(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099110
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/187 20060101AFI20240718BHJP
H01R 11/11 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01R13/187 B
H01R11/11 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002814
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】八木 三郎
(57)【要約】
【課題】基台部とバネ部材を溶接してもアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくく、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】メス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とを有しており、バネ部材30の一部である外側沿設板32には、板厚方向に貫通する貫通孔32hが設けられるとともに側壁21との溶接部40が設けられている。そして、溶接部40が、貫通孔32hから連接沿設板33の反対側に位置する沿設板端縁32eまでの間に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に接続される基台部と、
前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、
前記基台部は、オス型端子が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁を有し、
前記バネ部材は、前記側壁の内面側に配置されるアームバネと、前記側壁の外面側に配置される外側沿設板と、前記側壁の頂面側に配置されて前記アームバネ及び前記外側沿設板を連接する連接沿設板とを有し、
前記外側沿設板には、板厚方向に貫通する貫通孔が設けられるとともに前記側壁との溶接部が設けられ、
前記溶接部が、前記貫通孔から前記連接沿設板の反対側に位置する沿設板端縁までの間に配置された
メス型端子。
【請求項2】
前記側壁の対向方向及び前記オス型端子の挿入方向に対して交差する方向を交差方向とし、
前記溶接部は、前記貫通孔に近接した溶接部分が、前記貫通孔における前記交差方向の開口範囲よりも内側に配置された
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項3】
前記溶接部分を孔側溶接部分とし、
前記孔側溶接部分よりも前記沿設板端縁に近接した端縁側溶接部分が、前記交差方向に拡幅して設けられた
請求項2に記載のメス型端子。
【請求項4】
前記端縁側溶接部分が、前記開口範囲を超えて設けられた
請求項3に記載のメス型端子。
【請求項5】
前記貫通孔が複数設けられ、
前記貫通孔のそれぞれに前記溶接部が設けられた
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた
端子付き電線。
【請求項8】
請求項7に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ付き電線。
【請求項9】
請求項7に記載の端子付き電線が備えられた
ワイヤーハーネス。
【請求項10】
請求項8に記載のコネクタ付き電線が備えられた
ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流が流れる電気回路のメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器は、電動装置や電源装置をワイヤーハーネスによって接続することで電気回路を構成している。ワイヤーハーネスと電動装置ならびにワイヤーハーネスと電源装置は、それぞれに装着されたコネクタを介して互いに接続されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すコネクタは、コネクタハウジングにメス型端子を収容したものである。かかるメス型端子は、電線に接続される基台部と、基台部に取り付けられるバネ部材とを有しており、バネ部材にはオス型端子(詳しくはオス型端子のブレード)を付勢するアームバネが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大電流が流れる電気回路のメス型端子においては、良好な導電性を確保すべく基台部とバネ部材を溶接することが考えられる。しかし、基台部とバネ部材を溶接すれば、溶接時に発生する溶接熱が板材を折り曲げて形成されたバネ部材の折り曲げ部分に伝わるので、いわゆる応力緩和が生じることとなり、アームバネにおける電気接点部の位置が変位してしまう可能性があった。ひいてはアームバネの付勢力が不安定になってしまうという可能性があった。
【0006】
この発明は、基台部とバネ部材を溶接してもアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくく、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、前記基台部は、オス型端子が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁を有し、前記バネ部材は、前記側壁の内面側に配置されるアームバネと、前記側壁の外面側に配置される外側沿設板と、前記側壁の頂面側に配置されて前記アームバネ及び前記外側沿設板を連接する連接沿設板とを有し、前記外側沿設板には、板厚方向に貫通する貫通孔が設けられるとともに前記側壁との溶接部が設けられ、前記溶接部が、前記貫通孔から前記連接沿設板の反対側に位置する沿設板端縁までの間に配置されたことを特徴とするメス型端子である。
なお、本発明における溶接部は、あらゆる溶接態様を含むものとする。具体的には、実線状、点線状及び点群状の溶接態様を含むものとする。また、直線状、曲線状及び折線状の溶接態様を含むものとする。さらに、円形等の細かなパターンを描きながら走査する、いわゆるウォブリング溶接やウィービング溶接等の溶接態様も含むものとする。
【0008】
またこの発明は、前記メス型端子と、前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ、ならびに前記メス型端子と、前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた端子付き電線であることを特徴とする。
【0009】
さらにこの発明は、前記端子付き電線と、前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ付き電線、ならびに前記端子付き電線及び前記コネクタ付き電線のうちの少なくとも一方が備えられたワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0010】
この発明により、基台部とバネ部材を溶接してもアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくく、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子は、電線に接続される基台部と、基台部に取り付けられるバネ部材とを有しており、バネ部材の一部である外側沿設板には、板厚方向に貫通する貫通孔が設けられるとともに側壁との溶接部が設けられている。そして、溶接部が、貫通孔から連接沿設板の反対側に位置する沿設板端縁までの間に配置されている。そのため、溶接時に発生する溶接熱が貫通孔を回り込むようにして外側沿設板と連接沿設板の折り曲げ部分等に伝わるため、かかる折り曲げ部分等が高温になることを抑制できる。すると、応力緩和によって曲げ角度が変化してしまうことを防止でき、連接沿設板等を介して設けられたアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなる。したがって、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0011】
また、溶接部及びその周囲が溶接時の熱影響によって変形しても、かかる変形が貫通孔によって吸収されるので、アームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなる。より詳しくは、溶接部及びその周囲に生じた歪が貫通孔によって吸収され、貫通孔を越えて連接沿設板等へ伝わる歪量が抑制されるため、連接沿設板等を介して設けられたアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなる。この点からも、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0012】
この発明の態様として、前記側壁の対向方向及び前記オス型端子の挿入方向に対して交差する方向を交差方向とし、前記溶接部は、前記貫通孔に近接した溶接部分が、前記貫通孔における前記交差方向の開口範囲よりも内側に配置されてもよい。
【0013】
この発明により、溶接時に発生する溶接熱が貫通孔を大きく回り込むようにして外側沿設板と連接沿設板の折り曲げ部分等に伝わるため、かかる折り曲げ部分等が高温になることを抑制できる。すると、応力緩和によって曲げ角度が変化してしまうことを確実に防止でき、連接沿設板等を介して設けられたアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなる。また、溶接部及びその周囲に生じた歪が連接沿設板に向かっても、かかる歪が貫通孔によって確実に吸収されて連接沿設板等に伝わらないため、連接沿設板等を介して設けられたアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなる。したがって、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記溶接部分を孔側溶接部分とし、前記孔側溶接部分よりも前記沿設板端縁に近接した端縁側溶接部分が、前記交差方向に拡幅して設けられてもよい。
この発明により、貫通孔に近接した孔側溶接部分は、貫通孔における交差方向の開口範囲よりも内側に設けられ、溶接面積が小さくならざるを得ないのに対し、貫通孔から離間した端縁側溶接部分は、交差方向に拡幅して設けられ、溶接面積を大きく確保できる。したがって、アームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくくなり、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できるという効果を得つつも、基台部とバネ部材の溶接面積を確保して導電性を向上させることができる。また、基台部とバネ部材の溶接面積を大きく確保したことで溶接強度も向上するので、落下等の衝撃に起因した溶接部の破断を防ぎ、ひいてはバネ部材が脱落してしまうことを防止できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記端縁側溶接部分が、前記開口範囲を超えて設けられてもよい。
この発明により、端縁側溶接部分が、交差方向に拡幅して開口範囲を超えた広い範囲で設けられるため、溶接面積を十分に大きく確保できる。したがって、基台部とバネ部材の導電性を確実に向上させることができる。また、基台部とバネ部材の溶接面積を十分に大きく確保したことで溶接強度もより向上するので、落下等の衝撃に起因した溶接部の破断を確実に防ぎ、ひいてはバネ部材が脱落してしまうことを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記貫通孔が複数設けられ、前記貫通孔のそれぞれに前記溶接部が設けられてもよい。
この発明により、基台部に対して複数箇所でバネ部材が固定されることとなる。したがって、例えば、溶接部の一つで破断等が生じても導電性を確保することができる。また、溶接部の一つで破断等が生じてもバネ部材が脱落することを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
基台部とバネ部材を溶接してもアームバネにおける電気接点部の位置が変位しにくく、アームバネの付勢力が不安定になってしまうことを防止できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図9】メス型端子の内側にブレードが挿入された状態のB-B断面図。
【
図13】メス型端子の側面図とA-A断面図を比較した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1はコネクタ1を示す全体斜視図である。
図1においては、内部のメス型端子10が見えるようにコネクタハウジング2を透過状態で表している。
図2はメス型端子10の分解斜視図である。
【0020】
また、
図3はメス型端子10の斜視図である。
図4は
図3における矢印Xの方向から視た正面図であり、
図5は
図3における矢印Yの方向から視た側面図であり、
図6は
図3における矢印Zの方向から視た平面図である。
図7は
図6におけるA-A断面図であり、
図8は
図6におけるB-B断面図である。
【0021】
さらに、
図9はメス型端子10の内側にブレード7が挿入された状態のB-B断面図である。
図10はメス型端子10の生産工程を示す説明図であり、
図11は
図10(b)における矢印Yの方向から視た側面図であり、
図12は
図11におけるC-C断面図である。そして、
図13はメス型端子10の側面図とA-A断面図を比較した説明図である。
図14から
図23は他の実施形態に係るメス型端子10の斜視図である。
【0022】
図1に示すように、コネクタ1は、コネクタハウジング2の内部に二つのメス型端子10を収容したものである。以下に、コネクタ1について簡単に説明し、その後にメス型端子10について詳しく説明する。
【0023】
コネクタハウジング2は、略直方体形状の筐体部2aと、筐体部2aから延びる電線挿通部2bとを有している。筐体部2aには、二つのメス型端子10が互いに対して並行に収容され、それぞれのメス型端子10から延びる電線3が電線挿通部2bに挿通、保持されている。
【0024】
電線3は、芯線4を絶縁被覆5で被覆した大電流用の丸電線である。芯線4は、銅又は銅合金で形成された素線を束ねて構成されている。但し、芯線4は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成された素線を束ねて構成されていてもよい。あるいは材質を問わず、いわゆる単線であってもよい。
【0025】
このようにして、コネクタ1は、ワイヤーハーネスにおける幹線の末端部分を構成する。あるいはワイヤーハーネスの幹線から分岐した枝線の末端部分を構成する。そして、コネクタハウジング2に対して図示省略する相手側のコネクタハウジングが接続されると、メス型端子10の内側にオス型端子6のブレード7(
図9参照)が挿入され、両端子が電気的に接続される。
【0026】
図2及び
図3に示すように、メス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とを有している。メス型端子10の機能区分としては、電線3に接続される電線接続部11と、オス型端子6のブレード7(
図9参照)に接続される端子接続部12とに分けることができる。そして、電線接続部11と端子接続部12とで端子本体15を構成している。
【0027】
なお、以下の説明においては、端子本体15における電線接続部11と端子接続部12とを直列配置した方向を長手方向Lとし、電線接続部11が設けられた側を基端側Lb、その逆側を先端側Ltと表している。また、長手方向Lに直交する方向を高さ方向Hとし、後述する挿入空間12Xが開口された側を上方側Hu、その逆側を下方側Hdと表している。さらに、長手方向Lと高さ方向Hに直交する方向を幅方向Wとし、電線接続部11に連接された側壁21の側を奥側Wb、その逆側を手前側Wfと表している。
【0028】
電線接続部11は、基台部20における電線3が接続される部位を指す。電線接続部11は、基台部20の奥側Wbの側壁21から基端側Lbに向かって延設されており、長手方向Lかつ高さ方向Hに広がった平板状に形成されている。電線接続部11と端子接続部12との境界部分には、下方側Hdの端縁から上方側Huに向かって切欠部11aが設けられている。端子接続部12となる板材に曲げ加工を施して一対の側壁21を形成する際に、電線接続部11に歪が生じないようにするためである。
【0029】
端子接続部12は、基台部20におけるオス型端子6のブレード7(
図9参照)に接続される部位を指す。端子接続部12は、互いに対して所定間隔を隔てて配置された一対の側壁21を有しており、それぞれの側壁21は、長手方向Lかつ高さ方向Hに広がった平板状に形成されている。こうして、それぞれの側壁21と、これら側壁21をつなぐ底壁22との間には、オス型端子6のブレード7(
図9参照)が挿入可能な挿入空間12Xが形成されている。また、それぞれの側壁21における上方側Huの端部には、バネ部材30が取り付けられている。
【0030】
図2から
図6に示すように、バネ部材30は、一対の側壁21に取り付けられることにより、互いに対向して配置される。これらバネ部材30は、二つ一組で使用され、挿入空間12Xに挿入されたブレード7(
図9参照)を挟み込むように付勢力が作用する構成とされている(
図9における矢印F参照)。以下に、バネ部材30について詳しく説明する。
【0031】
バネ部材30は、長手方向Lから視て下方側Hdが開口する逆U字状に形成されている。バネ部材30は、側壁21の内面側に配置されるアームバネ31と、側壁21の外面側に配置される外側沿設板32と、側壁21の頂面側に配置されてアームバネ31及び外側沿設板32を連接する連接沿設板33とを有している。そして、外側沿設板32には、板厚方向に貫通する貫通孔32hが設けられるとともに側壁21との溶接部40(
図3及び
図5及び
図8から
図9参照)が設けられている。
【0032】
また、バネ部材30は、外側沿設板32から長手方向Lに延設された延設部分を垂直に折り曲げることによって形成した止板34を有している。そのため、バネ部材30を奥側Wbの側壁21に装着すると、かかる側壁21における先端側Ltの端面に止板34が当接することとなる。反対に、バネ部材30を手前側Wfの側壁21に装着すると、かかる側壁21における基端側Lbの端面に止板34が当接することとなる。このように、止板34は、側壁21に取り付けられるバネ部材30の位置決め用途に利用される。
【0033】
さらに、
図7から
図9に示すように、バネ部材30は、側壁21の内面と頂面との角部21eを回り込むようにして下方側Hdに向かって延びる内側沿設板35を有しており、かかる内側沿設板35にアームバネ31が設けられている。それぞれのアームバネ31は、挿入空間12Xの開口から下方側Hdに向かうにつれて対向する側壁21に対して徐々に近接するアーム部311と、アーム部311の所定箇所から折り曲げられて徐々に離間するアーム先端部312とを有している。そして、アーム部311とアーム先端部312の境界部分には、対向する側壁21に向かって突出する電気接点部313が形成されている。かかる電気接点部313は、挿入されたブレード7の側面に対して接触する(
図9参照)。
【0034】
加えて、
図7から
図9に示すように、バネ部材30には、長手方向Lに沿って互いに所定間隔を隔てつつ、十枚のアームバネ31が設けられている。それぞれのアームバネ31は、その基端部分31b(内側沿設板35との連接部分と同義)が高さ方向Hにズレなく一致しており、基端部分31bから先端部分31tまでの長さも全て等しいものとされている。但し、長手方向Lの基端側Lbから先端側Ltに向かって順に並ぶアームバネ31をアームバネ31A~31Jとした場合に、アームバネ31A,31Jの幅寸法が大きく設定され、アームバネ31B,31Iの幅寸法が中程度に設定され、アームバネ31C~31Hの幅寸法が小さく設定されている。このようにしたのは、アームバネ31の一群全体として、ブレード7に対して高い追従性を発揮させるためである(
図9参照)。
【0035】
なお、アームバネ31A~31Jは、その基端部分31bが高さ方向Hにズレなく一致しているものの、長手方向Lの両側Lb,Ltから中央に向かってアーム長さが徐々に長く又は短くなっていてもよい。あるいは交互に長短を繰り返してもよい。さらに、アームバネ31A~31Jは、その基端部分31bが高さ方向Hにズレているとしてもよい。この場合においても、アーム長さが全て等しくてもよいし、徐々に長く又は短くなっていてもよい。あるいは交互に長短を繰り返してもよい。
【0036】
ところで、このようなメス型端子10は、以下の生産工程を経て完成される。すなわち、
図10(a)に示すように、基台部20を構成する一対の側壁21にバネ部材30を取り付け、
図10(b)に示すように、バネ部材30における外側沿設板32と側壁21とを溶接して完成される。このとき、外側沿設板32と側壁21との溶接は、外側沿設板32に設けられた貫通孔32hから同じく外側沿設板32の下方側Hdの端縁部分である沿設板端縁32eまでの間で行われる。そのため、溶接部40は、貫通孔32hから連接沿設板33の反対側に位置する沿設板端縁32eまでの間に配置されているといえる。
【0037】
ここで、
図11及び
図12を用いて、貫通孔32hと溶接部40についてより詳しく説明する。本実施形態に係るメス型端子10においては、二つの貫通孔32hと、これら貫通孔32hのそれぞれに対応する溶接部40が設けられている(
図3及び
図5ならびに
図8から
図10参照)。
【0038】
貫通孔32hは、外側沿設板32における高さ方向Hの中央部分よりも上方側Huで、外側沿設板32における長手方向Lの中央部分を境界として基端側Lbと先端側Ltとに一つずつ設けられている。それぞれの貫通孔32hは、長手方向Lに長い略矩形状とされ、側壁21の貫通孔21hと重なることによって開口部分を構成する。かかる開口部分には、コネクタハウジング2(
図1参照)の係合爪が係合する。
【0039】
溶接部40は、基台部20とバネ部材30の導電性を向上させるとともに基台部20からバネ部材30が脱落してしまうことを防止すべく設けられている。溶接部40は、貫通孔32hから沿設板端縁32eまでの間に設定された溶接実施範囲50の内側に収まるように設けられている。溶接実施範囲50とは、外側沿設板32における溶接部40を設けることが認められた部位を指す。
【0040】
図11に示すように、溶接実施範囲50は、その上側部分50uが貫通孔32hにおける長手方向Lの開口範囲Dよりも内側に収まるように設定され、貫通孔32hから下方側Hdに向かって所定距離を隔てた部分である下側部分50dが長手方向Lに拡幅するように設定されている。そして、かかる下側部分50dにあっては、開口範囲Dを超えている。したがって、溶接部40は、貫通孔32hに近接した孔側溶接部分40uが、貫通孔32hにおける長手方向Lの開口範囲Dよりも内側に配置され、孔側溶接部分40uよりも沿設板端縁32eに近接した端縁側溶接部分40dが、長手方向Lに拡幅して開口範囲Dを超えて配置されることとなる。
【0041】
また、本実施形態に係るメス型端子10において、溶接部40は、貫通孔32hに近接した孔側溶接部分40uと、沿設板端縁32eに近接した端縁側溶接部分40dと、孔側溶接部分40u及び端縁側溶接部分40dの間に設けられた中間溶接部分40mとで構成されている。これら溶接部分40u,40d,40mは、それぞれ実線状とされ、長手方向Lに沿って直線状に延びている。この点、溶接部分40u,40d,40mの少なくとも一部が実線状ではなく、点線状あるいは点群状であってもよい。また、溶接部分40u,40d,40mの少なくとも一部が直線状ではなく、曲線状あるいは折線状であってもよい。さらに、溶接部分40u,40d,40mの少なくとも一部が円形等の細かなパターンを描きながら走査する、いわゆるウォブリング溶接やウィービング溶接等であってもよい。
【0042】
このように、本実施形態に係るメス型端子10において、溶接部40は、三本の直線状に形成された溶接部分40u,40d,40mによって構成されているものの、溶接実施範囲50の内側に収まることを条件に、あらゆる溶接態様とすることが許容される。例えば、単純な線や円はもちろん、複雑な幾何学模様等としてもよい。
【0043】
なお、本実施形態に係るメス型端子10においては、孔側溶接部分40uを単位長さあたりの投入エネルギー量が少ない仮溶接とし、中間溶接部分40m及び端縁側溶接部分40dを単位長さあたりの投入エネルギー量が多い本溶接としてもよい。この場合、外側沿設板32と側壁21とを溶接する工程において、まず孔側溶接部分40uの溶接を行って両者を固定した後に、中間溶接部分40m及び端縁側溶接部分40dの溶接を行うこととなる。
【0044】
このように、孔側溶接部分40uを単位長さあたりの投入エネルギー量が少ない仮溶接とすることで、孔側溶接部分40u及びその周囲に生じる歪が連接沿設板33等に伝わることを抑えつつ、溶接熱が外側沿設板32と連接沿設板33の折り曲げ部分や連接沿設板33と内側沿設板35の折り曲げ部分に伝わって高温になることを抑制できる。もちろん、中間溶接部分40m及び端縁側溶接部分40dを形成することで、確実に導電性を向上させるとともに基台部20からバネ部材30が脱落してしまうことを防止できる。中間溶接部分40m及び端縁側溶接部分40dを形成する際には、孔側溶接部分40uにて基台部20とバネ部材30とが固定されているので、バネ部材30の取り付け位置にズレが生じてしまうことを防止できる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るメス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで端子本体15が設けられ、基台部20は、オス型端子6のブレード7が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁21を有し、バネ部材30は、側壁21の内面側に配置されるアームバネ31と、側壁21の外面側に配置される外側沿設板32と、側壁21の頂面側に配置されてアームバネ31及び外側沿設板32を連接する連接沿設板33とを有し、外側沿設板32には、板厚方向に貫通する貫通孔32hが設けられるとともに側壁21との溶接部40が設けられ、溶接部40が、貫通孔32hから連接沿設板33の反対側に位置する沿設板端縁32eまでの間に配置されたことを特徴とする。
【0046】
このようなメス型端子10によれば、基台部20とバネ部材30を溶接してもアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくく、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とを有しており、バネ部材30の一部である外側沿設板32には、板厚方向に貫通する貫通孔32hが設けられるとともに側壁21との溶接部40が設けられている。そして、溶接部40が、貫通孔32hから連接沿設板33の反対側に位置する沿設板端縁32eまでの間に配置されている。そのため、溶接時に発生する溶接熱が貫通孔32hを回り込むようにして外側沿設板32と連接沿設板33の折り曲げ部分や連接沿設板33と内側沿設板35の折り曲げ部分に伝わるため(
図11及び
図12における矢印Ht参照)、これら折り曲げ部分が高温になることを抑制できる。すると、応力緩和によって曲げ角度が変化してしまうことを防止でき、連接沿設板33等を介して設けられたアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなる。したがって、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0047】
また、溶接部40及びその周囲が溶接時の熱影響によって変形しても(
図11及び
図12における変形部分Pd参照)、かかる変形が貫通孔32hによって吸収されるので、アームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなる。より詳しくは、溶接部40及びその周囲に生じた歪が貫通孔32hによって吸収され、貫通孔32hを越えて連接沿設板33等へ伝わる歪量が抑制されるため、連接沿設板33等を介して設けられたアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなる。この点からも、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0048】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、側壁21の対向方向(幅方向W)及びオス型端子6のブレード7の挿入方向(高さ方向H)に対して交差する方向を長手方向Lとし、溶接部40は、貫通孔32hに近接した孔側溶接部分40uが、貫通孔32hにおける長手方向Lの開口範囲Dよりも内側に配置されている。
【0049】
このようなメス型端子10によれば、溶接時に発生する溶接熱が貫通孔32hを大きく回り込むようにして外側沿設板32と連接沿設板33の折り曲げ部分や連接沿設板33と内側沿設板35の折り曲げ部分に伝わるため、これら折り曲げ部分が高温になることを抑制できる。すると、応力緩和によって曲げ角度が変化してしまうことを確実に防止でき、連接沿設板33等を介して設けられたアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなる。また、溶接部40及びその周囲に生じた歪が連接沿設板33に向かっても、かかる歪が貫通孔32hによって確実に吸収されて連接沿設板33等に伝わらないため、連接沿設板33等を介して設けられたアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなる。したがって、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【0050】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、孔側溶接部分40uよりも沿設板端縁32eに近接した端縁側溶接部分40dが、長手方向Lに拡幅して設けられている。
このようなメス型端子10によれば、貫通孔32hに近接した孔側溶接部分40uは、貫通孔32hにおける長手方向Lの開口範囲Dよりも内側に設けられ、溶接面積が小さくならざるを得ないのに対し、貫通孔32hから離間した端縁側溶接部分40dは、長手方向Lに拡幅して設けられ、溶接面積を大きく確保できる。したがって、アームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくくなり、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できるという効果を得つつも、基台部20とバネ部材30の溶接面積を確保して導電性を向上させることができる。また、基台部20とバネ部材30の溶接面積を大きく確保したことで溶接強度も向上するので、落下等の衝撃に起因した溶接部40の破断を防ぎ、ひいてはバネ部材30が脱落してしまうことを防止できる。
【0051】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、端縁側溶接部分40dが、開口範囲Dを超えて設けられている。
このようなメス型端子10によれば、端縁側溶接部分40dが、長手方向Lに拡幅して開口範囲Dを超えた広い範囲で設けられるため、溶接面積を十分に大きく確保できる。したがって、基台部20とバネ部材30の導電性を確実に向上させることができる。また、基台部20とバネ部材30の溶接面積を十分に大きく確保したことで溶接強度もより向上するので、落下等の衝撃に起因した溶接部40の破断を確実に防ぎ、ひいてはバネ部材30が脱落してしまうことを防止できる。
【0052】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、貫通孔32hが二つ設けられ、貫通孔32hのそれぞれに溶接部40が設けられている。
このようなメス型端子10によれば、基台部20に対して二箇所でバネ部材30が固定されることとなる。したがって、例えば、溶接部40の一つで破断等が生じても導電性を確保することができる。また、溶接部40の一つで破断等が生じてもバネ部材30が脱落することを防止できる。
【0053】
なお、本実施形態に係るメス型端子10においては、ファイバレーザ溶接機Lw(
図10(b)参照)を用いて外側沿設板32と側壁21との溶接を行うものとしている。レーザの波長は、近赤外域のみならず、遠赤外域、可視域、その他の波長、あるいは多波長を組み合わせたものでもよい。レーザの発振形態は、CW、パルス、CWのパルス変調でもよい。
【0054】
また、スパッタを抑制するための回析光学素子ならびにそれに類する集光ビームパターン制御を用いてもよい。レーザの掃引には、ガルバノスキャナを用いた溶接、もしくは加工ヘッドを固定し、メス型端子10をステージングして溶接、あるいはガルバノスキャナとロボットを組み合わせたオンザフライ溶接でもよい。そして、レーザの代わりに電子ビームを用いて溶接を行うとしてもよいし、アーク溶接機等を用いて溶接を行うとしてもよい。ろう付けやはんだ付け等のろう接合も溶接の概念に含むものとする。
【0055】
加えて、本実施形態に係るメス型端子10においては、長手方向Lにおける貫通孔32hを除いた外側沿設板32の幅寸法が、全てのアームバネ31の幅寸法を足し合わせた合計寸法と同じ又は大きくなるように設定されるのが好ましい。つまりは、
図13(a)に示すように、長手方向Lにおける貫通孔32hを除いた外側沿設板32の幅寸法をWp(Wp=W1+W2+W3)とし、
図13(b)に示すように、全てのアームバネ31の幅寸法を足し合わせた合計寸法をWq(Wq=Wa+Wb+・・・+Wj)とした場合、Wp≧Wqを満たすように設定されるのが好ましい。電流の通路となる外側沿設板32の断面積が貫通孔32hを設けたことによって小さくなるため、これに起因した発熱を抑制することができる。
【0056】
さらに加えて、本実施形態に係るメス型端子10においては、バネ部材30が銅又は銅合金で形成されている。また、前述したように、バネ部材30に設けられた貫通孔32hは、長手方向Lに長い略矩形状とされている。そのため、銅又は銅合金の板材から略矩形状の貫通孔32hを打ち抜くプレス工程において、短手方向である高さ方向Hの開口範囲が板厚の80パーセント以上であることが求められる。短手方向である高さ方向Hの開口範囲を板厚の80パーセント以上とすることで、バリやダレ等の発生を抑えられ、貫通孔32hの周囲に歪が生じることも抑えられるからである。但し、貫通孔32hが略矩形状であることに限定するものではない。例えば、円形状や楕円形状、三角形等の多角形状であってもよいものとする。
【0057】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明のコネクタはコネクタ1に対応し、
コネクタハウジングはコネクタハウジング2に対応し、
電線は電線3に対応し、
オス型端子はオス型端子6に対応し、
メス型端子はメス型端子10に対応し、
端子本体は端子本体15に対応し、
基台部は基台部20に対応し、
側壁は側壁21に対応し、
バネ部材はバネ部材30に対応し、
アームバネはアームバネ31に対応し、
外側沿設板は外側沿設板32に対応し、
連接沿設板は連接沿設板33に対応し、
貫通孔は貫通孔32hに対応し、
沿設板端縁は沿設板端縁32eに対応し、
溶接部は溶接部40に対応し、
孔側溶接部分は孔側溶接部分40uに対応し、
端縁側溶接部分は端縁側溶接部分40dに対応し、
対向方向は幅方向Wに対応し、
挿入方向は高さ方向Hに対応し、
交差方向は長手方向Lに対応し、
開口範囲は開口範囲Dに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0058】
例えば、前述の実施形態に係るメス型端子10において、溶接実施範囲50は、その上側部分50uが貫通孔32hにおける長手方向Lの開口範囲Dよりも内側に収まるように設定され、その下側部分50dが長手方向Lに拡幅して開口範囲Dを超えて設定されている。
【0059】
しかしながら、溶接実施範囲50における上側部分50uだけでなく下側部分50dも開口範囲Dの内側に収まるように設定してもよい。このような溶接実施範囲50の内側に溶接部40を設ければ、溶接熱が折り曲げ部分等により伝わりにくくなり、かつ溶接部40及びその周囲に生じた歪が貫通孔32hによってより吸収されることは明白である。
【0060】
この点、
図14に示すように、溶接実施範囲50を開口範囲Dの内側に収まる略三角形状とし、かかる溶接実施範囲50の内側に溶接部40を設けてもよい。例えば、
図14(a)に示すように、長手方向Lに沿って形成された長さが異なる三本の直線で構成されていてもよい。あるいは
図14(b)に示すように、大きな三角形の内側に小さな三角形が描かれた構成とされていてもよい。
【0061】
また、
図15に示すように、溶接実施範囲50を開口範囲Dの内側に収まる略四角形状とし、かかる溶接実施範囲50の内側に溶接部40を設けてもよい。例えば、
図15(a)に示すように、長手方向Lに沿って形成された長さが等しい三本の直線で構成されていてもよい。あるいは
図15(b)に示すように、大きな四角形の内側に小さな四角形が描かれた構成とされていてもよい。
【0062】
さらに、溶接熱が折り曲げ部分等に伝わる状況や貫通孔32hによる歪の吸収について若干の余裕がある場合は、
図16に示すように、溶接実施範囲50の上側部分50uが開口範囲Dよりも内側に収まる末広がりの略台形状とし、かかる溶接実施範囲50の内側に溶接部40を設けてもよい。例えば、
図16(a)に示すように、長手方向Lに沿って形成された長さが異なる三本の直線で構成されていてもよい。あるいは
図16(b)に示すように、大きな台形の内側に小さな台形が描かれた構成とされていてもよい。
【0063】
なお、
図17(a)に示すように、溶接実施範囲50の形状が略三角形状、略四角形状、略台形状のいずれであるかに関わらず、大きな円形の内側に小さな円形が描かれた構成とされていてもよい。もちろん他の形状等で構成されていてもよい。
【0064】
加えて、溶接熱が折り曲げ部分等に伝わる状況や貫通孔32hによる歪の吸収についてさらに余裕がある場合は、
図18に示すように、溶接実施範囲50の上側部分50uが開口範囲Dよりも内側に収まりつつも、下側部分50dが長手方向Lに拡幅した略台形状とし、かかる溶接実施範囲50の内側に溶接部40を設けてもよい。例えば、
図18(a)に示すように、長手方向Lに沿って形成された長さが異なり、かつ最も下方側Hdで長手方向Lにつながった直線で構成されていてもよい。あるいは
図18(b)における溶接部40は、大きな台形の内側に小さな台形が描かれ、かつ最も下方側Hdで長手方向Lにつながった構成とされていてもよい。
【0065】
なお、
図19(a)に示すように、溶接実施範囲50の上側部分50uに大きな円形の内側に小さな円形が描かれ、溶接実施範囲50の下側部分50dに大きな四角形状や楕円形状が描かれた構成とされていてもよい。もちろん他の形状等で構成されていてもよい。
【0066】
加えて、前述の各実施形態に係るメス型端子10は、少なくとも溶接実施範囲50の上側部分50uが開口範囲Dよりも内側に収まっており、ひいては溶接部40における孔側溶接部分40uが開口範囲Dよりも内側に配置されている点で共通している。そこで、このような共通項を満たすことを条件に、溶接部40が直線状、曲線状及び折線状の溶接模様を形成してもよい。例えば、
図20(a)に示すように、溶接部40が曲線状の溶接模様を形成していてもよい。あるいは
図20(b)に示すように、溶接部40が折線状の溶接模様を形成していてもよい。
【0067】
加えて、溶接部40は、直線状、曲線状及び折線状のいずれに関わらず、その末端部分が拡幅等された有端状の溶接模様を形成してもよい。例えば、
図21(a)に示すように、貫通孔32hの下方側Hdで始点Psと終点Peを折り返した形状としてもよい。あるいは
図21(b)に示すように、貫通孔32hの下方側Hdで始点Psと終点Peを溶接部40の中途部につなげて円等(楕円状や多角形状等を含む)を描いた形状としてもよい。
【0068】
このような構成とすることで、溶接部40の始点Psと終点Peが溶接部40における他の部分よりも拡幅されたり、無端状の溶接模様が形成されたりするため、これら始点Psならびに終点Peの溶接強度を向上させることができる。したがって、溶接部40の始点Psに割れや剥離等の破損が生じることを防止できる。また、溶接部40の終点Peに割れや剥離等の破損が生じることを防止できる。
【0069】
加えて、溶接部40は、溶接部40の始点Psに溶接部40の終点Peが重なる全体として無端状の溶接模様を形成してもよい。例えば、
図22(a)に示すように、貫通孔32hの下方側Hdで円等(楕円状や多角形状等を含む)が描かれた無端形状の長辺部分を近接させた形状としてもよいし、
図22(b)に示すように、貫通孔32hの下方側Hdで円等(楕円状や多角形状等を含む)が描かれた無端形状の上方側Huの長辺部分を下方側Hdの長辺部分に近接させた形状としてもよい。また、
図23(a)に示すように、貫通孔32hの下方側Hdで曲げ返された略8の字を描く形状としてもよい。
【0070】
このような構成とすることで、溶接部40の溶接長さが長くなるため、溶接強度を向上させることができる。また、溶接部40における区間ごとに負荷が分散して作用するため、特定の区間に負荷が集中して破断等しても、全体として溶接部40が破断等してしまうことを防止できる。したがって、導電性を安定させることもできる。
【0071】
また、溶接部40の始点Psと終点Peを含む全体として無端状の溶接模様が形成されるため、これら始点Psならびに終点Peだけでなく、全体の溶接強度を向上させることができる。したがって、溶接部40の始点Ps等に割れや剥離等の破損が生じることを防止できる。また、溶接部40の終点Pe等に割れや剥離等の破損が生じることを防止できる。
【0072】
なお、本願の発明には、メス型端子10と、メス型端子10を収容するコネクタハウジング2とが備えられたコネクタ1(
図1参照)、ならびにメス型端子10と、メス型端子10の基台部20に接続される電線3とが備えられた端子付き電線が含まれるものとする。さらには、端子付き電線と、端子付き電線を収容するコネクタハウジング2とが備えられたコネクタ付き電線、ならびに端子付き電線及びコネクタ付き電線のうちの少なくとも一方を備えたワイヤーハーネスが含まれるものとする。
【0073】
これらにおいても、本願発明に係るメス型端子10と同様の効果を奏する。すなわち、基台部20とバネ部材30を溶接してもアームバネ31における電気接点部313の位置が変位しにくく、アームバネ31の付勢力が不安定になってしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0074】
1…コネクタ
2…コネクタハウジング
3…電線
6…オス型端子
10…メス型端子
15…端子本体
20…基台部
21…側壁
30…バネ部材
31…アームバネ
32…外側沿設板
33…連接沿設板
32h…貫通孔
32e…沿設板端縁
40…溶接部
40u…孔側溶接部分
40d…端縁側溶接部分
W…幅方向
H…高さ方向
L…長手方向
D…開口範囲