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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099177
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240718BHJP
   B32B 23/04 20060101ALI20240718BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240718BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B23/04
B32B27/30 102
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002916
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮平
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
4F100AA01C
4F100AA12C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AH02B
4F100AJ04A
4F100AK21B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02B
4F100GB15
4F100JD03
4F100JK06
(57)【要約】
【課題】セロハン系基材及びバリア層を備えた積層フィルムに関し、酸素バリア性に優れるともに、基材とバリア層との剥離強度にも優れた積層フィルムを提供する。
【解決手段】セロハン系基材(A)の表裏一側に、樹脂層(B)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、前記樹脂層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロハン系基材(A)の表裏一側に、樹脂層(B)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、
前記樹脂層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が90mol%以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(B)が、前記ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤との架橋構造を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記架橋剤がグリオキシル酸化合物を含む、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(B)の厚みが0.01μm以上3μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記無機層(C)が、酸化珪素、窒化珪素および酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を主材として含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記無機層(C)の厚みが5nm以上200nm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いてなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロハン系基材を備えた積層フィルムであって、酸素バリア性を有する積層フィルム、並びに、当該積層フィルムを用いてなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品、医薬品、工業部品等を包装する包装体用のフィルムとして、収容物の腐食腐敗を防ぎ、長期保管を可能とする積層フィルムが普及している。そのため、この種の積層フィルムには酸素バリア性が要求される。
【0003】
従来から、プラスチックフィルムを基材とし、無機酸化物蒸着層などの無機物を主材とする層(「無機層」と称する)を、前記基材の表面に形成してなる構成を備えたガスバリア性積層フィルムが、酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装材料として、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装などの分野で広く利用されている。
このようなガスバリア性積層フィルムは、包装用途以外にも、近年、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、新しい用途にも利用され始めている。
【0004】
セロハン(「セロファン」とも称される)は、木材、植物、微生物から生産される貯蔵量の最も多い天然高分子として注目されているセルロース(植物の細胞壁の主成分)からなる、透明な膜状の材料であるため、その有効利用が注目されている。特に再生セルロースから調製されるセロハンは、植物由来であるため、生分解性である点でも注目されている。
セロハンの特性としては、低帯電性、折れ性、易引裂き性、防曇性、耐熱性が良好であるばかりか、粘りを有しているため、種々の包装資材として好適である。その一方、セロハンは湿気に弱く、水分に晒される用途には不向きであると言われている。
【0005】
そこで、セロハンフィルムを、前述のような包装体用のフィルムとして使用するため、バリア層を積層した積層フィルムが種々開示されている。
【0006】
例えば特許文献1には、基材セロハンの片面側もしくは両面側にポリイソシアネート樹脂、重合ロジンエステル樹脂及びパラフィンを有する被覆樹脂からなる防湿層を形成したセロハンが開示されている。
【0007】
特許文献2には、セロハンフィルム表面をワックス類とスチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体との重合体などを含む組成物を被覆した水蒸気バリアフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-231870号公報
【特許文献2】特開2010-184984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来開示されていた、セロハン系基材を備えた積層フィルムは、酸素バリア性が満足できるものではなかった。また、セロハン系基材にバリア層を積層して積層フィルムとした場合、セロハン系基材とバリア層との剥離強度が低くバリア層が剥がれ易いという問題を抱えていた。
本発明の目的は、セロハン系基材及びバリア層を備えた積層フィルムに関し、酸素バリア性に優れるともに、基材とバリア層との剥離強度にも優れた積層フィルム、並びに、これを用いた包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するための手段として、セロハン系基材(A)の表裏一側に、樹脂層(B)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、前記樹脂層(B)の主成分樹脂として特定の樹脂を用いることを提案する。
すなわち、本発明は、次の構成を有する態様の積層フィルム並びに包装体を提案する。
【0011】
[1]本発明の第1の態様は、セロハン系基材(A)の表裏一側に、樹脂層(B)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、前記樹脂層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
【0012】
[2]本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が90mol%以上である、積層フィルムである。
[3]本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様において、前記樹脂層(B)が、前記ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤との架橋構造を含む、積層フィルムである。
[4]本発明の第4の態様は、前記第3の態様において、前記架橋剤がグリオキシル酸化合物を含む、積層フィルムである。
【0013】
[5]本発明の第5の態様は、前記第1~4のいずれか1つの態様において、前記樹脂層(B)の厚みが0.01μm以上3μm以下である、積層フィルムである。
[6]本発明の第6の態様は、前記第1~5のいずれか1つの態様において、前記無機層(C)が、酸化珪素、窒化珪素および酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を主材として含む、積層フィルムである。
[7]本発明の第7の態様は、前記第1~6のいずれか1つの態様において、前記無機層(C)の厚みが5nm以上200nm以下である、積層フィルムである。
【0014】
[8]本発明の第8の態様は、前記第1~7のいずれか1つの態様の積層フィルムを用いてなる包装体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提案する積層フィルムは、酸素バリア性に優れており、酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装材料として好適である。また、セロハン系基材とバリア層である無機層との剥離強度を高めることもできる。よって、本発明が提案する積層フィルムは、例えば食品や工業用品及び医薬品等の包装材料として好適に利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<本発明積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(以下、「本発明積層フィルム」とも称する)は、セロハン系基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B)及び無機層(C)が順次積層してなる構成を備えたものである。
【0018】
本発明積層フィルムは、セロハン系基材(A)の片側に樹脂層(B)及び無機層(C)が順次積層してなる構成を備えていても、セロハン系基材(A)の両側に樹脂層(B)及び無機層(C)が順次積層してなる構成を備えていてもよい。また、セロハン系基材(A)と樹脂層(B)との間、樹脂層(B)と無機層(C)との間、及び、無機層(C)の外側のいずれか一若しくはこれらのうちの二以上に「他の層」を備えていてもよい。
【0019】
<セロハン系基材(A)>
セロハン系基材(A)は、セロハンフィルムからなる単層フィルムであってもよいし、2枚以上のセロハンフィルムからなる多層のフィルム状であってもよい。
また、セロハンを含まない、例えば熱可塑性樹脂からなる一層以上の層を含む多層のフィルム状であってもよい。但し、その場合、セロハンフィルムが主たる層であることが好ましい。ここで、「主たる層」とは、セロハン系基材(A)を構成する層の中でも最も層厚の大きな層を意味する。
【0020】
セロハン系基材(A)を構成するセロハンフィルムとしては、通常一般に使用されているセロハンフィルムを使用することができる。
セロハン系基材(A)を構成するセロハンフィルムは、普通セロハンでも、防湿セロハンでもよい。
【0021】
セロハン系基材(A)のセロハンフィルムの製造方法の一例として、綿花、パルプ、古紙等から得た繊維質(セルロース)を、水酸化ナトリウムなどのアルカリ存在下、二硫化炭素との反応により、スラリー状のビスコースに調製する。スラリー状になったビスコースを、硫酸、硫酸ナトリウムを含む凝固浴中にホッパー等により放出して製膜することによりセルロースに転化させた後、水洗、脱硫、漂白などを行うことによって、セロハンフィルムとする製造方法を挙げることができる。
このようにセロハンはセルロースに由来するため、生分解性能に優れている。
【0022】
前記防湿セロハンとしては、防湿剤の主体樹脂が塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である塩化ビニル系防湿セロハンと同じく主体樹脂が塩化ビニリデンアクリルニトリル共重合体である塩化ビニリデン系防湿セロハンを挙げることができる。
【0023】
セロハン系基材(A)として、無色のセロハンフィルムを用いることができる一方、着色剤を添加した着色したものでもよい。
セロハン系基材(A)を構成するセロハンフィルムは、必要に応じて、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、柔軟剤などを含有することもできる。
【0024】
セロハン系基材(A)は、その表面が、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理が施されたものであってもよい。
【0025】
(セロハン系基材(A)の厚み)
セロハン系基材(A)の厚み(Ta)は、強度及び剛性を高める観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、中でも20μm以上であることがさらに好ましい。また、屈曲性を高め、吸湿量を抑制する観点から、50μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、中でも40μm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
(40℃の貯蔵弾性率)
セロハン系基材(A)は、JIS K7244-4(1999)に準拠した動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した40℃の貯蔵弾性率(a)が、2000MPa以上20000MPa以下であることが好ましく、中でも3000MPa以上或いは18000MPa以下であるのが好ましく、その中でも4000MPa以上或いは16000MPa以下、その中でも5000MPa以上或いは14000MPa以下であるのがさらに好ましい。
セロハン系基材(A)の40℃の貯蔵弾性率(a)が、上記範囲であれば、本発明積層フィルムが包装体などとして使用された際、使用環境の温度変化などによりセロハン系基材(A)が吸湿や放湿して膨張や収縮する影響が無機層(C)に及ぶのを抑制することができるから、密着性並びにガスバリア性を高めることができる。
【0027】
<樹脂層(B)>
本発明積層フィルムにおいて、樹脂層(B)は、セロハン系基材(A)と無機層(C)の密着性を向上させるために有用である。また、無機層(C)中に生じた応力を緩和し、バリア性を向上させるためにも有用である。
【0028】
(樹脂層(B)の主成分樹脂)
樹脂層(B)は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を主成分樹脂として含有するのが好ましい。中でも、ガスバリア性の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂(「樹脂層(B)のベース樹脂」とも称する)を主成分樹脂として含む層であるのが好ましい。
【0029】
なお、上記「主成分樹脂」とは、樹脂層(B)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味する。
樹脂層(B)を100質量%とする場合、ポリビニルアルコール系樹脂すなわち中間層(B)のベース樹脂を、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上(100質量%を包含する)含むことがさらに好ましい。
【0030】
前記ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコールのほか、変性ポリビニルアルコールを包含する意味である。
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルの重合体であるポリ酢酸ビニルのアセテート基をケン化することで得ることが出来る。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールの一部が変性されたものであってもよい。例えばブテンジオール変性、シラノール変性、アセトアセチル変性などを挙げることができる。
シラノール変性では、無機層と反応し、無機層の形成が緻密になりガスバリア性が向上する。また、ポリビニルアルコールの変性は、ポリビニルアルコール系樹脂の結晶化や架橋を促進し、吸湿膨潤抑制や樹脂層(被膜)強度の向上が期待される。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が70mol%以上であるのが好ましく、80mol%以上がより好ましく、85mol%以上がさらに好ましく、90mol%以上が特に好ましく、95mol%以上が最も好ましい。
上記範囲のケン化度のポリビニルアルコール系樹脂を使用することにより、ポリビニルアルコール系樹脂自体の酸素バリア性が向上するほか、結晶性、弾性率、ガラス転移温度も向上する傾向があり、無機層(C)の蒸着時の熱変形なども抑制されるため、積層フィルムとした際にバリア性を向上させ易くなるため好ましい。
【0032】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の質量平均分子量は、酸素バリア性の観点から、8000~100000であるのが好ましく、中でも10000以上或いは700000以下、その中でも12000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
(架橋剤)
樹脂層(B)は、前記ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤との架橋構造を含むことがより好ましい。
【0034】
前記架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋構造を形成するものである。
架橋剤としては、例えばシランカップリング剤、イソシアネート化合物、水溶性ジルコニウム化合物、水溶性チタン化合物、グリオキシル酸化合物などを挙げることができる。これらのうち一種又は二種以上の架橋剤を組み合わせて用いることができる。
中でも、ポリビニルアルコール系樹脂に含まれる水酸基との反応性や変性ポリビニルカルコール系樹脂のアセチル基の観点から、シランカップリング剤やグリオキシル酸化合物が好ましく、グリオキシル酸化合物がより好ましい。
【0035】
前記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。更に、これら化合物の加水分解部分縮合物を用いてもよい。なお、該加水分解部分縮合物は、例えば、前記化合物をメタノール等のアルコールに溶解し、その溶液に、塩酸等の酸の水溶液を添加し、加水分解させることにより調製できる。
【0036】
前記イソシアネート化合物としては、例えばブロック化イソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4´-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記水溶性ジルコニウム化合物としては、例えば塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、乳酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。但し、これらに限定されるものではない。
中でも、塗布凝集力の向上による耐水性及びラミネート用ガスバリア性コーティング組成物の安定性の点から、塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウムが好ましく、特に塩酸化ジルコニウムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記水溶性チタン化合物としては、例えばチタン化合物の一例はチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタン(トリエタノールアミネート)、ジ-n-ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)等であり、ジルコニウム化合物の一例はモノヒドロキシトリス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、テトラキス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、モニヒドロキシトリス(スレート)ジルコニウムアンモニウム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記グリオキシル酸化合物とは、化合物内にアルデヒド基を有するものである。例えば、グリオキシル酸と金属との化合物であるグリオキシル酸塩が例示される、具体的には、アルカリ金属との化合物、より具体的には、グリオキシル酸ナトリウム、グリオキシル酸カルシウムなどが例示される。
グリシル酸化合物は、アルデヒド基を有するため、ポリビニルアルコール系樹脂の水酸基や、変性ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基と反応することにより、架橋構造を生じ、架橋剤として機能するものと考えられる。
【0040】
架橋剤の種類や添加量を調整することにより、樹脂層(B)に適度な架橋を導入することができ、樹脂層(B)の硬さ及び柔らかさを調整することができ、応力緩和性及び密着性などを調整することができる。
かかる観点から、樹脂層(B)における架橋剤の含有量は、樹脂層(B)のベース樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であるのが好ましく、中でも0.2質量部以上、その中でも0.3質量部以上、その中でも0.5質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、50質量部以下であるのが好ましく、中でも40質量部以下、その中でも30質量部以下、その中でも20質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
(厚み)
樹脂層(B)の厚み(Tb)は、ガスバリア性の観点、並びに、フィルムロール状のセロハン系基材(A)に樹脂層(B)を積層した後、フィルムロール状に巻き取る際などハンドリング性の観点から、0.01μm以上3μm以下であることが好ましく、中でも0.015μm以上或いは2.5μm以下、その中でも0.02μm以上或いは2μm以下であるのがより好ましい。
【0042】
また、ガスバリア性の観点、並びに、セロハン系基材(A)に樹脂層(B)を積層した際の基材の反り(カール)を抑制する観点から、前記樹脂層(B)の厚みを(Tb)、前記セロハン系基材(A)の厚みを(Ta)としたときに、厚み比(Tb)/(Ta)は0.001以上0.2以下であるのが好ましく、中でも0.0012以上或いは0.15以下であるのがより好ましく、その中でも0.015以上或いは0.1以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
また、樹脂層(B)の厚み(Tb)は、ガスバリア性や光学特性の観点から、無機層(C)の厚み(Tc)の50~15000%であるのが好ましく、中でも100%以上或いは10000%以下、その中でも200%以上或いは5000%以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
(樹脂層(B)の形成方法)
樹脂層(B)を形成する方法としては、ポリビニルアルコール樹脂と、必要に応じて「その他の所定材料」とを、溶媒に混合してコート液とし、該コート液をセロハン系基材(A)上に塗布し、乾燥させると共に、必要に応じて硬化させることで樹脂層(B)を形成することができる。
この際、樹脂層(B)は、加熱乾燥時、並びに本発明積層フィルム作製後の保管時などで架橋が進行して硬化が進むと考えられる。
【0045】
前記「その他所定材料」としては、架橋剤を添加することが好ましく、ポリビニルアルコール樹脂と架橋剤との架橋構造を形成することで樹脂層(B)硬さを調整しやすくなる。その他例えば、粒子、架橋触媒、界面活性剤、帯電防止剤などを挙げることができる。
【0046】
前記溶媒としては、水が好ましい。
また、溶剤として有機溶剤を含有してもよく、有機溶剤と水の混合物を溶剤として使用してもよい。該組成物が溶剤を含有することで、固形成分が溶剤により希釈されることで塗布性が良好となる。溶剤は、例えば、固形分濃度が0.1~50質量%程度になるように、前記組成物に配合するとよい。
有機溶剤としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等の有機溶媒使用することができる。
【0047】
前記コート液をセロハン系基材(A)上に塗布するコーティング方法としては、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、バーコーター、スプレイ等を用いたコーティング方法等の方法がいずれも採用可能である。
コーティング後は、60~200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させるのが好ましい。
硬化方法は、紫外線などを照射する光硬化、加熱する熱硬化のいずれでもよい。例えば、イソシアネート系化合物を配合した場合には加熱して熱硬化するのが好ましい。熱硬化させる際の条件(加熱温度、時間)としては、例えば加熱温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。上限は200℃程度である。加熱時間は0.5~120秒が好ましく、1~90秒がより好ましく、2~60秒が特に好ましい。
【0048】
<無機層(C)>
本発明積層フィルムは、無機層(C)を備えることで、酸素ガス等のガスの透過を抑制し、ガスバリア性を本発明積層フィルムに付与することができる。
【0049】
無機層(C)は、無機物、特に無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物を主材として含有する層であるのが好ましい。
該「主材」とは、無機層(C)の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める材料という意味である。
【0050】
無機層(C)を構成する主材としての無機物としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種または2種以上の無機化合物を挙げることができる。
これらの中でも、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を主材として含むことが好ましい。
【0051】
無機層(C)としては、例えば物理的気相蒸着(PVD)法により形成されたPVD無機層、プラズマアシスト蒸着法により形成されたプラズマアシスト蒸着無機層、化学蒸着(CVD)法により形成されたCVD無機層、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法により形成されたコート無機層などであるのが好ましい。
【0052】
無機層(C)を100質量%とする場合、前記無機物が70質量%以上を占めるのがより好ましく、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0053】
無機層(C)にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを含有させて、ガスバリア性を向上させてもよい。
【0054】
無機層(C)は、無機物以外に有機物を含んでもよい。
無機物に有機物を混合して無機層(C)を形成することにより、無機層(C)を比較的柔軟な層とすることができる。このような柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性をさらに高めることができる場合がある。すなわち、セロハン系基材(A)の表面に粗大突起部などがある場合、これが起点となって、無機層(C)表面に、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じたり、加熱蒸着時に原料が塊となって飛来し付着して、無機層(C)表面に微小な欠陥が生じたりすることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがある。このような場合には、柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性を維持することができる。
当該有機物としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、PVAなどの有機物のほか、有機系フィラーなどを挙げることができる。
【0055】
(無機層(C)の層構成)
無機層(C)は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。
例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機層(C)とし、他の一層を、無機酸化物と有機物とを含有する層とする例を挙げることができる。
無機酸化物と有機物とを含有する層は、上述のように柔軟な層とすることができるから、この層を積層することで、前記欠陥を埋めることができ、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
なお、ここで言う「柔軟な層」とは、例えばフレキシブル用途など、屈曲性が必要な用途に対応できるように、無機層(C)の応力を緩和する層の意味を包含するものである。
【0056】
(厚み)
無機層(C)の厚み(Tc)は、所望するガスバリア性を確保しつつ、透明性を維持するなどの観点から、5nm以上200nm以下であることが好ましく、中でも10nm以上或いは150nm以下であることがより好ましく、その中でも15nm以上或いは100nm以下であることがさらに好ましい。無機層(C)が複数の場合は、それらの合計厚である。
無機層の層厚(Tc)は、積層フィルムの断面超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡などで観察することで測定できる。
【0057】
(無機層(C)の形成方法)
無機層(C)の形成(成膜)方法としては、例えば、真空加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相蒸着(PVD)法、化学気相蒸着(CVD)法などの公知の方法を用いることができる。PVD法、CVD法に、プラズマアシストを組み合わせてもよい。無機層が複数層の場合は、複数の無機層成膜法を用いてもよい。
ガスバリア性の点ではPVD法が好ましく、例えば、SiOx(1.0<x≦2.0)で表される酸化珪素からなる無機層を形成することが好ましい。SiOxのxの値が小さいとガスバリア性が高まり、xの値が大きいと無色透明性が良好となり、両者のバランスの点で、1.5≦x≦2.0が好ましい。
SiOxの組成の制御は、使用する原料の配合組成、反応ガス種、真空度、蒸着速度により調整可能であり、SiOxの組成は、X線光電子分光法(XPS)等により分析できる。
【0058】
PVD法にプラズマアシストを組み合わせる場合は、真空蒸着中に、プラズマにより蒸着物質をイオン化ながら蒸着する、或いは別に設けたイオン源から気体イオンを照射するのがよい。プラズマアシストによって、無機層内に酸素原子を効率的に取り込むことができるので、無機層のガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。また、プラズマアシストにより蒸着物質にエネルギーを付与できるため、緻密な無機層を形成できる。また、プラズマ中の励起種は反応性に富むため、酸素、窒素、アセチレン等のガス導入による蒸発物質の酸化、窒化、炭化等を容易に制御できる。
従って、SiOx、AlOx等の無機酸化物の場合、PVD法のみで得た無機層に比べ、プラズマアシストを組み合わせると、xの値が同じでも緻密な膜構造となりガスバリア性を向上させることができる。
【0059】
<本発明積層フィルムの物性)
上記構成を備えた本発明積層フィルムは、次のような物性を有することができる。
【0060】
(酸素バリア性)
本発明積層フィルムは、JIS K7126-2(2006)に準じて測定される、25℃相対湿度80%の条件下での酸素透過率(OTR)が40.0cc/m/day/atm以下であるのが好ましく、20.0cc/m/day/atm以下がより好ましく、15.0cc/m/day/atm以下がさらに好ましく、10.0cc/m/day/atm以下が特に好ましく、5.0cc/m/day/atm以下が最も好ましい。
【0061】
<表面樹脂層(D)>
本発明積層フィルムは、さらに無機層(C)の保護やガスバリア性向上を目的として、無機層(C)の表面に表面樹脂層(D)を設けてもよい。表面樹脂層(D)を設けることにより、本発明積層フィルムの酸素バリア性をさらに高めることができる。
【0062】
表面樹脂層(D)の主成分樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂などの樹脂、エチレンイミン、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アルコキシシランなどを挙げることができる。
なお、上記「主成分樹脂」とは、表面樹脂層(D)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味し、表面樹脂層(D)に含まれる樹脂成分の合計質量を100質量%したとき、その樹脂が占める質量割合が50質量%以上である場合、60質量%以上である場合、70質量%以上である場合、80質量%以上である場合、90質量%以上である場合、100質量%である場合を想定することができる。
【0063】
(厚み)
表面樹脂層(D)の厚みは、特に制限は無いが、10~1000nmが好ましく、中でも50nm以上或いは500nm以下であるのがより好ましい。
【0064】
(表面樹脂層(D)の形成方法)
表面樹脂層(D)の形成は、グラビアコート、グラビアリバースコート、キスリバースグラビアコート、スピンコート、バーコート、ダイコート等の公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、輻射熱乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
<本発明積層フィルムの利用>
本発明積層フィルムは、そのまま使用して、包装用フィルムや包装体とすることもできる。但し、他のフィルムと積層するなどして使用してもよい。
当該「他のフィルム」としては、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム等を挙げることができ、ドライラミネート等の公知の方法で積層して使用してもよい。
【0066】
<本発明包装体>
本発明積層フィルムから包装体(「本発明包装体」と称する)を形成する場合、密閉するため本発明積層フィルムにシール性を付与することが有用である。例えば、本発明積層フィルムの基材(A)側及び無機層(C)側のうちの何れかの側面に、ポリオレフィン系フィルムを積層してシール性を付与することができる。
【0067】
本発明包装体の形態は、特に制限はない。例えば、袋体、チューブ、蓋材、底材などを挙げることができ、食品、医薬医療品、電子部品、工業部品などを収容する包装に用いることができ、酸素ガス等の透過を抑制できるので、収容物の腐食腐敗を防ぎ長期間保管を可能とする。
【0068】
<<語句の説明>>
本発明において「樹脂」とは、ポリマー、すなわち、重合体(共重合体を含む)の意味である。
また、本発明において、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
さらにまた、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0069】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれに限られるものではない。
【0070】
(セロハン系基材(A))
・セロハン系基材(A):レンゴー株式会社製「白山セロファン#300(厚み20μm)」、40℃の貯蔵弾性率(JIS K7244-4(1999)、1Hz) 10200MPa
【0071】
(樹脂層(B)原料)
・コート液-1:ポリビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル社製「ゴーセノールNl-05」、ケン化度:99mol%)の10%水溶液
・コート液-2:ポリビニルアルコール系樹脂(三菱ケミカル社製「ニチゴーGポリマーBVE8049Q」、共重合成分としてブテンジオールを含む、ケン化度:99mol%)の10%水溶液
・コート液-3:ポリビニルアルコール系樹脂(三菱ケミカル社製「ゴーセネックスZ-100」、共重合成分としてアセトアセチルを含む、ケン化度:98.5mol%)と、架橋剤(三菱ケミカル社製「Safelink SPM-01」、グリオキシル酸塩)とを100:5質量比で配合した10%水溶液
・コート液-4:ポリビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル社製「ゴーセノール GL-05」、ケン化度:88mol%)の10%水溶液
・コート液-5:ポリビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル社製「ゴーセノールNK-05R」、ケン化度:73mol%)の10%水溶液
【0072】
(無機層(C)原料)
無機層(C)の原料には、SiOx(キャノンオプトロン株式会社製)を用いた。
【0073】
<実施例1>
厚み20μmのセロハン基材の片面にコロナ処理を行い、コロナ処理面の濡れ指数を40以上とした。該コロナ処理面に、樹脂層(B)のコート液-1をバーコート法で塗布し、80℃で5分間乾燥させて、乾燥後厚み0.1μmの樹脂層(B)を形成した。次に、真空加熱蒸着装置を使用して、真空度2×10-3Paの条件下で酸化珪素SiOx(x=1.5)からなる30nm厚の無機層(C)を形成して積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0074】
<実施例2>
実施例1において、コート液-1の代わりにコート液-2を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0075】
<実施例3>
実施例2において、コート液-1の代わりにコート液-3を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0076】
<実施例4>
実施例1において、コート液-1の代わりにコート液-4を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0077】
<実施例5>
実施例1において、コート液-1の代わりにコート液-5を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0078】
<比較例1>
比較例1のサンプルフィルムとして厚み20μmのセロハン基材を用いた。
【0079】
<比較例2>
実施例1において、無機層(C)を形成しない以外は実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0080】
<評価>
実施例、比較例で得られたサンプルフィルムについて、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0081】
(樹脂層(B)の厚み)
無機層(C)を形成する前の樹脂層(B)の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO染色し、樹脂層(B)断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製「H-7650」、加速電圧100kV)を用いて、樹脂層(B)の厚みを測定した。
【0082】
(無機層(C)の厚み)
無機層(C)の厚みの測定は、蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、市販の二軸延伸ポリステルフィルム(12μm)上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成した。そして、測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、前記検量線からその膜厚を測定した。
【0083】
(セロハン系基材(A)の貯蔵弾性率)
実施例及び比較例で使用したセロハン系基材の貯蔵弾性率は、JIS K7244-1(1999)に準拠した動的粘弾性測定において、アイティー計測制御社製の動的粘弾性測定装置「DVA-200」を用いて、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、測定温度-50~200℃の条件で粘弾性測定を行い、40℃における貯蔵弾性率(a)を求めた。
【0084】
(酸素バリア性:酸素透過率)
JIS K7126-2(2006)に準じ、酸素透過率測定装置(MOCON社製OX-TRAN2/21型)を用い、実施例・比較例で得られたサンプルフィルムについて、25℃相対湿度80%の条件下で酸素透過率(OTR、単位:cc/m/day/atm)を測定することにより評価した。
【0085】
(セロハン系基材(A)及び樹脂層(B)と無機層(C)との層間強度:剥離強度)
厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「P1146」)の表面に、ウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製AD900とCAT-RT85を10:1.5の割合で配合したもの)を塗布、乾燥し、厚さ約3μmの接着剤層を形成した。この接着剤層と実施例・比較例で得られたサンプルフィルムの無機層(C)側を貼り合わせて測定サンプルを作成した。
この測定サンプルを幅15mmの短冊状に切り出し、一方の端部の未延伸ポリプロピレンフィルを一部剥がし、サンプルフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムとを引張試験機(オリエンテック製STA-1150)のチャックに取り付けて、試験速度300mm/min、剥離角度180度の条件で剥離させ、剥離強度(単位:g/15mm)を測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
(考察)
上記実施例・比較例の結果、並びに、これまで本発明者が行ってきた試験結果から、セロハン系基材(A)の表裏一側に、樹脂層(B)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、樹脂層(B)の主成分樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を用いることにより、酸素バリア性を高めることができると共に、基材(A)とバリア層すなわち無機層(C)との剥離強度を高めることができることが分かった。