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特開2024-99294環境集塵用配管系及びこれを用いた環境集塵方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099294
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】環境集塵用配管系及びこれを用いた環境集塵方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20240718BHJP
   F27B 7/10 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
F27D17/00 105G
F27B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003135
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
【テーマコード(参考)】
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4K056AA01
4K056AA12
4K056BA06
4K056BB01
4K056CA06
4K056CA20
4K056DB22
4K056DC03
4K061AA08
4K061BA12
4K061HA05
4K061HA07
(57)【要約】
【課題】環境集塵用配管の曲がり部分の閉塞を防ぐことができる環境集塵用配管系、及び該環境集塵用配管系を使用した環境集塵方法を提供する。
【解決手段】ロータリーキルンなどの製錬炉内から漏出する粉塵を含んだ炉内ガスを集塵設備に移送する環境集塵用配管系であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている環境集塵用配管20の曲がり箇所Bの直近の上流側又は下流側に点検孔21が設けられており、曲がり箇所Bの直近の下流側であって且つ点検孔21よりも下流側の位置に好適には電磁駆動式のノッカー22が設けられている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬炉内から漏出する粉塵を含んだ炉内ガスを集塵設備に移送する環境集塵用配管系であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている配管の曲がり箇所の直近の上流側又は下流側に点検孔が設けられており、前記曲がり箇所の直近の下流側であって且つ前記点検孔よりも下流側の位置にノッカーが設けられていることを特徴とする環境集塵用配管系。
【請求項2】
前記ノッカーが電磁駆動式であることを特徴とする、請求項1に記載の環境集塵用配管系。
【請求項3】
前記ノッカーが、前記配管の表面に溶接された肉厚3mm以上の鉄板に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の環境集塵用配管系。
【請求項4】
製錬炉内から漏出する粉塵を平均粉塵濃度0.4g/m以上で含む温度100℃以上の炉内ガスを環境集塵用配管系を介して集塵設備に移送する環境集塵方法であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている配管の曲がり箇所の直近の上流側又は下流側に点検孔を設けると共に、前記曲がり箇所の直近の下流側であって且つ前記点検孔よりも下流側の位置をノッカーで定期的に打撃することを特徴とする環境集塵用配管を使用した環境集塵方法。
【請求項5】
前記粉塵が亜鉛及び塩素を含む化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の環境集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製錬炉から漏出する粉塵を含んだ炉内ガスを集塵設備に移送する環境集塵用配管系、及び該環境集塵用配管系を用いた環境集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電炉ダスト、鉄鋼ダスト等の亜鉛酸化物を含む原料を製錬炉内で還元焙焼処理し、これにより該原料から還元揮発する低沸点の亜鉛を再酸化して粗酸化亜鉛ダストとして回収するウェルツ法が知られている。上記の製錬炉には、円筒状の炉体を横向きにした構造のロータリーキルンが多用されている。このロータリーキルンは、その原料装入側の装入端部、及び還元焙焼後に炉体内に残留する残渣の排出側の排出端部がいずれも開口しているので、これら両端部はいずれも固定フードで囲まれている。これら両端部の固定フードに対して炉体はその軸心を中心として回転するので、該炉体の両端部の外周面と、各々の固定フードの炉体側側壁との間には間隙部が設けられている。そして、この間隙部からロータリーキルン内に外気が浸入したり、逆にロータリーキルンの炉内ガスが外部に漏出したりするのを抑えるため、該間隙部はシール構造になっている。
【0003】
上記のウェルツ法による還元焙焼処理が行なわれるロータリーキルンは、通常はその内部圧力が僅かに負圧側に維持されているが、外乱による運転条件の変動により該内部圧力が外気圧よりも一時的に高くなることがある。その際、ロータリーキルン内で生成された酸化亜鉛を含むダストが炉内ガスと共に該シール構造を通り抜けて外部に漏出するので、ロータリーキルン周辺の作業環境を悪化させることが問題になる。そこで、上記のロータリーキルンのシール部分には環境集塵用配管の端部が接続されており、炉内ガスと共に漏出した粉末状の酸化亜鉛を含むダストは、この環境集塵用配管を介してバグフィルター等の環境集塵設備で回収されるようになっている。
【0004】
上記構造により、ロータリーキルンのシール部分から炉内ガスと共に微粉末状の酸化亜鉛を含むダストが漏れ出しても、ロータリーキルン周辺の作業環境が悪化するのを防ぐことができるが、上記環境集塵用配管における曲がり箇所において酸化亜鉛を含むダストによる配管内の閉塞が多発することがあった。配管内で閉塞が生じたときは、作業者が配管の閉塞部分を外部からハンマーで叩くことにより衝撃を与えるか、或いは上記の曲がり箇所に設けた点検孔から治具を差し込んで閉塞物を取り出す作業を行なう必要があった。このように配管内で閉塞が生じると時間と手間のかかる煩雑な作業を行なう必要があるので、作業者に過度の負担がかかっていた。
【0005】
従って、上記のように配管内の閉塞の問題を作業員による煩雑な作業を要することなく解消できる技術が望まれており、そのための様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、湿潤な鉱物原料を配管等を用いて移送する前又は移送途中に、高吸水性樹脂を該鉱物原料に散布する技術が開示されている。これにより、湿潤な鉱物原料を高吸水性樹脂と混合した滑り性に優れた混合物の状態で移送することができるので、配管内での付着や詰まりを防止できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-058017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の技術は、原料ヤード等で保管されている石炭や鉄鋼石が配管内での詰まりや付着を防止する対象物になっており、ロータリーキルンなどの製錬炉の内部で熱処理することで生成した粉末が炉内ガスと共に漏出することで生じる粉塵(ダスト)の詰り防止においても同様の効果が奏されるとは考えにくい。また、特許文献1の技術では、回収した粉塵に高吸水性樹脂が含まれるので、そのまま再利用することができないうえ、該高吸水性樹脂のコストがかさむことが問題になりうる。本発明は上記した従来の製錬炉が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、環境集塵用配管の曲がり箇所での配管内の閉塞を防ぐことができる環境集塵用配管系、及び該環境集塵用配管系を使用した環境集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る環境集塵用配管系は、製錬炉内から漏出する粉塵を含んだ炉内ガスを集塵設備に移送する環境集塵用配管系であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている配管の曲がり箇所の直近の上流側又は下流側に点検孔が設けられており、前記曲がり箇所の直近の下流側であって且つ前記点検孔よりも下流側の位置にノッカーが設けられていることを特徴とする
【0009】
また、本発明に係る環境集塵方法は、製錬炉内から漏出する粉塵を平均粉塵濃度0.4g/m以上で含む温度100℃以上の炉内ガスを環境集塵用配管系を介して集塵設備に移送する環境集塵方法であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている配管の曲がり箇所の直近の上流側又は下流側に点検孔を設けると共に、前記曲がり箇所の直近の下流側であって且つ前記点検孔よりも下流側の位置をノッカーで定期的に打撃することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境集塵用配管の曲がり箇所での配管内の閉塞を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の環境集塵用配管系が好適に適用されるロータリーキルンの側面図である。
図2図1の点線の円形部分で囲んだシール部分の断面図である。
図3】本発明の環境集塵用配管系の種々の具体例の側面図である。
図4図3の具体例(a)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明に係る環境集塵用配管系が好適に採用される製錬炉として、ウェルツ法による還元焙焼処理が行なわれるロータリーキルンを例に挙げて図1を参照しながら詳細に説明する。この図1に示すロータリーキルンは、内面に図示しない耐火レンガが内張りされた金属製円筒体を横向きにした構造の炉体1と、その装入側端部及び排出側端部をそれぞれ囲む装入側フード2及び排出側フード3とから主に構成される。
【0013】
炉体1の外周部には軸方向に離間する少なくとも2個の円環状のタイヤ4が同芯軸状に設けられており、各々2個の受けローラー5によって回転可能に支持されている。なお、炉体1は、その排出端側が装入端側より下側に位置するように、軸心Oが水平方向から僅かに傾けられている。炉体1の外周部には更に円環状のガースギア6が同芯軸状に設けられており、このガースギア6にモーター駆動のピニオンギア7が噛合している。
【0014】
上記の構成により、装入端側の投入口8からコークス等の還元剤と共に装入された原料は、回転する炉体1内において撹拌されながら排出端側に向って徐々に移動する。その際、炉体1の排出端側に設けられているバーナー9から導入される燃料及び上記の投入口8から装入される還元剤の燃焼によって生じる好ましくは1000~1400℃程度、より好ましくは1100~1200℃程度の高温雰囲気により上記の原料に対して還元焙焼処理が施される。
【0015】
上記の還元焙焼処理によって原料中の亜鉛酸化物が還元揮発し、これにより生じる亜鉛蒸気が再酸化することにより微粉末状の酸化亜鉛が生成される。この微粉末状の酸化亜鉛は、炉内ガスと共に炉体1の装入側フード2のダクト10を介して排出され、図示しない電気集塵機等の回収設備において粗酸化亜鉛ダストとして回収される。一方、上記還元焙焼処理後に炉体1に残留する残渣は、クリンカーとして排出側フード3の底部から排出される
【0016】
上記のウェルツ法による還元焙焼処理が行なわれるロータリーキルンのように、粉末状の物質を取り扱うロータリーキルンでは、炉体1の両端部をそれぞれ囲む装入側フード2及び排出側フード3は、各々その炉体側側壁と炉体1の外周部との間の間隙部が炉体1の全周に亘ってシール構造になっている。更に、このシール部分から炉内ガスと共に漏出した粉塵がロータリーキルンの外部で舞い上がるのを防ぐため、上記の装入側フード2及び排出側フード3の炉体側側壁には、それぞれ炉体1の両端部を上から覆うように環集フード2a、3aが設けられている。そして、上記の炉内ガスと共に漏出した粉塵を環境集塵設備に移送するため、これら装入側フード2及び排出側フード3のシール部分並びにそれらの環集フード2a、3aに環境集塵用配管20の端部が接続している。
【0017】
図2には上記の装入側フード2及び排出側フード3のうち、排出側フード3の炉体側側壁と炉体1の外周部との間隙部のシール構造が、その周辺に位置する環集フード3a及び環境集塵用配管20の端部と共に断面図で示されている。なお、ロータリーキルンの装入側フード2のシール構造及びその周辺は、図2に示す構造を左右反転させた以外はほぼ同様であるので、それらの説明については簡単のため省略する。
【0018】
図2の構造について具体的に説明すると、排出側フード3の炉体側側壁と炉体1の外周部との間隙部のシール構造はラビリンスシールになっており、ロータリーキルンの炉内ガスの外部への漏出や、逆に外気の炉内への侵入を防止している。しかしながら、ロータリーキルンの内部圧力が変動して外気圧よりも高圧になると、黒矢印で示すように、粉塵を含んだ炉内ガスがラビリンスシールを通り抜けてロータリーキルンの外部に漏出することがある。この漏出した粉塵を含む炉内ガスがそのまま大気放出されるのを防ぐため、ラビリンスシールの出口側部分に環境集塵用配管20の第1分岐管20aが接続している。
【0019】
上記のラビリンスシールを通り抜ける粉塵を含んだ炉内ガスの大半はこの第1分岐管20aを介して環境集塵用配管20に流れ込んでいくが、一部はラビリンスシールの該出口側部分と炉体1の外周部との間の隙間を通り抜けて外部に漏出する。この外部に漏出した粉塵を含む炉内ガスを回収するため、環集フード3aに環境集塵用配管20の第2分岐管20bが接続している。更に、ラビリンスシールを炉内ガスと共に通り抜ける粉塵の量をできるだけ減らすため、排出側フード3の炉体側側壁に環境集塵用配管20の第3分岐管20cが接続している。
【0020】
上記のように、粉塵を含んだ炉内ガスが流れ込む複数の分岐管を端部に有する環境集塵用配管20は、主として直管及び曲がり配管からなる配管系で構成される。この配管系において、図3(a)、(b)に示すように、30度以上60度以下の角度θで曲がっている配管の曲がり箇所Bの直近の上流側又は下流側に点検孔21が設けられている。更に、曲がり箇所Bの直近の下流側であって且つ点検孔21よりも下流側の位置にノッカー22が設けられている。かかる構造により、環境集塵用配管20の曲がり箇所Bにおける配管内の閉塞を防ぐことができる。
【0021】
具体的に説明すると、上記のウェルツ法による還元焙焼処理を行なうロータリーキルンのように、製錬炉における外部との開口部となるシール部分から酸化亜鉛粉末などの粉塵を含んだ高温の炉内ガスが漏出しても、上記のようにシール部分の出口側やこの部分を覆う環集フードに環境集塵用配管20の端部を接続して図示しないファン等で吸引することで、環境集塵用配管20の末端部に設けた図示しないバグフィルターなどの環境集塵設備で該漏出した炉内ガスに含まれる粉塵を捕集することができる。これにより、粉塵がほとんど取り除かれたクリーンな気体を大気中に放出することが可能になる。
【0022】
ところで、上記の製錬炉における処理条件によっては、上記の粉塵を含む高温の炉内ガスに蒸気が含まれることがある。このような蒸気を含んだ炉内ガスが漏出しても、環境集塵用配管20のうち少なくとも製錬炉の漏れが発生する開口部から点検孔21までの間、好ましくは環境集塵設備に至るまでの環境集塵用配管20の全体において配管内を流れるガスの温度が100℃を超えていれば結露の可能性が低い。また、環境集塵用配管20内を流れるガスの流速が、漏出した炉内ガスに含まれる粉塵を搬送することのできる程度に十分に速ければ、この粉塵が環境集塵用配管20内で堆積したり閉塞させたりする問題が生じにくく、漏出したガスに含まれるダストを環境集塵設備まで搬送することができる。
【0023】
しかしながら、環境集塵用配管20が30度以上60度以下の角度で曲がっている箇所においては、環境集塵用配管20の配管内にガス流速が低下する領域が生じるので、漏出した炉内ガスの平均粉塵濃度が例えば0.4g/m以上と高い場合は、この領域で粉塵が堆積しやすく、場合によってはこの領域で配管内を閉塞させることがあった。特に、上記の製錬炉において、塩化揮発反応が生じる処理を行なう場合や、還元揮発反応が生じる処理を行なう場合は、揮発した反応生成物が炉内の空中に存在することになるため、該製錬炉内の空間は粉塵濃度が非常に高くなる。従ってこの非常に高い粉塵濃度を有する炉内ガスが上記の製錬炉の開口部等から漏出する場合は上記の閉塞の問題が生じやすい。なお、平均粉塵濃度とは複数回の粉塵濃度測定を行い、その結果の平均値のことであり、一般的には前記粉塵濃度は、点検孔から排ガスの流速と等しい速度で排ガスを吸引ノズルから吸引し、ダストをろ過捕集して、その質量と吸引したガス量から粉塵濃度を算出することができる。
【0024】
そこで、従来は例えば環境集塵用配管系に設けたマノメーターなどの圧力計や環境集塵設備の運転状況等から判断して堆積や閉塞が生じていると考えられる場合は、上記の堆積が生じやすいと予想される配管の曲がり箇所に設けた点検孔から作業員が人手により治具を配管内に差し込んで、堆積や閉塞を生じさせている固形物を取り除く作業を行なっていた。この作業は、配管の表面温度が100℃以上になっている箇所で行なうことになるため、作業員に大きな負担がかかっていた。
【0025】
また、上記の点検孔は通常運転時は閉鎖する必要があるため、点検孔のフランジ開口部を、例えば取っ手付きのブラインドフランジで封鎖することになる。この場合は、フランジ同士の互いに対向する面の間にシール部材を介在させる必要があり、このシール部材と少なくとも一方のフランジ面との僅かな隙間から大気中のエアーが環境集塵用配管20中に流入するおそれがある。この場合は、環境集塵用配管20内を流れる気体の温度を部分的に低下させるので、結露が生じやすくなる。
【0026】
配管系で取り扱う流体の温度が常温であれば、上記の大気中のエアーの流入を防ぐためにゴム製などのシール性の高いガスケットをシール部材に使用することができるが、100℃以上の高温の流体を取り扱う配管系の場合は、例えばガラス繊維製のガスケットを使用することになる。ガラス繊維製のガスケットは、上記のゴム製のガスケットに比べて耐熱性は向上するものの、シール性が劣ることは否めない。このため、上記したように配管内に流入したエアーにより配管の内壁面で結露が生じた部分にダストが付着しやすくなり、上記の堆積や閉塞の問題がより生じやすくなる。
【0027】
更に、上記の製錬炉が、上記のウェルツ法による還元焙焼処理により鉄鋼ダストから亜鉛を回収するロータリーキルン式の亜鉛製錬炉のように、塩化揮発反応を含む処理を行なう場合、漏出した炉内ガス中に潮解性を有する塩化亜鉛が含まれるため、上述したように大気中のエアーの流入により結露が生じると、配管内においてより一層堆積や閉塞が生じやすくなる。
【0028】
このような状況であっても、本発明の実施形態の環境集塵用配管系においては、例えば図3に示すように、環境集塵用配管20における曲がり箇所Bの直近の下流側であって且つ点検孔21よりも下流側の位置にノッカー22が設けられている。これにより、環境集塵用配管20内で粉塵が徐々に堆積して環境集塵用配管20を閉塞させる前に、環境集塵用配管20の曲がり箇所Bに外部から衝撃を与えることができるので、この堆積した粉塵由来の固形物を環境集塵用配管20の内壁から剥離することができる。
【0029】
上記のように、ノッカー22の衝撃力により剥離した固形物は、環境集塵用配管20の内壁部から中心部に向って該衝撃力により弾き出されるので、この中心部の流速の速いガスの流れに乗って集塵機などの環境集塵設備に移送される。ノッカー22の機種選定に際しては、従来、作業員が人手により配管に衝撃力を与える際に用いたハンマーを参考にすることができる。すなわち、該ハンマーのヘッド部重量に、該ハンマーの把持部からヘッド部までの距離を掛けることで求まる打撃力と同程度の打撃力を持つノッカーを採用すればよい。例えば、ヘッド部重量が4.5kgで、把持部からヘッド部までの距離が30cmのハンマーを用いていた場合、ノッカー22には衝撃力が13.2kg・m/s程度のものを採用するのが好ましい。
【0030】
上記のノッカー22で環境集塵用配管20を打撃する頻度には特に限定はないが、実運転と同程度の運転条件下において、環境集塵用配管20の曲がり箇所Bにおける配管内の粉塵の付着状況を打撃頻度を様々に変えてテストすることで、点検孔21から覗いたときに粉塵の堆積が確認されない程度の打撃頻度を定めれば良い。ウェルツ法による還元焙焼処理を行なうロータリーキルンの環境集塵用配管系の場合は、この打撃頻度は1回/10分以上10回/10分以下が好ましい。
【0031】
上記の本発明の実施形態の環境集塵用配管系においては、ノッカー22が電磁駆動式であるのが好ましい。ノッカー22にエアーノッカーを用いると、例えば環境集塵用配管20が屋外に設けられている場合は、エアーノッカーに一般的に使用される銅製のエアー供給配管が、周囲の雰囲気温度が高いことと相まって経年により腐食が進行し、作動不良を起こすことがあるからである。また、エアーノッカーには該エアー供給配管を経由してドレンが侵入することがあり、これによる作動不良を引き起こす可能性もある。これに対して、ノッカー22が電磁駆動式であれば、電気配線を接続するだけで良く、設置場所が屋外環境であっても、上記のエアー供給配管のような腐食やドレン侵入の問題が生じないので好ましい。
【0032】
上記の本発明の実施形態の環境集塵用配管系においては、環境集塵用配管20の表面に溶接等で取り付けた肉厚3mm以上の鉄板23の上にノッカー22を取り付けることが好ましい。上記の製錬炉において塩化揮発反応を含む反応を行なう場合のように、粉塵が塩素等の腐食性物質を含む場合は、この粉塵が堆積を繰り返す場所は、環境集塵用配管20の温度が上記したように100℃以上と高いことと相まって、環境集塵用配管20の腐食速度が大きくなる。このような状況であっても、上記のように鉄板23の上にノッカー22を取り付けることで、ある程度環境集塵用配管20に腐食が生じてもノッカー22を保持する強度が維持される。この鉄板23の肉厚が3mm未満では上記の効果が奏されにくくなる。一般的には鉄板の肉厚の上限は15mm程度である。
【0033】
次に、製錬炉に対して上記の本発明の実施形態の環境集塵用配管系を用いて環境集塵する方法について説明する。この環境集塵方法は、製錬炉内から漏出する粉塵を平均粉塵濃度0.4g/m以上で含む100℃以上の炉内ガスを環境集塵用配管系を介して集塵設備に移送する環境集塵方法であって、30度以上60度以下の角度で曲がっている環境集塵用配管20の曲がり箇所Bの直近の上流側又は下流側に点検孔21を設けると共に、この曲がり箇所Bの直近の下流側であって且つ上記点検孔21よりも下流側の位置をノッカー22で定期的に打撃するものである。
【0034】
これにより、製錬炉における外部との開口部であるシール部分から粉塵を含む温度の高い炉内ガスが漏出しても、上記の環境集塵用配管20を介してバグフィルターなどの環境集塵設備に移送できるので、この環境集塵設備において粉塵がほぼ取り除かれたクリーンな気体を大気中に放出することができる。その際、シール部分から漏出した粉塵を含む炉内ガスが平均粉塵濃度0.4g/m以上であっても、環境集塵用配管20内において温度100℃以上であれば結露しにくくなるので配管の内壁に粉塵が付着するのを抑えることができる。
【0035】
しかしながら、点検孔21では、前述したように、そのフランジ開口部を例えば取っ手付きのブラインドフランジで封鎖するため、これらフランジ同士が互いに対向する面の間に介在させるシール部材と少なくとも一方のフランジ面との僅かな隙間から大気中のエアーが環境集塵用配管20中に流入するおそれがある。この場合は、環境集塵用配管20内を流れる気体の温度を部分的に低下させるので、結露が生じやすくなる。この場合であっても、点検孔21よりも下流側の位置をノッカー22で定期的に打撃することで、結露により付着した粉塵由来の固形物によって閉塞が生じる前に該固形物を配管の内壁部から剥離させて中心部に弾き出すことができる。
【0036】
上記の本発明の実施形態の環境集塵方法においては、上記粉塵が亜鉛及び塩素を含む化合物を含む場合に顕著な効果が得られる。特に、粉塵が亜鉛を55質量%以上、塩素を3質量%以上含んでいる場合に顕著な効果が得られる。その理由は、塩化亜鉛は潮解性を有するため、上述したように点検孔21からの外気エアーの流入により結露が生じると、環境集塵用配管20内で堆積や閉塞がより生じやすくなるが、上記のように点検孔21よりも下流側の位置をノッカー22で定期的に打撃することで、堆積した粉塵が亜鉛及び塩素の影響を受ける前に配管の内壁部から剥離させて中心部に弾き出すことができるので、堆積が進行して最終的に配管を閉塞させるのを防ぐことができるからである。
【実施例0037】
[実施例]
図3(b)に示すような構造を有する環境集塵用配管系を用いて、ロータリーキルンの排出側フードのラビリンスシールから漏出した粉塵を含む温度120℃の炉内ガスを吸引し、バグフィルターで粉塵を捕集した。この漏出した炉内ガスは、平均粉塵濃度が0.8g/mであった。環境集塵用配管は45度の角度で曲がった曲がり箇所が1箇所あり、その直後に点検孔を設けると共に、この点検孔から下流側に200mm離れた位置に、厚さ9mmの鉄板を環境集塵用配管の外壁面に沿うように湾曲させて溶接により取り付け、その上に日本マグネティックス株式会社製の電磁式ノッカー(電磁式マグハンマ)を取り付けた。
【0038】
そして、亜鉛酸化物を含む鉄鋼ダスト原料をロータリーキルンに装入して還元焙焼処理することで粗酸化亜鉛ダストを回収するウェルツ法による操業を217日間継続した。その際、電磁式ノッカーを5回/10分の頻度で作動させた。この操業中、点検孔を開けて環境集塵用配管の曲がり箇所を点検したところ、粉塵の堆積や閉塞は認められなかった。
【0039】
[比較例]
電磁式ノッカーを取り付けないことを除いて上記の実施例と同様にして217日間操業した。この217日間の操業の間に、平均0.7回/日の頻度で環境集塵用配管内で閉塞が生じ、その度に作業員によるハンマーの打撃により閉塞解消の作業が必要となった。この閉塞解消の作業に要した時間は、平均で13分/回であった。
【符号の説明】
【0040】
1 炉体
2 装入側フード
2a 環集フード
3 排出側フード
3a 環集フード
4 タイヤ
5 受けローラー
6 ガースギア
7 ピニオンギア
8 投入口
9 バーナー
10 ダクト
20 環境集塵用配管
20a 第1分岐管
20b 第2分岐管
20c 第3分岐管
21 点検孔
22 ノッカー
23 鉄板
図1
図2
図3
図4