(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098971
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】トランス脂環式ヒドロキシ化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/145 20060101AFI20240717BHJP
C07C 29/20 20060101ALI20240717BHJP
C07C 29/56 20060101ALI20240717BHJP
C07C 35/21 20060101ALI20240717BHJP
C07C 35/08 20060101ALI20240717BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20240717BHJP
C07C 233/23 20060101ALI20240717BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240717BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20240717BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C07C29/145
C07C29/20 ZAB
C07C29/56 C
C07C35/21
C07C35/08
C07C231/12
C07C233/23
B01J23/46 301Z
B01J23/46 311Z
B01J23/42 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001651
(22)【出願日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2023002551
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川邉 俊行
(72)【発明者】
【氏名】引頭 響子
(72)【発明者】
【氏名】和田 亜弥
(72)【発明者】
【氏名】古里 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐治木 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】井川 貴詞
(72)【発明者】
【氏名】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】朴 貴煥
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB04A
4G169BC30A
4G169BC65A
4G169BC68A
4G169BC69A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB02
4G169CB41
4G169DA05
4G169EA01X
4G169FB13
4H006AA02
4H006AB14
4H006AB20
4H006AC11
4H006AC14
4H006AC41
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA24
4H006BA26
4H006BA30
4H006BA55
4H006BB70
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC12
4H006BE20
4H039CA40
4H039CA60
4H039CB10
4H039CB20
4H039CJ10
(57)【要約】
【課題】 トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なプロセスを提供すること。
【解決手段】 シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、モノヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、トランス体/シス体比率が1.5を超え、10000以下である、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、モノヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、シクロヘキサン環におけるシス体に対するトランス体の比が1.5を超え、10000以下である、式(1)で表される化合物の製造方法。
ここで、式(1)において、Rは、ハロゲノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、-COOR
1で表される基、-CON(R
2)
2で表される基、-N(R
3)
2で表される基、又は-NR
4COR
5で表される基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基であり、シクロヘキサン環におけるRの結合位置は、-OHの結合していない炭素のいずれであってもよい。
【請求項2】
前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物であり、前記反応がシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物のシス体に対するトランス体の比を高くする異性化反応である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、及びモノヒドロキシアリール化合物から選択された少なくとも1つの化合物であり、前記反応が接触水素化反応である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属触媒が、周期表第8族、第9族、第10族、及び第11族から選択された少なくとも1つの金属を含む触媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属触媒が、Ru、Rh、Ni、及びPtからなる群より選択される1種以上の金属を含む触媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属触媒が、金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属触媒が、下記(A)、(B)、及び(C)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
(A)金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上の物質の粉末。
(B)金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上の物質の多孔質体。
(C)金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上の物質が酸化物、水化物、炭素、及びセルロースからなる群より選択される1種以上の担体に担持された担持触媒。
【請求項8】
前記反応が、水素分圧が0.01MPa以上、50MPa以下の雰囲気下、および10℃以上180℃以下の温度条件下で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物は、香料組成物、または医薬品組成物として用いられる重要な化合物の一つである。これらの組成物の品質には、モノオール化合物の、シクロヘキサン環上の置換基とヒドロキシル基の幾何異性体比率、すなわち、トランス体/シス体比率が大きな影響を与えることが知られており、この比率を高めることは、香料組成物、または医薬品組成物の品質を高める為の重要な要素となっている。
例えば特許文献1によると、ベンジルシクロヘキサノール類は、優れた残香性を有する香料組成物として用いられ、その香調は、シス体とトランス体で異なり、異性体比率が組成物の香調を特徴付けると述べられている。
次に特許文献2によると、4-tert-ブチルシクロヘキサノールは、皮膚刺激低下作用を有する医薬品組成物として用いられ、その薬理作用であるTRPV1拮抗作用は、シス体が不活性である一方、トランス体は高い活性を示し、トランス体/シス体比率の高さが、組成物の性能を高めると述べられている。
しかし、モノオール化合物を工業的に製造する場合、高いトランス体/シス体比率で製造することは難しい。例えば、4-tert-ブチルシクロヘキサノールは、p-tert-ブチルフェノールから、金属触媒存在下、加熱、加圧下において、接触水素化により製造する手法が報告されている(特許文献3)。本手法では、4-tert-ブチルシクロヘキサノールは、シス体とトランス体の混合物として得られるが、トランス体/シス体比率は約2.3程度であり、高いトランス体/シス体比率とは言えない。
また、純粋なトランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノールを製造する手法として、4-tert-ブチルシクロヘキサノンを、LiAlH4とAlCl3などの還元剤を用いて、ヒドリド還元により合成する手法も報告されている。(非特許文献1)、本手法では、高選択的にトランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノールが得られるものの、還元剤の高い反応性から、製造の際の取り扱いが難しく、また金属塩を含む廃棄物が多量に発生する為、グリーン・サステナブル・ケミストリーの観点から、環境にやさしいプロセスとは言えない。
【0003】
一方でグリーン・サステナブル・ケミストリーの観点から、溶媒を用いず、かつ原料、中間体、生成物、触媒が固体である固相状態での水素化、および鈴木カップリングの報告例がある。水素化は、パラジウム触媒の存在下、水素分圧が大気圧条件下にて、不飽和炭化水素、アジド誘導体、ベンジルエーテルなどで良好な水素化反応の進行を確認している(非特許文献2)。しかしながら、これまでに、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の接触水素化反応や異性化反応を、溶媒を用いず固相状態で行う方法については検討されていない。
【0004】
グリーンケミストリーの観点から環境に調和したシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造プロセスの開発が必要であり、かつトランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なプロセス開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-048992号公報
【特許文献2】特表2012-523381号公報
【特許文献3】米国特許第2,927,127号明細書
【0006】
【非特許文献1】Organic Syntheses Collective Volume 5, 175-178
【非特許文献2】Tetrahedron 67 (2011) 8628-8634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グリーンケミストリーの観点から環境に調和したシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造プロセスであり、かつトランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を安定して取得可能なプロセス開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、接触水素化反応、またはトランス-シス異性化反応を金属触媒存在下、溶媒を用いずに固相状態で行うことにより、トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なことを見出した。
上記のような知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、モノヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、シクロヘキサン環におけるシス体に対するトランス体の比が1.5を超え、10000以下であり、式(1)で表される化合物の製造方法。
ここで、式(1)において、Rは、ハロゲノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、-COOR
1で表される基、-CON(R
2)
2で表される基、-N(R
3)
2で表される基、又は-NR
4COR
5で表される基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基であり、シクロヘキサン環におけるRの結合位置は、-OHの結合していない炭素のいずれであってもよい。
【0010】
[2]前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物であり、前記反応がシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物のシス体に対するトランス体の比を高くする異性化反応である、[1]に記載の製造方法。
【0011】
[3]前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、及びモノヒドロキシアリール化合物から選択された少なくとも1つの化合物であり、前記反応が接触水素化反応である、[1]に記載の製造方法。
【0012】
[4]前記金属触媒が、周期表第8族、第9族、第10族、及び第11族から選択された少なくとも1つの金属を含む触媒である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0013】
[5]前記金属触媒が、Ru、Rh、Ni、及びPtからなる群より選択される1種以上の金属を含む触媒である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0014】
[6]前記金属触媒が、金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
[7]前記金属触媒が、下記(A)、(B)、及び(C)からなる群から選択される1種以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
(A)金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上の物質の粉末。
(B)金属塩、金属酸化物、及び金属単体からなる群より選択される1種以上の物質の多孔質体。
(C)金属塩、金属酸化物、及び金属単体元素からなる群より選択される1種以上の物質が酸化物、水化物、炭素、及びセルロースからなる群より選択される1種以上の担体に担持された担持触媒。
【0016】
[8]前記反応が、水素分圧が0.01MPa以上、50MPa以下の雰囲気下、および10℃以上180℃以下の温度条件下で行われる、[1]~[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造方法は、従来に比べトランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を穏和な反応条件で取得可能であり、かつ反応溶媒を用いない点からグリーンケミストリー上、環境に優しいプロセスと言える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。
【0019】
本発明のシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物の製造方法は、原料と金属触媒に溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物のトランス体/シス体比率が通常手法の溶液反応系で実施するよりも高くなることを特徴としている。
【0020】
本発明の製造方法によって得られるシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物は、一般式(1)で示される化合物であり、そのトランス体/シス体比率は1.5を超え、10000以下であり、好ましくは3.0~5000であり、より好ましくは4.0~1000である。トランス体/シス体比率を上記範囲とすることによって、高品質を有する香料組成物、または医薬品組成物の原材料として好適に利用することができる。
ここで、トランス体とは、一般式(1)において、シクロヘキサン骨格に結合したヒドロキシ基と置換基Rがトランス位で結合している化合物である。また、シス体とは、一般式(1)において、シクロヘキサン骨格に結合したヒドロキシ基と置換基Rがシス位で結合している化合物である。
【0021】
シクロヘキサン環に結合したヒドロキシ基と置換基Rが、1,2位、1,3位、及び1,4位で結合する場合、トランス体は、構造式(2)~(4)またはシクロヘキサン骨格の立体配座を考慮した構造式(2)’~(4)’で表される。
シクロヘキサン環に結合したヒドロキシ基と置換基Rが、1,2位、1,3位、及び1,4位で結合する場合、シス体は、構造式(5)~(7)またはシクロヘキサン骨格の立体配座を考慮した構造式(5)’~(7)’で表される。
そして、トランス体/シス体比率とは、トランス体の組成を、シス体の組成で除した値である。
【0022】
ここで、式(1)において、Rは、ハロゲノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、-COOR1で表される基、-CON(R2)2で表される基、-N(R3)2で表される基、又は-NR4COR5で表される基であり、R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基であり、シクロヘキサン環におけるRの結合位置は、-OHの結合していない炭素のいずれであってもよい。
【0023】
ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基等が挙げられる。
【0024】
炭素数1以上20以下のアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上12以下、より好ましくは1以上6以下である。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基が挙げられる。
【0025】
炭素数1以上20以下のハロゲン化アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上12以下、より好ましくは1以上6以下である。
炭素数1以上20以下のハロゲン化アルキル基としては、上述した炭素数1以上20以下のアルキル基の炭素原子に結合した水素原子が上述したハロゲノ基で置換された基が挙げられる。ハロゲノ基による置換の位置及び数は、特に限定されない。
【0026】
炭素数3以上20以下のシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3以上14以下、より好ましくは3以上10以下であり、6以上10以下であってもよい。
炭素数3以上20以下のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、1-デカヒドロナフチル基、及び2-デカヒドロナフチル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数6以上30以下のアリール基の炭素数は、好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上14以下、さらに好ましくは6以上10以下である。
炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、2-トリフェニレニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、及び3-ペリレニル基等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いる原料は、シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、モノヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を特に制限なく使用することができる。
【0029】
シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物を原料とした場合には、下記反応スキームの通り、接触水素化反応によりカルボニル基の還元が起こり、トランス体/シス体比率が低いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物が得られた後、さらに異性化反応によって、トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物が得られる。
【0030】
モノヒドロキシアリール化合物を原料とした場合には、下記反応スキームの通り、接触水素化反応によりアリールの還元が起こり、トランス体/シス体比率が低いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物が得られた後、さらに異性化反応によって、トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物が得られる。
【0031】
シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を原料とする場合、異性化反応によって、トランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物が得られる。
【0032】
本発明に用いる金属触媒の金属としては、特に限定されないが、周期表第8族、第9族、第10族、及び第11族から選択された少なくとも1つの金属であることが好ましく、より好ましくは、Ru、Rh、Ni、及びPtからなる群より選択される1種以上の金属であり、さらに好ましくは、Ruである。
金属触媒の状態については特に限定されず、金属塩や金属酸化物、金属単体、金属微粉末であってもよく、これらの金属触媒をそのまま、または多孔質状(多孔質状金属触媒)にして用いてもよいし、担体に担持された状態(金属担持触媒)であってもよい。
【0033】
担体としては、酸化物、水化物、炭素、セルロースなどが挙げられ、これらのうちから1つ以上を用いることができる。
酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、セラミック、ジルコニア、ニオビア、ゼオライトなどが挙げられ、水化物としては、ヒドロキシアパタイト、ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸などが挙げられ、炭素としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0034】
金属担持触媒における金属担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%である。
金属触媒は乾燥した状態でもよく、また触媒の運搬、保管、秤量を容易に行うため水等で湿潤した状態でもよい。湿潤した状態の水の量としては、好ましくは1~5000重量%、より好ましくは5~1000重量%である。
【0035】
触媒濃度は幅広い範囲内で変化させてよいが、多いほど本発明の反応が進みやすくなるが、経済的な面を考慮すると、好ましくは0.001~50mol%(原料mol数量に対する触媒金属のmol数量)、より好ましくは0.01~20mol%、さらに好ましくは0.1~10mol%の範囲に調整する。
【0036】
本発明の実施形態は、原料と金属触媒を反応装置に仕込み、溶媒を添加せずに固相状態で水素を置換して、所定の反応温度、混合条件において実施する。
反応装置は、ガス置換可能な容器であればよく、フラスコ、オートクレーブなどが使用可能である。また、容器自体が回転して内部を混合可能なロータリーエバポレーターの応用や愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー」も使用可能であり、原料と触媒を予め混合して充填したカラム型固定床などに水素をフィードする方法も可能である。さらに、固体を半連続的に取り扱うことが可能な流動床型反応器、ナウターミキサー、リボンブレンダー、株式会社神鋼環境ソリューション社製「SVミキサー」、「PVミキサー」なども使用可能である。
【0037】
原料と金属触媒の仕込み方法については、個別に仕込んでもよく、予め混合した状態を仕込んでもよい。反応器の撹拌動力の急激な負荷を抑制するため、反応器の撹拌を稼働させたまま仕込んでもよい。
【0038】
反応器内の水素置換方法は、水素を多量に導入して置換する方法、水素や不活性ガスによる加圧、パージを繰り返す方法、反応器内を減圧した後に水素を導入することを繰り返す方法などがある。本発明の実施形態は、溶媒を添加せずに固相状態での反応であることから、溶媒の蒸発などの懸念がないため、反応器内を減圧した後に水素を導入することを繰り返す方法が好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノン等が使用可能であり、経済的な面を考慮すると、窒素、およびアルゴンを使用することが好ましい。
【0039】
反応器内の水素は不活性ガスとの混合状態でもよく、水素分圧は、特に限定されないが、好ましくは0.01~50MPa、より好ましくは0.05~5MPa、さらに好ましくは0.08~0.98MPaである。
反応温度は、特に限定されないが、好ましくは10~180℃、より好ましくは30~150℃、さらに好ましくは40~120℃である。溶媒を添加しない為、汎用溶媒の沸点を超える温度域での反応も可能である。
混合条件は、原料と金属触媒が十分に混合された状態が維持されればよい。予め混合した状態で仕込んだ場合は、反応器内で特別に混合しなくてもよい。
【0040】
金属触媒は、反応後に反応混合物を溶媒に溶解させて不均一化し、ろ別によって反応混合物から容易に除去可能である。ろ別した金属触媒に更なる処置を行わずに接触水素化反応や異性化反応に繰り返し使用してもよい。また、触媒を水等で洗浄し、最初の水等で湿潤した状態で繰り返し使用してもよい。
【0041】
反応混合物は、水、アルコール、エーテル、炭化水素、ケトンおよびエステルから選択された少なくとも1つの溶媒に溶解することができる。例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-エチルヘキサノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、イソ酪酸イソブチル、およびそれらの混合物が挙げられる。入手のし易さや操作性から好ましくは、水、メタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルである。
【0042】
上記以外の反応後の反応混合物からの触媒の除去方法として、化合物の物性にも依存するが、蒸留、昇華、溶融等の慣用方法を用いることもできる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
(大気圧下でのモノケトン化合物の接触水素化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である4-フェニルシクロヘキサノン0.5g(2.87mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.31mol%量)を60mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下(水素分圧0.10MPa)に置換した、反応温度を70℃に設定し、300rpmの撹拌速度で12時間撹拌して反応させた。
【0045】
(反応後の後処理)
その後、得られた反応混合物にメタノール20mLを添加して反応混合物を溶解させ、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC(登録商標)、13HP020AN、孔径0.20μm)を用いてろ別することにより、金属触媒Ru/Cを除去した反応ろ液を得た。得られた反応ろ液をガスクロマトグラフィーで測定することにより、ろ液中の組成を解析した。具体的には以下の方法により測定を行った。測定装置は、島津製作所のGC-2030型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.のキャピラリカラム「DB-5MS」(長さ60m、内径0.32mm、膜厚0.25μm、固定液相はPhenyl Aryleneポリマー;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は2.24ml/minに調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を320℃に設定した。試料はメタノールで希釈して、0.3質量%の溶液となるように調製した。得られた溶液0.5μLを試料気化室に注入した。
【0046】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-4-フェニルシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-4-フェニルシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表1に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。
【0047】
[比較例1]
(溶媒中における大気圧下でのモノケトン化合物の接触水素化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である4-フェニルシクロヘキサノン0.5g(2.87mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.31mol%量)、反応溶媒として2-プロパノール(IPA)10mLを60mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下(水素分圧0.10MPa)に置換した後、反応温度を70℃に設定し、300rpmの撹拌速度で12時間撹拌して反応させた。
【0048】
(反応後の後処理)
その後、得られた反応液をメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC(登録商標)、13HP020AN、孔径0.20μm)でろ別することにより、金属触媒Ru/Cを除去した反応ろ液を得た。
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例1と同様に実施した。
【0049】
[実施例2]
(加圧下でのモノアリール化合物の接触水素化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4460型」を使用した。
原料である4-シクロへキシルフェノール0.5g(2.84mmol)、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)1.5g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の13.07mol%量)を190mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素分圧0.90MPa(ゲージ圧0.80MPaG)、反応温度を80℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
【0050】
(反応後の後処理)
実施例1と同様に実施した。
【0051】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-4-シクロへキシルシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-4-シクロへキシルシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表1に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。
【0052】
[比較例2]
(溶媒中における加圧下でのモノアリール化合物の接触水素化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4460型」を使用した。
原料である4-シクロへキシルフェノール0.5g(2.84mmol)、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)1.5g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の13.07mol%量)、反応溶媒として2-プロパノール(IPA)10mLを190mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素分圧0.90MPa(ゲージ圧0.80MPaG)、反応温度を80℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
【0053】
(反応後の後処理)
比較例1と同様に実施した。
【0054】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例2と同様に実施した。
【0055】
[実施例3]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である4-シクロへキシルシクロヘキサノール0.5g(2.74mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.51mol%量)を60mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下(水素分圧0.10MPa)に置換した後、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
【0056】
(反応後の後処理)
実施例1と同様に実施した。
【0057】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-4-シクロへキシルシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-4-シクロへキシルシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表1に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。また異性化反応前の原料のトランス体/シス体比率も併記した。
【0058】
[比較例3]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である4-シクロへキシルシクロヘキサノール0.5g(2.74mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.51mol%量)、反応溶媒として2-プロパノール(IPA)10mLを60mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下(水素分圧0.10MPa)に置換した後、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
【0059】
(反応後の後処理)
比較例1と同様に実施した。
【0060】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例3と同様に実施した。
【0061】
[実施例4]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料を4-アセトアミドシクロヘキサノール0.5g(3.18mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の3.89mol%量)、反応温度を120℃とした他は、実施例3と同様に実施した。
【0062】
(反応後の後処理)
実施例1と同様に実施した。
【0063】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-4-アセトアミドシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-4-アセトアミドシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表1に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。また異性化反応前の原料のトランス体/シス体比率も併記した。
【0064】
[比較例4]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料を4-アセトアミドシクロヘキサノール0.5g(3.18mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の3.89mol%量)としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0065】
(反応後の後処理)
比較例1と同様に実施した。
【0066】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例4と同様に実施した。
【0067】
[実施例5]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料を4-tert-ブチルシクロヘキサノール0.5g(3.20mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.1g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の1.54mol%量)、反応温度を60℃とした他は、実施例3と同様に実施した。
【0068】
(反応後の後処理)
実施例1と同様に実施した。
【0069】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表1に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。また異性化反応前の原料のトランス体/シス体比率も併記した。
【0070】
[比較例5]
原料を4-tert-ブチルシクロヘキサノール0.5g(3.20mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.1g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の1.54mol%量)としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0071】
(反応後の後処理)
比較例1と同様に実施した。
【0072】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例5と同様に実施した。
【0073】
【0074】
実施例1~5と比較例1~5の比較から、シクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物、モノヒドロキシアリール化合物、モノオール化合物を、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、トランス体/シス体比率が高くなることが分かる。
【0075】
[実施例6]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
金属触媒を5重量%Ru/Al2O3(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.51mol%量)としたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0076】
(反応後の後処理)
実施例3と同様に実施した。
【0077】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0078】
[実施例7]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
金属触媒を50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.5g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.51mol%量)としたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0079】
(反応後の後処理)
実施例3と同様に実施した。
【0080】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0081】
[比較例6]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応温度を60℃としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0082】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0083】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0084】
[比較例7]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応溶媒をメタノール(MeOH)10mL、反応温度を60℃としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0085】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0086】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0087】
[比較例8]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応溶媒を酢酸エチル10mL、反応温度を60℃としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0088】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0089】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0090】
[比較例9]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
反応溶媒をテトラヒドロフラン(THF)10mL、反応温度を60℃としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0091】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0092】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表2に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0093】
【0094】
実施例6~7と比較例6~9の比較から、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、トランス体/シス体比率が高くなることが分かる。
【0095】
[実施例8]
(大気圧下でのモノケトン化合物の接触水素化反応)
原料を2-フェニルシクロヘキサノン0.5g(2.87mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.31mol%量)、反応温度を40℃とした他は、実施例1と同様に実施した。
【0096】
(反応後の後処理)
実施例1と同様に実施した。
【0097】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
ガスクロマトグラフィーによる組成解析では、反応生成物として、シス-2-フェニルシクロヘキサノール(シス-生成物)、トランス-2-フェニルシクロヘキサノール(トランス-生成物)、および副生成物があり、以下の表4に組成および生成物のトランス体/シス体比率を表記した。
【0098】
[比較例10]
(溶媒中における大気圧下でのモノケトン化合物の接触水素化反応)
原料を2-フェニルシクロヘキサノン0.5g(2.87mmol)、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.25g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.31mol%量)、反応温度を80℃とした他は、比較例1と同様に実施した。
【0099】
(反応後の後処理)
比較例1と同様に実施した。
【0100】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
実施例8と同様に実施した。
【0101】
【0102】
実施例8と比較例10の比較から、オルト位置換のシクロヘキサン骨格を有するモノケトン化合物を、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、トランス体/シス体比率が高くなることが分かる。
【0103】
[実施例9]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料である4-シクロへキシルシクロヘキサノール0.25g(1.37mmol)、金属触媒を50重量%含水5重量%Rh/C(エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.2g(触媒Rh/C中のロジウム含量が原料の3.54mol%量)としたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0104】
(反応後の後処理)
反応混合物にメタノール10mLを添加して反応混合物を溶解させたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0105】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表5に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0106】
[実施例10]
(大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料である4-シクロへキシルシクロヘキサノール0.25g(1.37mmol)、金属触媒を50重量%含水3重量%Pt/C(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.75g(触媒Pt/C中の白金含量が原料の4.21mol%量)としたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0107】
(反応後の後処理)
反応混合物にメタノール10mLを添加して反応混合物を溶解させたほかは、実施例3と同様に実施した。
【0108】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表5に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0109】
[比較例11]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
金属触媒を50重量%含水5重量%Rh/C(エヌ・イー ケムキャット株式会社製)0.4g(触媒Rh/C中のロジウム含量が原料の3.54mol%量)としたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0110】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0111】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表5に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0112】
[比較例12]
(溶媒中における大気圧下でのモノオール化合物の異性化反応)
原料である4-シクロへキシルシクロヘキサノール0.25g(1.37mmol)、金属触媒を50重量%含水3重量%Pt/C(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.75g(触媒Pt/C中の白金含量が原料の4.21mol%量)、反応溶媒として2-プロパノール(IPA)5mLとしたほかは、比較例3と同様に実施した。
【0113】
(反応後の後処理)
比較例3と同様に実施した。
【0114】
(ガスクロマトグラフィーによる組成解析)
表5に表記したほかは、実施例3と同様に実施した。
【0115】
【0116】
実施例9~10と比較例11~12の比較から、触媒を変更しても、シクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物を、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、トランス体/シス体比率が高くなることが分かる。
本発明の製造方法により得られたトランス体/シス体比率の高いシクロヘキサン骨格を有するモノオール化合物は、高品質を有する香料組成物、または医薬品組成物の原材料として好適に利用することができる。