(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098965
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】細胞チップ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240717BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221628
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023002738
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 尊弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 時郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康彦
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA12
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び製造効率に優れ、且つ匂い物質等の化学物質の検出に利用することも可能な細胞チップを提供すること。
【解決手段】細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画を含む、細胞チップ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画を含む、細胞チップ。
【請求項2】
前記細胞が前記ハイドロゲルに封入されている、請求項1に記載の細胞チップ。
【請求項3】
前記細胞が、嗅覚受容体タンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドを含む細胞である、請求項1に記載の細胞チップ。
【請求項4】
前記嗅覚受容体タンパク質が昆虫嗅覚受容体である、請求項3に記載の細胞チップ。
【請求項5】
前記細胞が昆虫細胞である、請求項1に記載の細胞チップ。
【請求項6】
前記光硬化樹脂が(メタ)アクリル樹脂である、請求項1に記載の細胞チップ。
【請求項7】
前記ハイドロゲルが、(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液及び細胞を含む区画に対して光照射して形成される、請求項6に記載の細胞チップ。
【請求項8】
前記(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の光重合開始剤濃度が0.1質量%以下である、請求項7に記載の細胞チップ。
【請求項9】
前記(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の多官能(メタ)アクリルモノマー及び前記オリゴマーの合計濃度が0.1~25質量%である、請求項7に記載の細胞チップ。
【請求項10】
前記区画の数が10~2000である、請求項1に記載の細胞チップ。
【請求項11】
化学物質検出用である、請求項1~10のいずれかに記載の細胞チップ。
【請求項12】
細胞と光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーとを含む区画に対して光照射してハイドロゲルを形成させることを含む、請求項1~10のいずれかに記載の細胞チップを製造する方法。
【請求項13】
前記光照射の光源がLEDである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学物質検出に好適な細胞チップに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの特定の疾患や精神状態等を特徴付ける匂い物質群が同定されており、診断マーカーとしての利用価値が高いことから、これらをターゲットとした様々な匂いセンサの開発が盛んになっている。生物の嗅覚受容体は、多様性、感度、選択性等の面で半導体等の従来の匂いセンサ素子にはない優れた特性を有することから、嗅覚受容体をセンサ素子とした新しい匂いセンサの開発が期待されている。
【0003】
特許文献1では、改変嗅覚受容体を発現する細胞や改変嗅覚受容体を備える脂質二重膜を匂いセンサとして用いることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嗅覚受容体を備える脂質二重膜を人工的に調製することは、製造効率の観点から好ましくない。そこで、嗅覚受容体を発現する細胞を利用することに着目した。
【0006】
匂いセンサとして細胞を利用する場合、利用の簡便性の観点からは、細胞をその都度培養して調製して利用するという形態ではなく、予め細胞が容器などに保持されたものを調製しておき、それを必要な場合に利用するという形態が望ましい。後者の形態の場合、細胞の利用時まで細胞を乾燥させないことが必要であり、また製造元から利用場所までの搬送等を考慮すると細胞が安定に保持されていることが重要であり、さらにより均一なものをより効率的に製造できることが重要である。
【0007】
また、疾患等の判定に用いるという観点からは、互いに異なる嗅覚受容体を発現する複数種の細胞を同時に利用できることが望ましい。この観点から、細胞チップとしての利用が望ましい。
【0008】
そこで、本開示は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び製造効率に優れ、且つ匂い物質等の化学物質の検出に利用することも可能な細胞チップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は研究を進める中で、細胞とハイドロゲルとを含む区画を含む細胞チップであれば、細胞を乾燥から防ぐことができ、且つ細胞を安定に保持できることに着目した。しかし、細胞を保持するようにハイドロゲルを形成する場合、ハイドロゲルの種類によっては、製造効率が低い、ハイドロゲル形成時に細胞がダメージを受けることやハイドロゲルの化学物質透過性が低いこと等により化学物質の検出ができない等の問題が生じる。
【0010】
本発明者は上記問題を考慮して鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画を含む、細胞チップ、であれば、上記課題を解決できることを見出した。即ち、本開示は、下記の態様を包含する。
【0011】
項1. 細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画を含む、細胞チップ。
【0012】
項2. 前記細胞が前記ハイドロゲルに封入されている、項1に記載の細胞チップ。
【0013】
項3. 前記細胞が、嗅覚受容体タンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドを含む細胞である、項1に記載の細胞チップ。
【0014】
項4. 前記嗅覚受容体タンパク質が昆虫嗅覚受容体である、項3に記載の細胞チップ。
【0015】
項5. 前記細胞が昆虫細胞である、項1に記載の細胞チップ。
【0016】
項6. 前記光硬化樹脂が(メタ)アクリル樹脂である、項1に記載の細胞チップ。
【0017】
項7. 前記ハイドロゲルが、(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液及び細胞を含む区画に対して光照射して形成される、項6に記載の細胞チップ。
【0018】
項8. 前記(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の光重合開始剤濃度が0.1質量%以下である、項7に記載の細胞チップ。
【0019】
項9. 前記(メタ)アクリルモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の多官能(メタ)アクリルモノマー及び前記オリゴマーの合計濃度が0.1~25質量%である、項7に記載の細胞チップ。
【0020】
項10. 前記区画の数が10~2000である、項1に記載の細胞チップ。
【0021】
項11. 化学物質検出用である、項1~10のいずれかに記載の細胞チップ。
【0022】
項11A. 項1~10のいずれかに記載の細胞チップが含む細胞上の嗅覚受容体に化学物質を接触させることを含む、化学物質検出方法。
【0023】
項11B. 項1~10のいずれかに記載の細胞チップの、化学物質検出チップとしての使用。
【0024】
項11C. 項1~10のいずれかに記載の細胞チップの、化学物質検出チップの製造のための使用。
【0025】
項12. 細胞と光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーとを含む区画に対して光照射してハイドロゲルを形成させることを含む、項1~10のいずれかに記載の細胞チップを製造する方法。
【0026】
項13. 光源がLEDである、項12に記載の方法。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び製造効率に優れ、且つ匂い物質等の化学物質の検出に利用することも可能な細胞チップ、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0029】
本開示は、その一態様において、細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画を含む、細胞チップ(本明細書において、「本開示の細胞チップ」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0030】
細胞は、特に制限されない。細胞は、化学物質の検出に適しているという観点から、昆虫細胞、哺乳類動物細胞等の動物細胞が好ましく、昆虫細胞が特に好ましい。哺乳類動物細胞としてはヒト由来のHeLa細胞、HEK293細胞、HepG2細胞、KBM-7細胞、チャイニーズハムスター由来のCHO細胞、マウス由来のNIH3T3細胞、Min6細胞等が挙げられる。昆虫細胞としては、例えばSpilosoma imparilis由来のSpIm細胞、Spodoptera frugiperda 由来の Sf細胞系もしくはTrichoplusia ni由来のHighFive細胞系、Aedes aegypti由来のAeAe細胞、Drosophila melanogaster 由来のS2細胞、嗅神経細胞等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはSplm細胞が挙げられる。
【0031】
本開示の細胞チップを化学物質の検出に用いる場合、細胞として、嗅覚受容体タンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドを含む細胞を使用することが好ましい。
【0032】
嗅覚受容体タンパク質は、7回膜貫通構造を有する膜タンパク質であり、生物の匂いセンサとして働く。
【0033】
嗅覚受容体タンパク質は、化学物質の検出に適しているという観点から、昆虫嗅覚受容体タンパク質が特に好ましい。昆虫嗅覚受容体タンパク質の由来昆虫としては、好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;カイコガ科等の鱗翅目昆虫;ミツバチ科等の膜翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫等が挙げられ、さらに好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫が挙げられる。カ科の昆虫としては、例えば、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等が挙げられる。ショウジョウバエ科の昆虫としては、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ウスグロショウジョウバエ(Drosophila pseudoobscura)、クロショウジョウバエ(Drosophila virillis)等が挙げられる。カイコガ科の昆虫としては、例えば、カイコガ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、イチジクカサン(Trilocha varians)等が挙げられる。ミツバチ科の昆虫としては、例えば、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)、ヒメミツバチ(Apis florea)、オオミツバチ(Apis dorsata)、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)等が挙げられる。バッタ科の昆虫としては、例えば、トノサマバッタ(Locusta migratoria)等が挙げられ、トコジラミ科の昆虫としては、例えば、トコジラミ(Cimex lectularius)等が挙げられる。
【0034】
野生型の昆虫嗅覚受容体タンパク質として、具体的には、例えば、AaOR1、AaOR2、AaOR4、AaOR5、AaOR6、AaOR7、AaOR8、AaOR9、AaOR10a、AaOR15、AaOR22、AaOR24、AaOR25、AaOR26、AaOR27、AaOR28、AaOR30、AaOR34、AaOR36、AaOR38、AaOR41a、AaOR41b、AaOR42、AaOR43、AaOR44、AaOR47、AaOR49、AaOR50、AaOR52、AaOR54、AaOR58、AaOR59、AaOR60、AaOR61、AaOR64、AaOR65、AaOR66、AaOR67a、AaOR69a、AaOR70、AaOR71、AaOR72a、AaOR73、AaOR74、AaOR75、AaOR77、AaOR78、AaOR79、AaOR81、AaOR83b、AaOR84、AaOR85、AaOR86、AaOR87、AaOR91、AaOR95、AaOR97、AaOR96、AaOR99、AaOR100、AaOR102、AaOR103、AaOR104a、AaOR105、AaOR107、AaOR108、AaOR109、AaOR110、AaOR112、AaOR114、AaOR116、AaOR117、AaOR118、AaOR122、AaOR125、AaOR128、AgOR1、AgOR2、AgOR3、AgOR4、AgOR5、AgOR6、AgOR7、AgOR8、AgOR9、AgOR10、AgOR11a、AgOR12a、AgOR12b、AgOR13、AgOR14、AgOR15、AgOR16a、AgOR17、AgOR18、AgOR20、AgOR21、AgOR23、AgOR25、AgOR26、AgOR27、AgOR28、AgOR30、AgOR34、AgOR36、AgOR37、AgOR38、AgOR39a、AgOR40、AgOR42、AgOR44、AgOR45、AgOR46、AgOR47、AgOR49、AgOR50、AgOR54、AgOR56a、AgOR57、AgOR60、AgOR61、AgOR62、AgOR63、AgOR64、AgOR65、AgOR69、AgOR70、AgOR71、AgOR72、AgOR74、AgOR75、AgOR76a、AmOR1、AmOR3、AmOR9、AmOR10、AmOR13、AmOR41、AmOR51、AmOR52、AmOR55、AmOR71、AmOR73、AmOR78、AmOR85、AmOR89、AmOR90、AmOR114、AmOR115、AmOR118、AmOR120、AmOR121、AmOR161、BmOR1、BmOR2、BmOR3、BmOR4、BmOR5、BmOR8、BmOR9、BmOR10、BmOR13、BmOR17、BmOR18、BmOR23、BmOR24、BmOR25、BmOR35、BmOR36、BmOR42、BmOR45、BmOR49、BmOR51、BmOR52、BmOR55、BmOR56、BmOR61、DmOR1a、DmOR9a、DmOR19a、DmOR22a、DmOR22b、DmOR22c、DmOR24a、DmOR30a、DmOR33a、DmOR33b、DmOR33c、DmOR35a、DmOR42b、DmOR43a、DmOR45a、DmOR45b、DmOR47a、DmOR49b、DmOR59b、DmOR65b、DmOR65c、DmOR67b、DmOR67c、DmOR69a、DmOR71a、DmOR74a、DmOR82a、DmOR83a、DmOR83b、DmOR83c、DmOR85a、DmOR85c、DmOR85e、DmOR85f、DmOR88a、DmOR92a、DmOR94a、DmOR94b、DmOR98b等が挙げられる。これらの名称中、DmはDrosophila melanogaster由来であることを示し、BmはBombyx mori由来であることを示し、AgはAnopheles gambiae由来であることを示し、AaはAedes aegypti由来であることを示す。これらを含む各種嗅覚受容体タンパク質のアミノ酸配列及びコード配列は公知であるか、公知の配列に基づいた配列同一性検索により容易に同定することができる。
【0035】
昆虫嗅覚受容体タンパク質は、化学物質応答活性が著しく低減しない限りにおいて、アミノ酸変異を含むことができる。「著しく低減しない」とは、例えば、アミノ酸変異を含む嗅覚受容体タンパク質の化学物質応答活性が、野生型嗅覚受容体タンパク質の化学物質応答活性100%に対して、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上である、ことを意味する。
【0036】
本明細書において、化学物質応答活性とは、嗅覚受容体が化学物質を認識し、その嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成した嗅覚受容体複合体が活性化されてイオンチャネル活性を示す性質をいう。嗅覚受容体の化学物質応答活性は、化学物質と接触した嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成する嗅覚受容体複合体のイオンチャネル活性を指標として測定することができる。例えば、(a)嗅覚受容体、(b)嗅覚受容体共受容体、及び (c)嗅覚受容体複合体が応答した場合に細胞内に流入するイオン(カルシウムイオン等)により発色又は発光するタンパク質を発現する細胞と、化学物質とを接触させ、当該細胞の発光量を測定する。測定された発光量が多い程、嗅覚受容体の化学物質の応答活性が高いと判定する。具体的には特許文献1に記載の方法に従って測定することができる。
【0037】
嗅覚受容体タンパク質のコード配列は、本開示の嗅覚受容体タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドである限り、特に制限されない。ポリヌクレオチドは、その一態様において、嗅覚受容体タンパク質の発現カセットを含む。発現カセットは、細胞内で嗅覚受容体タンパク質を発現可能なポリヌクレオチドである限り特に制限されない。嗅覚受容体タンパク質の発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置された本開示の嗅覚受容体タンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0038】
細胞のより具体的な構成については、例えば特許文献1に記載の構成を採用することができる。
【0039】
ハイドロゲルは、光硬化樹脂を含むものであり、その限りにおいて特に制限されない。細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、光硬化樹脂の含有量は、ハイドロゲルを構成する固形分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、とりわけ好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上(中でも、100質量%)である。なお、固形分には、光硬化樹脂及び細胞、並びにその他の固形分が含まれる。
【0040】
光硬化樹脂は、構成単位であるモノマーを光照射して得られる樹脂であり、その限りにおいて特に制限されない。光硬化樹脂としては、代表的には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、光硬化樹脂は特に好ましくは(メタ)アクリル樹脂である。なお、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及び/又はアクリルを意味する。(メタ)アクリル樹脂の詳細については後述する。
【0041】
本開示の細胞チップの区画は、細胞と、光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む。
【0042】
区画の形態は、細胞及びハイドロゲルを保持できる態様である限り特に制限されない。細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、区画は、ウェル状であることが好ましい。
【0043】
区画の材質は、細胞及びハイドロゲルを保持できるものである限り特に制限されない。材質は、例えば樹脂、金属等であることができる。
【0044】
区画における、細胞とハイドロゲルとの配置態様は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性が担保される限り、特に制限されない。例えば、区画において、細胞がハイドロゲルに封入されている。封入の態様は、少なくとも一部の細胞がハイドロゲルにより細胞チップ外の外気から遮断されている態様である限り、特に制限されない。封入の具体的態様としては、例えば細胞がハイドロゲル中に分散している態様が挙げられる。
【0045】
区画は、検出感度の観点から、通常、複数個の細胞を含む。区画におけるハイドロゲルの体積(cm3)当たりの細胞数(個)は、好ましくは1×104~1×109個/cm3、より好ましくは1×105~1×108個/cm3、さらに好ましくは1×106~2×107個/cm3である。
【0046】
1区画の底面積は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは0.5~100mm2、より好ましくは1~30mm2、さらに好ましくは1.5~10mm2である。
【0047】
細胞チップが含む区画の数は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは10~2000個、より好ましくは30~1000個、さらに好ましくは50~500個である。
【0048】
細胞と光硬化樹脂を含むハイドロゲルとを含む区画は、細胞と光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーとを含む区画に対して光照射してハイドロゲルを形成させることにより得ることができる。なお、オリゴマーは、特に制限されないが、例えばモノマー2~20個程度が重合してなる重合体であることができる。製造効率の観点から、オリゴマーではなくモノマーを使用することが好ましい。
【0049】
細胞と光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーとを含む区画は、製造効率の観点から、光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液及び細胞を含む区画であることが好ましく、光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液に細胞を懸濁させてなる懸濁液を含む区画であることが好ましい。
【0050】
モノマーとしては、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、(メタ)アクリルモノマーが特に好ましい。また、同様の観点から、(メタ)アクリルモノマー及びそのオリゴマーの合計含有量は、モノマー及びそのオリゴマーの合計100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、とりわけ好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上(中でも、100質量%)である。
【0051】
(メタ)アクリルモノマーは、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むモノマーである。(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限されないが、ハイドロゲルの形成性の観点から、親水構造(例えば水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミン、リン酸基、スルホ基、アミド結合、ポリエチレングリコール構造等)を含むことが好ましい。
【0052】
(メタ)アクリルモノマーとしては、通常、アクリル基及び/又はメタクリル基を複数個(例えば2~5個、2~4、又は2~3個)含むモノマー(多官能モノマー)を使用する。多官能モノマーとしては、例えばポリエチレングリコールジアクリレート(Mn500) (PEGDA500) 、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn1000) (PEGDA1000) 、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド (4AAmST) 、N,N-ビス(2-アクリルアミドメチル)アクリルアミド(3AAmST) 、N,N'-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ)-3,1-プロパンジイル]ビスアクリルアミド(2AAmLN) 、N,N'-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド} (4AAmLN)等が挙げられる。多官能モノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
多官能モノマーとしては、モノマー反応率、ばく露前蛍光強度、感度等の観点から、アクリル基及び/又はメタクリル基の数が2~3(より好ましくは2)であり、ポリアルキレングリコール構造(例えばポリエチレングリコール構造)を有し、且つ分子量が100~2000(好ましくは200~1500、より好ましくは300~1200)である多官能モノマーが好ましい。このような多官能モノマーとしては、例えば2AAmLN、PEGDA500、PEGDA1000等が挙げられる。
【0054】
光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の光硬化樹脂の多官能モノマーの濃度は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは0.1~25質量%である。当該濃度は、より好ましくは0.2~15質量%、さらに好ましくは0.5~10質量%、よりさらに好ましくは1~8質量%である。また、当該濃度は、モノマー反応率、ばく露前蛍光強度、感度等の観点から、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%、よりさらに好ましくは4~12質量%、とりわけ好ましくは5~10質量%である。
【0055】
また、(メタ)アクリルモノマーは、さらに、アクリル基及び/又はメタクリル基が1個であるモノマー(単官能モノマー)を含むことが好ましい。単官能モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、2-(メタクリロイルオキシ)エチル 2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC) 、アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(PEG acrylate) 、4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホネート(MAm4N9S)、2-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]アセテート(MO3N6O) 、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオネート(MO3N7O) 、3-[(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン酸(AAm4N8O) 、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(MO3N7S)、4-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホネート(MO3N8S) 、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(AO3N7S) 、3-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(MAm4N8S)等が挙げられる。単官能モノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の光硬化樹脂の単官能モノマー及びそのオリゴマーの合計濃度は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは0.1~20質量%である。当該濃度は、より好ましくは0.1~10質量%、さらに好ましくは0.2~5質量%、よりさらに好ましくは0.3~5質量%である。
【0057】
光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液は、製造効率の観点から、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤として、例えば、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられるが、中でもベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどが好適に用いられる。それ以外にも、カチオン系光重合開始剤としては、オニウム塩系、トリ(置換)フェニルスルホニウム系、ジアゾスルホン系、ヨードニウム系などの開始剤が好適に用いられる。また、アニオン系光重合開始剤として、アルキルリチウム系などの有機金属系開始剤などが好適に用いることができる。光重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液中の光重合開始剤の濃度は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは0.1質量%以下である。当該濃度は、より好ましくは0.005~0.1質量%、さらに好ましくは0.01~0.05質量%である。
【0059】
光硬化樹脂のモノマー及び/又はそのオリゴマーの溶液の溶媒は、水であることが好ましい。当該溶液には、緩衝剤が含まれていることが好ましい。緩衝剤としては、化学物質検出性の観点から、好ましくはリン酸緩衝剤が挙げられる。
【0060】
照射する光(好ましくは紫外線)の波長は、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは280~400nm、より好ましくは320~385nm、さらに好ましくは350~380nmである。また、同様の観点から、光源は、LED(light-emitting diode)であることが好ましい。
【0061】
照射量は、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは50~200 mW/cm2、より好ましくは80~150 mW/cm2である。
【0062】
照射時間は、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは5~60秒、より好ましくは15~45秒である。
【0063】
細胞を含まない状態のハイドロゲルの含水率は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、好ましくは75~99.9質量%、より好ましくは80~98質量である。
【0064】
本開示の細胞チップは、化学物質(特に匂い物質)の検出に用いることができる。化学物質は、例えば体液(例えば、尿)中の化学物質であることができる。この場合、例えば本開示の細胞チップの区画に、体液を添加することにより、体液中の化学物質がハイドロゲル中を拡散して細胞に到達し、細胞上の嗅覚受容体に接触することができる。これにより細胞内に流入するイオンを検出する(例えばイオンにより発色又は発光するタンパク質により検出する)ことにより、化学物質を検出することができる。
【実施例0065】
以下に、実施例に基づいて本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
実施例1.細胞チップの製造及び評価1
<1-1.反応前ゲル溶液の調製>
4-[(3-Methacrylamidopropyl)dimethylammonio]butane-1-sulfonate(モノマー:MAm4N9S)及びN,N'-1,2-Ethanediylbis{N-[2-(acryloylamino)ethyl]acrylamide}(架橋剤:4AAmLN)をPBS(日水製薬 #05913)水溶液に溶解させて、MAm4N9S/4AAmLN水溶液を調製した。Lithium Phenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphinate(光重合開始剤:LPA)をPBS水溶液に溶解させて、LPA水溶液を調製した。MAm4N9Sの終濃度が2.1質量%、4AAmLNの終濃度が5.6質量%、且つLPAの終濃度が0.02質量%になるように、上記2種の水溶液を混合及び攪拌して、反応前ゲル溶液を得た。
【0067】
<1-2.細胞懸濁反応前ゲル溶液の調製>
培養皿に張り付いた昆虫細胞(Spilosoma imparilis由来のSpIm株)(嗅覚受容体タンパク質、嗅覚受容体共受容体タンパク質とカルシウム依存的蛍光タンパク質を発現する遺伝子組換え体:以下センサ細胞、又は蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子組換え体:以下GFP細胞)を物理的衝撃で皿面より剥離させ、少量の培地により懸濁して細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を1000rpmで3分間遠心分離により、上清の培地と沈殿した細胞に分けた後、上清を取り除いた。沈殿した細胞を反応前ゲル溶液に再懸濁することで5,000,000細胞/ml濃度の細胞懸濁反応前ゲル溶液を得た。
【0068】
<1-3.反応率、貯蔵・損失弾性率、Hazeの測定用サンプル作製>
反応前ゲル溶液1 mLを12 well plateの各ウェルに添加した。UV光照射装置(CCS株式会社製 365 nmのLED光源)を用いて、365 nmの波長の光を110 mW/cm2で30秒照射することにより、ハイドロゲルを作製した。
【0069】
<1-4.暴露前蛍光強度、感度の測定用サンプル作製>
細胞懸濁反応前ゲル溶液5ulを厚さ2mmのアクリル板にあけた直径2mmの穴に充填した。細胞懸濁反応前ゲル溶液はウェル内に大きな気泡を生じることなく充填できた。UV光照射装置(CCS株式会社製 365 nmのLED光源)を用いて、365 nmの波長の光を110 mJ/cm2で30秒照射することにより、細胞封入ハイドロゲルを作製した。
【0070】
<1-5.モノマー反応率及び含水率の測定>
ハイドロゲルを作製しイオン交換水量で洗浄した後、真空乾燥(60℃、減圧下)した(8時間以上)。乾燥質量からモノマー反応率(=100×乾燥後ハイドロゲル重量/仕込み量)および含水率(=100×(乾燥前ハイドロゲル重量-乾燥後ハイドロゲル重量)/ 乾燥前ハイドロゲル重量)を算出した。
【0071】
<1-6.濁度(Haze)の測定>
コニカミノルタ製シャーレ(CM-A128)にハイドロゲルを入れてイオン交換水をハイドロゲルが浸る程度添加した。ハイドロゲル周辺の空気を抜き、ヘーズメーター(HZ-V3、スガ試験機株式会社製)を用いて、25℃条件下で測定を行った。
【0072】
<1-7.貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定>
弾性測定装置(MCR302、株式会社北浜製作所製)を用いて測定した。測定条件は次のとおりである:治具;PP12/P2、plate;SS/P2、測定温度;25℃。具体的には、ハイドロゲルをplateに配置し、治具を下し、0.03Nの圧力をかけながら、歪分散測定(周波数1Hz)および周波数分散測定(歪:0.04%)で測定した。周波数0.736 Hzおよび歪0.04%の貯蔵弾性率および損失弾性率を使用した。
【0073】
<1-8.感度の測定>
全てのセンサ細胞を含む細胞封入ハイドロゲルの蛍光強度データ(ばく露前蛍光強度及びばく露後蛍光強度)は、GFP細胞を含む細胞封入ハイドロゲルの蛍光強度を基準にした相対値として算出した。蛍光強度は、ルミノ・イメージアナライザー(LAS4000、富士フィルム株式会社製)により測定した。
【0074】
センサ細胞を含む細胞封入ハイドロゲルをハンクス液(1x Hank's Balanced Salt Solution(gibco #14025-092), 20mM HEPES(gibco #15630-080), 0.1% Bovine Serum Albumin (Sigma #7888))に10分浸した後、蛍光強度を測定し、ばく露前蛍光強度とした。一方で、センサ細胞を内包したハイドロゲルを匂い物質(上記嗅覚受容体タンパク質が応答する匂い物質:Safranal)を400nM濃度で添加した上述のハンクス液に3分浸した後、蛍光強度を測定し、ばく露後蛍光強度とした。ばく露後蛍光強度をばく露前蛍光強度で除した値を感度とした。
【0075】
<1-9.測定結果>
測定結果は以下のとおりである。感度が1を大きく超えており、匂い物質を検出可能であることが分かった。
モノマー反応率:99%以上
含水率:91.8%
感度:2.1。
【0076】
実施例2.細胞チップの製造及び評価2
モノマーの種類、モノマーの濃度、架橋剤の種類、架橋剤の濃度、光重合開始剤の種類を変える以外は実施例1と同様に試験した。その結果、感度は1を大きく超えており、匂い物質を検出可能であることが分かった。
【0077】
実施例3.細胞チップの製造及び評価3
N,N'-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ)-3,1-プロパンジイル]ビスアクリルアミド(2AAmLN) 、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn500) (PEGDA500) 、及びポリエチレングリコールジアクリレート(Mn1000) (PEGDA1000)からなる群より選択される1種以上を含む架橋剤を使用して、実施例1と同様に試験した。
【0078】
なお、モノマーとしては、2-(メタクリロイルオキシ)エチル 2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC) 、アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(PEG acrylate) 、4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホネート(MAm4N9S)、2-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]アセテート(MO3N6O) 、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオネート(MO3N7O) 、3-[(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン酸(AAm4N8O) 、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(MO3N7S)、4-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホネート(MO3N8S) 、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(AO3N7S) 、3-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホネート(MAm4N8S)を、1種単独、又は2種以上を組み合わせて使用した。
【0079】
反応前ゲル溶液中の架橋剤の濃度、モノマー反応率、ばく露前蛍光強度、及び感度を表1に示す。表中、空欄は、濃度0.0wt%を示す。なお、サンプル間で、モノマーの種類及び/又は組成は異なる。ばく露前蛍光強度が一定以上であることは、蛍光強度を低下させる要因(ゲルの白濁等)が比較的少ないことを示し、よってこのような要因によるデータ誤差をより低減することができ、データ信頼性をより一層高めることができる。
【0080】