(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098615
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H10K 71/20 20230101AFI20240717BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240717BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20240717BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240717BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
H10K71/20
H10K59/35
H10K71/16
H10K50/844
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002207
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】里吉 務
(72)【発明者】
【氏名】神戸 喬史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晋也
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD22
3K107DD90
3K107FF13
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG12
3K107GG13
3K107GG28
3K107GG33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ファインメタルマスクを用いずに有機材料からなる発光層を形成する。
【解決手段】基板処理方法であって、(A)複数の電極が配列された電極アレイが形成された基板を準備する工程と、(B)電極アレイの全体を覆うように特定の発光層を形成する工程と、(C)発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜を形成する工程と、(D)仮封止膜上に第1マスクを形成する工程と、(E)仮封止膜及び発光層が積層された積層体が特定の電極上にのみ形成された積層体アレイを、第1マスクを用いて形成する工程と、(F)積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する工程と、(G)第2無機絶縁膜上に第2マスクを形成する工程と、(H)特定の電極以外の電極に対応する部分の第2無機絶縁膜を、第2マスクを用いて、積層体アレイが露出しないように除去する工程と、を含み、(B)~(H)工程を、発光層にかかる複数種類について行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)複数の電極が配列された電極アレイが基板表面上に形成された基板を準備する工程と、
(B)前記電極アレイの全体を覆うように特定の種類の発光層を形成する工程と、
(C)前記発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜を形成する工程と、
(D)前記仮封止膜上に第1マスクを形成する工程と、
(E)前記仮封止膜及び前記発光層が積層された積層体が前記特定の種類にかかる前記電極上にのみ形成された積層体アレイを、前記第1マスクを用いて形成する工程と、
(F)その後、前記積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する工程と、
(G)前記第2無機絶縁膜上に第2マスクを形成する工程と、
(H)前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分の前記第2無機絶縁膜を、前記第2マスクを用いて、前記積層体アレイが露出しないように除去する工程と、を含み、
前記(B)~前記(H)工程を、前記発光層にかかる複数種類について行う、基板処理方法。
【請求項2】
前記複数種類は、3種類である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記複数種類は、赤色、緑色及び青色である、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記(E)工程後、前記基板を大気に曝さずに、前記(F)工程を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1マスクは、フォトレジストのマスクである、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記仮封止膜は、前記第1無機絶縁膜、有機絶縁膜及び第3無機絶縁膜が下から順に積層されたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記有機絶縁膜は、前記発光層よりも厚い、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記(E)工程は、
(a)前記第1マスクを介して、前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分の前記仮封止膜をその一部が残るよう除去する工程と、
(b)その後、前記第1マスクをアッシングする工程と、
(c)その後、前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分について、前記残った前記仮封止膜及び前記発光層を除去する工程と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板は、
複数の電極が配列された電極アレイがベース基板の上面に形成されたものであり、
前記電極アレイの全体を覆うように特定の種類の発光層が形成され、
前記発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜が形成され、
前記仮封止膜上にマスクが形成されており、
前記仮封止膜及び前記発光層が積層された積層体が前記特定の種類にかかる前記電極上にのみ形成された積層体アレイを、前記マスクを用いて形成する除去部と、
前記積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する成膜部と、を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、各色成分に対応したパターニング成膜によって各有機EL素子を形成することが開示されている。特許文献1において、パターニング成膜は、平板状に形成され鉄等の強磁性体からなるメタルマスクを用いて行われる。
【0003】
特許文献2に開示の有機ELディスプレイの製造方法は、絶縁基板の上方に形成された第1及び第2画素電極を含んだ電極アレイの上方にホスト材料とドーパント材料との混合物を含んだ第1ルミネッセンス性有機材料を堆積させて、電極アレイを含む表示領域に亘って広がった連続膜として第1発光層を形成する工程を含む。また、この製造方法は、第1発光層のうち第1画素電極の上方に位置した部分に紫外光を照射することなしに、第1発光層のうち第2画素電極の上方に位置した部分に紫外光を照射する工程を含む。さらに、この製造方法は、第1発光層上にホスト材料とドーパント材料との混合物を含み且つ第1ルミネッセンス性有機材料とは異なる第2ルミネッセンス性有機材料を堆積させて、第2発光層を表示領域に亘って広がった連続膜として形成する工程と、第2発光層の上方に対向電極を形成する工程とを含む。
【0004】
特許文献3には、有機発光ダイオード(OLED: Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイに用いられるデバイスの形成方法が開示されている。上記デバイスは複数のサブピクセルを含み、複数のサブピクセルのそれぞれは、隣接するPDL(Pixel-Defining Layer)構造によって区画され、PDL構造上にはオーバーハング構造が形成されており、サブピクセルは、アノードと、アノード上に堆積されたOLED材料と、OLED材料上に堆積されたカソードと、を有する。OLED材料とカソードを堆積する工程と、カソード上に堆積されるカプセル化層を形成する工程とを含むプロセスから、上記デバイスは作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-157973号公報
【特許文献2】特開2012-160473号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2022-77257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示にかかる技術は、ファインメタルマスクを用いずに有機材料からなる発光層を適切に形成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、基板処理方法であって、(A)複数の電極が配列された電極アレイが基板表面上に形成された基板を準備する工程と、(B)前記電極アレイの全体を覆うように特定の種類の発光層を形成する工程と、(C)前記発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜を形成する工程と、(D)前記仮封止膜上に第1マスクを形成する工程と、(E)前記仮封止膜及び前記発光層が積層された積層体が前記特定の種類にかかる前記電極上にのみ形成された積層体アレイを、前記第1マスクを用いて形成する工程と、(F)その後、前記積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する工程と、(G)前記第2無機絶縁膜上に第2マスクを形成する工程と、(H)前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分の前記第2無機絶縁膜を、前記第2マスクを用いて、前記積層体アレイが露出しないように除去する工程と、を含み、前記(B)~前記(H)工程を、前記発光層にかかる複数種類について行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ファインメタルマスクを用いずに有機材料からなる発光層を適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態にかかる基板処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図2】処理モジュールの構成の概略を示す縦断面図である。
【
図3】基板処理シーケンスの一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】基板処理シーケンスの各工程後における基板の状態を示す模式部分断面図である。
【
図5】基板処理シーケンスの各工程後における基板の状態を示す模式部分断面図である。
【
図6】基板処理シーケンスの各工程後における基板の状態を示す模式部分断面図である。
【
図7】基板処理シーケンスの各工程後における基板の状態を示す模式部分断面図である。
【
図8】積層体アレイの形成工程の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
近年、表示装置として、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置が注目を集めている。有機EL表示装置は、有機EL素子を複数有しており、各有機EL素子は、発光層を含む有機EL層と電極層等が積層されたものである。
【0011】
また、有機EL表示装置として、複数種類の有機EL素子を有するものがある。具体的には、例えば、有機EL表示装置として、赤色に発光する有機EL素子、緑色に発光する有機EL素子及び青色に発光する有機EL素子それぞれが配列された、フルカラーの表示装置がある。
【0012】
このような表示装置の場合、各種類(具体的には例えば赤色、緑色、青色の各色)に対応した有機EL層を、それぞれ異なる位置に形成する必要がある。例えば、特許文献1に記載のように、ファインメタルマスクを用いた真空蒸着法により、各種類の有機EL層が形成される。ファインメタルマスクは微細な穴が配列された金属薄板である。
しかし、ファインメタルマスクを用いる手法は、高精細化や大型化に限界がある等、改善の余地がある。
【0013】
そこで、本開示にかかる技術は、ファインメタルマスクを用いずに有機EL層を適切に形成する。
【0014】
以下、本実施形態にかかる基板処理方法及び基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<基板処理装置1>
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置1の構成の概略を示す平面図である。
図1の基板処理装置1は、複数種類の有機EL素子を基板G上に形成するための処理を行うものであり、具体的には、種類毎に互いに異なる色に発光する複数種類の有機EL層を同一基板G上に形成するための処理を行うものである。
【0016】
基板処理装置1は、複数の基板Gを収容可能なキャリアCが搬入出されるキャリアステーション10と、減圧下で基板Gに所定の処理を施す複数の処理モジュール40を備えた処理ステーション11とを一体に接続した構成を有している。キャリアステーション10と処理ステーション11は、ロードロックモジュール12を介して連結されている。
【0017】
ロードロックモジュール12は、室内を大気圧状態と真空状態とに切り替えられるように構成されたロードロック室13を有する。
【0018】
キャリアステーション10は搬送機構20を有している。
搬送機構20は、キャリア載置台21に載置されたキャリアCとロードロックモジュール12(具体的にはロードロック室13)との間での基板Gの搬送を大気圧下で行う。この搬送機構20は、基板Gを搬送時に支持する搬送アーム20aを有している。
【0019】
処理ステーション11は、真空搬送モジュール30と処理モジュール40を有している。処理ステーション11に設けられている処理モジュール40の数は複数(図の例では3つ)設けられている。
【0020】
真空搬送モジュール30は、室内が減圧状態(真空状態)に保たれる真空搬送室31を有する。真空搬送室31は、ロードロックモジュール12のロードロック室13とゲートバルブG1を介して接続されている。なお、ロードロック室13の搬送機構20側にもゲートバルブG2が設けられている。
【0021】
また、真空搬送室31は、後述の真空処理室41それぞれとゲートバルブG3を介して接続されている。真空搬送室31内には、基板Gを搬送する搬送機構32が設けられている。搬送機構32は、処理モジュール40(具体的には真空処理室41)及びロードロックモジュール12(具体的にはロードロック室13)に対して基板Gを搬入出する。搬送機構32は、基板Gを搬送時に支持する搬送アーム32aを有している。
【0022】
本実施形態において、処理モジュール40それぞれは、後述の仮封止膜のエッチングや、有機EL層のエッチング、後述の第2無機絶縁膜の形成等を行う。すなわち、本実施形態において、処理モジュール40それぞれは、本開示にかかる除去部及び成膜部として機能する。
処理モジュール40はそれぞれ、減圧下の室内で基板Gに対して上述のエッチングや成膜等が行われる真空処理室41を有する。
【0023】
さらに、基板処理装置1は制御部50を備える。
制御部50は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等を備えたコンピュータを含み、各種情報を記憶する記憶部(図示せず)を有している。上記記憶部には、基板処理装置1により実行される処理シーケンスのための指令を含むプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部50にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0024】
<処理モジュール40>
図2は、処理モジュール40の構成の概略を示す縦断面図である。
処理モジュール40は、例えば、基板Gに対してプラズマを用いた処理すなわちプラズマ処理を行うプラズマ処理装置として構成され、図示するように、有底の角筒形状の容器本体100を備える。
【0025】
容器本体100は、導電性材料、例えばアルミニウムから形成され、電気的に接地されている。プラズマ処理にはしばしば腐食性のガスが用いられるため、容器本体100の内壁面は、耐腐食性を向上させる目的で、陽極酸化処理等の耐腐食コーティング処理が施されていてもよい。また、容器本体100の上面には開口が形成されている。この開口は、容器本体100と絶縁されて設けられた矩形状の金属窓120によって気密に塞がれ、具体的には、金属窓120及び後述の金属枠110よって気密に塞がれる。容器本体100及び金属窓120によって囲まれた空間は、処理対象の基板Gがプラズマ処理時に位置する処理空間K1となり、金属窓120の上方側の空間は、後述の高周波アンテナ(プラズマアンテナ)190が配置されるアンテナ室K2となる。容器本体100の真空搬送室31(
図1参照)側の側壁には、処理空間K1内に基板Gを搬入出するための搬入出口(図示せず)及び搬入出口を開閉するゲートバルブG3(
図1参照)が設けられている。
【0026】
処理空間K1の下部側には、金属窓120と対向するように、載置台130が設けられている。載置台130は、その上面が、基板Gが載置される基板載置面となる台本体131を有し、台本体131が脚部132を介して容器本体100の底面上に設置されている。
【0027】
台本体131は、導電性材料、例えばアルミニウムで構成された基部131aと、基板Gを静電吸着により保持する静電チャック131bが設けられている。
基部131aには、整合器140を介して高周波電源141が接続されている。高周波電源141は、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を基部131aに供給する。これにより、処理空間K1内に生成されたプラズマ中のイオンを基板Gに引き込むことができる。
【0028】
容器本体100の底壁には、排気口101が形成され、この排気口101には真空ポンプ等を有する排気部150が接続されている。処理空間K1は、この排気部150によって減圧される。
【0029】
容器本体100の側壁の上面側には、アルミニウム等の金属材料から形成された矩形状の枠体である金属枠110が設けられている。容器本体100と金属枠110との間には、処理空間K1を気密に保つためのシール部材111が設けられている。また、容器本体100と金属枠110と金属窓120とが、減圧可能に構成され載置台130を収容する処理容器を構成し、また、前述の真空処理室41を構成する。
【0030】
金属窓120は、例えば平面視矩形状に形成されている。また、金属窓120は、処理空間K1に処理ガスを供給するシャワーヘッドとして機能する。例えば、金属窓120には、処理ガスを下方に吐出する多数のガス吐出孔121と、処理ガスを拡散させる拡散室122が形成されており、ガス吐出孔121と拡散室122とが連通している。
なお、金属窓120は、絶縁部材123によって金属枠110から電気的に絶縁されている。
【0031】
拡散室122には、供給管210を介して、エッチングガス供給ユニット200~202、アッシングガス供給ユニット203、成膜ガス供給ユニット204が接続されている。
【0032】
エッチングガス供給ユニット200は、無機絶縁膜用のエッチングガスを供給する。
エッチングガス供給ユニット201は、カソード用のエッチングガスを供給する。
エッチングガス供給ユニット202は、有機EL層用のエッチングガスを供給する。
アッシングガス供給ユニット203は、レジストのマスク用のアッシングガスを供給する。
成膜ガス供給ユニット204は、無機絶縁膜用の成膜ガスを供給する。
エッチングガス供給ユニット200~202、アッシングガス供給ユニット203、成膜ガス供給ユニット204はそれぞれ、ガス供給の開始・停止を切り換える開閉弁(図示せず)、供給するガス流量を調整する流量制御器(図示せず)等を有する。エッチングガス供給ユニット200~202、アッシングガス供給ユニット203、成膜ガス供給ユニット204は、複数種類のガスが混合された混合ガスを供給する場合、混合比を調整可能に構成されている。
【0033】
なお、拡散室122には、不活性ガス等のパージガスを供給するパージガス供給ユニット(図示せず)も接続されている。
【0034】
上述の金属窓120、側壁部181及び天板部180にて囲まれた空間はアンテナ室K2を構成し、アンテナ室K2の内部には、金属窓120に面するように高周波アンテナ190が配置されている。
【0035】
高周波アンテナ190は、例えば、絶縁材料から形成されるスペーサ(図示せず)を介して金属窓120から離間して配置される。
【0036】
高周波アンテナ190には、整合器142を介して高周波電源143が接続されている。高周波アンテナ190には、高周波電源143から整合器142を介して、例えば13.56MHzの高周波電力が供給される。これにより、プラズマ処理の間、金属窓120を介して、処理空間K1の内部に誘導電界が形成され、ガス吐出孔121から吐出された処理ガスが誘導電界によってプラズマ化される。
【0037】
<基板処理>
次に、基板処理装置1により実行される処理シーケンスを含む基板処理シーケンスの一例について説明する。
図3は、基板処理シーケンスの一例を説明するためのフローチャートである。
図4及び
図5は、基板処理シーケンスの各工程後における基板Gの状態を示す模式部分断面図である。
【0038】
(ステップS1)
まず、
図3に示すように、以下の基板Gが準備される。
【0039】
本ステップS1で準備される基板Gは、
図4(A)に示すように、電極としてのアノードCaが複数配列された電極アレイCArが基板表面上に形成されている。また、本ステップS1で準備される基板Gには、画素定義(Pixel Defining Layer)層PDLが形成されている。画素定義層PDLは、画素を区画すると共に、隣り合うアノードCa間を電気的に絶縁する。
基板Gは、例えばガラス板であるが、セラミックス板、プラスチック板、金属板等であってもよい。
【0040】
本ステップS1は、電極アレイCArが形成される工程を含んでもよい。電極アレイCArの形成には例えば蒸着法が用いられる。電極アレイCArを構成するアノードCaの材料には例えば酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。
【0041】
また、本ステップS1は、画素定義層PDLが形成される工程を含んでもよい。画素定義層PDLはレジストを用いたリソグラフィ処理(例えばフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ処理等)によって形成される。なお、画素定義層PDLは、電極アレイCArのアノードCaそれぞれの一部が露出するように形成される。
【0042】
(ステップS2)
次いで、
図4(B)に示すように、電極アレイCArの全体を覆うように、特定の種類の、発光層を含む有機EL層ELが形成される。
【0043】
具体的には、例えば、特定の色の有機EL層ELが形成され、より具体的には、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のうちの特定の1色について、有機EL層が形成される。
有機EL層ELは連続膜として形成される。また、有機EL層ELは、発光層以外に電子輸送層等の他の層を有していてもよい。有機EL層ELの発光層は、電極から電子及び正孔が注入されることが可能であり、注入された電荷が移動して正孔と電子が再結合して発光する有機発光物質が材料として用いられる。有機EL層ELの形成手法や材料には公知のものを用いることができる。有機EL層ELの厚さは例えば0.1μm~0.5μmである。
【0044】
また、本ステップS2では、有機EL層EL全体を覆うように、当該有機EL層EL上に重ねて、カソードCcが形成される。
カソードCcは、有機EL層ELと同様、連続膜として形成される。カソードCcの形成には例えば蒸着法が用いられる。カソードCcの材料には公知のものを用いることができる。カソードCcの厚さは例えば0.01μm~0.1μmである。
【0045】
(ステップS3)
続いて、
図4(C)に示すように、有機EL層ELの全体を覆うように、仮封止膜としての第1無機絶縁膜ZI1が形成される。具体的には、有機EL層EL及びカソードCcを封止するように、第1無機絶縁膜ZI1が形成される。
【0046】
第1無機絶縁膜ZI1は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)及び酸化窒化シリコン(SiON)のいずれか又はこれらの組み合わせにより形成される。また、第1無機絶縁膜ZI1は、基板Gの表面全面に形成されている。第1無機絶縁膜ZI1の厚さは、例えば0.1μm~1.5μmである。
【0047】
(ステップS4)
その後、
図4(D)に示すように、仮封止膜上(本例では第1無機絶縁膜ZI1上)に第1マスクPRM1が形成される。
【0048】
第1マスクPRM1は、リソグラフィ処理用のレジストから形成され、具体的には、例えば、フォトリソグラフィ用のフォトレジストから形成される。
第1マスクPRM1の形成は、例えば、仮封止膜すなわち第1無機絶縁膜ZI1を覆うようにレジスト膜を形成した後、当該レジスト膜を露光、現像することにより行われる。第1マスクPRM1は、第1無機絶縁膜ZI1のうち、特定の種類(具体的には例えばR、G、Bのうちの特定の1色)にかかるアノードCaに対応する部分を覆い、それ以外のアノードCaに対応する部分を露出させる。
また、第1マスクPRM1は、有機EL層よりも厚く、例えば、厚さが0.5μm~2.5μmである。
【0049】
(ステップS5)
次いで、
図4(E)に示すように、第1マスクPRM1が用いられ、積層体が配列された積層体アレイLaが形成される。上記積層体は、仮封止膜としての第1無機絶縁膜ZI1及び有機EL層ELが積層されたものであり、具体的には、カソードCc、有機EL層EL及び第1無機絶縁膜ZI1が下からこの順で積層されたものである。また、積層体アレイLaは、電極アレイCArを構成するアノードCaのうち、特定の種類(具体的には例えばR、G、Bのうちの特定の1色)に対応するアノードCa上にのみ、上記積層体が形成されてなる。
【0050】
本ステップS5では、具体的には、基板処理装置1により、第1マスクPRM1を介して、仮封止膜(本例では第1無機絶縁膜ZI1)、カソードCc及び有機EL層ELが除去される。
【0051】
より具体的には、例えば、ステップS4後の基板Gすなわち第1マスクPRM1が形成された基板Gが、搬送機構20の搬送アーム20aによって、キャリアCから取り出されると共に、ゲートバルブG2が開状態とされる。その後、基板Gが、搬送アーム20aによって、ロードロックモジュール12内(具体的にはロードロック室13内)に搬入される。続いて、ゲートバルブG2が閉状態とされてロードロック室13内が密閉され、減圧される。ロードロック室13内の圧力が所定の圧力以下となると、ゲートバルブG1が開状態とされ、基板Gが、搬送機構32の搬送アーム32aによって、ロードロック室13から取り出され、真空搬送室31に搬入される。次に、ゲートバルブG1が閉状態とされた後、所望の処理モジュール40に対するゲートバルブG3が開状態とされる。続いて、搬送アーム32aによって当該処理モジュール40内(具体的には真空処理室41内)に基板Gが搬入され、載置台130の台本体131の上面上に載置される。その後、ゲートバルブG3が閉状態とされる。そして、処理空間K1内が予め定められた圧力になるまで、排気部150による処理空間K1の排気が行われる。
【0052】
次いで、第1マスクPRM1を介して第1無機絶縁膜ZI1が除去される。
具体的には、例えば、排気部150による処理空間K1の排気を継続した状態で、処理ガスとして無機絶縁膜用のエッチングガスが、エッチングガス供給ユニット200から、拡散室122及びガス吐出孔121を介して処理空間K1内に供給される。その後、処理空間K1内が所望の圧力になると、高周波電源143から高周波アンテナ190に高周波電力が供給され、これにより、金属窓120を介して処理空間K1内に誘導電界が生じる。また、誘導電界によって、処理空間K1内のエッチングガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、高周波電源141から載置台130の台本体131に供給されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに引き込まれる。その結果、第1マスクPRM1を介して第1無機絶縁膜ZI1が除去される。
【0053】
なお、この除去すなわちエッチングは、例えば、第1無機絶縁膜ZI1における第1マスクPRM1から露出した部分が消失するまで行われる。
第1無機絶縁膜ZI1の除去の終了後、高周波電源141、143からの電力供給、エッチングガス供給ユニット200からのエッチングガスの供給が停止されると共に、処理空間K1のパージが行われる。
【0054】
続いて、第1マスクPRM1を介してカソードCcが除去される。
具体的には、例えば、排気部150による処理空間K1の排気を継続した状態で、処理ガスとしてカソード用のエッチングガスが、エッチングガス供給ユニット201から、拡散室122及びガス吐出孔121を介して処理空間K1内に供給される。その後、処理空間K1内が所望の圧力になると、高周波電源143から高周波アンテナ190に高周波電力が供給され、これにより、金属窓120を介して処理空間K1内に誘導電界が生じる。また、誘導電界によって、処理空間K1内のエッチングガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、高周波電源141から載置台130の台本体131に供給されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに引き込まれる。その結果、第1マスクPRM1を介してカソードCcが除去される。
【0055】
なお、この除去すなわちエッチングは、カソードCcにおける第1マスクPRM1から露出した部分が消失するまで行われる。
カソードCcの除去の終了後、高周波電源141、143からの電力供給、エッチングガス供給ユニット201からのエッチングガスの供給が停止されると共に、処理空間K1のパージが行われる。
【0056】
その後、第1マスクPRM1を介して有機EL層ELが除去され、積層体アレイLaが形成される。
具体的には、例えば、排気部150による処理空間K1の排気を継続した状態で、処理ガスとして有機EL層用のエッチングガスが、エッチングガス供給ユニット202から、拡散室122及びガス吐出孔121を介して処理空間K1内に供給される。その後、処理空間K1内が所望の圧力になると、高周波電源143から高周波アンテナ190に高周波電力が供給され、これにより、金属窓120を介して処理空間K1内に誘導電界が生じる。また、誘導電界によって、処理空間K1内のエッチングガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、高周波電源141から載置台130の台本体131に供給されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに引き込まれる。その結果、第1マスクPRM1を介して有機EL層ELが除去され、積層体アレイLaが形成される。
【0057】
なお、この除去すなわちエッチングは、有機EL層ELにおける第1マスクPRM1から露出した部分が消失するまで行われる。
有機EL層ELの除去の終了後、高周波電源141、143からの電力供給、エッチングガス供給ユニット202からのエッチングガスの供給が停止されると共に、処理空間K1のパージが行われる。
【0058】
また、有機EL層ELの除去すなわち積層体アレイLaの形成が終了した段階では、積層体アレイLaを構成する積層体それぞれにおいて、有機EL層EL及びカソードCcの側端は第1無機絶縁膜ZI1等によって覆われておらず、露出している。
【0059】
(ステップS6)
続いて、
図5(A)に示すように、第1マスクPRM1が除去される。
具体的には、基板GがステップS5後に大気に暴露されることなく、ステップS5を行った基板処理装置1により、第1マスクPRM1が除去される。
【0060】
より具体的には、例えば、排気部150による処理空間K1の排気を継続した状態で、処理ガスとしてレジストのマスク用のアッシングガスが、アッシングガス供給ユニット203から、拡散室122及びガス吐出孔121を介して処理空間K1内に供給される。その後、処理空間K1内が所望の圧力になると、高周波電源143から高周波アンテナ190に高周波電力が供給され、これにより、金属窓120を介して処理空間K1内に誘導電界が生じる。また、誘導電界によって、処理空間K1内のエッチングガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオンやラジカルにより、第1マスクPRM1を介して第1マスクPRM1が除去される。
【0061】
なお、この除去すなわちアッシングは、第1マスクPRM1が消失するまで行われる。
第1マスクPRM1の除去の終了後、高周波電源141からの電力供給、アッシングガス供給ユニット203からのアッシングガスの供給が停止されると共に、処理空間K1のパージが行われる。
【0062】
(ステップS7)
その後、
図5(B)に示すように、積層体アレイLaの全体を覆うように、第2無機絶縁膜ZI2が形成される。
具体的には、基板GがステップS5後に大気に暴露されることなく、ステップS5及びステップS6を行った基板処理装置1によって、積層体アレイLaを構成する積層体それぞれを封止するように、第2無機絶縁膜ZI2がCVD法により形成される。これにより、積層体アレイLaを構成する積層体の、露出していた有機EL層EL及びカソードCcの側端が、第2無機絶縁膜ZI2によって覆われる。
【0063】
第2無機絶縁膜ZI2は、連続膜として形成される。また、第2無機絶縁膜ZI2は、例えば、第1無機絶縁膜ZI1と同様、SiN、SiO及びSiONのいずれか又はこれらの組み合わせにより形成される。
【0064】
本ステップS7では、具体的には、例えば、排気部150による処理空間K1の排気を継続した状態で、処理ガスとして無機絶縁膜用の成膜ガスが、成膜ガス供給ユニット204から、拡散室122及びガス吐出孔121を介して処理空間K1内に供給される。その後、処理空間K1内が所望の圧力になると、高周波電源143から高周波アンテナ190に高周波電力が供給され、これにより、金属窓120を介して処理空間K1内に誘導電界が生じる。また、誘導電界によって、処理空間K1内の成膜ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、高周波電源141から載置台130の台本体131に供給されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに引き込まれる。その結果、基板Gの表面全面に第2無機絶縁膜ZI2が形成される。
【0065】
第2無機絶縁膜ZI2の形成は、所望の厚さの第2無機絶縁膜ZI2が形成されるまで行われる。
第2無機絶縁膜ZI2の形成の終了後、高周波電源141、143からの電力供給、成膜ガス供給ユニット204からの成膜ガスの供給が停止されると共に、処理空間K1のパージが行われる。
その後、基板Gが搬出される。
具体的には、処理モジュール40への基板Gの搬入時と逆の手順で、処理モジュール40からキャリア載置台21上のキャリアCへ基板Gが搬出される。
【0066】
なお、上述のステップS5~ステップS7は、制御部50の制御の下、行われる。
【0067】
(ステップS8)
次いで、
図5(C)に示すように、第2無機絶縁膜ZI2上に第2マスクPRM2が形成される。
【0068】
第2マスクPRM2は、リソグラフィ処理用のレジストから形成され、具体的には、例えば、フォトリソグラフィ用のフォトレジストから形成される。
第2マスクPRM2の形成は、例えば、第2無機絶縁膜ZI2を覆うようにレジスト膜を形成した後、当該レジスト膜を露光、現像することにより行われる。第2マスクPRM2は、第1マスクPRM1と同様、第2無機絶縁膜ZI2のうち、特定の種類(具体的には例えばR、G、Bのうちの特定の1色)にかかるアノードCaに対応する部分を覆い、それ以外のアノードCaに対応する部分を露出させる。
【0069】
(ステップS9)
続いて、
図5(D)に示すように、第2マスクPRM2が用いられ、特定の種類にかかるアノードCa以外のアノードCaに対応する部分の第2無機絶縁膜ZI2が除去される。この除去は、特定の種類にかかるアノードCaに対応する部分上に形成された積層体が露出しないように行われる。すなわち、ステップS7で第2無機絶縁膜ZI2により覆った、積層体アレイLaを構成する積層体の有機EL層EL及びカソードCcの側端が、再び露出しないように、第2無機絶縁膜ZI2の除去は行われる。
【0070】
なお、この除去すなわちエッチングは、第2無機絶縁膜ZI2における第2マスクPRM2から露出した部分が消失するまで行われる。
【0071】
(ステップS10)
その後、
図5(E)に示すように、第2マスクPRM2が除去される。
【0072】
そして、上述のステップS2~ステップS10は、有機EL層にかかる複数の種類それぞれについて、行われる。
具体的には、例えば、上述のステップS2~ステップS10が、Rについて行われた後、G、Bそれぞれについて順に行われる。
これにより、各種類の有機EL層ELが、対応するアノードCa上に形成され、且つ、封止される。
【0073】
<本実施形態の主な効果>
以上の基板処理シーケンスにしたがって形成された有機EL層ELは、封止され周囲に対して露出しない。そのため、以上の基板処理シーケンスによれば、形成された有機EL層ELが、他の種類の有機EL層ELをその後に形成する際及び封止する際に、周囲の影響で劣化するのを抑制することができる。具体的には、例えば、先に形成されたRの有機EL層が、G、Bの有機EL層をその後に形成する際及び封止する際に、基板Gが曝される大気中の水分や第1マスクPRM1の形成時の現像液等の影響で劣化するのを抑制することができる。
また、以上の基板処理シーケンスによれば、ステップS5の有機EL層ELのエッチング後、すなわち、有機EL層ELを含む積層体アレイLaの形成後、基板Gが大気に曝されることなく、同一の基板処理装置1内で、ステップS7の第2無機絶縁膜ZI2の形成を行うことができる。そのため、積層体アレイLaの形成後、当該積層体アレイLaの封止までの間に、当該積層体アレイLaを構成する積層体の有機EL層ELが、大気中の水分等の影響で劣化するのを抑制することができる。
そして、以上の基板処理シーケンスではファインメタルマスクが用いられていない。
すなわち、本実施形態によれば、ファインメタルマスクを用いずに有機EL層ELを適切に形成することができる。
【0074】
また、特許文献2に開示の手法は、適用可能な有機EL層の材料が限定されるが、本実施形態にかかる基板処理シーケンスは、有機EL層の材料によらず適用することができる。
さらに、特許文献3に開示のようにオーバーハング構造を用いる場合、制御が困難なオーバーハング量を適切にする必要がある。それに対し、基板処理シーケンスは、オーバーハング構造のような複雑な構造が必要ないため、容易に行うことができる。
【0075】
(仮封止膜の他の例)
以上の例では、仮封止膜は、第1無機絶縁膜ZI1の1層から構成されていたが、複数層から構成されていてもよい。
図6及び
図7は、基板処理シーケンスの各工程後における基板Gの状態を示す模式部分断面図であって、仮封止膜が複数層から構成される場合の状態を示している。
【0076】
この場合も、例えば、前述の例の基板処理シーケンスのステップS1及びステップS2が行われ、基板G上に有機EL層EL及びカソードCcが形成される。
【0077】
続いて、例えば、
図6(A)に示すように、有機EL層ELの全体を覆うように、仮封止膜として、第1無機絶縁膜ZI1、有機絶縁膜ZO及び第3無機絶縁膜ZI3が下からこの順で積層された膜(以下、積層封止膜LS)が形成される。
【0078】
有機絶縁膜ZOは、例えば、湿式成膜法により形成され、具体的には、インクジェット法により形成され、より具体的には、インクジェット装置により材料の液滴を吐出して、硬化させることにより、形成される。有機絶縁膜ZOは、例えばアクリル及びポリウレアのいずれか又はこれらの組み合わせにより形成される。有機絶縁膜ZOは、有機EL層より厚く、例えば厚さが例えば8μm~10μmである。また、有機絶縁膜ZOは、その上面が平坦になるように形成される。
【0079】
第3無機絶縁膜ZI3は、例えば、第1無機絶縁膜ZI1と同様、SiN、SiO及びSiONのいずれか又はこれらの組み合わせにより形成される。第3無機絶縁膜ZI3の厚さは例えば0.1μm~1.5μmである。
【0080】
また、有機絶縁膜ZO及び第3無機絶縁膜ZI3は、第1無機絶縁膜ZI1と同様、基板Gの表面塩面に形成されている。
【0081】
その後、例えば、
図6(B)に示すように、前述のステップS4と同様、仮封止膜上(本例では上記積層封止膜上)に第1マスクPRM1が形成される。
【0082】
次いで、
図6(C)に示すように、前述のステップS5と同様、第1マスクPRM1が用いられ、積層体が配列された積層体アレイLaaが形成される。上記積層体は、仮封止膜としての積層封止膜LS及び有機EL層ELが積層されたものであり、具体的には、有機EL層EL、カソードCc及び積層封止膜LSが下からこの順で積層されたものである。また、積層体アレイLaaは、電極アレイCArを構成するアノードCaのうち、特定の種類(具体的には例えばR、G、Bのうちの特定の1色)に対応するアノードCa上にのみ、上記積層体が形成されてなる。
【0083】
この工程では、具体的には、基板処理装置1により、第1マスクPRM1を介して、仮封止膜(本例では積層封止膜LS)、カソードCc及び有機EL層ELが除去される。なお、第1マスクPRM1は、フォトリソグラフィ用のフォトレジストから形成されたもの以外に、CVD法による無機絶縁膜によるマスクでもよく、またフォトレジストと無機絶縁膜を組み合わせたものでもよい。
【0084】
続いて、
図6(D)に示すように、前述のステップS6と同様、第1マスクPRM1が除去される。
【0085】
その後、
図7(A)に示すように、前述のステップS7と同様、積層体アレイLaaの全体を覆うように、第2無機絶縁膜ZI2が形成される。
具体的には、積層体アレイLaaの形成後に基板Gが大気に暴露されることなく、積層体アレイLaaの形成等を行った基板処理装置1により、第2無機絶縁膜ZI2が形成される。
【0086】
次いで、
図7(B)に示すように、前述のステップS8と同様、第2無機絶縁膜ZI2上に第2マスクPRM2が形成される。
【0087】
続いて、
図7(C)に示すように、前述のステップS9と同様、第2マスクPRM2が用いられ、特定の種類にかかるアノードCa以外のアノードCaに対応する部分の第2無機絶縁膜ZI2が除去される。この除去は、特定の種類にかかるアノードCaに対応する部分上に形成された積層体が露出しないように行われる。
また、前述のステップS10と同様、第2マスクPRM2が除去される。
【0088】
(積層体アレイLaの形成工程の他の例)
図8は、積層体アレイLaの形成工程の他の例を説明するための図である。
以上の例では、第1マスクPRM1を用いた積層体アレイLaの形成時に、第1マスクPRM1を介した第1無機絶縁膜ZI1の除去を当該第1無機絶縁膜ZI1における第1マスクPRM1から露出した部分が消失するまで行われていたが、以下のようにしてもよい。
【0089】
すなわち、例えば、まず、
図8(A)に示すように、第1マスクPRM1を介した第1無機絶縁膜ZI1の除去が、第1無機絶縁膜ZI1における第1マスクPRM1から露出した部分の一部が残るよう行われる。すなわち、第1マスクPRM1を介して、特定の種類にかかるアノードCa以外のアノードCaに対応する部分の仮封止膜が、その一部が残るよう除去される。
【0090】
次いで、
図8(B)に示すように、前述のステップS6と同様、第1マスクPRM1が、アッシングにより除去される。
【0091】
続いて、
図8(C)に示すように、特定の種類にかかるアノードCaに対応する部分を含む第1無機絶縁膜ZI1全体がエッチングされる。
このエッチングは、特定の種類にかかるアノードCa以外のアノードCaに対応する部分の第1無機絶縁膜ZI1が消失するまで行われる。
【0092】
その後、
図8(D)に示すように、残った第1無機絶縁膜ZI1をマスクとして、カソードCc及び有機EL層ELが除去され、積層体アレイLaが形成される。
【0093】
すなわち、第1マスクPRM1のアッシング後、特定の種類にかかるアノードCa以外のアノードCaに対応する部分について、一部残った第1無機絶縁膜ZI1、カソードCc及び有機EL層ELが除去され、積層体アレイLaが形成される。
【0094】
このように積層体アレイLaが形成されることにより、第1マスクPRM1のアッシング時に有機EL層ELが損傷するのを抑制することができる。また、第1マスクPRM1のアッシング時にカソードCcが損傷するのを抑制することができる。
【0095】
(変形例)
以上の例では、積層体アレイの形成及び第2無機絶縁膜の形成を、1つの処理モジュール40で行っていたが、一部を他の1または複数の処理モジュール40で行ってもよい。例えば、積層体アレイの形成及び第2無機絶縁膜の形成に含まれる各工程を、別々の処理モジュール40で行ってもよい。
ただし、積層体アレイの形成及び第2無機絶縁膜の全工程を、1つの処理モジュール40で行うことにより、すなわち、1つの真空処理室41で行うことにより、工程間で基板Gを搬送する必要がなくなる。そのため、新規な工程を導入することによる生産性の低下や搬送時における基板Gへの異物の付着を抑制することができる。
【0096】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0097】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0098】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)(A)複数の電極が配列された電極アレイが基板表面上に形成された基板を準備する工程と、
(B)前記電極アレイの全体を覆うように特定の種類の発光層を形成する工程と、
(C)前記発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜を形成する工程と、
(D)前記仮封止膜上に第1マスクを形成する工程と、
(E)前記仮封止膜及び前記発光層が積層された積層体が前記特定の種類にかかる前記電極上にのみ形成された積層体アレイを、前記第1マスクを用いて形成する工程と、
(F)その後、前記積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する工程と、
(G)前記第2無機絶縁膜上に第2マスクを形成する工程と、
(H)前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分の前記第2無機絶縁膜を、前記第2マスクを用いて、前記積層体アレイが露出しないように除去する工程と、を含み、
前記(B)~前記(H)工程を、前記発光層にかかる複数種類について行う、基板処理方法。
(2)前記複数種類は、3種類である、前記(1)に記載の基板処理方法。
(3)前記複数種類は、赤色、緑色及び青色である、前記(1)または(2)に記載の基板処理方法。
(4)前記(E)工程後、前記基板を大気に曝さずに、前記(F)工程を行う、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の基板処理方法。
(5)前記第1マスクは、フォトレジストのマスクである、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の基板処理方法。
(6)前記仮封止膜は、前記第1無機絶縁膜、有機絶縁膜及び第3無機絶縁膜が下から順に積層されたものである、前記(1)~(5)のいずれか1に記載の基板処理方法。
(7)前記有機絶縁膜は、前記発光層よりも厚い、前記(6)に記載の基板処理方法。
(8)前記(E)工程は、
(a)前記第1マスクを介して、前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分の前記仮封止膜をその一部が残るよう除去する工程と、
(b)その後、前記第1マスクをアッシングする工程と、
(c)その後、前記特定の種類にかかる前記電極以外の前記電極に対応する部分について、前記残った前記仮封止膜及び前記発光層を除去する工程と、を含む、前記(1)~(5)のいずれか1に記載の基板処理方法。
(9)基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板は、
複数の電極が配列された電極アレイがベース基板の上面に形成されたものであり、
前記電極アレイの全体を覆うように特定の種類の発光層が形成され、
前記発光層の全体を覆う第1無機絶縁膜を含む仮封止膜が形成され、
前記仮封止膜上にマスクが形成されており、
前記仮封止膜及び前記発光層が積層された積層体が前記特定の種類にかかる前記電極上にのみ形成された積層体アレイを、前記マスクを用いて形成する除去部と、
前記積層体アレイの全体を覆うように第2無機絶縁膜を形成する成膜部と、を備える、基板処理装置。
【符号の説明】
【0099】
1 基板処理装置
40 処理モジュール
Ca アノード
CAr 電極アレイ
EL 有機EL層
G 基板
La、Laa 積層体アレイ
LS 積層封止膜
PRM1 第1マスク
PRM2 第2マスク
ZI1 第1無機絶縁膜
ZI2 第2無機絶縁膜