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特開2024-99382ベクトルポテンシャルコイル装置、ベクトルポテンシャル発生装置、および治療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099382
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ベクトルポテンシャルコイル装置、ベクトルポテンシャル発生装置、および治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20240718BHJP
   A61N 2/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61N2/04
A61N2/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003289
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA05
4C106AA06
4C106AA07
4C106BB21
4C106CC03
4C106FF12
4C106FF16
(57)【要約】
【課題】 大電流を導通可能なベクトルポテンシャルコイル装置、およびそのようなベクトルポテンシャルコイル装置でベクトルポテンシャルを発生させるベクトルポテンシャル発生装置、並びにそのようなベクトルポテンシャル発生装置を備えた治療装置を得る。
【解決手段】 ベクトルポテンシャルコイル装置1は、渦巻きロール形状の層状導体部材11と、層状導体部材11のロール内周側の第1端面部11aと、層状導体部材のロール外周側の第2端面部11bとを備え、電源装置2は、第1端面部11aおよび第2端面部11bを介して層状導体部材11に電流を導通させて層状導体部材11でベクトルポテンシャルを発生させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻きロール形状の層状導体部材と、
前記層状導体部材のロール内周側の第1端面部と、
前記層状導体部材のロール外周側の第2端面部とを備え、
前記層状導体部材は、前記第1端面部および前記第2端面部を介して導通する電流でベクトルポテンシャルを発生させること、
を特徴とするベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項2】
前記層状導体部材は、板状部材であることを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項3】
前記層状導体部材は、網状部材であることを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項4】
前記層状導体部材は、直線状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有することを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項5】
前記層状導体部材は、曲線状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有することを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項6】
前記第1端面部に沿って前記第1端面部に接続されている芯導体部材をさらに備え、
前記芯導体部材、前記第1端面部および前記第2端面部を介して電流が導通すること、
を特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項7】
前記芯導体部材は、軟磁性を有することを特徴とする請求項6記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項8】
ベクトルポテンシャルコイル装置と、
前記ベクトルポテンシャルコイル装置に電流を導通させる電源装置とを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイル装置は、
渦巻きロール形状の層状導体部材と、
前記層状導体部材のロール内周側の第1端面部と、
前記層状導体部材のロール外周側の第2端面部とを備え、
前記電源装置は、前記第1端面部および前記第2端面部を介して前記層状導体部材に前記電流を導通させて前記層状導体部材でベクトルポテンシャルを発生させること、
を特徴とするベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項9】
請求項8記載のベクトルポテンシャル発生装置と、
前記電源装置を制御するコントローラーとを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイル装置は、生体に対してベクトルポテンシャルを印加すること、
を特徴とする治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベクトルポテンシャルコイル装置、ベクトルポテンシャル発生装置、および治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あるベクトルポテンシャル発生装置は、らせん状に周回したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルで、ベクトルポテンシャルを発生している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2015/099147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のベクトルポテンシャル発生装置では、小コイル径で巻回されたソレノイドコイルがらせん状に周回したコイル軸に沿って延びているため、そのソレノイドコイルを構成する導線が長くなるとともに、導線自体も細いものが採用される。そのため、ソレノイドコイルの抵抗およびインダクタンスが大きくなる。このように、抵抗およびインダクタンスが大きくなると、そのソレノイドコイルに大電流の交流電流を導通させにくくなり、ひいては、強いベクトルポテンシャルの発生が困難になる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、大電流を導通可能なベクトルポテンシャルコイル装置、およびそのようなベクトルポテンシャルコイル装置でベクトルポテンシャルを発生させるベクトルポテンシャル発生装置、並びにそのようなベクトルポテンシャル発生装置を備えた治療装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るベクトルポテンシャルコイル装置は、渦巻きロール形状の層状導体部材と、層状導体部材のロール内周側の第1端面部と、層状導体部材のロール外周側の第2端面部とを備える。そして、層状導体部材は、第1端面部および第2端面部を介して導通する電流でベクトルポテンシャルを発生させる。
【0007】
本発明に係るベクトルポテンシャル発生装置は、上記のベクトルポテンシャルコイル装置と、ベクトルポテンシャルコイル装置に電流を導通させる電源装置とを備える。
【0008】
本発明に係る治療装置は、上記のベクトルポテンシャル発生装置と、その電源装置を制御するコントローラーとを備える。そして、ベクトルポテンシャルコイル装置は、生体に対してベクトルポテンシャルを印加する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大電流を導通可能なベクトルポテンシャルコイル装置、およびそのようなベクトルポテンシャルコイル装置でベクトルポテンシャルを発生させるベクトルポテンシャル発生装置、並びにそのようなベクトルポテンシャル発生装置を備えた治療装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置の構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1を示す側面図である。
図3図3は、図1における層状導体部材11の展開図である。
図4図4は、実施の形態2に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の層状導体部材11を示す展開図である。
図5図5は、図4に示すベクトルポテンシャルコイル装置1の等価回路を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置の構成を示す斜視図である。
図7図7は、図6に示すベクトルポテンシャル発生装置の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置の構成を示す斜視図である。図2は、図1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1を示す側面図である。図1に示すベクトルポテンシャル発生装置は、ベクトルポテンシャルコイル装置1、および電源装置2を備える。
【0014】
図1および図2に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、渦巻きロール形状の層状導体部材11を備える。層状導体部材11は、ロール内周側の端面である第1端面部11aと、ロール外周側の端面である第2端面部11bとを備える。ここでは、層状導体部材11は、非磁性であって、導電性の良好な部材(例えば銅の部材)である。
【0015】
実施の形態1では、層状導体部材11は、直線状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有する。
【0016】
また、電源装置2は、特定波形の電圧を発生し、第1端面部11aおよび第2端面部11bを介して層状導体部材11に、時間変化する特定波形の電流(正弦波、三角波、矩形波などといった交流電流、パルス電流、それらを組み合わせた電流など)を導通させる。例えば、電源装置2は、1kHz~1GHz程度の高周波電源である。また、例えば、電源装置2は、連続的に所定周波数の交流電流を層状導体部材11に導通させるようにしてもよいし、所定の時間間隔で間欠的に、または所定の時系列パターンで間欠的に、所定周波数の交流電流を層状導体部材11に導通させるようにしてもよい。
【0017】
図3は、図1における層状導体部材11の展開図である。図3に示すように、実施の形態1では、層状導体部材11は、略長方形の板状部材である。
【0018】
さらに、図1図3に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、第1端面部11aに沿って第1端面部11aに(電気的および機械的に)接続されている芯導体部材12をさらに備える。芯導体部材12は、棒状の部材であって、例えば、層状導体部材11の厚さより大きい直径を有する。また、電源装置2は、芯導体部材12に電気的に接続されており、芯導体部材12、第1端面部11aおよび第2端面部11bを介して、層状導体部材11に、上述の時間変化する特定波形の電流I(t)を導通させる。
【0019】
具体的には、ここでは、図3に示すように、芯導体部材12の一方の端部12tに、電源装置2の出力端子の一端が電気的に接続され、第1端面部11aの両端部のうち、芯導体部材12の他方の端部側の端部11t1に、芯導体部材12と層状導体部材11との電気的な接続点が設けられ、端部11t1に対して対角となる層状導体部材11の第2端面部11bの端部11t2に電源装置2の出力端子の他端が電気的に接続されている。なお、端部11t1以外では、芯導体部材12と層状導体部材11とは電気的に接続されていない。これにより、電流I(t)は、層状導体部材11において端部11t1と端部11t2との間で導通する。
【0020】
上述の電流I(t)は、(渦巻きロール形状の)中心軸の周囲を渦巻き状に周回して導通する。そのため、電流I(t)が交流電流である場合、その中心軸の方向に交流磁界が発生し、中心軸を中心として周回する交流のベクトルポテンシャルAが発生する。
【0021】
実施の形態1では、芯導体部材12は、パーマロイなどといった軟磁性材料で構成されており、軟磁性を有する。これにより、上述の交流磁界が増強され、ひいては、ベクトルポテンシャルAも増強される。
【0022】
次に、上記ベクトルポテンシャル発生装置の動作について説明する。
【0023】
電源装置2は、所定周波数の交流電圧を、芯導体部材12の端部12tと層状導体部材11の第2端面部11bとに印加し、芯導体部材12、第1端面部11a(端部11t1)および第2端面部11b(端部11t2)を介して、層状導体部材11に電流I(t)を導通させる。
【0024】
層状導体部材11では、第1端面部11aと第2端面部11bとの間で電流I(t)が渦巻き状に周回して導通する。これにより、電流I(t)が交流電流である場合には、(渦巻きロール形状の)中心軸(芯導体部材12)に沿った交流磁界が発生するとともに、中心軸の周囲に周回する交流のベクトルポテンシャルAが発生する。
【0025】
このとき、層状導体部材11の軸方向の長さが大きいほど、電流I(t)の導通方向に対して略垂直方向の幅が大きくなり第1端面部11aと第2端面部11bとの間の抵抗値が小さくなる。そのため、層状導体部材11に大電流を導通させることができ、ひいては、大きなベクトルポテンシャルAを発生させることができる。
【0026】
以上のように、上記実施の形態1によれば、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、渦巻きロール形状の層状導体部材11と、層状導体部材11のロール内周側の第1端面部11aと、層状導体部材のロール外周側の第2端面部11bとを備え、電源装置2は、第1端面部11aおよび第2端面部11bを介して層状導体部材11に電流I(t)を導通させて層状導体部材11でベクトルポテンシャルを発生させる。
【0027】
これにより、ベクトルポテンシャルコイル装置1に大電流を導通させることができ、高出力のベクトルポテンシャル発生装置が得られる。そのため、例えば、強力なベクトルポテンシャルを頭部に印加することによる、癲癇などの脳疾患の治療への応用が期待できる。
【0028】
また、上述のように軟磁性の芯導体部材12を設けることで、浮遊容量が比較的小さくなるため、高周波領域でのベクトルポテンシャルコイル装置1の特性が良好となる。
【0029】
さらに、例えば板状の金属部材を渦巻きロール形状に巻回することで層状導体部材11を成形できるため、比較的容易にベクトルポテンシャルコイル装置1を製造することができる。
【0030】
実施の形態2.
【0031】
図4は、実施の形態2に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の層状導体部材11を示す展開図である。
【0032】
実施の形態2では、例えば図4に示すように、層状導体部材11は、網状部材である。例えば、層状導体部材11は、複数の銅線を網状に互いに接続させたものである。なお、層状導体部材11の網目形状(メッシュ形状)は、図4のものに限定されない。また、層状導体部材11に使用する網状部材は、例えばパンチングメタルのような複数の孔を設けられた板状の部材でもよい。
【0033】
図5は、図4に示すベクトルポテンシャルコイル装置1の等価回路を示す図である。図5に示すように、電源装置2から見たベクトルポテンシャルコイル装置1は、抵抗R、インダクタンスL、および浮遊容量Cの回路と見なせる。抵抗Rは第1端面部11aと第2端面部11bとの間の抵抗である。インダクタンスLは第1端面部11aと第2端面部11bとの間のインダクタンスである。
【0034】
ここで、小コイル径で巻回されたソレノイドコイルがらせん状に周回したコイル軸に沿って延びているベクトルポテンシャルコイル装置に比べ、実施の形態2におけるベクトルポテンシャルコイル装置1では、層状導体部材11の軸方向の長さが大きく電流の導通方向に対して略垂直方向の幅が大きく、またロール数が比較的小さいため、抵抗RおよびインダクタンスLが小さくなっている。また、層状導体部材11が網状部材であるので、層状導体部材11の層間の対向面積が小さいため、浮遊抵抗Cも小さくなっている。したがって、大電流の導通が可能となっている。
【0035】
さらに、実施の形態2におけるベクトルポテンシャルコイル装置1では、層状導体部材11が網状部材であるので、導体表面積が広く、高周波数の交流電流でも、表皮効果の影響が小さくなっており、また、層状導体部材11が良好な放熱特性を有しているため、大電流を導通させることが可能となっている。
【0036】
なお、実施の形態2に係るベクトルポテンシャル発生装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0037】
実施の形態3.
【0038】
図6は、本発明の実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置の構成を示す斜視図である。
【0039】
実施の形態3では、例えば図6に示すように、層状導体部材11は、曲線状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有する。
【0040】
ここでは、例えば図6に示すように、層状導体部材11は、リング状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有しており、層状導体部材11は、略トーラス状の外形を有し、その略トーラス状に鎖交するように、ベクトルポテンシャルAが発生する。
【0041】
なお、図6では、層状導体部材11は、略トーラス状の外形を有するが、略トーラス状の外形の周方向において、例えば半周などに切り欠いた、円弧状の中心軸を中心とした渦巻きロール形状を有するようにしてもよい。
【0042】
また、実施の形態3における層状導体部材11は、実施の形態1のような(孔のない)板状の部材でもよいし、実施の形態2のような網状の部材でもよい。
【0043】
なお、実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置のその他の構成および動作については実施の形態1または2と同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
実施の形態4.
【0045】
本発明の実施の形態4に係る治療装置は、上述の実施の形態1~3のいずれかに係るベクトルポテンシャル発生装置を備え、そのベクトルポテンシャル発生装置によって発生したベクトルポテンシャルを生体(人体、動物など)の特定部位に印加する。
【0046】
図7は、図6に示すベクトルポテンシャル発生装置の配置例を示す図である。例えば、癲癇、脳腫瘍、パーキンソン病などといった脳疾患のための治療装置の場合、例えば図7に示すように、実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置が頭部に近接させて配置され、体表の法線方向に強い電界が生じるようにベクトルポテンシャルAが印加される。
【0047】
脳疾患の治療装置の場合、当該治療装置は、電源装置2を制御するコントローラーを備え、そのコントローラーが、対象となる人体の脳波や心電図を(人体に接続された医療機器から)取得してモニターし、その脳波や心電図に基づいて特定のタイミングで、電源装置2に、上述の電流をベクトルポテンシャルコイル装置1に導通させるようにしてもよい。また、その場合、コントローラーは、治療に有効な特定のパルスシーケンスで、電源装置2に、上述の電流をベクトルポテンシャルコイル装置1に導通させるようにしてもよい。
【0048】
なお、例えば、ベクトルポテンシャル発生装置は、人体の頭部の形状に合わせた形状の支持体をさらに備え、その支持体に、上述のベクトルポテンシャルコイル装置1が固定されるようにしてもよい。その支持体としては、頭部に装着されるヘルメット、頭部近傍にベクトルポテンシャルコイル装置1を配置するスタンドなどが使用される。あるいは、上述の支持体は、枕、椅子のヘッドレストなどといった頭部の接触を受ける装置としてもよく、その場合、そのような支持体に上述のベクトルポテンシャルコイル装置1が内蔵される。
【0049】
このような支持体で、人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置にベクトルポテンシャルコイル装置1が近接して配置される。つまり、ベクトルポテンシャルコイル装置1に交流電流が導通することで、頭部の内部にある脳に交番するベクトルポテンシャルが発生する。これにより、脳に、交流の電界や交流の電流が印加される。例えば国際公開WO2017/072706に開示されているように、交流の電界を印加することで脳腫瘍の治療が行われており、脳腫瘍の治療に要求される条件(周波数など)が電源装置2によって設定され、そのような条件の交流電界がベクトルポテンシャルコイル装置1によって非侵襲で脳に印加される。例えば国際公開WO2017/072706に開示されているように交流電界を印加するためには、通常、剃髪後に電極パッドが頭部の皮膚に貼られるが、当該実施の形態に係る治療装置によれば、剃髪が不要であるとともに、粘着性のある電極パッドを頭部の皮膚に貼ることも不要となり、交流電界印加による治療時の患者の負担(身体的負担および精神的負担)が軽減される。
【0050】
また、実施の形態4に係る治療装置は、以下に示す疾患にも適用可能である。
【0051】
(1)骨または関節に関する疾患
【0052】
関節リウマチ、進行性骨化性線維形成異形成症(FOP)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、強直性脊椎炎、異所性骨化などの広範囲の過活動の又は不適切な骨成長を含む病状の治療に用いられ得る。また、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨芽細胞腫、類骨骨腫などの腫瘍性の骨形成、又は骨の腫瘍を含む病状において、骨の塊の除去のために用いられ得る。同様に、慢性の変形性関節症、リウマチ性関節炎、反応性関節炎、腱板損傷、足底筋膜炎、脊椎症、および/ または脊髄の狭窄の結果として、脚、肩、首、脊椎などに形成される骨棘の除去に用いられ得る。
【0053】
(2)靭帯損傷
【0054】
(3)その他の疾患など
【0055】
(3a)糖尿病、胃炎、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸、および痔疾
(3b)気管支喘息:風邪、扁桃炎、副鼻腔炎、慢性気管支炎
(3c)心臓血管性疾病:静脈炎、動脈内膜炎、および静脈瘤
(3d)脳および精神障害:鬱病、攻撃性、不安、およびストレスのような精神障害、さらにパーキンソン病、癲癇、偏頭痛、脳卒中、アルツハイマおよび他の退行性脳障害、また脳性麻痺、精神遅滞、活動過剰、学習不全-シナプスレベルでインパルスまたは命令の伝達に必要な神経化学物質を合成し、これらの細胞の電気活動を改善することによって、脳細胞の効率を向上させることができる。また、遺伝子を安定させ、細胞内に形成される酸素フリーラジカルの活動を防止する能力を有するので、加齢プロセスを遅延させるのに役立つ。
(3e)女性の月経不整、生殖不能、子宮内膜炎、および子宮内膜症、および男性の睾丸炎、前立腺炎、および精子過少症などの尿生殖器状態の治療
(3f)手術前および予防治療:上腹部のVP治療は、身体四肢への血液灌流を増加させ、損傷への炎症反応を軽減することができる。外科的部位の手術前措置も、治癒を加速することが示されている。
(3g)術後回復:術後回復の悪心、乗り物酔い、または嘔吐のような他の形態の悪心症状を軽減または緩和することができる。
【0056】
(4)補助手段としての利用
【0057】
細胞移植、培養骨格、及び成長因子のうち少なくとも1つを含む他の治療への補助手段とする。軟骨欠損の治療、及び腫瘍転移の予防を実行する。
【0058】
(5)皮膚科疾患
【0059】
生体の皮膚病の治療或いは美容施術に適用可能である。特に、ニキビ、多汗症の治療、火傷や手術した皮膚の縫合部分の治療への使用が期待できる。
【0060】
(6)眼科疾患
【0061】
眼瞼下垂、眼瞼内反、兎眼症、麦粒腫、霰粒腫、眼瞼痙攣、眼瞼悪性腫瘍、結膜炎、類皮腫、結膜下出血、瞼裂斑、悪性リンパ腫、強膜炎、強膜軟化症、角膜炎、円錐角膜、翼状片、顆粒状角膜変性症、蚕蝕性角膜潰瘍、ぶどう膜炎、白内障、水晶体偏位、水晶体脱臼、落屑症候群、硝子体出血、星状硝子体症、第1次硝子体過形成遺残、緑内障、高眼圧症、網膜剥離、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、網膜色素変性症、網膜分離症、黄斑円孔、黄斑上膜、コーツ病、家族性滲出性硝子体網膜症、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、未熟児網膜症、網膜芽細胞腫、視神経炎、視神経低形成、レーベル遺伝性視神経症、視束管骨折、多発性硬化症、Devic病、下垂体腫瘍、脳梗塞、ドライアイ、涙嚢炎、鼻涙管閉塞、涙小管炎、近視、遠視、乱視、老視、斜視、下斜筋過動症、Duane症候群、動眼神経麻痺、外転神経麻痺、ホルネル症候群、アディー症候群、外傷性散瞳、色覚異常、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、甲状腺眼症など。
【0062】
(7)人間以外の生体への利用
犬、馬などといった哺乳類、その他の非人間の生体についても同様の目的のために用いられ得る。
【0063】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0064】
例えば、上記実施の形態1~3のいずれかにおいて、芯導体部材12を設けずに、電源装置2を上述の端部11t1,11t2に電気的に接続して電流I(t)を導通させるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態1~3のいずれかにおいて、層状導体部材11のロール回数は特に限定されない、また、渦巻きロール形状の各層間距離は特に限定されず、径方向に沿った層間距離は、略一定でもよいし異なっていてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態1~3のいずれかにおいて、層状導体部材11および/または芯導体部材12における電源装置2の電気的な接続箇所は、上述した位置に限定されず、端部11t1,11t2以外の位置でもよい。また、層状導体部材11および/または芯導体部材12における電源装置2の電気的な接続箇所は複数でもよく(例えば両端)、その場合、電源装置2は、例えば複数の配線でそれぞれの接続箇所に接続される。また、上記実施の形態1~3において、芯導体部材12として、層状導体部材11より線抵抗率が低い部材を使用し、芯導体部材12と第1端面部11aとを複数箇所で電気的に接続するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態1~3のいずれかにおいて、層状導体部材11における渦巻きロール形状の層間での絶縁状態を確保するため、層状導体部材11の表面上に絶縁コーティングがなされたり、層状導体部材11の表面上に絶縁テープが配置されたり、層状導体部材11としてフレキシブル基板が使用されたりしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態1,2のいずれかにおける中心軸が直線状であるベクトルポテンシャルコイル装置1を中心軸が連続するように複数配列して、任意の形状(多角形の弧、多角形リング、らせん状など)のコイル軸に沿ったベクトルポテンシャルコイル装置1を構成してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態3において、電源装置2の出力端子の一端を、芯導体部材12の端部12tではなく、端部11t1、または、端部12tとは反対側の芯導体部材12の端部に、電気的に接続して電流I(t)を導通させるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態3においては、層状導体部材11が両側端を有するリング形状を有するが、その代わりに、無終端のリング形状を有するようにしてもよい。その場合、層状導体部材11に孔を設け、その孔を介して、(芯導体部材12がない場合には)内周側の第1端面部11aに(あるいは芯導体部材12がある場合には芯導体部材12に)電源装置2を電気的に接続して電流I(t)を導通させるようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態1~3のいずれかにおいて、ベクトルポテンシャル発生装置は、強制冷却を行う冷却機構を備えていてもよい。その場合、例えば、芯導体部材12は、中空部分を有するパイプ状の部材(例えば熱伝導特性の良好な銅パイプ部材など)とされ、冷却機構が中空部分に冷媒(純水、二酸化炭素、代替フロンなど)を循環させてベクトルポテンシャルコイル装置1を冷却する。また、層状導体部材11の層間の空間に冷媒を循環させるようにしてもよい。その場合、冷媒を導通させるパイプ状の部材(例えば熱伝導特性の良好な銅パイプ部材など)を層状導体部材11の層間に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、ベクトルポテンシャル発生装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 ベクトルポテンシャルコイル装置
2 電源装置
11 層状導体部材
11a 第1端面部
11b 第2端面部
12 芯導体部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7