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特開2024-99140積層式のミール乾燥機およびその結露抑制方法
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  • 特開-積層式のミール乾燥機およびその結露抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099140
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】積層式のミール乾燥機およびその結露抑制方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 3/06 20060101AFI20240718BHJP
   F26B 21/08 20060101ALI20240718BHJP
   F26B 21/10 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F26B3/06
F26B21/08
F26B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002855
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 麗樹
(72)【発明者】
【氏名】井倉 邦雄
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AC01
3L113BA36
3L113CA08
3L113CA09
3L113CB01
3L113DA23
(57)【要約】
【課題】
積層式のミール乾燥機において、乾燥室の天井に結露が生じることを抑制するための結露抑制方法およびミール乾燥機を提供することを目的とする。
【解決手段】
複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機において、直下の乾燥室からの排気の温度および湿度を測定し、直上の乾燥室の温風温度を前記温度および湿度から算出される露点温度超とする、積層式のミール乾燥機の結露抑制方法およびこの方式を採用した積層式のミール乾燥機。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機において、
各乾燥室の温風温度を、直下の乾燥室からの排気から得られる露点温度超にコントロールすることを特徴とする、積層式のミール乾燥機の結露抑制方法。
【請求項2】
複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機であって、
各乾燥室に対して吹き込む温風の温度をコントロールする温風制御部と、
各乾燥室からの排気の温度および湿度を測定する温湿度計と
を備え、
前記温風制御部が、直下の乾燥室からの排気の温湿度計の情報を取得して、直上の温風温度を前記直下の乾燥室の排気の温度および湿度から算出される露点温度超となるように制御することを特徴とする、積層式のミール乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層式のミール乾燥機およびその結露抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搾油時に発生するミールは、飼料や肥料として有効活用されている。搾油直後のミールは、高温多湿であり、保存性、輸送性および衛生面の観点から乾燥工程を経るのが一般的である。
【0003】
特に、飼料用として用いられるミールは衛生面が重視されるため、適切な乾燥が求められる。
【0004】
特許文献1には、乾燥冷却器から搬出される際において、ミール中に結露が発生することを抑制する方法について開示されている。この発明は、搬送中の結露を抑制して菌の繁殖を防止することを目的としている。
【0005】
このように、ミールは、乾燥工程中においても、少しの温度差によって結露が生じることが知られている。このようなミール中の結露は、菌の発生の原因となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-172872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるように構成された積層式の乾燥機においては、下段の乾燥室の内部天井に、上段との温度差が生じるという課題があった。本発明者等は、このような積層式の乾燥機を用いてミールを乾燥させると、当該下段の乾燥室の内部天井に結露が発生するこというさらなる課題が生じることを確認した。また、生じた結露は、当該天井部分にカビなどを生じさせるだけでなく、水滴がミールに落ちることでミール中に菌を発生させる原因となっていた。
【0008】
本発明においては、このような積層式のミール乾燥機において、下段の乾燥室の内部天井への結露の発生を防止する結露抑制方法およびその方法を採用したミール乾燥機を提供することを目的とする。
【0009】
なお、特許文献1には、積層式のミール乾燥機において乾燥機内に結露が生じるという課題や当該結露を抑制する方法については、開示も示唆もない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の結露抑制方法は、複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機において、各乾燥室の温風温度を、直下の乾燥室からの排気から得られる露点温度超にコントロールすることを特徴とする。
【0011】
本発明の積層式のミール乾燥機は、複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機であって、各乾燥室に対して吹き込む温風の温度をコントロールする温風制御部と、各乾燥室からの排気の温度および湿度を測定する温湿度計とを備え、前記温風制御部が、直下の乾燥室からの排気の温湿度計の情報を取得して、直上の温風温度を前記直下の乾燥室の排気の温度および湿度から算出される露点温度超となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結露抑制方法によれば、積層式のミール乾燥機においても結露を発生させることなく適切にミールを乾燥させることができる。
また、本発明の積層式のミール乾燥機によれば、乾燥機内に結露が発生することがなく、ミールを衛生的に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の積層式のミール乾燥機の構成をしめす断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の結露抑制方法および積層式のミール乾燥機の具体的な実施形態について説明する。
【0015】
1.結露抑制方法
本発明の結露抑制方法は、複数の乾燥室が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機において、各乾燥室の温風温度を、直下の乾燥室からの排気から得られる露点温度超にコントロールすることを特徴とする。
【0016】
露点温度とは、気体を冷却していくときに凝結が生じる温度のことを意味する。露点温度を得る方法は、限定するものではないが、例えば、前記排気が当たる部分に露点温度計を設けて露点温度を得る方法、前記排気の温度および湿度を測定して露点温度を算出して得る方法などが挙げられる。なお、本明細書において「湿度」とは、相対湿度を意味する。
【0017】
前記露点温度を算出するには、例えば、以下の式(1)を用いることができる。

露点温度[℃] = {237.3log10(6.1078÷排気の水蒸気圧)}÷{log10(排気の水蒸気圧÷6.1078)-7.5} ・・・ 式(1)

なお、式(1)において、排気の水蒸気圧は、飽和水蒸気圧×相対湿度÷100にて得られる。
飽和水蒸気圧は、6.1078×107.5t÷(t+237.3)にて得られる。ここで、tは排気の温度を意味する。
【0018】
各乾燥室における温風の対流方式は、特に限定しないが、例えば、吹上方式、混合方式などが挙げられ、好ましくは、吹上方式である。吹上方式は、乾燥室の底面側に温風を導入し、室内において天井方向に向かって温風を対流させる方式であり、底面側が最も温風温度と近くなるため、直下の乾燥室の室内天井へ当該温風温度がダイレクトに作用する。このため、当該温風温度を直下の乾燥室の排気の露点温度超にコントロールすることで、直下の乾燥室の室内天井が排気の露点温度以下に冷やされることがなく、当該室内天井に水蒸気が凝結して結露が生じることを抑制することができる。本発明の効果は、乾燥室内の底面側から天井側に向かって温度が低くなる吹上方式において顕著な効果を得ることができる。
【0019】
本発明の結露抑制方法においては、乾燥室に吹き込まれる温風温度を直下の乾燥室の排気から得られる露点温度超にコントロールすることにより、直下の乾燥室の室内天井に結露が生じることを抑制することができる。
【0020】
2.積層式のミール乾燥機
本発明のミール乾燥機は、例えば図1に示す実施形態をとりうる。本発明のミール乾燥機1は、複数の乾燥室2が積層され、下段側に向かって順に温風温度が低くなるようにされた積層式のミール乾燥機1であって、各乾燥室2に対して吹き込む温風FINの温度をコントロールする温風制御部3と、各乾燥室2からの排気FOUTの温度および湿度を測定する温湿度計4とを備え、前記温風制御部3が、直下の乾燥室2からの排気FOUTの温湿度計4の情報を取得して、直上の乾燥室2に吹き込む温風FINの温度を前記直下の乾燥室2の排気FOUTの温度および湿度から算出される露点温度超となるように制御することを特徴とする。なお、「湿度」とは、相対湿度を意味する。
【0021】
本実施形態においては、図1に示すように、第1の乾燥室2A乃至第4の乾燥室2Dを有し、垂直方向に順に積層して配置されている。各乾燥室2には、室内を垂直方向で天面側空間21と底面側空間22との2か所に分ける仕切り板5が設けられている。そして、仕切り板5で隔てられた天面側空間21にミール(図1における網掛け部分)を導入するためのミール導入口2INと、天面側空間21から直下の乾燥室2の天面側空間21へミールを排出するミール排出口2OUTとが設けられている。なお、ミールは、各乾燥室2の天面側空間21に所定時間、留まって乾燥される。この際、ミールを必要に応じて攪拌してもよい。
【0022】
乾燥室2の底面側空間22には、温風FINを導入するための温風導入口23が設けられている。同様に、乾燥室2の天面側空間21には、排気FOUTを排出するための排気口24が設けられている。また、仕切り板5には、温風FINを通過させるための複数の通気口51が形成されており、温風導入口23から底面側空間22に導入された温風FINは、仕切り板5の通気口51を介して天面側空間21へ吹上方式で吹き込まれ、最終的に排気口24から乾燥室2外へ排出されるように構成されている。
【0023】
温風FINを発生させる方法は、特に限定せず、例えば、公知の温風発生装置を用いることができる。この他にも、例えば、他の製造機械から発生した熱排気などを利用してもよい。本発明においては、これらの温風発生源から発生させた温風は、当該温風の温度を制御するための温風制御部3を介した後、温風導入口23から底面側空間22に導入される。温風FINの温度は、下段側に向かって順に温度が低くなるように設定されていることが好ましい。特に、最下段の乾燥室には、常温の温風を導入することが好ましく、これにより乾燥室から排出されたミールに結露が生じることを防止することができる。
【0024】
各排気口24には、排気FOUTの温度と湿度を測定するための温湿度計4が設けられている。温湿度計4の態様は、特に限定せず、公知の温湿度計を用いることができる。温湿度計4で得られた情報は、温風制御部3へ送られる。
【0025】
本実施形態のミール乾燥機1においては、上段側から、第1の乾燥室2A、第2の乾燥室2B、第3の乾燥室2Cおよび第4の乾燥室2Dを垂直に積層した構造を有している。搾油設備から輸送されたミールは、ミール導入口2INを介してまず第1の乾燥室2Aの天面側空間21に導入される。そして、第1の乾燥室2Aにおいて所定時間乾燥されたら、ミール排出口2OUTを介して下段の第2の乾燥室2Bの天面側空間21へ導入される。同様に、各乾燥室において所定時間乾燥されたら、下段側の第3の乾燥室2Cおよび第4の乾燥室2Dの各天面側空間21へと順に導入され乾燥される。第4の乾燥室2Dの天面側空間21、すなわち本発明のミール乾燥機1から排出されたミールは、飼料などに適用可能な程度に十分な乾燥がなされている。
【0026】
なお、各乾燥室2には、必要に応じてミールを攪拌するための攪拌機構を設けてもよい。例えば、図1に示すように、各乾燥室2に攪拌ブレード6を設け、攪拌しながらミールを乾燥させることでミールの適切な乾燥を促すことができる。
【0027】
3.ミール乾燥機の結露抑制方法
本発明のミール乾燥機1における結露抑制方法は、まず直下の乾燥室2からの排気FOUTの温湿度計4の情報を温風制御部3へ送信する。温風制御部3は、得られた温湿度計4の情報に基づいて前記排気FOUTの露点を算出する。次いで、温風制御部3は、直上の乾燥室2に吹き込む温風FINの温度を前記露点温度超となるように温風の温度を制御するものである。
【0028】
なお、前記温湿度計4の情報を温風制御部3へ送信する方法は、特に限定しないが、例えば、温湿度計4と温風制御部3とを通信するためのケーブルで接続して情報を送信する、温湿度計4の情報を一旦クラウドなどの情報集積手段に蓄積した後当該情報集積手段から温風制御部3へ情報を送信するなど、既知の手段を適宜選択して用いることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、温湿度計4を用いて排気FOUTの温度および湿度を温度制御部3へ送信する構成としているが、例えば、温湿度計に替えて露点温度計を設置し、排気FOUTの露点温度を測定して、温風制御部3へ当該露点を送信する構成としてもよい。
【0030】
より具体的には、第2乾燥室2Bの排気FOUTの温湿度計4の情報を温風制御部3へ送信する。温風制御部3は、取得した第2乾燥室2Bの温湿度計4の情報から、第2乾燥室2Bの排気FOUTの露点を算出する。そして、温風制御部3は、第1乾燥室2Aの温風FINの温度を第2乾燥室2Bの排気FOUTの露点温度超に調整して第1乾燥室2Aに導入するように制御する。なお、露点の算出は、「1.結露抑制方法」にて説明した方法を用いてもよいし、温湿度計4から直接得てもよい。このように、直上の乾燥室2へ導入する温風FINの温度を直下の乾燥室2から排出された排気FOUTの露点温度超に制御して導入することにより、直下の乾燥室2の天面側空間21の天面に結露が生じることを防止することができる。その結果、乾燥室内へのカビの発生や、ミールへの菌類の発生を抑制することを可能とする。
【0031】
本発明のミール乾燥機1に対するミールの導入量は、特に限定するものではなく、当該ミール乾燥機1のスケールにもよるが、例えば、400kg/min以上600kg/min以下とすることができる。
【0032】
本発明のミール乾燥機1における実施例について説明する。なお、温風温度などは一実施例であり、これに限定するものではない。
【0033】
本実施例においては、ミール乾燥機1を用い、各乾燥室の温風FINおよび排気FOUTの温度は以下の様な条件であった。実施例においては、温風FINの温度を直下の乾燥室の排気FOUTの露点温度超となるように制御した。比較例においては、温風FINの温度制御を行わずにミールの乾燥を行った。なお、ミールは菜種ミールを用い、ミールの導入量は、500kg/minとした。
(比較例)
第1乾燥室2A FIN:60℃、FOUT:未計測
第2乾燥室2B FIN:30℃、FOUT:未計測
第3乾燥室2C FIN:20℃、FOUT:露点35℃
第4乾燥室2D FIN:20℃(外気)、FOUT:露点25℃
(実施例)
第1乾燥室2A FIN:60℃、FOUT:未計測
第2乾燥室2B FIN:40℃、FOUT:未計測
第3乾燥室2C FIN:30℃、FOUT:露点35℃
第4乾燥室2D FIN:20℃(外気)、FOUT:露点25℃
【0034】
温風温度の制御を行わなかった比較例においては、第3乾燥室2Cおよび第4乾燥室2Dの天面側空間21の天面に結露が認められた。これに対して、温風温度の制御をおこなった実施例においては、いずれの乾燥室においても結露は認められなかった。この結果から、本発明のミール乾燥機1および結露抑制方法によれば、積層式のミール乾燥機を用いた場合においても、乾燥機内に結露を発生させることがなく、清潔にミールを乾燥させることが可能であることが明らかとなった。
【0035】
なお、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0036】
本発明の結露抑制方法及び積層式のミール乾燥機は、上述の実施形態及び実施例に限定するものではなく、発明の特徴及び効果を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の結露抑制方法および積層式のミール乾燥機は、油糧原料から得られたミールを清潔に乾燥させる際に極めて有用である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・ミール乾燥機
2・・・乾燥室
21・・・天面側空間
22・・・底面側空間
23・・・温風導入口
24・・・排気口
IN・・・ミール導入口
OUT・・・ミール排出口
2A・・・第1乾燥室
2B・・・第2乾燥室
2C・・・第3乾燥室
2D・・・第4乾燥室
3・・・温風制御部
4・・・温湿度計
5・・・仕切り板
51・・・通気口
6・・・攪拌ブレード
IN・・・温風
OUT・・・排気
網掛け部分・・・ミール
図1