IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スミダコーポレーション株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人岩手大学の特許一覧

特開2024-99381筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法
<>
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図1
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図2
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図3
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図4
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図5
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図6
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図7
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図8
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図9
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図10
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図11
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図12
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図13
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図14
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図15
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図16
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図17
  • 特開-筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099381
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20240718BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20240718BHJP
【FI】
C12M1/42
C12M1/00 A
C12N5/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003288
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】デトモド ティタポーン
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4B029DF10
4B029GA08
4B029GB10
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】 筋組織形成時の電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって筋組織の形成促進を行う。
【解決手段】 バイオリアクタ10は、培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間101を有する。VPコイル11は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源装置2は、VPコイル11に電流を導通させ、収容空間101においてその電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の特定の細胞および培養液の一方または両方に印加して電気刺激をその特定の細胞に与える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間を有するバイオリアクタと、
前記バイオリアクタの前記収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、
前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させ、前記収容空間において前記電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記特定の細胞および前記培養液の一方または両方に印加して電気刺激を前記特定の細胞に与える電源装置と、
を備えることを特徴とする筋繊維形成促進装置。
【請求項2】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルであることを特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項3】
前記ベクトルポテンシャルコイルのコイル軸に沿って延びる強磁性体部材をさらに備え、
前記強磁性体部材は、導電性を有し、
前記ベクトルポテンシャルコイルの一端と前記強磁性体部材の第1接続点とが互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルコイルの他端および前記強磁性体部材の第2接続点に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項4】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、同一の前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一端と前記外側ソレノイドコイルの一端が互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記内側ソレノイドコイルの他端および前記外側ソレノイドコイルの他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項5】
前記ベクトルポテンシャルコイルを含む複数のベクトルポテンシャルコイルを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、前記バイオリアクタの軸方向または周方向に沿って配列されており、
前記電源装置は、前記複数のベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させ、前記収容空間において前記電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記特定の細胞および前記培養液の一方または両方に印加して電気刺激を前記特定の細胞に与えること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項6】
前記バイオリアクタは、外筒と内筒とを備え、
前記収容空間は、前記外筒と前記内筒との間の空間であり、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、第1コイル群と第2コイル群とを含み、
前記第1コイル群は、前記外筒の周方向に沿って配列されており、
前記第2コイル群は、前記内筒の周方向に沿って配列されていること、
を特徴とする請求項5記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項7】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルにおける互いに隣接する2つのベクトルポテンシャルコイルは、互いに逆方向に巻回されており、
前記2つのベクトルポテンシャルコイルのうちの一方のベクトルポテンシャルコイルの2つの端部のうちの一方の端部は、前記2つのベクトルポテンシャルコイルのうちの他方のベクトルポテンシャルコイルの2つの端部のうち、前記一方のベクトルポテンシャルコイルの前記一方の端部に近いほうの端部に、電気的に接続されていること、
を特徴とする請求項5記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項8】
前記バイオリアクタは、培養槽と、前記培養槽に接続され培養液を循環させる循環配管と、前記循環配管に設けられたポンプとを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、前記循環配管に設置されていること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項9】
前記収容空間には培養液が循環し、
前記培養液は、導電性を有し、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する電流を前記培養液に導通させて電気刺激を前記特定の細胞に与えること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項10】
前記収容空間は、トーラス形状、または複数回周回するらせん形状を有することを特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項11】
前記バイオリアクタは、互いに並行する複数の平板部を有する第1部材と、互いに並行する複数の平板部を有する第2部材とを備え、
前記第1部材および前記第2部材は、前記第1部材の前記平板部と前記第2部材の前記平板部とが互いに対向しつつ離間するように配置されており、
前記収容空間は、前記第1部材の前記平板部と前記第2部材の前記平板部との間の空間を含み、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、前記第1部材の前記平板部および前記第2部材の前記平板部に内蔵されていること、
を特徴とする請求項1記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項12】
前記特定の細胞は、分化前の幹細胞および分化後の筋芽細胞の一方または両方を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の筋繊維形成促進装置。
【請求項13】
培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間を有するバイオリアクタの前記収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させ、前記収容空間において前記電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記特定の細胞および前記培養液の一方または両方に印加して電気刺激を前記特定の細胞に与えること、
を特徴とする筋繊維形成促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる培養肉の形成について、種々の方法が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。一般的に、培養肉の形成では、幹細胞の増殖、筋芽細胞への分化などを行うことで筋繊維の培養が行われる。また、ある研究によって、培地に電極を挿入し電気刺激を行うことで、筋細胞の増殖および分化が促進されることが明らかにされている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
他方、ソレノイドコイルを周回させたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させてベクトルポテンシャルを発生するベクトルポテンシャル発生装置が開発されている(例えば特許文献3参照)。また、時間変化するベクトルポテンシャルによって電圧が誘起されることを利用してベクトルポテンシャルを検出するベクトルポテンシャル検出装置も開発されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2022/059498
【特許文献2】特表2022-532498公報
【特許文献3】国際公開WO2015/099147
【特許文献4】特許第6950925号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Aki NAKAJIMA et al. "Effect of Pulsatile Electric Field on Cultured Muscle Cells in Vitro", Journal on Systemics, Cybernetics and Informatics, Volume 10, Number 1, 2012, pp. 1-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の電気刺激による筋線維の形成促進では、培地に電気刺激を与えるために培地に電極を接触させる必要がある。そのため、(a)電極から培地に、電極由来の金属イオンが溶出し、筋線維の形成に悪影響を与える可能性があり、また、(b)電極が腐食する可能性がある。なお、それらの問題の生じない電極(プラチナ電極など)を使用する場合には、電極のコストが高くなり好ましくない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、筋組織形成時の電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって筋組織の形成促進を行う筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る筋繊維形成促進装置は、培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間を有するバイオリアクタと、バイオリアクタの収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させ、収容空間においてその電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を特定の細胞および培養液の一方または両方に印加して電気刺激を特定の細胞に与える電源装置とを備える。
【0009】
本発明に係る筋繊維形成促進方法は、培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間を有するバイオリアクタの、その収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させ、その収容空間においてその電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の特定の細胞および培養液の一方または両方に印加して電気刺激を特定の細胞に与える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筋組織形成時の電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって筋組織の形成促進を行う筋繊維形成促進装置および筋繊維形成促進方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る筋繊維形成促進装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態2におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
図6図6は、実施の形態5におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図8図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図9図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図10図10は、実施の形態8におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の支持部材31の一例を示す斜視図である。
図12図12は、実施の形態10におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図13図13は、実施の形態11におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図14図14は、実施の形態11におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図15図15は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す斜視図である。
図16図16は、図15におけるVPコイル15a,15bおよびVPコイル16a,16bの電気的な接続について説明する図である。
図17図17は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図18図18は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
実施の形態1.
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る筋繊維形成促進装置の構成を示すブロック図である。図1に示す筋繊維形成促進装置は、バイオリアクタ10、ベクトルポテンシャルコイル装置1、電源装置2、およびコントローラ3を備える。
【0015】
バイオリアクタ10は、培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間を有する部材である。なお、特定の細胞は、例えば、分化前の幹細胞および分化後の筋芽細胞の一方または両方を含み、培養液中に含まれていてもよいし、収容空間内に固定された足場に付加されていてもよい。また、培養液は、導電性のある液体(例えば栄養成分や電解質を含む水など)である。
【0016】
実施の形態1では、バイオリアクタ10は、パイプ状の部材である。ただし、バイオリアクタ10は、容器状の部材、培養槽などでもよい。
【0017】
図2は、実施の形態1におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0018】
例えば図2に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方(ここでは外側)に配置されたベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11を備える。実施の形態1では、例えば図2に示すように、VPコイル11は、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルである。ここでは、バイオリアクタ10は、円筒状の部材であって、VPコイル11は、円状に周回するらせん状のコイル軸を有する。
【0019】
また、電源装置2は、商用電源や電池(1次電池または2次電池)などの電力に基づいて、時間変化する特定波形の電流(所定周波数の交流電流、パルス電流、それらを組み合わせた電流など)を生成し、その電流をVPコイル11に導通させ、上述の収容空間101においてその電流に対応して時間変化するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の特定の細胞および培養液の一方または両方に印加して電気刺激をその特定の細胞に与える。例えば、電源装置2は、矩形波、正弦波などの所定の波形の交流電圧をVPコイル11に印加して上述の特定波形の電流をVPコイル11に導通させる。
【0020】
具体的には、上述の培養液が導電性を有する場合においてVPコイル11に交流電流が導通するときは、上述の培養液には交流の電界が印加されるとともに、その電界による電圧に対応する交流電流が上述の培養液を導通する。これにより、電界による電気刺激と電流による電気刺激の両方が上述の特定の細胞に与えられる。一方、上述の培養液が導電性を有さない場合には、上述の培養液には交流の電界が印加されるが、上述の交流電流は導通しない。
【0021】
振幅Iのsin波である交流電流をVPコイル11に導通させた場合、収容空間101には、次式に示す交流電圧Vが、交流電流によって発生するベクトルポテンシャルの時間変化に応じて生じ、その交流電圧に応じた交流電流が収容空間101内の培養液を導通する。
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、μは真空透磁率であり、nはVPコイル11におけるソレノイドの単位長あたりの巻数であり、Nは、らせん状のVPコイル11の単位長あたりの巻数であり、SはVPコイル11におけるソレノイドの断面積であり、ωは交流電流の角周波数であり、aは、らせん状のVPコイル11の断面半径であり、Lは、VPコイル11の長さ(両端間の距離)であり、tは時間である。
【0024】
また、コントローラ3は、制御プログラムを実行するコンピュータなどであって、電源装置2を制御して、上述の特定波形の電流を所定のタイミング(常時、所定時間間隔など)でVPコイル11に導通させる。例えば、コントローラ3は、電源装置2に、例えば1Hz程度のパルス電流を導通させるようにしてもよい。
【0025】
次に、上記筋繊維形成促進装置の動作について説明する。
【0026】
コントローラ3は、図示せぬ流体制御装置(ポンプや弁など)を制御して、パイプ状のバイオリアクタ10に、上述の特定の細胞が含まれる培養液を流入させた後、電源装置2を制御して、電源装置2に、上述の特定波形の電流をVPコイル11へ供給させる。その際、電源装置2は、所定のタイミングで、所定の波形(振幅、周波数など)で電流を生成し、VPコイル11へ供給する。なお、培養液に上述の特定の細胞が含まれていない場合には、特定の細胞は、予め、バイオリアクタ10の収容空間101内の足場に固定される。
【0027】
VPコイル11を導通する電流によって磁場がコイル軸に沿って発生し、その電流に平行にベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル11の湾曲内側方向(つまり、収容空間101)におけるベクトルポテンシャルの強度が、VPコイル11の湾曲外側方向(つまり、収容空間101の外側)におけるベクトルポテンシャルより大きくなる。
【0028】
そして、収容空間101において、ベクトルポテンシャルが変化するため、その時間的変化に応じた電圧が上述のように発生し、その電圧に応じた電流が収容空間101内の培養液に導通し、収容空間101内の特定の細胞(幹細胞、筋芽細胞など)に電気刺激が与えられる。これにより、幹細胞の増殖、筋芽細胞への分化などが促進され、ひいては、収容空間101内の、筋芽細胞による筋組織の形成が促進される。
【0029】
所定時間経過後、コントローラ3は、図示せぬ流体制御装置(ポンプや弁など)を制御して、培養液をバイオリアクタ10から排出する。培養液に上述の特定の細胞が含まれている場合には、その特定の細胞が培養液から抽出される。また、収容空間101内に固着している特定の細胞や筋組織は、バイオリアクタ10の収容空間101から取り出される。
【0030】
以上のように、上記実施の形態によれば、バイオリアクタ10は、培養液を使用して特定の細胞で筋繊維が形成される収容空間101を有する。VPコイル11は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源装置2は、VPコイル11に電流を導通させ、収容空間101においてその電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の特定の細胞および培養液の一方または両方に印加して電気刺激をその特定の細胞に与える。
【0031】
これにより、培養液に電極を接触させることなく筋組織形成のための特定の細胞に電気刺激が与えられる。したがって、電気刺激のための培養液に挿入する電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって筋組織形成が促進される。
【0032】
実施の形態2.
【0033】
図3は、実施の形態2におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0034】
実施の形態2では、例えば図3に示すように、バイオリアクタ10は、容器状の部材である。ここでは、バイオリアクタ10は、円筒状の容器である。図3に示すバイオリアクタ10は、培養液を流入させる配管10a、培養液を排出させる配管10b、および温度センサなどのセンサ10cを備える。なお、バイオリアクタ10には、必要に応じて、撹拌装置(撹拌羽根、モータなど)を設けてもよい。
【0035】
実施の形態2では、バイオリアクタ10において培養液が貯留され、上述の培養液が貯留される位置(高さ)の外側に、実施の形態1と同様のVPコイル11が配置されている。
【0036】
なお、実施の形態2に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0037】
実施の形態3.
【0038】
図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0039】
実施の形態3では、例えば図4に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル11の他、VPコイル11を構成するソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材11Aをさらに備える。
【0040】
この強磁性体部材11Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されている。そして、VPコイル11の一端と強磁性体部材11Aの一端11A1(第1接続点)とが互いに電気的に接続されており、電源装置2は、VPコイル11の他端および強磁性体部材11Aの他端11A2(第2接続点)に電圧を印加してVPコイル11に上述の特定波形の電流を導通させる。
【0041】
このように、強磁性体部材11Aが上述の電流の経路となり、VPコイル11のいずれか一方の端部側に2つの端子が配置されるため、電源装置2からVPコイル11および強磁性体部材11Aまでの配線の敷設が簡単になるとともに、その配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0042】
なお、実施の形態3に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
実施の形態4.
【0044】
図5は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
【0045】
実施の形態4では、例えば図5に示すように、VPコイル11は、同一のコイル軸に沿ってそれぞれ延びコイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。そして、内側ソレノイドコイル11-1の一端と外側ソレノイドコイル11-2の一端が互いに電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものである。したがって、実施の形態4のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。そして、電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端および外側ソレノイドコイル11-2の他端に電圧を印加してベクトルポテンシャルコイルに上述の電流を導通させる。これにより、内側ソレノイドコイル11-1によるベクトルポテンシャルと外側ソレノイドコイル11-2によるベクトルポテンシャルとが同一方向に発生する。
【0046】
なお、実施の形態4に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
実施の形態5.
【0048】
図6は、実施の形態5におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0049】
実施の形態5では、例えば図6に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル11など)は、バイオリアクタ10の収容空間101に配置されている。VPコイルの内部空間において、上述のベクトルポテンシャルに基づき生じる電界が上述の培養液に印加される。また、上述の培養液が導電性を有する場合、例えば図6に示すように、上述の特定波形の電流I(t)がVPコイル11の内部空間とVPコイル11の外側とを周回的に導通する。なお、ここでは、実施の形態3と同様のベクトルポテンシャルコイル装置1が収容空間101に配置されているが、他の実施の形態と同様のベクトルポテンシャルコイル装置1が収容空間101に配置されていてもよい。
【0050】
なお、ベクトルポテンシャルコイル装置1がバイオリアクタ10の収容空間101に配置される場合、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル11および強磁性体部材11Aなど)は被覆され、VPコイル11の導線など(つまり、金属部分)が収容空間101内の培養液に触れないようになっている。また、電源装置2およびコントローラ3は、バイオリアクタ10の外側に配置されており、電源装置2からVPコイル11までの配線は、バイオリアクタ10から培養液が漏洩しないようにバイオリアクタ10の壁面を介して敷設される。
【0051】
なお、実施の形態5に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
実施の形態6.
【0053】
図7は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【0054】
実施の形態6では、例えば図7および図8に示すように、VPコイル12は、バイオリアクタ10の収容空間101の外側に配置されている。また、実施の形態6に係る筋繊維形成促進装置は、互いに同一な複数のVPコイル12を備えている。それらのVPコイル12は、パイプ状のバイオリアクタ10の軸方向に沿って配列されている。ここで、各VPコイル12は、円状のコイル軸に沿って延びるリング状のソレノイドコイルである。VPコイル12は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、収容空間101において各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0055】
なお、実施の形態6に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
実施の形態7.
【0057】
図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【0058】
実施の形態7に係る筋繊維形成促進装置は、例えば図9に示すように、互いに同一な複数のVPコイル13を備えている。実施の形態7では、各VPコイル13は、互いに同一な、直線状のコイル軸のソレノイドコイルである。それらのVPコイル13は、パイプ状のバイオリアクタ10の周方向に沿って配列されている。
【0059】
電源装置2は、複数のVPコイル13に上述の特定波形の電流を導通させ、収容空間101において上述の特定波形の電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、同様に、上述の特定の細胞に電気刺激を与える。VPコイル13は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0060】
なお、実施の形態7に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
実施の形態8.
【0062】
図10は、実施の形態8におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0063】
実施の形態8では、例えば図10に示すように、バイオリアクタ10は、培養槽41と、培養槽41に接続され培養液を循環させる循環配管42と、循環配管42に設けられたポンプ43とを備え、VPコイル11は、循環配管42に設置されている。実施の形態8では、ポンプ43によって、所定の流速(流量)で上述の培養液が、培養槽41および循環配管42を循環しており、循環配管42において、VPコイル11によって培養液にベクトルポテンシャルが生じる。なお、ここでは、循環配管42やポンプ43において上述の培養液が接触する箇所は、樹脂などで覆うか、樹脂などの非金属性の部材を使用し、上述の培養液が金属に接触しないようにしている。
【0064】
ここでは、上述の培養液が導電性を有しており、ポンプ43の取込口内の培養液から排出口内の培養液まで導電性が確保されており、培養槽41の培養液が所定の基準液位以上となるように、培養槽41内に上述の培養液が収容されており、上述の特定波形の電流が、培養槽41および循環配管42内の培養液、並びにポンプ43を導通する。これにより、培養槽41内に上述の特定の細胞が固定されている場合でも、その特定波形の電流によって特定の細胞に電気刺激が与えられる。
【0065】
なお、ここでは、基準液位は、循環配管42の排出口42Aの高さに設定されている。また、培養槽41の液位が所定の基準液位未満であっても、十分な流速(流量)で培養液が循環している場合には、排出口42Aから排出された培養液が培養槽41の液位まで連続するため、その場合も、上述の特定波形の電流が、培養槽41および循環配管42内の培養液およびポンプ43を導通する。
【0066】
なお、十分な流速(流量)で培養液が循環していない場合には、排出口42Aから排出された培養液が液滴状で培養槽41の液位に落下するため、その場合には、上述の特定波形の電流が、培養槽41および循環配管42内の培養液、並びにポンプ43を導通しない。この場合でも、培養液に上述の特定の細胞が含まれるときには、その特定の細胞に循環配管42内で電気刺激が与えられる。
【0067】
なお、実施の形態8に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
実施の形態9.
【0069】
図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の支持部材31の一例を示す斜視図である。実施の形態9では、例えば、容器状のバイオリアクタ10より大きな径のリング状の支持部材31に上述のVPコイル11,12が固定される。支持部材31は、脚部31aを備え、直立可能になっている。
【0070】
なお、実施の形態9に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0071】
実施の形態10.
【0072】
図12は、実施の形態10におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。図12に示す筋繊維形成促進装置は、バイオリアクタ10、VPコイル14、配管51,52およびバルブ51a,52aを備える。
【0073】
図12に示すように、実施の形態10におけるバイオリアクタ10は、トーラス形状を有し、その収容空間もトーラス形状を有する。
【0074】
VPコイル14は、バイオリアクタ10のトーラス形状の中心軸を中心としてらせん状に延びるコイル軸を有する1本のソレノイドコイルである。なお、VPコイル14は、円状のコイル軸をそれぞれ有し周方向に等間隔に配置された複数のVPコイル(つまり、リング状のソレノイドコイル)でもよい。
【0075】
配管51,52の一方は、収容空間に培養液を流入させるための配管であって、配管51,52の他方は、収容空間に培養液を排出させるための配管である。バルブ51a,52aは、配管51,52にそれぞれ設けられており、例えばコントローラ3によって制御される電磁バルブである。例えば、バルブ51aは、培養液流入時に開状態とされ、それ以外の期間は閉状態とされ、バルブ52aは、培養液排出時に開状態とされ、それ以外の期間は閉状態とされる。なお、配管52およびバルブ52aを設けず、配管51およびバルブ51aを培養液の流入および排出の両方に使用するようにしてもよい。
【0076】
実施の形態10では、VPコイル14は、VPコイル14のらせん形状の中心に沿った向きのベクトルポテンシャルAを生じさせ、収容空間では、ベクトルポテンシャルAは、内周側ほど強くなり外周側ほどらせん形状の中心からの径方向の距離に反比例して弱くなる。そのため、筋線維が収容空間の内周側で成長しやすい。また、ベクトルポテンシャルAの向きは周方向となり、筋線維は、ベクトルポテンシャルAに対して平行な方向に成長しやすく、収容空間に沿ってリング状に形成される。さらに、リング状に形成された筋線維が収容空間の内周側に凝集していき、筋線維間の余分な水分が取り除かれ強い繊維質が形成される。
【0077】
なお、実施の形態10に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
実施の形態11.
【0079】
図13は、実施の形態11におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。図14は、実施の形態11におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。なお、図14では、VPコイル14は、図示していない。
【0080】
図13および図14に示す筋繊維形成促進装置は、実施の形態10と同様に、バイオリアクタ10、VPコイル14、配管51,52およびバルブ51a,52aを備える。ただし、バイオリアクタ10は、複数回周回するらせん形状を有し、その収容空間も複数回周回するらせん形状を有する。ここで、培養液を配管51を介して連続的に収容空間に流入させ、配管52を介して連続的に収容空間から排出させるようにしてもよい。
【0081】
実施の形態11においても、実施の形態10と同様に、収容空間の内周側のベクトルポテンシャルが強くなり、例えば図14に示すように、バイオリアクタ10の内周側の壁面上に筋線維201が形成される。
【0082】
なお、実施の形態11に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態10と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
以上のように、実施の形態11によれば、収容空間に沿ったらせん状に筋線維201が形成されるため、バイオリアクタ10の両端(らせん形状の収容空間の両端)の一方または両方に開閉部(開閉扉など)を設け、その開閉部を介して筋線維201をねじりながら取り出すことで、比較的容易に収容空間から、連続した筋線維201を取り出すことができる。また、その開閉部を介してバイオリアクタ10内部の洗浄を容易に行うことができる。
【0084】
実施の形態12.
【0085】
図15は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す斜視図である。図16は、図15におけるVPコイル15a,15bおよびVPコイル16a,16bの電気的な接続について説明する図である。
【0086】
実施の形態12では、例えば図15に示すように、バイオリアクタ10は、外筒10eと内筒10fとを備え、外筒10eと内筒10fとの間の空間が、収容空間10gとされる。
実施の形態12では、複数のVPコイルが設けられており、各VPコイルは、コイル軸が直線状であるソレノイドコイルである。そして、その複数のVPコイルは、第1コイル群(VPコイル15a,15b)と第2コイル群(VPコイル16a,16b)とを含む。第1コイル群は、外筒10eの外側において外筒10eの周方向に沿って配列されており、第2コイル群は、内筒10fの内側において内筒10fの周方向に沿って配列されている。
【0087】
また、実施の形態12では、例えば図16に示すように、複数のVPコイルにおける互いに隣接する2つのVPコイル15a,15bは、互いに逆方向に巻回されており、その2つのVPコイル15a,15bのうちの一方のVPコイル15aの2つの端部のうちの一方の端部は、その2つのVPコイル15a,15bのうちの他方のVPコイル15bの2つの端部のうち、上述の一方のVPコイル15aの一方の端部に近いほうの端部に、電気的に接続されている。これにより、VPコイル15a,15bは直列に接続されている。また、第2コイル群のVPコイル16a,16bについても同様に電気的に接続されている。これにより、VPコイル15a,15bによって同一方向のベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル16a,16bによって同一方向のベクトルポテンシャルが発生する。また、VPコイル15a,15bによって発生するベクトルポテンシャルと、VPコイル16a,16bによって発生するベクトルポテンシャルとは、互いに同一方向となっている。
【0088】
実施の形態12では、例えば図15に示すように、実施の形態10,11と同様の理由で、内筒10fの表面上(つまり、収容空間10gの内周側壁面)に筋線維201が形成される。
【0089】
なお、実施の形態12に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
実施の形態13.
【0091】
図17は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。図18は、実施の形態12におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0092】
実施の形態13では、例えば図17に示すように、バイオリアクタ10は、第1部材61と第2部材62とを備える。第1部材61は、互いに並行する複数の平板部61aを有する。第2部材62は、互いに並行する複数の平板部62aを有する。さらに、第1部材61および第2部材62は、それぞれ、複数の平板部61a,62aを離間して配置する支持部61b,62bを備え、複数の平板部61a,62aと平行な方向に移動させて着脱可能となっている。複数の平板部61a,62aは、それぞれ、支持部61b,62bから垂直に延びている。また、第1部材61および第2部材62は、支持部61bと支持部62bとが互いに並行になるように配置されている。なお、平板部61aの数および平板部62aの数は、特に限定されず、3または4以上でもよい。
【0093】
実施の形態13では、複数のVPコイル71が、互いに平行に配列されて各平板部61a,62aに内蔵されている。この実施の形態では、各VPコイル71は、コイル軸が直線状であるソレノイドコイルであり、そのコイル軸が支持部61b,62bに並行になるように配置されている。なお、ここでは、VPコイル71のうちの互いに隣接する2つは、上述のVPコイル15a,15bやVPコイル16a,16bと同様に、交互に、逆方向に巻回されており、同様に電気的に接続されている。
【0094】
そして、第1部材61および第2部材62は、第1部材61の平板部61aと第2部材62の平板部62aとが互いに対向しつつ離間するように配置されており、第1部材61の平板部61aと第2部材62の平板部62aとの間の空間が、上述の収容空間72とされる。そして、収容空間72において、VPコイル71のコイル軸に対して垂直方向のベクトルポテンシャルAが発生する。
【0095】
このようなバイオリアクタ10において、培養液は、図18に示すように、支持部61b,62bに平行な方向81において収容空間72に対して流入および排出されてもよいし、支持部61b,62bに直角な方向82において収容空間72に対して蛇行しつつ流入および排出されてもよい。
【0096】
また、部材61,62を移動させて取り外すことで、平板部61,62a上に形成された筋線維201が露出し、容易に採取可能となる。
【0097】
なお、実施の形態12に係る筋繊維形成促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0098】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0099】
例えば、上記実施の形態1~13において、バイオリアクタ10は、非金属性(例えば樹脂製)の部材でもよいし、金属製の部材でもよい。バイオリアクタ10が金属製である場合には、例えば、上述の培養液が接触する箇所(内壁など)を樹脂などで覆い、上述の培養液が金属に接触しないようにする。
【0100】
また、上記実施の形態1~13におけるバイオリアクタ10は、例示されているものに限定されず、パイプ状のバイオリアクタ、容器状のバイオリアクタ、槽状のバイオリアクタなどといった種々の形態のいずれかとしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態4では、VPコイル11が、径方向において、内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル11-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル11-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル11-(i+1)に接続される。
【0102】
また、上記実施の形態1~13では、VPコイルがバイオリアクタ10の収容空間101および外側の一方のみに配置されているが、VPコイルがバイオリアクタ10の収容空間101および外側の両方に配置されていてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態1~13において、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル)がバイオリアクタ10の収容空間101内に配置されているものについては、バイオリアクタ10の収容空間101の外側に配置されるようにしてもよい。ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル)がバイオリアクタ10の収容空間101の外側に配置されているものについては、バイオリアクタ10の収容空間101内に配置されるようにしてもよい。
【0104】
また、上記実施の形態1~13において、必要に応じてVPコイルに、上述の強磁性体部材11Aと同様の強磁性体部材を設けてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態1~13において、必要に応じてVPコイルを、上述のような複数層(偶数層)のソレノイドコイルとしてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態2~13において、上述の特定の細胞は、実施の形態1と同様に、培養液に含まれているか、収容空間101内に固定されている。
【0107】
なお、上記実施の形態1~13において、上述の培養液が導電性を有する場合には、上述のようにベクトルポテンシャルによって発生する電界に加えて電流が電気刺激として上述の特定の細胞に印加され、上述の培養液が導電性を有さない場合には、その培養液に電流が流れなくても上述のようにベクトルポテンシャルによって発生する電界が電気刺激として上述の特定の細胞に印加される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、培養肉の形成に適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 ベクトルポテンシャルコイル装置
2 電源装置
3 コントローラ
10 バイオリアクタ
10e 外筒
10f 内筒
10g,72,101 収容空間
11~14,71 ベクトルポテンシャルコイル
15a,15b 第1コイル群
16a,16b 第2コイル群
61 第1部材
61a 平板部
62 第2部材
62a 平板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18