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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098263
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20240716BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G03G15/02 103
G03G21/00 314
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001656
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋志
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA02
2H134GA06
2H134HA01
2H134HA04
2H134HA05
2H134HA10
2H134HA17
2H134HD01
2H134KD04
2H134KG01
2H134KH01
2H134KH07
2H134LA01
2H200FA18
2H200FA19
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB12
2H200HA14
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB45
2H200HB46
2H200HB47
2H200JA02
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC12
2H200LB12
2H200LB35
2H200LB37
2H200LB39
2H200MA04
2H200MA11
2H200MA20
2H200MB04
2H200MC02
2H200MC04
2H200MC06
2H200MC11
2H200MC20
2H200PA14
(57)【要約】
【課題】帯電部材に付着するトナーや潤滑剤などの汚れを均一に除去することができ、長期にわたって縦黒スジなどの異常画像を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】静電潜像担持体21と、静電潜像担持体を帯電させるローラ状の帯電部材22aと、帯電部材を清掃する清掃部材22bとを備える画像形成装置である。帯電部材は導電性支持体と、導電性支持体を覆う樹脂層とを有する。樹脂層は硬質樹脂を基材とし、帯電部材の最表面に形成される。清掃部材は、繊維毛を有するブラシローラである。前記繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、ブラシローラの帯電部材への食込量(mm)を前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たす。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体を帯電させるローラ状の帯電部材と、
前記帯電部材を清掃する清掃部材と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電部材は、導電性支持体と、前記導電性支持体を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、硬質樹脂を基材とし、前記帯電部材の最表面に形成され、
前記清掃部材は、繊維毛を有するブラシローラであり、
前記繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、
前記ブラシローラの前記帯電部材への食込量(mm)を前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たす
ことを特徴とする画像形成装置。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
【請求項2】
前記繊維毛の繊度(デニール)は、4デニール以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)は、1.5mm以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記樹脂層の体積固有抵抗値は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記樹脂層の表面は、十点平均粗さRzが5μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記樹脂層のJIS-D硬度は、45度以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記樹脂層は、高分子型イオン導電剤を含み、
前記高分子型イオン導電剤は、ポリエーテルエステルアミド又は4級アンモニウム塩基含有ポリオレフィンを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記硬質樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルもしくはポリスチレンの重合体もしくはこれらの共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記繊維毛は、ナイロン、アクリル及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置においては、画像の高画質、高精細化の需要が高まり、小粒径化、球形化されたトナーが使用されるようになってきている。このようなトナーを用いて静電潜像に緻密にトナーを付着させる。
【0003】
このような小粒径化、球形化されたトナーは、静電潜像担持体(像担持体、感光体などとも称する)をクリーニングする際、クリーニングブレード等のクリーニング部材をすり抜けやすい。そのため、小粒径化、球形化されたトナーを用いる場合、静電潜像担持体のクリーニング不良が生じやすくなる。そして、クリーニングされずに静電潜像担持体上に残留するトナーが、静電潜像担持体を帯電させる帯電部材に付着する場合が生じる。この場合、帯電部材の表面の抵抗が局所的に上昇し、帯電部材の帯電能力が軸方向の一部で低下する。このため、静電潜像担持体に対して均一な帯電が行えなくなり、特に低温低湿環境下で縦黒スジの異常画像が形成されてしまう。
【0004】
上記の問題を解決するため、潤滑剤を静電潜像担持体に塗布することが提案されている。これにより、静電潜像担持体の表面の摩擦係数を下げ、静電潜像担持体に当接する部材との間に作用する摩擦力を軽減させ、クリーニング性の向上を図っている。しかし、例えば、十分に成膜しきれなかった潤滑剤の粉が静電潜像担持体上に存在すると、このような潤滑剤がクリーニング部材をすり抜けてしまい、帯電部材に付着してしまう。これにより、上記と同様に異常画像が形成されてしまう。
【0005】
帯電部材にトナーや潤滑剤が付着すると、帯電不良が生じてしまうため、帯電部材を清掃する技術が提案されている。帯電部材の清掃部材としては、例えばブラシ部材、発泡部材などが提案されている。
【0006】
特許文献1では、ブラッシングにより帯電ローラをクリーニングするクリーニング部材が開示されている。特許文献1では、クリーニング部材に設けられているブラシの単糸繊度とブラシの密度が所定の範囲を満たすことを規定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静電潜像担持体や帯電部材に付着した異物に起因する異常画像は、異物の付着量が局所的に大きく異なった箇所で抵抗ムラが発生することが根本的な原因である。これを抑制するには、異物の付着そのものを抑制するだけでなく、いかに異物を均一に除去するかが重要である。しかし、従来技術では、帯電部材に付着した異物を均一に除去することが十分ではなかった。
【0008】
そこで本発明は、帯電部材に付着するトナーや潤滑剤などの汚れを均一に除去することができ、長期にわたって縦黒スジなどの異常画像を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体を帯電させるローラ状の帯電部材と、
前記帯電部材を清掃する清掃部材と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電部材は、導電性支持体と、前記導電性支持体を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、硬質樹脂を基材とし、前記帯電部材の最表面に形成され、
前記清掃部材は、繊維毛を有するブラシローラであり、
前記繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、
前記ブラシローラの前記帯電部材への食込量(mm)を前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たす
ことを特徴とする。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯電部材に付着するトナーや潤滑剤などの汚れを均一に除去することができ、長期にわたって縦黒スジなどの異常画像を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】作像ユニットの一例を示す概略図である。
図3】作像ユニットの他の例を示す概略図である。
図4】帯電装置の一例を示す概略図である。
図5】帯電ローラの一例を示す断面概略図である。
図6】ブラシローラの一例を示す断面概略図である。
図7】食込量を説明するための概略図(a)及び(b)である。
図8】本発明の一例におけるブラシローラと帯電ローラの接触状態を説明するための概略図である。
図9】本発明に含まれない比較例におけるブラシローラと帯電ローラの接触状態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明の画像形成装置は、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体を帯電させるローラ状の帯電部材と、
前記帯電部材を清掃する清掃部材と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電部材は、導電性支持体と、前記導電性支持体を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、硬質樹脂を基材とし、前記帯電部材の最表面に形成され、
前記清掃部材は、繊維毛を有するブラシローラであり、
前記繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、
前記ブラシローラの前記帯電部材への食込量(mm)を前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たす
ことを特徴とする。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
【0014】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略図である。図2は、図1の作像ユニットを説明するための概略図である。本例の画像形成装置1は、4連のタンデム型画像形成装置である。本発明はこれに限られず、作像ユニットの数等は適宜変更することができる。
【0015】
画像形成装置1は、例えば給紙装置12、作像ユニット10、露光装置11、中間転写ベルト17、定着装置14を有する。図中、作像ユニット10として、作像ユニット10K、10C、10M、10Yが図示されている。これらを区別なく説明する場合、作像ユニット10と称する。
【0016】
作像ユニット10は、図2に示すように、例えば、感光体21、帯電装置22、現像装置23、感光体クリーニング装置24を有する。帯電装置22、現像装置23及び感光体クリーニング装置24は、感光体21の外周に沿って配置されている。
【0017】
感光体21は、例えばドラム状であり、静電潜像担持体の一例である。感光体21を像担持体などと称してもよい。感光体21は、静電潜像を担持する。静電潜像を潜像などと称してもよい。図中のRは、感光体21の回転方向である。
【0018】
帯電装置22は、感光体21の表面を所定の電位に帯電させる。帯電装置22は、帯電ローラ22aとブラシローラ22bを有する。帯電ローラ22aは、帯電部材の一例であり、感光体21に対向配置されており、感光体21に隙間(ギャップ)をもって配置されている。ブラシローラ22bは、帯電ローラ22aを清掃する清掃部材の一例であり、帯電ローラ22aが感光体21と対向する面とは反対側の面において、帯電ローラ22aと当接するように配置されている。ブラシローラ22bは、帯電ローラ22aの汚れを除去する。
【0019】
現像装置23は、感光体21に現像剤(例えばトナー)を供給する。現像装置23は、現像ローラ23a、攪拌ローラ23b、23cを有する。現像ローラ23aは、現像部材の一例であり、感光体21の表面にトナーを付与する。攪拌ローラ23b、23cは、トナーを攪拌するとともに、現像ローラ23aにトナーを供給する。
【0020】
感光体クリーニング装置24は、クリーニングブレード24a、廃トナー搬送部材24bを有する。感光体クリーニング装置24は、クリーニングブレード24aで感光体21上の残留トナー31を掻き取り、掻き取った残留トナー31を廃トナー搬送部材24bで搬送し、回収する。
【0021】
作像ユニット10は、除電装置を有していてもよい。除電装置は、例えば、感光体クリーニング装置24と帯電装置22の間に設けられる。
【0022】
露光装置11は、感光体21を露光させる。露光装置11は、例えば、作像する画像データに基づいて変調されたレーザ光を照射する。照射する位置は、例えば、帯電装置22と現像装置23の間が挙げられる。感光体21における光が照射される箇所は、光書き込み部26などと称される。
【0023】
中間転写ベルト17は、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡されている。駆動ローラ側に中間転写ベルトクリーニング装置17aが設けられている。中間転写ベルトクリーニング装置17aは、中間転写ベルト17のクリーニングを行う。
【0024】
給紙装置12は、例えば複数の給紙トレイ12aを有する。給紙トレイ12aには、記録媒体が収納されている。記録媒体は、媒体、印刷媒体、メディアなどと称されてもよい。記録媒体としては、例えば用紙が用いられる。
【0025】
本例における画像形成の一例を説明する。
作像ユニット10において、帯電装置22は感光体21を帯電させ、露光装置11は感光体21にレーザ光を照射する。これにより、感光体21上に静電潜像が形成される。感光体21の回転に伴って、静電潜像は現像装置23の位置に移動し、現像装置23によってトナーが付与されて現像される。これにより、トナー像(可視像などと称してもよい)が形成される。トナー像は、1次転写装置18によって中間転写ベルト17に1次転写される。
【0026】
このような1次転写は、作像ユニット10K、10C、10M、10Cのそれぞれで実行される。本例では、4色のトナー像が重畳されたフルカラーの画像が中間転写ベルト17上に形成される。本発明はカラー画像に限られない。
【0027】
中間転写ベルト17上に形成されたトナー像は、給紙装置12の給紙トレイ12aのいずれかから給紙された用紙に2次転写装置13で一括転写される。このとき用紙は、レジストローラ12bによって中間転写ベルト17上の画像とタイミングを合わせて垂直搬送路12c上に送り込まれる。
【0028】
用紙に転写されたフルカラーの画像は、定着装置14によって加熱及び加圧により用紙上に定着され、排紙装置15から排紙トレイ16上に排紙される。
【0029】
トナー像が1次転写された感光体21は、感光体21の表面の残留トナー31が感光体クリーニング装置24によってクリーニングされる。感光体クリーニング装置24は、クリーニングブレード24aで残留トナーを掻き取り、掻き取った残留トナーを廃トナー搬送部材24bで搬送し、回収する。また必要に応じて、感光体21の表面が除電装置で除電される。
【0030】
このようにして記録媒体に画像が形成される。なお、画像形成は、印刷、印字などと称してもよい。
【0031】
図3は、作像ユニット10の他の例を示す概略図である。本例の作像ユニット10は、潤滑剤塗布装置27を有している。潤滑剤塗布装置27を有することにより、感光体21のクリーニング性能の向上及び転写性の向上を図ることができる。
【0032】
潤滑剤塗布装置27は、潤滑剤塗布の安定化のために、感光体21の回転方向Rに対して、感光体クリーニング装置24の下流側に設けられている。潤滑剤塗布装置27を感光体クリーニング装置24よりも下流側に配置することにより、転写残トナーを除去した後に、感光体21の表面に潤滑剤を塗布することができ、潤滑剤の塗布が安定化する。潤滑剤としては、特に制限されるものではなく、例えばステアリン酸亜鉛などを用いることができる。
【0033】
潤滑剤塗布装置27は、例えば、潤滑剤塗布ブラシ27bを回転させて、潤滑剤27aを感光体21の表面に供給する。図中、潤滑剤塗布装置27によって供給された感光体21上の潤滑剤を符号33で示している。感光体21に供給された潤滑剤33は、ならしブレード27dによって厚み、塗布領域などが調整される。ならしブレード27dは、保持部材27eによって保持されている。ならしブレード27dを通過した潤滑剤は、図中、符号34で示している。
【0034】
潤滑剤塗布装置27は、ばね27cを有していてもよい。ばね27cは、潤滑剤27aに対して付勢力を付与し、潤滑剤27aを潤滑剤塗布ブラシ27bの方向へ押し付ける。
【0035】
図2図3に示すように、本実施形態の画像形成装置は、ブラシローラ22bにより帯電ローラ22aを清掃(クリーニングなどとも称する)している。例えば図2に示すように、感光体クリーニング装置24によって除去しきれなかった残留トナー32が帯電ローラ22aに付着してしまう場合があり、ブラシローラ22bは、帯電ローラ22aに付着した残留トナー32を除去する。また図3に示すように、潤滑剤塗布装置27によって塗布された潤滑剤34が帯電ローラ22aに付着してしまう場合があり、ブラシローラ22bは、帯電ローラ22aに付着した潤滑剤34を除去する。
【0036】
図4は、本例における帯電装置22の斜視概略図である。図中、ブラシローラ22bが有する繊維毛(ブラシ繊維などとも称する)は、図示を省略している。
【0037】
本例における帯電装置22は、付勢部材である加圧スプリング19を有している。これにより、帯電ローラ22aの両端部を感光体21側に付勢する。帯電ローラ22aを感光体21に接触させて設けてもよいが、本実施形態において、帯電ローラ22aは、感光体21に対して微小な間隙をもって配設される。
【0038】
この微小な間隙を設ける方法としては、適宜選択することができる。例えば、帯電ローラ22aの両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付ける方法が挙げられる。スペーサ部材の表面を感光体21表面に当接させることで、帯電ローラ22aと感光体21との間に隙間が形成される。
【0039】
図5は、本実施形態における帯電ローラ22aの断面概略図である。帯電ローラ22aは、芯金221と、抵抗調整層222とを有している。芯金221は、導電性支持体の一例であり、例えば円柱状を呈する。抵抗調整層222は、導電性支持体を覆う樹脂層の一例であり、芯金221を覆うように形成されている。
【0040】
抵抗調整層222は、芯金221の外周面上に、例えば一様の厚さで形成される。抵抗調整層222は、例えば押出成形、射出成形等により樹脂組成物を芯金221の周面に設けることで形成される。抵抗調整層222(樹脂層)は、硬質樹脂を基材とし、帯電ローラ22aの最表面に形成されている。そのため、帯電ローラ22aがブラシローラ22bによって清掃される際、抵抗調整層222は、ブラシローラ22bの繊維毛と接触する。
【0041】
抵抗調整層222が硬質樹脂を基材とすることにより、抵抗調整層222が経時で変形しにくくなり、感光体21と帯電ローラ22aとの間の距離を所望の範囲で維持しやすくなる。また、後述するように、所定のブラシローラ22bとしたときに、均一な清掃を行えるようになる。
【0042】
抵抗調整層222が硬質樹脂を基材とすることについては、抵抗調整層222が硬質樹脂からなると表現してもよい。抵抗調整層222が硬質樹脂からなると表現した場合、抵抗調整層222に導電剤等を用いることを排除するものではない。また、硬質樹脂は基材成分として用いられており、導電剤を用いる場合には、樹脂成分の中に導電剤が添加されている。
【0043】
抵抗調整層222の硬度としては、JIS-D硬度が45度以上であることが好ましい。この場合、抵抗調整層222が経時で変形することを抑制でき、感光体21と帯電ローラ22aとの間の距離が変化することを抑制できる。抵抗調整層222のJIS-D硬度の測定は、JIS K7215(D硬度)に基づいてデュロメータを用いて測定する。
【0044】
硬質樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。抵抗調整層222に用いられる熱可塑性樹脂としては、帯電ローラ22aを成形した後のJIS-D硬度が45度以上となるものを用いることが好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)の重合体又はこれらの共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)が挙げられる。これらを用いる場合、成形加工が容易であり好ましい。
【0046】
抵抗調整層222の体積固有抵抗値は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。抵抗調整層222の体積固有抵抗値が10Ω・cm以上であることにより、感光体21全体へのリークが生じることを抑制することができる。抵抗調整層222の体積固有抵抗値が10Ω・cm以下であることにより、帯電量が不足することを防止することができ、感光体21がムラのない画像を得るために十分な帯電電位を得ることができる。
【0047】
帯電性能の観点から、抵抗調整層222は、高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物により形成されることが好ましい。高分子型イオン導電剤としては、単体の体積固有抵抗値が10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましく、樹脂の抵抗を下げやすいものが好ましく用いられる。高分子型イオン導電剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する化合物が挙げられる。
【0048】
高分子型イオン導電剤としては、上記の他にも、4級アンモニウム塩基含有高分子化合物を用いることもできる。4級アンモニウム塩基含有高分子化合物としては、例えば、4級アンモニウム塩基含有ポリオレフィン等が挙げられる。
【0049】
高分子型イオン導電剤の含有量としては、適宜選択することができ、高分子型イオン導電剤の種類に応じて変更することができる。
高分子型イオン導電剤がポリエーテルエステルアミド成分を含む場合、高分子型イオン導電剤は、硬質樹脂100重量部に対して30重量部以上70重量部以下含まれることが好ましい。この場合、抵抗調整層222の体積固有抵抗値を上記の所望の値にしやすくなる。
高分子型イオン導電剤が4級アンモニウム塩基含有高分子化合物、例えば4級アンモニウム塩基含有ポリオレフィンを含む場合、高分子型イオン導電剤は、硬質樹脂100重量部に対して10重量部以上40重量部以下含まれることが好ましい。この場合、抵抗調整層222の体積固有抵抗値を上記の所望の値にしやすくなる。
【0050】
高分子型イオン導電剤の熱可塑性樹脂への分散は、例えば二軸混練機、ニーダー等の手段を用いることにより容易に行うことができる。イオン導電性の材料はマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散するので、抵抗調整層222には導電性顔料が分散する抵抗調整層に見られるような導電性物質の分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、イオン導電性の材料が高分子化合物であるため、マトリックスポリマー中に均一に分散して固定され、ブリードアウトが生じにくくなっている。
【0051】
帯電ローラ22aは、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。その電圧は、直流(DC)電圧のみでもよいが、DC電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧であることが好ましい。AC電圧を印加することにより、感光体21の表面をより均一に帯電することができる。
【0052】
次に、本実施形態におけるブラシローラ22bについて詳細に説明する。
まず従来の問題点について説明する。
従来技術の欄でも説明したように、小粒径化、球形化されたトナーは、静電潜像担持体をクリーニングする際、クリーニングブレード等のクリーニング部材をすり抜けやすい。そのため、小粒径化、球形化されたトナーを用いる場合、静電潜像担持体のクリーニング不良が生じやすくなる。これに対して、潤滑剤を静電潜像担持体に塗布した場合であっても、潤滑剤がクリーニング部材をすり抜けてしまう場合があり、潤滑剤が帯電部材に付着してしまう場合がある。
【0053】
静電潜像担持体や帯電部材に付着した異物に起因する異常画像は、異物の付着量が局所的に大きく異なった箇所で抵抗ムラが発生することが根本的な原因である。これを抑制するには、異物の付着そのものを抑制するだけでなく、いかに異物を均一に除去するかが重要である。
【0054】
特許文献1では、帯電ローラをクリーニングする技術が提案されているが、帯電ローラに付着した異物を均一に除去することが十分ではなかった。従来のクリーニング部材では、例えばブラシ繊維が太すぎたり、密度が高すぎたりすると、ある部分の毛が周囲よりも早くへたったり、異物が付着したりした場合に、その部分にだけ汚れが蓄積しやすい状態になってしまう。これは、クリーニング部材において、部材の回転軸の方向で同じ毛の部分が被清掃部材の同じ箇所に当たり続けることに起因する。
【0055】
また、ブラシ繊維が細すぎたり密度が低すぎたりすると、除去力自体が小さくなってしまう。この場合、別の駆動手段により帯電ローラ自体を往復運動させる構成や、線速差をつける構成などが必要になり、装置の大型化、複雑化につながってしまう。
【0056】
本実施形態の画像形成装置は、硬質樹脂を含む樹脂層を最表面に有するローラ状の帯電部材に対して、繊維毛を有する清掃部材(ブラシローラ)を用いており、ブラシローラが所定の規定を満たすことを特徴とする。すなわち、本実施形態で用いられるブラシローラにおいて、繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、ブラシローラの帯電部材への食込量(mm)を繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たすことを特徴とする。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
【0057】
上記の規定を満たすことにより、帯電ローラに付着するトナーや潤滑剤の汚れを均一に除去でき、長期にわたって縦黒スジを主とする異常画像が発生しない画像形成装置を提供することができる。また、均一に汚れを除去することを目的として、別の駆動手段を設ける必要がなく、簡便な構成で均一に汚れを除去することができる。例えば、ブラシローラや帯電ローラを往復運動させるための別の駆動手段や、線速差をつけるための別の駆動手段を設ける必要がない。
【0058】
図6図9を参照しつつ上記規定について説明する。
図6は、本例のブラシローラ22bを模式的に説明するための断面概略図である。本例のブラシローラ22bは、軸部材223と繊維毛224を有する。繊維毛は、ブラシ繊維などと称してもよい。本発明は図示される構成に限られず、繊維毛224が軸部材223とは別の部材に備えられ、別の部材が軸部材223に備えられる構成であってもよい。この場合、別の部材を含めて軸部材223とする。軸部材223としては、例えばブラシ芯金を用いることができ、ブラシ芯金に繊維毛224が設けられたブラシローラ22bを用いることができる。
【0059】
上記Xは、ブラシローラの繊維毛の繊度(デニール)と、ブラシローラの繊維毛の密度(kF/inch)の積であり、無単位である。繊維毛の密度をブラシ植毛密度などと称してもよい。
なお、デニールは繊維毛の太さの単位であり、繊維や糸の太さを表す繊度の単位として一般的に用いられるものである。デニールとしては、9000mで重量が1gのものを1デニールとし、数字が大きいほど繊維は太くなる。
また、上記の密度(kF/inch)において、Fはフィラメントを表し、kはキロ(1000)を表しており、「kF」は繊維毛の本数を表している。そのため、「kF/inch」は、1平方インチ中に何千本の繊維毛があるかを示す単位である。
【0060】
図7は、食込量を説明するための概略図である。
図7(a)は、繊維毛224の毛足長さの平均値A(mm)を説明するための概略図であり、ブラシローラ22bが帯電ローラ22aに接触していない状態を示す図である。繊維毛224の毛足長さの平均値Aは、ブラシローラ22bの外径を軸方向に10点以上測定した平均値から、軸部材223の外径を差し引いて求める。測定機器としては公知のローラ外径測定器を用いることができる。
【0061】
図7(b)は、ブラシローラ22bが帯電ローラ22aに接触している状態を示す図であり、ブラシローラ22bが帯電ローラ22aに接触して繊維毛224が撓んだ状態を示す図である。図中のBは、軸部材223と帯電ローラ22aとの距離である。上述したように、帯電ローラ22aの最表面は、抵抗調整層222が形成されているため、図中のBは、軸部材223の最表面と、抵抗調整層222(樹脂層)の最表面との距離であるともいえる。
【0062】
なお、後述の図8図9で説明するように、本実施形態では、ブラシローラが帯電ローラに接触する際、繊維毛はある程度のランダム性をもって帯電ローラに接触する。図7(b)は、食込量を説明するための図であり、繊維毛の接触の仕方については簡略化して説明している。図7(b)を本実施形態に則して図示する場合、図8に示すような接触になる。
【0063】
本実施形態において食込量とは、図中のA-Bを意味し、以下のように表される。
食込量=清掃部材の繊維毛の毛足長さの平均値A(mm)-清掃部材が帯電部材に接触して清掃する際の軸部材と帯電部材との距離B(mm)
本例では、清掃部材はブラシローラ22bであり、帯電部材は帯電ローラ22aである。上記距離Bは、ブラシローラ22bを帯電装置22にどのように配置するかによって定められる値である。付勢部材、例えば加圧スプリング19を調整することによっても上記距離Bの値を調整できる。
【0064】
上記Yは、ブラシローラの帯電部材への食込量(mm)を繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値である。上記Yは、図7を用いると、以下のように表すことができる。
Y=(A-B)/A
なお、Yの単位は特にない。ブラシローラの帯電部材への食込量の単位と、繊維毛の毛足長さの平均値の単位はmmにしているが、両者の単位が同じであればよく、mm以外の単位でYを算出してもよい。
【0065】
本実施形態では、上記X、Yにおいて、上記式(1)及び上記式(2)を満たすことを特徴とする。すなわち、Xは、100<X<600を満たし、Yは、0.2<Y<0.6を満たす。
【0066】
Xが100以下である場合、繊維毛が細かすぎる、あるいは繊維毛が疎でありすぎるため、帯電ローラに付着した異物を除去しにくくなる。Xが600以上である場合、繊維毛が太すぎる、あるいは繊維毛が密でありすぎるため、ブラシローラ22bと帯電ローラ22aとの間の領域(ニップなどとも称する)内での繊維毛の動きが少なくなる。そのため、繊維毛は、ブラシローラが被清掃体に接触していない状態のときの形状とあまり変わらず、ランダムな接触にはならずに、箇所によって汚れ(付着物)の除去性が変わってしまう。このため、帯電ローラ22aに対して均一に汚れを除去することができない。
【0067】
Yが0.2以下である場合、ニップ内での繊維毛の倒れが少ないため、帯電ローラ22aに対して均一に汚れを除去することができない。Yが0.6以上である場合、ニップ内で繊維毛が密になりすぎてしまうため、帯電ローラ22aに対して均一に汚れを除去することができない。
【0068】
また本実施形態では、上記式(1)及び式(2)を満たすブラシローラ22bを用いた場合であっても、帯電ローラが上記の要件、すなわち、硬質樹脂を含む抵抗調整層222(樹脂層)が最表面に形成されていることを満たさない場合、良好に清掃できない。帯電ローラ22aの最表面の層が硬質樹脂を含まず、例えばエラストマーからなる場合には、上記のニップ内での作用が発揮されない。エラストマーの場合は、帯電ローラ22aの表面で繊維毛がトラップされやすく、繊維毛の動きが鈍化する。このため、エラストマーの場合、上記式(1)及び式(2)を満たしていたとしても、均一に汚れを除去することができない理由としては、帯電ローラ22aの表面にランダムに当接しにくくなることによるものと推測している。
【0069】
なお、特許文献1では、帯電ローラの材質として、エラストマーが挙げられており、具体例としてはエピクロルヒドリンゴムが挙げられている。しかし、特許文献1に記載の帯電ローラでは、硬質樹脂が用いられておらず、均一に汚れを除去しにくい。
【0070】
本実施形態のように、上記式(1)を満たすことで、繊維毛の太さが適切であり、繊維毛の密度が適切であるといえ、ニップ内で繊維毛が動きやすくなる。また、上記式(2)を満たすことで、ニップ内での繊維毛の倒れが適切であり、ニップ内で繊維毛の密度が適切であるといえ、繊維毛の毛先の広い範囲で帯電ローラ22aの表面を摺擦できる。そして、このような作用は、硬質樹脂を含む抵抗調整層222(樹脂層)が帯電ローラ22aの最表面に形成されている場合に発揮される。硬質樹脂を含む場合、帯電ローラ22aが硬く滑りやすい表面になり、上記の作用が発揮されやすくなる。
【0071】
図8は、本実施形態で用いるブラシローラ22bが帯電ローラ22aに接触した状態を模式的に説明するための概略図である。
本発明の意図としては、例えば、ブラシローラの繊維毛を帯電ローラとのニップ中で活発に動かすことである。このためには、繊維毛の繊度が大きすぎず、繊維毛の密度がある程度、疎であることが好ましい。また、種類の異なるブラシローラを同じ力で帯電ローラに押し当てた際に、ブラシローラの軸部材と帯電ローラとの距離が狭くなる方のブラシローラが好ましく、かつ、繊維毛の毛足が長く、倒れやすい方のブラシローラが好ましい。
【0072】
このようにすることで、ブラシローラが帯電ローラの表面と接触する際、毎回、繊維毛の状態が変化し、ランダム性をもって繊維毛が帯電ローラに接触する。これにより、ブラシローラは、ランダム性をもって汚れを除去することができ、帯電ローラの同じ箇所に汚れが蓄積されることなく、スジ状の汚れを解消することができる。
【0073】
図9は、本発明に含まれない比較例を模式的に説明するための概略図である。本比較例におけるブラシローラは、繊維毛が太くなっており、繊維毛の密度が大きくなっている。そのため、本比較例は上記式(1)を満たさない場合の例である。この場合、ニップ内での繊維毛の動きが少なくなり、繊維毛は、ブラシローラが被清掃体に接触していない状態のときの形状とあまり変わらず、ランダムな接触にはならない。
【0074】
一般的には、このような構成が汚れの除去に対して有利であると考えられている。しかし、この場合には、繊維毛が動きにくく同じ場所に留まり、同じ繊維毛が同じ箇所を摺擦し続ける。このため、同じ箇所に汚れが蓄積し、スジができやすくなると考えられる。
【0075】
本実施形態において、繊維毛の材質については、特に制限されず、適宜選択することができる。繊維毛の材質としては、例えばナイロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく用いられる。これらの場合、上記式(1)及び式(2)を満たすようにするための加工がしやすい。
【0076】
ブラシローラの繊維毛の繊度(デニール)は、4デニール以下であることが好ましい。この場合、繊維毛が太くなりすぎることがなく、繊維毛がしなりやすくなり、ランダムに倒れやすくなる。このため、帯電ローラの汚れを均一に除去しやすくなる。
【0077】
ブラシローラの繊維毛の毛足長さの平均値(mm)は、1.5mm以上であることが好ましい。この場合、繊維毛の毛足の長さが短くなりすぎることがなく、繊維毛がしなりやすくなり、ランダムに倒れやすくなる。このため、帯電ローラの汚れを均一に除去しやすくなる。
【0078】
繊維毛の毛足長さの平均値の上限値は、特に制限されないが、長すぎると装置の小型化に不利な方向になるため、レイアウトの都合も考慮し、4mm以下であることが好ましい。
【0079】
また、上述したように、抵抗調整層222のJIS-D硬度は、45度以上であることが好ましい。これにより、経時においても、ブラシローラ22bの軸部材223と帯電ローラ22aとの距離B(mm)が変動しにくくなる。このため、経時においても、帯電ローラの汚れを均一に除去しやすくなる。
【0080】
抵抗調整層222の表面、すなわち帯電ローラ22aの表面は、十点平均粗さRzが5μm以下であることが好ましい。この場合、よりブラシローラの繊維毛が帯電ローラ22aの表面の荒れに影響されることなく、ランダムに倒れやすいという利点がある。
【実施例0081】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0082】
(画像形成装置)
図3と略同等の構成の作像ユニット10を有するリコー社製の複写機RICOH IIM C5000において、作像ユニットから帯電装置22を取り出した。帯電ローラ22aを清掃する清掃部材として、表1に示す繊度、密度及び毛足長さのブラシローラを用いた。各ブラシローラを、表1に示す食込量となるように帯電装置22に装着して、上記1~17の帯電装置を準備した。
【0083】
複写機RICOH IIM C5000の帯電ローラは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)を主成分とした硬質樹脂から形成されている。
この帯電ローラでは、芯金に抵抗調整層が形成されている。抵抗調整層は、ABS100重量部に対し、高分子イオン導電剤として4級アンモニウム塩基含有ポリオレフィンを30重量部含む。抵抗調整層の体積固有抵抗値は、5×106Ω・cmであり、抵抗調整層のJIS-D硬度は、55度である。また、帯電ローラの表面、すなわち抵抗調整層(樹脂層)の十点平均粗さRzは、3.0μmである。
【0084】
表1中、ブラシの材質とあるのは、ブラシローラの繊維毛(ブラシ繊維)のことを意味し、PETとあるのは、ポリエチレンテレフタレートを意味する。なお、ブラシローラは槌屋社製のものを使用した。また、表1に示す数値のうち、ブラシ繊度と植毛密度はメーカー提示の値であり、毛足長さ及び食込量は、上記の測定方法により測定した値である。
【0085】
【表1】
【0086】
(実施例1)
上記の条件1のように改造した帯電装置をRICOH IIM C5000の黒ステーションの作像ユニットに装着し、以下のように実験を行った。なお、評価の際には、黒ステーションを単独で使用した。
帯電ローラの汚れについては、作像ユニット中の潤滑剤の消費量が多いほど不利となる。そのため、評価では、作像ユニット10に含まれる潤滑剤塗布装置27のばね27cの加圧力を2倍とし、潤滑剤27aの消費量を増加させた条件とした。このような条件のもと、低温低湿(10℃、15%)環境下で、A4横の黒縦帯チャートを15万枚、連続で形成した。
このとき、5万枚ごとに白紙を通紙して黒縦帯チャートを形成しないようにし、黒縦帯チャートを形成していない白紙上に帯電ローラの汚れに起因する縦黒スジが発生しているかどうかを確認した。また、白紙通紙後の作像ユニットを画像形成装置から取り出し、帯電ローラ上に生じたスジ状の汚れを確認し、下記の評価基準で評価を行った。縦黒スジの程度を5段階でランク分けし、ランク3以上を実使用上許容できるレベルとし、ランク2以下を許容できないレベルとした。
【0087】
[評価基準]
5:画像上、帯電ローラ上ともスジが確認できない
4:画像上にはスジが確認できないが、帯電ローラ上には5本以下のスジが確認できる
3:画像上にはスジが確認できないが、帯電ローラ上には6本以上のスジが確認できる
2:画像上に灰色の薄いスジが確認できる
1:画像上に黒色の濃いスジが確認できる
【0088】
(実施例2~13)
実施例1において、帯電装置を表1の条件2~13に変えた以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0089】
(比較例1~4)
実施例1において、帯電装置を表1の条件14~17に変えた以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0090】
(比較例5)
実施例1において、帯電ローラとしてエピクロルヒドリンゴムを主成分とするゴムローラを用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。なお、比較例5では、帯電ローラの表面性以外が結果に影響しないように電気的特性等を調整した。
【0091】
結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、実施例1~13は、長期にわたって縦黒スジなどの異常画像を抑制することができている。
実施例2と実施例12の比較から、Xの値が同じでもブラシの繊度が4デニール以下である方が帯電ローラの汚れを長期にわたって抑制できる。
実施例1と実施例13の比較から、Yの値が同じでもブラシの毛足長さが1.5mm以上である方が帯電ローラの汚れを長期にわたって抑制できる。
【0094】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体を帯電させるローラ状の帯電部材と、
前記帯電部材を清掃する清掃部材と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電部材は、導電性支持体と、前記導電性支持体を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、硬質樹脂を基材とし、前記帯電部材の最表面に形成され、
前記清掃部材は、繊維毛を有するブラシローラであり、
前記繊維毛の繊度(デニール)と密度(kF/inch)の積をXとしたとき、Xは下記式(1)を満たし、
前記ブラシローラの前記帯電部材への食込量(mm)を前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)で除した値をYとしたとき、Yは下記式(2)を満たす
ことを特徴とする画像形成装置。
100<X<600 式(1)
0.2<Y<0.6 式(2)
<2>前記繊維毛の繊度(デニール)は、4デニール以下である
ことを特徴とする<1>に記載の画像形成装置。
<3>前記繊維毛の毛足長さの平均値(mm)は、1.5mm以上である
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の画像形成装置。
<4>前記樹脂層の体積固有抵抗値は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下である
ことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の画像形成装置。
<5>前記樹脂層の表面は、十点平均粗さRzが5μm以下である
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の画像形成装置。
<6>前記樹脂層のJIS-D硬度は、45度以上である
ことを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の画像形成装置。
<7>前記樹脂層は、高分子型イオン導電剤を含み、
前記高分子型イオン導電剤は、ポリエーテルエステルアミド又は4級アンモニウム塩基含有ポリオレフィンを含む
ことを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成装置。
<8>前記硬質樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルもしくはポリスチレンの重合体もしくはこれらの共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)である
ことを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載の画像形成装置。
<9>前記繊維毛は、ナイロン、アクリル及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる
ことを特徴とする<1>から<8>のいずれかに記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0095】
1 画像形成装置
10 作像ユニット
11 露光装置
12 給紙装置
14 定着装置
17 中間転写ベルト
21 感光体
22 帯電装置
22a 帯電ローラ
221 芯金
222 抵抗調整層
22b ブラシローラ
223 軸部材
224 繊維毛
23 現像装置
24 感光体クリーニング装置
27 潤滑剤塗布装置
31、32 残留トナー
33、34 潤滑剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開2007-155844号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9