(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098708
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240717BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240717BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240717BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
H01L21/68 R
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002342
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】山村 崇志
(72)【発明者】
【氏名】楊 竣翔
(72)【発明者】
【氏名】濱 康孝
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030FA02
4K030FA03
4K030FA04
4K030GA02
4K030KA02
4K030KA20
4K030KA23
4K030KA41
4K030KA45
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
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5F045AA08
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5F131BA04
5F131BA19
5F131CA18
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB72
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】静電チャックにおける基板の位置ずれを低減する技術を提供する。
【解決手段】本開示に係るプラズマ処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された基板支持部であって、基板支持部は基板を支持する基板支持面及び基板を基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、静電電極に印加する電圧を生成する電源と、チャンバ内において、基板支持面に対する基板の高さを制御するリフタと、制御部とを備え、制御部は、チャンバ内において基板支持面の上方に搬送された基板を、リフタによって基板支持面の上方の第1の高さにおいて支持する制御と、リフタによって基板を第1の高さから第2の高さに移動する制御であって、第2の高さは第1の高さと基板支持面との間にある、移動する制御と、基板が第2の高さにある状態で、電源によって静電電極に第1の電圧を印加する制御と、リフタによって、基板を第2の高さから移動して基板支持面に配置する制御とを実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記チャンバ内において前記基板支持面の上方に搬送された基板を、前記リフタによって前記基板支持面の上方の第1の高さにおいて支持する制御と、
前記リフタによって前記基板を前記第1の高さから第2の高さに移動する制御であって、前記第2の高さは前記第1の高さと前記基板支持面との間にある、移動する制御と、
前記基板が前記第2の高さにある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記第2の高さから移動して前記基板支持面に配置する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部を更に備え、
前記制御部は、前記基板が前記第2の高さにある状態で、前記プラズマ生成部によって前記チャンバ内にプラズマを生成する制御を更に実行する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記プラズマを生成する制御は、前記基板支持部にソースRF信号を供給する制御を含む、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板支持部に前記ソースRF信号が供給された状態で、前記静電電極に前記第1の電圧を印加する制御を実行する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記基板が前記基板支持部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも高い、印加する制御
を更に実行する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記静電電極に前記第2の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、前記伝熱媒体は前記基板と前記基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御
を更に実行する、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記基板が前記基板支持部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第3の電圧を印加する制御であって、前記第3の電圧は前記第2の電圧よりも高い、印加する制御
を更に実行する、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記静電電極に前記第2の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、前記伝熱媒体は前記基板と前記基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御と、
前記静電電極に前記第3の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間の圧力を調整する制御であって、前記圧力が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力となるように前記伝熱媒体が供給される、圧力を調整する制御と
を更に実行する、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記基板を前記基板支持面に配置する制御において、前記チャンバ内の圧力を10mTorr~300mTorrに制御する、請求項1から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第2の高さは、前記基板支持面から、0.1mm~3.0mmの高さである、請求項1から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1の電圧の絶対値は50V~500Vである、請求項1から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の電圧、前記第2の電圧及び前記第3の電圧はいずれも正の電圧であるか、又はいずれも負の電圧であり、
前記第1の電圧の絶対値は50V~500Vであり、前記第2の電圧の絶対値は100V~1,000Vであり、前記第3の電圧の絶対値は500V~3,000Vである、請求項5から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記リフタによって、前記チャンバ内において、前記基板支持面の上方において前記基板を支持する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記プラズマ生成部によって前記チャンバ内にプラズマを生成する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記基板支持面の上方から移動して前記基板支持面に配置する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【請求項14】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記リフタによって、前記チャンバ内において、前記基板支持面の上方において前記基板を支持する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記基板支持面の上方から前記基板支持面に配置する制御と
前記基板が前記部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも高い、印加する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックの吸着力を維持する技術として、特許文献1に記載された静電チャックがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、静電チャックにおける基板の位置ずれを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された基板支持部であって、基板支持部は基板を支持する基板支持面及び基板を基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、静電電極に印加する電圧を生成する電源と、チャンバ内において、基板支持面に対する基板の高さを制御するリフタと、制御部とを備え、制御部は、チャンバ内において基板支持面の上方に搬送された基板を、リフタによって基板支持面の上方の第1の高さにおいて支持する制御と、リフタによって基板を第1の高さから第2の高さに移動する制御であって、第2の高さは第1の高さと基板支持面との間にある、移動する制御と、基板が第2の高さにある状態で、電源によって静電電極に第1の電圧を印加する制御と、リフタによって、基板を第2の高さから移動して基板支持面に配置する制御とを実行する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、静電チャックにおける基板の位置ずれを低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
【
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図3】基板処理システムPSを概略的に示す図である。
【
図4】プラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】プラズマ処理方法における動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】プラズマ処理方法の一工程におけるプラズマ処理チャンバ10の内部の状態を模式的に示した図である。
【
図7】プラズマ処理方法の一工程におけるプラズマ処理チャンバ10の内部の状態を模式的に示した図である。
【
図8】プラズマ処理方法の一工程におけるプラズマ処理チャンバ10の内部の状態を模式的に示した図である。
【
図9】プラズマ処理方法の一工程におけるプラズマ処理チャンバ10の内部の状態を模式的に示した図である。
【
図10】プラズマ処理方法の一工程におけるプラズマ処理チャンバ10の内部の状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された基板支持部であって、基板支持部は基板を支持する基板支持面及び基板を基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、静電電極に印加する電圧を生成する電源と、チャンバ内において、基板支持面に対する基板の高さを制御するリフタと、制御部とを備え、制御部は、チャンバ内において基板支持面の上方に搬送された基板を、リフタによって基板支持面の上方の第1の高さにおいて支持する制御と、リフタによって基板を第1の高さから第2の高さに移動する制御であって、第2の高さは第1の高さと基板支持面との間にある、移動する制御と、基板が第2の高さにある状態で、電源によって静電電極に第1の電圧を印加する制御と、リフタによって、基板を第2の高さから移動して基板支持面に配置する制御とを実行する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部を更に備え、制御部は、基板が第2の高さにある状態で、プラズマ生成部によってチャンバ内にプラズマを生成する制御を更に実行する。
【0011】
一つの例示的実施形態において、プラズマを生成する制御は、基板支持部にソースRF信号を供給する制御を含む。
【0012】
一つの例示的実施形態において、制御部は、基板支持部にソースRF信号が供給された状態で、静電電極に第1の電圧を印加する制御を実行する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、制御部は、基板が基板支持部に配置された状態で、電源によって静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、第2の電圧は第1の電圧よりも高い、印加する制御を更に実行する。
【0014】
一つの例示的実施形態において、制御部は、静電電極に第2の電圧が印加された状態で、基板と基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、伝熱媒体は基板と基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御を更に実行する。
【0015】
一つの例示的実施形態において、制御部は、基板が基板支持部に配置された状態で、電源によって静電電極に第3の電圧を印加する制御であって、第3の電圧は第2の電圧よりも高い、印加する制御を更に実行する。
【0016】
一つの例示的実施形態において、制御部は、静電電極に第2の電圧が印加された状態で、基板と基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、伝熱媒体は基板と基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御と、静電電極に第3の電圧が印加された状態で、基板と基板支持面との間の圧力を調整する制御であって、圧力が第1の圧力よりも高い第2の圧力となるように伝熱媒体が供給される、圧力を調整する制御とを更に実行する。
【0017】
一つの例示的実施形態において、制御部は、基板を基板支持面に配置する制御において、チャンバ内の圧力を10mTorr~300mTorrに制御する。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第2の高さは、基板支持面から、0.1mm~3.0mmの高さである。
【0019】
一つの例示的実施形態において、第1の電圧の絶対値は50V~500Vである。
【0020】
一つの例示的実施形態において、第1の電圧、第2の電圧及び第3の電圧はいずれも正の電圧であるか、又はいずれも負の電圧であり、第1の電圧の絶対値は50V~500Vであり、第2の電圧の絶対値は100V~1,000Vであり、第3の電圧の絶対値は500V~3,000Vである。
【0021】
一つの例示的実施形態において、基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された基板支持部であって、基板支持部は基板を支持する基板支持面及び基板を基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、静電電極に印加する電圧を生成する電源と、チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、チャンバ内において、基板支持面に対する基板の高さを制御するリフタと、制御部とを備え、制御部は、リフタによって、チャンバ内において、基板支持面の上方において基板を支持する制御と、基板が基板支持面の上方にある状態で、電源によって静電電極に第1の電圧を印加する制御と、基板が基板支持面の上方にある状態で、プラズマ生成部によってチャンバ内にプラズマを生成する制御と、リフタによって、基板を基板支持面の上方から移動して基板支持面に配置する制御とを実行する。
【0022】
一つの例示的実施形態において、基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された基板支持部であって、基板支持部は基板を支持する基板支持面及び基板を基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、静電電極に印加する電圧を生成する電源と、チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、チャンバ内において、基板支持面に対する基板の高さを制御するリフタと、制御部とを備え、制御部は、リフタによって、チャンバ内において、基板支持面の上方において基板を支持する制御と、基板が基板支持面の上方にある状態で、電源によって静電電極に第1の電圧を印加する制御と、リフタによって、基板を基板支持面の上方から基板支持面に配置する制御と基板が部に配置された状態で、電源によって静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、第2の電圧は第1の電圧よりも高い、印加する制御とを実行する。
【0023】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
<プラズマ処理システムの構成>
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0025】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0026】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0027】
<プラズマ処理装置の構成>
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0028】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0029】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0030】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0031】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0032】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0033】
また、基板支持部11及びプラズマ処理チャンバ10の底壁10bには、基板支持部11及び底壁10bを貫通する貫通孔50が設けられている。貫通孔50は、基板支持部11及び底壁10bに複数設けられてよい。本実施形態において、基板支持部11及び底壁10bに、3つの貫通孔50が設けられている。貫通孔50のそれぞれの内部には、リフタ60が設けられている。リフタ60は、アクチュエータ70に接続されており、アクチュエータ70によって貫通孔50の内部を、
図2に示すZ方向に上昇又は下降できるように構成されている。また、アクチュエータ70がリフタ60を上昇させると、リフタ60の先端は基板支持部11の中央領域111aから突出する。これにより、リフタ60は、基板支持部11から所定の距離に基板を移動し、所定の位置で基板を保持することができる。他方で、アクチュエータ70がリフタ60を下降させると、リフタ60の先端は基板支持部11に収容される。これにより、リフタ60の先端に保持された基板を、基板支持部11の中央領域111aに載置することができる。このように、アクチュエータ70は、リフタ60により、基板支持部11の中央領域111aに対する基板の距離又は位置を制御することができる。
【0034】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0035】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0036】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0037】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0038】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0039】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0040】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0041】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0042】
<基板処理システムPSの構成>
図3は、1つの例示的実施形態に係る基板処理システムPSを概略的に示す図である。基板処理システムPSは、基板処理モジュールPM1~PM6(以下、総称して「基板処理モジュールPM」ともいう。)と、搬送モジュールTMと、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2(以下、総称して「ロードロックモジュールLLM」ともいう。)と、ローダーモジュールLM、ロードポートLP1からLP3(以下、総称して「ロードポートLP」ともいう。)とを有する。制御部CTは、基板処理システムPSの各構成を制御して、基板Wに所定の処理を実行する。
【0043】
基板処理モジュールPMは、その内部において、基板Wに対して、エッチング処理、トリミング処理、成膜処理、アニール処理、ドーピング処理、リソグラフィ処理、クリーニング処理、アッシング処理等の処理を実行する。基板処理モジュールPMの一部は、測定モジュールであってよく、基板W上に形成された層の厚さや、基板W上に形成されたパターンの寸法等を測定してもよい。
図1に示すプラズマ処理装置1は、基板処理モジュールPMの一例である。
【0044】
搬送モジュールTMは、基板Wを搬送する搬送装置を有し、基板処理モジュールPM間又は基板処理モジュールPMとロードロックモジュールLLMとの間で、基板Wを搬送する。基板処理モジュールPM及びロードロックモジュールLLMは、搬送モジュールTMに隣接して配置されている。搬送モジュールTMと基板処理モジュールPM及びロードロックモジュールLLMは、開閉可能なゲートバルブによって空間的に隔離又は連結される。当該ゲートバルブの一例は、
図2に示すゲートバルブ85である。本実施形態において、搬送モジュールTMに含まれる搬送装置は、搬送モジュールTMから、基板処理モジュールPMの一例であるプラズマ処理装置1(
図2参照)のプラズマ処理空間10sに、基板Wを搬送する。当該搬送装置は、
図2に示すX方向に基板Wを移動して、基板支持部11とシャワーヘッド13との間における、基板支持部11に対向する位置に基板Wを位置させる。一例として、当該搬送装置は、シリコンウェハ等の基板を搬送するハンドラであってよい。
【0045】
ロードロックモジュールLLM1及びLLM2は、搬送モジュールTMとローダーモジュールLMとの間に設けられている。ロードロックモジュールLLMは、その内部の圧力を、大気圧又は真空に切り替えることができる。ロードロックモジュールLLMは、大気圧であるローダーモジュールLMから真空である搬送モジュールTMへ基板Wを搬送し、また、真空である搬送モジュールTMから大気圧であるローダーモジュールLMへ搬送する。
【0046】
ローダーモジュールLMは、基板Wを搬送する搬送装置を有し、ロードロックモジュールLLMとロードポートLPとの間で基板Wを搬送する。ロードポートLP内の内部には、例えば25枚の基板Wが収納可能なFOUP(Front Opening Unified Pod)または空のFOUPが載置できる。ローダーモジュールLMは、ロードポートLP内のFOUPから基板Wを取り出して、ロードロックモジュールLLMに搬送する。また、ローダーモジュールLMは、ロードロックモジュールLLMから基板Wを取り出して、ロードポートLP内のFOUPに搬送する。複数のロードポートLPのうち少なくとも1つは、ダミー基板を収納するFOUPを有してもよい。
【0047】
制御部CTは、基板処理システムPSの各構成を制御して、基板Wに所定の処理を実行する。制御部CTは、プロセスの手順、プロセスの条件、搬送条件等が設定されたレシピを格納しており、当該レシピに従って、基板Wに所定の処理を実行するように、基板処理システムPSの各構成を制御する。制御部CTは、
図1に示すプラズマ処理装置1の制御部2の一部又は全部の機能を兼ねてもよい。
【0048】
<プラズマ処理方法>
図4は、一実施形態に係るプラズマ処理方法(以下、単に「プラズマ処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。
図4に示すプラズマ処理方法は、基板Wをプラズマ処理チャンバ10内に搬入する工程(ST1)、基板Wを所定の位置に移動する工程(ST2)、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成する工程(ST3)、静電電極1111bに静電電圧を印加する工程(ST4)、基板Wを基板支持部11に載置する工程(ST5)、静電電圧を変化させる工程(ST6)、及び、基板Wをエッチングする工程(ST7)を有する。
図4の各工程に示す処理は、主に制御部2及び/又は制御部CTの制御に従ってプラズマ処理装置1及び/又は基板処理システムPSが動作することにより実現される。
【0049】
図5は、プラズマ処理方法における動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5は、
図2におけるZ方向における基板Wの位置、ソースRF信号の電力、及び、静電電圧の時間的変化を示す。また、
図6から
図10は、
図4に示す各工程における、プラズマ処理チャンバ10の内部の一部を模式的に示した図である。
図5から
図10を参照して、
図4に示すプラズマ処理方法について説明する。
【0050】
まず、時間t0において工程ST1が開始し、
図6に示すように、基板Wがプラズマ処理チャンバ10内に搬送される。一例として、
図3に示す搬送モジュールTMに含まれる搬送装置が、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wを搬入し得る。当該搬送装置は、
図3に示す搬送モジュールTMの内部空間から、
図2に示すゲートバルブ85を通って、プラズマ処理空間10sに基板Wを移動させて、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wを搬入する。当該搬送装置は、
図2に示すX方向に基板を水平移動させて、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wを搬入し得る。なお、
図6において搬送装置は図示を省略するが、一例として、搬送装置は、基板Wの裏面において基板Wを支持し、
図6に示すX方向に基板Wを移動し、X方向の所定の位置において基板Wを保持できるように構成されたハンドラであってよい。
【0051】
一実施形態において、搬送装置は、基板Wの一方の面がシャワーヘッド13に対向し、他方の面が基板支持部11に対向する位置において、基板Wを保持し得る(以下、当該一方の面を「表面」、当該他方の面を「裏面」ともいう。)。当該位置は、基板WをZ方向から見た場合に、シャワーヘッド13及び基板支持部11と重なる位置であってよい。また、搬送装置は、基板Wが基板支持部11の基板支持面と平行になるように、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wを搬入する。また、工程ST1において、搬送装置は、基板支持部11の基板支持面と基板Wの裏面との距離がH1となる高さにおいて、基板Wを保持し得る(以下、当該高さを「高さH1」ともいう。)。
【0052】
次に、時間t1において工程STが開始し、
図7及び
図8に示すように、リフタ60によって基板Wが所定の位置に移動する。一例として、まず、時間t1において、
図7に示すように、アクチュエータ70(
図2参照)がリフタ60を上昇させる。一例として、リフタ60は、先端を有するリフトピンであり得る。リフタ60が上昇すると、リフタ60は、搬送装置によって
図6に示す高さH1に保持された基板Wを、リフタ60の先端で保持し得る。このとき、リフタ60は、高さH1よりも基板支持面から離れた位置である高さH2で基板Wを保持してよい。一例として、搬送装置によって高さH1に保持された基板Wを、リフタ60が高さH2に持ち上げた後、搬送装置は、X方向に移動して、プラズマ処理チャンバ10から搬送モジュールTMに移動してよい。なお、高さH1及び高さH2は、第1の高さの一例である。
【0053】
リフタ60は、高さH2で基板Wを保持した後、基板Wを高さH3に移動する。高さH3は、基板支持面と高さH1又は高さH2との間の高さである。また、高さH3は、第2の高さの一例である。一実施形態において、高さH3は、基板支持面から0.1mm~3mmの高さであり得る。また、高さH3は、高さH1又は高さH2に対して0.5%~16%の高さであってよい。また、高さH3は、Z方向におけるシャワーヘッド13と基板支持面との間の距離の0.3%~7.5%であってよい。
【0054】
高さH3は、後述する工程ST3においてプラズマPが生成された状態で、基板Wとリングアセンブリ112が同電位となり得る高さであってよい。また、高さH3は、後述する工程ST3においてプラズマPが生成された状態で、基板W内で生じる電位差、例えば、基板Wの表面と裏面との間で生じる電位差が同電位となり得る高さであってもよい。当該同電位は、基板Wに形成された素子がダメージを受けない程度の電位差を含み得る。基板Wに形成された素子がダメージを受けることは、一例として、基板Wに形成されたMOSトランジスタのゲート絶縁膜がダメージを受けることを含む。
【0055】
次に、時間t3において工程ST3が開始し、
図9に示すように、プラズマPが生成される。一例として、基板Wが基板支持部11から高さH3にある状態において、基板Wの表面とシャワーヘッド13との間にプラズマPが生成される。プラズマPは、一例として、以下によって生成されてよい。すなわち、まず、ガス供給部20がプラズマ処理チャンバ10内にプラズマPを生成するためのガスを供給する。当該ガスは、一例として、アルゴン(Ar)等の不活性ガスであり得る。また、当該ガスは、基板Wをエッチングするための反応ガスであってもよい。そして、排気システム40が、プラズマ処理チャンバ10内の圧力を制御する。一例として、当該圧力は、10mTorr以上であり得る。また、一例として、当該圧力は、300mTorr以下であり得る。また、当該圧力は、250mTorr以下、200mTorr以下、150mTorr以下、又は、100mTorr以下であってよい。また、当該圧力は、後述する工程ST6(エッチング処理)におけるプラズマ処理チャンバ10内の圧力と等しいか、当該圧力に近い圧力であってよい。
【0056】
そして、第1のRF生成部31aが、基板支持部11又はシャワーヘッド13にRF電力を供給して、プラズマ処理チャンバ10内においてプラズマPを生成する。RF電力を供給することは、ソースRF信号の電力を、電力Lよりも高い電力Hに変化させることを含む。電力L及び電力Hは、ソースRF信号の電力の実効値であり得る。また、電力Lは、ゼロ電力であり得る。一例として、電力Hは、50W~1,000Wであり得る。なお、工程ST3において、ガス供給部20は、プラズマ処理チャンバ10内に供給するガスの流量を、一定の流量としてよい。また、ガス供給部20は、工程ST2及び工程ST3の双方において、プラズマPを生成するためのガスを、プラズマ処理チャンバ10内に供給してよい。ガス供給部20は、工程ST2及び工程ST3において、プラズマ処理チャンバ10内に供給するガスの流量を一定の流量としてよいし、また、異なる流量としてもよい。
【0057】
なお、当該ガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給することは、時間t3よりも前に開始され得る。そして、時間t3において、ソースRF信号の電力を電力Lから上昇させて、プラズマPを生成してよい。
【0058】
次に、時間t4において工程ST4が開始し、静電電極1111bに電圧V1が印加される。電圧V1は、第1の電圧の一例である。電圧V1は、例えば、基板Wと基板支持面との間の空間の圧力に基づいて設定されてよい。電圧V1は、正電圧又は負電圧であり得る。一例として、電圧V1の絶対値は、50V~500Vであり得る。また、電圧V0の絶対値は、電圧V1の絶対値よりも低い電圧である。一例として、電圧V0は、ゼロ電圧であり得る。時間t4において、基板Wの高さは高さH3であり得る。また、時間t4において、基板Wの高さは、高さH3と異なる高さであってもよい。
【0059】
次に、時間t5において工程ST5が開始し、
図10に示すように、基板支持部11の基板支持面に基板Wが配置される。すなわち、工程ST5では、基板Wとシャワーヘッド13との間においてプラズマPが生成され、かつ、静電電極1111bに電圧V1が印加された状態で、リフタ60が下降することよって基板Wが基板支持面に配置され、かつ、基板支持面に静電吸着される。なお、工程ST5において、リフタ60の下降速度は変化してよい。一例では、リフタ60が下降するにつれて、リフタ60の下降速度を減少させてよい。なお、
図5において、H0は、基板支持面の高さである。
【0060】
次に、時間t6において工程ST6が開始し、静電電極1111bに、電圧V2及び/又は電圧V3が印加される。電圧V2の絶対値は、電圧V1の絶対値よりも高い。電圧V3の絶対値は、電圧V1の絶対値及び電圧V2の絶対値よりも高い。すなわち、一実施形態において、基板Wが基板支持面に配置された後に、静電電極1111bに印加された静電電圧を変化させてよい。静電電圧は、段階的に複数回変化させてよい。一例では、時間t6において静電電圧を電圧V1から電圧V2に変化させた後に、時間t7において静電電圧を電圧V2から電圧V3に変化させてよい。静電電圧を変化させることは、静電電圧の絶対値を上昇させることであり得る。また、電圧V2は、正電圧又は負電圧であり得る。電圧V3は、正電圧又は負電圧であり得る。一例として、電圧V2の絶対値は100V~1,000Vであってよく、また、電圧V3の絶対値は500V~3,000Vであってよい。なお、電圧V2は第2の電圧の一例である。また、電圧V3は第3の電圧の一例である。また、電圧V1、V2及びV3は、いずれも正電圧であってよく、また、いずれも負電圧であってよい。
【0061】
次に、時間t8において工程ST7が開始し、基板Wに対してプラズマ処理が実行される。一例として、当該プラズマ処理は、プラズマエッチングであり得る。
【0062】
本開示の一実施形態では、例えば高さH3等の中間位置において基板Wに対して静電引力が与えられた状態で、基板Wを基板支持面に配置し得る。これにより、基板Wが静電引力で基板支持面に引き寄せられながら基板支持面に配置されるので、基板支持面に対する基板Wの位置ずれを抑制することができる。当該位置ずれは、
図2におけるX方向及び/又はY方向の位置ずれを含み得る。
【0063】
本開示の一実施形態では、プラズマ処理空間10sを追加で減圧したり、リフタ60の下降速度を下げたりしなくとも、基板Wの位置ずれを抑制できる。これにより、例えばプラズマエッチング等のプラズマ処理のスループットを低下させなくても、基板Wの位置ずれを抑制することができる。
【0064】
本開示の一実施形態では、基板Wを基板支持面に配置する前後において、静電電圧を段階的に変化し得る。静電電圧を段階的に変化することは、静電電圧の絶対値を段階的に上昇することを含み得る。これにより、基板Wの位置ずれを抑制するのに必要な静電電圧を印加しつつ基板Wを基板支持面に配置しつつ、基板Wを基板支持面に吸着するのに必要な静電電圧を印加しつつ基板Wに対してプラズマ処理を実行できる。従って、基板Wを基板支持面に配置するときに、基板Wに静電引力が過度にかかることを抑制することができる。
【0065】
本開示は、例えば、以下の構成を含み得る。
【0066】
(付記1)
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記チャンバ内において前記基板支持面の上方に搬送された基板を、前記リフタによって前記基板支持面の上方の第1の高さにおいて支持する制御と、
前記リフタによって前記基板を前記第1の高さから第2の高さに移動する制御であって、前記第2の高さは前記第1の高さと前記基板支持面との間にある、移動する制御と、
前記基板が前記第2の高さにある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記第2の高さから移動して前記基板支持面に配置する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【0067】
(付記2)
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部を更に備え、
前記制御部は、前記基板が前記第2の高さにある状態で、前記プラズマ生成部によって前記チャンバ内にプラズマを生成する制御を更に実行する、付記1に記載のプラズマ処理装置。
【0068】
(付記3)
前記プラズマを生成する制御は、前記基板支持部にソースRF信号を供給する制御を含む、付記1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【0069】
(付記4)
前記制御部は、前記基板支持部に前記ソースRF信号が供給された状態で、前記静電電極に前記第1の電圧を印加する制御を実行する、付記3に記載のプラズマ処理装置。
【0070】
(付記5)
前記制御部は、
前記基板が前記基板支持部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも高い、印加する制御
を更に実行する、付記1から4のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【0071】
(付記6)
前記制御部は、
前記静電電極に前記第2の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、前記伝熱媒体は前記基板と前記基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御
を更に実行する、付記5に記載のプラズマ処理装置。
【0072】
(付記7)
前記制御部は、
前記基板が前記基板支持部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第3の電圧を印加する制御であって、前記第3の電圧は前記第2の電圧よりも高い、印加する制御
を更に実行する、付記5に記載のプラズマ処理装置。
【0073】
(付記8)
前記制御部は、
前記静電電極に前記第2の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間に伝熱媒体を供給する制御であって、前記伝熱媒体は前記基板と前記基板支持面との間の圧力が第1の圧力となるように供給される、伝熱媒体を供給する制御と、
前記静電電極に前記第3の電圧が印加された状態で、前記基板と前記基板支持面との間の圧力を調整する制御であって、前記圧力が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力となるように前記伝熱媒体が供給される、圧力を調整する制御と
を更に実行する、付記7に記載のプラズマ処理装置。
【0074】
(付記9)
前記制御部は、前記基板を前記基板支持面に配置する制御において、前記チャンバ内の圧力を10mTorr~300mTorrに制御する、付記1から8のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【0075】
(付記10)
前記第2の高さは、前記基板支持面から、0.1mm~3.0mmの高さである、付記1から9のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【0076】
(付記11)
前記第1の電圧の絶対値は50V~500Vである、付記1から10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【0077】
(付記12)
前記第1の電圧、前記第2の電圧及び前記第3の電圧はいずれも正の電圧であるか、又はいずれも負の電圧であり、
前記第1の電圧の絶対値は50V~500Vであり、前記第2の電圧の絶対値は100V~1,000Vであり、前記第3の電圧の絶対値は500V~3,000Vである、付記5から8のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【0078】
(付記13)
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記リフタによって、前記チャンバ内において、前記基板支持面の上方において前記基板を支持する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記プラズマ生成部によって前記チャンバ内にプラズマを生成する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記基板支持面の上方から移動して前記基板支持面に配置する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【0079】
(付記14)
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持部であって、前記基板支持部は前記基板を支持する基板支持面及び前記基板を前記基板支持面に吸着させる静電電極を含む、基板支持部と、
前記静電電極に印加する電圧を生成する電源と、
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記チャンバ内において、前記基板支持面に対する前記基板の高さを制御するリフタと、
制御部と
を備え、前記制御部は、
前記リフタによって、前記チャンバ内において、前記基板支持面の上方において前記基板を支持する制御と、
前記基板が前記基板支持面の上方にある状態で、前記電源によって前記静電電極に第1の電圧を印加する制御と、
前記リフタによって、前記基板を前記基板支持面の上方から前記基板支持面に配置する制御と
前記基板が前記基板支持部に配置された状態で、前記電源によって前記静電電極に第2の電圧を印加する制御であって、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも高い、印加する制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【0080】
以上の例示的実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0081】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、11……基板支持部、12……プラズマ生成部、30……電源、60……リフタ、1111b……静電電極、CT……制御部、P……プラズマ、W……基板