着等により固定する。図8に示したように、例えば、固定に用いる真空チャック23は、ベースプレート23aと吸着プレート23bとから構成され、図示しない真空装置と接続されている。この真空装置により、吸着プレート23bの表面には、その吸引作用により、基板を固定できるようになっている。
【0071】
このように研磨加工の対象である炭化珪素基板21を固定した真空チャック23は、図9に示したように、その研磨面を、片面研磨機の研磨定盤24に面して配置し、研磨定盤24と接触させることで、所望の形状に研磨できる。ここで、研磨定盤24は、例えば、鉛直方向に沿って設けられたZ軸を中心に回転している。
【0072】
この工程における研磨は、炭化珪素基板21を研磨可能な方法であれば、公知の方法により行うことができ、特に限定されるものではない。また、片面研磨機は押圧力を調整でき好ましい。
【0073】
この研磨加工においては、研磨定盤24にダイヤモンドスラリーを滴下して主面1aを保持して主面1bを研磨定盤24に押圧すればよい。研磨定盤24には金属定盤やウレタン系パッド,不織布パッドなどが用いられる。
【0074】
このとき、研磨定盤24の回転数は10rpm以上30rpm以下、押圧力は5kPa以上20kPa以下が好ましく、ダイヤモンドスラリーのダイヤ粒径は0.5μm以上5μm以下のものが用いられる。また、研磨量は1μm以上10μm以下、研磨面の表面粗さRaは0.3nm以上1nm以下とするのが好ましい。
【0075】
なお、炭化珪素のような高硬度材料の基板の研磨には、遊離砥粒を用いた加工(ラップ加工)や、固定砥粒を用いた加工(グラインド加工)、ダイヤモンドホイールを用いた加工等を用いることができる。
【0076】
また、上記では研磨を例に説明したが、研削盤を用い、加工を行うこともできる。研削盤を用いる場合にも、同様に、保護膜22が成形された主面1a側を保持して主面1bの研削を行えばよい。保持方法は上記と同様であり、主面1aを保持して主面1bを研削砥石に接触させながら一定量の切込みを与えて研削を行うことができる。
【0077】
研削砥石にはダイヤモンド砥粒が含有され、その粒度は#2000以上#8000以下が好ましい。研削砥石は、例えば、ビトリファイドボンド砥石、レジンボンド砥石が用いられる。
【0078】
砥石の回転数は、2000rpm以上5000rpm以下、切込みは0.2μm/min以上2μm/min以下が好ましい。研削砥石の冷却には、純水または添加剤を含む水を用い、研削量は1μm以上10μm以下、研磨面の表面粗さRaは0.3nm以上1nm以下とすればよい。
【0079】
また、このような研削、研磨加工後は、研磨ダメージを除去するために、必要に応じてCMP(ポリッシング)を行うこともできる。また、さらに平滑な表面を要求される場合においても、CMP(ポリッシング)を実施してもよい。
【0080】
なお、この研磨加工は、主面1aの形状を基準として行う。このとき、主面1aの形状に対応する面として加工し、主面1bを得ることが好ましい。このように対応した面とすると、SiCエピタキシャル基板1の厚さがほぼ同一の厚みとなり、その形状が表面および裏面で対応する位置においては同様の傾斜を有することとなるため、平坦性が非常に良好な基板が得られる。
【0081】
本実施形態では、SiCエピタキシャル基板について、両面加工ではなく、片面加工を行っている。両面加工はエピタキシャル膜の膜面も研磨されるためにエピタキシャル膜の膜厚を制御することが難しいが、片面加工はエピタキシャル膜の膜厚を制御できるという点で優れている。
【0082】
このようにして得られるSiCエピタキシャル基板1は、上記本実施の形態で説明したSiCエピタキシャル基板の特性、例えば、SBIRおよびSFQR、を満たすことができる。
【0083】
また、本発明のSiCエピタキシャル基板において、エピタキシャル膜は、基底面転位密度(BPD密度)が0.01cm-2以下であるのがよく、基底面転位密度が0.001cm-2以下であるのが更によく、基底面転位密度がゼロであるのが特に好ましい。上記のSBIRおよびSFQRを満たしてサイト比率が高いと、エピタキシャル膜に形成する素子が不良となることが抑制されるので、その素子について基底面転位密度の低いエピタキシャル膜を備えるSiCエピタキシャル基板の作製に要した工数が無駄になることが抑制される。また、エピタキシャル膜はバッファ層およびドリフト層を備えてもよい。前記バッファ層は2層以上で構成することができ(例えば低濃度層とホールバリア層を備える)、ホールバリア層として不純物濃度が例えば5×1018cm-3以上1×1019cm-3以下であり且つ基底面転位密度が0cm-2以上0.01cm-2以下である層を備えるのがよい。
【0084】
研磨加工が終了したら、真空チャック23から取り外して、図10に示したように、主面1bが形成された、保護膜22付きのSiCエピタキシャル基板1を得る。
【0085】
(e)保護膜の除去工程
そして、(d)工程の後、図10に示した、保護膜22付きのSiCエピタキシャル基板1から保護膜22を除去する((e)工程)。この(e)工程を行うことで、SiCエピタキシャル基板1が得られる。保護膜の除去は、使用した保護膜の材料に応じて、その除去に適した方法を行うことで達成できる。
【0086】
レジストを保護膜として使用した場合、使用したレジストを剥離可能な溶剤や剥離液を用いればよく、例えば、アセトン、N-メチル-2-ピロリンドン(NMP)等の有機溶剤、剥離液-104,105,106,502A,SST-A47、クリーンストリップHP、クリーンストリップHP-2(以上、東京応化工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0087】
液体ワックスを保護膜として使用した場合、スクレーパーによる除去、アルカリ洗浄による除去等が挙げられる。洗浄剤としては、例えば、デベール、キララクリーン(以上、日化精工株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0088】
上記のような洗浄剤や剥離液を、保護膜除去槽に収容し、その中に(d)工程が完了した炭化珪素基板を配置する。洗浄剤や剥離液の温度は特に指定なく、常温(20℃付近)以上60℃以下までが好適に使用される。
【0089】
剥離時間は2分以上10分以下とし、剥離後の基板はリンスされ剥離液の残渣が残らないようにする。リンスされた基板はスピンドライヤーなどで乾燥させる。このようにして、目的とするSiCエピタキシャル基板1が得られる。
【0090】
この保護膜の除去工程においては、保護膜22を効率よく除去するため保護膜除去槽には超音波振動(例えば、45kHz-600W)を付加してもよく、また、保護膜除去槽内に配置した炭化珪素基板を除去槽内で上下に揺動してもよい。
【0091】
保護膜を除去したSiCエピタキシャル基板1は、必要な検査項目について検査を行った後、所定の特性を満たす基板が、半導体チップの製造工程に用いられる。特に、上記の中でも、レジストまたは液体ワックスを保護膜とした場合、その除去を極めて良好に行うことができ、得られるSiCエピタキシャル基板1における基板面上の残留物が0.1個/cm未満と非常に良好なものとできる。
【0092】
このようにして得られたSiCエピタキシャル基板1は、上記説明した平坦性が良好な基板であり、その後の半導体チップの製造歩留まりを有意に向上できる。
【実施例0093】
以下、本実施の形態の単結晶製造装置および単結晶製造方法について、実施例を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明がこの実施例の記載に限定して解釈されるものでないことは言うまでもない。
【0094】
(実施例1)
主面21aが(0001)Si面であり、オフ角θが4°である直径150mmの炭化珪素基板21を用意した。主面21aに、表面粗さRaが0.5nm以下になるまでCMPを施した(主面1bの表面粗さRaは約2nm)。
【0095】
その後、炭化珪素基板の主面21aに炭化珪素をエピタキシャル成長させ、厚さ10μmのエピタキシャル膜3を形成した。成長温度は1600℃に設定し、成長時の成長室内の圧力は30kPaに設定した。原料ガス中のC/Siを1.25または1.4に設定した。キャリアガスには、水素を用い、原料ガスとしてプロパンおよびシランを用いた。また、ドーパント源として窒素を用いた。
【0096】
次に、炭化珪素基板21の表面に形成されたエピタキシャル膜3の表面(主面1a)に保護膜22を成形した。保護膜の成形にはスピンコーター(東京エレクトロン株式会社製、商品名:CLEAN TRACK Mark)を用い、保護膜としてポジ型レジスト(東京応化株式会社製、商品名:OFPR-8600 LB)を使用した。このレジストには、乳酸エチル,酢酸ブチル等を成分として含んでいる。
【0097】
保護膜の成形条件を、基板回転数:1500rpm、回転時間:30sec、塗布量:3.6mL、べーク温度:140度、ベーク時間:120sec、冷却時間:60sec、とし、厚さ約1μmの均一な厚さの膜を形成した。
【0098】
次に、保護膜22が成形された主面1aを保持して主面21bの研磨を行った。保持方法は研磨中に姿勢が変化しないように真空吸着により固定し、片面研磨機(不二越機械株式会社製、商品名:SLM-35)を用い、主面1aを基準として、主面21bを表面粗さRaが0.5nmとなるまで研磨して、主面1bを形成した。
【0099】
主面21bの研磨が完了した後、保護膜22の剥離を行った。保護膜の剥離液NMPを保護膜除去槽に貯め、保護膜除去槽のなかに裏面研磨が完了した炭化珪素基板を浸漬し、配置した。
【0100】
剥離液の温度は60℃とし、5分間浸漬し、保護膜を剥離させた。剥離後の基板をリンス液でリンスし、剥離液の残渣を除去した後、基板をスピンドライヤーで乾燥させ、SiCエピタキシャル基板1を得た。
【0101】
(比較例1)
実施例1とは、主面21aの研磨(裏面研磨)を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作により、SiCエピタキシャル基板を作製した。
【0102】
[平坦性の評価]
上記実施例1および比較例1で得られたSiCエピタキシャル基板をそれぞれ100枚用意し、各基板の平坦性の評価としてSBIRとSFQRを測定した。それぞれ100枚測定したときの最大値、平均値およびSBIRについては0.5μm以下および0.8μm以下となるサイト比率、SFQRについては0.3μm以下および0.5μm以下となるサイト比率について調べた。その結果を、表1にまとめて示した。
【0103】
【表1】
【0104】
(実施例2)
実施例1とは、保護膜として液体ワックスを使用した点以外は、同一の操作によりSiCエピタキシャル基板を製造した。
【0105】
ここで用いた液体ワックスは、ロジン、イソプロピルアルコール(IPA)を含む液体ワックス(日化精工株式会社製、商品名:スカイリキッドLA-3011H)を用い、塗工装置(不二越機械株式会社製、商品名:SCMM-7)を用いた。
【0106】
保護膜の成形条件を、基板回転数:2500rpm、回転時間:10sec、塗布量:2mL、ベーク温度:95度、ベーク時間:20sec、冷却時間:60sec、とし、厚さ約2μmの均一な厚さの膜を成形した。
【0107】
この実施例2で得られたSiCエピタキシャル基板も、実施例1と同等の平坦性を有していることが確認できた。
【0108】
以上の結果から、本実施の形態であるSiCエピタキシャル基板およびその製造方法によれば、平坦性に非常に優れたSiCエピタキシャル基板を、簡便な操作で、確実に得ることができることがわかった。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0110】
1 SiCエピタキシャル基板
1a,1b 主面
2,21 炭化珪素基板
3 エピタキシャル膜
10 サイト
22 保護膜
23 真空チャック
23a ベースプレート
23b 吸着プレート
24 研磨定盤


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10