(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098858
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】フェノール性水酸基含有樹脂、感光性樹脂組成物、硬化性組成物及びレジスト膜
(51)【国際特許分類】
C08G 14/04 20060101AFI20240717BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20240717BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20240717BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C08G14/04
G03F7/023 511
G03F7/32
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002622
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】伊部 武史
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
4J033
【Fターム(参考)】
2H196BA10
2H196GA08
2H196GA09
2H196GA10
2H197CA01
2H197CA02
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H225AF05P
2H225AM79P
2H225AM92P
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
4J033CA01
4J033CA05
4J033CA12
4J033CB01
4J033CC03
4J033CD05
4J033CD06
4J033HA28
4J033HB10
(57)【要約】
【課題】弱アルカリ現像液に対し優れた溶解性と、感光剤との高い親和性を有し、ホルムアルデヒドを使用しない感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】フェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)と、芳香族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(c)と、を含む、フェノール性水酸基含有樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、
カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)と、
芳香族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(c)と、を含む、フェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項2】
前記フェノール化合物が下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【化5】
(式(1)中、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子である。lは0~2の整数であり、mは1又は2である。)
【請求項3】
前記カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物が下記式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【化6】
(式(2)中、Rは単結合、又は置換もしくは無置換の、炭素原子数1~20のアルキレン基である。)
【請求項4】
前記芳香族アルデヒド化合物が下記式(3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【化7】
(式(3)中、R
3は、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される基であり、nは0~3の整数であり、pは0~2の整数である。)
【請求項5】
前記構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)のモル比(構造単位(a):構造単位(b):構造単位(c))が、0.5~1.5:0.05~1.0:0.1~1.5である、請求項1又は2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂と、キノンジアジド系感光剤と、を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
フェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)とを含むカリックス構造を有するフェノール樹脂をさらに含む、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記キノンジアジド系感光剤が、ナフトキノンジアジド系化合物を含む、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂と、硬化剤と、を含有する、硬化性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項12】
基材に請求項6に記載の感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を露光する露光工程と、
前記露光工程後の前記塗膜を希薄弱アルカリ性現像液で現像する現像工程と、を有するレジストパターンの製造方法。
【請求項13】
前記希薄弱アルカリ性現像液のpHが8.0以上、12.0以下である、請求項12に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項14】
前記希薄弱アルカリ性現像液が、23℃のH2O中におけるpKaが6.0~12.0の範囲である酸の無機塩の0.1~10質量%水溶液である、請求項12に記載のレジストパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール性水酸基含有樹脂、これを用いてなる感光性樹脂組成物、硬化性組成物及びレジスト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体の製造、LCD等の表示装置の製造、印刷原版の製造等に用いられるレジストとして、アルカリ可溶性樹脂及び1,2-ナフトキノンジアジド化合物等の感光剤を用いたポジ型感光性樹脂組成物が知られている。フォトレジストの分野では、用途や機能に応じて細分化された多種多様なレジストパターンの形成方法が次々に開発されており、それに伴い、レジスト用樹脂材料に対する要求性能も高度化かつ多様化している。
【0003】
ポジ型感光性樹脂組成物の現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウムが広く使用されているものの、毒性が高く環境負荷が大きい。近年、環境負荷低減のため、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムといった環境負荷の小さい弱アルカリ性の現像液で現像可能であり、且つ、ホルムアルデヒドのような環境負荷物質を使用しないポジ型感光性樹脂組成物が求められている。また、半導体の高集積化が高まり、パターンが細線化する傾向にあり、より優れた感度が求められている。
【0004】
上記の課題に対し、例えば、特許文献1にはカルボン酸を有するフェノール樹脂とナフトキノンジアジド感光剤を組み合わせた弱アルカリ現像液で現像可能なポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
一方、透明基材上に透明導電膜からなる電極パターンを作製する方法として、基材上に形成された透明導電膜の上にポジ型感光性樹脂組成物を含む感光層を形成し、マスクを介して感光層を露光し、感光層を現像することによって露光部分の感光層を除去し、露出した透明導電膜をエッチングし、残存した感光層を除去する方法が知られている。
【0006】
近年、Inの枯渇により、電極に使用される透明導電膜のITOに代えて、ZnO又はZnOに金属を添加したもの(以下、「ZnO系膜」という)を使用することが検討されている。ZnO系膜は強アルカリによって損傷を受けるため、従来の強アルカリ現像液では実用可能な電極パターンを作製できないことが知られている。このため、ZnO系膜が損傷を受けない、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムのような弱アルカリ現像液で、微細な電極パターンを作製できるポジ型感光性樹脂組成物の開発も検討されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-114853号公報
【特許文献2】特開2008-112134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のポジ型感光性樹脂組成物は、弱アルカリ現像液で十分な溶解速度が得られず、また、微細化に対応した感度が得られない。また、半導体等の製造工程において様々な熱処理が施されることから、高い耐熱性も求められているが、特許文献1記載のポジ型感光性樹脂組成物は、十分な耐熱性を有していないという問題があった。
特許文献2記載のポジ型感光性樹脂組成物は、弱アルカリ現像液で十分な溶解速度が得られず、また、感光剤との親和性に乏しく、微細なパターンの描画には適していない。
特許文献1及び2記載のポジ型感光性樹脂組成物はいずれも、環境負荷物質であるホルムアルデヒドを使用しているという問題があった。
【0009】
以上のように、環境負荷低減の観点、及び、ZnO系膜上での微細電極パターン作製等、弱アルカリ現像液に優れた溶解性を示し、且つ、感光剤との高い親和性、高耐熱性を有し、ホルムアルデヒドのような環境負荷物質を使用しないポジ型感光性樹脂組成物の開発が求められている。
【0010】
本発明の目的は、弱アルカリ現像液に対し優れた溶解性と、感光剤との高い親和性を有し、ホルムアルデヒドを使用しない感光性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、高い耐熱性を有するレジスト膜が得られる硬化性材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)と、芳香族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(c)と、を含む、フェノール性水酸基含有樹脂を使用した組成物が、弱アルカリ現像液に対し優れた溶解性と、感光剤と高い親和性を有することを見出し、本発明を完成させた。該フェノール性水酸基含有樹脂の合成には、ホルムアルデヒドを使用しない。
【0012】
すなわち、本発明はフェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)と、芳香族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(c)と、を含む、フェノール性水酸基含有樹脂に関する。
また、本発明は前記フェノール性水酸基含有樹脂と、キノンジアジド系感光剤と、を含む、感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は前記感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜に関する。
また、本発明は前記フェノール性水酸基含有樹脂と、硬化剤と、を含有する、硬化性組成物に関する。
また、本発明は前記硬化性組成物の硬化物に関する。
また、本発明は、基材に前記感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を露光する露光工程と、前記露光工程後の前記塗膜を希薄弱アルカリ性現像液で現像する現像工程と、を有するレジストパターンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弱アルカリ現像液に対し優れた溶解性と、感光剤との高い親和性を有し、ホルムアルデヒドを使用しない感光性樹脂組成物を提供することができる。
また、高い耐熱性を有するレジスト膜が得られる硬化性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得たフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャートである。
【
図2】実施例1で得たフェノール性水酸基含有樹脂の
13C-NMRチャートである。
【
図3】実施例2で得たフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャートである。
【
図4】実施例2で得たフェノール性水酸基含有樹脂の
13C-NMRチャートである。
【
図5】比較合成例2で得たフェノール性水酸基含有樹脂の
13C-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態について説明する。
なお、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
また、以下に記載される本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の形態である。
【0016】
[フェノール性水酸基含有樹脂]
本発明の一実施形態に係るフェノール性水酸基含有樹脂は、下記の構造単位(a)~(c)を含む。
構造単位(a):フェノール化合物から誘導される構造単位
構造単位(b):カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位
構造単位(c):芳香族アルデヒド化合物(カルボキシル基を有さない。)から誘導される構造単位
【0017】
上記構造単位(a)は、感光剤の親和性及び耐熱性に寄与する。上記構造単位(b)は、弱アルカリ現像液に対する溶解性及び耐熱性に寄与する。構造単位(c)は感光剤の親和性及び耐熱性に寄与する。
【0018】
本実施形態において、構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の存在比(モル比、構造単位(a):構造単位(b):構造単位(c))が、0.5~1.5:0.05~1.0:0.1~1.5であることが好ましい。より好ましくは1.0:0.05~1.0:0.1~1.5、特に好ましくは1.0:0.1~0.6:0.3~1.2である。
存在比は、原料化合物の仕込み比により調整できる。
【0019】
構造単位(a)について、フェノール化合物は下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子である。lは0~2の整数であり、mは1又は2である。)
【0020】
上記式(1)のR1の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましい。
【0021】
アリール基としては、例えば、環を形成する炭素原子数が6~14であるものが挙げられる。アリール基は上述したアルキル基及びアルコキシ基や、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的には、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基が挙げられる。
【0022】
アラルキル基は、アルキル基(CnH2n+1)の水素原子の1つ以上がアリール基で置換されているアルキル基を意味する。該アリール基は上述したアルキル基及びアルコキシ基や、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的には、フェニルメチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ジヒドロキシフェニルメチル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、ジヒドロキシナフチルメチル基、フェニルエチル基、ヒドロキシフェニルエチル基、ジヒドロキシフェニルエチル基、トリルエチル基、キシリルエチル基、ナフチルエチル基、ヒドロキシナフチルエチル基、ジヒドロキシナフチルエチル基が挙げられる。炭素原子数は、例えば7~15が好ましい。
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0023】
一実施形態において、R1は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。好ましくは、メチル基である。
また、lは1が好ましい。
【0024】
具体例としては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-t-ブチルフェノール、o-シクロヘキシルフェノール、m-シクロヘキシルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール等のモノアルキルフェノール;2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール等のジアルキルフェノール等が挙げられる。これらのなかでも、モノアルキルフェノールが好ましく、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールがより好ましい。
【0025】
フェノール化合物は、同一構造のものを単独で用いてもよいし、異なる分子構造を有する複数の化合物を用いてもよい。
【0026】
構造単位(b)について、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物は下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(式(2)中、Rは単結合、又は置換もしくは無置換の、炭素原子数1~20のアルキレン基である。)
【0027】
式(2)において、炭素原子数1~20のアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。また、該アルキレン基は本発明の効果を害さない限り、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、オキソ基等が挙げられる。
【0028】
炭素原子数1~20のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、エチルプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、エチルブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、エチルペンチレン基、n-へキシレン基、イソへキシレン基、エチルへキシレン基等が挙げられる。
Rは、単結合又は炭素数1~20の無置換のアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素数1~10の無置換のアルキレン基であることがより好ましい。
【0029】
式(2)で表される化合物の具体例としては、グリオキシル酸(Rが単結合である。)、2-ホルミル酢酸、2-ホルミルプロピオン酸、4-オキソ酪酸、5-オキソ吉草酸等が挙げられる。これらのなかでもグリオキシル酸が好ましい。
カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒドは、1種類単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0030】
構造単位(c)について、本実施形態では芳香族アルデヒド化合物が下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、R
3は、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される基であり、nは0~3の整数であり、pは0~2の整数である。)
【0031】
上記式(3)のR3の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましく、1~5がより好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましく、1~5がより好ましい。
【0032】
nは0~3の整数であり、0又は1が好ましい。
pは0~2の整数であり、0又は1が好ましい。
【0033】
芳香族アルデヒドとしては、サリチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2-クロロベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-ニトロベンズアルデヒド等が挙げられる。芳香族アルデヒドは、サリチルアルデヒド又はベンズアルデヒドが好ましい。芳香族アルデヒドは、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
一実施形態において、芳香族アルデヒドは、ヒドロキシル基がカルボニル基に対してオルト位置にあることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るフェノール性水酸基含有樹脂では、上記構造単位(a)、(b)及び(c)の含有量の合計は、弱アルカリ現像液に対する優れた溶解性と、感光剤と高い親和性を有する点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
上記構造単位(a)、(b)及び(c)の含有量の合計は、実質的に100質量%であってもよい。なお、実質的に100質量%とは、上記構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位が不可避的に含まれる場合を意味する。
【0035】
本実施形態に係るフェノール性水酸基含有樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1,500以上である。また、好ましくは10,000以下、より好ましくは9,000以下、さらに好ましくは8,000以下である。重量平均分子量が1000以上であると、高耐熱であるため好ましい。一方、重量平均分子量が8,000以下であると、高感度であるため好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は実施例に記載する条件に従って測定する。
【0036】
本実施形態に係るフェノール性水酸基含有樹脂は、上述したフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物、及び芳香族アルデヒド化合物を、溶媒中、酸触媒を用いて重縮合させることによって得られる。
【0037】
溶媒中の、フェノール化合物、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物、及び芳香族アルデヒド化合物のモル比(フェノール化合物:カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物:芳香族アルデヒド化合物)は、弱アルカリ現像液に対する優れた溶解性と、耐熱性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは1.0:0.05~1.0:0.1~1.5、より好ましくは1.0:0.1~0.6:0.3~1.2の範囲である。
【0038】
溶媒中の、フェノール性水酸基含有樹脂の出発原料の合計質量に対する、フェノール化合物、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物、及び芳香族アルデヒド化合物の合計質量の割合は、弱アルカリ現像液への溶解性に加えて耐熱性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
【0039】
酸触媒としては、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。活性に優れる点から、硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。なお、酸触媒は、反応前に加えてもよく、また、反応途中で加えてもよい。
【0040】
フェノール性水酸基含有樹脂の製造時に使用する溶媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等のカルボン酸化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル化合物;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル化合物;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。得られる化合物の溶解性に優れる点から、酢酸が好ましい。
【0041】
上記溶媒の使用量としては、反応の均一性の観点から、フェノール性水酸基含有樹脂の原料100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。
【0042】
フェノール性水酸基含有樹脂の原料を重縮合させる際の反応温度は、反応を促進しつつ、かつ、効率良く高分子量化することができることから、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上である。また、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
反応時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは12時間以上である。また、好ましくは32時間以下、より好ましくは24時間以下である。
【0043】
反応終了後、例えば、再沈殿操作により生成物を回収することにより、フェノール性水酸基含有樹脂が得られる。
再沈殿操作に用いる貧溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヒキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの貧溶媒の中でも、効率よく酸触媒の除去も同時に行えることから、水、メタノールが好ましい。
【0044】
フェノール性水酸基含有樹脂の純度を高めるため、再沈殿操作を2回以上実施してもよい。この際に、フェノール性水酸基含有樹脂を溶解させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン等が挙げられる。貧溶媒として水を用いた場合、再度溶解させる溶媒はアセトンが好ましい。
なお、貧溶媒及び溶媒は、それぞれ1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、接着剤、塗料;フォトレジスト、プリント配線基板等の各種の電気・電子部材用途に用いることができる。
【0046】
[感光性樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂(以下、フェノール性水酸基含有樹脂(A)ということがある。)と、キノンジアジド系感光剤(以下、感光剤(B)ということがある。)と、を含む。フェノール性水酸基含有樹脂(A)は、キノンジアジド系感光剤と高い親和性を有するため、高感度な感光性樹脂組成物となる。
【0047】
本実施形態の感光性樹脂組成物におけるフェノール性水酸基含有樹脂(A)の配合量は、感光性樹脂組成物の樹脂固形分の合計に対し、50~99質量%の範囲が好ましく、60~95質量%の範囲がより好ましく、70~90質量%の範囲がさらに好ましい。
【0048】
感光剤(B)であるキノンジアジド系感光剤は、キノンジアジド基を有する化合物を含む。キノンジアジド基を有する化合物の具体例としては、例えば、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等のキノンジアジド基を有するスルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物又は部分アミド化物が挙げられる。
【0049】
芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物は、例えば、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;
【0050】
ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン化合物;
【0051】
トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体;
【0052】
ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシ
フェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン等の、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体等が挙げられる。
これらの感光剤はそれぞれ単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
本実施形態の感光性樹脂組成物における感光剤(B)の配合量は、光感度に優れる感光性樹脂組成物となることから、感光性樹脂組成物の樹脂固形分の合計に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0054】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくはフェノール化合物から誘導される構造単位(a)と、カルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物から誘導される構造単位(b)とを含むカリックス構造を有するフェノール樹脂(以下、フェノール性水酸基含有樹脂(C)ということがある。)をさらに含む。
【0055】
フェノール性水酸基含有樹脂(C)は、下記一般式(C)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂である。
【0056】
【化4】
(前記一般式(C)において、
R
21は、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であり、
R
22はカルボキシル基、又はカルボキシル基を有する、炭素原子数1~20のアルキル基であり、
pは1~3の整数であり、qは2~15の整数である。
pが2以上の場合、複数のR
21は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。)
【0057】
フェノール性水酸基含有樹脂(C)は、フェノール性水酸基含有樹脂(A)で説明したフェノール化合物及びカルボキシル基を有する脂肪族アルデヒド化合物を、溶媒中、酸触媒を用いて重縮合させることによって得られる。
【0058】
フェノール性水酸基含有樹脂(C)の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1,500以上である。また、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。
【0059】
本実施形態の感光性樹脂組成物におけるフェノール性水酸基含有樹脂(C)の配合量は、感光性樹脂組成物の樹脂固形分の合計に対し、例えば5~20質量%の範囲であり、5~15質量%の範囲が好ましく、7~15質量%の範囲がより好ましく、10~13質量%の範囲がさらに好ましい。
【0060】
本実施形態の感光性樹脂組成物をフォトレジスト用途に用いる場合には、フェノール性水酸基含有樹脂(A)、感光剤(B)及び任意のフェノール性水酸基含有樹脂(C)の他、必要に応じてその他のフェノール性水酸基含有化合物、顔料、染料、レベリング剤等の界面活性剤、充填材、架橋剤、溶解促進剤、硬化剤、硬化促進剤等の各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することによりレジスト樹脂組成物とすることができる。該レジスト樹脂組成物をそのままポジ型レジスト溶液と用いてもよく、また、該レジスト樹脂組成物をフィルム状に塗布して脱溶剤させたものをポジ型レジストフィルムとして用いてもよい。レジストフィルムとして用いる際の支持フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。支持フィルムは、単層フィルムでもよく、また、積層フィルムでもよい。また、該支持フィルムの表面はコロナ処理されたものや剥離剤が塗布されたものでもよい。
【0061】
有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0062】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、該組成物中の固形分濃度が5質量%以上、65質量%以下になるように調整することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の流動性が十分となり、スピンコート法等の塗布法により均一な塗膜を得られることができる。
【0063】
その他のフェノール性水酸基含有化合物は、フェノール性水酸基含有樹脂(A)及びフェノール性水酸基含有樹脂(C)以外のフェノール性水酸基含有化合物であればよい。
その他のフェノール性水酸基含有化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノール、トリフェニルメタン等のフェノール性水酸基含有化合物や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のフェノール樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、また、複数種を併用してもよい。
【0064】
フェノール性水酸基含有樹脂(A)と、フェノール性水酸基含有樹脂(C)と、その他のフェノール性水酸基含有化合物の合計に対するフェノール性水酸基含有樹脂(A)の割合が、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0065】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、フェノール性水酸基含有樹脂(A)、感光剤(B)、及び有機溶剤と、さらに必要に応じて加えた各種添加剤とを通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
【0066】
感光性樹脂組成物に充填材、顔料等の固形のものを配合する際には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させることが好ましい。また、粗粒や不純物を除去するため、メッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いて該組成物をろ過することもできる。
【0067】
[硬化性組成物]
本発明の一実施形態である硬化性組成物は、上述した本発明のフェノール性水酸基含有樹脂(A)と、硬化剤と、を含有する。
本実施形態で用いる硬化剤は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と硬化反応を生じ得る化合物であれば特に限定なく、様々な化合物を用いることができる。また、硬化性組成物の硬化方法は特に限定されず、硬化剤の種類や、硬化促進剤の種類等に応じて熱硬化や光硬化等、適当な方法で硬化させることができる。熱硬化における加熱温度や時間、光硬化における光線の種類や露光時間等の硬化条件は、硬化剤の種類や、後述する硬化促進剤の種類等に応じて適宜調節される。
【0068】
本実施形態で用いる硬化剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミドイミド等が挙げられる。
一実施形態において、硬化剤と共に硬化促進剤を配合してもよい。硬化促進剤は、用いる硬化剤に応じ、硬化反応を促進し得る公知慣用のものを用いることができる。これら硬化剤や硬化促進剤を使用する場合は、後述する方法にてレジストパターンを形成した後、加熱等することにより、より高耐熱なレジスト膜となる。
【0069】
本実施形態の硬化性組成物における硬化剤の配合量は、硬化性に優れる組成物となることから、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と後述するその他の樹脂(X)との合計100質量部に対し、0.5~50質量部となる割合であることが好ましい。
【0070】
本実施形態の硬化性組成物には、フェノール性水酸基含有樹脂(A)及び硬化剤の他、必要に応じて上述した本発明の感光性樹脂組成物で説明した、感光剤(B)、その他のフェノール性水酸基含有化合物、顔料、染料、レベリング剤等の界面活性剤、充填材、架橋剤、溶解促進剤等の各種添加剤、有機溶剤を使用できる。各種添加剤及び有機溶媒の例は、上述した感光性樹脂組成物と同様である。
【0071】
一実施形態において、硬化性組成物は、上述した本発明のフェノール性水酸基含有樹脂以外に、その他の樹脂(X)を併用してもよい。樹脂(X)としては、例えば、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール性化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、各種のビニル重合体が挙げられる。
【0072】
その他の樹脂(X)を用いる場合、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と樹脂(X)との配合割合は、用途に応じて任意に設定することができる。例えば、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂100質量部に対し、樹脂(X)が0.5~100質量部となる割合であることが好ましい。
【0073】
本実施形態の硬化性組成物は、フェノール性水酸基含有樹脂(A)、硬化剤及び有機溶剤と、さらに必要に応じて加えた各種添加剤とを通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
【0074】
本実施形態の硬化性組成物から硬化膜を形成するには、例えば、硬化性組成物を、シリコン基板等のフォトリソグラフィを行う対象物上に塗布し、100~200℃の温度条件下で乾燥させた後、更に250~400℃の温度条件下で加熱硬化させる方法がある。
硬化膜上で通常のフォトリソグラフィ操作を行ってレジストパターンを形成し、ハロゲン系プラズマガス等でドライエッチング処理することにより、多層レジスト法によるレジストパターンを形成することができる。
【0075】
[レジストパターンの製造方法]
本発明の一実施形態に係るレジストパターンの製造方法は、基材に本発明の感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を露光する露光工程と、露光工程後の塗膜を希薄弱アルカリ性現像液で現像する現像工程と、を有する。
【0076】
(1)塗膜形成工程
塗膜形成工程は、基材に塗膜を形成する工程である。
基材としてはシリコン基板、炭化シリコン基板、窒化ガリウム基板等が挙げられる。本実施形態では希薄弱アルカリ性現像液を使用することから、基材がZnO系膜からなる透明導電膜を有していても、高耐熱性を有する微細なレジストパターンを得ることができる。
塗膜は、感光性樹脂組成物(レジスト樹脂組成物)を、例えば、フォトリソグラフィを行う基板等の対象物上に塗布し、60~150℃の温度条件でプリベークすることにより形成できる。塗布方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等が挙げられる。
【0077】
(2)露光工程
露光工程は、パターンが描写されたマスクを介して塗膜を露光する工程である。塗膜を露光する光源としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等が挙げられる。これらの光源の中でも紫外光が好ましく、高圧水銀灯のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が好適である。
【0078】
(3)現像工程
現像工程は、露光工程後の塗膜を希薄弱アルカリ性現像液で現像する工程である。現像工程において、露光工程後の塗膜を希薄弱アルカリ性現像液で現像することによってレジストパターンが形成される。塗膜に含有されるフェノール性水酸基含有樹脂(A)は、アルカリ溶解性に優れる特徴を有することから、希薄弱アルカリ現像液を用いた場合であっても、十分に現像が可能となる。同時に、フェノール性水酸基含有樹脂(A)は感光剤(B)との相溶性に優れることから、未露光部における耐アルカリ溶解性が非常に高く、結果、フォトリソグラフィにおける露光部と未露光部とのコントラストが高く、微細なパターンの描画が可能となる。また、現像工程において希薄弱アルカリ性現像液を用いることにより、ZnO系膜の損傷を抑制しながらレジストパターンを現像することができる。
【0079】
本明細書において、希薄弱アルカリ性現像液とは、23℃のH2O中におけるpKaが6.0~12.0の範囲である酸の無機塩の0.1~10質量%水溶液を意味する。無機酸としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。現像工程において使用する希薄弱アルカリ性現像液のpHは8.0以上、12.0以下が好ましい。
【0080】
希薄弱アルカリ性現像液として、炭酸ナトリウム水溶液と炭酸水素ナトリウム水溶液との混合液を用いる場合、両者の配合比は特に限定されず、任意の割合で用いることができる。中でも、特に高いコントラストが得られることから、両者の質量比[(炭酸ナトリウム水溶液)/(炭酸水素ナトリウム水溶液)が80/20~20/80の範囲であることが好ましく、80/20~60/40の範囲であることがより好ましい。
【実施例0081】
以下、具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、合成した樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び多分散度(Mw/Mn)は、下記のGPCの測定条件で測定したものである。
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの
注入量:0.1mL
標準試料:下記単分散ポリスチレン
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
【0082】
また、13C-NMRの測定条件は、以下の通りである。
[13C-NMRの測定条件]
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30質量%
積算回数 :4000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0083】
[フェノール性水酸基含有樹脂]
実施例1
冷却管を設置した容量250mLの4口フラスコに、m-クレゾール18.3g、グリオキシル酸4.9g及びサリチルアルデヒド15.7gを仕込み、酢酸60gに溶解させた。氷浴中で冷却しながら、硫酸2mLを添加した。オイルバスで90℃に昇温した後、4時間加熱、撹拌を継続し反応させた。反応後、得られた溶液を水で再沈殿操作を行い粗生成物を得た。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿操作を行った後、得られた生成物を濾別、真空乾燥を行い橙色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(ノボラック樹脂)(A-1)34.1gを得た。
GPC測定の結果、樹脂(A-1)の数平均分子量(Mn)は1275、重量平均分子量(Mw)は4425、多分散度(Mw/Mn)は3.47であった。また、
13C-NMRより、カルボキシル基を含有することを確認した(172~178ppm)。
GPCチャートを
図1に、
13C-NMRチャートを
図2に示す。
m-クレゾール由来の構造単位(a)、グリオキシル酸由来の構造単位(b)及びサリチルアルデヒド由来の構造単位(c)の存在比(a:b:c、モル比)は、1.00:0.34:0.76であった。
【0084】
実施例2
グリオキシル酸を9.9g、サリチルアルデヒドを10.5gに変更した以外は実施例1と同様にして、フェノール性水酸基含有樹脂(A-2)粉末32.9gを得た。樹脂(A-2)のMnは1273、Mwは3299、Mw/Mnは2.59であった。また、
13C-NMRより、カルボキシル基を含有することを確認した(172~178ppm)。GPCチャートを
図3に、
13C-NMRチャートを
図4に示す。
m-クレゾール由来の構造単位(a)、グリオキシル酸由来の構造単位(b)及びサリチルアルデヒド由来の構造単位(c)の存在比(a:b:c、モル比)は、1.00:0.55:0.55であった。
【0085】
比較合成例1
撹拌機、還流冷却管及び温度計を取り付けた反応器に、o-クレゾール108g、グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸含有率40%)100g、ジエチレングリコールジメチルエーテル140g、p-トルエンスルホン酸2.2gを仕込み、撹拌下、100℃で反応させた。次いで、o-クレゾール108g、ジエチレングリコールジメチルエーテル120gを添加し、90℃で撹拌しながらホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド含有率37%)102.2gを滴下し、還流条件で6時間、その後150℃に昇温して反応させた。反応終了後、得られた溶液を水洗して、p-トルエンスルホン酸を除去した後、減圧下で水を留去し、フェノール性水酸基含有ノボラック樹脂粉末(A-3)を216g得た。
【0086】
比較合成例2
グリオキシル酸を使用せず、サリチルアルデヒドを20.9gに変更した以外は、実施例1と同様にして、フェノール性水酸基含有ノボラック樹脂(A-4)粉末31.2gを得た。
13C-NMRより、カルボキシル基を含有していないことを確認した(166~168ppm)。
13C-NMRチャートを
図5に示す。
【0087】
[レジスト樹脂組成物]
実施例3、4 比較例1、2
表1に示す実施例及び比較合成例で合成したフェノール性水酸基含有樹脂粉末20gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80gに溶解させてレジスト樹脂組成物を得た。
【0088】
実施例及び比較例で得たレジスト樹脂組成物について、下記項目を評価した。結果を表1に示す。
(1)耐熱性
レジスト樹脂組成物を直径5インチのシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布後、110℃で60秒乾燥し、1μmの厚さの薄膜を得た。この薄膜をかき取り、ガラス転移点温度(以下、「Tg」と略記する。)を測定した。Tgの測定は、示差熱走査熱量計(株式会社ティー・エイ・インスツルメント製「示差熱走査熱量計(DSC)Q100」)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲-100~300℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。評価基準は以下の通りである。
○:Tgが150℃以上
×:Tgが150℃未満
【0089】
(2)アルカリ溶解性
レジスト樹脂組成物を、5インチのシリコンウエハ上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。得られたウエハを、現像液(D-1)「1%炭酸ナトリウム水溶液(pH12)」、又は現像液(D-2)「1%炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8)」に60秒間浸漬させた。浸漬後、ウエハを100℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。
現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値(ADR:Å/s)を算出してアルカリ溶解性を評価した。ADR1は現像液(D-1)のADRの値であり、ADR2は現像液(D-2)のADRの値である。評価基準は以下の通りである。
〇:ADRが100以上
×:ADRが100未満
【0090】
(3)環境負荷性
フェノール性水酸基含有樹脂の合成時に、ホルムアルデヒドを使用しない場合を〇、
樹脂合成時にホルムアルデヒドを使用する場合を×とした。
【0091】
【0092】
表1の結果から、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を使用したレジスト樹脂組成物は、Tgが高く、かつ、弱アルカリ性である現像液に対する溶解性も高いことが分かる。
【0093】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
実施例5、6 比較例3、4
表2に示す実施例で合成したフェノール性水酸基含有樹脂の粉末20g及び1,2-ナフトキノンジアジド(P-200:東洋合成株式会社製)の粉末5gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)75gに溶解させて、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0094】
実施例及び比較例で得たポジ型感光性樹脂組成物について、現像コントラストを評価した。
現像コントラストは、感光剤を配合していないレジスト樹脂組成物(実施例3、4及び比較例1、2)のアルカリ溶解性ADR1及びADR2(Å/s)と、感光剤を配合したポジ型感光性樹脂組成物(実施例5、6及び比較例3、4)のアルカリ溶解性ADR3及びADR4(Å/s)の比(ADR1/ADR3、ADR2/ADR4)とした。なお、ADR3及びADR4は、それぞれADR1及びADR2と同様にして求めた。評価は以下のとおりとした。結果を表2に示す。
〇:現像コントラストが10以上
×:現像コントラストが10未満
【0095】
【0096】
表2の結果から、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を使用したポジ型感光性樹脂組成物は、感光剤の添加による溶解抑制効果が大きいことから、感光剤との親和性が高く、したがって、感度も高いことが分かる。