(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000986
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ガス流量制御能力を有する半導体基板を処理するための反応チャンバ
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
C23C16/44 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023099491
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】63/354,084
(32)【優先日】2022-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トッタパイユ・アルン
(72)【発明者】
【氏名】鄭 東洛
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030EA11
(57)【要約】
【課題】装置、具体的には半導体基板を処理するための反応チャンバを提示する。
【解決手段】ガス排出流量制御能力を有する反応チャンバは、上部本体と、基板支持部と、基板の処理に使用されるガスを注入するためのシャワーヘッドと、ダクトを備える下部本体であって、ダクトが複数のダクト孔を有する、下部本体と、ダクトを囲むように構成された流量制御ライナーであって、流量制御ライナーが複数の流通孔を有する、流量制御ライナーとを備え、ダクト孔および流通孔は、基板処理に使用されるガスの排出流量を制御するために使用され、流量制御ライナーは、ダクト孔および流通孔が重なり合うことができるように回転してもよい。ダクトは、様々な孔のサイズおよび形状に対して、スクライブマークを有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための反応チャンバであって、
上部本体と、
基板支持部と、
前記基板の処理に使用されるガスを注入するためのシャワーヘッドと、
ダクトを備える下部本体であって、前記ダクトが複数のダクト孔を有する、下部本体と、
前記ダクトを囲むように構成された流量制御ライナーであって、前記流量制御ライナーが複数の流通孔を有する、流量制御ライナーとを備え、
前記ダクト孔および流通孔が、基板処理に使用される前記ガスの前記排出流量を制御するために使用され、かつ前記ダクト孔および前記流通孔が重なり合うことができるように前記流量制御ライナーが回転してもよい、反応チャンバ。
【請求項2】
基板を処理するための反応チャンバであって、
上部本体と、
基板支持部と、
前記基板の処理に使用されるガスを注入するためのシャワーヘッドと、
ダクトを備える下部本体であって、前記ダクトが複数のダクト孔を有する、下部本体と、
前記ダクトの下方の前記下部本体を囲む流量制御リングと、
前記流量制御リングの上方で前記ダクトを囲むように構成された流量制御ライナーであって、かつ前記流量制御ライナーが複数の流通孔を有する、流量制御ライナーとを備え、
前記ダクト孔および流通孔が、基板処理に使用される前記ガスの前記排出流量を制御するために使用され、かつ前記ダクト孔および前記流通孔が重なり合うことができるように前記流量制御ライナーが回転してもよい、反応チャンバ。
【請求項3】
前記流量制御ライナーを部品に分割することができ、かつ前記部品の数を1~8とすることができる、請求項1~2のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項4】
前記部品が分割されて、これにより各部品が、その隣接する部品に接触する程度まで動くことができ、かつ前記部品が、その他の部品とは独立して動く、請求項3に記載のチャンバ。
【請求項5】
前記ダクト孔および前記流通孔が形状を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項6】
前記形状としては、円、楕円、三角形、長方形、平行四辺形、菱形、五角形、および6つ以上の辺を有する多角形が挙げられる、請求項5に記載のチャンバ。
【請求項7】
前記孔の様々なサイズおよび形状に対する開放率の測定を容易にするために、前記ダクトがその上にスクライブマークを有する、請求項6に記載のチャンバ。
【請求項8】
前記ダクト孔および前記流通孔の間隔が不均等である、請求項1~2のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項9】
前記ダクト孔のサイズを、互いに異なるようにすることができる、請求項1~2のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項10】
前記流通孔のサイズを、互いに異なるようにすることができる、請求項1~2のいずれか一項に記載のチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体処理装置に関し、より具体的には、薄膜の均一性を改善することができるガス流量制御能力を有する半導体基板を処理するための反応チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、反応チャンバ(RC1~RC4)は、基板処理装置1内に配置されている。反応チャンバ1内の基板を処理するために前駆体およびその他のガスを使用することができ、反応が終われば、ガス(前駆体)はチャンバから排出されるべきである。矢印Aは、各チャンバのガス排出方向を示す。チャンバ内の反応は多くの条件から決定されるが、基板とガスとの間の接触時間は大きな要因である。
【0003】
ガスが矢印Aのようにチャンバから排出されている場合、チャンバ内の基板の接触時間は、基板の領域によって異なる。これは
図3(a)で見ることができる。RC3(反応チャンバ3)の領域Aでは接触時間が比較的長く、一方、領域Bでは接触時間が比較的短い。これは、ガス排出孔11、31が、RC3に対して北東方向にあるためである。
【0004】
より重要なこととして、反応後に前駆体(およびガス)を排出するための反応チャンバ2の従来の構造を
図2に示す。シャワーヘッド21はチャンバ内にガスを注入し、また基板は基板支持部29上に位置している。ガスは、
図2(b)に示す間隙(本実施形態では、間隙の幅は1mm)を通してチャンバから排出している。チャンバは、ダクト23を備えるその下部を有し、このダクト23および流量制御リング22は互いに1mm離れて配置されている。
図1に示すように、排出孔は各チャンバにつき1つしかない。そのため、迅速にポンプで送り出されるにもかかわらず、放射状にウエハの厚さのシフト(ウエハの不均一な厚さ)が生じる可能性が高い。
【0005】
この反応チャンバの構造については、不均一な膜厚がウエハに生じる可能性が常にあることになる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実施形態によると、基板を処理するための反応チャンバは、上部本体と、基板支持部と、基板の処理に使用されるガスを注入するためのシャワーヘッドと、ダクトを備える下部本体であって、ダクトが複数のダクト孔を有する、下部本体と、ダクトを囲むように構成された流量制御ライナーであって、流量制御ライナーが複数の流通孔を有する、流量制御ライナーとを備え、ダクト孔および流通孔は、基板処理に使用されるガスの排出流量を制御するために使用され、またダクト孔および流通孔が重なり合うことができるように流量制御ライナーは回転してもよい。
【0007】
本開示の別の実施形態によると、基板を処理するための反応チャンバは、上部本体と、基板支持部と、基板の処理に使用されるガスを注入するためのシャワーヘッドと、ダクトを備える下部本体であって、ダクトが複数のダクト孔を有する、下部本体と、ダクトの下方の下部本体を囲む流量制御リングと、流量制御リングの上方でダクトを囲むように構成された流量制御ライナーであって、流量制御ライナーが複数の流通孔を有する、流量制御ライナーとを備え、ダクト孔および流通孔は、基板処理に使用されるガスの排出流量を制御するために使用され、またダクト孔および流通孔が重なり合うことができるように流量制御ライナーは回転してもよい。
【0008】
本開示の反応チャンバは、流量制御ライナーを部品に分割することができ、部品の数を1~8とすることができる。
【0009】
本開示の反応チャンバは、部品が分割されているようにすることができ、これにより各部品はその隣接する部品に接触する程度まで動くことができ、また部品は他の部品とは独立して動く。
【0010】
また、ダクト孔および流通孔は形状を有し、そして形状としては、円、楕円、三角形、長方形、平行四辺形、菱形、五角形、および6つ以上の辺を有する多角形が挙げられる。
【0011】
また、孔の形状の開放率の測定を容易にするために、本開示のダクトはその上にスクライブマークを有する。
【0012】
本開示によると、ダクト孔および流通孔は不均等に離隔されてもよい。
【0013】
本開示によると、ダクト孔のサイズは互いに異なるようにすることができ、また流通孔のサイズは互いに異なるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】先行技術で使用されているガス排出間隙の断面図である。
【
図3】本開示の実施形態による反応チャンバの概念図である。
【
図4】本開示の実施形態による流量制御構成要素の詳細図である。
【
図5】本開示の実施形態による流量制御の仕組みの詳細図である。
【
図6】本開示の別の実施形態による反応チャンバの詳細図である。
【
図7】本開示の実施形態による反応チャンバの詳細図である。
【
図8】本開示の別の実施形態による孔の形状およびサイズの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示では、単語「ウエハ」は、単語「基板」とほぼ同じ意味を有し、この点において区別なく使用することができる。
【0016】
前述したように、従来の反応チャンバの下部、より具体的には下部のダクトには、孔がない。ダクトと流量制御リング(FCR)との間の間隙のみが、ガスの出口として機能している。
【0017】
図4(a)では、本開示によるダクト43および流量制御ライナー(FCL)44を示す。ダクト43は複数のダクト孔45を有し、またFCL44も複数の流通孔46を有する。流量制御リング(FCR)42をFCL44の下に配置することもできる。
図4(b)では、ダクト孔45および流通孔46が重なり合うことができるように、ダクト43およびFCL44が所定の位置に配置されている。
図4(c)では、孔45、46が部分的に重なり合うことができ、そして元の孔の一部のみが貫通47を通るように、FCL44を半径方向に回転させることができる。この場合、ガス排出流量は、
図4(b)のような全開時ほどは大きくない。これは、そのウエハの歪んだプロファイルを意味している。
【0018】
開放率または開放パーセンテージを
図5で説明する。
図5(a)では、円(ダクト孔55および流通孔56)は、完全に開いた貫通孔があるよう互いに交差している。開放率とは、「完全に貫通している面積」を「2つの孔(ダクト孔または流通孔のいずれか)のうちの最も小さい孔の面積」で割った比率である。したがって、ダクト孔および流通孔のサイズが、
図5(b)および(c)の実施例と同様に同じである場合、開放率は、交差面積57を、孔の円の面積でそれぞれ割ったものである。
【0019】
図3では、基板処理装置3内で、RC3は右上側にあり、ガス排出孔31はRC3に対して右上側(北東)にある。FCL34およびダクト33を
図3(b)に示す。
【0020】
図7(a)では、本開示の一態様を示す。反応チャンバ7は上部75およびシャワーヘッド71を備え、これは、基板支持部76上に置かれたウエハの処理に使用されるガスおよび/または前駆体を導くことができる。チャンバ7は下部73を有し、下部73はダクト73-1を含む。FCR72は、ダクト73内に配置することができる。FCR72は図面内に描かれており、また本明細書中で説明されているが、本開示においてチャンバ7の下部73は、FCR72を必要としない場合があるように形成することができる。
【0021】
図7(b)は、
図7(a)の線A-A’での断面図である。(b)でJとして指定されている6つの接合個所は、これが6部品のFCL74であることを示している。
図6の(a)および(b)は、それぞれ下部63およびダクト孔65を有するダクト63-1ならびに流通孔66を有するFCL64の詳細構造を示す。
図7(b)は、6部品のFCL64を示す。
図3(b)では、4部品のFCL34も示している。均一な膜厚のための良好なガス排出流量を達成するために、FCLの部品の数は変化してもよい。
【0022】
FCL64の各部品は、隣接するFCL部品に接触するまで動かすことができる限り、動かすことができる(回転することができる)ことに留意されたい。このようにして、本開示は、ガス排出流量を局所的に制御することができる。これは、反応後のウエハのプロファイルが歪んでいて均一でない場合、均一性をより良好にするためにFCLの部品数を決定してもよく、また各部品の開放率を微調整することができることを意味する。
【0023】
図5では、本開示によるこの局所的制御を示す。
図5(a)では、FCL54の各部品、すなわち54-1、54-2、54-3は、ダクト53のダクト孔55がFCL54の流通孔56と完全に重なり合う適切な場所に配置されており、開放率は100%である。
図5(b)では、FCL54の1つの部品54-2は、図面の左に移動(回転)している。
図5(b)の右図は、FCL54の左方へのシフトを示す。したがって、FCL54-2のこの特定の部品は左に移動し、一方でFCL54のその他の部品はそのままである。したがって、FCL部品54-2の孔はダクト孔55を部分的に塞いでおり、開放率は40%である。
【0024】
また、FCL部品のシフトによる開放の、極端な一例も
図5(c)に示す。FCL部品のこのような独立した動きにより、チャンバ内のウエハの均一性を高めることができる。
【0025】
図3(a)のように、プロファイルが歪んでいると仮定する。
図3(b)のような4部品のFCL34を使用する場合、FCL部品34-2および34-4は少しシフトさせることで開放率を50%に維持しつつ、FCL部品34-1を
図5(c)のように開放率が5%になるようにシフトさせることができる。また、部品34-3の孔は全開(開放率100%)に保つ。各部品の開放率は、反応チャンバのプロファイルの歪みに関する蓄積された情報を参照して、より詳細に較正することができる。部品34-1を動かすことによって、ウエハの部品34-1のコーナーは、通常の場合よりも長いガス接触時間を有することができる(5%の開放による)。また、ウエハの部品34-3のコーナーは、通常の場合よりも短いガス接触時間を有することができる(100%の開放による)。このようにして、ウエハの歪んだプロファイルを改善することができる。
【0026】
膜を均一にするためにそのコーナー領域のウエハのガス接触時間を増加または減少させようとする場合があるときに、
図3(b)のダクト33上のスクライブマーク38によって、開放パーセンテージ率をより容易に測定することができる。
【0027】
図8では、ダクト孔もしくは流通孔のいずれか、またはダクト孔および流通孔の両方に対して、孔の形状の多くの変形形態があり得ることが示されている。
【0028】
図8(a)では、両方の孔の形状(ダクト孔および流通孔)が円である一方で、ダクト孔の円のサイズは互いに多少異なっている。
図8(b)では、孔の形状は楕円であり、流通孔の円のサイズは互いに異なっている。このサイズの違いによって、チャンバのユーザまたは操作者は、よりプロファイルの歪みが微妙な状況において、開放パーセンテージを微調整することができる場合がある。
【0029】
図8(c)では、その形状は長方形であるが、一方で距離は均一ではない(
図8(a)、(b)、(d)、(e)、および(f)では、ダクト孔86または流通孔85の形状間の距離は同一であることに留意されたい)。形状間の距離がこのように不規則であることは、
図8(a)または
図8(b)のように、よりプロファイルの歪みが微妙な状況において、チャンバのユーザまたは操作者が開放率を微調整するのに役立つ場合がある。
【0030】
図8の(d)、(e)、(f)の形状は、それぞれ菱形、三角形、および五角形である。これは単なる例であり、形状は、辺の数が6以上である任意の多角形、すなわち、六角形、七角形などであってもよい。当然のことながら、各形状において、(a)、(b)、または(c)のように、サイズおよび距離を互いに異なるようにすることができることに留意されたい。
【0031】
本開示は、ポンプによって反応チャンバからガス(または前駆体)が非対称に排出されることにより生じるウエハの厚さの放射状のシフトを解決する装置を提案する。チャンバからのガス排出流の比率を制御することができ、その結果、ウエハのガス接触時間を局所的に制御することができ、そしてそれに由来してウエハの膜厚差を小さくすることができる。
【0032】
上述の装置の配設は、本発明の原理の適用の単なる例示であり、また特許請求の範囲において定義されるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの他の実施形態および修正がなされてもよい。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、その代わりに、その均等物の全範囲とともに添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【外国語明細書】