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特開2024-98842配線基板及びその製造方法、半導体モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098842
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法、半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240717BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L23/14 M
H01L23/12 C
H01L25/04 C
H05K1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002596
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 明宏
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338AA18
5E338BB33
5E338BB63
5E338CD33
(57)【要約】
【課題】配線の厚さばらつきを低減した配線基板を提供する。
【解決手段】本配線基板は、金属箔と、前記金属箔の一方の面に設けられ、補強部材を備える第1樹脂層と、前記金属箔の他方の面に設けられた第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、前記他方の面を選択的に露出する開口部を備え、前記金属箔は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層よりも厚く、前記金属箔は、前記第2樹脂層及び前記金属箔を貫通して前記第1樹脂層に端部を塞がれた溝によりパターニングされた配線を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、
前記金属箔の一方の面に設けられ、補強部材を備える第1樹脂層と、
前記金属箔の他方の面に設けられた第2樹脂層と、を有し、
前記第2樹脂層は、前記他方の面を選択的に露出する開口部を備え、
前記金属箔は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層よりも厚く、
前記金属箔は、前記第2樹脂層及び前記金属箔を貫通して前記第1樹脂層に端部を塞がれた溝によりパターニングされた配線を含む、配線基板。
【請求項2】
前記金属箔の厚さは、50μm以上100μm以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記配線の幅は、250μm以上である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記金属箔は、外縁に、前記溝により前記配線と分離された枠部を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも薄い、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板と、
前記配線基板の前記他方の面側に搭載され、前記配線と電気的に接続される半導体装置と、を有する半導体モジュール。
【請求項7】
前記半導体装置は、セラミック基板と、前記セラミック基板に搭載された半導体チップと、を有し、
前記半導体チップは、前記配線と電気的に接続される、請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記半導体チップは、パワー半導体である、請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
金属箔と、補強部材を備える第1プリプレグと、第1金属層と、第2プリプレグ上に第2金属層及び第3金属層が積層された構造体と、を準備する工程と、
前記第1プリプレグ及び前記第1金属層を前記金属箔の一方の面に順次積層し、前記構造体を前記第2プリプレグが前記金属箔側を向くように前記金属箔の他方の面に積層し、前記第1プリプレグ及び前記第2プリプレグを硬化させて第1樹脂層及び第2樹脂層とする工程と、
前記第3金属層を除去する工程と、
前記第2樹脂層及び前記第2金属層を貫通し、前記他方の面を露出する開口部を形成する工程と、
前記開口部内に露出する前記金属箔をエッチングし、前記第2樹脂層及び前記金属箔を貫通して前記第1樹脂層に端部を塞がれた溝を形成し、前記溝によりパターニングされた配線を形成する工程と、
前記第1金属層及び前記第2金属層を除去する工程と、
前記第2樹脂層に、前記他方の面を選択的に露出する第2開口部を形成する工程と、を含み、
前記金属箔は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層よりも厚い、配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記配線を形成する工程と、前記第1金属層及び前記第2金属層を除去する工程とは、同一工程である、請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを搭載することができる配線基板が知られている。例えば、基材としてポリイミド等の樹脂フィルムを用い、樹脂フィルムに電解めっきによりビアや配線を形成した配線基板が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-88990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、めっきにより配線を形成する場合、厚い配線を形成しようとすると、均一電着性が低下し、配線の厚さがばらつく場合がある。配線の厚さがばらつくと、電気特性の低下や電子部品との接続信頼性の低下につながるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線の厚さばらつきを低減した配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、金属箔と、前記金属箔の一方の面に設けられ、補強部材を備える第1樹脂層と、前記金属箔の他方の面に設けられた第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、前記他方の面を選択的に露出する開口部を備え、前記金属箔は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層よりも厚く、前記金属箔は、前記第2樹脂層及び前記金属箔を貫通して前記第1樹脂層に端部を塞がれた溝によりパターニングされた配線を含む。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、配線の厚さばらつきを低減した配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する図である。
図2】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】第1実施形態の応用例に係る半導体モジュールを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[配線基板の構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA-A線に沿う断面図である。なお、図1(a)では、後述の第1樹脂層21及び第2樹脂層31の図示を省略し、後述の金属箔10(配線11、枠部12)及び溝10xのみを図示している。
【0011】
図1を参照すると、配線基板1は、金属箔10と、第1樹脂層21と、第2樹脂層31とを有している。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、図1における配線基板1の第1樹脂層21側を上側又は一方の側、第2樹脂層31側を下側又は他方の側とする。また、各部位の第1樹脂層21側の面を一方の面又は上面、第2樹脂層31側の面を他方の面又は下面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を金属箔10の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を金属箔10の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
金属箔10は、配線基板1の全体を主に支持する部分である。金属箔10は、配線11と、枠部12とを含むことができる。配線11は、第2樹脂層31及び金属箔10を貫通して第1樹脂層21に端部を塞がれた溝10xによりパターニングされている。枠部12は、金属箔10の外縁に額縁状に設けられている、枠部12は、溝10xにより配線11と分離されている。なお、枠部12は、必要に応じて設けることができる。すなわち、金属箔10は、配線11を含み、枠部12を含まない構成としてもよい。
【0014】
金属箔10は、第1樹脂層21及び第2樹脂層31よりも厚い。金属箔10が第1樹脂層21及び第2樹脂層31よりも厚いことにより、配線基板1に必要な剛性を確保しやすくなる。金属箔10の厚さは、例えば、50μm以上100μm以下とすることができる。金属箔10の厚さが50μm以上であると、配線基板1に必要な剛性を確保しやすくなる。また、金属箔10の厚さが50μm以上であると、良好な放熱性を得ることができる。金属箔10の厚さが100μm以下であると、配線基板1を製造する際に、エッチングにより金属箔10に溝10xを形成することが容易となる。金属箔10の厚さは、70μm以上100μm以下とすることが好ましい。これにより、配線基板1に必要な剛性をさらに確保しやすくなるとともに、放熱性を向上することができる。
【0015】
配線11の幅は、250μm以上であることが好ましい。配線11の幅が250μm以上であると、配線基板1に必要な剛性を確保しやすくなる。隣接する配線11の間隔は、50μm以下であることが好ましい。隣接する配線11の間隔が50μm以下であると、配線基板1に必要な剛性を確保しやすくなる。枠部12の幅は、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。枠部12の幅が100μm以上であると、配線基板1に必要な剛性をさらに確保しやすくなる。枠部12の幅が2000μm以下であると、配線基板1が必要以上に大型化することを抑制できる。
【0016】
平面視において、金属箔10の配線11及び枠部12が形成されている部分の面積をA、溝10xが形成されている部分の面積をBとしたときに、A/(A+B)は0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。このような面積比であれば、配線基板1に必要な剛性をさらに確保しやすくなる。
【0017】
金属箔10には、放熱性のよい金属を用いることが好ましい。金属箔10は、例えば、銅箔である。金属箔10は、アルミニウム箔等の銅箔以外の金属箔であってもよい。あるいは、金属箔10の材料は、銅やアルミニウム等の金属を含む合金であってもよい。
【0018】
第1樹脂層21は、金属箔10の一方の面に設けられている。第1樹脂層21は、溝10xの金属箔10の一方の面側の端部を塞いでいる。第1樹脂層21は、例えば、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、フェノール系樹脂、シアネート系樹脂等の熱硬化性の非感光性樹脂を主成分とすることができる。第1樹脂層21は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有してもよい。
【0019】
第1樹脂層21は、補強部材21gを備えている。補強部材21gは、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布などである。第1樹脂層21が補強部材21gを備えることにより、第1樹脂層21が補強部材21gを備えない場合よりも剛性を高くすることができる。第1樹脂層21の厚さは、例えば、17~23μm程度とすることができる。
【0020】
第2樹脂層31は、金属箔10の他方の面に設けられている。第2樹脂層31は、溝10xの金属箔10の他方の面側の端部を開口している。言い換えれば、溝10xは、第2樹脂層31を貫通する第1部分と、金属箔10を貫通して第1樹脂層21の下面を露出する第2部分とを含み、第1部分と第2部分は連通している。
【0021】
第2樹脂層31は、例えば、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、フェノール系樹脂、シアネート系樹脂等の熱硬化性の非感光性樹脂を主成分とすることができる。第2樹脂層31は、第1樹脂層21と同じ樹脂を主成分としてもよいし、異なる樹脂を主成分としてもよい。第2樹脂層31は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有してもよい。
【0022】
第2樹脂層31は、補強部材を備えていない。補強部材については、前述のとおりである。第2樹脂層31は、補強部材を備えてないため、補強部材21gを備える第1樹脂層21よりも薄い。これにより、配線基板1の全体を薄型化することができる。また、第2樹脂層31が補強部材を備えないことにより、第2樹脂層31の耐圧(耐電圧)を高くすることができる。第2樹脂層31の厚さは、例えば、7~13μm程度とすることができる。第2樹脂層31の厚さは、例えば、第1樹脂層21の厚さの半分程度とすることができる。なお、第2樹脂層31は、必要な場合には補強部材を備えてもよい。
【0023】
第2樹脂層31は、金属箔10を構成する配線11の他方の面を選択的に露出する開口部31xを備えている。開口部31xから露出する配線11は、半導体チップ等と接続するための外部接続端子として使用することができる。開口部31xの平面形状は、例えば、円形である。この場合、開口部31xの直径は、例えば、50μm以上300μm以下とすることができる。
【0024】
このように、配線基板1では、金属箔10を溝10xで分離して配線11を形成している。そのため、配線11の厚さのばらつきは、溝10xを形成する前の金属箔10の厚さの精度で決まる。したがって、配線11をめっきで形成する場合と比べて、配線11の厚さばらつきを低減することができる。例えば、配線11の厚さが100μmである場合、配線11の厚さばらつきは、100μm±5μm程度とすることができる。なお、本願において『厚さ』は、特別な説明がない場合は『平均厚さ』を指すものとする。
【0025】
また、配線基板1は、例えば50μm以上100μm以下の比較的厚い配線11を有する。そのため、配線11が、放熱層として機能することができる。よって、配線基板1は、比較的発熱の多い半導体チップを搭載することに適している。
【0026】
また、配線基板1では、例えば50μm以上100μm以下の比較的厚い金属箔10を有し、さらに補強部材21gを備える第1樹脂層21を有する。これにより、配線基板1の剛性を確保することができる。また、補強部材21gを備える第1樹脂層21には開口部を設けないため、第1樹脂層21の剛性を十分に確保することができる。
【0027】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図2及び図3は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。
【0028】
まず、図2(a)に示す工程では、金属箔10と、補強部材21gを備える第1プリプレグ21Pと、第1金属層22と、構造体30とを準備する。金属箔10としては、例えば、厚さが50μm以上100μmの銅箔を用いることができる。構造体30は、補強部材を備えない第2プリプレグ31P上に第2金属層32及び第3金属層33が積層された構造である。
【0029】
第1プリプレグ21Pとしては、例えば、エポキシ系樹脂等を主成分とする半硬化状態のフィルムを用いることができる。補強部材21gを備える第1プリプレグ21Pの厚さは、例えば、17~23μm程度とすることができる。第2プリプレグ31Pとしては、例えば、エポキシ系樹脂等を主成分とする半硬化状態のフィルムを用いることができる。補強部材を備えない第2プリプレグ31Pの厚さは、例えば、7~13μm程度とすることができる。第1金属層22としては、例えば、厚さが5~15μm程度の銅箔を用いることができる。第2金属層32としては、例えば、厚さが1.5~5μm程度の銅箔を用いることができる。第3金属層33としては、例えば、第2金属層32よりも厚い銅箔を用いることができる。第3金属層33の厚さは、例えば、15~25μm程度とすることができる。第3金属層33は、剥離層を介して第2金属層32上に剥離可能な状態で貼着されている。剥離層としては、例えば、金属酸化膜或いは有機物層等を使用可能である。
【0030】
次に、図2(b)に示す工程では、第1プリプレグ21P及び第1金属層22を金属箔10の一方の面に順次積層し、構造体30を第2プリプレグ31Pが金属箔10側を向くように金属箔10の他方の面に積層する。そして、第1金属層22及び構造体30を金属箔10側に加圧しながら加熱し、第1プリプレグ21P及び第2プリプレグ31Pを硬化させる。図2(b)に示すように、硬化した第1プリプレグ21Pは第1樹脂層21となり、硬化した第2プリプレグ31Pは第2樹脂層31となる。図2(b)に示す積層体は、金属箔10の厚さが50μm以上100μm以下であること、及び金属箔10の両側に第1樹脂層21及び第2樹脂層31を有することにより、剛性が高くなるため、以降の配線基板1の製造工程における搬送性を向上することができる。
【0031】
次に、図2(c)に示す工程では、図2(b)に示す積層体から第3金属層33を除去する、具体的には、第3金属層33を第2金属層32から剥離する。前述のように、第3金属層33と第2金属層32との間には剥離層が存在するため、第3金属層33を機械的に容易に剥離することができる。
【0032】
次に、図3(a)に示す工程では、第2樹脂層31及び第2金属層32を貫通し、金属箔10の他方の面を露出する開口部30xを形成する。開口部30xは、後の工程で溝10xを形成する予定の位置を露出するように形成する。開口部30xは、例えば、COレーザを使用したレーザ加工法により形成することができる。レーザ加工の前に、第2金属層32の下面に表面処理を施しておくと、レーザ加工が容易になり好適である。表面処理の一例としては、例えば、黒化処理を挙げることができる。
【0033】
ここで、黒化処理とは、亜塩素酸ナトリウム等を用いて金属箔表面を酸化処理することをいう。黒化処理によって、第2金属層32の下面に1μm程度の微小な凹凸を有する黒色系又は褐色系の酸化膜が形成される。例えば、COレーザの波長帯は赤外であるが、黒色系又は褐色系の酸化膜は紫外光、可視光、赤外光等を含む波長帯の光を広く吸収するため、レーザ加工の加工性を高めることができる。なお、照射されるレーザ光の波長を吸収しやすくできれば、黒化処理以外の処理を施してもよい。
【0034】
次に、図3(b)に示す工程では、開口部30x内に露出する金属箔10をエッチングし、溝10xを形成する。エッチングの際に、第2樹脂層31がエッチングマスクとして機能する。金属箔10が銅である場合には、エッチング液としては、例えば、硫酸と過酸化水素を混合した水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液等を用いることができる。
【0035】
金属箔10、第1金属層22、及び第2金属層32がいずれも銅である場合には、エッチングにより溝10xを形成する際に、開口部30x内に露出する金属箔10と共に第1金属層22及び第2金属層32が除去される。これにより、第2樹脂層31及び金属箔10を貫通して第1樹脂層21に端部を塞がれた溝10xが形成され、溝10xによりパターニングされた配線11が形成される。
【0036】
なお、第1金属層22及び第2金属層32が金属箔10のエッチング液では除去できない材料から形成されている場合は、溝10xを形成後、第1金属層22及び第2金属層32を別のエッチング液で除去することができる。すなわち、配線11を形成する工程と、第1金属層22及び第2金属層32を除去する工程とは、同一工程であってもよいし、別工程であってもよい。
【0037】
このように、エッチングにより配線11を形成することにより、めっきで配線を形成する場合と比べて短時間に大量の加工が可能となる。これにより、配線基板1の製造コストを低減することができる。また、50μm~100μmの比較的厚い配線をめっきで形成すると、均一電着性が低下し、配線の厚さにばらつきが生じやすい。配線基板1では、銅箔等をエッチングして配線11を形成するため、配線11の厚さの均一性を向上することができる。
【0038】
なお、第1金属層22は、以下の役割を果たすことができる。すなわち、第1プリプレグ21Pは半硬化状態の樹脂なので、図2(b)の積層工程の際、溶融粘土が下がりドロドロの状態となる。その際、第1金属層22がなければ、積層装置または上下の基板を汚してしまうおそれや、硬化したときに積層装置または上下の基板と張り付いてしまうおそれがある。第1プリプレグ21P上に第1金属層22を配置することにより、第1金属層22は溶融粘土が下がった樹脂の漏れ防止のガード役として機能するため、上記のような問題を回避することができる。第1金属層22は最終的には不要となるため、その後の工程でフルエッチングして除去している。
【0039】
次に、図3(c)に示す工程では、第2樹脂層31に、金属箔10の他方の面を選択的に露出する開口部31xを形成する。これにより、配線基板1が完成する。開口部31xは、例えば、COレーザを使用したレーザ加工法により形成することができる。
【0040】
第2樹脂層31はガラスクロス等の補強部材を備えていないため、レーザ加工法により容易に開口部31xを形成することができる。また、レーザ光の照射を受ける金属箔10が50μm以上の厚さであり熱吸収がよいため、レーザ光の照射強度を上げることができる。これにより、開口部31x内にスミアが残りにくくすることができる。
【0041】
〈第1実施形態の応用例〉
第1実施形態の応用例では、配線基板に半導体装置を搭載した半導体モジュールの例を示す。なお、第1実施形態の応用例において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0042】
図4は、第1実施形態の応用例に係る半導体モジュールを例示する断面図である。図4を参照すると、半導体モジュール5は、図1に示す配線基板1と、半導体装置2とを有する。
【0043】
半導体装置2は、配線基板1の他方の側に搭載されている。半導体装置2は、例えば、セラミック基板110と、配線層120と、配線層130と、半導体チップ150と、樹脂層160とを有する。
【0044】
セラミック基板110は、例えば、酸化物系セラミックスや非酸化物系セラミックス等のセラミックスからなる。酸化物系セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、ジルコニア(ZrO)などが挙げられる。非酸化物系セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)などが挙げられる。なお、セラミック基板110は、単層構造に限定されない。例えば、セラミック基板110を、1層又は複数層の配線層と複数層の絶縁層とを積層した積層構造としてもよい。
【0045】
配線層120は、セラミック基板110の一方の面に形成されている。配線層130は、セラミック基板110の他方の面に形成されている。配線層120及び130の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0046】
半導体チップ150は、配線層120上にフェースアップで実装されている。半導体チップ150は、例えば、薄板化された半導体基板(図示せず)上に半導体集積回路(図示せず)等が形成されたものである。半導体基板(図示せず)には、半導体集積回路(図示せず)と電気的に接続された電極ポスト152が形成されている。電極ポスト152は、配線基板1と接続される接続端子であり、例えば、銅ポストである。
【0047】
半導体チップ150の電極ポスト152は、接合部180を介して、配線基板1の開口部31x内に露出する配線11と電気的に接続されている。接合部180は、例えば、はんだである。はんだの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。
【0048】
半導体チップ150は、例えば、パワー半導体である。パワー半導体とは、高い電圧や大きな電流を扱うことができる半導体であり、例えば、直流と交流を相互に変える電力変換、モータの駆動等に用いることができる。半導体チップ150としては、例えば、シリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)を用いたデバイスを用いることができる。半導体チップ150として、窒化ガリウム(GaN)やガリウム砒素(GaAs)などを用いたデバイスを用いてもよい。例えば、半導体チップ150としては、能動素子としての半導体素子(例えば、CPU等のシリコンチップ)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やダイオード等を用いることができる。
【0049】
樹脂層160は、配線層120上に設けられ、半導体チップ150の側面を被覆する。樹脂層160としては、例えば、モールド樹脂を使用することができる。モールド樹脂とは、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法等に使用可能な非感光性の熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂である。モールド樹脂は、例えば、非感光性で熱硬化性のエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂であり、フィラーを含有してもよい。
【0050】
このように、第1実施形態に係る配線基板1に半導体装置2を搭載した半導体モジュール5を実現できる。配線基板1では配線11の厚さばらつきが少ないため、半導体チップ150と接続する際に、配線11と半導体チップ150の電極ポスト152との間の距離を略均一にできる。その結果、配線11と半導体チップ150の電極ポスト152とを接合部180を介して接合する際の接続信頼性を向上することができる。
【0051】
また、配線基板1は、例えば50μm以上100μm以下の比較的厚い配線11を有するため、配線11が放熱層として機能し、半導体チップ150の発する熱を効果的に放熱することができる。
【0052】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、補強部材21gを備える第1樹脂層21は、補強部材を備えない第2樹脂層31よりも加工性に劣るものの、レーザ加工は可能である。そこで、配線基板1において、第1樹脂層21に配線11の一方の面を選択的に露出する開口部を設けてもよい。開口部から露出する配線11は、電子部品等と接続する為の外部接続端子として使用することができる。これにより、配線基板1の一方の面側に電子部品の搭載が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 配線基板
2 半導体装置
5 半導体モジュール
10 金属箔
10x 溝
11 配線
12 枠部
21 第1樹脂層
21P 第1プリプレグ
22 第1金属層
30 構造体
30x 開口部
31 第2樹脂層
31P 第2プリプレグ
31x 開口部
32 第2金属層
33 第3金属層
110 セラミック基板
120,130 配線層
150 半導体チップ
152 電極ポスト
160 樹脂層
180 接合部
図1
図2
図3
図4