(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098761
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】樹脂微粒子及びその製造方法、並びに、トナー、現像剤、トナー収容ユニット、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240717BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240717BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20240717BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/093
G03G9/08 381
G03G9/097 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002436
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA09
2H500BA12
2H500BA17
2H500CA06
2H500CA19
2H500EA39B
2H500EA40B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500EA60A
(57)【要約】
【課題】低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れる樹脂微粒子を提供すること。
【解決手段】少なくとも非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する樹脂微粒子であって、前記非晶性ポリエステル樹脂がスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、前記樹脂微粒子が、コア層とシェル層とを有するコアシェル構造を有し、前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂のSP値が、10~13の範囲である樹脂微粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤を含有する樹脂微粒子であって、
前記非晶性ポリエステル樹脂がスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記樹脂微粒子が、コア層とシェル層とを有するコアシェル構造を有し、
前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂のSP値が10~13の範囲であることを特徴とする樹脂微粒子。
【請求項2】
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比が、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を構成するカルボン酸モノマーの全量に対して2モル%~10モル%である、請求項1に記載の樹脂微粒子。
【請求項3】
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂の含有量が5質量%~40質量%である、請求項1に記載の樹脂微粒子。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法であって、
(a)少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたコア層作製用油相を作製する工程と、
(b)前記コア層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からコア層作製用水中油型分散液に転相させる工程と、
(c)少なくともスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたシェル層作製用油相を作製する工程と、
(d)前記シェル層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からシェル層作製用水中油型分散液に転相させる工程と、
(e)前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液中の粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程と、
(f)前記(e)工程で得られた凝集粒子に前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液を添加して樹脂微粒子を得る工程と、
を含み、
前記(a)工程又は前記(e)工程において、結晶性ポリエステル樹脂及び離型剤を添加することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂微粒子を含有することを特徴とするトナー。
【請求項6】
更に外添剤を含有する、請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
請求項5に記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項8】
請求項5に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項9】
請求項5に記載のトナーと、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、前記トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂微粒子及びその製造方法、並びに、トナー、現像剤、トナー収容ユニット、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化、省エネルギー化のための低温定着性、並びに製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐え得る耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、低温定着性の向上は非常に重要である。
【0003】
従来、混練粉砕法で作製されたトナーが使用されてきた。混練粉砕法で作製されたトナーは、小粒径化が困難であると共に、その形状が不定形かつ粒径分布がブロードであることから出力画像の品質が十分ではないこと、定着エネルギーが高いことなどの問題点があった。また、ワックス(離型剤)を添加している場合、混練粉砕法で作製されたトナーは、粉砕の際にワックスの界面で割れるために、ワックスがトナー表面に多く存在してしまう。そのため、離型効果が出る一方で、キャリア、感光体及びブレードへのトナーの付着(フィルミング)が起こりやすくなり、全体的な性能としては、満足のいくものではないとう問題点があった。
【0004】
そこで、混練粉砕法による上述の問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。重合法で製造されたトナーは、小粒径化が容易であり、粒度分布も粉砕法で製造されたトナーの粒度分布に比べてシャープであり、更に、離型剤の内包化も可能である。重合法によるトナーの製造方法としては、低温定着性の改良及び耐高温オフセット性の改良を目的として、トナーバインダーとして、ウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からトナーを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性及び転写性に優れると共に、耐熱保存性、低温定着性及び耐高温オフセット性のいずれにも優れたトナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2及び3参照)。また、安定した分子量分布のトナーバインダーを製造し、低温定着性及び耐高温オフセット性を両立させるための、熟成工程を有するトナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献4及び5参照)。しかし、これら提案の技術は、近年要求される高いレベルの低温定着性を満足するものでない。
【0005】
そこで、高いレベルの低温定着性を得る目的で、結晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂、及び離型剤を含有し、樹脂とワックスが互いに非相溶で海島状の相分離構造を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献6参照)。また、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤及びグラフト重合体を含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
これらの提案の技術は、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂に比べて急速に溶融するため低温定着化を成し得る。しかし、海島状の相分離構造における島にあたる結晶性ポリエステル樹脂が融解しても、大部分の海にあたる非晶性ポリエステル樹脂は未だ融解しない。そうすると、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の双方がある程度融解しないと定着しないため、これらの提案の技術は、近年更に高まっている高いレベルの低温定着性を満足するものでない。
【0006】
また、低温定着性に優れたトナーは様々な課題がある。一つは、耐熱保存性とのトレードオフである。いっそうの低温定着性が求められる場合、相反である耐熱保存性と両立する手段が求められる。これまでに、トナー母体粒子の表面を樹脂で覆うことで、耐熱性を担保するような手段も提案されているが、低温定着性能とのトレードオフ、帯電性能低下などの課題がある(例えば、特許文献8及び9参照)。
【0007】
二つ目の課題としては、帯電性能である。前述した技術は、結晶性セグメントに由来する軟質性が根本的に改善されたものではなく、トナーの機械的耐久性に関わる課題が解決できるものではなかった。そのため、その軟質性により、摩擦帯電の保持能力が低くなり、トナー飛散や地汚れが起きやすくなる課題もあった。
【0008】
帯電性能の改善としては、(1)造粒工程で用いる界面活性剤と逆極性のフッ素系界面活性剤を乳化分散工程、脱溶媒工程、洗浄工程、及び水への再分散工程後に添加する(例えば、特許文献10参照)、(2)有機物イオンで変性した変性層状無機鉱物を含有することで、定着特性、クリーニング性、帯電性能を得る(例えば、特許文献11参照)、(3)スルホン酸基を有する界面活性剤でトナー製造時の安定性を確保し、カルボキシル基を有する界面活性剤で、スルホン酸基含有界面活性剤が凝集粒子内部まで浸透するのを抑制して、製造時の混合分散液中の凝集粒子の帯電性を確保する(例えば、特許文献12参照)などが提案されているが、いずれも優れた低温定着性、優れた帯電性能及び耐熱保存性を満たすトナーは得られていない。
【0009】
したがって、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れる樹脂微粒子の提供が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れる樹脂微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としての本発明の樹脂微粒子は、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤を含有する樹脂微粒子であって、前記非晶性ポリエステル樹脂がスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、前記樹脂微粒子が、コア層とシェル層とを有するコアシェル構造を有し、前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂のSP値が、10~13の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れる樹脂微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明のトナー収容ユニットとしてのプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(樹脂微粒子)
本発明の樹脂微粒子は、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤を含有する樹脂微粒子であって、前記非晶性ポリエステル樹脂がスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂(以下、「スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂」と略記することがある)を含有し、前記樹脂微粒子が、コア層とシェル層とを有するコアシェル構造を有し、前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂のSP値が10~13の範囲である。
【0015】
本発明の樹脂微粒子は、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れるものであり、トナーとしての使用に適している。したがって、本発明には、トナーに用いられる前記樹脂微粒子である「トナー用樹脂微粒子」が含まれる。
【0016】
前記樹脂微粒子は、前記非晶性ポリエステル樹脂及び前記結晶性ポリエステル樹脂の他に、更に必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0017】
なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、又は削除などの当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0018】
[コアシェル構造]
前記樹脂微粒子は、コアシェル構造を有する。前記樹脂微粒子をコアシェル構造とすることで耐熱保存性を担保し、更に前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有することで、スルホン酸塩基の負帯電付与効果で高い帯電性能を得ることができる。
【0019】
本明細書において、「コアシェル構造を有する」とは、コア層とシェル層とを有する構造を意味し、「シェル層」とは、前記樹脂微粒子の最外層に存在する樹脂からなる層を意味し、「コア層」とは、前記シェル層を除く樹脂微粒子内の領域を意味する。
前記コア層と前記シェル層とは、互いに完全には相溶せずに不均質に形成されてなる。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって被覆された形態であることが好ましい。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって完全に被覆されていてもよく、前記シェル層によって完全に被覆されていなくてもよい。前記コア層の表面が前記シェル層によって完全に被覆されていない形態としては、例えば、前記コア層が前記シェル層に網目状に被覆されている形態、前記コア層が部分的に前記シェル層から露出した形態などが挙げられる。これらの中でも、低温定着性、付着力、及び耐熱保存性の点から、前記コア層の表面が、前記シェル層によって完全に被覆されていることが好ましい。
【0020】
前記シェル層を構成するシェル用樹脂は、少なくとも前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の樹脂を含有していてもよい。
【0021】
前記シェル層が前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有することを確認する方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナノ(nano)IR(「AMF-IR」とも称する)を用いた表層(シェル層)組成分析によって確認する方法などが挙げられる。
ナノ(nano)IRの原子間力顕微鏡(AFM)とIRとを組合せたナノスケール分解能を実現する分析手法により、前記樹脂微粒子の表層(シェル層)のIRスペクトルを取得することで組成構成を得ることができる。
具体的には、前記樹脂微粒子をエポキシ樹脂(S-31、DEVCON社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、超音波ウルトラミクロトーム(Leica EM UC7、ライカ社製)を用いて、60nmの厚さに切除し、樹脂微粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、基板上(ZnS)に回収し、ナノスケール赤外分光分析システム(例えば、nanoIR2、アナシスインスツルメント社製)を用い、測定箇所(シェル層)をAFM-IR法にて測定する。測定範囲は、1,900cm-1から910cm-1とし、分解能は2cm-1として、得られたAFM-IR吸収スペクトルから、測定箇所(シェル層)の化学構造を解析することができる。したがって、この分析によって表層(シェル層)に前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂が存在するかどうかを識別することができる。
なお、前記測定箇所をコア層とすることで、コア層の化学構造を解析することもできる。
【0022】
前記シェル層の平均厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm~500nmが好ましく、100nm~200nmがより好ましい。前記シェル層の平均厚さが50nm以上であると、前記樹脂微粒子の内部のコア層を保護することができ、耐機械強度の向上ができ、500nm以下であると、低温定着性を阻害することなく、十分な耐機械強度を維持できる。
なお、本明細書において、「シェル層の平均厚さ」とは、樹脂微粒子の重量平均粒径から±2.0μm以内のものの中から任意に50個選択し、後述の方法でそれぞれのシェル層の厚さを測定し、この50個の樹脂微粒子のシェル層の厚さを平均した厚さを意味する。
【0023】
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%~100%が好ましく、80%~100%がより好ましい。なお、前記被覆率が100%であるとは、前記樹脂微粒子における前記コア層の表面全域が、前記シェル層で覆われていることを意味する。
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率(%)は、下記式(1)により算出することができる。
被覆率(%)=(被覆領域の面積)/(樹脂微粒子の全表面積)×100 ・・・ 式(1)
前記式(1)中、「樹脂微粒子の全表面積」は、被覆領域の面積と、コア層露出面積との合計を意味し、「被覆領域の面積」は、樹脂微粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆された領域の面積を意味し、「コア層露出面積」は、樹脂微粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆されていない領域の面積を意味する。
【0024】
前記樹脂微粒子が、コアシェル構造を有することを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂微粒子をエポキシ樹脂(S-31、DEVCON社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、超音波ウルトラミクロトーム(Leica EM UC7、ライカ社製)を用いて、60nmの厚さに切除し、樹脂微粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、四酸化ルテニウム(RuO4)でガス暴露し、シェルとコアを識別染色する。ガス暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整することができる。その後、透過型電子顕微鏡(H-7500、株式会社日立ハイテク製)を用いて、加速電圧120kVで樹脂微粒子の断面像を観察することで確認することができる。
【0025】
また、前述の方法で観察されたTEM画像において、前記樹脂微粒子の表面におけるコア層の被覆領域(樹脂微粒子において、コア層がシェル層により被覆された領域)と、コア層の露出領域(樹脂微粒子において、コア層がシェル層により被覆されていない領域)とは、輝度値の違いにより区別することができる。そのため、前述の方法で観察されたTEM画像を、画像処理ソフトを利用して2値化処理を行い、そのコントラスト比により、シェル層を特定することができ、シェル層の厚さを測定することができる。
【0026】
前記画像処理ソフトとしては、Image-Jを使用することができる。Image-Jを使用した前記シェル層の平均厚みの算出方法は、以下の通りである。
(1)Straight Lineでスケールをなぞった直線を引く。AnalyzeのSet Scaleでその実長と単位を設定する。
(2)樹脂微粒子1個の前記断面像における該樹脂微粒子の外周をFreehand-sectionsで囲い、「領域1」を作成する。
(3)前記樹脂微粒子1個の前記断面像におけるシェル層を除いた領域の外周(即ち、シェル層とコア層との境界)をFreehand-sectionsで囲い、「領域2」を作成する。
(4)前記「領域1」の重量中心をAnalyzeにより求める。
(5)独自に開発したプラグインを使用し、前記「領域1」の外周、即ち、前記(2)において前記樹脂微粒子1個の外周をFreehand-sectionsで囲った線を等間隔に100分割した座標から、前記(4)で求めた樹脂微粒子の重量中心に向かって直線を引く。
(6)前記(5)で作成した100個の各直線の前記「領域1」を通る長さから、前記「領域2」を通る長さを除いたものの長さを、前記(1)で作成したスケールをなぞった直線を利用して算出し、100個の平均をとったものを、前記樹脂微粒子1個のシェル層の厚みとする。
(7)前記(2)~(6)の操作を50個の樹脂微粒子について行い、50個の樹脂微粒子のシェル層の厚みの平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層の平均厚みとする。
【0027】
また、Image-Jを使用した前記シェル層による被覆率の算出方法は、以下の通りである。
(1)樹脂微粒子1個の前記断面像における該樹脂微粒子の外周のシェル層で被覆されている部分をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ1」とする。
(2)前記樹脂微粒子1個の前記断面像における該樹脂微粒子の外周をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ2」とする。
(3)長さ1/長さ2×100を算出し、これを前記樹脂微粒子1個のシェル層による被覆率とする。
(4)前記(1)~(3)の操作を50個の樹脂微粒子について行い、50個の樹脂微粒子のシェル層による被覆率の平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層による被覆率とする。
【0028】
<非晶性ポリエステル樹脂>
前記樹脂微粒子は、前記非晶性ポリエステル樹脂が、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の非晶性ポリエステル樹脂を含有する。
【0029】
<<スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂>>
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂は、スルホン酸塩基を有する単量体(以下、「スルホン酸塩基含有単量体」と称することがある)と、アルコールと、カルボン酸とを重縮合することにより得られる。
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の合成に使用するスルホン酸塩基を有する単量体、アルコール、及びカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、構成成分としては下記のようなものが上げられる。
【0030】
-スルホン酸塩基含有単量体-
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の合成には、スルホン酸塩基を有する単量体を用いる。前記スルホン酸塩基含有単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族スルホン酸塩基を有する単量体、脂肪族スルホン酸塩基を有する単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記スルホン酸塩基含有単量体としては、2価以上のカルボン酸を構成単位として有する芳香族スルホン酸塩基を有する単量体が好ましい。
【0031】
前記ジカルボン酸を構成単位として有する芳香族スルホン酸塩基を有する単量体としては、例えば、5-スルホイソフタル酸、2-スルホイソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、4-スルホ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体[低級アルキル(C1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル等)、酸無水物等]のスルホン酸塩などが挙げられる。
【0032】
前記ジカルボン酸を構成単位として有する脂肪族スルホン酸塩基を有する単量体としては、例えば、スルホコハク酸、又はそのエステル形成性誘導体[低級アルキル(C1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル等)、酸無水物等]のスルホン酸塩などが挙げられる。
【0033】
前記スルホン酸塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアルキル(C2~4)基を有するモノ-、ジ-、又はトリ-アミン等のアミン塩、これらのアミンの第4級アンモニウム塩、又はこれらの2種以上を併用した塩などが挙げられる。
前記アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
前記アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
前記ヒドロキシアルキル(C2~4)基を有するモノ-、ジ-、又はトリ-アミンとしては、例えば、モノ-エチルアミン、ジ-エチルアミン、トリ-エチルアミン、モノ-エタノールアミン、ジ-エタノールアミン、トリ-エタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン塩などが挙げられる。
【0034】
これらのスルホン酸塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記スルホン酸塩としては、5-スルホイソフタル酸塩が好ましく、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、5-スルホイソフタル酸カリウム塩が特に好ましい。
【0035】
-アルコール-
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を構成するアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、又はジオールと3価以上のアルコールとの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどが挙げられる。
【0038】
前記オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0039】
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0040】
前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
【0041】
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0042】
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものなどが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、前記ジオールとしては、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールが好ましい。
【0044】
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
-カルボン酸-
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、若しくは、これらの無水物、これらの低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、又はこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0048】
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸(TMA)、ピロメリット酸、又はこれらの無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
これらの中でも、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸としては、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0051】
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を合成する際、触媒を添加することが好ましい。前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルトチタン酸テトラブチル、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート、ジブチルスズオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[SP値]
前記シェル層が含有する前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のSP値は10~13の範囲である。前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のSP値を10~13とすることで、前記コア層を形成するコア粒子へのシェル化を良好にすることが可能となる。前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のSP値が10未満であると、疎水化が強くなりコア粒子へのシェル化が起こりにくくなる。また、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のSP値が13を超えると、逆に親水性が強くなり過ぎてシェル化時にコア粒子へのヘテロ凝集が起きず、シェル樹脂同士のホモ凝集が起こりやすくシェル化不良となる。
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のSP値は、製造時のモノマー仕込量からFedors法により算出したものである。
【0052】
[スルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比]
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を構成する前記カルボン酸モノマーの全量に対して、2モル%~10モル%であることが好ましく、4モル%~8モル%であることがより好ましい。前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比が2モル%以上であると、スルホン酸塩基の負帯電性能が十分に得られる。また、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比が10モル%以下であると、スルホン酸塩基の吸湿性が強く発現することがなく、帯電性能が十分に得られ、また、耐熱保存性も十分に得られる。
【0053】
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比は、熱分解ガスクロマトグラフィー(熱分解GC)で得られたスルホン酸塩基を有するモノマー由来のクロマトグラムの面積を、該スルホン酸塩基を有するモノマーの検量線式に代入して計算することにより測定することができる。
【0054】
[酸価]
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーが負帯電性となりやすく、更には、紙等の記録媒体への定着時に、該記録媒体と前記トナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。また、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0055】
前記樹脂微粒子における前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、5質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の含有量が、5質量%以上であると、帯電性能と耐熱保存性への効果が十分に得られる。また、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂の含有量が、40質量%以下であると、低温定着性が十分に得られる。
【0056】
前記樹脂微粒子が、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有することは、例えば、蛍光X線法による微量元素分析により硫黄(S)強度を測定する方法、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)によりスルホン酸塩基を有するモノマーを定量する方法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により前記樹脂微粒子の最表面のスルホン酸塩基を定量し、前記樹脂微粒子の最表面の樹脂構造を定性する方法などにより確認することができる。
【0057】
<<その他の非晶性ポリエステル樹脂>>
本発明において、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂とは、スルホン酸塩基を含有しない非晶性ポリエステル樹脂を意味する。
前記樹脂微粒子を電子写真における静電潜像現像用トナーとして用いる場合には、ポリエステル骨格を有する樹脂を用いることにより良好な定着性が得られる。
前記ポリエステル骨格を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂や、ポリエステルと他の骨格を有する樹脂とのブロックポリマーがあるが、ポリエステル樹脂を用いたほうが得られる樹脂微粒子の均一性が高く好ましい。
【0058】
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂としては、設計の自由度の観点からポリオールとポリカルボン酸との重縮合物が好ましい。
【0059】
-ポリオール-
前記ポリオール(1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(1-1)、3価以上のポリオール(1-2)、又はジオール(1-1)と少量の3価以上のポリオール(1-2)との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記ジオール(1-1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、4,4’-ジヒドロキシビフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のアルキレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0062】
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0063】
前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、前記脂環式ジオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものなどが挙げられる。
【0064】
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0065】
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、前記ビスフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものなどが挙げられる。
【0066】
前記4,4’-ジヒドロキシビフェニル類としては、例えば、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられる。
【0067】
前記ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類としては、例えば、ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-フェニル-1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0068】
前記ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類としては、例えば、ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0069】
前記3価以上のポリオール(1-2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0070】
前記多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0071】
前記3価以上のフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA(4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)エチル)-α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
【0072】
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものなどが挙げられる。
【0073】
これらの中でも、前記ポリオール(1)としては、炭素数2~12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが好ましく、炭素数2~12のアルキレングリコールと、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物との併用がより好ましい。
【0074】
-ポリカルボン酸-
前記ポリカルボン酸(2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸(2-1)、3価以上のポリカルボン酸(2-2)、又はジカルボン酸(2-1)と少量の3価以上のポリカルボン酸(2-2)との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記ジカルボン酸(2-1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、3-フルオロイソフタル酸、2-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸、5-トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’-ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記3価以上のポリカルボン酸(2-2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)などが挙げられる。
【0077】
なお、前記ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0078】
これらの中でも、前記ポリカルボン酸(2)としては、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0079】
前記ポリオール(1)と前記ポリカルボン酸(2)の比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、2/1~1/2が好ましく、1.5/1~1/1.5がより好ましく、1.3/1~1/1.3が更に好ましい。
【0080】
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂を合成する際、触媒を添加することが好ましい。前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルトチタン酸テトラブチル、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート、ジブチルスズオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
[重量平均分子量(Mw)]
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定において、3,000~30,000が好ましく、4,000~25,000がより好ましく、5,000~20,000が更に好ましい。前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が3,000以上であると、耐熱保存性が良好である。また、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が30,000以下であると、低温定着性が良好である。
【0082】
[ガラス転移温度(Tg)]
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃~90℃が好ましく、45℃~85℃がより好ましく、50℃~80℃が更に好ましい。前記その他の非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が40℃以上であると、得られる樹脂微粒子が真夏などの高温環境下に置かれたときでも変形しない、あるいは前記樹脂微粒子同士がくっつくことがなく、良好いn粒子としての振る舞いができる。また、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が90℃以下であると、前記樹脂微粒子を静電潜像現像用トナーとして用いる場合に、定着性が向上する。
【0083】
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料のガラス転移温度(Tg)は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/分間にて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
【0084】
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
本発明において、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、特に断りが無い限り、2回目昇温時におけるTgとする。
【0085】
[酸価]
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記その他の非晶質ポリエステル樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーが負帯電性となりやすく、更には、紙等の記録媒体への定着時に、該記録媒体と前記トナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。また、前記その他の非晶質ポリエステル樹脂の酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0086】
前記樹脂微粒子における前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、5質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の含有量が、5質量%以上であると、帯電性能と耐熱保存性への効果が十分に得られる。また、前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の含有量が、40質量%以下であると、低温定着性が十分に得られる。
【0087】
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂及び前記その他の非晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体による核磁気共鳴分光法(NMR)による測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ分析(LC/MS)、赤外吸収分光法(IR)、又は熱分解GCなどの測定方法により確認することができる。これらの中でも、簡便には、熱分解GCで得られた前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂及び前記その他の非晶性ポリエステル樹脂由来のモノマーのクロマトグラムから検出する方法が好ましく挙げられる。
【0088】
<結晶性ポリエステル樹脂>
前記結晶性ポリエステル樹脂としては、結晶性を有するポリエステル樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその誘導体とから得られるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0089】
なお、本発明において「結晶性ポリエステル樹脂」とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、プレポリマーや、該プレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には含まれない。
【0090】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、又はジオールと3価以上のアルコールとの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0092】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記飽和脂肪族ジオールとしては、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0093】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
-多価カルボン酸又はその誘導体-
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価カルボン酸の誘導体としては、例えば、前記多価カルボン酸の無水物や前記多価カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0095】
前記ジカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、若しくは、これらの無水物、これらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などが挙げられる。
【0097】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸などが挙げられる。
【0098】
前記3価以上のカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、又はこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂としては、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0100】
また、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0101】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が向上するという観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂のo-ジクロロベンゼンの可溶分のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量の比(Mw/Mn)が以下の範囲であることが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0102】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記酸化の下限値としては、記録媒体と前記樹脂微粒子との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するために、5mgKOH/g以上であることが好ましく、転相乳化法による樹脂微粒子の作製のために、7mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価の上限値としては、耐ホットオフセット性を向上させるために、45mgKOH/g以下であることが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0103】
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するために、0mgKOH/g~50mgKOH/gであることが好ましく、5mgKOH/g~10mgKOH/gであることがより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0104】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMRによる測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、又はIR測定による測定方法により確認することができる。これらの中でも、簡便には、IRで得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを前記結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0105】
前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の全質量に対して、3質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましい。前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が3質量%以上であると、前記結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化を向上させることができ、低温定着性を向上させることができる。また、前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が20質量%以下であると、耐熱保存性の低下を抑制でき、また画像のかぶりが発生することを抑制することができる。前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が前記より好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0106】
<離型剤>
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。前記低融点の離型剤は、前記非晶性ポリエステル樹脂と分散されることにより、前記樹脂微粒子をトナーとして使用した場合に、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でも耐ホットオフセット性が良好となる。
【0107】
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ロウ類又はワックス類、脂肪酸アミド、ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記ロウ類又はワックス類としては、例えば、天然ワックス、合成炭化水素ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。
前記天然ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスなどが挙げられる。
前記植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウなどが挙げられる。
前記動物系ワックスとしては、例えば、ミツロウ又はラノリンなどが挙げられる。
前記鉱物系ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシンなどが挙げられる。
前記石油ワックスとしては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどが挙げられる。
前記合成炭化水素ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
前記合成ワックスとしては、例えば、エステルワックス、ケトンワックス、エーテルワックスなどが挙げられる。
【0109】
前記脂肪酸アミドとしては、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素などが挙げられる。
【0110】
前記ポリアクリレートとしては、例えば、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
前記ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体としては、例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。
【0111】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。前記離型剤の融点が、50℃以上であると、前記離型剤が耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止できる。また、前記離型剤の融点が120℃以下であると、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0112】
前記離型剤の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該離型剤の融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。前記離型剤の溶融粘度が、5cps以上であると、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であると、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0113】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。前記離型剤の含有量が、40質量%以下であると、前記樹脂微粒子の流動性悪化を防止することができる。
【0114】
<その他の成分>
前記樹脂微粒子における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料を使用することができる。
前記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン系染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
前記樹脂微粒子における前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、1質量%~15質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。
なお、前記樹脂微粒子が前記着色剤を含有しない場合は、透明トナーとして好適に用いることができる。
【0117】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造又はマスターバッチと共に混練される前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記非晶性ポリエステル樹脂の他に、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、又はパラフィンワックスが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、又はポリビニルトルエンが挙げられる。
前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、又はスチレン-マレイン酸エステル共重合体が挙げられる。
【0119】
前記マスターバッチの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスターバッチ用の前記樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得る方法などが挙げられる。この際、前記着色剤と前記樹脂との相互作用を高めるために、有機溶媒を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる前記着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒とともに混合混練を行い、前記着色剤を前記樹脂側に移行させ、水分と有機溶媒成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0120】
<<帯電制御剤>>
本発明の樹脂微粒子はスルホン酸塩基を有するシェル層により負帯電性であるが、帯電性は帯電制御剤で制御することができる。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、第4級アンモニウム塩(フッ素変性第4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、オキシナフトエ酸金属塩、フェノール系縮合物、アゾ系顔料、ホウ素錯体、又は官能基(例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、又は第4級アンモニウム塩等)を有する高分子系の化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記帯電制御剤の具体例としては、ニグロシン系染料のボントロン03、第4級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、第4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(以上、日本カーリット株式会社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料が挙げられる。
【0122】
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、性能を発現し定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられればよく、前記樹脂微粒子の全質量に対して、0.5質量%~5質量%が好ましく、0.8質量%~3質量%がより好ましい。
【0123】
前記帯電制御剤は、マスターバッチ、前記非晶性ポリエステル樹脂、又は前記結晶性ポリエステル樹脂と共に溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶媒に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、前記樹脂微粒子表面に、該樹脂微粒子作製後に固定化させてもよい。
【0124】
<<流動性向上剤>>
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記流動性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、0.01質量部以上5.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上2.00質量部以下がより好ましい。
【0126】
<<クリーニング性向上剤>>
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのものである。
前記クリーニング性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸金属塩又はポリマー微粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸が挙げられる。
【0128】
前記ポリマー微粒子としては、ソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子が好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子又はポリスチレン微粒子が挙げられる。
【0129】
前記ポリマー微粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0130】
前記クリーニング性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、0.01質量部以上5.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上2.00質量部以下がより好ましい。
【0131】
<<磁性材料>>
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、又はフェライトが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記磁性材料としては、色調の点で白色のものが好ましい。
【0132】
前記磁性材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全質量に対して、20質量部以上200質量部以下が好ましく、40質量部以上150質量部以下がより好ましい。
【0133】
[体積平均粒径]
前記樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。
また、前記樹脂微粒子の個数平均粒径(Dn)に対する体積平均粒径(Dv)の比(Dv/Dn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.2以下であることが好ましい。
また、前記樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0134】
前記樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマ・ンコールター株式会社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なうことにより下記条件で測定することができる。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスフォン酸塩、例えば、ネオゲンSC-A;第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、前記樹脂微粒子0.5g添加してミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散機(例えば、W-113MK-II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理する。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマ・ンコールター製)を用いて測定を行う。測定は、装置が示す濃度が8%±2%になるように前記樹脂微粒子サンプル分散液を滴下する。
【0135】
[平均円形度]
前記樹脂微粒子をトナーとして使用する場合、平均円形度は特定の形状を有すことが好ましく、前記樹脂微粒子の平均円形度は0.940以上0.980未満であることが好ましい。前記樹脂微粒子の平均円形度が0.940以上であると、球形からあまりに離れた不定形の形状となり、満足した転写性やチリのない高画質画像が得られないという問題を防ぐことができる。また、前記樹脂微粒子の平均円形度が0.980未満であると、ブレードクリーニングなどを採用しているシステムでは、感光体上および転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れを引き起こすという問題を防ぐことができる。
【0136】
前記樹脂微粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(例えば、FPIA-3000、シスメックス株式会社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA-3000 FLOW PARTICLE IMAGE ANALYZER version00-11)を用いて下記のような条件で測定することができる。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスフォン酸塩、例えば、ネオゲンSC-A;第一工業製薬株式会社製)を0.1mL~0.5mL添加し、前記樹脂微粒子0.1g~0.5g添加してミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散機(例えば、W-113MK-II、本多電子株式会社製)で3分間分散処理する。前記分散液を、前記FPIA-3000を用いて濃度が5,000個/μl~15,000個/μlが得られるまで前記樹脂微粒子の形状及び分布を測定する。
【0137】
[低温定着性]
前記樹脂微粒子は低温定着性に優れるものである。
前記樹脂微粒子のコールドオフセットの発生温度(MFT)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下が更に好ましい。
【0138】
前記樹脂微粒子の低温定着性は、以下のようにして評価することができる。
具体的には、紙面(PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目、株式会社リコー製)上に2cm×15cmのベタ画像をトナーの付着量が0.40mg/cm2となるように均一に載せる。このとき、前記樹脂微粒子を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンター(imagio MP C5503、株式会社リコー製)から熱定着機を外したもの)を用いる。なお、上記の質量密度で前記樹脂微粒子を均一に載せることができるのであれば、他の方法を用いてもよい。この紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/秒間、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定することができる。
【0139】
[付着力]
前記樹脂微粒子の160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp[gf])としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、200gf以下が更に好ましい。前記樹脂微粒子の160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp[gf])が500gf以下であると、前記樹脂微粒子同士が凝集せず、流動性が良好である。
【0140】
前記樹脂微粒子の160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)は、粉体層の圧縮・引張特性計測装置アグロボット(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定することができ、下記条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の各トナーを充填し、各トナーを160kN/m2の圧力下で保持した後、上部セルを持ち上げて粉体層が破断されたときの最大引張破断力、圧縮時の粉体層高さ、セル内径、トナー平均粒径、トナー真密度、及びトナー量から算出される。
具体的には、トナー量:8.00g±0.02g、環境温度:25±2℃、湿度:30±5%RH、セル内径:25mm、セル温度:25℃、バネ線径:1.0mm、圧縮速度:0.1mm/秒間、圧縮荷重:8kg(加圧力:160kN/m2)、圧縮保持時間:60秒間、引張速度:0.6mm/秒間、引張サンプリング開始時間:0秒間、及び引張サンプリング時間:25秒間の条件にて測定を行い、付属のアプリケーションソフトにより算出された二粒子間力(Fp)を、トナーの160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)とすることができる。なお、測定は、前記樹脂微粒子を、23℃、53%RHで24時間調湿して行う。
【0141】
[耐熱保存性]
前記樹脂微粒子は耐熱保存性に優れるものである。前記樹脂微粒子の耐熱保存性は、50mLのガラス容器に前記樹脂微粒子を充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃まで冷却した場合の針入度[mm]を針入度試験(JIS K 2235-1991)により測定することで評価することができる。
前記針入度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上が更に好ましい。
【0142】
[帯電性]
前記樹脂微粒子は負帯電性に優れるものである。
前記樹脂微粒子の負帯電量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30[-μC/g]以上が好ましく、33[-μC/g]以上がより好ましく、36[-μC/g]以上が更に好ましい。
なお、本発明において、負帯電性量の単位は「-μC/g」であるが、その数値は絶対値が大きい程、帯電性が優れることを意味する。例えば、「30[-μC/g]以上」との帯電量の絶対値での表記は、「-30μC/g以下」と同義である。
【0143】
前記樹脂微粒子の帯電量は、前記樹脂微粒子5gとキャリア95gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、280rpmの攪拌速度で攪拌し、ブローオフ法により求めることができる。なお、攪拌時間は、15秒間(以下、「TA15」と称することがある)、60秒間(以下、「TA60」と称することがある)、及び600秒間(以下、「TA600」と称することがある)で測定し、いずれの攪拌時間においても上記好ましい負帯電量を満たすことが、優れた帯電性が得られる点で好ましい。
【0144】
前記樹脂微粒子は、後述する本発明の樹脂微粒子の製造方法により好適に製造することができる。
【0145】
前記樹脂微粒子の製造方法としては、特に制限はなく、後述する本発明の樹脂微粒子の製造方法の他、粉砕紛級法によりコア粒子を形成した後、該コア粒子の表面にシェル層を形成する方法を用いることもできる。
【0146】
前記粉砕紛級法によりコア粒子を形成した後、該コア粒子の表面にシェル層を形成する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
前記非晶質ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤、更に必要に応じて着色剤等のその他の成分を混錬し、得られた混錬物を粉砕及び分級し、コア層を形成するコア粒子を作製する。その後、水や有機溶剤等の溶媒に、シェル層を形成する原材料を分散又は溶解した液中に、前記コア粒子を添加及び攪拌し、前記コア層にシェル層を形成することにより、コアシェル構造を有する樹脂微粒子を製造することができる。
その後、必要に応じて、後述する本発明の樹脂微粒子の製造方法における<洗浄工程>、<乾燥工程>、<アニーリング工程>などを実施してもよい。
【0147】
(樹脂微粒子の製造方法)
本発明の樹脂微粒子の製造方法は、本発明の樹脂微粒子の製造方法であって、(a)少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたコア層作製用油相を作製する工程(以下、「コア層作製用油相作製工程」と称することがある)と、(b)前記コア層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からコア層作製用水中油型分散液に転相させる工程(以下、「コア層作製用水中油型分散液作製工程」と称することがある)と、(c)少なくともスルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたシェル層作製用油相を作製する工程(以下、「シェル層作製用油相作製工程」と称することがある)と、(d)前記シェル層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からシェル層作製用水中油型分散液に転相させる工程(以下、「シェル層作製用水中油型分散液作製工程」と称することがある)と、(e)前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液中の粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程(以下、「凝集工程」と称することがある)と、(f)前記(e)工程で得られた凝集粒子に前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液を添加して樹脂微粒子を得る工程(以下、「シェル化工程」と称することがある)と、を含み、更に必要に応じて、コア層作製用水相作製工程、シェル層作製用水相作製工程、脱溶媒工程、融着工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程、外添工程などのその他の工程を含んでいてもよい。
本発明の樹脂微粒子の製造方法は、前記(a)工程又は前記(e)工程において、結晶性ポリエステル樹脂を添加することを含む。
【0148】
<(a)コア層作製用油相作製工程>
前記(a)工程としてのコア層作製用油相作製工程は、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたコア層作製用油相を作製する工程である。
前記コア層作製用油相作製工程は、結晶性ポリエステル樹脂を添加することを含んでいてもよい。
【0149】
前記非晶性ポリエステル樹脂及び前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記(樹脂微粒子)の<非晶性ポリエステル樹脂>の項目及び<結晶性ポリエステル樹脂>に記載の通りである。
前記コア層作製用油相は、更に必要に応じて、着色剤又はマスターバッチ、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分は、前記(樹脂微粒子)の<その他の成分>の項目に記載の通りである。
【0150】
前記コア層作製用油相作製工程においては、まず有機溶媒中に、前記非晶性ポリエステル樹脂と、更に必要に応じて、着色剤又はマスターバッチ、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂などを分散させた油相を作製する。また、前記コア層作製用油相作製工程は、前記非晶性ポリエステル樹脂に代えて、プレポリマーと、硬化剤とを油相に含有させ、前記非晶性ポリエステル樹脂を作製することを含んでいてもよい。
【0151】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が100℃未満の揮発性の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が100℃未満の揮発性の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記有機溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒を用いることが、溶解性が高い点で好ましく、溶媒除去性の高い、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0152】
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の原料100質量部に対し、40質量部~300質量部が好ましく、60質量部~140質量部がより好ましく、80質量部~120質量部が更に好ましい。
【0153】
前記コア層作製用油相を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、有機溶媒中に、攪拌しながら前記非晶性ポリエステル樹脂と、更に必要に応じて、着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂などのコア層の原材料を徐々に添加し、溶解乃至分散させる方法などが挙げられる。
前記分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0154】
前記コア層作製用油相作製工程において前記離型剤又は前記結晶性ポリエステル樹脂を添加する場合、前記離型剤を水系媒体に分散させた分散液や、前記結晶性ポリエステル樹脂の分散液を用意し、これらの分散液と混合した上で添加することで、均一に離型剤や結晶性ポリエステル樹脂が分散したコア層作製用油相を得ることができる。
【0155】
前記分散液中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm以上500nm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、前記分散液中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0156】
前記分散液中の前記離型剤の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上600nm以下であることが好ましく、50nm以上400nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、前記分散液中の前記離型剤の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0157】
前記結晶性ポリエステル樹脂及び前記離型剤の分散粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-920、株式会社堀場製作所製)を用いて、測定することができる。
【0158】
<コア層作製用水相作製工程>
前記コア層作製用水相作製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0159】
前記水としては、例えば、イオン交換水などが挙げられる。
前記水と混和可能な溶媒としては、例えば、有機溶媒などが挙げられる。
前記有機溶媒としては、水と混和可能であれば、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒;メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール系の溶媒;、ジメチルホルムアミド等のアミド系の溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系の溶媒;セロソルブ系の溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水系媒体における前記有機溶媒の濃度としては、特に制限はないが、造粒性の点からイオン交換水に対する飽和濃度以下であることが好ましい。
【0160】
前記コア層作製用水相には、前記コア層作製用油相との乳化を良好に行うために界面活性剤を添加してもよい。前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、陰イオン界面活性剤を添加することが好ましい。
【0161】
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0162】
<(b)コア層作製用水中油型分散液作製工程>
前記(b)工程としてのコア層作製用水中油型分散液作製工程は、前記コア層作製用油相に水相、好ましくは前記コア層作製用水相を添加して、油中水型分散液からコア層作製用水中油型分散液に転相させる工程である。これにより、微粒子分散液(油滴)が得られる。
前記コア層作製用水中油型分散液作製工程では、前記コア層作製用油相を中和剤で中和した後、それに前記コア層作製用水相を添加していき、油中水型分散液(油中水型エマルション)から水中油型分散液(水中油型エマルション)に転相させる転相乳化によって微粒子分散液(微粒子分散液)を得ることが好ましい。
【0163】
前記中和剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
前記塩基性有機化合物としては、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0164】
中和時は、通常の攪拌機や分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行うことが好ましい。
前記攪拌機又は分散装置としては、特に限定はなく、例えば、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の攪拌機と分散装置とは併用してもよい。
【0165】
前記コア層の原材料を含有する油相を転相乳化させる際の、前記水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記コア層の原材料100質量部に対して、50質量部以上2,000質量部以下が好ましく、100質量部以上1,000質量部以下がより好ましい。前記水系媒体の使用量が、前記コア層の原材料100質量部に対して50質量部以上であると、前記コア層の原材料の分散状態が悪くなることを防止し、所定の粒径の樹脂微粒子が得られないことを抑制することができる。また、前記水系媒体の使用量が、前記コア層の原材料100質量部に対して2,000質量部以下であると、生産コストが高くなることを抑えることができる。
【0166】
前記コア層作製用水相を添加して転相乳化する際は、通常の攪拌機や分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行うことが好ましい。
前記攪拌機又は分散装置としては、特に限定はなく、例えば、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の攪拌機と分散装置とは併用してもよい。
【0167】
前記コア層作製用水中油型分散液中の前記油滴の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上2,000nm以下であることが好ましく、50nm以上500nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、前記コア層作製用水中油型分散液中の前記油滴の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0168】
前記コア層作製用水中油型分散液中の前記油滴の分散粒径は、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA-EX150、日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて、測定することができる。
【0169】
<(c)シェル層作製用油相作製工程>
前記(c)工程としてのシェル層作製用油相作製工程は、少なくともスルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたシェル層作製用油相を作製する工程である。これにより、微粒子分散液(油滴)が得られる。
【0170】
前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂及び前記非晶性ポリエステル樹脂は、前記(樹脂微粒子)の<非晶性ポリエステル樹脂>の項目に記載の通りである。
【0171】
前記シェル層作製用油相作製工程においては、まず有機溶媒中に、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を分散させた油相を作製する。
【0172】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、前記コア層作製用油相作製工程における有機溶媒と同様のものを使用することができ、使用量も同様である。
【0173】
前記シェル層作製用油相を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、有機溶媒中に、攪拌しながら前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂などのシェル層の原材料を徐々に添加し、溶解乃至分散させる方法などが挙げられる。
前記分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0174】
<シェル層作製用水相作製工程>
前記シェル層作製用水相作製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
前記水系媒体は、前記コア層作製用水相と同様のものを使用することができる。
【0175】
<(d)シェル層作製用水中油型分散液作製工程>
前記(d)工程としてのシェル層作製用水中油型分散液作製工程は、前記シェル層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からシェル層作製用水中油型分散液に転相させる工程である。これにより、微粒子分散液(油滴)が得られる。
【0176】
前記シェル層の原材料を含有する油相を転相乳化させる際の、前記水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記シェル層の原材料100質量部に対して、50質量部以上2,000質量部以下が好ましく、100質量部以上1,000質量部以下がより好ましい。前記水系媒体の使用量が、前記シェル層の原材料100質量部に対して50質量部以上であると、前記シェル層の原材料の分散状態が悪くなることを防止し、所定の粒径の樹脂微粒子が得られないことを抑制することができる。また、前記水系媒体の使用量が、前記シェル層の原材料100質量部に対して2,000質量部以下であると、生産コストが高くなることを抑えることができる。
【0177】
前記シェル層作製用水相を添加して転相乳化する際は、通常の攪拌機や分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行うことが好ましい。
前記攪拌機又は分散装置としては、特に限定はなく、例えば、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の攪拌機と分散装置とは併用してもよい。
【0178】
前記シェル層作製用水中油型分散液中の前記油滴の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4nm以上1,000nm以下であることが好ましく、4nm以上600nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、前記シェル層作製用水中油型分散液中の前記油滴の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0179】
<脱溶媒工程>
前記脱溶媒工程は、前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液又は前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液から前記有機溶媒を除去する工程である。
前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液又は前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液から前記有機溶媒を除去する方法としては、例えば、次の4つの方法が挙げられる。
(1)系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
(2)あるいは、得られた微粒子分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。
(3)若しくは、コア層作製用水中油型分散液又はシェル層作製用水中油型分散液を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去してもよい。
(4)もしくは、コア層作製用水中油型分散液又はシェル層作製用水中油型分散液を攪拌しながら、気体を吹き付けることで有機溶媒を蒸発除去しても良い。
なお、前記(2)、(3)、及び(4)の方法は、前記(1)の方法と併用することも可能である。
【0180】
前記(2)の方法において、コア層作製用水中油型分散液又はシェル層作製用水中油型分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に制限はなく、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体などが挙げられる。これらの中でも、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が好ましい。
前記噴霧の方法としては、例えば、スプレードライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0181】
前記(4)の方法において、吹き付ける気体としては、特に制限はなく、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体などが挙げられる。
【0182】
<(e)凝集工程>
前記(e)工程としての凝集工程は、前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液中の粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程である。
前記凝集工程は、結晶性ポリエステル樹脂を添加することを含んでいてもよい。
また、前記樹脂微粒子の製造方法が、前記脱溶媒工程を含む場合は、前記凝集工程は、前記脱溶媒工程で得られた前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液から有機溶媒が除去された母体粒子を得た後、該母体粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程であってもよい。
【0183】
前記凝集工程では、まず、前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液を攪拌しながら、粒子(油滴又は母体粒子)を任意の粒径になるまで凝集させる。
【0184】
前記油滴又は前記母体粒子を凝集させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凝集剤を添加する方法、pH調整を行う方法などが挙げられる。
【0185】
前記凝集剤としては、特に制限はなく、公知ものの中から適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0186】
前記凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、該凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0187】
前記凝集工程を行う反応系の温度(凝集時の分散液の温度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)付近であることが好ましい。前記温度が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪くなることがあり、前記温度が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化することがある。
【0188】
前記凝集工程は、前記凝集粒子が目的とする粒径に達した後、凝集を停止させる。
前記凝集を停止させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記凝集塩よりもイオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法;pHを調整する方法;凝集時の反応系(分散液)の温度を下げる方法;水系媒体を多量に添加して凝集時の反応系(分散液)濃度を薄める方法などが使用できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0189】
前記凝集粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0μm~6.0μmが好ましく、4.0μm~5.5μmがより好ましい。
【0190】
前記凝集工程においては、前記離型剤を添加してもよく、低温定着性のために前記結晶性ポリエステル樹脂を添加してもよい。
前記凝集工程において前記離型剤又は前記結晶性ポリエステル樹脂を添加する場合、前記離型剤を水系媒体に分散させた分散液や、同様に前記結晶性ポリエステル樹脂の分散液を用意し、前記微粒子分散液(油滴)と混合した上で凝集させていくことで、均一に離型剤や結晶性ポリエステル樹脂が分散した凝集粒子を得ることができる。
【0191】
前記分散液中の前記離型剤の分散粒径及び前記分散液中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散粒径は、前記コア層作製用油相作製工程における前記離型剤の分散粒径及び前記結晶性ポリエステル樹脂の分散粒径と同様にすることができる。
【0192】
<(f)シェル化工程>
前記(f)工程としてのシェル化工程は、前記(e)工程で得られた凝集粒子に前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液を添加して樹脂微粒子を得る工程である。これにより、前記(e)工程で得られた凝集粒子、好ましくは、後述する融着工程で得られた球形化粒子の表面に、スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を含有するシェル層を形成することができる。
【0193】
前記シェル層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(e)工程で得られた凝集粒子、好ましくは、後述する融着工程で得られた球形化粒子を作製した後、前記(d)工程で得られた、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を含有するシェル層作製用水中油型分散液を添加し、前記凝集工程及び前記融着工程を繰り返すことで、シェル層を形成する方法などが挙げられる。
【0194】
<融着工程>
前記融着工程は、前記凝集工程で得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させ、凹凸を減らす工程である。これにより、前記凝集粒子を所望の円形度の球形化粒子とすることができる。
前記融着工程を行う方法としては、例えば、前記凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱する方法などが挙げられる。
【0195】
前記加熱の温度としては、前記凝集粒子を融着させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記凝集粒子を含む系(液)の温度が、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を超えた温度付近が好ましい。具体的には、前記非晶性ポリエステル樹脂のTg以上Tg+20℃以下が好ましく、Tg以上Tg+10℃以下がより好ましい。
【0196】
前記融着を停止させる方法としては、特に制限はないが、前記凝集粒子が融着しない温度まで冷却する方法が好ましい。
【0197】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、前記シェル化工程で得られた樹脂微粒子、好ましくは、前記融着工程又は前記アニーリング工程で得られた樹脂微粒子を洗浄する工程である。
前記方法で得られた樹脂微粒子には、樹脂微粒子の他に凝集塩などの副材料が含まれていることがあるため、分散液から前記樹脂微粒子のみを取り出すために洗浄を行うことが好ましい。
【0198】
前記樹脂微粒子の洗浄方法としては、特に制限はなく、例えば、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などが挙げられる。いずれの方法によっても前記樹脂微粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法で前記樹脂微粒子を取り出す工程を繰り返してもよいし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて樹脂微粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採ってもよい。
【0199】
前記樹脂微粒子の洗浄に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系溶媒が好ましい。
前記水系溶媒としては、例えば、水、水とアルコールとの混合溶媒などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
これらの中でも、前記洗浄に用いる溶媒としては、コストや排水処理などによる環境負荷を考慮して、水を用いることが好ましい。
【0200】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記洗浄工程で得られた樹脂微粒子を洗浄する工程である。
前記洗浄工程で洗浄された樹脂微粒子は、前記水系媒体を多く抱き込んでいるため、前記乾燥工程で乾燥を行い、前記水系媒体を除去することで、前記樹脂微粒子のみを得ることができる。
【0201】
乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、又は攪拌式乾燥機等の乾燥機を使用する方法が挙げられる。
【0202】
乾燥された樹脂微粒子の最終的な水分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分が1質量%未満であることが好ましい。
【0203】
前記乾燥工程で乾燥された樹脂微粒子は、軟凝集をしており、使用に際して不都合が生じる場合には、解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
前記解砕を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、又はフードプロセッサー等の装置を用いる方法が挙げられる。
【0204】
<アニーリング工程>
前記アニーリング工程は、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を高め、前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂とを相分離させる工程である。
前記アニーリング工程は、前記乾燥工程の後に行われることが好ましい。
【0205】
前記アニーリングを行う方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、加熱する方法などが挙げられる。前記結晶性ポリエステル樹脂を添加した場合、前記乾燥工程後にアニーリング処理を行うことで、前記非晶性ポリエステル樹脂と前記結晶性ポリエステル樹脂とが相分離し、定着性が向上する。
【0206】
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、前記結晶性ポリエステル樹脂の組成などに応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)付近の温度で10時間以上保管することが好ましい。
【0207】
前記融着工程において、使用している樹脂のガラス転移温度(Tg)を超える温度付近で加熱した場合、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが相溶状態となることがあるが、前記アニーリング処理を行うと、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂との相分離が進み、相溶状態ではなくなる点で有利である。
【0208】
(トナー)
本発明のトナーは、本発明の樹脂微粒子を含有し、更に外添剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0209】
<樹脂微粒子>
前記樹脂微粒子は、前記(樹脂微粒子)の項目に記載の通りであり、その詳細は省略する。前記トナーにおいて、前記樹脂微粒子は、トナー母体粒子となる。
【0210】
前記トナーにおける前記樹脂微粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記トナーは、前記樹脂微粒子そのものであってもよい。
【0211】
<外添剤>
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、高分子系微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0212】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0213】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~2μmが好ましく、5nm~500nmがより好ましい。
【0214】
前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m2/g~500m2/gであることが好ましい。
【0215】
前記高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、又は分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステル共重合体又はアクリル酸エステル共重合体、シリコン、ベンゾグアナミン、又はナイロン等の重縮合系、若しくは、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0216】
前記外添剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
前記表面処理に用いられる表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0217】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂微粒子の全量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましい。
【0218】
<その他の成分>
前記トナーにおける前記その他の成分としては、トナーに使用し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0219】
前記トナーは、前記樹脂微粒子を含有するため、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れるものである。
【0220】
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー母体粒子としての樹脂微粒子と、前記外添剤とを混合する方法などが挙げられる。この際、機械的衝撃力を印加することが、前記トナー母体粒子の表面から前記外添剤の粒子が脱離するのを抑制することができる点で好ましい。
【0221】
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根によって、前記樹脂微粒子と前記外添剤との混合物に衝撃力を印加する方法;高速気流中に前記樹脂微粒子と前記外添剤との混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0222】
前記混合に使用する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、又はこれらの装置を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、若しくは、自動乳鉢などが挙げられる。
【0223】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明のトナーを含有し、更に必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含有する。
本発明の現像剤に含有される前記トナーは、本発明の樹脂微粒子を含有するため、前記現像剤は、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性のいずれにも優れるものでありこれにより、高画質な画像を安定に形成することができる。
【0224】
なお、前記現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0225】
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、前記トナーの収支が行われても、該トナーの粒径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0226】
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0227】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0228】
<<芯材>>
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、又は50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0229】
前記芯材の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。前記芯材の体積平均粒径が10μm以上であると、キャリア中に微粉が多くなることを防ぎ、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることを抑制することができる。また、前記芯材の体積平均粒径が150μm以下であると、比表面積が低下することを防ぎ、トナーの飛散が生じることを抑制することができ、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることを抑制することができる。
【0230】
前記トナーを二成分現像剤に用いる場合には、前記キャリアと混合して用いればよい。前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部以上98質量部以下が好ましく、93質量部以上97質量部以下がより好ましい。
【0231】
前記現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、又は二成分現像方法の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0232】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、本発明のトナーと、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、前記トナーを用いて現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
【0233】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、本発明のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を有する。
【0234】
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0235】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある)の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記静電潜像担持体の材質としては、例えば、無機感光体又は有機感光体が挙げられる。 前記無機感光体としては、例えば、アモルファスシリコン又はセレンが挙げられる。
前記有機感光体としては、アルミドラム等の支持体上に、無金属フタロシアニンやチタニルフタロシアニン等の電荷発生材料をバインダー樹脂に分散させた層(電荷発生層)と、電荷輸送材料をバインダー樹脂に分散させた層(電荷輸送層)とを積み重ねた積層構造を有する積層型感光体や、支持体上に電荷発生材料及び電荷輸送材料の両方をバインダー樹脂に分散させた単層構造の感光層を有する単層型感光体などが挙げられる。前記単層型感光体では感光層に電荷輸送材料として正孔輸送剤及び電子輸送剤を添加することもできる。また、支持体と、積層型の電荷発生層や単層型の感光層との間に、下引き層を設けてもよい。
【0236】
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。
前記円筒状の前記静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm以上100mm以下が好ましく、5mm以上50mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下が特に好ましい。
【0237】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段によって好適に行われる。
【0238】
前記静電潜像形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0239】
前記静電潜像形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができる。
【0240】
<<帯電部材及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触帯電器、コロトロン、又はスコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記接触帯電器は、導電性又は半導電性の、ローラ、ブラシ、フィルム、又はゴムブレード等を備えていることが好ましい。
【0241】
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0242】
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0243】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、又は液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
【0244】
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、又はエレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0245】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、又は色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0246】
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0247】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段は、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、前記トナーを用いて現像して可視像を形成する手段である。
前記現像工程は、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、前記トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程である。
前記現像工程は、前記現像手段によって好適に行われる。
【0248】
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、前記現像手段は、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよい。これらの中でも、前記現像手段としては、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0249】
前記現像手段内では、例えば、前記トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されている。そのため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0250】
ここで、前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(現像剤)の項目に記載のものを用いることができる。
【0251】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、又は制御手段が挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、又は制御工程が挙げられる。
【0252】
<<転写手段及び転写工程>>
前記転写手段は、前記現像手段で形成された可視像を記録媒体に転写する手段である。
前記転写工程は、前記現像工程で形成された可視像を記録媒体に転写する工程である。
前記転写工程は、前記転写手段により好適に行われる。
【0253】
前記転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0254】
前記転写工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に前記可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。具体的には、前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0255】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0256】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。
前記転写器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、又は粘着転写器が挙げられる。
【0257】
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0258】
<<定着手段及び定着工程>>
前記定着手段は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段である。
前記定着工程は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる工程である。
前記定着工程は、前記定着手段により好適に行われる。
【0259】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部材が好ましい。
前記加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、又は加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共に、あるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0260】
前記定着工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0261】
前記加熱加圧部材における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
【0262】
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm2以上80N/cm2以下であることが好ましい。
【0263】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する手段である。
前記クリーニング工程は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する工程である。
前記クリーニング工程は、前記クリーニング手段により好適に行われる。
【0264】
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、又はウエブクリーナが挙げられる。
【0265】
<<除電手段及び除電工程>>
前記除電手段は、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段である。
前記除電工程は、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程である。
前記除電工程は、前記除電手段により好適に行われる。
【0266】
前記除電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
【0267】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記トナーを前記現像手段に搬送し、リサイクルさせる手段である。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段に搬送し、リサイクルする工程である。
前記リサイクル工程は、前記リサイクル手段により好適に行われる。
【0268】
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
【0269】
<<制御手段及び制御工程>>
前記制御手段は、前記各手段の動きを制御できる手段である。
前記制御工程は、前記各工程の動きを制御できる工程である。
前記制御工程は、前記制御手段により好適に行われる。
【0270】
前記制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、又はコンピュータ等の機器が挙げられる。
【0271】
次に、本発明の画像形成装置及び本発明の画像形成方法の一実施形態について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
図1に示すカラー画像形成装置100Aは、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0272】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0273】
現像器40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0274】
図1に示すカラー画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0275】
図2に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている以外は、
図1に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0276】
図3に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。
図3に示す画像形成装置100Cは、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。
そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、
図3中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0277】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0278】
スタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0279】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。
【0280】
即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、
図4に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電手段である帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(
図4中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
【0281】
そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0282】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写機本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0283】
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0284】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0285】
(トナー収容ユニット)
本発明のトナー収容ユニットは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものである。
前記トナー収容ユニットに収容される前記トナーは、本発明のトナーである。また、前記トナー収容ユニットを、本発明の画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明のトナーを用いて画像形成が行われるため、低温定着性、付着力、帯電性能、及び耐熱保存性を両立できる。
【0286】
前記トナー収容ユニットの態様としては、前記トナーを収容できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー収容容器、現像器、又はプロセスカートリッジが挙げられる。
【0287】
<トナー収容容器>
前記トナー収容容器とは、前記トナーを収容した容器をいう。
前記トナー収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、容器本体と、キャップとを有するものなどが挙げられる。
【0288】
前記容器本体の大きさとしては、特に限定されず、適宜変更することができる。
【0289】
前記容器本体の形状としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、筒状であることが好ましい。
【0290】
前記容器本体の構造としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物である前記トナーが排出口側に移行することが可能である、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有する構造が好ましい。
【0291】
前記容器本体の材質としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、又はポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0292】
前記トナー収容容器は、保存及び搬送が容易であり、取扱性に優れるため、プロセスカートリッジ又は画像形成装置に着脱可能に取り付け、前記トナーの補給に使用することができる。
【0293】
<現像器>
前記現像器とは、前記トナーを収容し、現像手段を有するものをいう。
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー収容容器と、該トナー収容容器内に収容されたトナーを担持すると共に搬送するトナー担持体とを少なくとも有する。
なお、前記現像手段は、担持するトナーの厚さを規制するため規制部材等を更に有してもよい。
【0294】
<プロセスカートリッジ>
前記プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体と、現像手段とを一体とし、前記トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に必要に応じて、帯電手段、露光手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1種を有していてもよい。
【0295】
前記プロセスカートリッジの一例としては、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を前記トナーで現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有するものなどが挙げられ、必要に応じて、更にその他の手段を有していてもよい。
【0296】
次に、前記プロセスカートリッジの一実施形態を
図5に示す。本実施形態のプロセスカートリッジ110は、
図5に示すように、静電潜像担持体10を内蔵し、帯電手段としての帯電器58、現像手段としての現像器40、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置90を含み、更に必要に応じてその他の手段を有する。
図5中、符号Lは、露光手段(図示せず)からの露光、符号95は記録紙をそれぞれ示す。
静電潜像担持体10としては、画像形成装置における静電潜像担持体と同様のものを用いることができる。帯電器58には、任意の帯電部材が用いられる。
図5に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについては、静電潜像担持体10は、矢印方向に回転しながら、帯電器58による帯電、露光手段による露光Lにより、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像器40でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ80により、記録紙95に転写され、プリントアウトされる。次いで、画像転写後の静電潜像担持体10表面は、クリーニング装置90によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例0297】
以下に製造例、合成例、調製例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、合成例、調製例、及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、製造例、合成例、調製例、実施例、及び比較例において、別段の断りない限り、「%」は「質量%」を示し、「部」は「質量部」を示す。また、実施例及び比較例における配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0298】
(製造例1:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸133部、アジピン酸22部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]の下記方法で算出したSP値は11.1であった。
【0299】
(製造例2:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S2の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物16部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物34部、エチレングリコール47部、1,3-プロピレングリコール7.6部、テレフタル酸141部、コハク酸12部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S2]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S2]の下記方法で算出したSP値は12.0であった。
【0300】
(製造例3:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S3の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド5モル付加物22部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド5モル付加物492部、テレフタル酸17部、アジピン酸124部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S3]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S3]の下記方法で算出したSP値は10.0であった。
【0301】
(製造例4:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S4の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール50部、グリセロール18部、テレフタル酸96部、フマル酸12部、無水トリメリット酸57部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S4]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S4]の下記方法で算出したSP値は13.0であった。
【0302】
(製造例5:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S5の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸136部、アジピン酸22部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム4.9部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S5]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S5]の下記方法で算出したSP値は11.1であった。
【0303】
(製造例6:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S6の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸136部、アジピン酸22部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム9.8部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S6]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S6]の下記方法で算出したSP値は11.1であった。
【0304】
(製造例7:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S7の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸133部、アジピン酸22部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム19.6部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S7]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S7]の下記方法で算出したSP値は11.1であった。
【0305】
(製造例8:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S8の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸133部、アジピン酸22部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム24.5部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S8]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S8]の下記方法で算出したSP値は11.1であった。
【0306】
(製造例9:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S9の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド5モル付加物22部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド5モル付加物492部、テレフタル酸17部、アジピン酸129部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム4.9部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S9]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S9]の下記方法で算出したSP値は10.0であった。
【0307】
(製造例10:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S10の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド5モル付加物22部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド5モル付加物492部、テレフタル酸17部、アジピン酸130部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム2.5部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S10]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S10]の下記方法で算出したSP値は10.0であった。
【0308】
(製造例11:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S11の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール50部、グリセロール18部、テレフタル酸95部、フマル酸12部、無水トリメリット酸48部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム24.5部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S11]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S11]の下記方法で算出したSP値は13.0であった。
【0309】
(製造例12:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S12の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール50部、グリセロール18部と、テレフタル酸95部、フマル酸12部、無水トリメリット酸48部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム27部仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S12]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S12]の下記方法で算出したSP値は13.0であった。
【0310】
(製造例13:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S13の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド5モル付加物22部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド5モル付加物492部、アジピン酸88部、ドデカン二酸81部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S13]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S13]の下記方法で算出したSP値は9.9であった。
【0311】
(製造例14:スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール22部、グリセロール18部、テレフタル酸80部、無水トリメリット酸99部、及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム12.3部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]を得た。[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]の下記方法で算出したSP値は13.5であった。
【0312】
(製造例15:シェル樹脂SL1の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物122部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物199部、テレフタル酸133部、アジピン酸22部、及びトリメチロールプロパン4.7部を仕込み、次いで、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸0.21部と、オルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して200ppmとなるように添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[シェル樹脂SL1]を得た。[シェル樹脂SL1]の下記方法で算出したSP値は11.0であった。
【0313】
[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]~[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]及び[シェル樹脂SL1]のSP値、スルホン酸塩基量、及び酸価を以下の方法で測定し、測定結果を下記表1に示した。
【0314】
<<スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂又はシェル樹脂SL1のSP値>>
製造例1~14で得られた[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]~[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]及び製造例15で得られた[シェル樹脂SL1]のSP値は、製造時のモノマー仕込量からFedors法により算出した。
【0315】
<<スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂又はシェル樹脂SL1のスルホン酸塩基>>
製造例1~14で得られた[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]~[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]及び製造例15で得られた[シェル樹脂SL1]のスルホン酸塩基の量は、熱分解GCで得られたスルホン酸塩基を有するモノマー由来のクロマトグラムの面積を、該スルホン酸塩基を有するモノマーの検量線式に代入して計算した。
【0316】
<<スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂又はシェル樹脂SL1の酸価>>
製造例1~14で得られた[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]~[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]及び製造例15で得られた[シェル樹脂SL1]の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定した。
各樹脂0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加し、室温(23℃)で約10時間撹拌して溶解した。更に、エタノール30mLを添加して試料溶液とした。
電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃にて前記試料溶液の酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析した。なお、装置には、トルエン120mLとエタノール30mLとの混合溶媒を用いた。
測定は、前記測定方法にて実施することができるが、酸価は、具体的には次のように計算した。予め、標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、下記式により酸価を算出した。
酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料質量[g]
(ただし、前記式において、「N」は、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクターを示す。)
【0317】
【0318】
(製造例16:非晶性ポリエステル樹脂A1の合成)
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分として、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物(モル比40/60)、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸/アジピン酸(モル比85/15)、全モノマー量に対して3.5モル%のトリメチロールプロパンを、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.2となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmとなるように添加し、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、全モノマー量に対して1.0モル%の無水トリメリット酸と、全モノマー量に対して200ppmのオルトチタン酸テトラブチルを添加し、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、DSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度(Tg)が57℃、重量平均分子量が7,700、酸価18mgKOH/gの[非晶性ポリエステル樹脂A1]を得た。
【0319】
<<非晶性ポリエステル樹脂A1のガラス転移温度の測定>>
製造例16で得られた[非晶性ポリエステル樹脂A1]のガラス転移温度(Tg)は、DSCシステム(示差走査熱量計)(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いて以下の方法で測定した。
まず、[非晶性ポリエステル樹脂A1]約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱した(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/分間にて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱(昇温2回目)した。この昇温1回目及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測した。
得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、[非晶性ポリエステル樹脂A1]の昇温2回目におけるガラス転移温度を求め、これを[非晶性ポリエステル樹脂A1]のガラス転移温度(Tg)とした。
【0320】
<<非晶性ポリエステル樹脂A1の分子量の測定>>
製造例16で得られた[非晶性ポリエステル樹脂A1]の分子量は、[非晶性ポリエステル樹脂A1]をテトラヒドロフラン(THF)(安定剤含有、富士フイルム和光純薬株式会社製)又はクロロホルムに0.15質量%で溶解した後に、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定装置を用いて、下記分析条件で測定した。
[分析条件]
・ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel(登録商標) SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)又はクロロホルム
・流速:0.35mL/分間
・試料:0.15質量%の試料を100μL注入
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Showdex(登録商標)STANDARD(昭和電工株式会社製)のStd.No. S-6550、S-1700、S-740、S-321、S-129、S-10、S-2.9、及びS-0.6を用いた。
【0321】
<<非晶性ポリエステル樹脂A1の酸価の測定>>
製造例16で得られた[非晶性ポリエステル樹脂A1]の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して、前記スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂又はシェル樹脂SL1の酸価の測定方法と同様の方法で測定した。
【0322】
(合成例17:結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率[OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。
【0323】
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-1](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の融点温度で加熱しながら攪拌し、上記結晶性ポリエステル樹脂を溶解させ溶解液を得た。
【0324】
(調製例1:結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1aの作製)
攪拌棒及び温度計をセットした容器に[結晶性ポリエステル樹脂C-1]45部及び酢酸エチル450部を仕込み、攪拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]を得た。得られた[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は450nm、固形分濃度は10%であった。
【0325】
<<樹脂粒子の固形濃度の算出方法>>
調製例1で得られた[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]をアルミ容器に0.9000g~1.0000g精秤し、内温を150℃に設定した恒温槽に1時間静置した後、恒温槽から取り出し、その残量から下記式により算出した。
固形分濃度[%]=(150℃にて1時間静置後の残量[g])/(精秤した[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]の量)×100
【0326】
(調製例2:ワックス分散液1の作製)
攪拌棒及び温度計をセットした容器に離型剤としてエステルワックス(WE-11、日油株式会社製、植物由来モノマーの合成ワックス、融点67℃)50部、及び酢酸エチル120部を仕込み、攪拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散を行い[ワックス分散液1]を得た。得られた[ワックス分散液1]のメジアン径は400nm、固形分濃度は25%であった。
【0327】
<<ワックスの固形濃度の算出方法>>
調製例2で得られた[ワックス分散液1]中のワックスの固形分濃度は、[ワックス分散液1]をアルミ容器に0.9000g~1.0000g精秤し、内温を150℃に設定した恒温槽に1時間静置した後、恒温槽から取り出し、その残量から下記式により算出した。
固形分濃度[%]=(150℃にて1時間静置後の残量[g])/(精秤した[ワックス分散液1]の量)×100
【0328】
<<結晶性ポリエステル樹脂分散液及びワックス分散液のメジアン径の測定>>
調製例1で得られた[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]及び調製例2で得られた[ワックス分散液1]のメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-920、株式会社堀場製作所製)に[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]又は[ワックス分散液1]を分散液の状態で投入し、下記測定条件で測定した。
[測定条件]
・溶媒:酢酸エチル
・測定用セル:バッチ式セル10mL
・循環:超音波プローブ 30W、22.5kHz
・測定試料量:透過率75%~90%
・測定時間:20秒間
【0329】
(調製例3:マスターバッチ(MB)の調製)
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕400部、及び[非晶性ポリエステル樹脂A1]600部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0330】
(調製例4:コアエマルジョン1の作製)
<コア油相の調製>
[非晶性ポリエステル樹脂A1]51.1部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1a]64部、[ワックス分散液1]20部、[マスターバッチ1]22.5部、及び酢酸エチル14.4部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[コア油相1]を得た。得られた[コア油相1]の固形分濃度は50%であった。なお、上記配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0331】
<<ワックスの固形濃度の算出方法>>
調製例4で得られた[コア油相1]中の固形分濃度は、[コア油相1]をアルミ容器に0.9000g~1.0000g精秤し、内温を150℃に設定した恒温槽に1時間静置した後、恒温槽から取り出し、その残量から下記式により算出した。
固形分濃度[%]=(150℃にて1時間静置後の残量[g])/(精秤した[コア油相1]の量)×100
【0332】
<コア水相の調製>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合攪拌し、乳白色の液体を得た。これを[コア水相1]とした。
【0333】
<コアエマルジョンの作製>
[コア油相1]703部をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで攪拌しながら、[非晶性ポリエステル樹脂A1]の酸価18mgKOH/gに対して中和率100%になるようにして28%アンモニア水5.1部を加え、10分間混合した後、[コア水相1]1197部を徐々に滴下していき、[コア油相1]を転相乳化した。更に[コア油相1]を転相乳化したものをエバポレーターで脱溶媒して[コアエマルジョン1]を得た。
[コアエマルジョン1]の体積平均粒径を測定したところ210nmであった。また固形分濃度を測定したところ、25.0%であった。
【0334】
(調製例5:コアエマルジョン2の作製)
調製例4のコアエマルジョン1の作製の<コア油相の調製>において、[非晶性ポリエステル樹脂A1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]に変更して[コア油相2]を調製した。また、調製例4のコアエマルジョン1の作製の<コアエマルジョンの作製>において、28%アンモニア水の添加量を5.1部から7,7部に変更したこと以外は、調製例4と同様の方法で[コアエマルジョン2]を得た。
[コアエマルジョン2]の体積平均粒径を測定したところ310nmであった。また固形分濃度を測定したところ、25%であった。
【0335】
<<コアエマルジョンの体積平均粒径の測定>>
調製例4及び5で得られた[コアエマルジョン1]及び[コアエマルジョン2]の体積平均粒径は、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA-EX150、日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて、下記測定条件で測定した。
[測定条件]
・測定時間:30秒間
・サンプル投入量:Loading Index 1.0
・粒子条件
- 透過性:透過
- 粒子屈折率:1.59
- 温度:25℃
- 粒子形状:真球形
・溶媒条件
- 溶媒:水
- 溶媒屈折率:1.333
- 高温時粘度:30℃、0.797mPa・s
- 低温時粘度:20℃、1.002mPa・s
【0336】
<<コアエマルジョンの固形濃度の算出方法>>
調製例4で得られた[コアエマルジョン1]及び調製例5で得られた[コアエマルジョン2]の固形分濃度は、[コアエマルジョン1]又は[コアエマルジョン2]をアルミ容器に0.9000g~1.0000g精秤し、内温を150℃に設定した恒温槽に1時間静置した後、恒温槽から取り出し、その残量から下記式により算出した。
固形分濃度[%]=(150℃にて1時間静置後の残量[g])/(精秤した[コアエマルジョン]の量)×100
【0337】
(調製例6:シェルエマルジョン1の作製)
<シェル樹脂溶解液1の調製>
[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]200部及びメチルエチルケトン200部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[シェル樹脂溶解液1]を得た。得られた[シェル樹脂溶解液1]の固形分濃度は50%であった。
【0338】
<<シェル樹脂溶解液の固形濃度の算出方法>>
調製例6で得られた[シェル樹脂溶解液1]の固形分濃度は、[シェル樹脂溶解液1]をアルミ容器に0.9000g~1.0000g精秤し、内温を150℃に設定した恒温槽に1時間静置した後、恒温槽から取り出し、その残量から下記式により算出した。
固形分濃度[%]=(150℃にて1時間静置後の残量[g])/(精秤した[シェル樹脂溶解液1]の量)×100
【0339】
<シェル水相1の調製>
水468部及びメチルエチルケトン132部を混合攪拌し、白透明の液体を得た。これを[シェル水相1]とした。
【0340】
<シェルエマルジョン1の作製>
[シェル樹脂溶解液1]の溶解液400部をTKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で、回転数8,000rpmで攪拌しながら、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]の酸価27.1mgKOH/gに対して中和率100%になるようにして28%アンモニア水5.9部を加え、10分間混合した後、[シェル水相1]600部を徐々に滴下していき、[シェル樹脂溶解液1]を転相乳化した。さらに[シェル樹脂溶解液1]の転相乳化したものをエバポレーターで脱溶媒して[シェルエマルジョン1]を得た。
【0341】
(調製例7:シェルエマルジョン2の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S2]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液2]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液2]に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン2]を作製した。
【0342】
(調製例8:シェルエマルジョン3の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S3]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液3]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液3]に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン3]を作製した。
【0343】
(調製例9:シェルエマルジョン4の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S4]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液4]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液4]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から6.6部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン4]を作製した。
【0344】
(調製例10:シェルエマルジョン5の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S5]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液5]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液5]に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン5]を作製した。
【0345】
(調製例11:シェルエマルジョン6の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S6]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液6]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液6]に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン6]を作製した。
【0346】
(調製例12:シェルエマルジョン7の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S7]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液7]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液7]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から6.0部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン7]を作製した。
【0347】
(調製例13:シェルエマルジョン8の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S8]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液8]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液8]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から6.0部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン8]を作製した。
【0348】
(調製例14:シェルエマルジョン9の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S9]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液9]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液9]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から5.8部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン9]を作製した。
【0349】
(調製例15:シェルエマルジョン10の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S10]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液10]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液10]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から5.8部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン10]を作製した。
【0350】
(調製例16:シェルエマルジョン11の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S11]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液11]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液11]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から6.4部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン11]を作製した。
【0351】
(調製例17:シェルエマルジョン12の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S12]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液12]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液12]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から6.4部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン12]を作製した。
【0352】
(調製例18:シェルエマルジョン13の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S13]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液13]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液13]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から5.8部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン13]を作製した。
【0353】
(調製例19:シェルエマルジョン14の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S14]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液14]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液14]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から7.2部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン14]を作製した。
【0354】
(調製例20:シェルエマルジョン15の作製)
調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェル樹脂溶解液1の調製>において、[スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂S1]を[シェル樹脂SL1]に変更したこと以外は、調製例6の<シェル樹脂溶解液1の調製>と同様の方法で[シェル樹脂溶解液15]を調製した。また、調製例6のシェルエマルジョン1の作製の<シェルエマルジョン1の作製>において、[シェル樹脂溶解液1]を[シェル樹脂溶解液15]に変更し、28%アンモニア水の添加量を5.9部から5.8部に変更したこと以外は、調製例6の<シェルエマルジョン1の作製>と同様の方法で[シェルエマルジョン15]を作製した。
【0355】
調製例6~19で作製した[シェルエマルジョン1]~[シェルエマルジョン14]及び調製例20で作製した[シェルエマルジョン15]の性状を下記表2に示した。
【0356】
【0357】
(実施例1)
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン1]18.3部を水30部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液15部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0358】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム29部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液1]を得た。
【0359】
<アニーリング工程、洗浄工程、及び乾燥工程>
[トナー分散液1]を45℃で10時間保管した後に減圧濾過し、以下のように洗浄と乾燥を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、減圧濾過した。
(2):前記(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。減圧濾過により得られた濾液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した後、濾過して[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[着色樹脂粒子1]を得た。
【0360】
<外添>
[着色樹脂粒子1]100部に対して無機微粒子(CAB-O-SIL(登録商標)TS-530フュームドシリカ、キャボジル社製)2.5部を添加し、ヘンシェルミキサーで40m/秒間で10分間混合処理し、[トナー1]を得た。
【0361】
(実施例2)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン2]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー2]を得た。
【0362】
(実施例3)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン3]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー3]を得た。
【0363】
(実施例4)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン4]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー4]を得た。
【0364】
(実施例5)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン5]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー5]を得た。
【0365】
(実施例6)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン6]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー6]を得た。
【0366】
(実施例7)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン7]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー7]を得た。
【0367】
(実施例8)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン8]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー8]を得た。
【0368】
(実施例9)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー9]を得た。
【0369】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン1]4.1部を水6.6部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液12部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0370】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム25部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液9]を得た。
【0371】
(実施例10)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー10]を得た。
【0372】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン1]9.2部を水15部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液13部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0373】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム26部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液10]を得た。
【0374】
(実施例11)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー11]を得た。
【0375】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン1]33.8部を水55部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液17部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0376】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム34部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液11]を得た。
【0377】
(実施例12)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー12]を得た。
【0378】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン1]52.5部を水86部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液20部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0379】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム39部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液12]を得た。
【0380】
(実施例13)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー13]を得た。
【0381】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン9]4.1部を水6.6部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液12部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0382】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム25部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液13]を得た。
【0383】
(実施例14)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー14]を得た。
【0384】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン10]34.1部を水6.6部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液12部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0385】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム25部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液14]を得た。
【0386】
(実施例15)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー15]を得た。
【0387】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン9]3.3部を水5.4部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液12部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0388】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム25部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液15]を得た。
【0389】
(実施例16)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー16]を得た。
【0390】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、体積平均粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン10]3.3部を水5.4部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液12部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0391】
なお、凝集工程及びシェル化工程において、[シェルエマルジョン10]を添加する前の粒径は、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマ・ンコールター株式会社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことにより測定した。
【0392】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム25部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液16]を得た。
【0393】
(実施例17)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー17]を得た。
【0394】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン11]52.5部を水86部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液20部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0395】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム39部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液17]を得た。
【0396】
(実施例18)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー18]を得た。
【0397】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン12]52.5部を水86部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液20部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0398】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム39部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液18]を得た。
【0399】
(実施例19)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー17]を得た。
【0400】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン11]52.8部を水86部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液20部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0401】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム40部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液19]を得た。
【0402】
(実施例20)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>及び<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー20]を得た。
【0403】
<凝集工程及びシェル化工程>
[コアエマルジョン1]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmなったところで、[シェルエマルジョン12]54.8部を水89部で希釈したものを投入して、更に20%硫酸マグネシウム水溶液20部を滴下して更に10分間攪拌した後、65℃に昇温して30分間攪拌した。
【0404】
<融着及び停止工程>
次いで、硫酸ナトリウム40部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液20]を得た。
【0405】
(比較例1)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン13]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー21]を得た。
【0406】
(比較例2)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン14]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー22]を得た。
【0407】
(比較例3)
実施例1の<凝集工程及びシェル化工程>における[シェルエマルジョン1]を[シェルエマルジョン15]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー23]を得た。
【0408】
(比較例4)
実施例1において、<凝集工程及びシェル化工程>を以下の<凝集工程>に変更し、<融着及び停止工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で[トナー24]を得た。
【0409】
<凝集工程>
[コアエマルジョン2]100部及びイオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液6.3部を滴下して更に5分間攪拌した後、55℃に昇温した。
【0410】
<融着及び停止工程>
次いで、体積平均粒径が5.0μmなったところで、硫酸ナトリウム24部を添加し、70℃に加熱して、所望の円形度である0.957~0.962になったところで冷却し、[トナー分散液24]を得た。
【0411】
なお、融着及び停止工程において、硫酸ナトリウムを添加する前の粒径は、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマ・ンコールター株式会社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことにより測定した。
【0412】
実施例1~20及び比較例1~24で得られた[トナー1]~[トナー24]の性状を下記表3に示した。
【0413】
【0414】
<現像剤の作製>
<<キャリアの作製>>
トルエン100部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0415】
<<現像剤1~24の作製>>
ボールミルを用いて、[トナー1]~[トナー24]5部と、[キャリア]95部とをそれぞれ混合し、実施例1~20及び比較例1~4の2成分系の[現像剤1]~[現像剤24]を作製した。
【0416】
<評価>
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用い、以下のようにして諸特性を評価した。結果を下記表4に示した。
【0417】
<<低温定着性>>
紙面(PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目、株式会社リコー製)上に2cm×15cmのベタ画像をトナーの付着量が0.40mg/cm2となるように前記現像剤により現像した。このとき、前記現像剤を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンター(imagio MP C5503、株式会社リコー製)から熱定着機を外したもの)を用いた。この紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/秒間、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定し、下記評価基準に基づき低温定着性を評価した。なお、コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。◎、〇、及び△が実用上問題のない範囲である。
-低温定着性の評価基準-
◎:コールドオフセットの発生温度(MFT)が130℃以下
○:コールドオフセットの発生温度(MFT)が130℃超135℃以下
△:コールドオフセットの発生温度(MFT)が135℃超140℃以下
×:コールドオフセットの発生温度(MFT)が140℃超
【0418】
<<トナーの付着力>>
各トナーの160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)は、粉体層の圧縮・引張特性計測装置アグロボット(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定した。
下記条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の各トナーを充填し、各トナーを160kN/m2の圧力下で保持した後、上部セルを持ち上げて粉体層が破断されたときの最大引張破断力、圧縮時の粉体層高さ、セル内径、トナー平均粒径、トナー真密度、及びトナー量から算出した。
具体的には、トナー量:8.00g±0.02g、環境温度:25±2℃、湿度:30±5%RH、セル内径:25mm、セル温度:25℃、バネ線径:1.0mm、圧縮速度:0.1mm/秒間、圧縮荷重:8kg(加圧力:160kN/m2)、圧縮保持時間:60秒間、引張速度:0.6mm/秒間、引張サンプリング開始時間:0秒間、及び引張サンプリング時間:25秒間の条件にて測定を行い、付属のアプリケーションソフトにより算出された二粒子間力(Fp[gf])を、トナーの160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)とし、下記評価基準に基づきトナーの付着力を評価した。なお、測定は、トナーを、23℃、53%RHで24時間調湿して行った。◎、〇、及び△が実用上問題のない範囲である。
-トナーの付着力の評価基準-
◎:Fp≦200gfであり、非常に良好である
○:200gf<Fp≦300gfであり、良好である
△:300gf<Fp≦500gfであり、許容できる
×:500gf<Fpであり、破断不良が生じる
【0419】
<<耐熱保存性>>
50mLのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃まで冷却した。次に、針入度試験(JIS K 2235-1991)により針入度[mm]を測定し、下記評価基準に基づき耐熱保存性を評価した。◎、〇、及び△が実用上問題のない範囲である。
-耐熱保存性の評価基準-
◎:針入度が20mm以上
○:針入度が15mm以上20mm未満
△:針入度が10mm以上15mm未満
×:針入度が10mm未満
【0420】
<<帯電性>>
2成分系現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、280rpmの攪拌速度で攪拌し、ブローオフ法により帯電量を求めた。なお、攪拌時間は、15秒間(TA15)、60秒間(TA60)、及び600秒間(TA600)で測定し、下記評価基準に基づき帯電性を評価した。キャリアは前記した方法で作製した[キャリア]を用いた。◎、〇、及び△が実用上問題のない範囲である。
-帯電性の評価基準-
◎:帯電量が36[-μC/g]以上
○:帯電量が33[-μC/g]以上36[-μC/g]未満
△:帯電量が30[-μC/g]以上33[-μC/g]未満
×:帯電量が30[-μC/g]未満
【0421】
【0422】
上記表4の結果から、実施例1~20では、低温定着性、トナーの付着力、耐熱保存性、及び帯電性のいずれも優れた性能を示すことがわかった。一方、比較例1及び2は、トナー母体粒子の表面上のシェル化が良好にできていないため、耐熱保存性や帯電性が低下していた。比較例3は、スルホン酸塩基を有しないため、帯電性が大幅に低下していた。比較例4は、スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂のみからなり、コアシェル構造を有しないため、トナー母体粒子の表面の結晶性ポリエステル樹脂及びワックスを適正に制御することができず、低温定着性、トナー付着力、及び耐熱保存性が悪化していた。
【0423】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 少なくとも非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤を含有する樹脂微粒子であって、
前記非晶性ポリエステル樹脂がスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記樹脂微粒子が、コア層とシェル層とを有するコアシェル構造を有し、
前記シェル層が、少なくとも前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂のSP値が10~13の範囲であることを特徴とする樹脂微粒子である。
<2> 前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂におけるスルホン酸塩基を有するモノマー単位のモル比が、前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を構成するカルボン酸モノマーの全量に対して2モル%~10モル%である、前記<1>に記載の樹脂微粒子である。
<3> 前記スルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂の含有量が5質量%~40質量%である、前記<1>又は前記<2>に記載の樹脂微粒子である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法であって、
(a)少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたコア層作製用油相を作製する工程と、
(b)前記コア層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からコア層作製用水中油型分散液に転相させる工程と、
(c)少なくともスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有する非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させたシェル層作製用油相を作製する工程と、
(d)前記シェル層作製用油相に水相を添加して、油中水型分散液からシェル層作製用水中油型分散液に転相させる工程と、
(e)前記(b)工程で得られたコア層作製用水中油型分散液中の粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程と、
(f)前記(e)工程で得られた凝集粒子に前記(d)工程で得られたシェル層作製用水中油型分散液を添加して樹脂微粒子を得る工程と、
を含み、
前記(a)工程又は前記(e)工程において、結晶性ポリエステル樹脂及び離型剤を添加することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法である。
<5> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂微粒子を含有することを特徴とするトナーである。
<6> 更に外添剤を含有する、前記<5>に記載のトナーである。
<7> 前記<5>又は前記<6>に記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤である。
<8> 前記<5>又は前記<6>に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニットである。
<9> 前記<5>又は前記<6>に記載のトナーと、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、前記トナーを用いて現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0424】
前記<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂微粒子、前記<4>に記載の樹脂微粒子の製造方法、前記<5>及び<6>に記載のトナー、前記<7>に記載の現像剤、前記<8>に記載のトナー収容ユニット、及び前記<9>に記載の画像形成装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。