IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特開2024-99305接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法
<>
  • 特開-接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図1
  • 特開-接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図2
  • 特開-接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図3
  • 特開-接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099305
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/02 20060101AFI20240718BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240718BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240718BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240718BHJP
【FI】
C09J201/02
C09J11/06
C09J9/02
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003150
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕太
(72)【発明者】
【氏名】富坂 克彦
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AB03
4J004BA02
4J004FA08
4J040DB022
4J040EC061
4J040GA11
4J040HC21
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA03
4J040KA12
4J040KA32
4J040MA02
4J040MB03
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA19
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗を実現することができ、且つ、貼り付け性に優れる接着剤組成物を提供すること。当該接着剤組成物を用いた回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】カチオン重合性化合物と、硬化剤と、導電粒子と、を含有し、カチオン重合性化合物が、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含む、接着剤組成物。当該接着剤組成物により形成された接着剤層を備える、回路接続用接着剤フィルム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物と、硬化剤と、導電粒子と、を含有し、
前記カチオン重合性化合物が、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物が有するエポキシ基の数が3以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が、下記式(2A)で表される化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】
【請求項4】
前記硬化剤が、ピリジニウム塩及びスルホニウム塩のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物により形成された接着剤層を備える、回路接続用接着剤フィルム。
【請求項6】
第一の接着剤層と、前記第一の接着剤層上に積層された第二の接着剤層と、を備え、
前記第一の接着剤層及び前記第二の接着剤層の少なくとも一方が、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物により形成された層である、回路接続用接着剤フィルム。
【請求項7】
第一の電極を有する第一の回路部材と、
第二の電極を有する第二の回路部材と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する接続部と、
を備え、
前記接続部が、請求項5に記載の回路接続用接着剤フィルムの硬化物を含む、接続構造体。
【請求項8】
第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、請求項5に記載の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を熱圧着して、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物、回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイと液晶駆動用集積回路との接続、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続のための接着材料として、接着剤中に導電粒子が分散された接着剤フィルムが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-084400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、接着剤フィルムを適用した実装体の接続信頼性への要求レベルが高まってきている。接続信頼性の向上には、実装体が、HAST(Highly Accelerated Stress Test)のような過酷な試験後においても接着剤フィルムの剥離が生じにくい耐HAST性を有していることが求められている。
【0005】
また、本発明者らの検討によると、カチオン重合性化合物が複数のカチオン重合性官能基を有することにより、接着剤フィルムの耐HAST性が向上することがわかった。しかし、接着剤フィルムが耐HAST性を有していても、接着剤フィルムの張り付け性が劣る場合があった。
【0006】
そこで、本開示は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗を実現することができ、且つ、貼り付け性に優れる接着剤組成物を提供することを目的する。また、本開示は、当該接着剤組成物を用いた回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、以下の[1]~[8]を含む。
[1]カチオン重合性化合物と、硬化剤と、導電粒子と、を含有し、
前記カチオン重合性化合物が、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含む、接着剤組成物。
[2]前記エポキシ化合物が有するエポキシ基の数が3以上である、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記エポキシ化合物が、下記式(2A)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
【化1】

[4]前記硬化剤が、ピリジニウム塩及びスルホニウム塩のうちの少なくとも一方を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[5][1]~[4]のいずれか一つに記載の接着剤組成物により形成された接着剤層を備える、回路接続用接着剤フィルム。
[6]第一の接着剤層と、前記第一の接着剤層上に積層された第二の接着剤層と、を備え、
前記第一の接着剤層及び前記第二の接着剤層の少なくとも一方が、[1]~[4]のいずれか一つに記載の接着剤組成物により形成された層である、回路接続用接着剤フィルム。
[7]第一の電極を有する第一の回路部材と、
第二の電極を有する第二の回路部材と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する接続部と、
を備え、
前記接続部が、[5]又は[6]に記載の回路接続用接着剤フィルムの硬化物を含む、接続構造体。
[8]第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、[5]又は[6]に記載の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を熱圧着して、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗を実現することができ、且つ、貼り付け性に優れる接着剤組成物を提供することができる。また、本開示によれば、当該接着剤組成物を用いた回路接続用接着剤フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回路接続用接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図2】回路接続用接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図3】接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図4図3の接続構造体の製造方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「A~B」という表記においては、両端の数値A及びBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。また、本明細書中、「エポキシ基」は、グリシジル基、グリシジルオキシ基等の構造中にエポキシ基を含む置換基を含むものとする。
【0012】
<接着剤組成物>
本開示の一実施形態は、カチオン重合性化合物と、硬化剤と、導電粒子と、を含有し、カチオン重合性化合物が、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含む、接着剤組成物である。
【0013】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、例えば、加熱することによって硬化剤と反応して、架橋する化合物であってもよい。カチオン重合性化合物は、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物(以下、このエポキシ化合物を化合物Aともいう)を含む。化合物Aは、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、以下の一般式(1A)で表される化合物であってもよい。
【0014】
【化2】

[式(1A)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、水素原子、有機基、グリシジル基を有する有機基、又は、グリシジルオキシ基を有する有機基を表し、R11、R12、R13、及びR14のうちの少なくとも1つは、グリシジル基を有する有機基を表し、R11、R12、R13、及びR14のうちの少なくとも1つは、グリシジルオキシ基を有する有機基を表し、R15、及びR16は、各々独立に、水素原子、又は、有機基を表す。]
【0015】
11、R12、R13、及びR14が表す有機基としては、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基、及びアルケニル基が挙げられる。これらの有機基は、置換基を有していてもよい。有機基の炭素数は、例えば、2以上、又は3以上であってもよく、8以下、6以下、又は4以下であってもよい。
【0016】
11、R12、R13、及びR14は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、R11、及びR12は、それぞれ異なっていてもよく、R11、及びR12のうちの一方が、グリシジル基を有する有機基であってもよく、他方がグリシジルオキシ基を有する有機基であってもよい。低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、R13、及びR14は、それぞれ異なっていてもよく、R13、及びR14のうちの一方が、グリシジル基を有する有機基であってもよく、他方がグリシジルオキシ基を有する有機基であってもよい。
【0017】
15、及び/又はR16が有機基である場合、有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、及びアルケニル基が挙げられる。これらの有機基は、置換基を有していてもよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、又はプロピル基であってもよい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。R15、及びR16は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、水素原子又はアルキル基であってもよく、メチル基であってもよい。
【0018】
化合物Aが有するエポキシ基の数は、2以上、3以上、又は4以上であってもよく、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってもよい。
【0019】
化合物Aとしては、具体的には、下記式(2A)で表される化合物であってもよい。
【化3】
【0020】
カチオン重合性化合物は、化合物Aのみを含むものであってもよく、化合物Aと共に化合物A以外のカチオン重合性化合物を含むものであってもよい。化合物A以外のカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物(但し、化合物Aを除く)、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
【0021】
エポキシ化合物(但し、化合物Aを除く)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ビ-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、キシレン-ノボラック型グリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、及びキシレン-ノボラック型グリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。エポキシ化合物は、グリシジルエーテル系化合物を含んでいてもよい。低温硬化性の更なる向上の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ樹脂を含んでいてもよい。また、低温硬化性と良好な保存安定性とを容易に両立できる観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ樹脂を含まなくてもよい。
【0022】
カチオン重合性化合物は、トリスフェノールメタン構造を有するエポキシ化合物(以下、このエポキシ化合物を化合物Bともいう)を更に含んでもよい。化合物Bは、例えば、以下の一般式(1B)で表される。
【0023】
【化4】

[式(1B)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、水素原子、又は、有機基を表し、R21、R22、及びR23のうちの少なくとも1つは、エポキシ基を有する有機基を表し、R24は、水素原子、又は、アルキル基を表し、R25は、水素原子、又は、有機基を表す。]
【0024】
21、R22、及びR23が表す有機基としては、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基、及びアルケニル基が挙げられる。これらの有機基は、置換基を有していてもよい。有機基の炭素数は、例えば、2以上、又は3以上であってもよく、8以下、6以下、又は4以下であってもよい。R21、R22、及びR23のうちの少なくとも1つは、グリシジル基を有する有機基であってもよく、グリシジルオキシ基を有する有機基であってもよい。R21、R22、及びR23は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。R21、R22、及びR23は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点から、いずれもグリシジル基を有する有機基であってもよく、グリシジルオキシ基を有する有機基であってもよい。
【0025】
24がアルキル基である場合、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、又はプロピル基であってもよい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。R24は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点から、水素原子であってもよい。
【0026】
25が表す有機基としては、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基、アルケニル基であってもよい。有機基は、置換基を有していてもよい。R25は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点から、アルキル基であってもよく、置換基を有するアルキル基であってもよく、フェニル基を有するアルキルであってもよい。フェニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エポキシ基、グリシジル基、又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。R25は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点から、グリシジルオキシ基を有するフェニル基を有するアルキル基であってもよい。
【0027】
化合物Bが有するエポキシ基の数は、1以上、2以上、又は3以上であってもよく、15以下、12以下、又は10以下であってもよい。
【0028】
化合物Bのエポキシ当量は、例えば、100~300g/eq、又は150~250g/eqであってもよい。エポキシ当量は、JIS K7236に準拠して測定される値を意味する。
【0029】
化合物Bは、具体的には、下記式(2B)で表される化合物であってもよい。
【化5】

[式(2B)中、nは、1~3の整数を表す。]
【0030】
オキセタン化合物としては、分子内に1個以上のオキセタン環構造を有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。低温硬化性の更なる向上の観点から、カチオン重合性化合物は、オキセタン化合物を含んでいてもよい。また、低温硬化性と良好な保存安定性とを容易に両立できる観点から、カチオン重合性化合物は、オキセタン化合物を含まなくてもよい。カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物とオキセタン化合物とを含んでいてもよい。また、低温硬化性と良好な保存安定性とを容易に両立できる観点から、カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物とオキセタン化合物のうちの一方のみを含んでいてもよい。エポキシ化合物とオキセタン化合物のうちの一方のみを含む場合とは、カチオン重合性化合物として、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる一種を単独で用いる場合、並びに、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる一種とビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物とを併用する場合が挙げられる。
【0031】
オキセタン化合物としては、例えば、キシリレンビスオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、及び3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0032】
カチオン重合性化合物の含有量は、接着剤組成物の硬化性を担保する観点から、接着剤組成物の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってもよい。カチオン重合性化合物の含有量は、接着剤組成物の形成性を担保する観点から、接着剤組成物の全質量を基準として、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってもよい。
【0033】
カチオン重合性化合物におけるエポキシ化合物(化合物Aを含む)の含有量は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、カチオン重合性化合物の全質量を基準として、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。カチオン重合性化合物におけるエポキシ化合物(化合物Aを含む)の含有量は、実質的に100質量%(カチオン重合性化合物がエポキシ化合物からなる態様)であってもよい。
【0034】
カチオン重合性化合物における化合物Aの含有量は、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗をより実現しやすい観点、及び貼り付け性がより優れる観点から、カチオン重合性化合物の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってもよく、実質的に100質量%(カチオン重合性化合物が化合物Aからなる態様)であってもよい。カチオン重合性化合物における化合物Aの含有量は、カチオン重合性化合物の全質量を基準として、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってもよい。
【0035】
(硬化剤)
硬化剤は、カチオン重合性化合物を硬化させることができるものであればよく、例えば、オニウム塩を含むものであってもよい。オニウム塩としては、例えば、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、及びジアゾニウム塩が挙げられる。硬化剤は、ピリジニウム塩及びスルホニウム塩のうちの少なくとも一方を含むものであってもよい。
【0036】
オニウム塩は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。
【0037】
【化6】

[式(1)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R、R、R、及びRは、互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは、アニオンを表す。]
【0038】
上記のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、アラルキル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、及びシンナミル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0039】
上記のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基等が挙げられる。これらのアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0040】
上記のアルケニル基としては、プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンタニル基、2-ヘキサニル基等が挙げられる。上記の複素環基としては、ピリジニル基等が挙げられる。上記のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記のアリールオキシ基としては、4-フェニルメトキシ基、4-フェニルエトキシ基、及び4-フェニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。上記の複素環オキシ基としては、4-シクロヘキサンオキシド基等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していてもよい。
【0041】
上記のアルキル基、アリール基等の各基における置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基などが挙げられる。これらの置換基の置換位置は、特に限定されるものではなく、いずれの位置であってもよい。
【0042】
式(1)のXは、窒素オニウムカチオンの対アニオンを表す。Xとしては、例えば、SbF 、PF 、B(C 、Ga(C 、Ga(C 、Ga(C)F 、及びC(CFSO が挙げられる。アニオンの求核性が低い場合に更に良好な硬化性が得られる観点から、SbF 、(C、(CFSOであってもよい。
【0043】
、R、R、及びRのいずれか一つ(R、R、R、及びRのうちの一つのみ)は、開始剤の分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、置換若しくは未置換のベンジル基、置換若しくは未置換のナフチルメチル基、又は、置換若しくは未置換のシンナミル基であってもよい。
【0044】
、R、R、及びRは、互いに結合して環構造を形成していてもよく、例えば、R、R、R、及びRのうち隣接する基同士が互いに結合して環構造を形成していてもよい。環構造を有する窒素オニウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(2)で表されるカチオンが挙げられる。環構造Qとしては、複素環、芳香環、複素芳香環(ピリジニウム環等)、脂環等が挙げられる。環構造Qは、例えば、四員環、五員環、六員環、七員環等の多員環であってもよい。環構造Qは、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基等の各基について上述した置換基が挙げられる。mは1又は2を表す。Rは、R、R、R、及びRと同等の基であってもよい。
【0045】
【化7】
【0046】
硬化剤がオニウム塩を含む場合、オニウム塩は、保存安定性に更に優れる観点から、80~250℃の温度で活性を示す化合物であってもよく、具体的には、アニリニウム塩(アニリニウム塩化合物)及びピリジニウム塩(ピリジニウム塩化合物)からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0047】
アニリニウム塩としては、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-アルキルアニリニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、N,N,N-トリアルキルアニリニウム塩であってもよい。アニリニウム塩の具体例としては、N-ベンジル-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-(4-ニトロベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-(α-フェニルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-(α-メチルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-シンナミル-N,N-ジメチルアニリニウム塩、置換ベンジルアニリニウムカチオンを有するオニウム塩(例えば、K-PURE CXC-1612(KING Industries社製、対アニオン:SbF)、K-PURE CXC-1738(KING Industries社製、対アニオン:PF)、K-PURE CXC-1740(KING Industries社製、対アニオン:SbF)、K-PURE CXC-1741(KING Industries社製、対アニオン:SbF)、K-PURE CXC-1821(KING Industries社製、対アニオン:B(C))等が挙げられる。これらの化合物において窒素原子に結合する芳香環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。芳香環が置換基を有するアニリニウム塩としては、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチル(4-ブロモフェニル)アニリニウム塩等が挙げられる。
【0048】
アニリニウム塩は、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-ベンジル-N,N-ジアルキルアニリニウム塩、及びN-ナフチルメチル-N,N-ジアルキルアニリニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0049】
ピリジニウム塩としては、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-ベンジルピリジニウム塩、N-ナフチルメチルピリジニウム塩、N-シンナミルピリジニウム塩であってもよい。
【0050】
ピリジニウム塩は、1位にベンジル基を有し、且つ、2位に電子求引基を有し、ベンジル基が電子供与基を有するピリジニウム塩(以下、このようなピリジニウム塩を「ピリジニウム塩A」ともいう)であってもよい。硬化剤が、ピリジニウム塩Aを含有し、カチオン重合性化合物としてビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含むことにより、接着剤組成物はより優れた接続抵抗を実現することができる。
【0051】
ピリジニウム塩Aは、例えば、下記一般式(3)で表される化合物であってもよい。
【0052】
【化8】

[式(3)中、Rは、電子求引基を表し、Rは、電子供与基を表し、Xは、アニオンを表す。]
【0053】
ピリジニウム塩Aが2位に有する電子求引基としては、シアノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。電子求引基は、硬化剤の活性を高めて、接着剤組成物をより短時間での硬化させることができる観点から、シアノ基、又はハロゲノ基であってもよく、シアノ基、又はクロロ基であってもよい。ピリジニウム塩Aは、2位に配置された電位求引基以外の電子求引基を含んでよい。ピリジニウム塩Aが有する電子求引基の数は、3以下、2以下、又は1であってもよい。
【0054】
ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基が有する電子供与基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、及びアルキルアミノ基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、及びイソプロピル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、及びエトキシ基等が挙げられる。電子求引基は、硬化剤の活性を高めて、接着剤組成物をより短時間で硬化させることができる観点から、アルキル基、又はアルコキシ基であってもよく、メチル基又はメトキシ基であってもよい。ベンゼン環は、複数の電子供与基を含んでよく、ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基が有する電子供与基の数は、1以上、2以上、又は3以上であってもよく、3であってもよい。ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基は、4位(ベンジル基のピリジン環との結合位置を1位としたときの4位。ベンジル基のピリジン環との結合位置に対してパラ位)に少なくとも1つの電子供与基を有していてよい。
【0055】
ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基が有する電子供与基の数が3であるとき、3つの電子供与基はいずれもアルキル基であってもよく、いずれもメチル基であってもよい。ピリジニウム塩Aは、ベンジル基のピリジン環との結合位置を1位としたときに、ベンジル基の2位、4位、及び6位それぞれに電子供与基としてアルキル基を有していてもよい。硬化剤が、ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基が有する電子供与基の数が3であり、電子供与基がいずれもアルキル基(又はメチル基)であるピリジニウム塩を含むことにより、このような硬化剤を用いた接着剤フィルムは、優れた物性(例えば、弾性率)を有する。そのため、このような硬化剤を用いた接着剤フィルムは、例えば、回路部材に対する優れた密着性と、接着剤フィルムからの基材の優れた剥離性とを両立できる。また、このような硬化剤を用いた接着剤フィルムは、例えば、保存安定性に優れ、一定期間(例えば、40℃で15時間)接着剤フィルムを保存した場合であっても、回路部材に対する優れた密着性と、接着剤フィルムからの基材の優れた剥離性とを維持しやすい。その理由としては、ピリジニウム塩Aの1位に配置されたベンジル基が有する電子供与基の数が3であることにより、低温硬化性を維持しつつ、一定期間(例えば、40℃で15時間)保管中の劣化を防ぐ(保存安定性に優れる)バランスのよい構造をとるためであると考えられる。
【0056】
ピリジニウム塩Aのピリジニウムカチオンとしては、2-シアノ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウムカチオン、2-クロロ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウムカチオン、2-ブロモ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウムカチオン、2-シアノ-1-(4-メチルベンジル)ピリジニウムカチオン、2-クロロ-1-(4-メチルベンジル)ピリジニウムカチオン、2-ブロモ-1-(4-メチルベンジル)ピリジニウムカチオン、2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウムカチオン、2-クロロ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウムカチオン、及び2-ブロモ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウムカチオン等が挙げられる。ピリジニウム塩Aのピリジニウムカチオンは、接着剤組成物をより短時間で硬化させることができる観点から、2-シアノ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウムカチオン、2-クロロ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウムカチオン、2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウムカチオン、及び2-クロロ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0057】
ピリジニウム塩Aのアニオンは、SbF 、PF 、PF(CF6-X (但し、Xは1~5の整数)、BF 、B(C 、RSO (但し、Rは炭素数1~3のアルキル基、置換又は無置換のアリール基)、C(SOCF 、N(SOCF 、O(SOCF、B(C(CF (但し、CF基はフェニル基の3,5位に置換)等が挙げられる。ピリジニウム塩Aのアニオンは、高温高湿試験(例えば、85℃、85%RH、250時間)後であっても、接続抵抗が優れる観点から、B(C であってもよい。
【0058】
ピリジニウム塩Aは、上記のピリジニウムカチオンと、上記のアニオンと、を組み合わせた化合物であってもよい。すなわち、ピリジニウム塩Aは、上記のいずれかのピリジニウムカチオンと、上記のいずれかのアニオンと、を少なくとも含んでもよい。ピリジニウム塩Aは、接着剤組成物をより短時間で硬化させることができる観点から、2-シアノ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2-クロロ-1-(4-メトキシベンジル)ピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び2-クロロ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0059】
硬化剤におけるピリジニウム塩Aの含有量は、硬化剤の全質量を基準として、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよく、100質量%(実質的に硬化剤がピリジニウム塩Aからなる態様)であってもよい。
【0060】
硬化剤は、ピリジニウム塩A以外のピリジニウム塩を含有してもよい。硬化剤におけるピリジニウム塩A以外のピリジニウム塩の含有量は、硬化剤の全質量を基準として、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよく、0質量%(実質的に硬化剤がピリジニウム塩Aからなる態様)であってもよい。
【0061】
ピリジニウム塩Aを含有する硬化剤は、例えば、2位に電子求引基を有するピリジン化合物、電子供与基を有する塩化ベンジル化合物、又は電子供与基を有する臭化ベンジル化合物のうち少なくとも一方、及びアルカリ金属のヨウ化物塩(例えば、ヨウ化ナトリウム)を溶媒(例えば、アセトニトリル)中で反応させて、ピリジン環及びベンゼン環を有するヨウ化ピリジニウムを得る工程と、得られたヨウ化ピリジニウム及びアニオン塩を溶媒(例えば、ジクロロメタン)中で反応させて、ピリジニウム塩Aを得る工程と、を備える製造方法により得ることができる。
【0062】
2位に電子求引基を有するピリジン化合物は、上記の電子求引基を2位に有するピリジン化合物であってもよく、例えば、2-シアノピリジン、2-クロロピリジンであってもよい。
【0063】
電子供与基を有する塩化ベンジル化合物は、上記の電子供与基を有する塩化ベンジル化合物であってもよく、例えば、4-メトキシベンジルクロリド、2,4,6-トリメチルベンジルクロリドであってもよい。電子供与基を有する臭化ベンジル化合物は、上記の電子供与基を有する臭化ベンジル化合物であってもよく、例えば、4-メトキシベンジルブロミド、2,4,6-トリメチルベンジルブロミドであってもよい。
【0064】
アニオン塩は、ピリジニウム塩Aが有するアニオンを導入することができる化合物であればよく、例えば、上記のピリジニウム塩Aのアニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩であってもよい。
【0065】
ヨウ化ピリジニウムを得る工程において、反応は、例えば、室温下(20~30℃)で行われてよい。反応時間は、例えば、10~50時間、又は20~30時間であってもよい。反応終了後、得られたヨウ化ピリジニウムに対してアセトン、蒸留水等を用いて洗浄、真空乾燥させることで、用いた溶媒を除去してもよい。
【0066】
ヨウ化ピリジニウムを得る工程において、ヨウ化ピリジニウムの収率は、40%以上、55%以上、70%以上、又は80%以上であってもよい。ヨウ化ピリジニウムの収率は、ヨウ化ピリジニウムの合成に用いた原料から得ることができるヨウ化ピリジニウムの最大量に対する実際に得られた量の比率とする。
【0067】
ピリジニウム塩Aを得る工程において、反応は、例えば、室温下(20~30℃)で行われてよい。反応時間は、例えば、1~15時間又は1~5時間であってもよい。反応終了後、得られたピリジニウム塩Aに対してアセトン、蒸留水等を用いて洗浄、真空乾燥させることで、用いた溶媒を除去してもよい。
【0068】
ピリジニウム塩Aを得る工程において、ピリジニウム塩Aの収率は、70%以上、80%以上、又は85%以上であってもよい。ピリジニウム塩Aの収率は、ピリジニウム塩Aの合成に用いたヨウ化ピリジニウムから得ることができるピリジニウム塩Aの最大量に対する実際に得られた量の比率とする。
【0069】
ピリジニウム塩Aが得られたことは、得られた化合物を核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)で測定することにより確認することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により確認することができる。
【0070】
スルホニウム塩は、例えば、下記式(4)で表される化合物であってもよい。
【0071】
【化9】

[式(4)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基を含む有機基を示し、R10は、炭素数1~6のアルキル基を示し、Xは、アニオンを表す。]
【0072】
スルホニウム塩は、保存安定性と低温活性の両立の観点から、芳香族スルホニウム塩であってもよい。すなわち、式(4)におけるR、及びRのうちの少なくとも一方が置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基を含む有機基であってもよい。
【0073】
式(4)中のXは、例えば、SbF 、(C、(CFSOであってもよい。
【0074】
スルホニウム塩としては、例えば、1-ナフチルメチルメチル-p-ヒドロキシフェニルスルホニウム塩、4-ヒドロキシ-2-メチルフェニルメチルナフタレン-1-イルメチルスルホニウム塩、3-メチル-2-ブテニルジメチルスルホニウム塩、3-メチル-2-ブテニルテトラメチレンスルホニウム塩、シンナミルジメチルスルホニウム塩、及びシンナミルテトラメチレンスルホニウム塩が挙げられる。
【0075】
接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、接着剤組成物の全質量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、接着剤組成物の全質量を基準として、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってもよい。これらの観点から、接着剤組成物における硬化剤の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、1~20質量%であってもよい。
【0076】
接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、導電粒子を除く接着剤組成物の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、導電粒子を除く接着剤組成物の全質量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。これらの観点から、接着剤組成物における硬化剤の含有量は、導電粒子を除く接着剤組成物の全質量を基準として、1~30質量%であってもよい。
【0077】
接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、導電粒子及び充填材を除く接着剤組成物の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、導電粒子及び充填材を除く接着剤組成物の全質量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。これらの観点から、接着剤組成物における硬化剤の含有量は、導電粒子及び充填材を除く接着剤組成物の全質量を基準として、1~30質量%であってもよい。
【0078】
接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、1質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、又は12質量部以上であってもよい。接着剤組成物における硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、18質量部以下、又は16質量部以下であってもよい。これらの観点から、接着剤組成物における硬化剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、1~40質量部であってもよい。
【0079】
(導電粒子)
接着剤組成物は、導電粒子を含有する。導電粒子としては、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、はんだ等の金属で構成された金属粒子;導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子;非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記の金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層と、を備える被覆導電粒子などが挙げられる。導電粒子は、加熱及び/又は加圧することにより変形させることが容易であり、電極同士を電気的に接続する際に、電極と導電粒子との接触面積を増加させて、電極間の導電性をより向上させることができる観点から、被覆導電粒子であってもよい。
【0080】
導電粒子の平均粒子径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1μm以上、2μm以上、又は2.5μm以上であってもよい。導電粒子の平均粒子径は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、5.5μm以下、又は5μm以下であってもよい。これらの観点から、導電粒子の平均粒子径は、1~20μm、1~15μm、1~10μm、1~8μm、又は1~6μmであってもよい。
【0081】
導電粒子の平均粒子径は、接着剤組成物が含有する導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察して、各導電粒子の粒子径を測定し、導電粒子300個の粒子径の平均値とする。なお、導電粒子が球形ではない場合、導電粒子の粒子径は、SEMを用いた観察画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0082】
接着剤組成物における導電粒子の粒子密度は、安定した接続抵抗が得られる観点から、100個/mm以上、1000個/mm以上、又は3000個/mm以上であってもよい。接着剤組成物における導電粒子の粒子密度は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、100000個/mm以下、50000個/mm以下、又は30000個/mm以下であってもよい。これらの観点から、接着剤組成物における導電粒子の粒子密度は、100~100000個/mm、1000~50000個/mm、又は3000~30000個/mmであってもよい。
【0083】
導電粒子の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよい。導電粒子の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0084】
導電粒子の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、又は70質量部以上であってもよい。導電粒子の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、200質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、又は100質量部以下であってもよい。
【0085】
(熱可塑性樹脂)
接着剤組成物は、熱可塑性樹脂を更に含有してよい。接着剤組成物は、熱可塑性樹脂を含有することで、フィルム状に形成しやすくなる。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルゴム等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が400g/eq以上であれば、熱可塑性樹脂として扱うものとする。
【0086】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000以上、10000以上、20000以上、又は40000以上であってもよく、200000以下、100000以下、80000以下、又は60000以下であってもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値とする。
【0087】
熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0088】
熱可塑性樹脂の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、又は60質量部以上であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下、又は20質量部以下であってもよい。
【0089】
(カップリング剤)
接着剤組成物は、カップリング剤を更に含有してよい。接着剤組成物は、カップリング剤を含有することで、接着性をより向上させることができる。カップリング剤は、シランカップリング剤であってもよく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び、これらの縮合物であってもよい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
カップリング剤の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってもよい。カップリング剤の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。
【0091】
カップリング剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、1質量部以上、3質量部以上、又は5質量部以上であってもよい。カップリング剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、又は8質量部以下であってもよい。
【0092】
(充填材)
接着剤組成物は、充填材を更に含有してよい。接着剤組成物は、充填材を含有することで、接続信頼性をより向上させることができる。充填材としては、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。充填材は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。
【0093】
無機フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカ-アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子等の金属酸化物粒子;金属窒化物粒子などが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
有機フィラーとしては、例えば、シリコーン粒子、メタアクリレート・ブタジエン・スチレン粒子、アクリル・シリコーン粒子、ポリアミド粒子、及びポリイミド粒子等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
充填材は、フィルム成形性及び接続構造体の信頼性を向上させる観点から、無機フィラーであってもよく、シリカ粒子であってもよい。シリカ粒子は、結晶性シリカ粒子又は非結晶性シリカ粒子であってもよく、これらのシリカ粒子は合成品であってもよい。シリカの合成方法は、乾式法又は湿式法であってもよい。シリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子及びゾルゲルシリカ粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0096】
シリカ粒子は、接着剤成分中での分散性に優れる観点から、表面処理されたシリカ粒子であってもよい。表面処理されたシリカ粒子は、例えば、シリカ粒子の表面の水酸基をシラン化合物又はシランカップリング剤により疎水化したものである。表面処理されたシリカ粒子は、例えば、アルコキシシラン化合物、ジシラザン化合物、シロキサン化合物等のシラン化合物により表面処理されたシリカ粒子であってもよく、シランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子であってもよい。
【0097】
アルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、及び3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
ジシラザン化合物としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3,-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3,-テトラメチルジシラザン、及び1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0099】
シロキサン化合物としては、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサフェニルシクロシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘプタフェニルヂシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3-ビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、1,3-ジメトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジメチル-1,3-ジフェニル-1,3-ジビニルジシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチル-3-(3-グリシドイロキシプロピル)トリシロキサン、1,3,5-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]トリシロキサン、1,3,-ビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-イル)エチル]-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]-3-ビニルトリシロキサン、3-[[ジメチル(ビニル)シリル]オキシ]-1,1,5,5,-テトラメチル-3-フェニル-1,5-ビニルトリシロキサン、オクタビニルオクタシルセスキオキサン、及びオクタフェニルオクタシラシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0100】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0101】
シラン化合物、又はシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子は、シリカ粒子表面の水酸性基残基を更に疎水化するために、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメトキシフェニルシラン等のシラン化合物などを用いて表面処理し、更に疎水化させてもよい。
【0102】
表面処理されたシリカ粒子は、接着剤組成物を回路接続用接着剤フィルムとして用いた際に、回路接続用接着剤フィルムを圧着するときに、流動性を制御しやすい観点、圧着後の接続構造体の機械的物性、及び耐水性を向上させる観点から、シリカとトリメトキシオクチルシランとの反応生成物(加水分解生成物)、シリカとジメチルシロキサンとの反応生成物、二酸化ケイ素又はシリカとジクロロ(ジメチル)シランとの反応生成物、シリカとビス(トリメチルシリル)アミンの反応生成物(加水分解生成物)、及びシリカとヘキサメチルジシラザンの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、シリカとトリメトキシオクチルシランとの反応生成物、及び、シリカとビス(トリメチルシリル)アミンの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0103】
充填材の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。充填材の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0104】
充填材の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、1質量部以上、5質量部以上、又は10質量部以上であってもよい。充填材の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、200質量部以下、150質量部以下、又は100質量部以下であってもよい。
【0105】
接着剤組成物は、上記の成分以外の他の成分を更に含有してよい。他の成分としては、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填材、安定化剤、着色剤、酸化防止剤、ピリジニウム塩Aを含有する硬化剤以外の硬化剤等を含有してよい。接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを更に含有してよい。
【0106】
ラジカル重合性化合物としては、アクリル系化合物が挙げられる。アクリル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリレート化合物、及びこれらのイミド化合物が挙げられる。これらはモノマー、オリゴマーいずれの状態で用いてもよく、モノマーとオリゴマーとを併用してもよい。ラジカル重合性化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
アクリル系化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン等のアリールオキシ-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物;ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、及びトリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0108】
ラジカル重合開始剤は、光又は熱により遊離ラジカルを発生するものであってもよい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、及びアゾ系化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、及びシリルパーオキサイド等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、L-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、L-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、及びt-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0110】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及びクメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0111】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、及びベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0112】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ-n-ブロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、及びジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0113】
パーオキシケタールの具体例としては、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1、1-(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、及び2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0114】
シリルパーオキサイドの具体例としては、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t-ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t-ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t-ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、及びトリス(t-ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0115】
<回路接続用接着剤フィルム>
接着剤組成物は、フィルム状であってもよい。すなわち、本開示の他の一実施形態は、化合物Aと、硬化剤と、を含有する、回路接続用接着剤フィルムである。回路接続用接着剤フィルムは、導電粒子を含有していてもよい。
【0116】
回路接続用接着剤フィルムにおける導電粒子の粒子密度は、安定した接続抵抗が得られる観点から、100個/mm以上、1000個/mm以上、又は3000個/mm以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける導電粒子の粒子密度は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、100000個/mm以下、50000個/mm以下、又は30000個/mm以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける導電粒子の粒子密度は、100~100000個/mm、1000~50000個/mm、又は3000~30000個/mmであってもよい。
【0117】
導電粒子の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよい。導電粒子の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0118】
導電粒子の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、又は70質量部以上であってもよい。導電粒子の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部を基準として、200質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、又は100質量部以下であってもよい。
【0119】
回路接続用接着剤フィルムにおけるカチオン重合性化合物の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの硬化性を担保する観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおけるカチオン重合性化合物の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの形成性を担保する観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおけるカチオン重合性化合物の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、10~60質量%であってもよい。
【0120】
回路接続用接着剤フィルムにおける化合物Aの含有量は、回路接続用接着剤フィルムの硬化性を担保する観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける化合物Aの含有量は、回路接続用接着剤フィルムの形成性を担保する観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける化合物Aの含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、5~50質量%、又は10~50質量%であってもよい。
【0121】
回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1~20質量%であってもよい。
【0122】
回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、導電粒子を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、導電粒子を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、導電粒子を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1~30質量%であってもよい。
【0123】
回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化反応を充分に促進させる観点から、導電粒子及び充填材を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、硬化物の物性を向上させる観点から、導電粒子及び充填材を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける硬化剤の含有量は、導電粒子及び充填材を除く回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1~30質量%であってもよい。
【0124】
回路接続用接着剤フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0125】
回路接続用接着剤フィルムにおけるカップリング剤の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおけるカップリング剤の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってもよい。
【0126】
回路接続用接着剤フィルムにおける充填材の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける充填材の含有量は、回路接続用接着剤フィルムの全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0127】
回路接続用接着剤フィルムにおける各成分のカチオン重合性化合物100質量部を基準とした含有量は、上記の接着剤組成物における各成分のカチオン重合性化合物100質量部を基準とした含有量と同じ範囲内であってもよい。
【0128】
回路接続用接着剤フィルムは、単層であってもよく、複数の層が積層された多層構造を有するものであってもよい。回路接続用接着剤フィルムが多層構造を有する場合、回路接続用接着剤フィルムは、例えば、化合物Aと、硬化剤と、を含有する第一の接着剤層、及び第一の接着剤層以外の第二の接着剤層を備えてよい。すなわち、回路接続用接着剤フィルムは、第一の接着剤層と、第一の接着剤層上に積層された第二の接着剤層と、を備えていてもよい。第一の接着剤層及び第二の接着剤層の少なくとも一方は、化合物Aと、硬化剤と、導電粒子と、を含有してもよい。回路接続用接着剤フィルムが多層構造を有する場合、各層における上記の各成分の含有量は、各層の全質量を基準として、上記の含有量の範囲内であってもよい。
【0129】
回路接続用接着剤フィルムは、成分の種類、含有量等が異なる複数の領域を有するものであってもよい。回路接続用接着剤フィルムは、例えば、第一の領域と、第一の領域上に配置された第二の領域とを備えていてもよく、第一の領域が化合物Aと、硬化剤と、を含有する領域であってもよい。すなわち、回路接続用接着剤フィルムには、化合物Aと、硬化剤と、を含有する第一の接着剤組成物から形成される領域である第一の領域と、第一の領域上に配置された第二の接着剤組成物から形成される領域である第二の領域と、が存在してもよい。回路接続用接着剤フィルムが複数の領域を有する場合、各領域における上記の各成分の含有量は、各領域の全質量を基準として、上記の含有量の範囲内であってもよい。
【0130】
回路接続用接着剤フィルムは、基材(例えばPETフィルム)等の上に設けられていてもよい。基材付きの回路接続用接着剤フィルムは、例えば、導電粒子を含有する接着剤組成物を、ナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて基材上に塗布して作製することができる。
【0131】
図1は、一実施形態に係る回路接続用接着剤フィルムを示す模式断面図である。図1に示すように、回路接続用接着剤フィルム1は、一実施形態において、接着剤成分2と、接着剤成分2中に分散された導電粒子3とからなる単層で構成されている。一実施形態において、接着剤成分2は、化合物Aと、硬化剤と、を少なくとも含有する。回路接続用接着剤フィルム1は、未硬化の状態であってもよく、一部が硬化している状態であってもよい。
【0132】
回路接続用接着剤フィルム1の厚さは、例えば、3μm以上又は5μm以上であってもよく、30μm以下又は20μm以下であってもよい。
【0133】
一実施形態において、回路接続用接着剤フィルムは二以上の層を有する多層構造であってもよく、例えば、図2に示すように、回路接続用接着剤フィルム1は、導電粒子3Aを含む層(接着剤成分2Aと、接着剤成分2A中に分散された導電粒子3Aとからなる第一の接着剤層)1Aと、導電粒子を含まない層(接着剤成分2Bからなる第二の接着剤層)1Bとを備える二層構造であってもよい。この場合、第一の接着剤層1Aは、化合物Aと、硬化剤と、導電粒子と、を含有する接着剤組成物(第一の接着剤組成物)からなる層であってもよい。第二の接着剤層1Bは、化合物Aと、硬化剤と、を含有する接着剤組成物(第二の接着剤組成物)からなる層であってもよい。第二の接着剤層1Bが含有する各成分の種類、含有量等は、第一の接着剤層1Aと同じであってもよく、異なっていてもよい。回路接続用接着剤フィルム1の第一の接着剤層1A及び第二の接着剤層1Bは、それぞれ未硬化の状態であってもよく、一部が硬化している状態であってもよい。
【0134】
第一の接着剤層1Aの厚さは、例えば、1μm以上又は3μm以上であってもよく、15μm以下又は10μm以下であってもよい。第二の接着剤層1Bの厚さは、例えば、1μm以上又は3μm以上であってもよく、20μm以下又は15μm以下であってもよい。第一の接着剤層1Aの厚さは、第二の接着剤層1Bの厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。第一の接着剤層1Aの厚さと第二の接着剤層1Bの厚さとの比(第一の接着剤層1Aの厚さ/第二の接着剤層1Bの厚さ)は、0.1以上又は0.3以上であってもよく、1.5以下又は0.5以下であってもよい。
【0135】
上記の回路接続用接着剤フィルムは、異方導電性接着剤フィルム(異方導電フィルム)であってもよく、異方導電性を有しない導電性接着剤フィルムであってもよい。
【0136】
<接続構造体>
本開示の他の実施形態は、第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材と、第一の回路部材及び第二の回路部材の間に配置され、第一の電極及び第二の電極を互いに電気的に接続する接続部と、を備え、接続部が、上記の回路接続用接着剤フィルムの硬化物を含む、接続構造体である。
【0137】
図3は、接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示すように、構造体10は、相互に対向する第一の回路部材4及び第二の回路部材5と、第一の回路部材4及び第二の回路部材5の間において第一の回路部材4及び第二の回路部材5を接続する接続部6と、を備えている。
【0138】
第一の回路部材4は、第一の回路基板41と、第一の回路基板41の主面41a上に形成された第一の電極42とを備えている。第二の回路部材5は、第二の回路基板51と、第二の回路基板51の主面51a上に形成された第二の電極52とを備えている。
【0139】
第一の回路部材4及び第二の回路部材5は、電気的接続を必要とする電極が形成された部材であれば特に制限はない。電極が形成された部材(回路部材等)としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機基板;TCP、FPC、COF等に代表されるポリイミド基板;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等のフィルム上に電極を形成した基板;プリント配線板などが用いられ、これらのうちの複数を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
接続部6は、回路接続用接着剤フィルム1の硬化物を含み、接着剤成分2の硬化物である絶縁性物質7と、導電粒子3とを含有している。導電粒子3は、対向する第一の電極42と第二の電極52との間のみならず、第一の回路基板41の主面41aと第二の回路基板51の主面51aとの間に配置されていてもよい。構造体30においては、第一の電極42及び第二の電極52が、導電粒子3を介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子3が第一の電極42及び第二の電極52の双方に接触している。
【0141】
構造体10においては、上述したように、対向する第一の電極42と第二の電極52とが導電粒子3を介して電気的に接続されている。このため、第一の電極42及び第二の電極52間の接続抵抗が充分に低減される。したがって、第一の電極42及び第二の電極52間の電流の流れを円滑にすることが可能であり、第一の回路部材4及び第二の回路部材5が有する機能を充分に発揮させることができる。
【0142】
<接続構造体の製造方法>
本開示の他の実施形態は、第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、上記の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、第一の回路部材及び第二の回路部材を熱圧着して、第一の電極及び第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法である。
【0143】
図4は、接続構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。図4(a)に示されるように、まず、第一の回路部材4と、回路接続用接着剤フィルム1とを用意する。次に、回路接続用接着剤フィルム1を第一の回路部材4の主面41a上に配置する。回路接続用接着剤フィルム1が基材(図示せず)上に積層されている場合には、当該基材の回路接続用接着剤フィルム1側を第一の回路部材4に向けるようにして、積層体を第一の回路部材4上に配置する。回路接続用接着剤フィルム1が図2に示されるように第一の接着剤層1Aと第二の接着剤層1Bとを有する場合、対向する電極間に捕捉される導電粒子数を向上させる観点から、導電粒子を含む接着剤層(第一の接着剤層1A)側を第一の回路部材4の主面41aと接するようにして配置することが好ましい。
【0144】
そして、回路接続用接着剤フィルム1を、図4(a)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続用接着剤フィルム1を第一の回路部材4に仮接続する(図4(b)参照)。このとき、加圧と共に加熱を行ってもよい。
【0145】
続いて、図4(c)に示すように、第一の回路部材4上に配置された回路接続用接着剤フィルム1上に、第二の電極52側を第一の回路部材4に向けるようにして(すなわち、第一の電極42と第二の電極52とが対向配置される状態にして、第一の回路部材4と、第二の回路部材5との間に、回路接続用接着剤フィルム1を介在させて)第二の回路部材5を更に配置する。回路接続用接着剤フィルム1が基材(図示せず)上に積層されている場合には、基材を剥離してから第二の回路部材5を回路接続用接着剤フィルム1上に配置する。
【0146】
そして、回路接続用接着剤フィルム1を図4(c)の矢印A及びB方向に熱圧着する。これにより、回路接続用接着剤フィルム1が硬化され、第一の電極42及び第二の電極52を互いに電気的に接続する本接続が行われる。その結果、図3に示すような構造体10が得られる。
【0147】
上記のようにして得られる構造体10においては、対向する第一の電極42及び第二の電極52の双方に導電粒子3を接触させることが可能であり、第一の電極42及び第二の電極52間の接続抵抗を充分に低減することができる。
【0148】
回路接続用接着剤フィルム1を加熱しながら加圧することにより、第一の電極42及び第二の電極52間の距離を充分に小さくした状態で接着剤成分2が硬化して絶縁性物質7となり、第一の回路部材4と第二の回路部材5とが接続部6を介して強固に接続される。また、構造体10では、接着強度が充分に高い状態が長期間にわたって持続される。したがって、構造体10では、第一の電極42及び第二の電極52間の距離の経時的変化が充分に抑制され、第一の電極42及び第二の電極52間の電気特性の長期信頼性が優れる。
【実施例0149】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。但し、本開示は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0150】
<硬化剤の作製>
【0151】
[硬化剤B1の合成、分析]
アセトニトリル100mLと、スターラーチップと、を300mL三角フラスコに入れ、マグネチックスターラー上に設置した。2-シアノピリジン12.5g(120mmol、東京化成工業株式会社製)、2,4,6-トリメチルベンジルクロリド16.8g(100mmol、東京化成工業株式会社製)、及びヨウ化ナトリウム17.8g(119mmol、東京化成工業株式会社製)を300mL三角フラスコ中のアセトニトリルに加え、室温(25℃)で24時間反応させて結晶を得た。得られた結晶をガラスフィルターでろ過し、ガラスフィルター上の結晶をアセトン及び蒸留水により洗浄後、真空乾燥することで、29.1gの2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウム・ヨーダイド(収率80%)を得た。
ジクロロメタン200mLと、スターラーチップと、を500mL三角フラスコに入れ、マグネチックスターラー上に設置した。得られた2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウム・ヨーダイド3.6g(10mmol)を500mL三角フラスコに加えて、500mL三角フラスコ中のジクロロメタンに懸濁させた。500mL三角フラスコにナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート水溶液(固形分10%)72g(10.2mmol、日本触媒株式会社製)及び蒸留水50mLを加えて、室温(25℃)で3時間攪拌することで、塩交換反応を行った。撹拌後、有機層を蒸留水で洗浄、濃縮し、真空乾燥することで、化合物8.0g(収率88%)を得た。得られた化合物を硬化剤B1とした。
【0152】
得られた化合物を核磁気共鳴スペクトル(H-NMR、日本電子株式会社製、JNM-ECX400II)で測定したところ、以下のスペクトルデータが得られた。H-NMRによる測定から、得られた化合物が下記の構造を有する2-シアノ-1-(2,4,6-トリメチルベンジル)ピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることを確認した。
H-NMR(400MHz,CDOD),δ:2.26(s,6H),2.32(s,3H),6.10(s,2H),7.08(s,2H),8.25(td,1H,J=3.2,6.4Hz)8.43(d,1H,J=6.4Hz)8.77-8.82(m,2H)
【化10】
【0153】
<フェノキシ樹脂aの合成>
ジムロート冷却管と、塩化カルシウム管と、攪拌モーターに接続されたテフロン(登録商標)攪拌棒と、を装着した3000mLの3つ口フラスコ中で、4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール45g(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)及び3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50g(商品名:YX-4000H、三菱ケミカル株式会社製)をN-メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。この反応液に炭酸カリウム21gを加え、マントルヒーターで110℃に加熱しながら3時間攪拌した。攪拌後の反応液を1000mLのメタノールが入ったビーカーに滴下し、吸引ろ過することによって生成した沈殿物をろ取した。ろ取した沈殿物をさらに300mLのメタノールで3回洗浄して、フェノキシ樹脂aを75g得た。得られたフェノキシ樹脂aの分子量を高速液体クロマトグラフ(東ソー株式会社製、GP8020、カラム:昭和電工マテリアルズ株式会社製Gelpack GL-A150S及びGLA160S、溶離液:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/分)を用いて測定したところ、ポリスチレン換算でMn=15769、Mw=38045、Mw/Mn=2.413であった。
【0154】
<導電粒子の作製>
架橋ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.15μmとなるようにニッケルからなる層を形成して、平均粒子径3.0μmの導電粒子を得た。
【0155】
<回路接続用接着剤フィルムの作製>
表1に示す配合量(単位:質量部)で各成分を混合し、第一の接着剤層を形成する第一の接着剤組成物、及び第二の接着剤層を形成する第二の接着剤組成物を調製した。なお、表1中の各成分の詳細は以下のとおりであり、表中の各成分の配合量は不揮発分の配合量を表す。
・カチオン重合性化合物
A1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、商品名:YL980)
A2:ナフタレン型エポキシ樹脂(4官能エポキシ樹脂、DIC株式会社製、商品名:HP4700)
A3:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER1032H60)
A4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(4官能エポキシ樹脂、2つのグリシジル基と2つのグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、昭和電工株式会社製、商品名:BATG)
・硬化剤
B1:上記で合成した硬化剤
B2:スルホニウム塩(三新化学株式会社製、商品名:MS10)
・熱可塑性樹脂
C1:上記で合成したフェノキシ樹脂a
C2:エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER1010、エポキシ当量:3000~5000g/eq)
・導電粒子
D:上記で作製した導電粒子
・カップリング剤
E:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-403)
・充填材
F1:表面処理されたシリカ粒子(トリメトキシオクチルシランとシリカの加水分解生成物、Evonik Industries AG社製、商品名:アエロジルR805、有機溶媒で不揮発分の含有量を10質量%に希釈したものを使用)
F2:表面処理されたシリカ粒子(シリカとビス(トリメチルシリル)アミンとの加水分解生成物)
【0156】
基材(PETフィルム)の上に第二の接着剤組成物を塗布して、基材上に第二の接着剤層を形成した。さらに、第二の接着剤層の上に第一の接着剤組成物を塗布して、第一の接着剤層を形成して、第一の接着剤層、第二の接着剤層、及び基材がこの順に積層した回路接続用接着剤フィルムを作製した。各実施例、比較例において、回路接続用接着剤フィルムの第一の接着剤層の厚さは7μmであり、第二の接着剤層の厚さは7μmであった。
【0157】
<接続構造体の作製>
第一の回路部材として、無アルカリガラス基板(OA-11、日本電気硝子株式会社製、外形:38mm×28mm、厚さ:0.3mm)の表面に、AlNd(100nm)/Mo(50nm)/ITO(100nm)の配線パターン(パターン幅:19μm、電極間スペース:5μm)を形成したものを準備した。第二の回路部材として、バンプ電極を2列で千鳥状に配列したICチップ(外形:0.9mm×20.3mm、厚さ:0.3mm、バンプ電極の大きさ:70μm×12μm、バンプ電極間スペース:12μm、バンプ電極厚さ:8μm)を準備した。
【0158】
各実施例、比較例の各回路接続用接着剤フィルムを用いて接続構造体の作製を行った。まず、回路接続用接着剤フィルムの第一の接着剤層を第一の回路部材上に配置した。セラミックヒータからなるステージとツール(8mm×50mm)とから構成される熱圧着装置(株式会社大橋製作所製)を用いて、60℃、0.98MPa(10kgf/cm)の条件で1秒間加熱及び加圧して、回路接続用接着剤フィルムを第一の回路部材に貼り付けた。次いで、回路接続用接着剤フィルムの第一の回路部材とは反対側の基材を剥離し、第一の回路部材のバンプ電極と第二の回路部材の回路電極との位置合わせを行った。次いで、ヒートツール(8mm×45mm)を用いて、緩衝材として厚さ50μmのPTFEシートを介して、90℃に加熱した台座上にて表2に示す実装温度で5秒間、60MPaにて加熱及び加圧することで、回路接続用接着剤フィルムの第二の接着剤層を第二の回路部材に貼り付けて、接続構造体を作製した。なお、実装温度は回路接続用接着剤フィルムの実測最高到達温度とし、圧力は第二の回路部材のバンプ電極が第一の回路部材に対向する面の合計面積に対して算出される値とした。
【0159】
<接続抵抗の評価>
作製した接続構造体を用いて、四端子測定法にて、14箇所の接続抵抗を測定し、接続構造体作製直後(初期)とHAST試験後の接続抵抗値の平均値を評価した。HAST試験は、加速寿命試験装置(株式会社平山製作所製、商品名:PC―242HSR2、条件:110℃/85%RH/150時間)に接続構造体を設置して実施した。接続抵抗の測定は、マルチメータ(MLR21、ETAC社製)を用いた。接続抵抗の評価は、接続抵抗が3.5Ω未満を評価A、3.5Ω以上5Ω未満を評価B、5Ω以上10Ω未満を評価C、10Ω以上を評価Dとして、評価した。評価結果を表2に示す。
【0160】
<回路接続用接着剤フィルムの貼り付け性>
回路接続用接着剤フィルムを作製した直後(初期)と温度30℃、湿度60%RHで168時間保管後の貼り付け性を評価した。貼り付け性の評価は、回路接続用接着剤フィルムを第一の回路部材に貼り付けた際に、回路接続用接着剤フィルムと第一の回路部材との接触面積に対する貼り付き範囲が90%以上であるものを評価A、70%以上90%未満であるものを評価B、20%以上70%未満であるものを評価C、20%未満であるものを評価Dとして、評価した。評価結果を表2に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
表2に示されるように、接着剤組成物が、カチオン重合性化合物と、硬化剤と、導電粒子と、を含有し、カチオン重合性化合物として、ビスフェノール構造を有し、且つ、グリシジル基とグリシジルオキシ基と、を有するエポキシ化合物を含むことにより、低温から高温の幅広い実装温度(130~150℃)において、HAST試験後であっても優れた接続抵抗を実現することができ、且つ、貼り付け性に優れることが確認できた。
【符号の説明】
【0164】
1…回路接続用接着剤フィルム、1A…第一の接着剤層、1B…第二の接着剤層、2,2A,2B…接着剤成分、3,3A…導電粒子、4…第一の回路部材、5…第二の回路部材、6…接続部、7…絶縁性物質、10…構造体、41…第一の回路基板、42…第一の電極、51…第二の回路基板、52…第二の電極。
図1
図2
図3
図4