IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特開2024-98325半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム
<>
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図1
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図2
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図3
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図4
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図5
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図6
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図7A
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図7B
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図7C
  • 特開-半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム 図7D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098325
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240716BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20240716BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20240716BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
C25D21/12 D
H01L21/288 E
G05B19/4063 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001761
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 滉生
(72)【発明者】
【氏名】藤木 雅之
【テーマコード(参考)】
3C269
4M104
【Fターム(参考)】
3C269BB12
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN23
3C269MN26
3C269MN27
3C269MN28
3C269QB03
3C269QD02
3C269QE01
3C269QE12
3C269QE34
4M104BB04
4M104DD52
4M104DD53
(57)【要約】
【課題】半導体製造装置において、測定データに対して行われる計算処理の具体的な計算条件を確認できるようにする。
【解決手段】半導体製造装置における情報表示方法は、前記半導体製造装置における基板の処理に関連する1または複数の時系列測定データを取得するステップと、前記1または複数の時系列測定データに対して統計処理を行うことによって1または複数の統計値を得るステップと、前記1または複数の統計値のうちの1つの選択に基づいて、前記選択された1つの統計値を得るための統計処理において用いられた統計処理条件を特定するステップと、前記特定された統計処理条件を表示するステップと、を含む。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置における情報表示方法であって、
前記半導体製造装置における基板の処理に関連する1または複数の時系列測定データを取得するステップと、
前記1または複数の時系列測定データに対して統計処理を行うことによって1または複数の統計値を得るステップと、
前記1または複数の統計値のうちの1つの選択に基づいて、前記選択された1つの統計値を得るための統計処理において用いられた統計処理条件を特定するステップと、
前記特定された統計処理条件を表示するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記1または複数の統計値を得る前記ステップは、
前記時系列測定データから前記統計値を算出するための前記統計処理条件が記述された設定ファイルから、前記統計処理条件を読み出すステップと、
前記設定ファイルから読み出された前記統計処理条件を用いて、前記時系列測定データから前記統計値を算出するステップと、を含み、
前記統計処理条件を特定する前記ステップは、
前記設定ファイルから、前記選択された1つの統計値を得るための統計処理に対応する統計処理条件を取得するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択を行うために、前記1または複数の統計値を選択可能に表示するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1または複数の統計値の表示は、前記1または複数の統計値の各々が異常であるかどうかの表示を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定された統計処理条件を表示する前記ステップは、前記特定された統計処理条件と、前記選択された1つの統計値に対応する時系列測定データを、1つの画面上に表示するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表示された統計処理条件に対する修正を受け取るステップと、
前記修正に基づいて前記設定ファイルを更新するステップと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記統計処理条件は、i)前記統計処理を行うための計算式、ii)前記統計処理の対象とする前記時系列測定データのデータ範囲、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記統計処理条件の表示は、前記計算式および前記データ範囲を数学的表現形式またはプログラムコード形式のいずれかで表示することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータのプロセッサによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実施させるように構成されたコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置における情報表示方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、基板の処理中に様々なデータが測定され、基板の処理中または事後的に、それらの測定データをコンピュータ画面に表示することが行われている。また、測定データに対して何らかの計算処理を行うことによって得られたデータ(例えば平均値)を表示することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-150540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、測定データに対してある計算処理が行われる場合、その計算処理の具体的な計算条件を確認したいとの要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[形態1]形態1によれば、半導体製造装置における情報表示方法であって、前記半導体製造装置における基板の処理に関連する1または複数の時系列測定データを取得するステップと、前記1または複数の時系列測定データに対して統計処理を行うことによって1または複数の統計値を得るステップと、前記1または複数の統計値のうちの1つの選択に基づいて、前記選択された1つの統計値を得るための統計処理において用いられた統計処理条件を特定するステップと、前記特定された統計処理条件を表示するステップと、を含む方法が提供される。
【0006】
[形態2]形態2によれば、形態1の方法において、前記1または複数の統計値を得る前記ステップは、前記時系列測定データから前記統計値を算出するための前記統計処理条件が記述された設定ファイルから、前記統計処理条件を読み出すステップと、前記設定ファイルから読み出された前記統計処理条件を用いて、前記時系列測定データから前記統計値を算出するステップと、を含み、前記統計処理条件を特定する前記ステップは、前記設定ファイルから、前記選択された1つの統計値を得るための統計処理に対応する統計処理条件を取得するステップを含む。
【0007】
[形態3]形態3によれば、形態1の方法において、前記選択を行うために、前記1または複数の統計値を選択可能に表示するステップをさらに含む。
【0008】
[形態4]形態4によれば、形態3の方法において、前記1または複数の統計値の表示は、前記1または複数の統計値の各々が異常であるかどうかの表示を含む。
【0009】
[形態5]形態5によれば、形態1の方法において、前記特定された統計処理条件を表示する前記ステップは、前記特定された統計処理条件と、前記選択された1つの統計値に対応する時系列測定データを、1つの画面上に表示するステップを含む。
【0010】
[形態6]形態6によれば、形態2の方法において、前記表示された統計処理条件に対
する修正を受け取るステップと、前記修正に基づいて前記設定ファイルを更新するステップと、をさらに含む。
【0011】
[形態7]形態7によれば、形態1の方法において、前記統計処理条件は、i)前記統計処理を行うための計算式、ii)前記統計処理の対象とする前記時系列測定データのデータ範囲、のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
[形態8]形態8によれば、形態7の方法において、前記統計処理条件の表示は、前記計算式および前記データ範囲を数学的表現形式またはプログラムコード形式のいずれかで表示することを含む。
【0013】
[形態9]形態9によれば、コンピュータのプロセッサによって実行されると、前記コンピュータに、形態1から8のいずれか1の方法を実施させるように構成されたコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るめっき装置の全体配置図である。
図2】めっきモジュールの概略側断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る方法を実施する例示的なシステムの構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る方法を実施するためのシステムの動作を示すフローチャートである。
図5】時系列測定データの一例を示す図である。
図6】統計値の画面表示例である。
図7A】統計処理条件の画面表示の一例である。
図7B】統計処理条件の画面表示の一例である。
図7C】統計処理条件の画面表示の一例である。
図7D】統計処理条件の画面表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置10の全体配置図である。めっき装置10は、半導体製造装置の一例である。以下において、めっき装置10を参照して本発明の実施形態が説明されるが、本発明の一実施形態に係る方法は、めっき装置以外の半導体製造装置(例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置等)にも適用することが可能である。
【0017】
図1に示すように、めっき装置10は、2台のカセットテーブル102と、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ106とを有する。カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行うロード/アンロードステーション120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送ロボット122が配置されている。
【0018】
ロード/アンロードステーション120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレ
ート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われる。
【0019】
めっき装置10は、さらに、ストッカ124と、プリウェットモジュール126と、プリソークモジュール128と、第1リンスモジュール130aと、ブローモジュール132と、第2リンスモジュール130bと、めっきモジュール110と、を有する。ストッカ124では、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェットモジュール126では、基板が純水に浸漬される。プリソークモジュール128では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1リンスモジュール130aでは、プリソーク後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール132では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2リンスモジュール130bでは、めっき後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄される。ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、ブローモジュール132、第2リンスモジュール130b、及びめっきモジュール110は、この順に配置されている。
【0020】
めっきモジュール110は、例えば、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽114を収納して構成されている。図1の例では、めっきモジュール110は、8つのめっき槽114を有している。各めっき槽114は、内部に1つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すように構成される。
【0021】
めっき装置10は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した搬送装置140を有する。この搬送装置140は、第1搬送装置142と、第2搬送装置144を有している。第1搬送装置142は、ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、及びブローモジュール132との間で基板を搬送するように構成される。第2搬送装置144は、第1リンスモジュール130a、第2リンスモジュール130b、ブローモジュール132、及びめっきモジュール110との間で基板を搬送するように構成される。めっき装置10は、第2搬送装置144を備えることなく、第1搬送装置142のみを備えるようにしてもよい。
【0022】
オーバーフロー槽136の両側には、各めっき槽114の内部に位置してめっき槽114内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドルを駆動する、パドル駆動部160及びパドル従動部162が配置されている。
【0023】
このめっき装置10による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、カセットテーブル102に搭載したカセット100から、搬送ロボット122で基板を1つ取出し、アライナ104に基板を搬送する。アライナ104は、オリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。このアライナ104で方向を合わせた基板を搬送ロボット122でロード/アンロードステーション120まで搬送する。
【0024】
ロード/アンロードステーション120においては、ストッカ124内に収容されていた基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持して、ロード/アンロードステーション120まで搬送する。そして、2基の基板ホルダ30をロード/アンロードステーション120の載置プレート152の上に同時に水平に載置する。この状態で、それぞれの基板ホルダ30に搬送ロボット122が基板を搬送し、搬送した基
板を基板ホルダ30で保持する。
【0025】
次に、基板を保持した基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持し、プリウェットモジュール126に収納する。次に、プリウェットモジュール126で処理された基板を保持した基板ホルダ30を、第1搬送装置142でプリソークモジュール128に搬送し、プリソークモジュール128で基板上の酸化膜をエッチングする。続いて、この基板を保持した基板ホルダ30を、第1リンスモジュール130aに搬送し、この第1リンスモジュール130aに収納された純水で基板の表面を水洗する。
【0026】
水洗が終了した基板を保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144により、第1リンスモジュール130aからめっきモジュール110に搬送され、めっき液を満たしためっき槽114に収納される。第2搬送装置144は、上記の手順を順次繰り返し行って、基板を保持した基板ホルダ30を順次めっきモジュール110の各々のめっき槽114に収納する。
【0027】
各々のめっき槽114では、めっき槽114内のアノード(図示せず)と基板との間にめっき電流を供給し、同時にパドル駆動部160及びパドル従動部162によりパドルを基板の表面と平行に往復移動させることで、基板の表面にめっきを行う。
【0028】
めっきが終了した後、めっき後の基板を保持した基板ホルダ30を第2搬送装置144で2基同時に把持し、第2リンスモジュール130bまで搬送し、第2リンスモジュール130bに収容された純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。次に、基板ホルダ30を、第2搬送装置144によってブローモジュール132に搬送し、エアーの吹き付け等によって基板ホルダ30に付着した水滴を除去する。その後、基板ホルダ30を、第1搬送装置142によってロード/アンロードステーション120に搬送する。
【0029】
ロード/アンロードステーション120では、搬送ロボット122によって基板ホルダ30から処理後の基板が取り出され、スピンリンスドライヤ106に搬送される。スピンリンスドライヤ106は、高速回転によってめっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させる。乾燥した基板は、搬送ロボット122によりカセット100に戻される。
【0030】
図2は、上述しためっきモジュール110の概略側断面図である。図示のように、めっきモジュール110は、アノード221を保持するように構成されたアノードホルダ220と、基板Wを保持するように構成された基板ホルダ30と、添加剤を含むめっき液Qを収容するめっき槽114と、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを受けて排出するオーバーフロー槽136と、を有する。めっき槽114とオーバーフロー槽136は、仕切り壁255によって仕切られている。アノードホルダ220と基板ホルダ30は、めっき槽114の内部に収容されている。前述したように、基板Wを保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144(図1参照)によって搬送されて、めっき槽114に収容される。
【0031】
なお、図2にはめっき槽114が1つしか描かれていないが、前述したように、めっきモジュール110は、図2に示されるのと同じ構成のめっき槽114を複数備えるのであってよい。
【0032】
アノード221は、アノードホルダ220に設けられた電気端子223を介して電源270の正端子271に電気的に接続される。基板Wは、基板Wの周縁部に接する電気接点242及び基板ホルダ30に設けられた電気端子243を介して電源270の負端子272に電気的に接続される。電源270は、正端子271に接続されたアノード221と負端子272に接続された基板Wの間にめっき電流を供給するとともに、正端子271と負
端子272の間の印加電圧を計測するように構成される。
【0033】
また、電源270は、電源270の動作を制御するための制御コントローラ260に接続され、制御コントローラ260は、コンピュータ265に接続される。コンピュータ265は、めっき装置10のオペレータのためのユーザインターフェイスを提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してめっき処理に関する各種設定情報を入力することができる。設定情報は、例えば、電源270が出力するめっき電流の設定値を含む。制御コントローラ260は、オペレータから入力されためっき電流の設定値に従って、電源270を動作させる。制御コントローラ260はまた、電源270において計測された端子271、272間の印加電圧の情報に基づくステータス情報を、コンピュータ265に提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してこのステータス情報を受け取ることができる。制御コントローラ260は、めっきモジュール110における電源270以外の各部、またはめっき装置10におけるめっきモジュール110以外の各ユニットの動作を制御し、またこれらの動作に関する各種のステータス情報をコンピュータ265に提供するように構成されてもよい。
【0034】
アノード221を保持したアノードホルダ220と基板Wを保持した基板ホルダ30は、めっき槽114内のめっき液Qに浸漬され、アノード221と基板Wの被めっき面W1が略平行になるように対向して配置される。アノード221と基板Wは、めっき槽114のめっき液Qに浸漬された状態で、電源270からめっき電流を供給される。これにより、めっき液Q中の金属イオンが基板Wの被めっき面W1において還元され、被めっき面W1に膜が形成される。
【0035】
アノードホルダ220は、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのアノードマスク225を有する。アノードマスク225は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ220の前面(基板ホルダ30に対向する側の面)に設けられる。すなわち、アノードマスク225は、アノード221と基板ホルダ30の間に配置される。アノードマスク225は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第1の開口225aを略中央部に有する。開口225aの径は、アノード221の径よりも小さいことが好ましい。アノードマスク225は、開口225aの径を調節可能に構成されてもよい。
【0036】
めっきモジュール110は、さらに、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのレギュレーションプレート230を有する。レギュレーションプレート230は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードマスク225と基板ホルダ30(基板W)との間に配置される。レギュレーションプレート230は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第2の開口230aを有する。開口230aの径は、基板Wの径より小さいことが好ましい。レギュレーションプレート230は、開口230aの径を調節可能に構成されてもよい。
【0037】
レギュレーションプレート230と基板ホルダ30との間には、基板Wの被めっき面W1近傍のめっき液Qを撹拌するためのパドル235が設けられる。パドル235は、略棒状の部材であり、鉛直方向を向くようにめっき槽114内に設けられる。パドル235の一端は、パドル駆動装置236に固定される。パドル駆動装置236の動作は、制御コントローラ260によって制御され、パドル235は、パドル駆動装置236により基板Wの被めっき面W1に沿って水平移動される。これによりめっき液Qが撹拌される。
【0038】
めっき槽114は、槽内部にめっき液Qを供給するためのめっき液供給口256を有する。オーバーフロー槽136は、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを排出するためのめっき液排出口257を有する。めっき液供給口256はめっき槽114の
底部に配置され、めっき液排出口257はオーバーフロー槽136の底部に配置される。
【0039】
めっき液Qがめっき液供給口256からめっき槽114に供給されると、めっき液Qはめっき槽114から溢れ、仕切り壁255を越えてオーバーフロー槽136に流入する。オーバーフロー槽136に流入しためっき液Qはめっき液排出口257から排出され、めっき液循環装置258が有するフィルタ等で不純物が除去される。不純物が除去されためっき液Qは、めっき液循環装置258によりめっき液供給口256を介してめっき槽114に供給される。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態に係る方法を実施する例示的なシステム300の構成図である。システム300は、めっき装置10およびコンピュータ320を備える。めっき装置10は、図1または図2を参照して説明しためっき装置である。めっき装置10とコンピュータ320は、例えば、LAN(ローカルエリアネットワーク)またはインターネット等のネットワーク330を介して相互に通信可能に接続されている。あるいは、コンピュータ320は、めっき装置10の構成の一部としてめっき装置10に組み込まれてもよい。コンピュータ320は、プロセッサ322およびメモリ324を備える。メモリ324には、本発明の一実施形態に係る方法を実現するためのプログラム326が格納される。プロセッサ322は、メモリ324からプログラム326を読み出して実行する。これにより、システム300は、本発明の一実施形態に係る方法を実施することができる。なお、図3には1つのコンピュータ320のみが示されているが、システム300は、複数のコンピュータ320を備えてもよい。そのような構成において、各コンピュータ320のメモリ324には本発明の一実施形態に係る方法の一部に対応するプログラムがそれぞれ格納され、各コンピュータ320のプロセッサ322がそれらのプログラムを個々に実行することにより、複数のコンピュータ320が協働し全体として本発明の一実施形態に係る方法を実施するのであってよい。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態に係る方法を実施するためのシステム300の動作を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおける各ステップの処理は、コンピュータ320のプロセッサ322によって実行される。図4の実施形態に係る方法は、ステップ402において開始する。
【0042】
ステップ402において、プロセッサ322は、めっき装置10における基板の処理に関連する1または複数の時系列測定データを取得する。例えば、プロセッサ322は、めっきモジュール110に併設された制御コントローラ260(図2参照)から、基板に対するめっき処理に関連する時系列測定データを取得する。制御コントローラ260から取得される例示的な時系列測定データは、電源270から出力される電流値または電圧値の測定データ、あるいはパドル駆動装置236によって駆動されるパドル235の撹拌速度の測定データを含む。図5は、時系列測定データの一例として、電源270から出力される電流値の測定データの例を示す。時系列測定データの他の例は、めっき槽114内のめっき液Qの温度や、めっきモジュール110または他のモジュールにおいて測定された任意の物理量の測定データを含む。
【0043】
次に、ステップ404において、プロセッサ322は、各時系列測定データに対して統計処理を行うことにより、1または複数の統計値を算出する。例えば、プロセッサ322は、電源270の出力電流の時系列測定データから、平均電流や累積電流などの統計値を算出する。統計処理は、平均や累積に限らず、任意の統計的な計算処理を含む。統計処理の具体的な計算手順(以下、「統計処理条件」という)は、例えば、所定の設定ファイルに記述しておくことができる。設定ファイルには、各統計値が、どの時系列測定データを用いてどのような計算処理を行うことによって算出されるものであるのかを示す定義(統計処理条件)が記述されている。一例として、電源270の平均電流(すなわち、電源2
70の出力電流についての統計値)は、電源270の出力電流の時系列測定データをある開始時刻からある終了時刻までの指定時間範囲で時間平均した値である、との統計処理条件が、設定ファイルに記述されている。一態様において、コンピュータ320の記憶装置(例えばメモリ324)には、このような設定ファイルがあらかじめ格納されている。プロセッサ322は、設定ファイルから各統計値についての統計処理条件を読み出し、読み出した統計処理条件に従って、各統計値を算出するのであってよい。
【0044】
次に、ステップ406において、プロセッサ322は、ステップ404で算出された各統計値をコンピュータ320の画面に表示させる。図6は、算出された統計値の画面表示例である。この例において、表示画面600は、めっきモジュール110におけるめっき処理の各種統計値として、処理時間601、積算電流量602、平均電流値603、平均電圧値604、平均温度605、平均流量606、平均撹拌速度607を含んでいる。画面上の各統計値は、コンピュータ320のオペレータによる選択入力が可能に表示される。例えば、コンピュータ320のオペレータは、画面上の平均電流値603に対応するエリアでマウスのクリック操作等を行うことによって、画面に表示された複数の統計値の中から1つの統計値(ここでは平均電流値)を選択したことをコンピュータ320に対して指示することができる。
【0045】
なお、表示画面600において、各統計値は、その値が異常であるか否かを識別可能な態様で表示されてもよい。例えば、画面600上のある統計値が所定の基準値(例えば、めっき装置10における基板の様々なプロセス条件を定めたレシピ情報に記された設定値)との比較に基づき異常と判定される場合、その統計値は、ハイライトされて表示されてよい。コンピュータ320のオペレータは、ハイライト表示によって注意を喚起され、そのハイライト表示された統計値を画面600において選択するのであってもよい。
【0046】
次に、ステップ408において、プロセッサ322は、コンピュータ320の画面上で統計値の選択が行われたか否かを判断する。統計値の選択が行われた場合、ステップ410へ進み、プロセッサ322は、当該選択された統計値を算出するのに用いた統計処理条件を特定し、続くステップ412において、当該特定した統計処理条件をコンピュータ320の画面に表示させる。統計処理条件の特定には、上述した設定ファイルが用いられる。プロセッサ322は、複数の統計値のそれぞれについての統計処理条件(すなわち各統計値の計算手順の定義)が記述された設定ファイルから、ステップ408で選択された統計値に対応する統計処理条件を取得することができる。
【0047】
図7A~7Dは、ステップ412における統計処理条件の画面表示の一例である。図7Aは、統計値が、めっきモジュール110の電源270から出力される平均電流値である場合における、統計処理条件の表示例を示す。図7Aに示されるように、統計処理条件の表示画面700は、時系列測定データ表示エリア701と、統計処理条件表示エリア704と、統計値評価エリア710とを含む。時系列測定データ表示エリア701および統計値評価エリア710は省略されてもよい。時系列測定データ表示エリア701は、リスト表示エリア702とグラフ表示エリア703からなる。リスト表示エリア702には、画面700の表示対象である統計値(すなわち、ステップ408で選択された統計値。図7Aの例では電源270の平均電流値)に対応する時系列測定データ(この例では電源270の出力電流の測定データ)が、数値としてリスト形式で表示される。具体的に、リスト表示エリア702の各行は各時刻の測定データに対応しており、列「x」は測定時刻、列「z」は測定値を示している。グラフ表示エリア703は、リスト表示エリア702の数値をグラフで表示する。
【0048】
ステップ410で特定された統計処理条件は、画面700の統計処理条件表示エリア704に表示される。統計処理条件表示エリア704の演算式705は、統計値(図7A
は電源270の平均電流値)を算出するのに用いられた演算式を表し、データ範囲706は、演算式705に基づく統計値の計算において計算対象とされた測定データの範囲を表している。演算式705およびデータ範囲706に現れる変数(T、U、およびC)は、変数名707および属性708に示された対応関係によって、リスト表示エリア702の各属性(x、y、zおよび)と関連付けられている。具体的に、図7Aの例において、リスト表示エリア702の列「y」の値が1であり、かつ、所定値Tminによって示される時刻から5.00秒経過した時点以降に測定された測定データが、演算式705における総和Σの対象となる。所定値Tminは、例えば、出力電流値が所定の設定電流値の90%に最初に到達した時刻として定義されるのであってよい。なお、値709は、リスト表示エリア702のチェックボックスにチェックが付けられた行の数値を示している。
【0049】
このように、演算式705およびデータ範囲706を含む統計処理条件が表示されることにより、コンピュータ320のオペレータは、めっき装置10における基板の処理に際して得られた統計値がどのような計算手順に従って算出されたものであるのかを、容易に把握することができる。例えば、コンピュータ320のオペレータは、図6の画面600において平均電流値603の部分をクリックすることで、めっき電流の測定データから平均電流値を算出するための統計処理条件を、図7Aのような画面700に表示させることができる。
【0050】
なお、統計値評価エリア710には、算出された統計値とレシピ情報の設定値との差分および/または標準偏差711と、現在得られた統計値とめっき装置10の過去の運転時に得られた統計値の履歴との差分および/または標準偏差712が表示される。
【0051】
図7B、7Cは、図7Aと同様の画面表示例である。図7Bは、統計値が、めっきモジュール110におけるパドル235の平均撹拌速度である場合における、統計処理条件の表示例を示す。図7Cは、統計値が、めっきモジュール110の電源270から出力される電圧の積算電圧値である場合における、統計処理条件の表示例を示す。図7A~7Cの3つの表示例では、統計処理条件(演算式705およびデータ範囲706)が、数学的な表現形式で表示されている。しかしながら、統計処理条件を表示する形式はこれに限られない。図7Dの画面表示例のように、統計処理条件(演算式705およびデータ範囲706)は、プログラムコード形式で表示してもよい。
【0052】
次に、ステップ414において、プロセッサ322は、画面700上で統計処理条件の修正が行われたか否かを判断する。統計処理条件の修正が行われた場合、ステップ416へ進み、プロセッサ322は、修正に基づいて、設定ファイルに記述されている統計処理条件を更新する。例えば、コンピュータ320の記憶装置(例えばメモリ324)に格納されている設定ファイルの統計処理条件は、めっき装置10の実際の運転環境や運転状況に照らして適切でないことがあり得る。そのような場合、コンピュータ320のオペレータは、画面700上で統計処理条件を修正するための入力を行うことができ、この入力に従って、設定ファイルに記述されている統計処理条件が適切なものに更新される。これにより、図4のフローチャートが次回実行される際に、ステップ404において、適切な統計処理条件を用いて統計値を算出することができる。
【0053】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 めっき装置
30 基板ホルダ
100 カセット
102 カセットテーブル
104 アライナ
106 スピンリンスドライヤ
110 めっきモジュール
114 めっき槽
120 ロード/アンロードステーション
122 搬送ロボット
124 ストッカ
126 プリウェットモジュール
128 プリソークモジュール
130a 第1リンスモジュール
130b 第2リンスモジュール
132 ブローモジュール
136 オーバーフロー槽
140 搬送装置
142 第1搬送装置
144 第2搬送装置
150 レール
152 載置プレート
160 パドル駆動部
162 パドル従動部
300 システム
320 コンピュータ
322 プロセッサ
324 メモリ
326 プログラム
330 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D