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特開2024-98606光ファイバ振動センサを用いたデータ伝送システム
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  • 特開-光ファイバ振動センサを用いたデータ伝送システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098606
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光ファイバ振動センサを用いたデータ伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20240717BHJP
   H04B 10/25 20130101ALI20240717BHJP
   H04L 27/20 20060101ALI20240717BHJP
   H04L 27/22 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04B10/67
H04B10/25
H04L27/20 Z
H04L27/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002196
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA68
5K102AH27
5K102AL16
5K102PH02
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD15
5K102RD27
(57)【要約】
【課題】本開示は、光ファイバケーブルの外部環境が変化し、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に差が生じた場合であっても、受信データを復調可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知するマッハツェンダ型光ファイバ振動センサと、前記マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から受信データを復調する復調装置と、を備え、前記振動は予め定められた周波数を有し、前記復調装置における受信データの復調方法が、前記振動と同じ周波数および2倍の周波数を用いて復調することを特徴とした受信装置である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知するマッハツェンダ型光ファイバ振動センサと、
前記マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から受信データを復調する復調装置と、
を備え、
前記振動は予め定められた周波数を有し、
前記復調装置が、前記振動と同じ第1の周波数および前記振動の2倍の第2の周波数を用いて前記受信データを復調することを特徴とした受信装置。
【請求項2】
前記振動が、差動位相偏移変調方式によって変調されており、
前記復調装置における受信データの復調方法が、前記変調により前記光ファイバケーブルに与えた振動と同じ角周波数および前記振動の2倍の第2の角周波数のそれぞれに対する差動位相偏移変調方式による復調である、
ことを特徴とした請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記第1の周波数及び前記第2の周波数で復調された第1の復調信号及び第2の復調信号を比較し、
前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に相違がある場合、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号のうちの絶対値が大きい方を受信データに用いる、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
送信データを変調する変調装置と、
前記変調装置からの変調信号を増幅する振動発生器駆動アンプと、
前記振動発生器駆動アンプで増幅された変調信号の振動を前記光ファイバケーブルに与える振動発生器と、
を備え、
前記変調装置における送信データの変調方法が、前記振動の位相を0ラジアン又は3分の2πラジアン変化させる2位相変調である、
ことを特徴とした送信装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の受信装置と、
前記受信装置に備わる光ファイバケーブルに振動を与える請求項4に記載の送信装置と、
を備えるデータ伝送システム。
【請求項6】
マッハツェンダ型光ファイバ振動センサが、光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知する手順と、
復調装置が、前記マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から受信データを復調する手順と、
を備え、
前記振動は予め定められた周波数を有し、
前記復調装置が、前記振動と同じ第1の周波数および前記振動の2倍の第2の周波数を用いて前記受信データを復調することを特徴とした方法。
【請求項7】
変調装置が、送信データを変調する手順と、
振動発生器駆動アンプが、前記変調装置からの変調信号を増幅する手順と、
振動発生器が、前記振動発生器駆動アンプで増幅された変調信号の振動を前記光ファイバケーブルに与える手順と、
を備え、
前記変調が、前記振動の位相を0ラジアン又は3分の2πラジアン変化させる2位相変調である、
ことを特徴とした方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔地に設置したセンサ装置からの情報収集を簡易に実現するためのセンサネットワークに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルに振動を与えて遠隔地に情報を伝送する方法は非特許文献1により示されている。従来の技術ではマッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に全く違いがないという前提で受信信号の発生過程をモデル化している。このモデルでは光ファイバケーブルに与えられた振動の2倍の周波数の振動が受信信号として計測されることから、この2倍の周波数により受信データを復調する方法を提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tetsuya Manabe, Ryoga Hashimoto, Hiroki Fujita, Atsushi Nakamura, and Yusuke Koshikiya,“Low-speed Data Transmission using a Modulated Vibration Signal on an Optical Cable’s Outer Sheath”, Proceedings of the 27th International Conference on Optical Fiber Sensors, W4.3, (2022).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に全く違いがないという前提で受信信号をモデル化している。
【0005】
しかしながら、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間は、温度、側圧等の影響により屈折率や光ファイバ長が変化することで時間的に変動する。この場合、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにて計測される受信信号には与えた振動の2倍の周波数だけではなく同じ周波数の振動も含まれる。また、同じ周波数のみ発生し、与えた振動の2倍の周波数の振動が受信信号に含まれない場合もある。この場合には与えた振動の2倍の周波数による復調では受信データを復調できないという問題がある。
【0006】
本開示は、光ファイバケーブルの外部環境が変化し、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に差が生じた場合であっても、受信データを復調可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に差がある場合を想定し、受信信号の発生過程をモデル化する。このモデルに基づき与えた振動と同じ周波数および2倍の周波数により受信データの復調を2系統で行う。これにより与えた振動と同じ周波数もしくは2倍の周波数の少なくともどちらか一方の周波数の振動から受信データを復調できるので、状態の変化が発生する場合においても常に受信データの復調が可能なデータ伝送装置を実現している。
【0008】
本開示のデータ伝送システムは、本開示の送信装置及び受信装置を備える。本開示のプログラムは、本開示の送信装置又は受信装置に備わる各機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであり、本開示に係る送信装置又は受信装置が実行する方法に備わる各手順をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の受信装置は、
光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知するマッハツェンダ型光ファイバ振動センサと、
前記マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から受信データを復調する復調装置と、
を備え、
前記振動は予め定められた周波数を有し、
前記復調装置が、前記振動と同じ第1の周波数および前記振動の2倍の第2の周波数を用いて前記受信データを復調する。
【0010】
本開示の送信装置は、
送信データを変調する変調装置と、
前記変調装置からの変調信号を増幅する振動発生器駆動アンプと、
前記振動発生器駆動アンプで増幅された変調信号の振動を前記光ファイバケーブルに与える振動発生器と、
を備える。
【0011】
本開示の方法は、本開示の送信装置及び受信装置の少なくともいずれかが実行する方法である。
具体的には、本開示の方法は、本開示の受信装置が実行する方法であって、
マッハツェンダ型光ファイバ振動センサが、光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知する手順と、
復調装置が、前記マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から受信データを復調する手順と、
を備え、
前記振動は予め定められた周波数を有し、
前記復調装置が、前記振動と同じ第1の周波数および前記振動の2倍の第2の周波数を用いて前記受信データを復調する。
具体的には、本開示の方法は、本開示の送信装置が実行する方法であって、
変調装置が、送信データを変調する手順と、
振動発生器駆動アンプが、前記変調装置からの変調信号を増幅する手順と、
振動発生器が、前記振動発生器駆動アンプで増幅された変調信号の振動を前記光ファイバケーブルに与える手順と、
を備える。
【0012】
前記振動が、差動位相偏移変調方式によって変調されており、
前記復調装置における受信データの復調方法が、前記変調により前記光ファイバケーブルに与えた振動と同じ角周波数および前記振動の2倍の第2の角周波数のそれぞれに対する差動位相偏移変調方式による復調であってもよい。
【0013】
受信装置は、前記第1の周波数及び前記第2の周波数で復調された第1の復調信号及び第2の復調信号を比較し、
前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に相違がある場合、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号のうちの絶対値が大きい方を受信データに用いてもよい。
【0014】
前記変調装置における送信データの変調方法が、前記振動の位相を0ラジアン又は3分の2πラジアン変化させる2位相変調であってもよい。
【0015】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示は、光ファイバケーブルの外部環境が変化し、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間に差が生じた場合であっても、受信データを復調可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光ファイバケーブルに振動を与える送信装置とマッハツェンダ型光ファイバ振動センサによる受信装置から構成されるデータ伝送システムの実施の形態を示す。
図2】変調装置における送信データの変調方式が位相0および2π/3を用いるDPSK変調である場合の変調方法を示す。
図3】復調装置における受信データの復調方式が、光ファイバケーブルに与えた振動と同じ周波数および2倍の周波数に対するDPSK復調である場合の復調方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
本開示のデータ伝送システムは、送信装置及び受信装置を備える。
送信装置は、
遠隔地にて取得したデータを変調する変調装置と、
変調した変調信号を増幅する振動発生器駆動アンプと、
光ファイバケーブルに振動を与える振動発生器と、
を備える。
受信装置は、
光ファイバケーブルと、
光ファイバケーブル中の光ファイバへの振動を検知するマッハツェンダ型光ファイバ振動センサと、
マッハツェンダ型光ファイバ振動センサにより受信した受信信号から直流成分を除去する直流遮断フィルタと、
直流成分を除去した受信信号から、前記振動発生器の与えた振動と同じ第1の周波数および2倍の第2の周波数を用いて、受信データを2系統で復調する復調装置と、
を備える。
【0020】
図1は本開示のデータ伝送システムの実施の形態を示している。受信装置1は、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサ110、光ファイバケーブル120、直流遮断フィルタ130、復調装置140を備える。送信装置2は、変調装置230、振動発生器駆動アンプ220、振動発生器210を備える。本開示の受信装置1及び送信装置2はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0021】
遠隔において各種センサ等により取得された送信データは送信装置2に送られ、光ファイバケーブル120に与える振動を送信装置2で発生させる。変調装置230では、送信データに基づいた位相変調信号を作成する。変調信号は、振動発生器駆動アンプ220により増幅され、振動発生器210を駆動し、振動発生器210が光ファイバケーブル120の外皮に振動を与える。
【0022】
図1の例におけるマッハツェンダ型光ファイバ振動センサ110は光源111と2つの光合分岐カプラ113、光ファイバケーブル120中のセンシング用光ファイバ114、参照用光ファイバ115、折り返し用光ファイバ116および受光器112を備える。光源111から発せられた光信号は光合分岐カプラ113でセンシング用光ファイバ114と参照用光ファイバ115に分岐され、反対側の光合分岐カプラ113で合波され、振動により生じた干渉波形を受光器112にて計測する。
【0023】
送信装置2の振動発生器210より変調信号に応じた振動が光ファイバケーブル120にあたえられると、この振動に応じて干渉波形が変化し、受光器112により受信信号を得ることができる。受信信号は直流遮断フィルタ130にて直流成分を除去した後、復調装置140において受信データが復調される。
【0024】
ここで、マッハツェンダ型光ファイバ干渉計110におけるセンシング用光ファイバ114および参照用光ファイバ115における電界E(t)及びE(t)を、それぞれ
【数1】
【数2】
とすると、受光器112で観測される干渉波E(t)は
【数3】
となる。ただし、ωはセンシング用光ファイバ114および参照用光ファイバ115を伝搬する光信号の角周波数、ψおよびψは位相である。
【0025】
このとき受光器112の受信信号I(t)は、
【数4】
となる。ただし、Kは受光器112の光入力と電気出力の間の係数である。
【0026】
光ファイバケーブル120に与えた振動により発生する位相差を次式とする。
【数5】
ただし、Aは与えた振動の大きさと、振動により発生する位相差の間の関係を表す定数である。また、ωνは与えた振動の角周波数、φ(t)は送信データに応じて変化させる変調位相である。すなわち、ωνが振動の角周波数を有する第1の角周波数であり、2ωνが振動の2倍の角周波数を有する第2の角周波数である。
【0027】
ここで、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサ110のセンシング用光ファイバ114と参照用光ファイバ115の光伝搬時間差による位相差をθとすると、位相差は次式となる。
【数6】
【0028】
式(4)、式(5)および(6)より、受信器112で受信した受信信号I(t)は、
【数7】
となる。ただし、J(*)は第一種ベッセル関数である。
【0029】
このときの直流遮断フィルタ130通過後の受信信号y(t)は、次式で求められる。
【数8】
ただし、Cは定数である。
【0030】
得られた式(8)の第1項および第2項に対して復調を行うことにより、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサ110のセンシング用光ファイバ114と参照用光ファイバ115の屈折率や偏波の影響に起因した光伝搬時間差による位相差θの値が変動した場合においても受信データを復調することが可能になる。
【0031】
図2は変調装置230における送信データの変調方式が位相0および2π/3を用いる差動位相偏移変調(DPSK:Differencial Phase-Shift Keying)である場合の変調方法を示している。
【0032】
ここで、k番目に送信する送信データをdとするとき、実際に変調を行うデータbは次式で得られる。
【数9】
【0033】
次に式(9)で得られたデータbに基づき位相変調器233では次式により搬送波発生器232で発生する搬送波の位相φを変調する。
【数10】
【0034】
図3は復調装置140における受信データの復調方式が、送信装置2により光ファイバケーブル120に与えた振動と同じ周波数および2倍の周波数に対するDPSK復調である場合の復調方法を示す。
【0035】
同倍コサイン波発生器147及び同倍サイン波発生器148が第1の角周波数の信号を発生させ、2倍コサイン波発生器149及び2倍サイン波発生器150が第2の角周波数の信号を発生させ、乗算器141-1I,141-1Q,141-2I,141-2Qを用いて各信号を受信信号y(t)に乗算する。これにより、振動と同じ第1の周波数の信号と、振動の2倍の第2の周波数の信号と、を復調することができる。
【0036】
式(10)の位相変調により光ファイバケーブル120に振動を与えた時の受信信号は、
【数11】
となる。ただし、αは、同倍コサイン波発生器147、同倍サイン波発生器148、2倍コサイン波発生器149および2倍サイン波発生器150により生成する各信号の、受信信号y(t)の搬送波に対する位相差である。
【0037】
この受信信号y(t)に対して角周波数ωνのコサイン波およびサイン波を乗算器141-1I及び141-1Qにて乗算し低域通過フィルタ142-1I及び142-1Qを通過後の信号zI1(t)、zQ1(t)は、
【数12】
【数13】
となる。ただし、Dは定数である。
【0038】
ここで遅延器143-1I及び143-1Qにて1シンボル時間分遅延させた信号と乗算器144-1I及び144-1Qにて乗算することで次の信号を得る。
【数14】
【数15】
【0039】
式(14)、式(15)のIおよびQを加算器145-1にて加算することで、次式を得る。
【数16】
【0040】
同様に受信信号y(t)に対して角周波数2ωνのコサイン波およびサイン波を乗算器141-2I及び141-2Qにて乗算し低域通過フィルタ142-2I及び142-2Qを通過後の信号zI2(t)、zQ2(t)は、
【数17】
【数18】
となる。ただし、Dは定数である。
【0041】
ここで遅延器143-2I及び143-2Qにて1シンボル時間分遅延させた信号と乗算器144-2I及び144-2Qにて乗算することで次の信号を得る。
【数19】
【数20】
【0042】
式(19)、式(20)のIおよびQを加算器145-2にて加算することで、次式を得る。
【数21】
【0043】
式(10)により与えられた位相変調させた受信信号y(t)より、次の2つの復調信号p、pを得る。
【数22】
【数23】
【0044】
ここで、マッハツェンダ型光ファイバ振動センサ110のセンシング用光ファイバ114と参照用光ファイバ115の長さや屈折率の差によってこれらに光伝搬時間差が生じる。得られた復調信号p、pの大きさはこの光伝搬時間差による位相差θの状況により変化するので、受信データの判別が相違する場合がある。よって、識別器146では式(22)および式(23)で表される2つの復調信号p、pを用いて、以下の基準により受信データの0、1を判別する。
【0045】
まず、各復調信号p、pより、受信データの判別結果R、Rを求める。
【数24】
【数25】
【0046】
2つの判定結果R、Rに相違が無い場合は次式で受信データd’を決定する。
【数26】
【0047】
2つの判定結果R、Rに相違がある場合は復調信号p、pの絶対値が大きい判定結果RもしくはRを用いて受信データd’を決定する。
【数27】
【0048】
以上の変調・復調方法によりセンシング用光ファイバ114と参照用光ファイバ115の長さや屈折率の差によって生じる光伝搬時間差による位相差θが変動した場合においても確実に受信データを復調することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態では送信装置2における変調装置230が差動位相偏移変調方式を用いて位相変調を行う例を示したが、変調装置230の変調方式は周波数変調であってもよい。この場合、本実施形態の角周波数ωνを、変調装置230の変調周波数ωνと読み替えればよい。
【0050】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示によれば光ファイバケーブルの温度、湿度等の外部環境が変化した場合においても確実に受信データを復調することが可能となる。なお、本開示において与える振動の周波数は任意である。振動周波数を高くするほど送信できる情報を増やすことができ、用途に応じて適切な周波数を選択すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1.受信装置
2.送信装置
110.マッハツェンダ型光ファイバ振動センサ
111.光源
112.受光器
113.光合分岐カプラ
114.センシング用光ファイバ
115.参照用光ファイバ
116.折り返し用光ファイバ
120.光ファイバケーブル
130.直流遮断フィルタ
140.復調装置
141-1I,141-1Q,141-2I,141-2Q.乗算器
142-1I,142-1Q,142-2I,142-2Q.低域通過フィルタ
143-1I,143-1Q,143-2I,143-2Q.遅延器
144-1I,144-1Q,144-2I,144-2Q.乗算器
145-1,145-2.加算器
146.識別器
147.同倍コサイン波発生器
148.同倍サイン波発生器
149.2倍コサイン波発生器
150.2倍サイン波発生器
210.振動発生器
220.振動発生器駆動アンプ
230.変調装置
231.加算器
232.搬送波発生器
233.位相変調器
図1
図2
図3