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特開2024-98527R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098527
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240717BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240717BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240717BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K8/34
A61Q19/08
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002058
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 遼太郎
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD43
4B018MD59
4B018ME14
4B117LC13
4B117LG17
4B117LK11
4B117LL09
4B117LP01
4C083AA082
4C083AA112
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC422
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC03
4C083DD31
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】少しでも水に溶けやすいエラスターゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤である。また、これを使用した、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品、皮膚化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のエラスターゼ阻害剤を使用した、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品。
【請求項3】
請求項1に記載のエラスターゼ阻害剤を使用した、皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮は、コラーゲン、エラスチン、線維芽細胞等で構成されているが、コラーゲンやエラスチンの減少、細胞の損傷などにより皮膚の弾力やハリが失われていく。
このうちエラスチンは、互いに架橋を作って組織の弾性に寄与しているが、エラスチンはエラスターゼによって分解されることが知られている。
紫外線暴露や加齢等は皮膚の真皮内血管新生とリンパ管構造強度を低下させ、それによりエラスターゼを分泌する好中球やマクロファージが真皮組織内に浸潤し、真皮組織内でエラスターゼが過剰発現することが知られている。
以上のように紫外線暴露や加齢等によるエラスターゼの過剰発現によってエラスチンが分解されるので、エラスチンの分解を防止するため、エラスターゼを阻害する成分が求められている。
エラスターゼを阻害する成分、エキスとして、ウルソール酸やオレアノール酸、オクラ種子抽出物が知られている。
エラスターゼ阻害剤は化粧品等に使用され、例えば、ショウキョウエキスおよびアセチルヘキサペプチドを含むエラスターゼ阻害剤を含む皮膚化粧料が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、エラスターゼ阻害剤であるオクラ種子抽出物の経口摂取により肌のシワ・はり・たるみ・ほうれい線の項目について改善することが知られており、エラスターゼ阻害剤の経口摂取は皮膚の状態改善に有用である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-19754号公報
【特許文献2】特開2020-50601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、エラスターゼ阻害剤は液体飲料や化粧料などに配合されるが、ウルソール酸やオレアノール酸は、水に溶け難く、水に溶け難い場合は、成分が沈殿等するため均一化が難しいので、少しでも水に溶けやすいエラスターゼ阻害剤が求められている。
従って、本発明の目的は、少しでも水に溶けやすいエラスターゼ阻害剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、R1バリゲノールがエラスターゼを阻害すること、ウルソール酸やオレアノール酸に比較して水に溶け易いことを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、R1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤である。
また、これを使用した、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品、皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のR1バリゲノールを有効成分とするエラスターゼ阻害剤は比較的、水に溶けやすく使用し易い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のR1バリゲノールは、化学式1で示され、茶に含まれるサポニンのアグリコンとして知られており、抗菌作用、オキシトシン受容体活性化作用、ミクログリア活性化抑制効果等が知られている。
【0008】
【化1】
【0009】
<R1バリゲノールの入手方法>
R1バリゲノールは、前記のとおり、茶に含まれるサポニンのアグリコンであり、茶の花部や葉部から抽出した抽出物を加水分解してカラムクロマトグラフィー等で精製することで得ることができる。
茶の品種や産地には特に限定はない。
また、R1バリゲノールは市販されており本発明では、市販されているR1バリゲノールも使用することができる。
【0010】
<R1バリゲノールの使用方法>
R1バリゲノールの使用方法は、従来のR1バリゲノールと同様に扱うことができ、特に限定はない。
例えば、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品、皮膚化粧料に配合することができる。
機能性表示食品や特定保健用食品とする場合の食品の例として、麺類、飯類、パン類、洋菓子類、和菓子類、ガム類、ジュース、酒類等を挙げることができる。
本発明のエラスターゼ阻害剤の経口投与量は1日あたりのヒトのR1バリゲノール摂取量として、通常1mg~5000mg/日であり、好ましくは5mg~1000mg/日であり、更に好ましくは10mg~100mg/日である。
経口剤として用いられた場合、エラスターゼ阻害剤は消化管で吸収され表皮や肺などの対象の臓器に運ばれエラスターゼを阻害する。
外用剤として用いられた場合は外皮より吸収され皮膚のエラスターゼを阻害し皮膚に弾力やハリを与える。
【実施例0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[試験例1 エラスターゼ阻害試験]
(1)R1バリゲノール(以下「R1B」ともいう)標準品(長良サイエンス社製)をDMSO(ジメチルスルホキシド)に500μM、50μM、5μMとなるように溶解し試料溶液を調製した。
なお、ブランク試料としてDMSOを用いた。
(2)STANA(N‐Succinyl‐Ala‐Ala‐Ala‐p‐nitroanilide)を1mM、Tris緩衝液(pH 7.4)に溶解したものを基質溶液、ブタ由来膵臓エラスターゼを0.5units/mLでTris緩衝液(pH 7.4)に溶解したものを酵素溶液とした。
(3)96穴マイクロプレートを用いて試料溶液50μL、酵素溶液50μL、基質溶液100μLを入れ、37℃で30分間インキュベートした。
この反応においてエラスターゼによる基質分解物であるニトロアニリンを405nmの吸光度で測定し、エラスターゼ阻害活性は以下の計算式で算出した。
エラスターゼ阻害活性 =(R1Bを添加した際の405nm吸光度)/ブランク試料を添加した際の405nm吸光度
(4)結果として、エラスターゼ阻害率(%)は、500μMで25.3%、50μMで3.8%、5μMで-9.4%となり、R1Bのエラスターゼ阻害活性が確認できた。
【0012】
[試験例2 水への溶解性試験]
(1)pH7.0の超純水980μLにR1B(長良サイエンス社製)、オレアノール酸(Sigma-Aldrich社製)、及びウルソール酸(Cayman Chemical社製) 500μM DMSO溶液をそれぞれ20μL添加し超音波処理を30分間行った。
尚、DMSO溶液に溶解したR1B、オレアノール酸、及びウルソール酸は、水を加えると析出してくる。
ここで添加したR1B、オレアノール酸及びウルソール酸は完全に溶けている場合に10μMとなる量である。
(2)これを0.22μm孔径のフィルター(島津ジーエルシー製:製品名「GLCTD-MCE2522」)でろ過し、溶け残った化合物を除去した。
(3)スルー液500μLにメタノール500μLを添加しHPLCに供した。
(4)得られた反応液についてHPLC(High Performance Liquid Chromatography)によりR1B、オレアノール酸、及びウルソール酸量を求めた。
(5)R1Bは1.8μM、オレアノール酸は検出されず(検出限界 0.31μM、ウルソール酸は検出されず(検出限界 0.07μM)、R1Bはオレアノール酸、ウルソール酸に比べて水への溶解性が高いことが確認できた。
【0013】
[実施例1 飲料]
果糖ブドウ糖液糖30g、乳化剤0.5g、R1バリゲノールを1質量%含む茶由来の抽出物1g、香料適量、精製水60gをミキサーによって常法により混合し、飲料を製造した。
【0014】
[実施例2 クリーム]
スクワラン20g、ミツロウ5g、グリセリン5g、グリセリンモノステアレート2g、R1バリゲノールを1質量%含む茶由来の抽出物2g、精製水60gをミキサーによって常法により混合し、70℃に加熱しながらホモミキサーで均一に乳化しクリーム(皮膚化粧料)を製造した。